説明

液体噴射装置

【課題】記録媒体の端部から粉塵が発生する虞のある場合において、そのような粉塵が液体噴射ヘッドに付着することを抑制することができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録用紙Pをその表裏両側から挟持可能な対をなすローラー12a,12b同士の間に記録用紙を挟持した状態でローラーを回転させることにより記録用紙を搬送方向の上流側から記録ヘッド22のノズル形成面22aと支持部材30との間へ搬送する搬送ローラー12と、記録用紙が搬送される搬送経路上におけるローラー同士による記録用紙の挟持位置と支持部材上で記録用紙がノズル形成面と対向する対向位置との間であって且つ支持部材とノズル形成面との間となる受け止め位置において、挟持位置を搬送方向の上流側から下流側へと通過する記録用紙における搬送方向上流側の端部に対してノズル形成面側となる位置状態を少なくとも取り得るように設けられた受け止め部材41とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙製の記録媒体に液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に液体を噴射する液体噴射装置の一例として、記録媒体としての記録用紙に液体であるインクを噴射するインクジェット式プリンターが知られている。インクジェット式プリンターは、複数のノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、記録用紙を液体噴射ヘッドのノズル形成面と対向した状態に支持する支持部材とを備えている。さらに、インクジェット式プリンターは、記録用紙を搬送方向の上流側から支持部材上で記録媒体がノズル形成面と対向する対向位置へ搬送するための搬送ローラーを備えている。搬送ローラーは、搬送モーターに連結された搬送駆動ローラーと、搬送駆動ローラーに対向するように配置されて従動回転可能な搬送従動ローラーとによって構成されている。
【0003】
記録用紙は、搬送駆動ローラーと従動駆動ローラーとに挟持された状態から、搬送モーターによって搬送駆動ローラーが回転駆動されることによって、搬送従動ローラーが回転して支持部材の上面へと搬送される。そして、支持部材の上面に搬送された記録媒体がノズル形成面との対向位置に差し掛かると、その記録用紙に対して、液体噴射ヘッドのノズルからインク滴が噴射されることによって、記録用紙に印刷が施される。
【0004】
ところで、記録用紙が支持部材の上面へ搬送される際に、記録用紙の搬送方向上流側の端部となる後端が搬送駆動ローラーと従動駆動ローラーとの間を下流側へ通過して両ローラーから離れると、記録用紙における両ローラーの挟持による拘束状態が解除されるため、記録用紙の後端部が記録用紙の前端側に向かって勢い良く跳ね上がる場合がある。ここで、記録用紙の後端は、紙繊維が強制的に切断されてなる裁断面であるために、記録用紙の後端部が勢い良く跳ね上がると、記録用紙の後端における裁断面から粉塵の一種である紙粉が飛散する虞がある。そして、そのように飛散する紙粉が発生した場合には、飛散した紙粉が記録用紙の周辺を浮遊してその一部がノズルの近傍に付着する結果、ノズルから噴射されるインク滴の飛行する方向が変化したり、ノズルが紙粉によって塞がれるといったノズル詰まりが発生したりする。
【0005】
そこで、特許文献1では、飛散した紙粉がノズルに付着することを抑えるために、搬送ローラー(特許文献1では給送手段)と液体噴射ヘッド(特許文献1では記録手段)との間に設けられた除電針部材によって、記録用紙が支持部材の上面に搬送される前に記録用紙に付着している紙粉を除去することが提案されている。これによれば、記録用紙が支持部材の上面に搬送される前に、記録用紙の表面を一定の強さで擦ることで、記録用紙に付着した紙粉を強制的に除去し、搬送された記録用紙から紙粉が飛散してノズル形成面に付着することが抑制される。
【0006】
また、特許文献2では、液体噴射ヘッドのノズル形成面を構成する金属製プレートをアース電位とするとともに、支持部材(特許文献2では搬送用金属ガイド)を金属製とし、さらに、支持部材に負極性の直流電圧を印加することで、液体噴射ヘッドと支持部材との間に電界を発生させ、この電界により紙粉を支持部材側へ引き寄せることが提案されている。これによれば、紙粉がノズル形成面側へ移動することがなく、記録用紙から飛散した紙粉がノズル形成面に付着することが抑制される。
【0007】
さらに、特許文献3では、液体噴射ヘッドを移動させるキャリッジに設けられたファンによって、記録用紙に対し、キャリッジの斜め往動方向に向けてエアーを吹き付けるという提案がなされている。この特許文献3に記載の装置によれば、エアーが吹き付けられた領域、すなわち飛散した紙粉がエアーによって吹き飛ばされた領域に向けてキャリッジが移動していくため、記録用紙から飛散した紙粉がノズル形成面に付着することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−147035号公報
【特許文献2】特開2003−220695号公報
【特許文献3】特開2003−118095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、除電針部材が記録用紙の表面を擦ることにより紙粉が発生してしまい、そのように発生した紙粉が飛散してしまう虞がある。また、特許文献2では、記録用紙の給排紙速度が速い場合、搬送従動ローラーの回転により気流が発生してしまい、この気流により紙粉が吹き飛ばされて、電界により紙粉を支持部材側へ引き寄せ難くなる虞がある。さらに、特許文献3では、エアーによって紙粉が吹き飛ばされてしまい、吹き飛ばされた紙粉が記録用紙の周辺を浮遊してノズル形成面に付着してしまう虞がある。このように、記録用紙への印刷不良を抑制する上ではなお改良の余地を残すものとなっている。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体の端部から粉塵が発生する虞のある場合において、そのような粉塵が液体噴射ヘッドに付着することを抑制することができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、記録媒体に対して液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記記録媒体を前記ノズル形成面と対向した状態に支持可能な支持部材と、前記記録媒体をその表裏両側から挟持可能な対をなす回転体同士の間に前記記録媒体を挟持した状態で前記回転体を回転させることにより前記記録媒体を搬送方向の上流側から前記ノズル形成面と前記支持部材との間へ搬送する搬送手段と、前記記録媒体が搬送される搬送経路上における前記回転体同士による前記記録媒体の挟持位置と前記支持部材上で前記記録媒体が前記ノズル形成面と対向する対向位置との間であって且つ前記支持部材と前記ノズル形成面との間となる受け止め位置において、前記挟持位置を搬送方向の上流側から下流側へと通過する前記記録媒体における搬送方向上流側の端部に対して前記ノズル形成面側となる位置状態を少なくとも取り得るように設けられた受け止め部材とを備えた。
【0012】
この発明によれば、記録媒体の搬送方向上流側の端部が回転体同士による挟持位置を下流側へ通過して拘束状態を解除されたとき、跳ね上がった記録媒体の搬送方向上流側の端部は受け止め部材により受け止められるので、ノズル形成面に衝突するようなことはない。したがって、記録媒体の端部から粉塵が発生する虞のある場合において、そのような粉塵が液体噴射ヘッドに付着することを抑制することができる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記受け止め部材における前記支持部材側となる面は、前記挟持位置から前記対向位置に向かうにつれて次第に前記ノズル形成面側に近づく面形状に形成されている。
【0014】
この発明によれば、搬送手段の回転体同士による挟持位置を下流側に通過した記録媒体における搬送方向上流側の端部は、その端部が受け止め部材における支持部材側の面に摺接した状態で搬送方向の下流側へと移動することになる。そして、その際に記録媒体の端部が摺接する受け止め部材における支持部材側の面は、挟持位置から対向位置に向かうにつれて次第にノズル形成面側に近づく面形状に形成されている。そのため、記録媒体の搬送方向上流側の端部における跳ね上がろうとする力は、その端部が受け止め部材における支持部材側の面に対して次第に当接力が緩やかになるように摺接することで徐々に減少していき、その端部が受け止め部材から離れるときには、その端部における跳ね上がろうとする力が減衰される。その結果、記録媒体の端部が跳ね上がることで生じる粉塵の飛散を効果的に抑制することができ、液体噴射ヘッドに対する粉塵の付着を良好に抑制することができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、前記受け止め部材は、前記記録媒体における搬送方向と交差する幅方向に沿って連続して延びるように設けられるとともに、前記受け止め部材における前記幅方向に沿った長さは、前記記録媒体の前記幅方向に沿った長さよりも長くなっている。
【0016】
例えば、受け止め部材が記録媒体の幅方向に沿って一定の間隔をあけて断続的に複数設けられる場合には、そのような各受け止め部材により記録媒体の搬送方向上流側の端部が跳ね上がって受け止められた際に飛散した粉塵が各受け止め部材の間を通過してノズル形成面側へ浮遊する虞がある。この点、この発明によれば、受け止め部材は記録媒体の搬送方向上流側の端部よりも幅方向の長さが長いので、そのような受け止め部材に受け止められた際に発生した粉塵がノズル形成面側に向かって浮遊してしまうといったことを抑制することができる。
【0017】
本発明の液体噴射装置において、前記受け止め部材は、導電性を有するとともに接地されている。
この発明によれば、記録媒体の搬送方向上流側の端部が受け止め部材における支持部材側の面に摺接した状態で搬送方向へ移動する際に、記録媒体と受け止め部材との間で生じる摩擦によって受け止め部材が帯電してしまうことを抑制することができる。よって、受け止め部材が帯電して、受け止め部材と液体噴射ヘッドとの間に電界が形成され、この電界により粉塵が液体噴射ヘッドのノズル形成面側に向かって誘導されてしまうことを抑制することができる。
【0018】
本発明の液体噴射装置において、前記受け止め部材は、前記挟持位置を搬送方向の上流側から下流側へと通過する前記記録媒体における搬送方向下流側の端部と前記受け止め部材とが干渉してしまうことを回避可能な回避位置へ移動可能になっている。
【0019】
この発明によれば、記録媒体の搬送方向下流側の端部が回転体同士による挟持位置を下流側に通過したときに、受け止め部材が回避位置へ移動していれば、記録媒体の搬送方向下流側の端部が受け止め部材と干渉することがない。そのため、記録媒体の搬送方向下流側の端部と受け止め部材とが干渉して、記録媒体の搬送方向下流側の端部から粉塵が飛散してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成を示す模式図、(b)はインクジェット式プリンターを上から見た平面図。
【図2】(a)は記録用紙の前端が挟持位置を通過する状態を示す模式図、(b)は記録用紙の前端が挟持位置を通過後で後端が通過前の状態を示す模式図、(c)は記録用紙の後端部が跳ね上がって湾曲部に当接した状態を示す模式図、(d)は記録用紙の後端部が斜状壁部に当接した状態を示す模式図、(e)は記録用紙の後端部が斜状壁部に摺接しながら移動している状態を示す模式図、(f)は記録用紙の後端部が斜状壁部から離れた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、インクジェット式プリンターは、記録媒体としての記録用紙Pを搬送するための搬送ローラー12及び排紙ローラー13を備えている。これら各ローラー12,13は、円柱状に形成されるとともに、その中心を回転軸として回動可能に配置されている。
【0022】
搬送ローラー12は、記録用紙Pをその表裏両側から挟持可能な対をなす回転体としての搬送駆動ローラー12a及び搬送従動ローラー12bから構成されている。搬送駆動ローラー12aは搬送モーターM1に連結されるとともに、搬送従動ローラー12bは搬送駆動ローラー12aに対向するように配置されて従動回転可能になっている。また、排紙ローラー13は、記録用紙Pをその表裏両側から挟持可能な対をなす回転体としての排紙駆動ローラー13a及び排紙従動ローラー13bから構成されている。排紙駆動ローラー13aは搬送モーターM1に連結されるとともに、排紙従動ローラー13bは排紙駆動ローラー13aに対向するように配置されて従動回転可能になっている(図1(a)では、搬送モーターM1の動力伝達経路を破線で図示)。
【0023】
こうした搬送ローラー12及び排紙ローラー13では、搬送モーターM1によって搬送駆動ローラー12a及び排紙駆動ローラー13aが回転駆動されることによって、それぞれ搬送従動ローラー12b及び排紙従動ローラー13bが協働して記録用紙Pの紙送り及び排紙を行う。よって、本実施形態では、搬送ローラー12及び排紙ローラー13により搬送手段が構成されている。なお、記録用紙Pが搬送される方向を、以下では搬送方向とする。
【0024】
また、搬送ローラー12と排紙ローラー13との間に搬送された記録用紙Pの上方には、インクカートリッジを搭載したキャリッジ20が紙面と垂直な方向、すなわち走査方向に移動可能に設けられている。キャリッジ20は、タイミングベルトを介してキャリッジモーターM2に連結されるとともに、このキャリッジモーターM2の駆動によって往復移動される(図1(a)では、キャリッジモーターM2の動力伝達経路を破線で図示)。また、キャリッジ20には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド21が搭載されている。記録ヘッド21の下面には、下方に向けてインク滴を噴射する多数のノズル(図示略)が形成されたノズルプレート22が設けられている。なお、このノズルプレート22は、その帯電を抑制すべく接地されている。
【0025】
搬送ローラー12と排紙ローラー13との間に搬送された記録用紙Pの下方には、記録用紙Pを支持する支持部材30が配置されている。支持部材30の上面は平坦面状に形成されている。そして、この支持部材30の上面は記録用紙Pをノズルプレート22の下面であるノズル形成面22aと対向した状態に支持する支持面31になっている。なお、支持部材30の上方の領域であって、搬送方向後方(上流側)における支持部材30の端部と、搬送方向前方(下流側)における支持部材30の端部とに挟まれる領域を、以下では印刷領域Rとする。
【0026】
記録用紙Pが搬送される搬送経路上であって、記録用紙Pの後端(搬送方向上流側の端部)が搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間を下流側へ通過して搬送ローラー12から離れる位置には、受け止め部材41が設けられている。この受け止め部材41は、記録用紙Pの後端が搬送ローラー12により挟持された拘束状態を解除されて前端側へ跳ね上がった場合に、その記録用紙Pの表面(記録用紙Pにおける記録ヘッド21側の面)に接触可能な部材であって、導電性を有する金属材料からなるとともに接地されている。
【0027】
受け止め部材41は、搬送駆動ローラー12aを上方から覆うとともに搬送方向に沿って直線状に延びる延在部41aを備えている。また、受け止め部材41は、延在部41aの記録ヘッド21側端部に連続するとともに支持部材30に向かって搬送ローラー12側へ膨出しながら下るように湾曲する湾曲部41bを備えている。さらに、受け止め部材41は、湾曲部41bの記録ヘッド21側端部に連続するとともに搬送ローラー12から離れる従ってノズル形成面22a側に向かって直線状に延びる斜状壁部41cを備えている。
【0028】
図1(b)に示すように、延在部41a、湾曲部41b及び斜状壁部41cにおける記録用紙Pの搬送方向と直交する幅方向に沿った長さL1はそれぞれ同じになっている。また、延在部41a、湾曲部41b及び斜状壁部41cの幅方向に沿った長さL1は、記録用紙Pの幅方向に沿った長さL2よりも僅かに長くなっている。延在部41a、湾曲部41b及び斜状壁部41cは、幅方向に沿って連続して延びるように形成されている。
【0029】
図1(a)に示すように、湾曲部41bは、記録用紙Pの後端が搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間から下流側へ離れて、記録用紙Pの後端部が跳ね上がったときに、湾曲部41bが記録用紙Pの後端部に接触して、記録用紙Pの後端部におけるノズル形成面22a側となる位置状態を取り得ることが可能な位置に設けられている。斜状壁部41cは、支持部材30側の面が、支持部材30の支持面31に沿う方向から所定の角度θ分だけノズル形成面22a側に近づくように傾斜する面形状に形成されている。
【0030】
延在部41aの記録ヘッド21とは反対側端部には回転ローラー42が取り付けられている。回転ローラー42はモーターM3に連結されるとともに、このモーターM3の駆動を通じて回転される(図1(a)では、モーターM3の動力伝達経路を破線で図示)。この回転ローラー42の回転により、受け止め部材41は回転ローラー42の周方向に沿って揺動可能になっている。
【0031】
ここで、延在部41aが搬送方向に沿って平行に延びているときの受け止め部材41の位置を、記録用紙Pの後端部が前端側へ跳ね上がったときに、その後端部を湾曲部41bが受け止めることが可能な受け止め位置とする。この受け止め位置は、搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間に記録用紙Pが挟持される挟持位置と、支持部材30上で記録用紙Pがノズル形成面22aと対向する対向位置との間であって、且つ支持部材30とノズル形成面22aとの間に位置している。受け止め部材41が受け止め位置に位置しているとき、湾曲部41bと斜状壁部41cとの間の部位と、支持部材30の支持面31との間には、記録用紙Pが通過可能な隙間が形成される。
【0032】
一方、回転ローラー42が回転して受け止め部材41が揺動し、延在部41aの延在方向が記録ヘッド21側に向かって斜め上方に延びているときの受け止め部材41の位置を、記録用紙Pの搬送が開始されたときに記録用紙Pの搬送方向下流側の端部である前端Pfが受け止め部材41と干渉してしまうことを回避可能な回避位置とする。受け止め部材41は、回転ローラー42の回転により、受け止め位置と回避位置との間を移動可能になっている。
【0033】
このように構成されるプリンターでは、記録用紙Pの印刷時において、まず、図2(a)に示すように、搬送モーターM1が駆動して搬送駆動ローラー12aが回転すると、搬送従動ローラー12bが回転するとともに記録用紙Pの前端Pf側が、搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間に挟持される。そして、搬送駆動ローラー12a及び搬送従動ローラー12bの回転により記録用紙Pが搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間に挟持された状態で支持部材30の支持面31上に向かって搬送される。このとき、受け止め部材41は回転ローラー42の回転により回避位置へ移動している。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、記録用紙Pの前端Pfが、挟持位置を通過して支持部材30の支持面31上に搬送されると、受け止め部材41が受け止め位置へ移動するように回転ローラー42が回転し、受け止め部材41が受け止め位置に位置する。
【0035】
次に、図2(c)に示すように、記録用紙Pがさらに搬送されて、記録用紙Pの後端が搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間から離れると、記録用紙Pにおける搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間での拘束が解除されて、記録用紙Pの後端部が記録用紙Pの前端側に向かって跳ね上がる。跳ね上がった記録用紙Pの後端部は湾曲部41bに接触して受け止められる。さらに、記録用紙Pが搬送されると、記録用紙Pの後端部は、跳ね上がった状態で湾曲部41bにおける搬送ローラー12側の面に摺接しながら移動する。そして、図2(d)に示すように、記録用紙Pの後端部は、湾曲部41bと斜状壁部41cとの間の部位と、支持部材30の支持面31との間の隙間を介して斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に当接する。
【0036】
次に、図2(e)に示すように、記録用紙Pの後端部は、斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に沿って摺接しながら移動する。記録用紙Pの後端部が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に沿って摺接しながら移動するに従って、記録用紙Pの後端部における跳ね上がり量は徐々に増えていく。しかし、記録用紙Pの後端部における跳ね上がろうとする力は、その端部が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に対して次第に当接力が緩やかになるように摺接することで徐々に減少していく。
【0037】
そして、図2(f)に示すように、記録用紙Pの後端が斜状壁部41cから離れるときには、記録用紙Pの後端部における跳ね上がろうとする力が減衰されているため、記録用紙Pが勢い良く跳ね上がることがなく、記録用紙Pの後端は斜状壁部41cから静かに離れる。そして、記録用紙Pが支持部材30の支持面31に支持されながら印刷領域Rにおける記録用紙Pとノズル形成面22aとの対向位置に差し掛かる間に、跳ね上がった記録用紙Pの後端部は重力により跳ね上がる前の原形状に復帰し、記録ヘッド21の各ノズルからインク滴が噴射されて記録用紙Pに印刷が施される。さらに、排紙駆動ローラー13a及び排紙従動ローラー13bにより印刷された記録用紙Pが排紙される。このようにして、記録用紙Pは、上流側から下流側に搬送されながら順次印刷される。
【0038】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)記録用紙Pが搬送される搬送経路上であって、記録用紙Pが搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間から離れる位置には受け止め部材41が設けられている。よって、記録用紙Pの後端部が、搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとによる挟持位置を下流側へ通過して拘束状態を解除されたとき、跳ね上がった記録用紙Pの後端部は受け止め部材41により受け止められるので、ノズル形成面22aに衝突するようなことはない。したがって、記録用紙Pの後端部から粉塵の一種である紙粉が発生する虞のある場合において、そのような紙粉がノズル形成面22aに付着することを抑制することができる。
【0039】
(2)受け止め部材41は、搬送ローラー12から下流側へ離れる従ってノズル形成面22a側に向かって直線状に延びる斜状壁部41cを備えるとともに、斜状壁部41cにおける支持部材30側の面は、ノズル形成面22a側に近づくように傾斜する面形状に形成されている。よって、搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとによる挟持位置を下流側に通過した記録用紙Pの後端部は、その端部が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に摺接した状態で搬送方向の下流側へと移動することになる。そのため、記録用紙Pの後端部における跳ね上がろうとする力は、その端部が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に対して次第に当接力が緩やかになるように摺接することで徐々に減少していき、その端部が斜状壁部41cから離れるときには、その端部における跳ね上がろうとする力が減衰される。その結果、記録用紙Pの後端部が跳ね上がることで生じる紙粉の飛散を効果的に抑制することができ、ノズル形成面22aに対する紙粉の付着を良好に抑制することができる。
【0040】
(3)受け止め部材41は記録用紙Pの幅方向に沿って連続して延びるように設けられるとともに、受け止め部材41の幅方向に沿った長さL1は、記録用紙Pの幅方向に沿った長さL2よりも長くなっている。例えば、受け止め部材が記録用紙Pの幅方向に沿って一定の間隔をあけて断続的に複数設けられる場合には、そのような各受け止め部材により記録用紙Pの後端部が跳ね上がって受け止められた際に飛散した紙粉が各受け止め部材の間を通過してノズル形成面22a側へ浮遊する虞がある。この点、本実施形態では、受け止め部材41は記録用紙Pの後端部よりも幅方向の長さL1が長いので、そのような受け止め部材41に受け止められた際に発生した紙粉がノズル形成面22a側に向かって浮遊してしまうといったことを抑制することができる。
【0041】
(4)受け止め部材41は導電性を有する金属材料からなるとともに接地されている。よって、記録用紙Pの後端部が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に沿って摺接した状態で搬送方向へ移動する際に、記録用紙Pと斜状壁部41cとの間で生じる摩擦によって受け止め部材41が帯電してしまうことを抑制することができる。よって、受け止め部材41が帯電して、受け止め部材41と記録ヘッド21との間に電界が形成され、この電界により紙粉がノズル形成面22a側に向かって誘導されてしまうことを抑制することができる。
【0042】
(5)受け止め部材41は、回転ローラー42の回転により受け止め位置と回避位置との間を移動可能になっている。よって、記録用紙Pの前端Pfが搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとによる挟持位置を下流側に通過したときに、受け止め部材41が受け止め位置から回避位置へ移動していれば、記録用紙Pの前端Pfが受け止め部材41と干渉することがない。そのため、記録用紙Pの前端Pfと受け止め部材41とが干渉して、記録用紙Pの前端Pfから紙粉が飛散してしまうことを抑制することができる。
【0043】
(6)斜状壁部41cは、搬送ローラー12から離れる従ってノズル形成面22a側に向かって直線状に延びるように形成されている。よって、例えば、両面印刷時において、記録用紙Pを排紙ローラー13側から搬送ローラー12側へ搬送する際に、記録用紙Pにおける搬送ローラー12側の前端側が斜状壁部41cにおける支持部材30側の面に沿って案内されるように搬送される。したがって、記録用紙Pにおける搬送ローラー12側の前端側が斜状壁部41cに干渉することを抑制することができ、スムーズに両面印刷を施すことができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ 実施形態において、受け止め部材41は、受け止め位置から回避位置へ移動できなくてもよい。すなわち、回転ローラー42を削除してもよい。この場合であっても、受け止め部材41は湾曲部41bを備えているため、記録用紙Pが搬送される際に、記録用紙Pの前端Pfが受け止め部材41に干渉したとしても、湾曲部41bにおける搬送ローラー12側の面に沿って記録用紙Pの前端Pfが案内されるように移動する。よって、記録用紙Pの前端Pfが、湾曲部41bと斜状壁部41cとの間の部位と、支持部材30の支持面31との間の隙間を通過することができ、記録用紙Pが受け止め部材41と干渉して紙詰まりを起こしてしまうことを抑制することができる。
【0045】
・ 実施形態において、搬送ローラー12から離れる従って(すなわち、挟持位置から対向位置に向かうにつれて次第に)ノズル形成面22a側に近づくように、支持部材30側へ膨出した湾曲形状に形成されていてもよい。
【0046】
・ 実施形態において、延在部41aと斜状壁部41cとを繋ぐ部位は、延在部41aの延在方向に対して直交するとともに下方に向かって直線状に延びる直交部であってもよい。この場合、記録用紙Pの後端が搬送駆動ローラー12aと搬送従動ローラー12bとの間から離れると、跳ね上がった記録用紙Pの後端部は、斜状壁部41cにより受け止められる。
【0047】
・ 実施形態において、受け止め部材41は、例えば、幅方向に沿って一定の間隔をあけて断続的に複数設けられていてもよい。
・ 実施形態において、受け止め部材41は、例えば、導電性樹脂材料から形成されていてもよい。
【0048】
・ 実施形態において、受け止め部材41は、非導電性の樹脂材料から形成されていてもよい。
・ 実施形態において、受け止め部材41の幅方向に沿った長さL1は、記録用紙Pの幅方向に沿った長さL2と同じ、又は記録用紙Pの幅方向に沿った長さL2よりも僅かに短くなっていてもよい。
【0049】
・ 実施形態において、受け止め部材41の幅が、記録用紙Pの幅に対応するように、受け止め部材41の幅方向に沿った長さを変位させるための変位機構をさらに設けてもよい。
【0050】
・ 実施形態において、受け止め部材41が、排紙駆動ローラー13aと排紙従動ローラー13bとの間に記録用紙Pが挟持される挟持位置と、支持部材30上で記録用紙Pがノズル形成面22aと対向する対向位置との間であって、且つ支持部材30とノズル形成面22aとの間にさらに設けられていてもよい。両面印刷時において、記録用紙Pを排紙ローラー13側から搬送ローラー12側へ搬送する際、記録用紙Pにおける排紙ローラー13側の後端部が、排紙駆動ローラー13aと排紙従動ローラー13bとによる挟持位置を通過して拘束状態を解除されたとき、跳ね上がった記録用紙Pにおける排紙ローラー13側の後端部が受け止め部材41により受け止められる。
【0051】
・ 実施形態において、対をなす回転体として、互いに反対方向に周回運動する無端状の回転ベルトを用いてもよい。
・ 実施形態において、記録媒体は用紙に限らず、例えばフィルムや布としてもよい。フィルムや布の後端においても、その後端部が勢い良く跳ね上がると、記録用紙Pと同様に紙粉のような粉塵が飛散する虞がある。しかし、本発明によれば、そのような粉塵がノズル形成面22aに付着することが抑制される。
【0052】
・ 本発明を、印刷に用いられるインクジェット式プリンターとして具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(但し気体を除く)を吐出する液体噴射装置にも適用してよい。液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
P…記録媒体としての記録用紙、12…搬送手段を構成する搬送ローラー、12a…回転体としての搬送駆動ローラー、12b…回転体としての搬送従動ローラー、13…搬送手段を構成する排紙ローラー、13a…回転体としての排紙駆動ローラー、13b…回転体としての排紙従動ローラー、21…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、22a…ノズル形成面、30…支持部材、41…受け止め部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記記録媒体を前記ノズル形成面と対向した状態に支持可能な支持部材と、
前記記録媒体をその表裏両側から挟持可能な対をなす回転体同士の間に前記記録媒体を挟持した状態で前記回転体を回転させることにより前記記録媒体を搬送方向の上流側から前記ノズル形成面と前記支持部材との間へ搬送する搬送手段と、
前記記録媒体が搬送される搬送経路上における前記回転体同士による前記記録媒体の挟持位置と前記支持部材上で前記記録媒体が前記ノズル形成面と対向する対向位置との間であって且つ前記支持部材と前記ノズル形成面との間となる受け止め位置において、前記挟持位置を搬送方向の上流側から下流側へと通過する前記記録媒体における搬送方向上流側の端部に対して前記ノズル形成面側となる位置状態を少なくとも取り得るように設けられた受け止め部材と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記受け止め部材における前記支持部材側となる面は、前記挟持位置から前記対向位置に向かうにつれて次第に前記ノズル形成面側に近づく面形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記受け止め部材は、前記記録媒体における搬送方向と交差する幅方向に沿って連続して延びるように設けられるとともに、前記受け止め部材における前記幅方向に沿った長さは、前記記録媒体の前記幅方向に沿った長さよりも長くなっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記受け止め部材は、導電性を有するとともに接地されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記受け止め部材は、前記挟持位置を搬送方向の上流側から下流側へと通過する前記記録媒体における搬送方向下流側の端部と前記受け止め部材とが干渉してしまうことを回避可能な回避位置へ移動可能になっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82039(P2012−82039A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228663(P2010−228663)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】