説明

液体種菌接種装置

【課題】液体種菌を栽培容器内の培地に接種するまでの間、雑菌との接触を断ち、かつ各栽培容器内の培地へ接種すべき種菌量のばらつきを可及的に少なくすること。
【解決手段】メインタンク200と、液体種菌の接種位置においてトレイ14に収納された栽培容器12の上方に各々位置し、栽培容器12に対し接離動するノズル77と、ノズル77の開放および閉塞を切り替えるノズル開閉手段96を有するノズル機構20と、メインタンク200からノズル77に通じる流路の中途に、液体種菌を一時貯留するサブタンク230、メインタンク200からサブタンク230へ液体種菌を供給する送液機構220と、送液機構220とサブタンク230との間に、サブタンク230への液体種菌の流入を規制する弁体234と、サブタンク230内への液体種菌の供給量に基づき、弁体234の開閉動作、ノズル開閉手段96の開閉動作を各々制御する制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこを栽培する栽培容器内に充てんされた培地に液体種菌を接種する液体種菌接種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこの人工栽培では、栽培瓶や栽培袋等の栽培容器内に充填されたコーンコブやおがくず等の培地にきのこの種菌を接種し、栽培容器内できのこの栽培を行うようにしている。
また、栽培容器内の培地に接種する種菌としては、種菌容器内のコーンコブやおがくず等の培地に繁殖させた種菌(以下、種菌培地という)が用いられることが一般的である。栽培容器内の培地に種菌培地を接種する場合には、種菌容器内の種菌培地を掻き出し、掻き出した種菌培地を栽培容器内の培地に落下させることにより接種作業を行っている。
【0003】
しかし、種菌容器から種菌培地を掻き出して栽培容器内に落下させる場合には、掻き出した種菌培地の大きさにばらつきがあり、栽培容器内の培地に接種する種菌培地の量が一定にならないという課題がある。また1つの栽培容器に対して種菌容器が1つ必要であり、装置が大がかりになりすぎてしまい、接種作業の準備にも手間がかかってしまう。
【0004】
そこで、種菌培地を種菌容器から掻き出して栽培容器内の培地に接種するのではなく、液体状の種菌を栽培容器内の培地に接種する液体種菌接種装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載されている液体種菌接種装置では、複数の栽培容器を収容したトレイを搬送し、トレイの搬送経路内で各栽培容器内の培地に液体種菌を接種するものである。液体種菌を接種する際には、大気中に浮遊する雑菌との接触による液体種菌の汚染を防ぐため、圧縮エアを用いずにシリンダポンプを用いて液体種菌を送液する方式が採用されている。しかしながら液体種菌を送液するシリンダポンプが液体種菌と直接接触しているため、シリンダポンプが汚染していると液体種菌も汚染されてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、種菌収容器内に収容されている液体種菌を栽培容器内の培地に接種するまでの間に、雑菌と接触しない状態を維持することが可能な液体種菌接種装置の構成を、特許文献2において提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−9657号公報
【特許文献2】特開2009−72159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の液体種菌接種装置によれば、種菌収容器内から栽培容器内の培地に接種するまでの間、雑菌との接触を断つことに成功した。しかしながらこの種菌接種器は、液体種金を種菌収容器から栽培容器までチューブポンプにより送液しているため、液体種菌を送液する際に脈動が生じてしまう等して、種菌の接種量のばらつきを5%以下に抑えることが困難であることが明らかになった。
そこで、より均等に液体種菌を栽培容器の培地へ接種するための液体種菌接種装置の開発が要望されるようになった。
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、種菌収容器内から栽培容器内の培地に接種するまでの間、雑菌との接触を断つことに加え、各栽培容器内の培地へ接種すべき種菌量のばらつきを可及的に少なくすることが可能な液体種菌接種装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、トレイに収納され、きのこ栽培用の培地が充てんされている栽培容器内に液体種菌を接種する液体種菌接種装置であって、前記液体種菌が収容されたメインタンクと、前記液体種菌の接種位置において前記トレイに収納されている栽培容器の上方に各々位置し、前記栽培容器に対して接離動するノズルおよび、前記ノズルの開放および閉塞を切り替えるノズル開閉手段を有するノズル機構と、該メインタンクから前記ノズルに通じる流路の中途に配設され、前記液体種菌を一時貯留するサブタンクと、前記メインタンクから前記サブタンクへ液体種菌を供給する送液機構と、前記送液機構と前記サブタンクとの間に配設され、前記サブタンクへの液体種菌の流入を規制する弁体と、前記サブタンク内への前記液体種菌の供給量に基づいて、前記弁体の開閉動作および、前記ノズル開閉手段の開閉動作をそれぞれ制御する制御部と、を具備することを特徴とする液体種菌接種装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる液体種菌接種装置によれば、液体種菌を収容する種菌収容器から栽培容器内の培地に液体種菌を接種するまでの間、液体種菌は送液管の流路面以外には何ら接触することがないため、清浄な状態で液体種菌を接種することができる。また、メインタンクから送り出された液体種菌は、一旦サブタンクに貯留された後、噴射ノズルから栽培容器内の培地に接種されることになるため、送液時に脈動が発生することはなく、すべての噴射ノズルから一定圧力で液体種菌を噴射させることができる。これにより、栽培容器ごとにおける液体種菌の接種量のばらつきを抑え、栽培容器への液体種菌の接種量を均等にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における液体種菌接種装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1内の液体種菌接種装置のうち接種部の側面図である。
【図3】接種部の正面図(搬出路の出口側から臨んだ図)である。
【図4】キャップの肩部押え機構の説明図である。
【図5】キャップ脱着機構の可動台の移動機構の説明図である。
【図6】キャップ脱着機構のキャップ取り外し前の状態の説明図である。
【図7】キャップ脱着機構のキャップ取り外し中の状態の説明図である。
【図8】図7の状態における栽培容器部分の平面図である。
【図9】図8の状態からキャップ水平面内において斜め方向にスライドさせた状態の栽培容器部分を示す平面図である。
【図10】ノズル機構を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態における液体種菌接種装置の全体構成を示す正面図である。
図2は、図1中の液体種菌接種装置のうちの接種部の側面図、図3は、接種部の正面図(トレイが搬出される搬送路の出口側から臨んだ図)である。
液体種菌接種装置1は、液体種菌を収容するメインタンク200と、メインタンク200から送液部であるチューブ92を介してサブタンク230に一旦貯留させた後、サブタンク230内の液体種菌を栽培容器12内の培地に所定量接種する接種部10と、メインタンク200内の液体種菌を接種部10に送液する送液機構であるチューブポンプ220とを有している。すなわち、本実施形態にかかる液体種菌接種装置1は、液体種菌収容部であるメインタンク200と、送液機構であるチューブポンプ220と、サブタンク230を有する接種部10とが送液部であるチューブ92により連結されることにより構成されている。
【0013】
メインタンク200には、内部に収容した液体種菌を攪拌するための攪拌モータ210が配設されていて、図示しない制御部により、攪拌モータ210の作動状態が適宜制御されている。メインタンク200はローラ付き架台116に交換可能に配設されている。メインタンク200の底部と、接種部10に設けられているサブタンク230との間はチューブ92により連結されている。チューブ92による送液路の中途位置には、チューブポンプ220が配設されており、メインタンク200からサブタンク230に液体種菌が送液される。チューブポンプ220もまた、ローラ付架台122に脱着自在に配設されている。
【0014】
サブタンク230には、サブタンク230の内部圧力を検出する圧力センサ232とチューブポンプ220から送液された液体種菌のサブタンク230内への流入状態のオンオフ切り替えを行う弁体であるエアボールバルブ234が配設されている。
チューブポンプ220によりメインタンク200に収容されている液体種菌がサブタンク230に貯留されると、サブタンク230の内部圧力は徐々に増加する。圧力センサ232は、常時サブタンク230内の圧力を計測しており、サブタンク230内の圧力値が予め設定されている圧力値になると、圧力センサ232は圧力到達信号を図示しない制御部送信する。本実施形態において圧力センサ232が制御部に送信する圧力到達信号は、高圧側圧力到達信号と、低圧側圧力到達信号の2つの圧力到達信号がある。
【0015】
図示しない制御部は、サブタンク230の内部圧力が上昇し、圧力センサ232からの高圧側圧力到達信号を受信すると、エアボールバルブ234の流路を閉じる処理を実行する。また制御部は流路を閉じる処理と同時または連動して制御部はチューブポンプ220の動作を停止させる処理を実行する。制御部による以上の処理が実行された後、サブタンク230に所定圧力で貯留されている液体種菌は、後述する接種部10によって栽培容器12の培地に接種される。
【0016】
接種部10によりサブタンク230に貯留されていた液体種菌が栽培容器12内の培地に接種されると、サブタンク230の内部圧力は低下することになる。サブタンク230の内部圧力が所定の圧力値まで低下すると、圧力センサ232が低圧側圧力到達信号を制御部に送信する。制御部は低圧側圧力到達信号を受信すると、エアボールバルブ234の流路を開く処理を実行する。また制御部は、流路を開く処理と同時または連動してチューブポンプ220の動作を再開させる処理を実行する。
このようにして、サブタンク230の内部圧力の状態(高圧状態または低圧状態)に応じて、圧力センサ232から送信される圧力検出信号に基づいて、制御部がメインタンク200からサブタンク230に液体種菌を断続的に供給する処理が継続的に実行されている。
【0017】
接種部10は、培地が充填され、キャップ11が装着された栽培容器12が複数本縦横に整列された状態で収容されたトレイ14を、搬送機構16で搬送し、搬送経路上の所定位置でキャップ脱着機構18によってキャップ11を外し、キャップ11が外された16本の栽培容器12内に、ノズル機構20によりサブタンク230に一時貯留されている液体種菌を接種できるように構成されている。ノズル機構20は、チューブ94を介してサブタンク230と連結されている。本実施形態においては、送液路であるチューブ92とサブタンク230とノズル機構20とを連通するチューブ94としてシリコンチューブを用いている。
【0018】
続いて接種部10における各部の詳細について説明する。
接種部10において、栽培容器12が収容されたトレイ14を搬送する搬送機構16は4連のチェーンコンベアよりなる。すなわち、搬送機構16は、基台22に設けられたスプロケット23,23にチェーン24が掛け渡され、モータ25によって駆動される。
図2、図3において、符号26はストッパであり、常時はチェーンコンベア上から突出していて、チェーンコンベア上を搬送されてくるトレイ14を所定位置(キャップ脱着機構18の直下位置)で停止させる。搬送機構16内におけるトレイ14の停止位置には、図示しないトレイ検出センサが配設されていて、トレイ14が所定位置に搬送されたことを検出した後、トレイ検出信号を制御部に送信する。
また、後記するように、栽培容器12内の培地への一連の液体種菌の接種が終了し、キャップ11が再度栽培容器12の口部に装着されると、電磁ソレノイド27が駆動されてストッパ26がチェーンコンベアの下方に突入するので、トレイ14は出口方向に搬送される。トレイ14が搬出されるとストッパ26が再度チェーンコンベア上に突出される。
【0019】
次に、図4〜図7によりキャップ脱着機構について説明する。
図4は、栽培容器12の肩部押さえ機構30を示す概略図である。
符号31は支持バーであり、トレイ14の搬送方向と直角となるように両端側で基台22に固定されている。この支持バー31は、ストッパ26によって停止しているトレイ14の前方および後方に各1本ずつ配置されている。すなわち、トレイ14の上方位置からは外れた位置に配置されている。
【0020】
符号32は固定押え板である。固定押え板32は、図4で紙面に垂直な方向に延びており、両支持バー31に吊り板33によって支持されている。固定押え板32は4本配置され、図4中において、チェーンコンベア上を搬送されてくるトレイ14に収納された栽培容器12の右肩部位置となるように配置されている。すなわち、栽培容器12は、その右肩部が固定押え板32に沿うように搬送されてくる。
ストッパ26によってトレイ14が停止した際、各固定押え板32は、各列4本の栽培容器12の右肩部に対応位置している。
【0021】
符号34は可動押え板である。可動押え板34も図4の紙面に垂直な方向に4本配置されている。可動押え板34は、支持バー31と、支持バー31と平行に配置された可動ロッド35と、リンク板36とで構成される平行四辺形リンクのリンク板36の下端に固定されている。リンク板36は、軸37、38によりそれぞれ支持バー31、可動ロッド35に回動自在に軸支されている。可動ロッド35は、常時はスプリング39によって引かれ、これにより、吊り板33とリンク板36とはほぼ平行となり、栽培容器12は、固定押え板32と可動押え板34との間に進入可能である。
キャップ11が脱着される際は、可動ロッド35が電磁ソレノイド40によってスプリング39の付勢力に抗して引かれる。これにより可動押え板34が図4中において右方に移動し、固定押え板32との間で栽培容器12の肩部を押さえ込むことが理解される。
【0022】
図5、図6、図7はキャップ脱着機構を示す図である。なお、図6、図7においては、説明の都合上、固定押え板32と可動押え板34の図示を省略している点に注意されたい。
図5において、符号45は枠状をなす(ハッチング部)可動台であり、ストッパ26によって停止しているトレイ14の上方の水平面内で、トレイ14の搬送方向に対して45度の斜め方向に往復移動可能となっている。符号47はそのガイドポールである。ガイドポール47は、その軸線をトレイ14の搬送方向に対して水平面内で45度の角度をなすようにして基台22上に取り付けられている。可動台45は、その両側に位置する取り付けステー48の下面側に取付けられたガイドブッシュ49にガイドポール47が摺入することによって斜め方向に移動自在にガイドされる。
【0023】
そして、軸50を中心に回動可能に設けられたL字状のレバー51の一端側にカム52が作用することによって、レバー51の他端側が揺動される。このレバー51の他端側の二股部に、取り付けステー48の上面側に設けられたピン53が入り込んでいる。レバー51の他端側が揺動することによって、ピン53を介して可動台45がトレイ14の搬送方向に対して45度の角度で往復動される。カム52はモータ54(図3)によって駆動される。なお、基台22とガイドブッシュ49との間にはスプリング49aが配設され、レバー51の一端側が常時カム52に当接するように付勢している。
本実施形態においては、ガイドポール47、ガイドブッシュ49、レバー51、カム52、モータ54等によってスライド機構が構成されている。
【0024】
可動台45の中央上方にカムシャフト55が軸線を中心として回転自在に可動台45上で軸受を介して支持されている。カムシャフト55はトレイ14の搬送方向と直交する方向に配設されている。このカムシャフト55は、取り付けステー48上に配置されたモータ56によって回転駆動される。
また、可動台45の両端側には、図6、図7に示すように、ガイドブッシュ58が固定され、このガイドブッシュ58を挿通して上下動可能にロッド59が設けられている。ロッド59は、可動台の各両端側に2本ずつ、計4本配設される。両端側の各2本のロッド59の上端部は連結板80によって連結されている。
【0025】
図6および図7において、符号60はキャップ押え板であり、取付板61の下面側に取り付けられ、スプリング62によって下方に付勢されている。取付板61は、図5に示すようにトレイ14の搬送方向に間隔をおいて4本設けられ、各取付板61の両端部は共通の支持板64に固定されている。
各支持板64は、ガイドブッシュ66を介して、ロッド59により上下動自在にガイドされている。
キャップ押え板60は、各取付板61に4個ずつ設けられ、16本すべての栽培容器12のキャップ11に対応している。
【0026】
支持板64の上端側にはカムフォロワ67が取り付けられ、このカムフォロワ67に、カムシャフト55に設けられたカム68が作用する。
また、支持板64の下端には、一端が可動台45に固定されたスプリング70の他端が取付けられ、このスプリング70に付勢されて、カムフォロワ67はカム68に圧接される。
キャップ11の非脱着時には、図6および図7に示すように、キャップ押え板60はキャップ11の上方位置に位置している。
【0027】
次に、符号72は掛止板であり、逆T字状に設けられて、取付板61の下方に位置する取付板73に固定されている。掛止板72は5本、図6、図7で紙面に垂直な方向に延びて配設され、逆T字の部分は、キャップ11上部の大径部であるフランジ部の下方側に進入するようになっている。
トレイ14に収容されてチェーンコンベア上を搬送されてくる栽培容器12は、そのキャップ11が、隣接する掛止板72の間を通過可能になっている。
【0028】
取付板73の両端側はそれぞれ支持板74に固定され、各支持板74は、可動台45の両端側の2本ずつのロッド59を連結するようにロッド59の下端に固定されている。
また、ロッド59の上端側にはカムフォロワ75が設けられ、このカムフォロワ75の下面側に、カムシャフト55に設けられたカム76が下方から当接している。
符号77は液体種菌を供給するノズルであり、各栽培容器12の上方に位置するようにして、合計16本設けられている。
【0029】
続いてキャップ11の脱着動作について説明する。
トレイ14が搬送機構により搬送されてストッパ26によって停止された際、制御部(図示せず)は、まず前記のように図4に示す電磁ソレノイド40を作動させ、平行四辺形をなすリンク機構により固定押え板32と可動押え板34を作動させて栽培容器12の肩部を両側から押さえ込む。
【0030】
次いで制御部は図5および図6に示すモータ56を駆動して、カムシャフト55を回転させる。するとカム68が回転し、カムフォロワ67をスプリング70の付勢力に抗して下方に押し下げる。これにより支持板64、取付板61を介してキャップ押え板60が下方に押し下げられ、キャップ押え板60がキャップ11の上面をスプリング62の力によって押さえ込むことになる。
このときカム76も同時に回転するが、キャップ押え板60がキャップ11を押さえ込むまでは、カム76はカムフォロワ75を上昇させるようには作用しない(この部分のカム76は円形に形成されている)。
【0031】
キャップ押え板60がキャップ11を押え込むようになった段階で、カム76がカムフォロワ75を上方に押し上げるようにカムフォロワ75に作用する。これにより図7に示すようにロッド59が上昇し、支持板64、取付板73を介して支持板74が上昇し、キャップ11のフランジ部下面に当接し、フランジ部を押し上げる。キャップ11の上面側はキャップ押え板60によって押圧されており、支持板74はスプリング62を圧縮するようにしてなおも一定高さ上昇し、キャップ押え板60と支持板74とでキャップ11を挟みこんだ状態で、キャップ11を栽培容器12の口部上方に外す。
上記のようにしてキャップ11が栽培容器12の口部上方に外される。このときカム68、76は共に半回転した状態であり、この状態で制御部がモータ56を停止させる。図8は、図7の状態における栽培容器部分の平面図である。なお、図8において、符号82は、取付板73に設けたノズル進入用の孔である。
【0032】
次いで制御部により図3に示すモータ54が駆動され、カム52が回転してレバー51が揺動し、可動台45を、トレイ14の搬送方向に対して45度斜め方向に、トレイ14内における栽培容器12の配設ピッチの半ピッチ分スライド移動させる。この状態で制御部がモータ54を一時停止させる。
キャップ脱着機構は可動台45上に載っているので、キャップ11は、キャップ押え板60と支持板74とで挟みこまれ、保持された状態で斜め方向にスライド移動する。
【0033】
また、図9はキャップ11が斜め方向に移動した後の栽培容器12の状態を示す平面図である。
図9に示すように、キャップ11がトレイ14の上方位置においてその水平面内を斜め方向にスライド移動した際、キャップ11は栽培容器12の口部からは外れた位置となる。またそのとき、ノズル進入用の孔82が栽培容器12の口部上方の位置となり、栽培容器12の口部が開放される。
次いで、後記するようにノズル77が栽培容器12の口部に向かって下降して栽培容器12内に所要量の液体種菌を接種するのである。
【0034】
液体種菌接種終了後、制御部によりモータ54が駆動され、可動台45がトレイ14の上方位置にくるように斜め方向にスライド移動される。
次いで、制御部によりモータ56が再駆動され、カムシャフト55が回転し、カム76、68がさらに半回転することにより、キャップ11が栽培容器12の口部に嵌着される。
すなわち、カム76が回転されることによって、キャップ押え板60と支持板74とでキャップ11が保持されたままキャップ11が下降し、キャップ押え板60によってキャップ11が押圧され、支持板74がキャップ11のフランジ部の下方に移動してキャップ11が栽培容器12の口部に嵌められる。さらにカム68が回転することにより、キャップ押え板60が待機位置まで上昇するのである。
【0035】
キャップ11が栽培容器12の口部に嵌着されると、制御部によりストッパ26が下降されると共に、モータ25が駆動されチェーンコンベアが作動し、トレイ14が搬送され、オペレータなどによりチェーンコンベアの出口から取り出される。なお、キャップ押え板60の押圧力のみでは、キャップ11を十分に栽培容器12の口部に押し嵌められない場合があるので、ストッパ26の前方に、キャップ11を上方から押圧するローラ83を備えたローラ装置84が配設されている(図5)。トレイ14に収容された栽培容器12がローラ装置84の下を通過する際にキャップ11がこのローラ83で押圧され、キャップ11が栽培容器12の口部に完全に嵌められるようになっている。
【0036】
続いてノズル機構20について説明する。図10は、ノズル機構を示す正面図である。
ノズル機構20はキャップ脱着機構18の上方に位置して設けられ、前記のように、トレイ14に収容された栽培容器12内の培地に一斉に液体種菌を接種するように、本実施形態においてはトレイ14内に収容されている栽培容器12の本数と同数である16本のノズル77を有している。
ノズル77は内周面の径寸法が上側から下側に徐々に拡径するラッパ型に形成されている(図示せず)。ノズル77の内周面には、内壁面に沿って螺旋状の溝(図示せず)が形成されている。ノズル77が開放されると、サブタンク230とノズル77との間を連通するチューブ94に液体種菌が所定の圧力が付与された状態で充てんされている液体種菌は、ノズル77の内周面に設けた螺旋状の溝に沿ってノズル77の内周面を円滑に流下する。したがって液体種菌を栽培容器12内の培地に適切に滴下することができるため好都合である。本実施形態においては、チューブ92,94としてシリコンチューブを採用している。
【0037】
各ノズル77は、図10に示すように上下動板85に固定されている。上下動板85は、下端が上下動板85に連結された2本のロッド86が、基台22のガイド87に上下動自在に案内されることによって上下動する。2本のロッド86の上端間は連結板88によって連結され、この連結板88が、制御部により動作が制御されているクランク機構89によって上下動される。上下動機構であるクランク機構89は、基台22上に配設されたモータ90によって駆動される。
【0038】
ノズル77の流路を開閉するノズル開閉手段96は、図10に示すように枠状に連結された4列の押圧板97(ハッチングの部位)を有する。押圧板97は支持板98の下面側に支持されていて、図10中において左右方向にスライド可能である。また押圧板97はスプリング99によって図10の左方に付勢されている。スプリング99の付勢力に抗して、制御部により動作が制御されているモータ100(駆動手段)によりカム101を駆動し、スプリング99の付勢力に抗して押圧板97が右方に移動可能になっている。この押圧板97によりチューブ94を当板102に押しつけ、チューブ94を潰すことにより液体種菌が落下しないようにすることができるようになっている。
【0039】
また、図10に示すように、当板102の板厚寸法は押圧板97の板厚寸法よりも厚く形成されていて、押圧板97が当接する部分に押圧板97を当板102に進入させるための凹部102Aが形成されている。チューブ94は、当板102に形成された図示しない板厚方向の貫通孔に挿通されていて、凹部102Aから進入してきた押圧板97により押圧される。
このような形態を採用していることにより、当板102の上下2箇所でチューブ94を挟持することができるため、ノズル77への余分な液体種菌の流入を好適に防止することができる。
【0040】
上記のように、可動台45(図5)が斜め方向に移動して、栽培容器12の口部が開放されると、モータ90が駆動され、ノズル77が栽培容器12の口部内にまで下降する。そして制御部によりモータ100が駆動し、押圧板97が図10中において左方に移動してチューブ94が開放され、サブタンク230およびチューブ94内に所定圧力(本実施形態においては高圧側圧力到達信号を発する際の検出圧力値を20KPaとした)で貯留されている液体種菌がノズル77より栽培容器12内の培地に一定量供給される。
【0041】
本実施形態にかかる液体種菌接種装置1は、上記のように構成されている。
次に本実施形態かかる液体種菌接種装置1を用いた種菌の接種動作について説明する。
まず、図示しない制御部は、チューブポンプ220を起動すると共に、サブタンク230の入口に配設されたエアボールバルブ234の流路を開き、メインタンク200からサブタンク230へ液体種菌を供給させる。サブタンク230に配設された圧力検出センサ232がサブタンク230の内部圧力が予め設定した所定圧力値(20KPa)を検出するまで、チューブポンプ220によりメインタンク200からサブタンク230に液体種菌が供給される。圧力検出センサ232が所定圧力値を検出すると、制御部に高圧側圧力到達信号を送信する。制御部は高圧側圧力到達信号を受信すると、エアボールバルブ234の流路を閉じると共にチューブポンプ220の送液動作を停止させる。このようにして、サブタンク230への液体種菌の過剰流入が防止されている。
【0042】
そして、栽培容器12を収容したトレイ14が搬送機構16によって接種部10内に搬送される。なお、トレイ14は予め接種部10に搬送されていても良い。また、トレイ14はオペレータによりチェーンコンベア上に載置されていることを想定しているが、別途コンベアを介して自動搬入されるようにしてもよいのはもちろんである。
トレイ14がキャップ脱着機構18の直下に位置すると、ストッパ26により停止される。ストッパ26には接触センサ(図示せず)が取り付けられていて、トレイ14がストッパ26に当接すると、トレイ14の検出信号が制御部に送信される。
【0043】
そして前記したように、制御部は、キャップ脱着機構18を作動させ、固定押え板32と可動押え板34とにより、栽培容器12の肩部を押え、次いで、キャップ押え板60を下降させると共に、支持板74を上昇させて、両者間でキャップ11を挟み込んでキャップ11を口部から外す処理を実行する。次いで、可動台45と共に、キャップ11がキャップ押え板60と支持板74とにより挟みこまれた状態で保持されたまま、トレイ14の搬送方向に対して斜め方向に移動し、口部上方が開放される。そして、制御部はノズル機構20およびノズル開閉手段96を作動させることにより、ノズル77が下降し、栽培容器12内の培地上に所定量の液体種菌が接種されるのである。
【0044】
先にも説明したとおり、サブタンク230には所定の圧力が付与されているので、サブタンク230とノズル77との間のチューブ94にもサブタンク230内と同じ圧力が付与された状態になっている。したがって、制御部は、ノズル開閉手段96にチューブ94の閉塞状態を所定時間のみ解除させるように動作を制御すれば、チューブ94からノズル77に供給される液体種菌の量をほぼ均一に揃えることができる。チューブ94の閉塞状態を解除する時間(チューブ94の流路を開放する時間)は予め実験により求めることができるので、実験により求められた時間を予め制御部に入力しておけばよい。
【0045】
このようにサブタンク230およびチューブ94から液体種菌がノズル77から栽培容器12内の培地に接種されると、サブタンク230内の圧力が低下する。すると圧力センサ232が低圧側圧力到達信号(本実施形態では検出圧力が0Paのときに、低圧側圧力到達信号を発信させている。また、本明細書内における0Paとは大気圧(1気圧)のことを指している。)を制御部に送信する。すると制御部はエアボールバルブ234からサブタンク230への流入状態がオンになるようエアボールバルブ234の流路を開く処理とチューブポンプ220による送液動作を再開させる。そしてサブタンク230内が所定圧力(20KPa)になるまでメインタンク200内の液体種菌をサブタンクに供給させるのである。
上記一連の動作を繰り返すことで連続的に栽培容器12の培地に液体種菌を所定量ずつ接種することができる。
【0046】
以上に実施形態に基づいて発明を詳細に説明してきたが、本願発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、他の形態を採用することができるのはもちろんである。
例えば、本実施形態においては、キャップ脱着機構18を有する液体種菌接種装置1の実施形態について説明しているが、キャップ脱着機構18は液体種菌接種装置1とは別構成であってもかまわない。この場合、前述のトレイ14が所定位置に搬送されたことを検出するトレイ検出センサがトレイ検出信号を制御部に送信し、制御部がトレイ検出信号を受信している場合においてのみ、ノズル開閉手段96を作動させる構成を採用してもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、メインタンク200とチューブポンプ220からなる液体種菌供給部に対して、搬送機構16、ノズル機構20、サブタンク230、弁体であるエアボールバルブ234からなる接種部10が1台配設された形態について説明しているが、一組の液体種菌供給部に対して複数台の接種部10を接続する形態を採用することもできる。このような形態による場合、制御部は、各接種部における圧力検出センサから送信された信号(高圧側圧力検出信号と低圧側圧力到達信号)に基づいて同一接種部内におけるエアボールバルブ234の流路のオンオフのみを切り替える処理を実行させればよい。チューブポンプ220の送液動作のオンオフ切り換えについては、すべての接種部における圧力検出センサから高圧側圧力到達信号が送信された場合においてのみ、チューブポンプ220の送液動作を停止させればよい。
このように、一組の液体種菌供給部に対して複数台の接種部10を接続すれば、大規模な液体種菌接種装置1を低コストで提供することができるため好都合である。
さらに大規模な液体種菌接種装置1とする場合には、メインタンク200の設置台数をXとし、チューブポンプ220の設置台数をYとし、接種部10の設置台数をZとしたとき、X,Y,Zの相互関係が、X≦Y≦Zとなるような配設台数の組み合わせ形態を採用することもできる。
【0048】
さらに、実施形態においては、縦横にそれぞれ4本ずつ整列させた栽培容器12をトレイ14に収容した状態で、トレイ14内の全ての栽培容器12に同時に液体種菌を接種する形態について説明しているが、トレイ14に収容されている栽培容器12に対して一本ずつ又は複数本ずつ接種する形態とすることもできるし、栽培容器12をトレイ14に収容することなく、栽培容器12単体を搬送する途中において液体種菌を接種する形態とすることももちろん可能である。
【0049】
さらにまた、本実施形態における可動台45(キャップ11)のスライド方向は、トレイ14の搬送方向に対し、その水平面内方向に45度傾斜させた方向としているが、可動台45を他の角度方向にスライド移動させることももちろん可能である。要は、栽培容器12から離脱させたキャップ11と栽培容器12の口部との間にノズル77を進入させることができるような状態にすることができればよいのである。
【0050】
また、以上に説明した実施形態においては、クランク機構89やスライド機構およびノズル開閉手段96の駆動機構としては、モータとモータおよびカムを用いた実施形態について開示しているが、これらに替えて流体シリンダ等を採用することももちろん可能である。
また、ノズル開閉手段96を構成する当板102を押圧板97よりも板厚となるように形成すると共に、当板102に凹部102Aを形成し、押圧板97を当板102の凹部102Aに進入させることでチューブ94の流路を閉塞する形態を示しているが、押圧板97を当板102よりも板厚に形成し、押圧板97の当板102が当接する部分に凹部を形成し、押圧板97に形成された凹部と当板102の隙間部分でチューブ94を挟持することもできる。
さらに、当板102または押圧板97において、互いに対向する面にチューブ94を配設し、当板102に押圧板97を単純に当接させてチューブ94の流路の開閉を制御するノズル開閉手段96とすることももちろん可能である。
【0051】
また、制御部については、記憶部に予め記憶させた制御プログラムと、制御プログラムに基づいて各構成の動作をオンオフ切り換えする等の動作制御のコマンドを各構成に発信するCPUにより構成されている。このような構成は一般的なパソコンにより実現することができるのはもちろん、いわゆるマイクロコンピュータによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 液体種菌接種装置
10 接種部
12 栽培容器
14 トレイ
16 搬送機構
18 キャップ脱着機構
20 ノズル機構
77 ノズル
92,94 チューブ
96 ノズル開閉手段
200 メインタンク
210 攪拌モータ
220 チューブポンプ
230 サブタンク
232 圧力センサ
234 エアボールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイに収納され、きのこ栽培用の培地が充てんされている栽培容器内に液体種菌を接種する液体種菌接種装置であって、
前記液体種菌が収容されたメインタンクと、
前記液体種菌の接種位置において前記トレイに収納されている栽培容器の上方に各々位置し、前記栽培容器に対して接離動するノズルおよび、前記ノズルの開放および閉塞を切り替えるノズル開閉手段を有するノズル機構と、
該メインタンクから前記ノズルに通じる流路の中途に配設され、前記液体種菌を一時貯留するサブタンクと、
前記メインタンクから前記サブタンクへ液体種菌を供給する送液機構と、
前記送液機構と前記サブタンクとの間に配設され、前記サブタンクへの液体種菌の流入を規制する弁体と、
前記サブタンク内への前記液体種菌の供給量に基づいて、前記弁体の開閉動作および、前記ノズル開閉手段の開閉動作をそれぞれ制御する制御部と、を具備することを特徴とする液体種菌接種装置。
【請求項2】
前記サブタンクには、前記サブタンク内の圧力を計測する圧力センサが配設されていて、
前記制御部は、前記圧力センサからの計測圧力値が予め設定されている圧力値に到達したことを検出した際に、前記弁体を閉じる動作を実行させることを特徴とする請求項1記載の液体種菌接種装置。
【請求項3】
前記ノズル位置に対応する位置に前記トレイが搬送されたことを検出し、トレイ検出信号を前記制御部に送信するトレイ検出手段をさらに有し、
前記制御部は、前記弁体を閉じる動作を実行させた後、前記トレイ検出信号を受信している場合においてのみ、前記ノズル開閉手段を所定時間にわたって開放させた後、前記ノズル開閉手段を閉塞する動作をそれぞれ実行させることを特徴とする請求項1または2記載の液体種菌接種装置。
【請求項4】
前記搬送機構、前記ノズル機構、前記サブタンク、前記弁体が、それぞれ複数配設されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の液体種菌接種装置。
【請求項5】
前記送液機構は、チューブポンプであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の液体種菌接種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−101628(P2011−101628A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258374(P2009−258374)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(391047880)オギワラ精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】