説明

液体移送装置

【課題】複数の液体流路にそれぞれ設けられた電極に接続される配線の数を減らして、電装系のコストを低減することが可能な液体移送装置を提供する。
【解決手段】インク吐出ヘッド1は、共通インク室11と、それぞれが共通インク室11に連通する複数の個別流路15を含み、共通インク室11から供給されたインクが流れる複数のインク流路12を備えている。各インク流路12には、複数の個別流路15に対して共通の第1電極17と、複数の個別流路15にそれぞれ対応する複数の第2電極22と、第1電極17と複数の第2電極22を覆う絶縁層25が設けられている。さらに、各インク流路12の複数の第2電極22は、他のインク流路12に設けられた複数の第2電極22とそれぞれ対応づけられており、複数のインク流路12に関して、対応する第2電極22同士が互いに導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を移送する液体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体移送装置として、記録用紙等の被印刷媒体に対してインクを吐出するインクジェットヘッドが知られている。このようなインクジェットヘッドとして、ノズルに連通する圧力室を含む個別インク流路を複数備えた流路ユニットと、圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータを備えたものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなインクジェットヘッドにおいては、流路ユニット内に複雑形状の個別インク流路を多数形成する必要があることから、製造コストが高くなる傾向にある。また、一定量のインクを吐出するためには圧力室の容積をある所定の容積以上確保する必要があることなどから、このような圧力室を含む複雑形状の個別インク流路を密集させて配置すること(高集積化)が難しく、小型化が困難である。
【0003】
そこで、本願発明者は、従来のインクジェットヘッドよりも簡単な構成で液体を移送可能な装置として、エレクトロウェッティング現象を利用してインク等を移送する液体移送装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。この液体移送装置は、複数の液体流路が形成された基材と、各液体流路の途中部に配置された個別電極(第1、第2個別電極)と、個別電極を覆う絶縁層とを有する。個別電極に電圧(駆動電位)が印加されていない状態では、個別電極を覆う絶縁層の表面に対する液体の濡れ角が高くなっており、液体はこの絶縁層の表面には移動できない状態となっている。この状態から、個別電極に駆動電位が付与されて、絶縁層の下側の個別電極と上側の液体との間に所定の電位差が生じると、絶縁層の表面に対する液体の濡れ角が低下し(エレクトロウェッティング現象)、個別電極を覆う絶縁層の表面に液体が移動できるようになる。この構成によれば、液体流路を複雑な構造にすることなく、2種類の電極(第1、第2個別電極)への駆動電位の印加を切り換えるだけで、複数の液体流路のそれぞれにおいて、独立して液体の移送を行うことが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−326712号公報
【特許文献2】特開2006−35640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した特許文献2の液体移送装置においては、複数の液体流路において独立して液体を移送させるには、これら複数の液体流路にそれぞれ対応する複数の個別電極(第1、第2個別電極)に対して、独立して駆動電位を印加する必要がある。即ち、複数の個別電極にそれぞれ独立して駆動電位を印加するための同数の配線が必要になる。しかし、装置の小型化を実現するために、複数の液体流路を高密度に配置しようとすると、ピッチの細かな精細な配線パターンを形成する必要が生じるため、配線パターン形成にかかるコストがかさむなど、電装系のコストが高くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、複数の液体流路にそれぞれ設けられた電極に接続される配線の数を減らして、電装系のコストを低減することが可能な液体移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液体移送装置は、導電性を有する液体が供給される共通液室と、それぞれが、前記共通液室に連通する複数の個別流路を含み、前記共通液室から供給された前記液体が流れる複数の液体流路と、各液体流路の流路形成面に配置され、その液体流路の前記複数の個別流路に対して共通に設けられた第1電極と、各液体流路の前記複数の個別流路の流路形成面にそれぞれ配置された複数の第2電極と、各液体流路の前記第1電極と複数の第2電極を覆うように配置され、且つ、前記液体流路内の前記液体と電極の間の電位差が所定の限界電位差以上になったときに、その表面における濡れ角が、その表面に前記液体が存在し得る限界濡れ角以下まで低下する絶縁層と、各液体流路の前記第1電極と前記複数の第2電極に電位を付与する電位付与手段と、を備え、
各液体流路に設けられた前記複数の第2電極は、他の液体流路に設けられた前記複数の第2電極とそれぞれ対応づけられており、前記複数の液体流路に関して、対応する前記第2電極同士が互いに導通していることを特徴とするものである。
【0008】
各液体流路において、液体と第1電極又は第2電極の間に電位差が生じたときには、その電位差に応じて電極を覆う絶縁層の表面の濡れ角が低下する、いわゆる、エレクトロウェッティング現象(例えば、特開2003−177219号公報参照)が生じる。そして、液体と電極との間の電位差が所定の限界電位差以上になり、絶縁層の表面の濡れ角が限界濡れ角以下まで低下すると、その表面に液体が移動できるようになる。
【0009】
ここで、ある個別流路に設けられた第2電極と液体との間の電位差が限界電位差以上となり、この第2電極を覆う絶縁層の濡れ角が限界濡れ角以下まで低下したとしても、第1電極と液体との間の電位差が限界電位差よりも小さければ、その個別流路に液体は流れない。つまり、第1電極と第2電極の両方と液体との間の電位差が所定電位差以上となった場合にのみ、個別流路に液体が流れることになる。
【0010】
そのため、複数の液体流路の間で対応する第2電極同士を導通させて、互いに導通する複数の第2電極に対して1本の配線で同じ電位を共通に付与しても、第1電極の電位を適切に設定することで、所望の個別流路においてのみ液体を移送することができる。従って、全ての第2電極にそれぞれ独立した配線を接続する場合に比べて、配線の総数を減らすことができ、電装系のコストを低減することが可能になる。
【0011】
第2の発明の液体移送装置は、前記第1の発明において、各液体流路の前記第1電極と前記複数の第2電極とが、液体の流れ方向に関して隣接して配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
このように、液体の流れ方向に関して第1電極と第2電極が隣接していると、これらの電極の電位が切り換えられたときに、液体の移送開始/停止が速やかに行われる。つまり、応答性が高い液体移送装置が得られる。
【0013】
第3の発明の液体移送装置は、前記第1又は第2の発明において、各液体流路は、前記共通液室に連通する幹流路をさらに有し、各液体流路の前記複数の個別流路は、前記幹流路から分岐しており、前記第1電極は、前記液体流路のうちの前記幹流路の流路形成面に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
液体流路の上流側に位置する共通液室内の圧力が何らかの原因により大きく低下すると、個別流路内の液体のメニスカスが上流側へ移動し、さらには、共通液室まで引き込まれてしまう虞がある。しかし、本発明においては、各液体流路において、複数の個別流路の上流側に、個別流路よりも流路断面積の大きい幹流路が存在しているため、液体のメニスカスが上流側へ引き込まれにくい。
【0015】
第4の発明の液体移送装置は、前記第3の発明において、前記幹流路の、前記第1電極の上流端が位置する部分の流路断面積は、それよりも下流側部分の流路断面積よりも小さくなっていることを特徴とするものである。
【0016】
第1電極が配置されている幹流路は、複数の個別流路が分岐する元の流路であることから、幹流路の流路断面積は比較的大きいものとなる。その一方で、第1電極の上流側の端において液体の移動を確実に止めるためには、この第1電極上流端が位置する部分における流路断面積が小さいことが好ましいが、幹流路の全長にわたって流路断面積を小さくすると流路抵抗が大きくなってしまう。そこで、本発明では、第1電極の上流端において流路断面積を小さくし、それよりも下流側においては流路断面積を大きくすることで、流路抵抗を大きくすることなく、第1電極の上流端で液体を確実に止めることが可能となる。
【0017】
第5の発明の液体移送装置は、前記第1又は第2の発明において、前記第1電極は、前記液体流路のうちの前記複数の個別流路の流路形成面に、これら複数の個別流路に跨って配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
このように、第1電極が、複数の個別流路に跨って配置されることにより、複数の個別流路にそれぞれ位置する第1電極の部分には、それぞれ同じ電位が付与されることになる。尚、第1電極は、複数の第2電極に対して上流側と下流側の何れに配置されていてもよい。
【0019】
第6の発明の液体移送装置は、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記共通液室の液室形成面に配置されて前記共通液室内の前記液体に直接接触し、且つ、常に所定の基準電位に保持される共通電極を有することを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、液体が、常に基準電位に保持された共通電極に接触することで、液体の電位が安定するため、第1、第2電極に所定の電位が付与されたときの液体との間の電位差がふらつくことがなく、液体移送の安定性が増す。
【0021】
第7の発明の液体移送装置は、前記第1〜第6の何れかの発明において、相対向する状態で接合されることによって、それらの内部に前記複数の液体流路が形成される、2枚の略平板状の流路形成部材を備え、一方の前記流路形成部材の、他方の前記流路形成部材との対向面に、前記液体流路を区画する第1隔壁部と、各液体流路の前記個別流路を区画する第2隔壁部とが形成され、前記他方の流路形成部材の、前記一方の流路形成部材との対向面に、前記第1電極、前記第2電極、及び、これらの電極を覆う前記絶縁層が形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
このように、一方の流路形成部材に第1隔壁部と第2隔壁部を形成することで、他方の流路形成部材の対向面を平坦面とすることができる。従って、この他方の流路形成部材の対向面に、第1、第2電極や絶縁層を形成することが容易になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の液体流路の間で対応する第2電極同士を導通させて、互いに導通する複数の第2電極に対して1本の配線で同じ電位を共通に付与しても、第1電極の電位を適切に設定することで、所望の個別流路においてのみ液体を移送することができる。従って、全ての第2電極にそれぞれ独立した配線を接続する場合に比べて、配線の総数を減らすことができ、電装系のコストを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図1〜図8を参照して説明する。本実施形態は、記録用紙にインクを移送して付着させるインク吐出ヘッドを有し、記録用紙に所望の画像等を記録するプリンタに本発明を適用した一例である。
【0025】
図1に示すように、プリンタ100は、それぞれが吐出口15aを備えた複数のインク流路12を含むインク吐出ヘッド1と、このインク吐出ヘッド1にチューブ4を介して接続されたインクタンク2と、インク吐出ヘッド1によるインクの移送動作を制御する制御装置3(図2参照)とを備えている。そして、プリンタ100は、インク吐出ヘッド1の前端面に設けられた複数の吐出口15aから、それらの前方に位置する記録用紙P(図5〜図8参照)に向けてそれぞれインクを吐出させて、記録用紙Pに所望の画像等を記録する。尚、図1における前後左右の方向を前後左右と定義して以下説明する。
【0026】
次に、インク吐出ヘッド1について説明する。図2はインク吐出ヘッド1の一部分の横断面図、図3は図2のA−A線断面図である。図1に示すように、インク吐出ヘッド1はその外郭を構成するヘッド本体10を有する。また、このヘッド本体10は、左右に長い矩形の平面形状をそれぞれ有し、相対向した状態で接合された略平板状の2枚の流路形成部材30,31を含んでいる。これら2枚の流路形成部材30,31は、それぞれ、ポリイミド等の合成樹脂材料、ガラス材料、表面に酸化膜が形成されたシリコン等からなり、少なくとも、後述する電極17,21や配線20,24が形成される面や、インクが接触する面において絶縁性を有する。
【0027】
このヘッド本体10の2枚の流路形成部材30,31の間には、その長手方向に延びる共通インク室11(共通液室)と、この共通インク室11から分岐してそれぞれ前方へ延びる複数のインク流路12が形成されている。図2においては、ヘッド本体10に設けられた複数のインク流路12のうちの、3つのインク流路12(12a,12b,12c)が示されている。また、このインク吐出ヘッド1で用いられるインクは、水を主成分とし、染料と溶剤を添加した水系染料インク、又は、顔料と溶剤を添加した水系顔料インクなどの、導電性を有するインクである。
【0028】
共通インク室11は、複数のインク流路12の上流側(後側)に設けられており、これら複数のインク流路12の全てに連通している。また、この共通インク室11はインクタンク2(図1参照)と接続されている。そして、インクタンク2からインク吐出ヘッド1に供給されたインクは、共通インク室11を介して複数のインク流路12に供給される。また、インクタンク2はインク吐出ヘッド1内のインク流路12よりも若干高い位置に配置されており、インク流路12内のインクには、吐出口15aへ向かう流れを生じさせるように、インクタンク2のヘッド圧が常に作用している。
【0029】
共通インク室11の底面(液室形成面)には、その長手方向である左右方向に延びる共通電極26が形成されており、共通インク室11内のインクは共通電極26と直接接触する。また、図2に示すように、共通電極26はドライバIC21と接続されており、このドライバIC21によって常にグランド電位(基準電位)に保持されている。従って、共通電極26と接触する共通インク室11内のインクの電位は、常にグランド電位に保持されることになる。
【0030】
複数のインク流路12は、それらの間において前後に延びる隔壁13(第1隔壁部)により互いに隔てられている。各インク流路12は、共通インク室11に連なる幹流路14と、この幹流路14から分岐する3つの個別流路15とを有する。各インク流路12の幹流路14には、それぞれ共通インク室11からインクが供給される。また、各インク流路12の3つの個別流路15は、それらの間において前後に延びる隔壁16(第2隔壁部)により互いに隔てられている。さらに、各個別流路15の先端には前方へ開口した吐出口15aが設けられている。図1、図2に示すように、複数の吐出口15aは、ヘッド本体10の前面において左右方向に一列に配置されている。
【0031】
尚、複数のインク流路12を区画する隔壁13や、各インク流路12の3つの個別流路15を区画する隔壁16は、上側の流路形成部材30の下面に形成されている。一方、下側の流路形成部材31の上面は平坦面に形成されている。そして、隔壁13,16が形成された流路形成部材30の下面と、流路形成部材31の平坦な上面の、2つの対向面が接合されることにより、それらの間に複数のインク流路12が形成されている。
【0032】
図2に示すように、各インク流路12の幹流路14は、その上流側部分(後端部)において流路幅が一定であり、下流側部分においては下流(前方)に向かうほど流路幅がテーパー状に拡大する流路形状を有する。そして、この幹流路14の底面(流路形成面)の、流路幅(即ち、流路断面積)が拡大する下流側部分には、この下流側部分の底面のほぼ全域を覆う、平面視台形状の第1電極17が形成されている。この第1電極17は、幹流路14の下流側端部(前端部)から分岐する3つの個別流路15に対して共通に設けられている。また、幹流路14の流路幅が変化する、上流側部分と下流側部分の境界位置に、第1電極17の上流端(台形の短辺)が位置している。
【0033】
また、下側の流路形成部材31には、3つの幹流路14の、第1電極17が形成された領域から流路形成部材31の下面までそれぞれ延びる3つの貫通孔18a,18b,18cがレーザー加工等によって形成され、図3に示すように、これらの貫通孔18a〜18cにはそれぞれ導電性材料27が充填されている。さらに、流路形成部材31の下面には、3つの貫通孔18a〜18cから流路形成部材31の長手方向端部まで延びる3本の配線20a,20b,20cが形成されている。そして、図2に示すように、3つの第1電極17は、3つの貫通孔18a〜18c内の導電性材料27と配線20a〜20cを介して、駆動回路であるドライバIC21(電位付与手段)にそれぞれ接続されており、このドライバIC21から各第1電極17に対して、所定の駆動電位とグランド電位の何れかが選択的に付与されるようになっている。
【0034】
幹流路14から分岐する3つの個別流路15の底面(流路形成面)には、これら個別流路の底面のほぼ全域を覆う、平面視矩形状の3つの第2電極22がそれぞれ形成されている。そして、これら3つの第2電極22は、インクの流れ方向である前後方向に関して、第1電極17に隣接して配置されている。また、下側の流路形成部材31には、3つの個別流路15の第2電極22が形成された領域から流路形成部材31の下面までそれぞれ延びる3つの貫通孔23a,23b,23cがレーザー加工等によって形成されており、これら貫通孔23a〜23cにも導電性材料28が充填されている。
【0035】
ここで、幹流路14から分岐する3つの個別流路15の間で、貫通孔23a〜23cが形成されている位置は前後方向に互いにずれている。即ち、図2に示すように、3つの個別流路15のうち、左側(図2中の上側)の個別流路15においては、貫通孔23aは第2電極22の後端部と重なる位置に形成されている。また、中央の個別流路15においては、貫通孔23bは第2電極22の中央部と重なる位置に形成されている。さらに、右側(図2中の下側)の個別流路15においては、貫通孔23cは第2電極22の前端部と重なる位置に形成されている。
【0036】
さらに、図2、図3に示すように、下側の流路形成部材31の下面には、ヘッド本体10の長手方向(左右方向)に沿ってそれぞれ延びて、前後方向の位置が同じ貫通孔23a〜23c同士を繋ぐ3本の配線24a,24b,24cが形成されている。そして、各インク流路12に設けられた3つの第2電極22は、他のインク流路12において同じ位置に設けられた3つの第2電極22とそれぞれ対応しており、対応する第2電極22同士が、貫通孔23a〜23c内の導電性材料28及び配線24a〜24cを介して互いに導通している。
【0037】
具体的には、図2に示すように、3つのインク流路12に関して、左側(図2中の上側)に位置する3つの第2電極22同士が配線24aを介して互いに連通し、中央に位置する3つの第2電極22同士が配線24bを介して互いに連通し、さらに、右側(図2中の下側)に位置する3つの第2電極22同士が配線24cを介して互いに導通している。さらに、これら互いに導通する第2電極22は、配線24a〜24cを介して、駆動回路であるドライバIC21(電位付与手段)にそれぞれ接続されている。そして、このドライバIC21から、互いに導通する第2電極22に対して、所定の駆動電位とグランド電位の何れかが選択的に付与されるようになっている。この構成によれば、第1電極17用と第2電極22用の両方を合わせても配線の数は6本となり、9つの第2電極22に対して配線がそれぞれ独立して設けられている場合(配線の数が9本)に比べて配線の数を少なくすることができる。
【0038】
尚、第1電極17、第2電極22、及び、共通電極26は、スクリーン印刷法、蒸着法、スパッタ法等を用いて、下側の流路形成部材31の上面に形成することができる。
【0039】
図2に示すように、ドライバIC21は、第1電極17、第2電極22、及び、共通電極26と接続されている。このドライバIC21は、例えば、ヘッド本体10とは離れた位置に設けられ、第1電極17に導通する配線20a〜20cや第2電極22に導通する配線24a〜24cと、FPC(Flexible Printed Circuit)等の配線部材を介して接続される。あるいは、ドライバIC21が流路形成部材31の下面に配置されて、配線20a〜20cや配線24a〜24cと直接接続されていてもよい。
【0040】
図2、図3に示すように、幹流路14の下流側部分の底面、及び、幹流路14から分岐する3つの個別流路15の底面には、フッ素系樹脂等からなる絶縁層25が、第1電極17と3つの第2電極22を完全に覆うように設けられている。この絶縁層25は、例えば、フッ素系樹脂をスピンコート法等により電極17,22の表面にコーティングするなどして形成することができる。
【0041】
ここで、電極(第1電極17、第2電極22)がグランド電位であり、グランド電位に保持されたインクとの間に電位差がない状態では、絶縁層25の表面の撥液性は、インク流路12を形成する流路形成部材30,31の表面よりも高くなっている。言い換えれば、絶縁層25の表面に対するインクIの濡れ角θは、インク流路12の内面の、絶縁層25が形成されていない領域における濡れ角よりも大きくなっている。そのため、この状態では、絶縁層25の表面にインクIが移動することができない(図6参照)。
【0042】
しかし、電極17,22に、グランド電位とは異なる電位である所定の駆動電位が付与されて、インク流路12内のインクと電極17,22との間に電位差が生じると、この電位差に起因して、インクと絶縁層25との間の界面エネルギーが変化し、それに伴って絶縁層25の表面の濡れ角が変化する。即ち、図4に示すように、インクと電極との間の電位差Vが大きくなるほど、絶縁層25の表面に対するインクの濡れ角θが小さくなる(エレクトロウェッティング現象)。
【0043】
そして、インク流路12内において、インクと電極17,22の間の電位差Vが、図4に示す限界電位差Va以上になったときには、絶縁層25の表面の濡れ角θが所定の限界濡れ角θa以下まで低下して、インクが、絶縁層25の、駆動電位が付与された電極を覆う領域に移動できるようになる。尚、この限界濡れ角θaは、インク流路12内のインクに作用しているインクタンク2のヘッド圧や、インク流路12の流路形状(特に、流路断面積)、インクの表面張力等の条件により一義的に決定される。
【0044】
さらに、各インク流路12においては、幹流路14に設けられた第1電極17と、この幹流路14から分岐する個別流路15に設けられた第2電極22とが、インクの流れ方向(前後方向)に並んで配置されている。従って、第1電極17と第2電極22の両方に駆動電位が付与されたときにのみ、上流側から、インクが第1電極17と第2電極22を覆う絶縁層25の表面を越えて、下流の吐出口15aから吐出されることになる。
【0045】
尚、前述したように、上側の流路形成部材30の下面に、流路を区画する隔壁13,16が全て形成されている場合には、この面と接合される、下側の流路形成部材31の上面を平坦面とすることができる。この場合、平坦な流路形成部材31の上面に、スクリーン印刷等の方法を用いて電極17,22,26を一度に形成したり、スピンコート等の方法を用いて、電極17,22を覆う絶縁層25を均一な厚さで形成したりすることが容易になる。
【0046】
勿論、下側の流路形成部材31の上面に隔壁13,16の一部又は全部が形成され、これらの隔壁13,16で仕切られた流路形成面に、第1電極17、第2電極22、及び、絶縁層25が形成された構成とすることも当然ながら可能である。
【0047】
次に、制御装置3について説明する。図2に示される制御装置3は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ100の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えている。そして、この制御装置3は、PC等からの外部入力データに基づいてインク吐出ヘッド1の所望の吐出口15aからインクを吐出させるように、第1電極17及び第2電極22に電位を付与するドライバIC21を制御したり、あるいは、記録用紙Pの搬送を行う紙送り機構(図示省略)を制御したりするなど、プリンタ100の各種動作を制御するように構成されている。
【0048】
その中でも、制御装置3によるドライバIC21の制御について詳細に説明する。制御装置3は、インク吐出ヘッド1が、所望の個別流路15の吐出口15aからインクを吐出するとともに、それ以外の個別流路15の吐出口15aからはインクを吐出しないように、ドライバIC21を制御して、各々のインク流路12の第1電極17及び第2電極22に対して、駆動電位又はグランド電位の何れか一方を選択的に付与する。
【0049】
次に、インク吐出ヘッド1のインク吐出動作について、図5〜図8を参照してより具体的に説明する。尚、図5〜図8において、“+”は、配線を介して電極(第1電極17または第2電極22)に駆動電位(例えば、+30V)が付与されている状態を示し、“GND”は、配線を介して電極にグランド電位が付与されている状態を示す。
【0050】
図5、図6に示すように、ドライバIC21から、全てのインク流路12(12a〜12c)の第1電極17に対して配線20a〜20cを介してグランド電位が付与されている状態では、第1電極17と幹流路14内のインクとの間に電位差がほとんどなく、図4に示す限界電位差Vaよりも十分に小さい。従って、絶縁層25の第1電極17を覆う領域に対するインクの濡れ角は限界濡れ角θaよりも大きい状態となっており、インクはこの領域に移動することができない。そのため、全てのインク流路12において、第1電極17の上流端の位置にインクIのメニスカスが形成され、インクは吐出口15aから吐出されない状態(待機状態)となる。尚、この待機状態においては、第2電極22の位置までインクが到達していないために、第2電極22の電位はインクに何ら影響を及ぼさないが、消費電力の低減のため、第2電極22に対しても、ドライバIC21から配線24a〜24cを介してグランド電位が付与されている。
【0051】
また、図5、図6に示す待機状態にあるときに、第1電極17の上流側の端においてインクIのメニスカスを確実に止めるためには、この第1電極17の上流端が位置する部分における流路断面積はできるだけ小さいことが好ましい。その一方で、幹流路14の全長にわたって流路断面積を小さくすると流路抵抗が大きくなってしまう。そこで、本実施形態においては、幹流路14の、第1電極17の上流端が位置する部分の流路幅(流路断面積)が、それよりも下流側部分の流路幅よりも小さくなっている。これにより、幹流路14の流路抵抗をそれほど大きくすることなく、第1電極17の上流端でインクを確実に止めることが可能となる。
【0052】
次に、図7、図8に示すように、3つのインク流路12のうち、左側(図7の上側)と中央に位置する2つのインク流路12a,12bのそれぞれにおいて、中央の個別流路15からインクを吐出させる指令が、制御装置3に入力されたとする。すると、制御装置3からの指令を受けて、ドライバIC21は、左側と中央に位置する2つのインク流路12a,12bの第1電極17に対して、2本の配線20a,20bを介して駆動電位を付与する。すると、これらの第1電極17を覆っている絶縁層25に対するインクの濡れ角θが限界濡れ角θa以下まで低下するため、左側と中央の2つのインク流路12a,12bのそれぞれにおいて、インクIが幹流路14の下流側部分(台形領域)に流れ込む。
【0053】
さらに、ドライバIC21は、3つのインク流路12の中央の個別流路15にそれぞれ設けられた、互いに導通する3つの第2電極22に対して、1本の配線24bを介して駆動電位を付与する。すると、これらの第2電極22を覆っている絶縁層25に対するインクの濡れ角θが限界濡れ角θa以下まで低下する。従って、左側と中央の2つのインク流路12a,12bのそれぞれにおいて、インクIが中央の個別流路15に流れ込み、吐出口15aからインクが吐出される。
【0054】
一方、右側のインク流路12cにおいては、第1電極17に駆動電位が付与されていないため、インクは幹流路14の下流側部分まで流れ込んでいない。そのため、中央の第2電極22に駆動電位が付与されても、中央の個別流路15にインクが流れ込んでくることはなく、この個別流路15の吐出口15aからインクは吐出されない。
【0055】
尚、前述したように、共通インク室11の底面には、この共通インク室11内のインクに直接接触し、且つ、常にグランド電位に保持される共通電極26が設けられている。そのため、インク流路12内のインクの電位が安定し、第1電極17及び第2電極22とインクとの間の電位差がふらつかない。つまり、第1電極17及び第2電極22に駆動電位が付与されていないときにインクの電位が変動して、意図に反してインクが吐出されてしまうといった誤動作が発生しにくくなるため、インク吐出動作の安定性が増す。
【0056】
また、図7に示すように、個別流路15内にインクが存在する状態において、インク流路12の上流側に位置する共通インク室11内のインク圧力(背圧)が何らかの原因で大きく低下すると、個別流路15内のインクIのメニスカスが上流側へ移動し、さらには、共通インク室11まで引き込まれてしまう虞がある。しかし、本実施形態においては、各インク流路12において、3つの個別流路15の上流側に、これら個別流路15よりも流路幅(流路断面積)の大きい幹流路14が存在している。インクのメニスカスは、表面張力の作用(毛管力)によって断面積の小さな流路へ流れようとする性質を有するため、個別流路15と共通インク室11との間に、個別流路15よりも流路断面積の大きな幹流路14が存在すると、個別流路15から上流側の幹流路14へメニスカスが移動するのを阻止する力が働く。従って、上流側の共通インク室11において圧力低下が生じても、インクIのメニスカスが上流側へ引き込まれにくくなる。
【0057】
また、各インク流路12において、幹流路14の下流側部分に配置された第1電極17と、幹流路14から分岐した3つの個別流路15にそれぞれ配置された3つの第2電極22は、互いに隣接している。そのため、電極電位が切り換えられたときの、インク流路12内におけるインクの移動/停止が速やかに行われる。つまり、インク吐出ヘッド1の吐出応答性が高くなる。
【0058】
以上、左側と中央の2つのインク流路12a,12bのそれぞれにおいて、中央に位置する個別流路15の吐出口15aからインクを吐出する例を挙げて説明したが、他の個別流路15の吐出口15aからインクを吐出することももちろん可能である。つまり、インクを吐出したい所定の個別流路15が属するインク流路12の、幹流路14に設けられた第1電極17に駆動電位を付与するとともに、前記所定の個別流路15に設けられた第2電極22に駆動電位を付与すればよい。
【0059】
以上説明したように、インク吐出ヘッド1の各インク流路12には、3つの個別流路15に共通の第1電極17と、3つの個別流路15にそれぞれ対応した3つの第2電極22が設けられており、第1電極17と3つの第2電極22は絶縁層25で覆われている。そして、第1電極17と第2電極22の両方と、インクとの間の電位差が所定電位差以上となった場合にのみ、個別流路15内にインクが流れ込み、吐出口15aからインクが吐出される。この構成によれば、複数のインク流路12の間で対応する第2電極22同士を導通させて、これらの導通する複数の第2電極22に対して1本の配線24で同じ電位を共通に付与しても、第1電極17の電位を適切に設定することで、所望の個別流路15からのみインクを吐出させることができる。従って、全ての第2電極22にそれぞれ独立した配線を接続する場合に比べて、配線の総数を減らすことができ、電装系のコストを低減することが可能になる。
【0060】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0061】
1]前記実施形態においては、各インク流路において、複数の個別流路に共通の第1電極が、これら複数の個別流路にそれぞれ設けられた複数の第2電極よりも上流側に配置されているが(図2参照)、第1電極が複数の第2電極よりも下流側に配置されていてもよい。
【0062】
例えば、図9に示すように、各インク流路12Aの複数の個別流路15Aの下流側に、これら複数の個別流路15Aが合流した短い流路40が設けられ、この流路40に第1電極17Aが配置されていてもよい(変更形態1)。但し、この場合には、流路40に連なる吐出口41が、3つの個別流路15Aで共通となってしまうため、ある個別流路15Aに対応した吐出領域から吐出されるインクに、これに隣接する個別流路15Aから流れてきたインクが少し混ざってしまう虞がある。
【0063】
そこで、このような問題を生じさせないようにするには、図10に示すように、各インク流路12Bの複数の個別流路15Bを区画する隔壁16Bが、ヘッド本体10Bの前面まで延びていることが好ましい(変更形態2)。言い換えれば、複数の個別流路15Bがそれぞれ独立した吐出口15aを有し、これら個別流路15Bの、第2電極22が配置された領域よりも下流側の領域に、複数の個別流路15Bに跨って第1電極17Bが配置されていればよい。
【0064】
2]前記実施形態では、各インク流路12が、共通インク室11に連通した流路幅(流路断面積)の広い幹流路14を有し、この幹流路14から複数の個別流路15が分岐している。しかし、図11に示すように、隔壁16Cが共通インク室11Cまで延びて幹流路が省略され、各インク流路12Cの複数の個別流路15Cがそれぞれ共通インク室11Cから直接分岐していてもよい(変更形態3)。
【0065】
図11に示すように、各インク流路12Cの第1電極17Cは、3つの個別流路15Cに跨って配置されることで、これらの個別流路15Cに対して共通に設けられる。つまり、3つの個別流路15Cにそれぞれ対応する第1電極17Cの部分には、常に同じ電位が付与される。尚、図11においては、第1電極17Cは第2電極22よりも上流側に配置されているが、前述した変更形態1(図9参照)や変更形態2(図10参照)のように、この変更形態3においても、第1電極17Cが第2電極22よりも下流側に配置されていてもよい。
【0066】
3]前記実施形態では、第1電極17や第2電極22に電位を付与するための配線20,24は、流路形成部材31の下面に形成されて、貫通孔18,23内の導電性材料を介して、流路形成部材31の上面の第1電極17や第2電極22と導通している(図2参照)。しかし、これらの配線が、第1電極17や第2電極22から直接引き出されて、流路形成部材31の上面に引き回されてもよい。
【0067】
ただし、流路形成部材31の上面の、インク流路12の流路形成面に配線を配置すると、インク流路12内のインクが配線に直接接触してしまう。そこで、流路形成部材31の上面に配線を配置する場合には、インク流路12の流路形成面以外の領域(即ち、隔壁13,16が接合される領域)に配線を配置したり、あるいは、流路形成面に配線を配置するとともにこの配線を絶縁層で被覆したりすればよい。
【0068】
4]共通インク室に、インクの電位を安定させるための共通電極が配置される必要は必ずしもなく、共通インク室内のインクの電位のふらつきが小さい場合には、共通電極が省略されてもよい。
【0069】
以上説明した実施の形態は、インクを記録用紙に移送して画像等を記録するプリンタに本発明を適用した一例であるが、インク以外の液体を移送する他の液体移送装置にも本発明を適用することは可能である。例えば、金属ナノ粒子を分散した導電性液体を基板に転写して配線パターンを形成する装置、DNAを分散した溶液を用いてDNAチップを製造する装置、有機化合物などのEL発光材料を分散した溶液を用いてディスプレイパネルを製造する装置、カラーフィルタ用顔料が分散された液体を用いて液晶ディスプレイ用のカラーフィルタを製造する装置などにも本発明を適用することができる。
【0070】
また、これらの液体移送装置に用いられる液体は、液体自体が導電性のものである場合に限られず、絶縁性の液体に導電性の添加剤を分散させて、導電性の液体と同様に導電性を有するようにしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】インク吐出ヘッドの一部分の横断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】インクと電極の間の電位差Vと、電極を覆う絶縁層の表面の濡れ角θとの関係を示す図である。
【図5】待機状態のインク吐出ヘッドの横断面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】ある吐出口からインクを吐出している状態のインク吐出ヘッドの横断面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】変更形態1のインク吐出ヘッドの横断面図である。
【図10】変更形態2のインク吐出ヘッドの横断面図である。
【図11】変更形態3のインク吐出ヘッドの横断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 インク吐出ヘッド
11,11C 共通インク室
12,12A,12B,12C 各インク流路
13 隔壁(第1隔壁部)
14 幹流路
15,15A,15B,15C 個別流路
16,16B,16C 隔壁(第2隔壁部)
17,17A,17B,17C 第1電極
22 第2電極
25 絶縁層
26 共通電極
30,31 流路形成部材
21 ドライバIC(電位付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する液体が供給される共通液室と、
それぞれが、前記共通液室に連通する複数の個別流路を含み、前記共通液室から供給された前記液体が流れる複数の液体流路と、
各液体流路の流路形成面に配置され、その液体流路の前記複数の個別流路に対して共通に設けられた第1電極と、
各液体流路の前記複数の個別流路の流路形成面にそれぞれ配置された複数の第2電極と、
各液体流路の前記第1電極と複数の第2電極を覆うように配置され、且つ、前記液体流路内の前記液体と電極の間の電位差が所定の限界電位差以上になったときに、その表面における濡れ角が、その表面に前記液体が存在し得る限界濡れ角以下まで低下する絶縁層と、
各液体流路の前記第1電極と前記複数の第2電極に電位を付与する電位付与手段と、
を備え、
各液体流路に設けられた前記複数の第2電極は、他の液体流路に設けられた前記複数の第2電極とそれぞれ対応づけられており、
前記複数の液体流路に関して、対応する前記第2電極同士が互いに導通していることを特徴とする液体移送装置。
【請求項2】
各液体流路の前記第1電極と前記複数の第2電極とが、液体の流れ方向に関して隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
【請求項3】
各液体流路は、前記共通液室に連通する幹流路をさらに有し、
各液体流路の前記複数の個別流路は、前記幹流路から分岐しており、
前記第1電極は、前記液体流路のうちの前記幹流路の流路形成面に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体移送装置。
【請求項4】
前記幹流路の、前記第1電極の上流端が位置する部分の流路断面積は、それよりも下流側部分の流路断面積よりも小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の液体移送装置。
【請求項5】
前記第1電極は、前記液体流路のうちの前記複数の個別流路の流路形成面に、これら複数の個別流路に跨って配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体移送装置。
【請求項6】
前記共通液室の液室形成面に配置されて前記共通液室内の前記液体に直接接触し、且つ、常に所定の基準電位に保持される共通電極を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体移送装置。
【請求項7】
相対向する状態で接合されることによって、それらの内部に前記複数の液体流路が形成される、2枚の略平板状の流路形成部材を備え、
一方の前記流路形成部材の、他方の前記流路形成部材との対向面に、前記液体流路を区画する第1隔壁部と、各液体流路の前記個別流路を区画する第2隔壁部とが形成され、
前記他方の流路形成部材の、前記一方の流路形成部材との対向面に、前記第1電極、前記第2電極、及び、これらの電極を覆う前記絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−238577(P2008−238577A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82329(P2007−82329)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】