説明

液体柔軟剤組成物

【課題】安定性、特に高温での安定性に優れた液体柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(a−1)又は(a−2)で表される特定の化合物(a)と、一般式(b−1)で表される特定のアミノ酸系誘導体(b)とを、それぞれ特定範囲で含有し、且つ(a)/(b)質量比が130/1〜3/1、20℃におけるpHが2〜5である液体柔軟剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料等の繊維製品を対象とした柔軟剤に用いられる柔軟基剤として、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩や3級アミンの酸塩が用いられている。また、柔軟剤には、これら柔軟基剤の他に各種の成分が配合される。
【0003】
特許文献1には、第4級アンモニウム塩とN−アシルアミノ酸エステルを配合したポリアミド系繊維製品の柔軟仕上げ剤組成物が開示されている。特許文献2には特定の持続性香料組成物を含有し、洗濯物上で香料の改善した持続性を発揮する布帛柔軟剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平6−280161号
【特許文献2】特表平10−507793号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分子内にエステル基、アミド基を有する柔軟基剤を含有する液体の柔軟剤組成物では、柔軟基剤の配合量が多いと、特に高温保存で粘度が増加しやすくなる。これに対して、アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤やエチレングリコールなどの溶剤のような、一般に液体柔軟剤組成物の安定化剤として使用されている成分を適用しても十分な解決策とはならない。また、柔軟剤中に含有されている香料成分は、洗濯工程において洗濯槽内に投入されるが、衣料等への吸着は十分でなかった。なかでも、logPow又はClogPが3.0〜5.0の香料成分には、製品や処理後の衣料等に対する賦香の面で有用な成分が多く見出されるため、この香料成分の衣料等に対する吸着率を高めることが望まれる。
【0005】
本発明の課題は、安定性、特に高温での安定性に優れた液体柔軟剤組成物を提供することである。その上で、更に、香料成分の衣類等への吸着率が向上した液体柔軟剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有し、(a)成分の含有量が10〜30質量%、(b)成分が0.08〜5質量%、且つ(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)で130/1〜3/1であり、20℃におけるpHが2〜5である液体柔軟剤組成物に関する。
<(a)成分>
下記一般式(a−1)で表される化合物及び一般式(a−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物。
【0007】
【化3】

【0008】
〔式中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立に、エステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の炭化水素基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくともひとつがエステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の炭化水素基であり、Ra4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X-は、陰イオン基である。〕
<(b)成分>
下記一般式(b−1)で表される化合物。
【0009】
【化4】

【0010】
〔式中、Rb1CO−基は炭素数12〜18のアシル基、Rb2は水素原子、又はメチル基、Rb3はエチレン基、又はプロピレン基、Rb4は炭素数16〜20の炭化水素基、Rb5は水素原子、又は−COO(Rb3O)mb4、lは1又は2の数、n、mはそれぞれ0〜5の数である。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温での増粘や高温保存後の増粘を抑制でき、液体組成物の安定性に優れた液体柔軟剤組成物が提供される。その上で、更に、香料成分の衣類等への吸着率が向上した液体柔軟剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、前記一般式(a−1)で表される化合物及び一般式(a−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であり、前記一般式(a−1)で表される化合物には、一般式(1)中のRa4が炭素数1〜3のアルキル基である化合物〔以下、化合物(a1−1)という〕及び一般式(1)中のRa4が水素原子である化合物〔以下、化合物(a1−2)〕)が存在する。
【0013】
一般式(a−1)及び一般式(a−2)において、Ra1、Ra2及びRa3が示す基は、
(i)エステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の飽和炭化水素基〔以下、基(i)という〕
(ii)エステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の二重結合を1個以上有する不飽和炭化水素基〔以下、基(ii)という〕
(iii)炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基〔以下、基(iii)という〕
(iv)炭素数1〜3のアルキル基〔以下、基(iv)という〕
の何れかであり、少なくともひとつは基(i)及び基(ii)から選ばれる基である。
【0014】
(a)成分は、貯蔵安定性の点から、基(i)と基(ii)との合計モル数に対する基(ii)のモル数の割合が、基(ii)/〔基(i)+基(ii)〕×100で、5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%がより好ましく、15〜50モル%が更に好ましい。
【0015】
更に、(a)成分は、貯蔵安定性を保持する観点から、一般式(a−1)及び一般式(a−2)のRa1、Ra2及びRa3が示す基のうち、エステル基で分断されている二重結合を2個以上有する総炭素数14〜26の不飽和炭化水素基〔以下、基(ii−1)という〕の割合が、基(i)と基(ii)との合計モル数に対して、基(ii−1)/〔基(i)+基(ii)〕×100で、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下がより好ましく、8モル%以下が更に好ましい。
【0016】
一般式(a−1)において、X-で示される陰イオン基としては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸又は炭素数1〜3のアルキル硫酸イオン等が挙げられ、ハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましい。
【0017】
(a)成分は、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルとアルカノールアミン等のアミンとを、エステル化反応又はエステル交換反応させて得ることができるが、上記の好ましい炭化水素組成を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは達成できない場合は、不飽和結合の異性化反応、または蒸留操作、ボトムカット、ボトムカットによるアルキル鎖長の調整、あるいはそれらの脂肪酸の混合により得ることが出来る。
【0018】
また、原料脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル中の、二重結合を2個以上有する不飽和炭化水素基の含有量を制御するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析、特開平6−41578号公報に記載されているようなメチルエステルを減圧蒸留する方法、特開平8−99036号公報に記載されているような選択水素化反応などを行うことができる。
【0019】
エステル化反応又はエステル交換反応において、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、アルカノールアミンのヒドロキシル基、及び1級アミノ基とのモル比は、0.3:1〜1.2:1が好ましく、0.45:1〜1:1がより好ましく、0.5:1〜0.98:1が特に好ましい。
【0020】
一般式(a−1)で表される化合物の4級化反応に用いられるアルキル化剤としては、ジアルキル硫酸(アルキル基の炭素数1〜3)、ハロゲン化アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)等が挙げられる。また、アルキル化剤を用いた4級化反応は、溶媒存在下(例えば、エタノール)でも行うことができるが、合成物の臭い、保存安定性を維持する観点及び/又は不純物の生成を抑える観点から、無溶媒下で合成するのがより好ましい。
【0021】
<(b)成分>
(b)成分は酸性、又は中性アミノ酸と脂肪酸をアシル化し、高級アルコールやアルキレンオキシド等によってエステル化して得られるアミノ酸系誘導体である。
【0022】
(b)成分の好ましい例としては、N−アシロイル(炭素数12〜18)−L−グルタミン酸ジアルキル(炭素数16〜20)エステル、N−アシロイル(炭素数12〜18)−L−グルタミン酸ジ(ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)アルキル(炭素数16〜20)エーテル)エステル、N−アシロイル(炭素数12〜18)−N−メチルアミノプロピオン酸アルキル(炭素数16〜20)エステルである。
【0023】
(b)成分としては、N−ミリストイル−N−メチルアミノプロピオン酸(2−ヘキシルデシル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp5)ステアリルエーテル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp2)ステアリルエーテル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp5)−2−オクチルドデシルエーテル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp2)−2−オクチルドデシルエーテル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステルが好ましい。なお、EOpはエチレンオキシド平均付加モル数の略である(以下同様)。
【0024】
一方、後記記載のlogPow又はClogPが3.0〜5.0の香料成分の衣料への吸着率を向上させる目的では、(b)成分は、N−ミリストイル−N−メチルアミノプロピオン酸(2−ヘキシルデシル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp2)ステアリルエーテル)エステル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(EOp2)−2−オクチルドデシルエーテル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステルが好ましい。
【0025】
<(c)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、貯蔵安定性の向上の点から、(c)成分として、下記一般式(c−1)で表される非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0026】
c1−E−〔(Rc2O)d−Rc3e (c−1)
〔式中、Rc1は、炭素数8〜18、好ましくは8〜16のアルキル基又はアルケニル基である。Rc2は、炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。Rc3は、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。dは、2〜100、好ましくは4〜80、より好ましくは5〜60、特に好ましくは6〜50の数を示す。Eは、−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Eが−O−又は−COO−の場合eは1であり、Eが−CON<又は−N<の場合eは2である。〕
一般式(c−1)で表される化合物の具体例として、以下の式(c−1−1)〜(c−1−4)で表される化合物を挙げることができる。
【0027】
c1−O−(C24O)f−H (c−1−1)
〔式中、Rc1は前記の意味を示す。fは2〜100、好ましくは10〜50の数である。〕
c1−O−[(C24O)g/(C36O)h]−H (c−1−2)
〔式中、Rc1は前記の意味を示す。g及びhはそれぞれ独立に2〜100、好ましくは5〜20の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0028】
【化5】

【0029】
〔式中、Rc1は前記の意味を示す。p、q、r及びsはそれぞれ独立に0〜40の数であり、p+q+r+sは5〜100、好ましくは5〜60の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。Rc2及びRc3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
【0030】
<(d)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(d)成分として、香料組成物を含有することができる。香料組成物の例として、特表平10−507793号公報、特開平8−13335号公報、特開2004−211215号公報、特開2004−211230号公報、特開平8−113871号公報、特開2005−232637号公報記載の香料成分を使用することができる。好ましい香料組成物は、ClogPが3以上の香料成分を30質量%以上含有する香料組成物であり、特に好ましくはClogPが3以上の香料成分を30質量%〜95質量%含有する香料組成物である。更に、好ましい香料組成物は、logPow又はClogPが3.0〜5.0の香料成分〔以下、香料成分1という〕を含む香料組成物〔以下、(d1)成分という〕であり、該(d1)成分は、香料成分1を10質量%以上、更に30質量%以上、より更に30質量%〜95質量%含有することが好ましい。本報におけるlogPow、又はClogPの定義は特表平10−507793号公報に記載の定義と同じである。
【0031】
本発明の液体柔軟剤組成物に、これら香料成分1を含有する香料組成物を用いると、香料成分1の衣料等への吸着率が向上する。
【0032】
香料成分1としては、i)α−ピネン(4.18)、β−ピネン(4.18)、カンフェン(4.18)、リモネン(4.35)、テルピノーレン(4.35)、ミルセン(4.33)、p−サイメン(4.07)から選ばれる炭化水素系香料、ii)サンダルマイソールコア(3.9)、サンタロール(3.9)、l−メントール(3.2)、シトロネロール(3.25)、ジヒドロミルセノール(3.03)、エチルリナルール(3.08)、ムゴール(3.03)、ネロリドール(4.58)から選ばれるアルコール系香料、iii)アルデヒドC−111(4.05)、グリーナール(3.13)、マンダリンアルデヒド(4.99)、シトラール(3.12)、シトロネラール(3.26)、アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.85)、リリアール(3.86)、ジヒドロジャスモン(3.13)、l−カルボン、イオノンα(3.71)、メチルイオノンα(4.24)、メチルイオノンG(4.02)から選ばれるアルデヒド、ケトン系香料、iv)ヘプチルアセテート(3.36)、シトロネリルアセテート(4.20)、ゲラニルアセテート(3.72)、リナリルアセテート(3.50)、エチルシンナメート(3.0)、ベンジルサリシレート(4.2)、イソブチルサリシレート(3.92)から選ばれるエステル系香料、v)チモール(3.40)、バニトロープ(3.11)から選ばれるフェノール系香料、vi)セドロキサイド(4.58)、シトロネリルエチルエーテル(4.36)、アネトール(3.31)、ネロリンヤラヤラ(3.24)、エストラゴール(3.1)、メチルイソオイゲノール(3.0)から選ばれるエーテル系香料を挙げることができる。なお、( )内はlogPow値である〔(d)成分について以下同様〕。
【0033】
特に香料成分1として、リモネン(4.35)、エストラゴール(3.1)、l−メントール(3.2)、シトロネロール(3.25)、シトラール(3.12)、シトロネラール(3.26)、イソブチルサリシレート(3.8)、アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、ジヒドロジャスモン(3.13)、イオノンα(3.71)、メチルイオノンα(4.24)、メチルイオノンG(4.02)、ベンジルサリシレート(4.2)が香り立ちがよいため、また爽やかな香りを繊維製品に付与できるため好適である。
【0034】
本発明では、香料成分1以外の香料成分を含有する香料組成物を使用することが出来る。比較的親油性の高いlogPowが5.0を超える香料成分〔以下香料成分2という〕としては、β−カリオフィレン(6.45)、トリメチルウンデセナール(5.16)、ヘキシルサリシレート(5.09)、アンブロキサン(5.27)、テンタローム(5.7)、パールライド(5.7)等を挙げることができる。
【0035】
さらに、親水性の高いlogPowが3.0未満の香料成分〔以下香料成分3という〕としては、テルピネオール(2.6)、ゲラニオール(2.77)、リナロール(2.55)、ミルセノール(2.61)、ネロール(2.77)、シス−ジャスモン(2.64)、フェニルエチルアセテート(2.13)、アリルアミルグリコレート(2.51)、リファローム(2.26)、シス−3−ヘキシルアセテート(2.34)、スチラリルアセテート(2.27)、o−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、p−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、アセチルオイゲノール(2.83)、シンナミルアセテート(2.35)、オイゲノール(2.40)、イソオイゲノール(2.58)、モスシンス(2.94)、アニソール(2.06)、メチルオイゲノール(2.78)、クマリン(1.4)等を挙げることができる。
【0036】
<(e)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(e)成分として、金属封鎖剤をさらに含有することが、貯蔵安定性の向上の点から好ましい。具体的には、(e)成分としては、下記の化合物を挙げることができる。
(1)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸又はこれらの塩(好ましくは、アルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩)。
(2)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキルグリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸又はこれらの塩(好ましくは、アルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩)。
【0037】
これらの中で特に好ましい(e)成分は、貯蔵安定性の向上の点から、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及び/又はエチレンジアミン4酢酸である。
【0038】
<(f)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、製造直後の粘度の調節、貯蔵安定性を改善する目的で(f)成分として、無機塩や、分子内に炭素数1〜10の炭化水素基とスルホン酸塩およびカルボン酸塩から選ばれる1つ以上のイオン性基とを有する水溶性の有機塩をさらに含有することができる。これらの無機塩及び/又は有機塩は1種以上を使用することができる。無機塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど、有機塩としては、安息香酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウムなどが貯蔵安定性の点から好ましい。
【0039】
<(g)成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(g)成分として、染料を適宜含有することができる。
【0040】
<その他の成分>
本発明の液体柔軟剤組成物は、炭素数2〜6の多価アルコールを含有することもできる。例えば、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。また、(a)成分の分子内にエステル基を含む場合には、貯蔵による加水分解速度がもっとも遅くなるpHに調節する目的で、pH調整剤〔(i)成分〕として、塩酸、硫酸などの無機酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸を配合することができる。
【0041】
<液体柔軟剤組成物>
本発明の液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は10〜30質量%、好ましくは12〜30質量%、より好ましくは12〜28質量%、更に好ましくは12〜25質量%である。(b)成分の含有量は0.08〜5質量%、好ましくは0.08〜4質量%、特にDましくは0.1〜3質量%である。(a)成分と(b)成分の質量比は(a)成分/(b)成分=130/1〜3/1であり、好ましくは100/1〜5/1、より好ましくは60/1〜7.5/1、最も好ましくは60/1〜20/1である。(c)成分の含有量は組成物中、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜6質量%、更に好ましくは1.0〜5質量%である。(d)成分の含有量は組成物中、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.2〜2.8質量%、更に好ましくは0.2〜2.5質量%である。また、(d)成分として(d1)成分を用いる場合、(b)成分と(d1)成分中の香料成分1との質量比は、(b)成分と(d1)成分の質量比は、(d1)成分中の香料成分1との比率として、(b)成分/香料成分1=40/1〜1/30が好ましく、より好ましくは30/1〜1/20、更に好ましくは10/1〜1/5である。(e)成分の含有量は組成物中、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.005〜1質量%、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。(f)成分の含有量は組成物中、好ましくは0.0005〜3質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。(g)成分の含有量は組成物中、好ましくは0〜1質量%、より好ましくは0.0001〜0.5質量%、更に好ましくは0.0001〜0.01質量%である。
【0042】
本発明の液体柔軟剤組成物は水を含有する。通常、水は、組成物の残部である。本発明の液体柔軟剤組成物のpHは20℃で2〜5、好ましくは2〜4.5である。なお、本発明の液体柔軟剤組成物は、衣料、寝具等の繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例及び比較例で用いた(a)成分の合成例を示す。
(合成例1)
牛脂脂肪酸とパーム油由来脂肪酸を質量比で1/1で混合し、部分的に水添した脂肪酸(酸価206、ヨウ素価38、不飽和基を2個有する脂肪酸の含有量7モル%)とトリエタノールアミンとを1.7/1のモル比で混合し、定法に従って脱水縮合反応を行った。酸価が5になった時点で反応を止め、縮合物を得た。この縮合物の全アミン価を測定し、次に溶媒不存在下で、これに対してジメチル硫酸を0.95当量用い、4級化反応を行った後、エタノールで90質量%に希釈し、目的の化合物を含む第4級アンモニウム塩混合物を得た。
【0044】
本混合物中には副生物としてN−メチル−N,N,N−トリエタノールアンモニウムメチル硫酸塩、トリエタノールアミン、脱水縮合反応における未反応脂肪酸、及び四級化時にジメチル硫酸と未反応脂肪酸が反応して得られる脂肪酸メチルエステルが残存する。本混合物中の(a)成分は固形分(90質量%)から、液体クロマトグラフィーで定量した上記副生物、及び脂肪酸含有量を差し引いて算出した(混合物中の(a)成分の含有量は85質量%)。
【0045】
(合成例2)
牛脂脂肪酸とパーム油由来脂肪酸を質量比で1/1で混合し、部分的に水添した脂肪酸(酸価206、ヨウ素価38、不飽和基が2個有する脂肪酸の含有量7モル%)とN−メチルジエタノールアミンとを1.9/1のモル比で混合し、定法に従って脱水縮合反応を行った。酸価が10になった時点で反応を止め、縮合物を得た。この縮合物の全アミン価を測定し、この縮合物に対してエタノールを8質量%添加し、これに対して塩化メチルを0.98当量用い、4級化反応を行った後、エタノールで固形分が90質量%になるように希釈し、目的の化合物を含む第4級アンモニウム塩混合物を得た(混合物中の(a)成分の含有量は86質量%)。
【0046】
本混合物中の未反応物である脂肪酸含有量を、液体クロマトグラフィーを用いて算出し、残りの成分を本混合物中の(a)成分の含有量とした。
【0047】
(合成例3)
ステアリン酸とパルミチン酸を6/4のモル比で混合した脂肪酸とN−(3−アルカノイルアミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンとを1.8/1のモル比で混合し、定法に従って脱水縮合を行った。酸価が9になった時点で反応を止め、縮合物を得た。この縮合物の全アミン価を測定した。この縮合物を70℃に加温し、溶融させた。この縮合物に対して質量で9倍量のイオン交換水(65℃)を加え、攪拌しながら、全アミン価を基に算出した、中和に必要な35%塩酸水溶液を滴下しながら、水中で中和し、10分攪拌した後、30℃に冷却した。次に、この化合物を凍結乾燥し目的のアミン塩混合物を得た。
【0048】
本混合物中の未反応物である脂肪酸含有量を、液体クロマトグラフィーを用いて算出し、残りの成分を本混合物中の(a)成分の含有量とした(混合物中の(a)成分の含有量は96質量%)。
【0049】
<実施例1〜12及び比較例1〜4>
以下の成分を用いて表1の液体柔軟剤組成物を調製し、保存安定性を評価した。結果を表1に示す。なお、a−1〜a−3は、(a)成分の配合量が表1の重量%となるように用いた。また、(b)成分については、構造の詳細を表2に示した。尚、実施例1〜12の液体柔軟剤組成物は、いずれも市販の液体柔軟剤と同等の柔軟性を付与する事ができる。
【0050】
・(a)成分
a−1:合成例1で得た第4級アンモニウム塩混合物
a−2:合成例2で得た第4級アンモニウム塩混合物
a−3:合成例3で得たアミン塩混合物
【0051】
・(b)成分
b−1:N−ミリストイル−N−メチルアミノプロピオン酸(2−ヘキシルデシル)エステル
b−2:N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(平均付加モル数5)ステアリルエーテル)エステル
b−3:N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(平均付加モル数2)ステアリルエーテル)エステル
b−4:N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(平均付加モル数5)−2−オクチルドデシルエーテル)エステル
b−5:N−ラウロイルグルタミン酸ジ(ポリオキシエチレン(平均付加モル数2)−2−オクチルドデシルエーテル)エステル
b−6:N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステル
b−7:N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル
b−8:N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジ(2−オクチルドデシル)エステル
【0052】
・(c)成分
c−1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数20)モノラウリルエーテル
c−2:ポリオキシエチレン(平均付加モル数35)イソトリデシルエーテル
c−3:ポリオキシエチレン(平均付加モル数40)モノラウリルアミン
【0053】
・(d)成分
d−1:ヘキシルシンナミックアルデヒド(20質量%)、ネロリンヤラヤラ(5質量%)、トリシクロデセニルアセテート(5質量%)、ベンジルアセテート(10質量%)、ムスクケトン(5質量%)、アニシルアセトン(2質量%)、サンダルマイソールコア(2質量%)、アルデヒドC−14 ピーチ(1質量%)、リナロール(20質量%)、ジヒドロミルセノール(10質量%)、ボルネオール(5質量%)、セドロール(5質量%)、ムゴール(5質量%)、ベンジルアルコール(5質量%)からなる香料組成物[( )内の数字は香料組成物中の各香料成分の組成。香料組成物中のClogPが3以上の香料成分の含有量は53質量%]
d−2:下記の組成からなる香料組成物
香料成分1−1:エストラゴール(logPow=3.1) 20質量%
香料成分1−2:イソブチルサリシレート(logPow=3.8) 20質量%
香料成分1−3:ベンジルサリシレート(logPow=4.2) 20質量%
香料成分2−1:テンタローム(logPow=5.7) 20質量%
香料成分3−1:オイゲノール(logPow=2.4) 20質量%
【0054】
・その他成分
e−1:エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩
f−1:塩化カルシウム
g−1:食用青色1号
h−1:エチレングリコール
i−1:35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液であり、組成物のpHを所定の値にするのに必要な量で使用した。
【0055】
<液体柔軟剤組成物の調製方法>
300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/m)、所要量の(c)成分、必要に応じて(e)成分、(h)成分を溶解させた。次に、融解させた所要量の(a)成分と(b)成分を混合したものを添加した。そのまま10分攪拌後、(f)成分の10質量%水溶液を添加した。さらに10分攪拌後、そのままでの温度におけるpHが2〜4.5にするのに必要な10%塩酸水溶液、及び又は10%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。続いて、必要に応じて(g)成分、(d)成分を添加し5分攪拌した。次に、5℃のウォーターバスで20℃まで冷却し、pHを再度調整した後、出来あがり質量にするのに必要な量の20℃のイオン交換水を添加して液体柔軟剤組成物を得た。
【0056】
<保存安定性の評価方法>
液体柔軟剤組成物の調製直後の粘度をB型粘度計(ローターNo.2、60r/min、30℃)で測定した。次に、No.11規格瓶に90g充填し、40℃の恒温槽に入れ、1ヶ月保存し保存後の粘度を同様に測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
<実施例13〜18及び比較例5〜6>
表3に示す成分により実施例1等と同様にして液体柔軟剤組成物を調製し、保存安定性(粘度)及び香料成分の吸着率を評価した。保存安定性は実施例1等と同様に評価した。また、香料成分の吸着率は下記方法で測定した。結果を表3に示す。なお、表3中の成分は実施例1等で用いたものと同じである。また、実施例13〜18の液体柔軟剤組成物は、いずれも市販の液体柔軟剤と同等の柔軟性を付与する事ができる。
【0060】
<香料成分の吸着率の測定方法>
(1)前処理
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿タオル24枚を日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0061】
(2)繊維製品への組成物の処理
National 電気バケツN-BK2-Aに、5Lの水道水を注水し、液体柔軟剤組成物を10g/衣料1.0kgとなるように溶解(処理浴の調製)させ、上述の方法で前処理を行った2枚の木綿タオルを5分間浸漬し、処理した。
【0062】
香料の吸着率は、処理前の処理浴中の香料成分含有量(x)と処理後の香料成分含有量(y)の差分〔(x)−(y)〕をタオルに吸着している量として、処理前の香料成分含有量(x)に対する割合(百分率)、すなわち、〔(x)−(y)〕/(x)×100を香料成分の吸着率とする。その結果を表3に示す。なお、処理前後の試験用処理液中の香料成分の含有量は、下記の液体クロマトグラフィー装置を用いて測定した。
【0063】
液体クロマトグラフィー装置:HITACHI L−6000
カラム:Lichrospher 100 RP−18(e) 5μm 125mm×4φ
カラム温度:40℃
溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(質量比)の混合溶液
流速:1.0mL/min
検出器:UV(220nm)
【0064】
【表3】

【0065】
*香料成分1−1、香料成分1−2及び香料成分1−3が香料成分1に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有し、(a)成分の含有量が10〜30質量%、(b)成分が0.08〜5質量%、且つ(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)で130/1〜3/1であり、20℃におけるpHが2〜5である液体柔軟剤組成物。
<(a)成分>
下記一般式(a−1)で表される化合物及び一般式(a−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物。
【化1】


〔式中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立に、エステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の炭化水素基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくともひとつがエステル基、及び、又はアミド基で分断されている総炭素数14〜26の炭化水素基であり、Ra4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X-は、陰イオン基である。〕
<(b)成分>
下記一般式(b−1)で表される化合物。
【化2】


〔式中、Rb1CO−基は炭素数12〜18のアシル基、Rb2は水素原子、又はメチル基、Rb3はエチレン基、又はプロピレン基、Rb4は炭素数16〜20の炭化水素基、Rb5は水素原子、又は−COO(Rb3O)mb4、lは1又は2の数、n、mはそれぞれ0〜5の数である。〕
【請求項2】
更に、(c)成分として、下記一般式(c−1)で表される非イオン界面活性剤を含有する、請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
c1−E−〔(Rc2O)d−Rc3e (c−1)
〔式中、Rc1は、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基である。Rc2は、炭素数2又は3のアルキレン基である。Rc3は、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。dは、2〜100の数を示す。Eは、−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Eが−O−又は−COO−の場合eは1であり、Eが−CON<又は−N<の場合eは2である。〕
【請求項3】
さらに、logPow又はClogPが3.0〜5.0の香料成分を含む香料組成物を含有する請求項1又は2記載の液体柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2009−150035(P2009−150035A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300667(P2008−300667)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】