説明

液体流量計測装置

【課題】被計測機器での液体流量を微量でも,周囲の温度変化に影響されることなく正確に且つ能率良く計測し得る液体流量計測装置を提供する。
【解決手段】液体2を貯留する液体タンク1と,この液体タンク1より小径で透明の細管3と,液体タンク1及び細管3間を接続して,液体タンク1から細管3への液体2の供給及び遮断を行う第1供給制御手段10と,細管3から被計測機器Iへの液体2の供給を行う第2供給制御手段11とを備え,細管3への液体2の供給を第1供給制御手段10により遮断した後,被計測機器Iがその作動により細管3から導入した流体を吐出したとき,その吐出に伴なう細管3内の液面変化に基づいて被計測機器Iでの液体吐出流量を読み取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被計測機器での液体流量,例えばエンジン用電磁式燃料噴射弁の燃料噴射流量を計測する液体流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン用電磁式燃料噴射弁の燃料噴射流量を計測する液体流量計測装置は,特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−105656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の液体流量計測装置は,燃料噴射弁の噴射燃料を受容する密閉室を有するハウジングと,その密閉室に接続していて燃料噴射弁から密閉室に噴射された燃料の体積変化を検出する検出手段とを備え,検出手段により検出した噴射燃料の体積変化から,燃料噴射弁の噴射流量を計測するものである。
【0005】
こうした従来のものでは,燃料噴射弁の噴射燃料は,噴射直後,霧化状態にあるので,それが液化状態となるのを待って,密閉室に噴射された燃料の体積変化を検出する必要があり,計測に待ち時間が長くかかり,計測を能率的に行うことができない。しかも,密閉室に微量な燃料を噴射した場合の,密閉室における燃料の体積変化は極めて微量であり,その微量な体積変化から燃料噴射量を求めることは極めて困難である。したがって,例えば,燃料噴射弁の1回の燃料噴射流量を求めることは極めて困難である。さらに密閉室に噴射された燃料の体積変化は,周囲の温度変化にも影響されるため,計測精度の信頼性にも問題がる。
【0006】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,被計測機器での液体流量を微量でも,周囲の温度変化に影響されることなく正確に且つ能率良く計測し得る液体流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明の液体流量計測装置は,液体を貯留する液体タンクと,この液体タンクより小径で透明の細管と,液体タンク及び細管間を接続して,液体タンクから細管への液体の供給及び遮断を行う第1供給制御手段と,細管から被計測機器への液体の供給を行う第2供給制御手段と,液体タンクから細管への液体の供給を前記第1供給制御手段により遮断した後,被計測機器がその作動により細管から導入した流体を吐出したとき,その吐出に伴なう細管内の液面変化より被計測機器の液体吐出流量を読み取る流量読み取り手段とよりなることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記第2供給制御手段を,細管から被計測機器への液体の供給を遮断し得るように構成したことを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,液体タンク及び細管内の上部空間相互を連通したことを第3の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,被計測機器は電磁式燃料噴射弁であり,また前記液体は燃料であり,前記燃料噴射弁に燃料噴射圧力を付与すべく,細管内の液面に所定の気体圧力を付与する気体圧力源を備えることを第4の特徴とする。尚,前記気体圧力源は,後述する本発明の実施例中の空気圧力源22に対応する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば,被計測機器での液体流量を,細管内の液面の変化量に基づいて計測するようにしたので,被計測機器の出口側の温度変化に影響されることなく,被計測機器での液体流量を能率良く且つ正確に計測することができる。特に,細管を極小径に形成すれば,細管からの微量な液体流出時にも,細管内の液面を敏感に変化させることができ,したがって,被計測機器における微量な液体流量の計測も可能となる。
【0012】
本発明の第2の特徴によれば,被計測機器の交換時,第2供給制御手段を遮断状態にすることにより,細管からの無用な液体の流出を防ぐことができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば,液体タンクに液体を補給する際,細管内の液面は,上部の空気を連通管を通して液体タンク側に押し出しながらスムーズに上昇して,液体タンク内の液面と同レベルになる。したがって,透明な細管内の液面を見て液体タンク内の液面レベルを知り,液体の補給量の適否を判断することができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば,電磁式燃料噴射弁の燃料噴射流量を能率良く且つ正確に計測することができる。特に,極小径の細管の使用により,細管からの微量な燃料流出時にも,細管内の液面を敏感に変化させることができ,したがって,燃料噴射弁の1回の微量な燃料噴射流量の計測も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る液体流量計測装置の概要側面図。
【図2】本発明の第2実施例に係る液体流量計測装置の概要側面図。
【図3】本発明の第3実施例に係る液体流量計測装置の概要側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。先ず,図1に示す本発明の第1実施例の説明より始める。
【0017】
液体流量計測装置Mは,エンジン用電磁式燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を計測するために使用されもので,燃料2を貯留する燃料タンク1と,この燃料タンク1の一側方に隣接配置される透明ガラスよりなる細管3とを備えており,この細管3は,燃料タンク1より遥かに小径に形成される。燃料タンク1は,上部に通常キャップ9で閉鎖される給油口1bを有する。これら燃料タンク1及び細管3は,それら内部の底部同士が第1供給路4を介して連通しており,この第1供給路4の途中に,それを遮断し得る第1遮断弁6が介装される。而して,第1供給路4及び第1遮断弁6は,燃料タンク1から細管3への燃料2の供給及び遮断を行う第1供給制御手段10を構成する。
【0018】
また燃料タンク1及び細管3の上部空間1a,3aには,それらを相互に直接連通する連通路13が接続される。
【0019】
細管3の下端部には,第2供給路5を介して被計測機器としての電磁式燃料噴射弁Iが接続され,この第2供給路5には,それを遮断し得る第2遮断弁7が介装される。而して,上記第2供給路5及び第2遮断弁7は,細管3から燃料噴射弁Iへの燃料2の供給及び遮断を行う第2供給制御手段11を構成する。
【0020】
燃料噴射弁Iには,それを開弁すべく噴射信号を出力する噴射信号手段手段15が接続され,燃料噴射弁Iの直下には,燃料噴射弁Iの噴射燃料を受ける燃料溜め14が設置される。される。
【0021】
細管3の一側には,その管内の燃料液面L1又はL2を読み取る液面センサとしてのCCDカメラ17が配設される。このCCDカメラ17は,読み取った細管3内の液面信号を電子制御ユニット18に出力するようになっており,電子制御ユニット18は,上記液面信号から得た液面変化量hと,それに対応する細管3からの燃料流出量Qとの関係を示すマップ19を備えると共に,適時そのマップ19から得た燃料流出量をモニタ20に表示するようになっている。而して,CCDカメラ17,電子制御ユニット18及びモニタ20は,細管3内の液面変化より燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を読み取る流量読み取り手段21を構成する。
【0022】
燃料タンク1及び細管3の上部空間1a,3aには,空気圧力源22から延出する圧力導管23の下流側で二股状に分岐した分岐管23a,23bが接続され,この圧力導管23には,その上流側から順に第3遮断弁8,レギュレータ弁25,及び圧力センサ26が設けられる。レギュレータ弁25は,空気圧力源22から細管3内の燃料液面L1に作用させる空気圧力を燃料噴射弁Iの規定の噴射圧力に対応するように調整する。このレギュレータ弁25は,圧力導管23の分岐管23a,23bの分岐点24より上流側に配置される。
【0023】
次に,この第1実施例の作用について説明する。
【0024】
電磁式燃料噴射弁Iの噴射燃料流量を計測するに当たっては,先ず,第1遮断弁6を開放状態,第2及び第3遮断弁7,8を遮断状態にして,第2供給路5の下流端に,計測する電磁式燃料噴射弁Iを接続する。また給油口1bから燃料タンク1に燃料を補給すれば,その燃料は,第1供給路4を通して細管3にも補給される。その際,燃料タンク1及び細管3の上部空間1a,3aは,連通路13を介して相互に連通しているので,細管3内の液面L1は,上部空間3aの空気を連通路13を通して燃料タンク1の上部空間1a側に押し出しながらスムーズに上昇して,燃料タンク1内の液面と同レベルになる。したがって,透明な細管3内の液面を見て燃料タンク1内の液面レベルを知り,燃料の補給量の適否を判断することができる。
【0025】
次に,第2及び第3遮断弁7,8を開放状態にして,レギュレータ弁25により規制される空気圧力源22の圧力を燃料タンク1及び細管3内の燃料液面に作用させることにより,電磁式燃料噴射弁Iに噴射圧力を付与する。
【0026】
そこで,このときの細管3内の燃料液面L1をCCDカメラ17により読み取り,その液面信号を電子制御ユニット18に出力する。そして噴射信号出力手段15の作動により電磁式燃料噴射弁Iに所定回数の噴射信号を付与すれば,燃料噴射弁Iは細管3内の燃料を燃料溜め14に向かって所定回数噴射することになる。その結果,細管3内の燃料液面は,L1からL2へと下がり,その下がった燃料液面L2をCCDカメラ17が読み取り,その液面信号を電子制御ユニット18に出力すると,電子制御ユニット18は,その液面信号と当初の液面信号とから液面変化量hを演算し,マップ19から細管3からの燃料流出量,即ち燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を得てモニタ20に表示する。
【0027】
このように,燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を,細管3内の燃料液面L1,L2の変化量hに基づいて計測するので,燃料噴射弁Iの出口側の温度変化に影響されることなく,燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を即座に且つ正確に計測することができる。特に,細管3を極小径に形成すれば,細管3からの微量な燃料流出時にも,細管3内の燃料液面をL1からL2へと敏感に変化させることができ,したがって,燃料噴射弁Iの1回の開弁時における微量な燃料噴射流量の計測も可能となる。
【0028】
計測後は,再び第2遮断弁7を遮断状態にして,第2供給路5において新たに計測する燃料噴射弁Iを計測後の燃料噴射弁Iと交換する。この燃料噴射弁Iの交換時,第2遮断弁7の閉鎖により,細管3からの無用な燃料の流出を防ぐことができる。この間,第3遮断弁8は開弁状態のまゝでもよい。その後,第1遮断弁6を開放状態にして,燃料タンク1内の燃料を第1供給路4を通して細管3側へ補給して,細管3内の燃料液面を燃料タンク1内の燃料液面に合わせる。そして細管3内の燃料液面をCCDカメラ17に読み取らせ,以後,前記と同様の要領により,新たな燃料噴射弁Iの燃料噴射流量を計測する。
【0029】
この第1実施例においては,第3遮断弁8より下流側の圧力導管23によっても燃料タンク1及び細管3内の上部空間1a,3aは相互に連通しているので,その両上部空間1a,3aを相互に直接連通する連通路13を廃止しても,両上部空間1a,3a相互の連通状態を確保することができる。しかしながら,連通路13を設けた方がその連通距離を極力短くして連通路13の流路抵抗を極力小さくし,燃料タンク1から細管3への燃料補給をスムーズに行うことができる。
【0030】
次に図2示す本発明の第2実施例について説明する。
【0031】
この第2実施例は,前記第1実施例において,圧力導管23の,燃料タンク1の上部空間1aに連通する分岐管23aを廃止したものに相当する。したがって圧力導管23は細管3の上部空間3aにのみ接続される。尚,図2中,前記第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0032】
この第2実施例によれば,圧力導管23の配管構造の簡素化を図ることができると共に,連通路13により,燃料タンク1及び細管3の上部空間1a,3a相互の連通状態を確保し,燃料タンク1から細管3への燃料の補給を支障なく行うことができる。
【0033】
最後に図3に示す本発明の第3実施例について説明する。
【0034】
この第3実施例は,前記第1実施例において,圧力導管23の,細管3の上部空間3aに連通する分岐管23bを廃止したものに相当する。したがって圧力導管23は燃料タンク1の上部空間1aにのみ接続される。尚,図3中,前記第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0035】
この第3実施例によれば,圧力導管23の配管構造の簡素化を図ることができると共に,空気圧力源22の空気圧力を連通路13を通して細管3内の燃料液面L1,L2に付与することができる。
【0036】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,空気圧力源22に代えて,他のガスを圧縮してなる圧力源を使用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
I・・・・・被計測機器(電磁式燃料噴射弁)
L1,L2・・・細管内の液面
M・・・・・液体流量計測装置
1・・・・・液体タンク(燃料タンク)
1a・・・・液体タンクの上部空間
2・・・・・液体(燃料)
3・・・・・細管
3a・・・・細管の上部空間
10・・・・第1供給制御手段
11・・・・第2供給制御手段弁体
13・・・・連通路
21・・・・流量読み取り手段
22・・・・気体圧力源(空気圧力源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(2)を貯留する液体タンク(1)と,この液体タンク(1)より小径で透明の細管(3)と,液体タンク(1)及び細管(3)間を接続して,液体タンク(1)から細管(3)への液体(2)の供給及び遮断を行う第1供給制御手段(10)と,細管(3)から被計測機器(I)への液体(2)の供給を行う第2供給制御手段(11)と,液体タンク(1)から細管(3)への液体(2)の供給を前記第1供給制御手段(10)により遮断した後,被計測機器(I)がその作動により細管(3)から導入した流体を吐出したとき,その吐出に伴なう細管(3)内の液面変化より被計測機器(I)の液体吐出流量を読み取る流量読み取り手段(21)とよりなることを特徴とする液体流量計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体流量計測装置において,
前記第2供給制御手段(11)を,細管(3)から被計測機器(I)への液体(2)の供給を遮断し得るように構成したことを特徴とする液体流量計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体流量計測装置において,
液体タンク(1)及び細管(3)内の上部空間(1a,3a)相互を連通したことを特徴とする液体流量計測装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の液体流量計測装置において,
被計測機器は電磁式燃料噴射弁(I)であり,また前記液体は燃料(2)であり,前記燃料噴射弁(I)に燃料噴射圧力を付与すべく,細管(3)内の液面(L1)に所定の気体圧力を付与する気体圧力源(22)を備えることを特徴とする液体流量計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−255530(P2010−255530A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106863(P2009−106863)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)