説明

液体現像剤、液体現像剤の製造方法

【課題】定着特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率よく製造することのできる液体現像剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、トナー粒子とを含み、前記トナー粒子は、樹脂材料と、前記絶縁性液体を固化させる固化剤とを含むことを特徴とする。前記固化剤は、ポリグリセリン化合物を含むことが好ましい。また、ポリグリセリン化合物は、重量平均分子量が300〜3000であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーと、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(液体トナー)とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低融点のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
しかしながら、従来の液体現像剤は、以下のような問題があった。液体現像剤を用いた場合、一般に、トナー画像を記録媒体に定着する際に、トナー粒子の表面には絶縁性液体が付着する。従来の液体現像剤では、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体の存在により、トナー粒子の記録媒体への定着が阻害されてしまう問題があった。特に、定着直後において、トナー画像が他の記録媒体や指等の物体と接触した際に、トナー画像がかすれたり、トナー画像が他の物体に転写されたりする問題があった。また、絶縁性液体が揮発性液体である場合は定着工程で揮発するため回収機構が必要となり画像形成装置が大型化するという問題があった。絶縁性液体が不揮発性液体の場合は、定着阻害がより顕著に起こるので、記録媒体上にトナー像を転写する前工程で絶縁性液体を除去する機構および除去した絶縁性液体を回収する機構を設ける必要があり、画像形成装置が複雑かつ大型化するという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−251252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、定着特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率よく製造することのできる液体現像剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、樹脂材料と、前記絶縁性液体を固化させる固化剤とを含むことを特徴とする。
本発明の液体現像剤では、前記固化剤は、ポリグリセリン化合物を含むものであることが好ましい。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記ポリグリセリン化合物は、融点が60〜100℃であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記ポリグリセリン化合物は、重量平均分子量が300〜3000であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記ポリグリセリン化合物は、脂肪酸とポリグリセリンとのエステル化合物であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記固化剤のトナー粒子中における含有量は、3.0〜20wt%であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体は、脂肪酸グリセリドを含むものであることが好ましい。
【0009】
本発明の液体現像剤の製造方法は、有機溶剤と樹脂材料と固化剤とを含む分散質が、水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、
前記合一粒子に含まれる前記有機溶剤を除去し、トナー粒子を得る脱溶剤工程と、
前記トナー粒子を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有し、
前記固化剤は、前記絶縁性液体を固化する機能を有することを特徴とする。
このような構成により、定着特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率よく製造することのできる液体現像剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
≪液体現像剤≫
まず、本発明の液体現像剤について説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、トナー粒子とを含むものである。また、本発明において、トナー粒子は、樹脂材料(結着樹脂)と、絶縁性液体を固化させる固化剤を有するものである。
【0011】
ところで、従来の液体現像剤は、以下のような問題があった。液体現像剤を用いた場合、一般に、トナー画像を記録媒体に定着する際に、トナー粒子の表面には絶縁性液体が付着する。また、一般に、トナー画像の定着は、記録媒体上にトナー粒子によって形成された像に対し、熱をかけてトナー粒子を溶融させることにより、トナー粒子同士またはトナー粒子と記録媒体とを密着させることによって行われる。従来の液体現像剤では、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体の存在により、トナー粒子の記録媒体への密着が阻害されてしまう問題があった。特に、定着直後において、トナー画像が他の記録媒体や指等の物体と接触した際に、トナー画像がかすれたり、トナー画像が他の物体に転写されたりする問題があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、トナー粒子同士またはトナー粒子と記録媒体の間に絶縁性液体が液体の状態で存在することによりこれらの密着、溶融が妨げられることに着目し、本発明に到った。本発明では、トナー粒子が固化剤を含むことに特徴を有する。これにより、定着時において、トナー粒子から固化剤が溶出して絶縁性液体と接触し、再凝固する時に絶縁性液体を速やかに固化する。固化した絶縁性液体は、トナー粒子の記録媒体への定着を阻害することがない。この結果、トナー画像は、素早く強固に記録媒体へ定着する。特に、従来の液体現像剤では定着直後において、トナー画像が他の物体と接触した際に、トナー画像がかすれたり、トナー画像が他の物体に転写されることがあったが、本発明の液体現像剤を用いた場合、このような現象が好適に防止される。すなわち、液体現像剤は、トナー粒子の記録媒体へのセット性に優れたものとなる。以上より、このような液体現像剤は、定着特性に優れたものとなる。
なお、本明細書において、固化とは、液体が流動性を失った状態となることをいい、例えば、ゲル、固体等の状態になることを示す。なお、ゲルとは、絶縁性液体が特定の物質に吸収、保持されて流動性を失った状態を示す。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
<トナー粒子>
[トナー粒子の構成材料]
トナー粒子は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と固化剤とを含むものである。
1.樹脂材料(結着樹脂)
トナー粒子は、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、公知の樹脂を用いることができる。
【0014】
特に、樹脂材料としては、エステル結合を有するものを用いるのが好ましい。このような結合を有する樹脂材料は、後述するような固化剤との親和性が適度なものである。このため、トナー粒子内に確実に固化剤を内包することができ、保存時において絶縁性液体と固化剤とが接触することが防止される。また、定着時においては、固化剤と樹脂材料が混合しにくいものとなり、より確実に絶縁性液体と固化剤が接触して、特に素早く絶縁性液体を固化することができる。
【0015】
エステル結合を有する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた場合、後述するような固化剤をより確実にトナー粒子中に、微粒の粒子として内包することができる。また、ポリエステル樹脂は、透明性が高く、ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性を高いものとすることができる。また、ポリエステル樹脂を用いることにより、樹脂材料と固化剤との親和性を特に適度なものとすることができ、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0016】
本発明で用いる樹脂材料の酸価は、5〜20mgKOH/gであるのが好ましく、5〜15mgKOH/gであるのがより好ましい。これにより、後述するような固化剤をより効果的にトナー粒子中に内包することができる。特に、後述するような液体現像剤の製造方法において、トナー粒子の製造条件をより確実に制御することができ、トナー粒子中により確実に固化剤を内包することができる。また、より確実に所望の粒径で、粒度分布の狭いトナー粒子を製造することができる。
【0017】
また、樹脂材料のガラス転移温度Tgは、15〜70℃であるのが好ましく、20〜55℃であるのがより好ましい。これにより、製造されるトナー粒子を含んだ液体現像剤は、保存時において、トナー粒子同士の凝集、融着がより確実に抑制され、液体現像剤の保存性はより優れたものとなる。さらに、トナー粒子を記録媒体に低温でより好適に定着させることができる。なお、本明細書で、ガラス転移温度Tgとは、示差走査熱量測定機DSC−220C(SII製)における測定条件:サンプル量10mg、昇温速度10℃/min、測定温度範囲10〜150℃で測定した際に、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をいう。
【0018】
樹脂材料の軟化点(T1/2)は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化点とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
また、樹脂材料の重量平均分子量は、500〜100000であるのが好ましく、1000〜80000であるのがより好ましく、5000〜50000であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の長期分散安定性、帯電特性を優れたものとしつつ、トナー粒子の定着特性をより高いものとすることができる。
【0019】
2.固化剤
また、本発明において、トナー粒子は、固化剤を含む。
固化剤は、絶縁性液体と接触することにより、絶縁性液体を固化させる機能を有するものである。
このような固化剤としては、絶縁性液体を固化させる機能を有するものであれば特に限定されず、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、炭酸ナトリウム等の無機塩、天然油硬化脂肪酸、乾性油等の油脂およびその変性物、でんぷん等の糖類、ペクチン、ゼラチン等のタンパク質、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
この中でも、固化剤として、ポリグリセリン化合物を用いることが好ましい。ポリグリセリン化合物は、一旦加熱されて溶融し、その後冷却されて凝結する際に、3次元の網目状となり、網目の各空間に周囲の絶縁性液体を吸収して保持する効果を有する(以下、スポンジ効果ともいう。)。一方で、ポリグリセリン化合物は、常温時において一般に固体であり、加熱されるまでは絶縁性液体とは混ざらず、絶縁性液体を固化させることがない。このため、固化剤としてポリグリセリン化合物を用いることにより、液体現像剤の保存時等においてはトナー粒子から固化剤が流出することが確実に防止されるとともに、定着時においては一旦溶解したポリグリセリン化合物が絶縁性液体を吸収しつつ凝結することにより、より確実に絶縁性液体を固化できる。すなわち、液体現像剤は、定着特性、環境安定性に特に優れたものとなる。
【0021】
特に、樹脂材料としてポリエステル樹脂を用い、固化剤としてポリグリセリン化合物を用いた場合、保存時におけるトナー粒子からの固化剤の流失がより好適に防止される。また、固化剤が絶縁性液体に流出することが好適に防止されているため、後述するような画像形成装置において、感光体等の部材に固化剤が付着してフィルミング等の不具合を発生することが確実に防止される。これは、ポリグリセリン化合物とポリエステル樹脂とがともにエーテル結合を有し適度な親和性を有するため、トナー粒子からのポリグリセリン化合物の流出が少ないことが考えられる。また、ポリエステル樹脂とポリグリセリン化合物とが相溶しないため、トナー粒子中にポリグリセリン化合物が微小の粒子として確実に内包され、トナー粒子の表面にポリグリセリン化合物が露出することが防止され、ポリグリセリン化合物の絶縁性液体への流出が防止されたものと考えられる。
【0022】
また、ポリグリセリン化合物としては、脂肪酸とポリグリセリンとのエステル化合物(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステルともいう。)であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、定着時において、3次元の網目構造をより確実に形成し、トナー粒子周辺にある絶縁性液体をより確実に固化することができる。このため、液体現像剤は、スポンジ効果を顕著に発現することができ、トナー粒子の記録媒体へのセット性に特に優れたものとなる。また、保存時等においては、トナー粒子中においては、固体状の微粒子として確実に存在することができ、絶縁性液体を固化させることが防止される。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸やこれらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよいが、直鎖の脂肪酸であることが好ましい。これにより、より確実に絶縁性液体を固化させることができ、液体現像剤は、定着特性に特に優れたものとなる。
【0025】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリン成分は、その重合度が、2〜15であることが好ましく、3〜11であることがより好ましい。これにより、定着時においては、ポリグリセリン化合物は、より適度な孔径を有する3次元網目構造をとることができ、トナー粒子周辺にある絶縁性液体をより確実に固化することができ、液体現像剤は、定着特性に特に優れたものとなる。
【0026】
また、上述したようなポリグリセリン化合物の重量平均分子量は、300〜3000であることが好ましく、500〜2000であることがより好ましく、700〜1700であることがさらに好ましい。これにより、定着時においては、ポリグリセリン化合物は、より適度な孔径を有する3次元網目構造をとることができ、スポンジ効果がより顕著に発揮される。また、トナー粒子周辺にある絶縁性液体をより確実に固化することができる。また、保存時においては、トナー粒子中にあるポリグリセリン化合物が、絶縁性液体に溶出することがより確実に防止される。
【0027】
また、ポリグリセリン化合物の融点は、60〜100℃であることが好ましく、65〜85℃であることより好ましい。これにより、保存時において、固化剤が絶縁性液体中に流出することが確実に防止される。また、定着時においては、比較的低い定着温度であっても、固化剤が軟化して絶縁性液体と混合されることができ、より確実に絶縁性液体は固化される。
【0028】
なお、上述したような融点は、例えば、示差走査熱量分析装置:DSC−120(セイコーインスツルメンツ製)を用いて、昇温条件:2℃/min(30〜150℃)、サンプル量:10mgの条件で測定することができる。
また、固化剤のトナー粒子中における含有量は、3.0〜20wt%であることが好ましく、7.0〜15wt%であることがより好ましい。これにより、液体現像剤の定着特性を特に優れたものとしつつ、液体現像剤の環境安定性を特に優れたものとすることができる。
【0029】
2.着色剤
また、トナー粒子は、通常、着色剤を含むものである。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
3.その他の成分
また、トナー粒子は、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、公知の磁性粉末等が挙げられる。
また、トナー粒子の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0030】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.5〜3.0μmであるのが好ましく、0.7〜2.5μmであるのがより好ましく、1.0〜2.3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとしつつ、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子中により確実に固化剤を内包させつつ、定着時においては、トナー粒子から好適に固化剤が流出し、絶縁性液体を確実に固化させることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとできる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、5〜50wt%であるのが好ましく、15〜35wt%であるのがより好ましい。
【0031】
<絶縁性液体>
次に、絶縁性液体について説明する。
絶縁性液体は、十分に絶縁性の高い液体であればよいが、具体的には、室温(20℃)での電気抵抗が1011Ωcm以上のものであるのが好ましく、1012Ωcm以上のものであるのがより好ましく、1013Ωcm以上のものであるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の比誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0032】
このような条件を満足する絶縁性液体としては、例えば、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン化学社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業)等の鉱物油(炭化水素系液体)、脂肪酸グリセリド、脂肪酸モノエステル、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特に、炭化水素系液体、脂肪酸グリセリド、脂肪酸モノエステルを用いた場合、トナー粒子の分散安定性がさらに向上する。また、定着時においては、固化剤によってより確実に絶縁性液体が固化することができる。特に、固化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルであり、絶縁性液体が脂肪酸グリセリドまたは脂肪酸モノエステルを含む場合、脂肪酸モノエステル、脂肪酸グリセリドを含む絶縁性液体と固化剤との親和性が特に高いものとなり、定着時においては、トナー粒子周辺の絶縁性液体は、特に好適に固化される。
【0033】
また、上述した中でも、絶縁性液体として、脂肪酸グリセリドを含むものを用いた場合、以下のような効果が得られる。
脂肪酸グリセリドは、環境に優しい成分である。したがって、定着時等における絶縁性液体の揮発や、液体現像剤の廃棄等による環境への影響を低減することができる。
また、脂肪酸グリセリドが不飽和脂肪酸成分を含む場合、トナー粒子の記録媒体への定着強度が向上する。より詳しく説明すると、不飽和脂肪酸成分は、酸化されることにより(定着時における定着温度で酸化されることにより)、それ自体が酸化重合して硬化し、トナー粒子の定着強度を向上させる機能を有することができる。
また、脂肪酸グリセリド中に飽和脂肪酸成分が含まれる場合、飽和脂肪酸成分を含むことにより、液体現像剤の化学的安定性や絶縁性液体の電気絶縁性をさらに高く保つことが可能になる。
【0034】
このような脂肪酸グリセリドは、例えば、米油、米ぬか油、桐油、アマニ油、ヒマシ油、菜種油、オリーブ油、カノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、パーム殻油、ヤシ油、椿油、綿実油等の植物油、牛油等の各種動物性の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
また、このような脂肪酸グリセリドは、石油等から合成して得られるものであってもよい。
【0035】
また、上述した中でも、絶縁性液体として、脂肪酸モノエステルを含むものを用いた場合、以下のような効果が得られる。
脂肪酸モノエステルは、脂肪酸とアルコールとのエステルである。また、脂肪酸モノエステルは、トナー粒子を可塑化させる効果(可塑効果)を有する成分である。したがって、定着時に、可塑化したトナー粒子は、定着時の熱により容易に溶融し、記録媒体へ密着することができる。この結果、形成されるトナー画像は、記録媒体への定着強度が特に高いものとなる。また、脂肪酸モノエステルは環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0036】
液体現像剤に使用できる脂肪酸モノエステルとしては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される不飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等に代表される飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
絶縁性液体中に脂肪酸モノエステルが含まれている場合、絶縁性液体中の脂肪酸モノエステルの含有量は、1〜50wt%であることが好ましく、5〜45wt%であることがより好ましい。これにより、液体現像剤は、定着特性が特に優れたものとなる。
【0037】
<分散剤>
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、トナー粒子の分散性を向上させる分散剤が含まれていてもよい。
このような分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アジスパーPB821(味の素社の商品名)、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリアミン脂肪酸縮重合体等の高分子分散剤、粘度鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
【0038】
上述した分散剤の中でも、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いた場合、トナー粒子の表面にポリアミン脂肪酸縮重合体を付着させることができ、これにより、トナー粒子同士の不本意な凝集を防止することができる。
ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いた場合、液体現像剤中におけるポリアミン脂肪酸縮重合体の含有量は、トナー粒子:100重量部に対して、0.5〜7.5重量部であるのが好ましく、1〜5重量部であるのがより好ましい。これにより、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いることによる効果をより顕著なものとすることができる。
また、液体現像剤は、上述した成分以外に、公知の酸化防止剤、帯電制御剤等を含んでいてもよい。
【0039】
液体現像剤の粘度は、特に限定されないが、5〜1000mPa・sであるのが好ましく、50〜800mPa・sであるのがより好ましく、100〜500mPa・sであるのがさらに好ましい。液体現像剤の粘度が前記範囲内の値であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、トナー画像の現像性、転写性を特に優れたものにできる。また、トナー粒子の分散性をより高いものとすることができるとともに、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができ、また、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等をより効果的に防止することができる。加えて、トナー粒子の凝集、沈降をより効果的に防止でき、絶縁性液体中におけるトナー粒子の分散性をより高いものとすることができる。ただし、本明細書における粘度とは25℃において測定した値を指すものとする。
【0040】
≪液体現像剤の製造方法≫
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、上述したような樹脂材料と固化剤と有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、合一粒子に含まれる有機溶剤を除去し、樹脂材料と着色剤とを含むトナー粒子を得る脱溶剤工程と、トナー粒子および上述したような分散剤を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有する。
【0041】
このような製造方法で液体現像剤を製造することにより、形成されるトナー粒子中により確実に固形剤を保持させることができる。また、このような方法を用いることにより形成されるトナー粒子中において、固形剤は、微粒の分散質として内包され、トナー粒子の表面に出にくいものとなる。この結果、保存時等において、絶縁性液体と固化剤とが接触して、液体現像剤の粘度等が変化することが確実に防止される。一方で、定着時においては、確実にトナー粒子から固化剤が放出され、トナー粒子の周囲の絶縁性液体を固化することができる。
【0042】
以下、液体現像剤の製造方法を構成する各工程について詳細に説明する。
[分散液調製工程(水系分散液調製工程)]
まず、分散液(水系分散液)を調製する。
水系分散液は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、例えば、樹脂材料、固化剤、着色剤等のトナー粒子の構成材料(トナー材料)を有機溶剤中に溶解、分散させて樹脂液を得(樹脂液調製処理)、水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る(分散質形成処理)。
【0043】
(樹脂液調製処理)
まず、樹脂材料、固形剤を有機溶剤に溶解または分散させた樹脂液を調製する。
調製された樹脂液は、前述したようなトナー粒子の構成材料、および、次に述べるような有機溶剤を含むものである。
有機溶剤としては、樹脂材料の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述する水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、有機溶剤を容易に除去することができる。
【0044】
また、有機溶剤は、後述する水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が35g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系分散液中において、トナー粒子の構成材料を安定した状態で微分散させることができる。
また、有機溶剤の組成は、例えば、前述したような樹脂材料、固化剤、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
このような有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、MEK等のケトン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0045】
樹脂液は、例えば、樹脂材料、固化剤、着色剤、有機溶剤等を、攪拌機等により混合することにより得ることができる。樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等の高速攪拌機が挙げられる。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
【0046】
樹脂液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましく、50〜70wt%であるのがさらに好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する分散液(水系分散液)を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状もの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
【0047】
また、樹脂液の調製においては、調製すべき樹脂液の構成成分をすべて同時に混合してもよいし、予め、調製すべき樹脂液の構成成分のうち一部を混合して混合物(マスター)を得、その後、当該混合物(マスター)を、他の成分と混合してもよい。
例えば、樹脂材料と固化剤とを予め混合した後に、これらの混合物を有機溶剤に溶解、分散させ、樹脂液を得るものであってもよい。このような固化剤分散液を用いることにより、固化剤はより確実に形成されるトナー粒子中に保持される。
【0048】
(分散質形成処理)
次に、水系分散液(分散液)を調製する。
水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る。
【0049】
水系分散媒は、水系液体で構成されたものである。
水系液体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水系液体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水系分散媒には、必要に応じて乳分散剤を添加してもよい。乳化分散剤を添加することにより、より容易に水系分散液を調製することができる。
乳化分散剤としては、特に限定されず、例えば、公知の乳化分散剤を用いることができる。
【0050】
また、水系分散液の調製に際して、例えば、中和剤を用いてもよい。これにより、例えば、樹脂材料が有する官能基(例えば、カルボキシル基等)を中和することができ、調製される水系分散液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができ。このため、得られるトナー粒子は、粒度分布が特に狭いものとなる。
中和剤は、例えば、樹脂液に添加されるものであってもよいし、水系液体に添加されるものであってもよい。
また、中和剤は、水系分散液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。
【0051】
中和剤としては、塩基性化合物を用いることができ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等の有機塩基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、中和剤は、上記のような化合物を含む水溶液であってもよい。
【0052】
また、塩基性化合物の使用量は、樹脂材料が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量(1〜3当量)が好ましく、1〜2倍に相当する量(1〜2当量)がより好ましい。これにより、異形の分散質が形成されるのを効果的に防止することができ、また、後に詳述する合一工程において得られる粒子の粒度分布を、よりシャープなものとすることができる。
【0053】
樹脂液への水系液体の添加は、いかなる方法で行うものであってもよいが、樹脂液を撹拌しつつ、樹脂液に水を含む水系液体を添加することが好ましい。すなわち、攪拌機等により樹脂液に剪断を加えつつ、樹脂液中に水系液体を徐々に添加(滴下)することにより行い、W/O型の乳化液からO/W型の乳化液に転相させて、最終的に、水系液体中に、樹脂液由来の分散質が分散した水系分散液を得るのが好ましい。
水系分散液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)、スラッシャ(三井鉱山社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)等の高速攪拌機、あるいは高速分散機等が挙げられる。
【0054】
また、樹脂液への水系液体の添加時には、翼先端速度が10〜20m/秒となるように撹拌を行うことが好ましく、12〜18m/秒となるように撹拌を行うことがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、水系分散液を効率良く得ることができるとともに、水系分散液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、過剰に微細な分散質、粗大粒子の発生を防止しつつ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
水系分散液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系分散液中における分散質同士の不本意な凝集をより確実に防止しつつ、トナー粒子の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、本処理における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
【0056】
[合一工程]
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが一体化して進行する。このように合一する過程において、樹脂材料と固化剤とは相溶性が低いので、固化剤が合一粒子中に微粒子として分散し、最終的に得られるトナー粒子の内部に固化剤の微粒子を内包させることができる。
【0057】
複数個の分散質の合一は、分散液を撹拌しながら、分散液に電解質を添加することにより行う。これにより、容易かつ確実に合一粒子を得ることができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、合一粒子の粒径、粒度分布を制御することができる。
電解質としては、特に限定されず、公知の有機、無機の水溶性の塩等を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
また、電解質は、1価のカチオンの塩であることが好ましい。これにより、得られる合一粒子の粒度分布を狭いものとできる。また、1価のカチオンの塩を用いることで、本工程において、粗大粒子が発生することを確実に防止することができる。
また、上述した中でも、電解質は、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)または炭酸塩であることが好ましく、硫酸塩であることが特に好ましい。これにより、特に容易に合一粒子の粒径を制御できる。
本工程で添加される電解質の量は、電解質が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜3重量部であるのが好ましく、1〜2重量部であるのがより好ましい。これにより、特に容易かつ確実に合一粒子の粒径を制御できるとともに、粗大粒子の発生を確実に防止することができる。
【0059】
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。この結果、所望の粒径で、粒度分布の特に狭い合一粒子を得ることができる。
また、電解質を水溶液の状態で添加する場合、水溶液中における電解質の濃度は、2〜10wt%であることが好ましく、2.5〜6wt%であることがより好ましい。これにより、特に速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができ、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。また、このような水溶液を加えることにより、電解質を加え終えた際における分散液中の水の含有量が、好適なものとなる。このため、電解質添加後における合一粒子の成長速度を、生産性が落ちない程度に、適度に遅いものとすることができる。結果として、粒径をより確実に制御できる。また、不本意な合一粒子の合一を確実に防止することができる。
【0060】
また、電解質を水溶液で添加する場合、電解質水溶液の添加の速度は、電解質水溶液が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜10重量部/分であるのが好ましく、1.5〜5重量部/分であるのがより好ましい。これにより、分散液中で、電解質の濃度のむらが発生することを防止することができ、粗大粒子が発生することを確実に防ぐことができる。また、合一粒子の粒度分布は特に狭いものとなる。さらに、このような速度で電解質を添加することで、合一の速度を特に容易に制御でき、合一粒子の平均粒径を制御することが特に容易になるとともに、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
電解質の添加は、複数回に分けて行ってもよい。これにより、容易かつ確実に、所望の大きさの合一粒子を得ることができるとともに、得られる合一粒子の円形度を確実に、十分に大きいものとすることができる。
【0061】
また、本工程は、分散液を攪拌した状態で行う。これにより、粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さい合一粒子を得ることができる。
分散液の撹拌には、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、添加した電解質をすばやく均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質を効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい合一粒子を効率良く得ることができる。
【0062】
攪拌翼の翼先端速度は、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましく、0.2〜6m/秒であるのがさらに好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、添加した電解質を均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質をより効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをさらに確実に防止することができる。
得られる合一粒子の平均粒径は、0.5〜5μmであるのが好ましく、1.5〜3μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0063】
[脱溶剤(脱溶媒)工程]
その後、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する。これにより、分散液中に分散した樹脂微粒子(トナー粒子)が得られる。このようにして得られたトナー粒子は、固形剤が確実に内包されたものとなる。
有機溶剤の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、例えば、減圧により行うことができる。これにより、樹脂材料等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。
また、本工程での処理温度は、合一粒子を構成する樹脂材料のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
【0064】
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤のほか、低級アルコール類、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等を用いることができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
【0065】
また、本工程においては、有機溶剤とともに、少なくとも一部の水系液体が除去されてもよい。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する他の工程において、残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
【0066】
[洗浄工程]
次に、上記のようにして得られた樹脂微粒子(トナー粒子)の洗浄を行う(洗浄工程)。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤等が含まれる場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られる樹脂微粒子における、揮発性有機化合物(TVOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、例えば、固液分離(水系液体からの分離)により樹脂微粒子を分離し、さらにその後、固形分(樹脂微粒子)の水中への再分散および固液分離(水系液体からの樹脂微粒子の分離)をすることにより行うことができる。固形分の水中への再分散および固液分離は、複数回、繰り返し行ってもよい。
【0067】
[乾燥工程]
その後、乾燥処理を施すことにより、トナー粒子を得ることができる(乾燥工程)。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大川原製作所社製)等を用いて行うことができる。
【0068】
[分散工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子を、絶縁性液体中に分散する。これにより、液体現像剤を得る。
トナー粒子の絶縁性液体への分散は、いかなる方法を用いてもよく、例えば、絶縁性液体とトナー粒子と分散剤とをビーズミル、ボールミル等で混合することにより行うことができる。このような方法で混合することにより、分散剤をトナー粒子の表面により確実に付着または吸着させることができる。
【0069】
また、この分散時において、絶縁性液体、トナー粒子以外の成分を混合するものであってもよい。
また、トナー粒子の絶縁性液体への分散は、最終的に得られる液体現像剤を構成する絶縁性液体の全量を用いて行うものであってもよく、絶縁性液体の一部を用いて行うものであってもよい。
【0070】
また、絶縁性液体の一部を用いてトナー粒子を分散する場合、分散した後に、分散に用いた液体と同じ液体を絶縁性液体として添加するものであってもよいし、また、分散した後に、分散に用いた液体とは異なる液体を絶縁性液体として添加するものであってもよい。後者の場合、最終的に得られる液体現像剤の粘度等の特性を容易に調整することができる。
【0071】
≪画像形成装置≫
次に、上述したような液体現像剤に適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す模式図、図2は、図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【0072】
画像形成装置1000は、図1、図2に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40と、4つの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kとを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0073】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図2に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0074】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成され、例えばアモルファスシリコン等の材料で構成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図2中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0075】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
【0076】
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後述する。
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
なお、本発明の液体現像剤は、絶縁性液体がトナー粒子の定着を阻害しずらいものである。このため、中間転写部スクイーズ装置を設けない場合であっても、好適にトナー粒子は記録媒体に定着することができる。この結果、本発明の液体現像剤を用いた場合、適用する画像形成装置の装置構成をより簡素化することができる。
【0077】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0078】
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、図示しないモータの駆動力が伝達されるベルト駆動ローラ41および一対の従動ローラ42、43に張架されている。また、中間転写部40は、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながらベルト駆動ローラ41により反時計回りに回転駆動される。
【0079】
さらに、中間転写部40は、テンションローラ44によって所定のテンションが付与されて、たるみが除去されるようになっている。このテンションローラ44は、一方の従動ローラ42より中間転写部40の回転(移動)方向下流側でかつ他方の従動ローラ43より中間転写部40の回転(移動)方向上流側に配設されている。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
【0080】
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、後述する2次転写ユニット60において一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0081】
また、中間転写部40には、中間転写部クリーニングブレード46、現像剤回収部47、非接触式バイアス印加部材48からなるクリーニング装置が配置されている。
中間転写部クリーニングブレード46および現像剤回収部47は、従動ローラ43側に配されている。
中間転写部クリーニングブレード46は、2次転写ユニット(2次転写部)60によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部47は、中間転写部クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0082】
非接触式バイアス印加部材48はテンションローラ44に対向する位置に中間転写部40から離間して配設されている。この非接触式バイアス印加部材48は、二次転写後に中間転写部40上に残留する液体現像剤のトナー(固形分)に、このトナーと逆極性のバイアス電圧を印加するものである。これにより、トナーが除電されて中間転写部40へのトナーの静電付着力が低減されるようにしている。この例では、非接触式バイアス印加部材48として、コロナ帯電器が用いられている。
【0083】
なお、非接触式バイアス印加部材48は、必ずしもテンションローラ44に対向する位置に配設する必要はなく、例えば従動ローラ42とテンションローラ44との間の位置等、従動ローラ42より中間転写部の移動方向下流側で、かつ、従動ローラ43より中間転写部の移動方向上流側の任意の位置に配設することができる。また、非接触式バイアス印加部材48はコロナ帯電器以外の公知の非接触式帯電器を用いることもできる。
【0084】
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
【0085】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yと、中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yで除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部56Yとから構成される。
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰な絶縁性液体を回収し、像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。
【0086】
2次転写ユニット60は、互いに転写材移動方向に沿って所定間隔離間して配置された一対の2次転写ローラを備えている。これらの一対の2次転写ローラのうち、中間転写部40の移動方向の上流側に配置される2次転写ローラが上流側2次転写ローラ61である。この上流側2次転写ローラ61は、ベルト駆動ローラ41に中間転写部40を介して圧接可能となっている。
【0087】
また、一対の2次転写ローラのうち、転写材の移動方向の下流側に配置される2次転写ローラが下流側2次転写ローラ62である。この下流側2次転写ローラ62は、従動ローラ42に中間転写部40を介して圧接可能となっている。
すなわち、上流側2次転写ローラ61、下流側2次転写ローラ62は、それぞれ、ベルト駆動ローラ41および従動ローラ42に掛けられた中間転写部40に記録媒体F5を当接させて、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像を記録媒体F5に2次転写する。
【0088】
この場合、ベルト駆動ローラ41および従動ローラ42は、それぞれ上流側2次転写ローラ61、下流側2次転写ローラ62のバックアップローラとしても機能する。すなわち、ベルト駆動ローラ41は、2次転写ユニット60において従動ローラ42より記録媒体F5の移動方向上流側に配置される上流側バックアップローラとして兼用される。また、従動ローラ42は、2次転写ユニット60においてベルト駆動ローラ41より記録媒体F5の移動方向下流側に配置される下流側バックアップローラとして兼用される。
【0089】
したがって、2次転写ユニット60に搬送されてきた記録媒体F5は、上流側2次転写ローラ61とベルト駆動ローラ41との圧接開始位置(ニップ開始位置)から下流側2次転写ローラ62と従動ローラ42との圧接終了位置(ニップ終了位置)までの転写材の所定の移動領域で中間転写部40に密着される。これにより、中間転写部40上のフルカラーの中間転写像が、中間転写部40に密着した状態の記録媒体F5に所定時間にわたって2次転写されるので、良好な2次転写が行われる。
【0090】
また、2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61に対して、2次転写ローラクリーニングブレード63と、現像剤回収部64とを備えている。また、2次転写ユニット60は、2次転写ローラ62に対して、2次転写ローラクリーニングブレード65と、現像剤回収部66とを備えている。各2次転写ローラクリーニングブレード63、65は、それぞれ2次転写ローラ61、62に当接されて2次転写後に各2次転写ローラ61、62の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去する。また、各現像剤回収部64、66は、それぞれ各2次転写ローラクリーニングブレード63、65によって各2次転写ローラ61、62から掻き落とされた液体現像剤を回収して貯留する。
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー画像(転写像)F5aは、後述する定着部(定着装置)F40に送られ、定着が行われる。
【0091】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図2に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、コロナ放電器(圧縮手段)23Yとを有している。
【0092】
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、鉄等金属性のローラの表面に溝が均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、塗布ローラ32Yの回転方向に対して斜めに複数の溝が、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。この塗布ローラ32Yは、反時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝に、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。
【0093】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yが回転して液体現像剤から進出する側(すなわち、図2中右側)に設けられている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。また、掻き取られた余剰の液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Yに回収され、再利用される。
【0094】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。これにより、複数個のトナー粒子1が凝集した場合であっても、トナー粒子1同士を好適に分散させることができる。
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子1はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0095】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
【0096】
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0097】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図2において時計方向)と逆の方向(図2において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0098】
コロナ放電器(圧縮手段)23Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、コロナ放電器23Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図3に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
なお、現像ユニット100Yにおいて、塗布ローラ32Yと現像ローラ20Yとは、異なる動力源(図示せず)によって、別駆動している。そして、塗布ローラ32Yと現像ローラ20Yと回転速度(線速度)比を変えることで、現像ローラ20Y上に供給される液体現像剤の量を調整することができる。
【0099】
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤回収部22Yとを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、現像剤回収部22Y内に回収される。
【0100】
また、図1、図2に示すように、画像形成装置1000は、液体現像剤を現像部30Y、30M、30C、30Kに補給する液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kを備えている。これらの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kは、それぞれ、液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kと、絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kと、撹拌装置83Y、83M、83C、83Kとを備えている。
【0101】
各液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kには、それぞれ各色に対応した高濃度の液体現像剤が収納されている。また、各絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kには、それぞれ絶縁性液体が収納されている。さらに、各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kには、各液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kからの所定量の各高濃度液体現像剤と、各絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kからの所定量の各絶縁性液体とが供給されるようになっている。
【0102】
そして、各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kは、それぞれ、供給された各高濃度液体現像剤および各絶縁性液体をそれぞれ混合撹拌して、各液体現像剤貯留部31Y、31M、31C、31Kで使用する各色に対応した液体現像剤を作製する。各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kでそれぞれ作製された各液体現像剤は、それぞれ各液体現像剤貯留部31Y、31M、31C、31Kに供給されるようになっている。
また、液体現像剤補給部80Yには、現像剤回収部15Yで回収された液体現像剤、現像剤回収部22Yで回収された液体現像剤が回収され、再利用される。液体現像剤補給部80M、80C、80Kも同様である。
【0103】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図4に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0104】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0105】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0106】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0107】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0108】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0109】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0110】
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0111】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、後述するような摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0112】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0113】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。これにより、トナー粒子から好適に固化剤が流出し、トナー粒子の表面にある絶縁液体をより確実に固化することができる。
【0114】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。
【0115】
また、前述した実施形態では、水系分散液を得、該水系分散液に電解質を添加することにより合一粒子を得るものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、合一粒子は、水系液体に、着色剤とモノマーと界面活性剤と重合開始剤とを分散させ、乳化重合により、水系分散液を調製し、該水系分散液に電解質を添加して会合させる乳化重合会合法を用いて調製されたものであってもよいし、得られた水系分散液を噴霧乾燥することにより合一粒子を得るものであってもよい。
また、前述した実施形態では、画像形成装置として、コロナ放電器を有する構成について説明したが、コロナ放電器は無くてもよい。
【実施例】
【0116】
[1]液体現像剤の製造
以下のようにして、液体現像剤を製造した。
(実施例1)
まず、トナー粒子の製造を行った。なお、温度が記載されていない工程については、室温(25℃)で行った。
【0117】
<分散液調整工程>
(着色剤マスター溶液の調製)
まず、樹脂材料として、ポリエステル樹脂(酸価:10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg):55℃、軟化点:107℃):100重量部を用意した。
次に、上記樹脂材料と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0118】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が40wt%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0119】
(固化剤マスター液の調製)
まず、樹脂材料として、ポリエステル樹脂(酸価:10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg):55℃、軟化点:107℃)を用意した。
次に、上記樹脂材料と、固化剤としてのトリグリセリンジステアリン酸エステル(分子量:773、融点:73℃)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、固化剤と樹脂材料との混合物を得た。
【0120】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物:100重量部と、メチルエチルケトン:120重量部とをボールミルを用いて6時間混合した。この混練物の分散液を固形分含有量が40wt%となるようにさらにメチルエチルケトンで希釈して固形剤の分散液(固形剤マスター液)を得た。
【0121】
(樹脂液調製処理)
上記着色剤マスター溶液:99.0重量部に上記固化剤マスター液:90.0重量部、メチルエチルケトン:31.2重量部、前記ポリエステル樹脂:104.7重量部、および乳化剤としてのネオゲンSC−F(第一工業製薬社製):1.1重量部を加えて、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料、固化剤は均一に微分散していた。
【0122】
(分散質形成処理)
次いで容器内の樹脂液に1規定アンモニア水:50重量部を加えて、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)により、攪拌翼の翼先端速度を7.5m/sとして十分に攪拌し、フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、その後攪拌翼の翼先端速度を14.7m/sとして攪拌を行いつつ、170重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こした。攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して、さらに脱イオン水:70重量部を加えた。これにより、樹脂材料を含む分散質が分散した水系分散液を得た。
<合一工程>
次に、水系分散液をマックスブレンド翼を有した攪拌容器に移し、攪拌翼の翼先端速度を1.0m/sとして攪拌を行いながら水系分散液の温度を25℃とした。
次に、同様の温度、攪拌条件を保ちつつ、5.0%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の合一を行い、合一粒子の形成を行った。滴下後、合一粒子のトナー粒子についての50%体積粒径Dv(50)[μm]が3μmに成長するまで攪拌を続けた。合一粒子のDv(50)が2.5μmになったら、脱イオン水:120.6重量部を添加し、合一を終了した。
【0123】
<脱溶剤工程>
得られた合一粒子分散液に対して、減圧下で、固形分含有量が23wt%となるまで有機溶剤を留去して、樹脂微粒子のスラリーを得た。
<洗浄工程>
次に、スラリーに対し、固液分離を行い、さらに水中への再分散(リスラリー)、固液分離を繰り返し行うことによる洗浄処理を施した。その後、吸引ろ過法により、着色樹脂微粒子のウェットケーキ(樹脂微粒子ケーキ)を得た。なお、ウェットケーキの含水率は35wt%であった。
<乾燥工程>
その後、真空乾燥機を用いて、得られたウェットケーキを乾燥することにより、トナー粒子を得た。
【0124】
<分散工程>
上記の方法で得られたトナー粒子:37.5重量部、分散剤としてのソルスパース11200(日本ルーブリゾール社製):1.8重量部、菜種油(日清オイリオ社製、商品名「ハイオレイック菜種油」):90重量部、大豆油とメタノールとのエステル交換反応により生成された大豆油脂肪酸メチル(粘度5.1mPa・s、日清オイリオ社製、商品名「大豆油脂肪酸メチル」):60重量部をセラミック製ポット(内容積550ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:1mm)を体積充填率85%になるようにセラミック製ポットに入れ、卓上ポットミルにて回転速度210rpmで24時間分散を行った。これにより、液体現像剤が得られた。
【0125】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子のDv(50)は、2.0μmであった。なお、得られたトナー粒子の50%体積粒径Dv(50)[μm]は、Mastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。また、以下に説明する各実施例、各比較例で得られた粒子についても同様にして、粒径を求めた。
【0126】
また、得られた液体現像剤の25℃における粘度は、120mPa・sであった。
また、シアン系顔料の代わりに、マゼンダ系顔料:ピグメントレッド122、イエロー系顔料:ピグメントイエロー180、ブラック系顔料:カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)に、それぞれ変更した以外は、上記と同様にして、マゼンダ系液体現像剤、イエロー系液体現像剤、ブラック系液体現像剤を製造した。
【0127】
(実施例2〜10)
固化剤、絶縁性液体等の材料の種類、含有量を表1、2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(比較例1)
固化剤を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(比較例2)
固化剤を用いず、絶縁性液体の種類を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0128】
以上の各実施例および比較例について、液体現像剤の組成、物性、分散剤の物性、含有量等を表1に示した。なお、表中、ポリエステル樹脂をPESと、スチレン−アクリル酸エステル共重合体をST−ACと示した。なお、表中「P−60」は、流動パラフィン(コスモ石油社製、商品名「コスモホワイトP−60」)、大豆油、菜種油脂肪酸メチルは、日清オイリオ社製のものを用いた。また、カプリル酸メチルは、ライオン社製のものを用いた。また、実施例で用いた各ポリグリセリン脂肪酸エステルは、適宜、所定の重合度のポリグリセリンと、脂肪酸とをエステル化することにより合成し、用いた。また、実施例で用いた各ポリグリセリン脂肪酸エステルは、すべて、融点が60〜100℃の範囲内に存在するものであった。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下の評価を行った。
[2.1]セット性
図1〜図4に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を120℃、搬送速度を40枚/分として、熱定着を行った。
熱定着を行った直後(1分以内)のトナー画像について、トナー画像の表面を軽く人差し指でこすり、トナー画像の表面の状態および、触れた人差し指のトナーの付着状態について、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0132】
非常に良い(A) :トナー画像にかすれは見られず、人差し指にもトナーは確認され
ない。
良い(B) :トナー画像にわずかにかすれが見られる、または、人差し指に付
着したトナーがわずかに確認できる。
許容範囲(C) :トナー画像にわずかにかすれが見られ、人差し指にも付着したト
ナーがわずかに確認できる。
やや悪い(D) :トナー画像に明確にかすれが見られる、または、人差し指に付着
したトナーが明確に確認できる。
悪い(E) :トナー画像に明確にかすれが見られ、人差し指にも付着したトナ
ーが明確に確認できる。
【0133】
[2.2]定着強度
図1〜図4に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を120℃、搬送速度を50枚/分として、熱定着を行った。
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重:1.2kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0134】
非常に良い(A) :画像濃度残存率が95%以上。
良い(B) :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
許容範囲(C) :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
やや悪い(D) :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
悪い(E) :画像濃度残存率が70%未満。
【0135】
[2.3]定着印字面の耐ブロッキング性の評価
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにしてブロッキングに対する耐性(耐ブロッキング性)の評価を行った。
まず、図1〜図4に示すような構成を有する画像形成装置を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙)上に、記録媒体に形成されたトナー画像のトナー重量が0.75mg/cmとなるように、所定のパターンの単色のトナー像を転写した。このトナー像が転写された記録媒体について、熱定着ローラの設定温度を120℃として熱定着を行い、熱定着したトナー画像を得た。
【0136】
画像形成を行った2枚の記録媒体を、定着トナー画像同士が密着するように合わせ、50℃の温度下にて、記録媒体上に重りを置いて1.0kgf/cmの荷重を加えながら、記録媒体上の定着トナー画像同士を24時間密着させた。その後、記録媒体上から重りを取り除き、記録媒体が室温(25℃)になるまで放冷した。
放冷後、2枚の記録媒体を剥がすことで、密着させていた定着トナー画像同士を引き剥がした。剥がされた後の定着トナー画像を目視にて確認し、付着粉、光沢むら、濃度むら等の有無を以下の4段階の基準に従い評価した。
A :定着トナー画像上に、付着粉、光沢むら、濃度むらがまったく認められない。
B :定着トナー画像上に、付着粉、光沢むら、濃度むらがほとんど認められない。
C :定着トナー画像上に、付着粉、光沢むら、濃度むらがわずかに認められる。
D :定着トナー画像上に、付着粉、光沢むら、濃度むらがはっきりと認められる。
【0137】
[2.4]環境安定性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、40℃、相対湿度65%の環境下に、6ヶ月間放置した。その後、液体現像剤の様子を観察し、放置前後の粘度、色、酸価、および電気抵抗値の変化を以下の5段階の基準に従い評価した。なお、酸価の測定は、JIS K2501に準拠して行った。また、液体現像剤の色の変化は、目視により評価した。また、粘度は、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。また、電気抵抗値は、ユニバーサルエレクトロメーター MMAII−17B、液体用電極LP−05、シールドボックスP−618(川口電機製作所製)を用いて測定した。
【0138】
A :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がまったく認められない。
B :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がほとんど認められない。
C :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がわずかに認められるが、液
体現像剤として問題の無い範囲である。
D :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がはっきりと認められる。
E :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化が顕著に認められる。
【0139】
[2.5]分散安定性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
A :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
B :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
C :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤として
問題の無い範囲である。
D :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
E :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
これらの結果を表3に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
表3から明らかなように、本発明の液体現像剤は、セット性、定着強度、耐ブロッキング性に優れるものであった。また、本発明の液体現像剤は、トナー粒子の分散安定性および環境安定性に優れたものであった。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
また、本発明の液体現像剤について、定着時の記録媒体の搬送速度を60枚/分、80枚/分とした以外は、上述したような[2.1]、[2.2]と同様の評価を行ったところ、液体現像剤は、セット性、定着強度に優れたものであった。このことから、本発明の液体現像剤は、高速印刷に適していることが考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図3】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図4】図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0143】
1…トナー粒子 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13M、13Y…感光体スクイーズローラ 14Y、14M…クリーニングブレード 15M、15Y…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤回収部 23Y…コロナ放電器(圧縮手段) 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 33Y…規制ブレード 34Y…現像剤撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42、43…従動ローラ 44…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 48…非接触式バイアス印加部材 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 55Y…中間転写部スクイーズクリーニングブレード 56Y…現像剤回収部 60…2次転写ユニット 61…上流側2次転写ローラ 62…下流側2次転写ローラ 63、65…2次転写ローラクリーニングブレード 64、66…現像剤回収部 80Y、80M、80C、80K…液体現像剤補給部 81Y、81M、81C、81K…液体現像剤タンク 82Y、82M、82C、82K…絶縁性液体タンク 83Y、83M、83C、83K…撹拌装置 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着部(定着装置) F1…熱定着ローラ(定着ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体と、トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、樹脂材料と、前記絶縁性液体を固化させる固化剤とを含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記固化剤は、ポリグリセリン化合物を含むものである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記ポリグリセリン化合物は、融点が60〜100℃である請求項2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記ポリグリセリン化合物は、重量平均分子量が300〜3000である請求項2または3に記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記ポリグリセリン化合物は、脂肪酸とポリグリセリンとのエステル化合物である請求項2ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記固化剤のトナー粒子中における含有量は、3.0〜20wt%である請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
前記絶縁性液体は、脂肪酸グリセリドを含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項8】
有機溶剤と樹脂材料と固化剤とを含む分散質が、水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、
前記合一粒子に含まれる前記有機溶剤を除去し、トナー粒子を得る脱溶剤工程と、
前記トナー粒子を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有し、
前記固化剤は、前記絶縁性液体を固化する機能を有することを特徴とする液体現像剤の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−180936(P2009−180936A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19976(P2008−19976)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】