説明

液体散布支援システム

【課題】複数のハウス棟にわたって散水ノズルを移動させることを自動化する。
【解決手段】多棟ハウス(10)で構成された圃場の任意箇所へ移動可能な移動小体(20)に配設されたノズル部(21)を移動しながら液体を散布可能にする液体散布支援システム(100)であって、ノズル部(21)の移動を制御する制御手段と、圃場における複数または全てのハウス棟(1〜Z)を経由するように延設された本線軌道(30)と、制御手段の制御により本線軌道(30)上を移動小体(20)と合体して自走可能な移動母体(40)と、本線軌道(30)に交差しハウス棟(1〜Z)ごとに延設された分岐軌道(50)と、前記制御手段により任意選択された前記分岐軌道(50)に接続可能な位置で移動母体(40)を停止させるとともに移動小体(20)を分岐軌道(50)に沿って走行させるように軌道変更する軌道変更手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は散水装置に関し、特に多棟ハウスで構成された圃場の任意箇所へ散水ノズルを移動可能にする液体散布支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウス内の全域に均一に散水を行うビニールハウス用散水装置があった(特許文献1)。すなわち、ビニールハウス内に設置したガイドレール(棟内レール)に沿って散水パイプを移動させ、ハウス内の農作物に対し散水を行うビニールハウス用散水装置において、適宜間隔を隔てて複数の放水口を備えた給水パイプを散水パイプの移動方向に延在するよう配設し、給水パイプの下方位置に、散水パイプに追従して移動する貯水槽を設ける一方、貯水槽と係合して放水口を開閉するバルブ装置を各放水口に設け、給水パイプからの供給水を貯水槽に暫時貯留した後、その貯水槽から散水パイプに給水を行うというものである。
【0003】
なお、本発明に関連する公知技術文献としては下記特許文献1がある。
【特許文献1】特開平9−84471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたビニールハウス用散水装置では、複数のハウス棟にわたって散水ノズルを移動させる技術までは開示されていなかった。したがって、複数のハウス棟にわたって散水ノズルを移動するためには、以下の手順による繰り返し作業を余儀なくされていた。
【0005】
1.第1のハウス棟で灌水等を終了すると、それに用いた散水機を人手により棟内レールから外す。
2.棟内レールから外した散水機を、キャリアカー等に載せて第2のハウス棟まで運び、そこの棟内レールに移設して灌水等を行う。
【0006】
以上の現状に鑑み、本発明は以下の効果を得るためになされたものである。
1.各ハウス棟それぞれの散水機を不要とし、コストダウンを図る。
2.既設の散水機等も容易に流用可能とする。
3.複数のハウス棟にわたって灌水、液体施肥、薬液撒布等が自動化され、運営費のコストダウンを図る。
【0007】
このように、多棟ハウスで構成された圃場の任意箇所へ液体散布するノズル部を移動可能にする液体散布支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、多棟ハウス(10)で構成された圃場の任意箇所へ移動可能な移動小体(20)に配設されたノズル部(21)を移動しながら液体を散布可能にする液体散布支援システム(100)であって、前記ノズル部(21)の移動を制御する制御手段と、前記圃場における複数または全てのハウス棟(1〜Z)を経由するように延設された本線軌道(30)と、前記制御手段の制御により前記本線軌道(30)上を前記移動小体(20)と合体して自走可能な移動母体(40)と、前記本線軌道(30)に交差し前記ハウス棟(1〜Z)ごとに延設された分岐軌道(50)と、前記制御手段により任意選択された前記分岐軌道(50)に接続可能な位置で前記移動母体(40)を停止させるとともに前記移動小体(20)を前記分岐軌道(50)に沿って走行させるように軌道変更する軌道変更手段と、を備えたことを特徴とする液体散布支援システム(100)である。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、本線軌道(30)は圃場における複数または全てのハウス棟(1〜Z)を経由するように延設されている。この本線軌道(30)上を制御手段に制御された移動母体(40)が、移動小体(20)と合体した状態で自走可能ある。
【0010】
移動小体(20)にはノズル部(21)が配設されており、このノズル部(21)を配設した移動小体(20)と合体した移動母体(40)が本線軌道(30)上を自走することにより、複数または全てのハウス棟(1〜Z)にノズル部(21)を移動させることが可能である。なお、移動小体(20)に配設するノズル部(21)には、既存の散水ノズル等を容易に流用できるので設備投資に重複の無駄が生じない。
【0011】
それぞれのハウス棟(1,2)ごとに分岐軌道(50)が延設されている。この、分岐軌道(50)は本線軌道(30)と交差する。また、軌道変更手段(図4参照)は、制御手段により任意選択されたハウス棟(1,2)にノズル部(21)を移動させるように、本線軌道(30)上を自走する移動母体(40)を軌道変更する。
【0012】
まず、任意選択されたハウス棟(1,2)に向かう分岐軌道(50)に接続可能な位置で移動母体が停止する。ついで、停止中の移動母体(40)から移動小体(20)を分離する。その移動小体(20)を分岐軌道(50)に沿って走行させ、移動小体(20)に配設されたノズル部(21)をハウス棟(1,2)へと移動させる。
【0013】
ノズル部(21)をハウス棟(1,2)へと移動させた手順と逆の手順を経て、分岐軌道(50から本線軌道(30)へとノズル部(21)を戻し、液体散布の完了したハウス棟(1,2)から別のハウス棟(1,2)へとノズル部(21)を移動させることが可能である。
【0014】
このように、本線軌道(30)→第1のハウス棟の分岐軌道(50)→本線軌道(30)→第2のハウス棟の分岐軌道(50)→本線軌道30→第Xのハウス棟の分岐軌道(50)と繰り返して全てのハウス棟(1〜Z)に液体散布することが可能である。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に加えて、前記移動母体(40)には、前記移動母体(40)が前記本線軌道(30)に沿って自走中に前記移動小体(20)を前記移動母体(40)に収納する待機軌道(70)と、前記待機軌道(70)を前記分岐軌道(50)に接続する軌道接続手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体散布支援システム(100)である。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、移動母体(40)はノズル部(21)を配設した移動小体(20)と合体した状態で本線軌道(30)を自走する。移動母体(40)が自走中には移動母体(40)に配設されている待機軌道(70)上に移動小体(20)を係止しておく。
移動母体(40)は、分岐軌道(50)に接続可能な位置で停止し、軌道接続手段により、待機軌道(70)と分岐軌道(40)を接続する。待機軌道(70)上に係止されていた移動小体(20)は接続された分岐軌道(50)に沿ってハウス棟(1,2)の内部を移動しながら液体散布する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る液体散布支援システムによれば、多棟ハウスで構成された圃場の任意箇所へノズル部を走査するように移動自在であり、液体散布を自動化することが可能である。詳しくは、以下の効果が得られる。
【0018】
1.各ハウス棟それぞれの散水機を不要とし、コストダウンが可能である。
2.既設の散水機等も容易に流用可能である。
3.複数のハウス棟にわたって灌水、液体施肥、薬液撒布等が自動化され、運営費のコストダウンが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。なお、各図にわたり、同一効果の部位には同一符号を付して、重複説明を避ける。
図1は本発明の実施形態に係る液体散布支援システム(以下、「本システム」という)の概要を示す斜視図である。
【0020】
図1に示す本システム100は、周知のビニールハウス等を連立して構成された圃場(以下、「多棟ハウス」ともいう)10内における任意のハウス棟1,2(第1,第2のハウス棟)、または全てを走査するように、ノズル部21を自動的に移動させながら、灌水、液体施肥、薬液撒布等を支援するものである。
【0021】
本システム100における本線軌道30は、圃場を構成する全てのハウス棟1〜Zを経由するように、多棟ハウス10の片側寄りの高い位置で、そこの骨材である柱や梁等に架設された、ほぼ水平かつ平行な二条のレールにより延設されている。
【0022】
なお、本線軌道30を構成する2条のレールは、それぞれ断面がコの字状のレール(みぞ形鋼)の開口部が対向した状態で設置されているが、他のレール形態、例えば、山形鋼やパイプであっても構わない。要するに金属型材・形鋼でレールを形成し、それに車輪と台車(後記する移動母体)を適合させればよい。
【0023】
また、それぞれのハウス棟1,2,…,Xごとに、それらの骨材であるキール部材に懸垂架設された分岐軌道50が奥行き方向に延設されている。この、分岐軌道50は本線軌道30と交差するが、同一の移動体がそのままの状態で異なる軌道に相互乗り入れする構成ではない。すなわち、搬送すべきノズル部21と一体構成である移動小体20が自力走行する分岐軌道50と、移動小体20を収容した移動母体40が自力走行する本線軌道30との区別がある。
【0024】
この交差点では、後記説明する軌道変更手段(図4参照)が、不図示の制御手段により任意選択されたハウス棟1,2にノズル部21を移動させるように、本線軌道30上を自走する移動母体40を軌道変更する。ただし、図1では、既に選択されたハウス棟1に向けて軌道変更されたノズル部21が、自走可能な移動小体20に懸垂されて、緩やかに移動中であることを示している。
【0025】
分岐軌道50は金属パイプによるモノレールを形成し、自走式の移動小体20が移動と停止を可能にする。詳しくは、分岐軌道50を形成する金属パイプが、その下面を支持するL金具により、ハウス棟1〜Xの骨材であるキール部材に懸垂架設されている。
【0026】
なお、ここでいうモノレールとは、丘陵地帯に展開する果樹圃場等において、収穫物等を僅かな人と共に運搬する目的で設置されるエンジン駆動式小規模モノレールに近いものであり、金属パイプ等が支持された極めて簡素な軌道と、その軌道に沿って移動する移動体により構成されたものである。
【0027】
一方、移動母体40は、制御手段に制御され、本線軌道30上を、移動小体20と合体した状態で自走可能ある。すなわち、本線軌道30に沿って圃場を構成する全てのハウス棟1,2,…,Zにわたって移動小体20を搬送可能である。ただし、図1に示す移動小体20は移動母体40から離脱し、ハウス棟1の長手方向に往来可能な懸垂式モノレールに構成された分岐軌道50に沿って自走中である。
【0028】
移動小体20にはノズル部21が懸垂状態で配設されており、このノズル部21を配設した移動小体20と合体した移動母体40が本線軌道30上を自走することにより、複数または全てのハウス棟1〜Zにノズル部21を移動させることが可能である。なお、移動小体20、および移動母体40の自走手段としてそれぞれに内蔵されたモータ、およびそのモータによる輪軸駆動機構、駆動輪が配設され、周知の給電、および制御が施される。
【0029】
ノズル部21は液送配管を兼用した水平竿にノズル22を等間隔に多連装している。この水平竿の中央を液送配管兼用の懸垂竿で懸垂保持され、懸垂竿の上部が移動小体20に固定され、その固定部にホース23の供給先端部が接続され、散布すべき液体が供給される。
【0030】
ホース23の供給元端部は不図示の液送手段として地上に固定されたポンプやタンク等に接続されている。ホース23の途中は、適宜間隔ごとの懸垂箇所24に吊られ、分岐軌道50をカーテンレール状に利用して受動的に移動自在であり、伸展と畳み込みを自在にして配設されている。
【0031】
すなわち、ホース23の液送距離が最長の場合に、直線に近く伸展し、そうでない場合は、懸垂箇所および、その中間ごとに屈曲し、ジグザクに畳み込まれるので、地上に届くまで垂れず圃場内の農作物を引きずり倒す害や、もつれたりする害もない。なお、移動小体20、および移動母体40それぞれのモータに対する給電線、および制御線をホース23と束ねてケーブルを形成してもよい。その場合、移動小体20から移動母体40への接続には相当の電極を備えて脱着容易なコネクタを用いる。
【0032】
また、移動小体20に配設するノズル部21には、既存の散水ノズル等を容易に流用できるので設備投資に重複の無駄が生じない。なお、移動小体20に配設された既存の散水ノズル等に類似する構造のノズル部21、ホース23、液送手段、およびノズル部21がハウス棟1内を緩やかに走査することにより、ハウス棟1内部にくまなく液体散布する構成、および動作に関しては、特許文献1でも類似のものを既に説明したとおりである。
【0033】
つぎに、本システム100のおおまかな動作に関し、軌道変更手段(特に図4参照)を主要部とする観点から説明する。軌道変更手段は、本線軌道30、分岐軌道50、制御手段、移動母体40、および移動小体20により構成されている。
【0034】
ここで、軌道変更手段の動作は、ハウス棟1,2を任意選択することにより決定される。まず、ユーザが予め制御手段に設定するか、あるいは適宜手動操作で任意選択されたハウス棟1,2に向かう分岐軌道50に接続可能な位置で移動母体40が停止する。
【0035】
ついで、停止中の移動母体40から移動小体20を分離する。このとき、軌道変更手段の作用により、移動小体20は分岐軌道50に沿って走行するように軌道変更するので、移動小体20に配設されたノズル部21をハウス棟1へと移動させる。そうすると、移動小体20が、分岐軌道50を一往復することにより、ノズル部21がハウス棟1を緩やかに走査してハウス棟1内にくまなく液体散布することが可能である。
【0036】
ハウス棟1に液体散布の終了したノズル部21は、移動小体20による搬送の途中で、本線軌道30から分岐軌道50へ軌道修正されてハウス棟1へ移動した手順と逆の手順を経て、分岐軌道50から本線軌道30へ戻される。そうすると、液体散布の完了したハウス棟1から別のハウス棟2へとノズル部21を移動させることが可能である。
【0037】
このように、移動小体20によるノズル部21の搬送経路は、本線軌道30→分岐軌道50(第1のハウス棟1を一往復)→本線軌道30→分岐軌道50(第2のハウス棟2を一往復)→本線軌道30→分岐軌道(第Xのハウス棟Xを一往復)と、全てのハウス棟1,Xを走査することにより、多棟ハウスに跨る圃場の全てにくまなく液体散布することが可能である。
【0038】
図2は移動母体の分解斜視図である。図2に沿って移動母体40の構成と動作を併せて説明する。図2に示すように、移動母体40は金属型材・形鋼でフレームを形成された自走式2軸4輪構造のシャーシ41に、従属フレーム42を微動可能に従属し、モータおよび減速ギア等による駆動手段43で駆動輪44を駆動するように構成され、本線軌道30に沿って走行自在である。
【0039】
駆動手段43は制御手段により適宜制御されるほか、本線軌道30と自走式2軸4輪構造、さらに分岐軌道50と移動小体20に関しては、(ジェットコースターや)モノレール等を含む周知の鉄道技術、屋内クレーン装置等の応用である。そして、本線軌道30、分岐軌道50、またはホース23の付帯設備から、電源および制御信号を移動小体20と移動母体40のモータが受ける点も類似しているので、詳細な説明を省略する。
【0040】
シャーシ41には、従属フレーム42が微動可能に支持されている。すなわち、ホイールベースよりも外側で、車軸と並行してシャーシ41に固設された2本のガイドロッド45に、スライドブッシュ46が車軸方向の摺動を自在に嵌装されている。この従属フレーム42を微動させる目的は、軌道接続手段の動作を確実にするためであり、図3〜図6に沿って後記説明する。
【0041】
シャーシ41の中心枠の中程に電動(プランジャ)式のシリンダ47が配設され、制御手段の制御信号に応じてシャーシ41と従属フレーム42の位置関係を図2の矢印方向に微動させることが可能である。
【0042】
また、従属フレーム42には、その進行方向から緩慢な曲線部を介在させて直角に曲げられた待機軌道70が、移動小体20を待機させて余りある長さだけ配設されている。詳しくは、待機軌道70を形成する金属パイプが、その下面を支持するL金具により、従属フレーム42の下面に懸垂固定され、車軸と並行する方向の直線部だけで移動小体20を収納可能であり、本線軌道30と並行する方向の直線部には、ホース23の途中を適宜間隔ごとの懸垂箇所24でカーテンレール状に吊り支えることができるように構成されている。
【0043】
すなわち、待機軌道70は接続凸端71で、分岐軌道50の接続凹端51に、嵌合と離脱を自在に接続可能な金属パイプによるモノレールを形成し、移動小体20の移動を可能にするが、移動小体20および懸垂箇所24に吊られて畳み込まれたホース23を移動母体40に収納することを目的としている(図3〜図5参照)。また、移動小体20とホース23の一部を移動母体40に収納して待機状態のまま、移動母体40ごと本線軌道30に沿って大きく移動することが可能である。

【0044】
図3は移動小体を収納した移動母体の進行側面図であり、ノズル部の正面図である。
図4は図3に示したものの平面図である。
図5は図3、図4は示したものの正面図である。
図6は図3におけるA−A矢視断面図である。
【0045】
以下、図1〜図6を参照しながら、軌道変更手段、および軌道接続手段に関し、構成と動作を併せて説明する。なお、請求項1に記載した「軌道変更手段」とは鉄道でいう転轍機(ポイント)を任意に選択して軌道変更の指令を実現させるものを意味する抽象概念である。また、請求項2に記載した「軌道接続手段」とは転轍機の一部機構を意味する。
【0046】
図3〜図6に示すように、軌道変更手段、および軌道接続手段は、本線軌道30、分岐軌道50、移動母体40、移動小体20、および不図示の制御手段により構成されている。図2に沿って説明したように、移動母体40はシリンダ47が配設されたシャーシ41と、シャーシ41の車軸と並行に微動することが可能にシャーシ41に係合された従属フレーム42により構成されている。
【0047】
図3〜図6に示す移動母体40は、その下部に配設された待機軌道70に、移動小体20を収納するように後退(図3の手前方向)させている。そのとき、懸垂箇所24に吊られて畳み込まれたホース23も、後退する移動小体20に押されて待機軌道70にほとんど収納されるので、分岐軌道50には何も残らない。
【0048】
ここで、軌道変更手段の動作を確実にするように、制御手段の制御信号に応じて軌道接続手段がシャーシ41と従属フレーム42の位置関係を図4の矢印方向に微動させ、待機軌道70の接続凸端71を、分岐軌道50の接続凹端51に対して、嵌合と離脱を自在にする。
【0049】
すなわち、軌道変更手段が軌道変更するときは、軌道接続手段が待機軌道70を、任意の分岐軌道50に嵌合接続するようにシリンダ47を作動する。そうすると、移動小体20は待機軌道70と分岐軌道50の間を往来可能となる。
【0050】
このとき、移動母体40に固定された待機軌道70の接続凸端71と、ハウス棟1,2,…,Xの何れかに固定された分岐軌道50の接続凹端51とは、軌道接続手段の作動により嵌合され固定されている。したがって、移動母体40は動きを止められ、移動小体20が分岐軌道50から戻ってくるまでの間、本線軌道30上で待機することになる。
【0051】
一方、懸垂箇所24に吊られて畳み込まれたホース23、および移動小体20を待機軌道70に待機させた状態(図3,図4参照)において、軌道変更手段が軌道変更しないときは、軌道接続手段が待機軌道70と分岐軌道50を切り離した状態を維持する(図4の左上、符号51,71参照)ようにシリンダ47を作動する。
【0052】
このとき、移動小体20その他を、待機軌道70と分岐軌道50の間で往来させる必要はなく、移動母体40は移動小体20その他が収納された待機状態を維持し、本線軌道30に沿って大きく移動することが可能である。
【0053】
以上のように、本システム100によれば、多棟ハウス10で構成された圃場の任意箇所へノズル部21を走査するように移動自在であり、液体散布を自動化することが可能である。
【0054】
詳しくは、以下の効果が得られる。
1.各ハウス棟それぞれの散水機を不要とし、コストダウンが可能である。
2.既設の散水機等にも容易に流用可能である。
3.複数のハウス棟にわたって灌水、液体施肥、薬液撒布等が自動化され、運営費のコストダウンが可能である。
【0055】
なお、多棟ハウス10はビニールハウスに限定するものではなく、ガラス張りその他のタイプも含まれており、また、直線的な連立である必要もない。したがって、本線軌道30も各ハウス棟1,2,…,Xが鉄道の駅のように接続されていれば曲線であっても構わない。さらに、本線軌道30および分岐軌道50の支持構造もビニールハウスの骨材、特にキール材等に懸垂架設する構造である必要もなく、地上に敷設された軌道を走行する移動体にノズル部21を植設した構成であってもよい。
【0056】
そして、ここでいう圃場とは、多棟ハウス10の内部で作物を育成するための構成であれば、地上から離れた棚に載置された苗床、鉢、きのこ栽培用ほだ木等のいずれであっても構わない。さらに、植物育成以外の工業用途に適用できる可能性もある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本システムの概要を示す斜視図である。
【図2】移動母体の分解斜視図である。
【図3】移動小体を収納した移動母体の進行側面図であり、ノズル部の正面図である。
【図4】図3に示したものの平面図である。
【図5】図3、図4に示したものの正面図である。
【図6】移動母体の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,2,X (第1,第2,第Xの)ハウス棟
10 多棟ハウス
20 移動小体
21 ノズル部
22 ノズル
23 ホース
24 懸垂箇所
30 本線軌道
40 移動母体
41 シャーシ
42 従属フレーム
43 駆動手段
44 駆動輪
45 ガイドロッド
46 スライドブッシュ
47 シリンダ
50 分岐軌道
51 接続凹端
70 待機軌道
71 接続凸端
100 液体散布支援システム(本システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多棟ハウス(10)で構成された圃場の任意箇所へ移動可能な移動小体(20)に配設されたノズル部(21)を移動しながら液体を散布可能にする液体散布支援システム(100)であって、
前記ノズル部(21)の移動を制御する制御手段と、
前記圃場における複数または全てのハウス棟(1〜Z)を経由するように延設された本線軌道(30)と、
前記制御手段の制御により前記本線軌道(30)上を前記移動小体(20)と合体して自走可能な移動母体(40)と、
前記本線軌道(30)に交差し前記ハウス棟(1〜Z)ごとに延設された分岐軌道(50)と、
前記制御手段により任意選択された前記分岐軌道(50)に接続可能な位置で前記移動母体(40)を停止させるとともに前記移動小体(20)を前記分岐軌道(50)に沿って走行させるように軌道変更する軌道変更手段と、を備えたことを特徴とする液体散布支援システム(100)。
【請求項2】
前記移動母体(40)には、
前記移動母体(40)が前記本線軌道(30)に沿って自走中に前記移動小体(20)を前記移動母体(40)に収納する待機軌道(70)と、
前記待機軌道(70)を前記分岐軌道(50)に接続する軌道接続手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体散布支援システム(100)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−17731(P2008−17731A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190296(P2006−190296)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(591197943)三和サービス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】