説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射面から離間したワイパがストッパに当接するときに、ワイパに付着した液体が周囲に飛び散るのを低減する。
【解決手段】インクジェットプリンタのワイパ70は、リブ24に当接可能な衝撃吸収部74を有している。そして、インクジェットプリンタは、ワイパ70をインク噴射面4aに対して払拭方向に相対移動させることで、インク噴射面4aに接触し、インク噴射面4aに付着したインクを拭き取る。そして、ワイパ70をインク噴射面4aに対して払拭方向と反対方向に相対移動させると、衝撃吸収部74の当接部74bが引張バネ64の付勢力により下方に引っ張られてリブ24に当接することで、ワイパ70は、インク噴射面4aから復元しながら離れて待機位置に移動して払拭動作が終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を噴射するノズルが開口する液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、この液体噴射面に付着した液体を拭き取るためのワイパと、を有する液体噴射装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上記ワイパを有する液体噴射装置として、印字ヘッドのノズルから印刷用紙にインクを噴射して画像などを記録するプリンタについて開示されている。この特許文献1に記載のプリンタでは、ワイパはワイパホルダに保持され、このワイパホルダを印字ヘッドのノズルが開口するインク噴射面に対して直交する方向に昇降移動させることで、ワイパをインク噴射面に接触するワイピング位置とインク噴射面から離間した待機位置とにわたって移動させている。
【0004】
より具体的には、ワイパを保持するワイパホルダは、バネによってインク噴射面から離間する方向に付勢されており、ガイドに押し上げられて上昇し、プリンタ本体に設けられた基部に形成された係止受部に、ワイパホルダに形成された係止爪を陥入することで、ワイパホルダはバネの付勢力に抗して上昇したワイピング位置にて係止される。そして、ワイパホルダは、係止受部への係止爪の係止を解除すると、バネの付勢力により下降して、ワイパホルダの下面が基部に形成されたストッパに接触して待機位置に位置付けられる。
【0005】
【特許文献1】特許第4131046号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に、ワイパを保持するワイパホルダや、ストッパを含む基部は、形状や姿勢を維持するために、例えば合成樹脂などにより高い強度を保持可能に形成されている。しかしながら、ワイパホルダやストッパが高い強度を保持していると、例えば、特許文献1に記載のワイパのようにバネの付勢力や、ワイパ自体の自重落下などによりワイピング直後にワイパを液体噴射面から離間させて、ワイパホルダがストッパに衝突したときに、ワイパに衝撃が生じて振動してしまう。そして、液体噴射面を払拭して液体が付着しているワイパに対して上記衝撃が生じて振動すると、ワイパに付着した液体が周囲に飛び散ってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、液体噴射面から離間したワイパがストッパに当接するときに、ワイパに付着した液体が周囲に飛び散るのを防止した液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射面に接触しながら、前記液体噴射面に対して前記液体噴射面に沿った方向に相対移動することで、前記液体噴射面に付着した液体を拭き取るワイパと、を備え、前記ワイパは、前記液体噴射面に対して前記液体噴射面と交差する方向に移動して、前記液体噴射面に対して離接可能であり、前記液体噴射面から離間した前記ワイパと当接するストッパと、前記ワイパまたは前記ストッパに形成され、前記ワイパが前記ストッパに衝突するときの衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、を備えている。
【0009】
本発明の液体噴射装置によると、液体噴射面を拭き取ったワイパを液体噴射面から離間させてストッパに当接させたときに生じる衝撃は衝撃吸収部材に吸収されることになり、ストッパに当接したときのワイパの振動を抑制することができる。これにより、液体噴射面から離間したワイパがストッパに当接するときに、ワイパに付着した液体が周囲に飛び散るのを防止することができる。
【0010】
前記ワイパは、弾性材料からなり、前記衝撃吸収部材が、前記ワイパと一体的に形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明では、ワイパが弾性材料からなり、このワイパと一体的に衝撃吸収部材を形成している。これにより、弾性材料からなりワイパと一体となった衝撃吸収部材でワイパによるストッパへの衝撃を吸収することができ、衝撃吸収部材を別個に形成する必要がない。また、ワイパと別部材で衝撃吸収部材を形成する場合と比較して、衝撃吸収部材が衝突により外れるおそれがない。
【0012】
このとき、前記ワイパは、端面から凸部が突出しており、前記ワイパの前記凸部が、前記衝撃吸収部材として前記ストッパに当接することが好ましい。
【0013】
これによると、ワイパの端面全面ではなく、ワイパの端面の一部から突出した凸部を衝撃吸収部材とすることで、小さな凸部は変形しやすく、ストッパに当接したときのワイパの振動をより抑制することができ、また、より大きな衝撃を吸収することが可能となる。
【0014】
そして、前記凸部の前記ストッパと当接する当接部とは異なる側部に接触し、前記ストッパに当接したときに生じる前記凸部の曲げを規制する規制部材をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
これによると、凸部は、側部に規制部材が接触して曲げを規制されることで、ワイパの液体噴射面に対して離接する方向にのみ伸縮可能になっている。したがって、ワイパを離間させてストッパに衝突した凸部を曲がることなく確実に圧縮させることができ、全ての衝撃を圧縮により吸収することができる。これにより、ワイパの振動をより一層抑制することができ、また、より一層大きな衝撃を吸収可能となる。
【0016】
また、前記ワイパを保持するワイパホルダをさらに備え、前記規制部材は、前記ワイパホルダと一体的に形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明では、凸部の曲げを規制する規制部材をワイパホルダと一体的に形成している。したがって、ワイパに対してワイパホルダを精度よく位置決めすれば、ワイパに対して規制部材も精度よく位置決めされ、確実に凸部の曲げを規制することができる。また、規制部材が外れたり、位置がずれたりしにくい。
【0018】
そして、前記凸部は、前記ワイパ及び前記当接部を連結し、前記当接部よりも幅が小さく、前記ワイパ及び前記当接部に対して凹んだ形状を有する連結部をさらに有しており、
前記規制部材は、前記連結部を挟むように配置されていることが好ましい。
【0019】
これによると、規制部材が、ワイパ、当接部及び連結部によって囲まれるように配置されている。したがって、ワイパを離間させて当接部をストッパに当接させたときに、当接部の、離接する方向に関してストッパと反対側の面に規制部材が接触することになり、凸部と一体になったワイパが規制部材に対してストッパから離れる方向へ移動するのを規制することができ、且つ、当接部だけを変形させることができる。また、凸部と規制部材が交差する方向に関して接触することになり、凸部の曲げを規制することができる。
【0020】
また、前記衝撃吸収部材は、弾性材料からなり、前記衝撃吸収部材には、前記ワイパが前記交差する方向に貫通した孔が形成されていることが好ましい。
【0021】
これによると、凸部の剛性が小さくなって、ワイパの振動をより一層抑制することができ、また、より一層大きな衝撃を吸収可能となる。
【0022】
さらに、前記衝撃吸収部材の前記ストッパと当接する当接部とは異なる側部には、前記ストッパに当接する端部に向かって段差または凹部が延在しており、前記段差または前記凹部によって前記側面に谷状の稜線が形成されていることが好ましい。
【0023】
これによると、液体噴射面を拭き取ることでワイパに付着した液体が、衝撃吸収部材に形成された稜線の毛管力で引き込まれやすくなり、ワイパに付着した液体を取り除くことができる。
【0024】
このとき、前記ストッパには、前記衝撃吸収部材の前記稜線に連なった溝が形成されていることが好ましい。
【0025】
これによると、ワイパから衝撃吸収部材の稜線を介して流れた液体が、ストッパ側に流れやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
ストッパへのワイパの衝撃を衝撃吸収部材で吸収することで、ストッパに当接したときのワイパの振動を抑制することができ、ワイパに付着した液体が周囲に飛び散るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】ワイパを走査方向から見た図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】ワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【図6】ワイパを上昇させる過程について説明する図である。
【図7】ワイパを降下させる過程について説明する図である。
【図8】変形例1におけるワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【図9】変形例2におけるワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【図10】変形例3におけるワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【図11】変形例4におけるワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【図12】変形例5におけるワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。図2は、図1のA−A線矢視図である。なお、図1の平面図における前後左右の方向を前後左右と定義するとともに、図1の紙面垂直方向(図2の正面図における上下方向)を上下方向と定義し、以下の説明にて適宜使用する。また、図2においては、その内部が図示されるように後述するメンテナンスベース20を仮想的に2点鎖線で示している。
【0029】
図1、図2に示すように、インクジェットプリンタ1(液体噴射装置)は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(液体噴射ヘッド)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットヘッド4の液体噴射性能の回復に関する各種メンテナンス作業を行うメンテナンスユニット6などを有している。
【0030】
プラテン2の上面には図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10、11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10、11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、2本のガイドレール10、11は、プラテン2から走査方向に沿って図1の右方に離れた位置(メンテナンスポジション)まで延在しており、キャリッジ3は、プラテン2上の記録用紙Pと対向する領域(記録領域)から、非記録領域である上記メンテナンスポジションまで移動可能に構成されている。
【0031】
また、キャリッジ3には、2つのプーリ12、13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行にともなって走査方向に移動するようになっている。
【0032】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行なインクジェットヘッド4の下面が、複数のノズル16が開口するインク噴射面4a(液体噴射面)となっている。そして、このインク噴射面4aの複数のノズル16から、プラテン2に載置された記録用紙Pに対してインクを噴射する。
【0033】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18、19を有し、これら2つの搬送ローラ18、19によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向(図1の前方)に搬送する。
【0034】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18、19によって記録用紙Pを搬送方向に搬送することにより、記録用紙Pに所望の画像や文字などを印刷する。
【0035】
メンテナンスユニット6は、インクジェットヘッド4内に混入した異物や気泡などを取り除くために、ノズル16からインクを吸引排出させる吸引パージや、インク噴射面4aに付着したインクの拭き取りを行い、インクジェットヘッド4のインク噴射性能の回復及び維持を図るものである。
【0036】
メンテナンスユニット6は、キャリッジ3の走査方向の移動軌跡上であって、走査方向に関してプラテン2から図1の右方に離れた位置、すなわち、インクジェットヘッド4がキャリッジ3とともに非記録領域であるメンテナンスポジションまで移動してきたときにインク噴射面4aと対向する位置に配置されている。メンテナンスユニット6は、メンテナンスベース20と、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aに当接して複数のノズル16を覆う吸引キャップ21と、吸引キャップ21に接続された吸引ポンプ23と、吸引パージ後にインク噴射面4aに付着したインクを拭き取るためのワイパ70などを有している。
【0037】
まず、吸引キャップ21について説明する。吸引キャップ21は、ゴムや合成樹脂などの可撓性材料で形成され、メンテナンスベース20に対して上下方向に移動可能に取り付けられている。そして、吸引キャップ21は、インクジェットヘッド4がメンテナンスポジションにあるときに、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aと対向する。この状態で、吸引キャップ21は、図示しない昇降モータによって上方に駆動されることにより、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aに密着し、複数のノズル16を覆う。
【0038】
そして、吸引キャップ21がインク噴射面4aに密着してノズル16を覆っている状態で、吸引ポンプ23が駆動されると、吸引キャップ21とインク噴射面4aによって画定された密閉空間内の空気が吸引されて圧力が低下するため、インクジェットヘッド4内のインクがノズル16から吸引キャップ21内へ吸引排出される(吸引パージ)。これにより、ノズル16内の増粘インクやインクジェットヘッド4内のインク流路に混入している気泡を、インクとともにノズル16から排出することが可能となっている。なお、この吸引パージは、インクジェットヘッド4内のインク流路に気泡が混入しやすいカートリッジ交換後や所定時間おきなどに行われる。
【0039】
次に、ワイパ70について説明する。図3は、ワイパを走査方向に沿って図1の右方から左方に向かって見た図である。図4は、図3のB−B線断面図である。図5は、ワイパの衝撃吸収部近傍の拡大斜視図である。なお、図3〜図5に示すように、必要に応じて、搬送方向をX方向、走査方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。また、図5においては、図面が見やすくなるようにメンテナンスベース20を2点鎖線で図示している。
【0040】
図1〜図3に示すように、ワイパ70は、ゴムや合成樹脂などの伸縮性に富む弾性材料からなる平板状の部材であり、搬送方向(X方向)の寸法がインク噴射面4aの幅と同じかそれよりも大きくなって、鉛直方向と平行になるように立設されている。また、ワイパ70は、メンテナンスベース20内の、吸引キャップ21よりも走査方向に関する印刷領域側に吸引キャップ21と隣接して配置されて、メンテナンスベース20に対して上下方向に移動可能に取り付けられており、メンテナンスベース20に設けられたワイパ駆動機構65により、インク噴射面4aに接触するワイピング位置とインク噴射面4aから離間した待機位置とにわたって上下に昇降駆動される。
【0041】
そして、図3〜図5に示すように、ワイパ70は、合成樹脂などからなるワイパホルダ71に保持されている。ワイパホルダ71は、ワイパ70を下面から保持しており、ワイパ70のX方向(図3の左右方向)に間隔をあけて配置され、X方向と直交するY方向に凹んだ2つの凹み72を有している。そして、ワイパホルダ71の凹み72を挟んだ両側の部分は下方に突出しており、この突出部73(規制部材)は、先端に向かうにつれて厚みが薄くなるように傾斜している。
【0042】
また、ワイパ70は、X方向に関してワイパホルダ71の凹み72と同じ位置において、ワイパ70の下面からワイパホルダ71よりも下方までそれぞれ突出した2つの衝撃吸収部74(凸部)を有している。衝撃吸収部74は、凹み72のX方向の幅よりも若干小さい幅であり、凹み72内に配置された連結部74aと、連結部74aの端部に接続され、メンテナンスベース20に設けられたリブ24(ストッパ)の先端(上面)に当接する当接部74bとを有している。
【0043】
メンテナンスベース20のリブ24の幅は、当接部74bの幅よりも小さくなっている。また、メンテナンスベース20は、ワイパ70に付着したインクを吸収するための多孔質材などからなるフォーム81(図5参照)を有しており、このフォーム81はワイパ70からリブ24を介して流れたインクを吸収可能な位置に配置されている。本実施形態では、フォーム81は、メンテナンスベース20のリブ24を支持する板部材25(図5参照)の斜面25aの先端に接続されている。なお、フォーム81は、ワイパ70からリブ24を介して流れたインクを吸収可能であれば、いかなる位置に配置されていてもよく、例えば、板部材25の斜面25aの先端の下方に離れて配置されていてもよい。
【0044】
ワイパホルダ71の凹み72を挟んだ2つの突出部73と凹み72に配置された連結部74aとの間には、インクに対して毛管力が作用する程度の幅を有する隙間75が形成されている。また、当接部74bには、Y方向に貫通した貫通孔76と、その側面に貫通孔76を迂回するように、連結部74aと突出部73とが形成する隙間75に連なって、リブ24に至る段差79が延在しており、この段差79の角によって谷状の稜線77とが形成されている。そして、当接部74bには、リブ24の直上に貫通孔76が形成されることで、上下方向(Z方向)の厚みが薄い薄肉部78がリブ24と上下方向に重なるように設けられている。
【0045】
そして、当接部74bに段差79が形成されることで、衝撃吸収部74には走査方向に関して凹んだ凹み80が形成されることになり、この凹み80にワイパホルダ71の突出部73の先端が嵌め込まれて、走査方向及び搬送方向に関して当接部74bと対向している。このような構成によって、連結部74aの裏面(図3の紙面反対側の面)がワイパホルダ71と面接触し、当接部74bの段差79の表面(図3の紙面表側の面)がワイパホルダ71の突出部73と面接触することで、衝撃吸収部74は、Y方向の両側からワイパホルダ71に挟まれている。
【0046】
また、リブ24には、当接部74bの稜線77に連なり、フォーム81に至る溝24aが上下方向に沿って形成されている。これにより、インク噴射面4aを拭き取ることでワイパ70に付着したインクが、2つの突出部73と凹み72に配置された連結部74aとから形成された隙間75、及び、当接部74bに形成された稜線77の毛管力で引き込まれやすくなり、ワイパに付着したインクを取り除くことができる。そして、ワイパ70から当接部74bの稜線77を介して流れたインクが、稜線77に連なる溝24aによってリブ24側に流れやすくなり、フォーム81に流れやすくなる。
【0047】
図3、図4に示すように、ワイパ駆動機構65は、ワイパ70の印刷領域側の側面に接触して、ワイパ70を支持する支持板63と、ワイパ70と支持板63を接続する引張バネ64と、ワイパホルダ71の底面に当接可能なカムフォロア68と、カム面にカムフォロア68が当接した回転カム69とを有している。
【0048】
支持板63は、ワイパ70のX方向に関する幅と同様の幅を有し、メンテナンスベース20に固設されており、ワイパ70の略下半分における印刷領域側の側面と接触している。引張バネ64は、ワイパ70と支持板63の搬送方向に関する両端部においてワイパ70と支持板63とを接続しており、一端がワイパ70の略中央に接続され、他端が支持板63のワイパ70との一端の接続部よりも下方に接続されている。引張バネ64は、支持板63に対してワイパ70を図4の左下方向に付勢している。カムフォロア68は、回転カム69の回転によってカム面に沿って上下方向に移動可能に構成され、その上面がワイパホルダ71の下面に当接可能となっており、ワイパ70をワイピング位置と待機位置とに移動させる。
【0049】
次に、ワイパ70の昇降過程について説明する。まず、ワイパ70を上昇させる過程について説明する。図6は、ワイパを上昇させる過程について説明する図である。図6(a)に示すように、ワイパ70が待機位置に位置するときには、衝撃吸収部74の当接部74bが引張バネ64の付勢力により下方に引っ張られてリブ24に当接しており、ワイパホルダ71にカムフォロア68は当接していない。
【0050】
そして、図6(b)に示すように、回転カム69を回転させてカムフォロア68を上方に移動させると、カムフォロア68はワイパホルダ71に当接し、引張バネ64の付勢力に抗して、ワイパホルダ71及びワイパ70を上方に押し上げる。そして、ワイパ70の印刷領域側の側面における上下方向に関する略中央に形成された凸状の係止部61が支持板63の上面よりも上方に移動すると、ワイパ70は、引張バネ64の付勢力により支持板63側に引っ張られて支持板63と接触する基端を中心に図6(b)の反時計回りに傾く。
【0051】
その後、ワイパ70の係止部61と支持板63が上下方向に沿って重なった状態で、回転カム69を回転させてカムフォロア68を下方に移動させて、カムフォロア68をワイパホルダ71から離すと、ワイパ70の係止部61が支持板63の上面に接触して、ワイパ70の下方への移動を規制する。ワイパ70は、この高さ位置においてその先端がインク噴射面4aに接触可能となっている。これにより、ワイパ70は、インク噴射面4aに接触可能なワイピング位置に位置付けられる。
【0052】
次に、ワイパ70を降下させる過程について説明する。図7は、ワイパを降下させる過程について説明する図である。図7(a)に示すように、ワイピング位置にワイパ70がある状態で、上記吸引パージ後に、インクジェットヘッド4がキャリッジ3とともに印刷領域に向かって走査方向に移動すると、ワイパ70はインク噴射面4aに対して図7(a)の左方から右方に向かう方向(払拭方向)に相対移動することになる。そして、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aに接触し撓んでおり、インクジェットヘッド4が継続して図7(a)の右方から左方に向かう方向(払拭方向と反対方向)に移動することで、インク噴射面4aを払拭方向に払拭し、インク噴射面4aに付着したインクを拭き取る。
【0053】
そして、図7(b)に示すように、インクジェットヘッド4をキャリッジ3とともに先ほどまでとは反対方向の走査方向に関する吸引キャップ21側に移動させて、メンテナンスポジションに戻そうとする。すると、ワイパ70は、インク噴射面4aに対して払拭方向と反対方向に相対移動する。このとき、撓んだワイパ70は、基端を軸として図7(b)の時計周り方向に傾く。そして、ワイパ70の係止部61と支持板63の接触が解除されると、引張バネ64の付勢力により、ワイパ70は係止部61と基端が支持板63に接触して摺動しながら下方に移動する。すなわち、ワイパ70は払拭方向と反対方向に相対移動すると同時に、下方の退避位置に向かって移動する。
【0054】
そして、衝撃吸収部74の当接部74bが引張バネ64の付勢力により下方に引っ張られてリブ24に当接することで、図7(c)に示すように、ワイパ70は、インク噴射面4aから復元しながら離れて待機位置に移動して、払拭動作が終了する。なお、上記では、インクジェットヘッド4の走査方向に関する移動によってワイパ70をワイピング位置から待機位置に移動させる過程について説明したが、ワイパ駆動機構65によるワイパ70をワイピング位置から待機位置に移動させる過程については、従来公知の技術(例えば、特開2005−246929号公報)であるため、その説明を省略する。
【0055】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1によると、インク噴射面4aを拭き取ったワイパ70をインク噴射面4aから離間させてメンテナンスベース20のリブ24に当接させるときに、ワイパ70がリブ24に直接衝突するのではなく、衝撃吸収部74(当接部74bの薄肉部78)に衝突して、この衝撃吸収部74を介してリブ24に当接することになる。これにより、ワイパ70の衝撃は衝撃吸収部74に吸収されることになり、リブ24に当接したときのワイパ70の振動を抑制することができ、ワイパ70に付着したインクが周囲に飛び散るのを防止することができる。
【0056】
また、ワイパ70が弾性材料からなり、このワイパ70と一体的に衝撃吸収部74を形成している。これにより、弾性体からなりワイパ70と一体となった衝撃吸収部74でワイパ70によるリブ24への衝撃を吸収することができ、衝撃吸収部74を別個に形成する必要がない。また、ワイパ70と別部材で衝撃吸収部74を形成する場合と比較して、衝撃吸収部74が衝突により外れるおそれがない。
【0057】
さらに、ワイパ70の端面全面ではなく、ワイパ70の端面の一部から突出した衝撃吸収部74をリブ24に当接させると、衝撃吸収部74の剛性が小さくなって、リブ24に当接したときのワイパ70の振動をより抑制することができ、また、より大きな衝撃を吸収することが可能となる。
【0058】
加えて、衝撃吸収部74には、X方向に貫通した貫通孔76が形成されて、薄肉部78が設けられている。これにより、衝撃吸収部74の剛性が小さくなって、ワイパ70の振動をより一層抑制することができ、また、より一層大きな衝撃を吸収可能となる。また、衝撃吸収部74の貫通孔76と上下方向に沿って重なる位置に幅の狭いリブ24を当接させることで、衝撃吸収部74を変形させやすくすることができる。
【0059】
また、ワイパホルダ71の突出部73により、衝撃吸収部74は曲げを規制されているため、上下方向にのみ伸縮可能になっている。したがって、ワイパ70をワイピング位置から待機位置に移動させたときに、リブ24に衝突した衝撃吸収部74を曲がることなく確実に圧縮させることができ、ワイパ70の振動をより一層抑制することができ、また、より一層大きな衝撃を吸収可能となる。なお、衝撃吸収部74を形成する材料を変えることで衝撃吸収部74のヤング率を変えたり、貫通孔76の上下方向に関する大きさや形成する高さ位置を変えることで薄肉部78の厚みを変えたりすることで、吸収可能なワイパ70による衝撃の大きさを適宜設定することができる。
【0060】
さらに、衝撃吸収部74の曲げを規制する突出部73はワイパホルダ71と一体的に形成されている。したがって、ワイパ70に対してワイパホルダ71を精度よく位置決めすれば、ワイパ70に対して突出部73も精度よく位置決めされ、凹み80に突出部73を嵌め込むことができ、確実に衝撃吸収部74の曲げを規制することができる。また、衝撃吸収部74と一体になったワイパ70が突出部73に対してリブ24から離れる方向へ移動するのを規制することができる。さらに、突出部73が外れたり、位置ずれしにくい。
【0061】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0062】
本実施形態においては、衝撃吸収部74は、ワイパ70と一体的に形成されていたが、ワイパ70と別部材で形成されていてもよい。以下、一例について説明する。
【0063】
例えば、図8に示すように、衝撃吸収部174は、ワイパ70とは異なる弾性部材により形成されてもよい(変形例1)。このとき、衝撃吸収部174とワイパ70は、同じ弾性材料であってもよいし、ヤング率の異なる弾性材料であってもよい。また、図9に示すように、衝撃吸収部274は、スポンジなどの多孔質部材により形成されてもよい(変形例2)。さらに、図10に示すように、衝撃吸収部274は、上下方向に伸縮可能に配置されたバネであってもよい(変形例3)。なお、上述した衝撃吸収部174、274、374は、ワイパホルダの下面に取り付けられていてもよいし、リブの上面に取り付けられていてもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、衝撃吸収部74は、ワイパ70の下面の一部から突出していたが、図11に示すように、ワイパ470の下面470aの全面が衝撃吸収部であってもよい(変形例4)。このとき、ワイパホルダ471は、ワイパ470の側面に貼り付けられている。そして、ワイパ470の下面の一部がリブ424に接触する。
【0065】
さらに、本実施形態及び上記変形例においては、衝撃吸収部74、174、274、374は、ワイパとリブとの間に配置されていたが、ワイパまたはリブに衝撃吸収部が設けられていればよく、図12に示すように、衝撃吸収部574は、リブ524内に配置されて、ワイパとリブが直接接触してもよい(変形例5)。
【0066】
さらに、本実施形態においては、衝撃吸収部74をメンテナンスベース20の幅の狭いリブ24に当接させて衝撃を局所的に吸収していたが、リブ24を設けずに、メンテナンスベース20に設けられた平面に衝撃吸収部74を当接させてもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、衝撃吸収部74の突出部73に段差79を設けることで稜線77を形成して毛管力を作用させていたが、衝撃吸収部74の突出部73に溝を設けることで稜線を形成して毛管力を作用させてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態においては、ワイパ70を引張バネ64の付勢力で下方に移動させてリブ24に当接させていたが、引張バネ64などの下方に移動させる手段を設けずに、自重により落下させてリブ24に当接させてもよい。
【0069】
また、本実施形態においては、衝撃吸収部74の突出部73には、走査方向に貫通して貫通孔76が形成されていたが、上下方向に関して厚みの薄い薄肉部78を形成可能であれば、貫通孔は走査方向に限らず搬送方向などいかなる方向に貫通して形成されてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態においては、ワイパ70によるインク噴射面4aの払拭動作のタイミングとして、ノズル16からインクを吸引排出する吸引パージ後の払拭動作について説明したが、印刷動作を複数回行って、インク噴射面4aにノズル16から排出されたインクの一部が付着している可能性が高いときなど、いかなるタイミングで行ってもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、シリアル式のインクジェットヘッド4の走査方向の移動を利用して、インク噴射面4aに対してワイパ70を走査方向に平行な払拭方向に相対移動させていたが、例えば、ライン式のインクジェットヘッドの場合などには、ワイパ70を払拭方向に移動させる手段を設けて、インク噴射面4aに対してワイパ70を払拭方向に移動させる構成であってもよい。
【0072】
以上説明した実施形態及びその変更形態は、記録用紙Pにインクを噴射して画像などを記録するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明の適用対象はこのようなインクジェットプリンタには限られず、様々な技術分野で用いられる液体噴射装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンタ
3 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
4a インク噴射面
16 ノズル
24 リブ
70 ワイパ
74 衝撃吸収部
74b 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射面に接触しながら、前記液体噴射面に対して前記液体噴射面に沿った方向に相対移動することで、前記液体噴射面に付着した液体を拭き取るワイパと、を備え、
前記ワイパは、前記液体噴射面に対して前記液体噴射面と交差する方向に移動して、前記液体噴射面に対して離接可能であり、
前記液体噴射面から離間した前記ワイパと当接するストッパと、
前記ワイパまたは前記ストッパに形成され、前記ワイパが前記ストッパに衝突するときの衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、を備えていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記ワイパは、弾性材料からなり、
前記衝撃吸収部材が、前記ワイパと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ワイパは、端面から凸部が突出しており、
前記ワイパの前記凸部が、前記衝撃吸収部材として前記ストッパに当接することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記凸部の前記ストッパと当接する当接部とは異なる側部に接触し、前記ストッパに当接したときに生じる前記凸部の曲げを規制する規制部材をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記ワイパを保持するワイパホルダをさらに備え、
前記規制部材は、前記ワイパホルダと一体的に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記ワイパ及び前記当接部を連結し、前記当接部よりも幅が小さく、前記ワイパ及び前記当接部に対して凹んだ形状を有する連結部をさらに有しており、
前記規制部材は、前記連結部を挟むように配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材は、弾性材料からなり、
前記衝撃吸収部材には、前記ワイパが前記交差する方向に貫通した孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記衝撃吸収部材の前記ストッパと当接する当接部とは異なる側部には、前記ストッパに当接する端部に向かって段差または凹部が延在しており、前記段差または前記凹部によって前記側面に谷状の稜線が形成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記ストッパには、前記衝撃吸収部材の前記稜線に連なった溝が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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