説明

液体燃料及びその製造方法

【課題】炭酸ガスの発生量を抑制し、ボイラー等の運転コストを低減することができる液体燃料、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液体燃料は、石油化学燃料と電離水とが混在し、懸濁液化したものであることを特徴とする。前記石油化学燃料としては、重油が挙げられる。前記電離水としては、浄化した軟水に通電して成るものが挙げられる。前記液体燃料の全量を100重量部としたとき、前記電離水の配合量は、10〜75重量部の範囲にあることが好ましい。本発明の液体燃料は、前記石油化学燃料及び前記電離水の混合物を、微細な隙間を加圧して通過させる工程により製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電、工業用ボイラー、蒸気供給のためのボイラー等で使用できる液体燃料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所、工業用のボイラー等は、重油を燃料として使用してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重油を燃焼させると、大量の炭酸ガス(CO2)が発生する。この炭酸ガスは地球温暖化を促進するため、地球規模での問題となっている。また、原油価格高騰により、火力発電所、工業用のボイラー等の運転コストが増加している。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、炭酸ガスの発生量を抑制し、ボイラー等の運転コストを低減することができる液体燃料、及びその製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明に関連する文献は発見されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体燃料は、石油化学燃料と電離水とが混在し、懸濁液化したものである。本発明の液体燃料は、重油等と比べて、燃焼時に生じる排ガス中の炭酸ガス量を低減することができる。そのことにより、地球温暖化等の環境問題を改善することができる。また、本発明の液体燃料を燃焼させたときに生じるエネルギーは、重油等に比べて高い。そのため、液体燃料の消費量を低減することができ、結果として、火力発電所、工業用のボイラー等の運転コストを低減することができる。
【0006】
前記石油化学燃料としては、様々なものを用いることができ、例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油(A重油、C重油)等を用いることができる。
前記電離水(Free Water)としては、例えば、浄化した軟水に通電して成るものを用いることができる。通電は、例えば、(株)スペース・クアトロ社製の電離成水器(型番:AL−431)を用いて行うことができる。通電処理の強度は、上述した電離成水器における5段階の設定のうち、第3〜5段階の範囲が好ましい。
【0007】
前記液体燃料の全量を100重量部としたとき、前記電離水の配合量は、10〜75重量部の範囲にあることが好ましい。電離水の配合量は、用途に応じて調整することができる。液体燃料の配合例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(i)A重油80重量%と、電離水20重量%とから成る液体燃料。ディーゼルエンジン用とすることができる。
(ii) A重油70重量%と、電離水30重量%とから成る液体燃料。簡易ボイラー、暖房用ストーブ用とすることができる。
(iii) A重油60重量%と、電離水40重量%とから成る液体燃料。発電所、工業用大型ボイラー用とすることができる。
(iv) A重油50重量%と、電離水50重量%とから成る液体燃料。発電所、工業用大型ボイラー用とすることができる。
【0008】
本発明の液体燃料は、例えば、前記石油化学燃料及び前記電離水の混合物を、微細な隙間を加圧して通過させる工程を用いて、製造することができる。
前記微細な隙間は、10〜50μmの隙間が好ましい。前記加圧における圧力は、0.1〜100Mpsの範囲が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
1.液体燃料の製造方法
液体燃料を製造する方法を図1に基づいて説明する。図1は、液体燃料を製造するために用いる設備の構成を表す説明図である。
【0011】
まず、源水を浄水器1により浄化した。源水とは、池の水、川の水、地下水、工業用水、水道水等の水である。浄水器1は、ろ過により、源水中の異物を取り除き、後に、イオン交換器にて無機物等を除去し、軟水化する、一般的な装置である。
【0012】
浄化後の水を、電離成水器3を通し、電離水とした。電離成水器3は、水に通電する機能を有するものであり、(株)スペース・クアトロ社製の型番AL−431である。通電の条件は、電流値:8A、電圧:100V、処理量:3〜12L/minとした。また、上述した電離器における処理の強度は、全5段階の設定のうち、第3段階とした。なお、上記の工程は、工業的にサイズアップすることが可能である。
【0013】
電離水は、一旦、電離水タンク5に貯蔵した。一方、市販のA重油を重油タンク9に貯蔵しておいた。電離水タンク5から取り出した電離水と、重油タンク9から取り出したA重油とを、分散混合タンク7に入れ、モーターMで高速回転する攪拌翼7aを用いて、所定時間、分散混合した。電離水とA重油との混合比は、電離水30重量部、A重油70重量部とした。
【0014】
次に、分散混合タンク7から取り出した混合液を、微細化機11に通した。この微細化機11は、混合液に高圧(圧力は30Mps)をかけ、内径10〜50μmの狭い隙間を通過させるという機能を有するものであり、オランダBOSS社製の型番MG2−10Bである。この微細化機11を通過することにより、A重油と、電離水とが混在し、懸濁液化した液体燃料(以下、液体燃料FO30とする)が製造された。微細化機11を通過した液体燃料FO30は、燃料貯蔵タンク13に貯蔵した。燃料貯蔵タンク13は、懸濁液における電離水とA重油との分離を防止するため、モーターMで回転駆動される攪拌翼13aを備えている。なお、図1において、番号2、4、6、10、12、14は、それぞれ、液送に用いるポンプである。
【0015】
2.液体燃料FO30の使用方法
燃料貯蔵タンク13に貯蔵された液体燃料FO30を、燃料ポンプにより、各種ボイラー等に供給し、燃焼させることができる。ボイラーは、重油用に設計されたものをそのまま用いることができ、液体燃料FO30に合わせて改造しなくてもよい。
【0016】
3.液体燃料FO30が奏する効果を確かめるための試験
(1)炭酸ガスの発生量に関する試験
液体燃料FO30をボイラーで燃焼させ、そのとき生じた排ガス中に占める炭酸ガスの比率(v/v%)を測定した。また、同じ条件で、A重油を燃焼させ、そのとき生じた排ガス中に占める炭酸ガスの比率(v/v%)を測定した。炭酸ガスの測定方法は、JIS Z 8808(オルザット法)に準拠した。また、試験は、ISO/IEC 17025認定試験所である株式会社ユニケミーに委託して行った。試験結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

この表1から明らかなとおり、液体燃料FO30を燃焼させたときに生じる排ガスは、A重油を燃焼させたときに生じる排ガスよりも、炭酸ガスの比率が遙かに低かった。具体的には、液体燃料FO30を燃焼させたときに生じる排ガスでは、A重油を燃焼させたときに生じる排ガスに比べて、下記の数式で示すように、炭酸ガスの量が24.5%も減少していた。
(数式):((10.6−8.0)/10.6))×100=24.5(%)
よって、液体燃料FO30を用いれば、炭酸ガスの放出量を削減することができ、地球温暖化等の環境問題を改善することができる。
(2)燃焼により発生する熱量に関する試験
液体燃料FO30をボイラーで燃焼させ、そのとき生じた熱量により、水を加熱し、蒸発させた。また、同じ条件で、A重油を燃焼させ、そのとき生じた熱量により、水を加熱し、蒸発させた。液体燃料FO30とA重油のそれぞれについて、燃焼時間、燃料消費量、燃料消費速度、水蒸発量、燃料1Kgあたりの水蒸発量を測定した。なお、試験は、ISO/IEC 17025認定試験所である株式会社ユニケミーに委託して行った。試験結果を表2に示す。表2において「水蒸発比」の欄は、燃料1Kgあたりの水蒸発量について、A重油を用いた場合の値を100としたときの比率である。
【0018】
【表2】

表2から明らかなように、1Kgの液体燃料FO30を燃焼させたときに蒸発させる水の量(すなわち発生する熱量)は、同量のA重油を燃焼させたときに蒸発させる水の量よりも遙かに多かった。このように、液体燃料FO30は、少量の使用でも高い熱量を発生させることができるため、燃料の消費量を低減することができる。また、その結果として、燃料を用いて生産される電力や蒸気の価格を低下させることができる。
【実施例2】
【0019】
基本的には前記実施例1と同様にして、液体燃料を製造した。ただし、本実施例2では、電離水とA重油との混合比率を表3に示すものとした。
【0020】
【表3】

表3に示す液体燃料も、前記実施例1における液体燃料FO30と略同様の性質を示した。
【0021】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、A重油の代わりに、C重油、ガソリン、灯油、軽油等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液体燃料を製造するために用いる設備の構成を表す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・浄水器、3・・・電離成水器、5・・・電離水タンク、
7・・・分散混合タンク、7a・・・攪拌翼、9・・・重油タンク、
11・・・微細化機、13・・・燃料貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学燃料と電離水とが混在し、懸濁液化した液体燃料。
【請求項2】
前記石油化学燃料が重油であることを特徴とする請求項1記載の液体燃料。
【請求項3】
前記電離水は、浄化した軟水に通電して成るものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体燃料。
【請求項4】
前記液体燃料の全量を100重量部としたとき、前記電離水の配合量が10〜75重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体燃料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液体燃料の製造方法であって、
前記石油化学燃料及び前記電離水の混合物を、微細な隙間を加圧して通過させる工程を含むことを特徴とする液体燃料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256501(P2009−256501A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108860(P2008−108860)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(508120536)
【Fターム(参考)】