説明

液体試料分注装置

【課題】 必要量の液体試料を反応容器に精度良く分注する液体試料分注装置を提供する。
【解決手段】 分注用ノズルによって保持された前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、
前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する吐出動作判定部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、必要量の液体試料を反応容器に精度良く分注する液体試料分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例1のサンプル分注装置およびそれを用いた自動分析装置は、サンプルプローブ、分注シリンジを含む分注流路系に圧力センサを接続し、試料の分注動作時における圧力センサの出力値を複数個取込み、これら得られた複数個の圧力センサ出力値を項目とした多項目分析(マハラノビス距離)を行い、閾値と比較することで分注が正常に行われたか判定する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、従来例1の実施の形態のサンプル分注装置の概略構成図である。
【0004】
サンプルプローブ101はチューブ102を介し、分注シリンジ103に接続され、それらの内部は液体で充填されている。分注シリンジ103はシリンダ103aとプランジャ103bからなり、プランジャ103bには分注シリンジ駆動手段104が接続されている。シリンダ103aを固定し、プランジャ103bを分注シリンジ駆動手段104によって上下に駆動させ、これによって試料の分注動作を行う。また、サンプルプローブ101にはサンプルプローブ駆動手段105が接続されており、これによってサンプルプローブ101を所定の位置に移動することが可能となる。なお、分注シリンジ駆動手段104およびサンプルプローブ駆動手段105は、制御部106によって制御される。
【0005】
いま、サンプルプローブ駆動手段105によってサンプルプローブ101が下降動作を行い、試料容器107内の試料108の液中に到達すると、分注シリンジ駆動手段104によって分注シリンジ103が吸引動作を行う。なお、サンプルプローブ101が試料108液中に到達する以前に、サンプルプローブ101内に充填されている液体と試料108が混じり合わないよう、あらかじめ空気(分節空気)が吸引されているものとする。試料吸引動作が終了すると、サンプルプローブ101は試料吐出位置へ移動し、分注シリンジ103が吐出動作を行う。
【0006】
分注終了後、必要に応じて、給水ポンプ109によって給水タンク110内の洗浄水111を高圧で流し、サンプルプローブ101を洗浄することが可能である。その切り替えは電磁弁112で行い、これは制御部106によって制御される。
【0007】
従来例1の主たる目的である分注の異常を検知する手段としての圧力センサ113は、分岐ブロック114を介し、サンプルプローブ101、チューブ102、分注シリンジ103を含む分注流路系に接続されている。ここで、圧力センサ113はサンプルプローブ101開口部の圧力変動を感度良く検出するため、可能な限りサンプルプローブ101側に接続することが望ましい。
【0008】
圧力センサ113の出力信号はアンプ115によって増幅され、A/D変換器116によってデジタル信号に変換される。更にA/D変換器116の出力はマイクロコンピュータ117へ送られ、分注が正常に実施されたか判定する。
【0009】
図14は、従来例1の実施の形態の分注の異常検知の処理フロー図である。
【0010】
試料分注時におけるサンプルプローブを含めた分注流路系の内部圧力は、微小な変化も含め絶えず変化し、圧力センサの出力もそれに追従して変化する。従来例1は刻々と変化する圧力値を時系列に沿って逐一取込み、これら取込んだ圧力値の集合(以下、時系列圧力データ群と称する)をそのまま利用する(S1)。
【0011】
次に、上記より得られた時系列圧力データ群から、マハラノビス距離を求める(S2)。ここで、マハラノビス距離は多変量解析の一手法であり、ある被検査対象が基準となる集団(以下、基準空間と称する)に属するかを測る尺度となる。従来例1では、分注が正常に実施されたときの時系列圧力データ群を基準とし、この集団が基準空間となる。
【0012】
分注が正常に実施されたときのマハラノビス距離は1近傍の値を示すのに対し、異常であった場合はその距離が1より極めて大きな値をとる。これを利用して、閾値判定により分注の正常・異常の判定を行う(S3)。
【0013】
このように、従来例1のサンプル分注装置およびそれを用いた自動分析装置は、圧力センサの感度のばらつきが存在しても、確度の高い判定結果を出すことができる。
【0014】
従来例2の分注装置は、圧力伝達液を送出・吸引する分注ポンプと、分注ポンプの作動により、分注する検体液を吸入・吐出するノズルと、圧力伝達液の圧力を検出する圧力センサと、異常検出手段とを備える。対象液を分注するのに先立ち、その分注を行うときと同様の作動条件で、かつノズルの先端開口を液体に接触させない状態で分注ポンプを予備作動させる。メモリは作動のときに圧力センサにより検出された圧力の変動を表す基準圧力データを記憶し、異常検出手段は、分注ポンプが本作動して対象液を実際に分注したときに圧力センサにより検出された圧力の変動を表す分注時圧力データと、基準圧力データとに基づいて、吸入異常および吐出異常を検出する(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
図15は、従来例2の分注装置の実施形態を模式的に示す図である。
【0016】
図15に示すように、従来例2の分注装置201は、図示しない装置本体に固定的に設置された分注ポンプ202と、分注する検体液(対象液)300をその先端開口231から吸入・吐出するノズル203と、ノズル203を水平方向および鉛直方向に移動させるノズル移動機構204と、分注ポンプ202およびノズル移動機構204の作動を制御する制御手段205とを有している。
【0017】
分注ポンプ202は、シリンジ型のポンプであり、シリンダ221と、該シリンダ221内で摺動可能に設置されたピストン222と、ピストン222を移動させるポンプ駆動部223とを有している。ポンプ駆動部223の詳細な図示は省略するが、例えば、送りネジ(ボールネジ)とこれを回転するサーボモータ(ステッピングモータ)とでピストン222を駆動するように構成される。シリンダ221とピストン222とで囲まれた空間には圧力伝達液400が充填されている。ピストン222が移動すると、分注ポンプ202は、圧力伝達液400をノズル203側へ送出したり、ノズル203側から吸引したりする。
【0018】
図15に示すように、従来例2の分注装置201は、分注ポンプ202からノズル203に至る経路にある圧力伝達液300の圧力を検出する圧力センサ209と、この圧力センサ209により検出された圧力データを記憶可能なメモリ212と、圧力センサ209により検出された圧力データに基づいて分注異常を検出する異常検出手段213とをさらに備えている。
【0019】
従来例2の分注装置201では、以下に説明するような方法により、分注異常を検出する。
【0020】
[1]ノズル203内に検体液300を吸入するために、制御手段205は、ノズル203を分注元容器500の上方に移動させる。次いで、分注ポンプ202を所定量吸引作動させることにより、ノズル203の先端に空気層700を形成する。
【0021】
[2]次いで、ノズル203を分注元容器500へ向けて下降させる。ノズル203が下降している最中であって、まだ先端開口231が検体液300に接触していない状態(空中にある状態)のとき、制御手段205は、この後に実際に分注を行うときと同様の作動条件で分注ポンプ202を予備作動させる。
【0022】
この予備作動においては、分注ポンプ202は、まず予備吸引作動を行う。この予備吸引作動は、実際に検体液300をノズル203に吸入するときと同様の、ピストン222の駆動速度および駆動量で行う。この予備送出作動を行うと、ノズル203の先端開口231からは空気が吸入される。続けて、分注ポンプ202は、予備送出作動を行う。この予備送出作動は、実際に検体液300をノズル203から吐出するときと同様の、ピストン222の駆動速度および駆動量で行う。この予備送出作動を行うと、ノズル203の先端開口231から空気が吐出される。
【0023】
[3]図16は、上記のような予備作動をしたときに圧力センサ209で検出される圧力の変化を示すグラフである。同図に示すように、分注ポンプ202が予備吸引作動や予備送出作動を行うと、圧力伝達液400が配管206およびチューブ配管207内を流動するが、その流動の動圧と配管内での圧力損失のほかに、非定常流れの影響により、圧力センサ209で検出される圧力は、吸引・送出動作の開始と終了時に波打つように振動する。また、図16において圧力が時間の経過とともに全体的な傾向として低下しているのは、ノズル203の下降に伴う水頭圧の変化によるものである。
【0024】
[4]異常検出手段213は、圧力センサ209で検出された圧力を、圧力センサ出力回路214を介して取り込み、次のようにして、水頭圧の補正を行う。予備分注作動開始時にノズル203が位置する高さを原点としたときの、予備分注作動中におけるノズル203の高さZを制御手段205から取得し、水頭差ρgZ(ρは圧力伝達液400の密度、gは重力加速度)を計算する。また、単に予備分注開始時の圧力Pと終了時の圧力Pとの差で補正しても良い。そして、この水頭圧を補正することにより、図17に示すような基準圧力データが得られる。
【0025】
この基準圧力データは、分注ポンプ202が実際の分注時と同様に作動したときの、配管内での圧力伝達液400の圧力損失と流動の動圧および非定常流れの影響が圧力センサ209で検出される圧力に及ぼす影響を表すデータとなるものである。
【0026】
異常検出手段213は、予備吸引作動時の基準圧力データを予備吸引時圧力データD、予備送出作動時の基準データを予備送出時圧力データDとして、これらをメモリ212に記憶(格納)する。予備吸引時圧力データDは、所定の時間間隔(サンプリングタイム)で取得された多数の値の集合、すなわちD1i(i=0,1,2,・・・,n)で構成されており、同様に、予備送出時圧力データDはD2i(i=0,1,2,・・・,m)で構成されている。なお、DとDの測定開始点(D10とD20)はポンプ動作開始を基準にポンプ動作開始時間またはそれより少し前にすればよい。
【0027】
[5]下降中のノズル203が検体液300に送液したら、ノズル203を停止させる。このとき、公知の方法によって液面検出を行ってもよい。次いで、分注ポンプ202を本吸引作動させて、実際に検体液300をノズル203内に吸入する。
【0028】
[6]検体液300をノズル203内に吸入しているとき、異常検出手段213は、圧力センサ209により検出された吸入時圧力データ(分注時圧力データ)Dを予備吸引時圧力データDと同じ測定開始点および測定間隔で取得する(図18参照)。次いで、異常検出手段213は、予備吸引時圧力データDと吸入時圧力データDとの差分データDAを下記式に基づいて計算する。
DA=D3i−D1i+ΔP (i=0,1,2,・・・,n)
ここで、ΔPは、予備吸引作動開始時の圧力をP、検体液300の吸入開始時の圧力をPとしたとき、ΔP=P−Pであり、このΔPを用いることにより、予備吸引時圧力データDと吸入時圧力データDとの水頭圧の差を補正することができる。ΔPは、圧力センサ209で検出された値を用いて前記式ΔP=P−Pに基づいて直接算出してもよく、あるいは、予備吸引作動開始時のノズル203高さと検体液300の吸入時のノズル203高さとの差ΔZを制御手段205から取得し、ΔP=ρgΔZとして算出してもよい。
【0029】
検体液300の吸入動作が正常な場合、差分データDAは、例えば図19に示すグラフのようになる。異常検出手段213は、この差分データDAに基づいて吸入異常を検出する。例えば、差分データDAの最小値DAminがしきい値PT1より小さい場合には、吸引詰まりが発生したものと判定し、そうでない場合には吸引詰まりが発生していないと判定する。同様にして、他のしきい値を用いたり、差分データDAの変動パターンを認識することにより、吸入量不足(ショートサンプル)や、気泡吸入等の吸入異常を検出することができる。
【0030】
差分データDAは、実際の吸入時圧力データDから予備吸引時圧力データDを引いたものであるので、配管内での圧力伝達液400の圧力損失と流動の動圧との影響が取り除かれており、よって、ノズル203が検体液300を吸入することによる圧力変化のみを正確に表したものとなっている。したがって、この差分データDAに基づいて判定を行うことにより、異常検出手段213は、上記のような吸入異常の有無を正確に判定することができる。
【0031】
なお、異常検出手段213は、上記のように差分データDAそのものをしきい値と比較して判定を行ってもよいし、また、他の公知技術を利用して差分データDAの1次部分値や2次微分値を算出して、DAの変動パターンを認識することにより吸引詰まりや吸入量不足(ショートサンプル)や気泡吸入等の吸入異常を検出することができる。
【0032】
[7]異常検出手段213が吸入異常の発生を検出した場合には、図示しない報知手段(アラームなど)によってその旨をオペレーターに報知するとともに、必要であれば既に吸入した検体液300を吐き戻す。その後、ノズル203を洗浄した後、同一の分注元容器500に対して分注を再度試みるか、または別の分注元容器500の分注を行う。
【0033】
[8]異常検出手段213が吸入異常の発生を検出しなかった場合、すなわち検体液300を正常に吸入できた場合には、制御手段205は、ノズル203を分注先容器600の上方へ移動させ、所定高さまで下降させた後、分注ポンプ202を本送出作動させて、ノズル203内の検体液300を分注先容器600内へ吐出する。検体液300をノズル203から吐出しているとき、異常検出手段213は、圧力センサー209により検出された吐出時圧力データ(分注時圧力データ)Dを予備送出時圧力データDと同じ測定開始点および同じ測定間隔で取得する(図20参照)。次いで、異常検出手段213は、予備送出時圧力データDと吐出時圧力データDとの差分データDDを下記式に基づいて計算する。
DD=D4i−D2i+ΔP´ (i=0,1,2,・・・,m)
ここで、ΔP´は、予備吸引作動開始時の圧力をP、検体液300の吐出開始時の圧力をP4としたとき、ΔP´=P−Pであり、このΔP´を用いることにより、予備送出時圧力データDと吐出時圧力データDとの水頭圧の差を補正することができる。ΔP´は、圧力センサ209で検出された値を用いて前記式ΔP´=P−Pに基づいて直接算出してもよく、あるいは、予備送出作動開始時のノズル203高さと検体液300の吐出時のノズル203高さとの差ΔZ´を制御手段205から取得し、ΔP´=ρgΔZ´として算出してもよい。
【0034】
検体液300の吐出動作が正常な場合、差分データDDは、例えば図21に示すグラフのようになる。異常検出手段213は、この差分データDDに基づいて吐出異常を検出する。例えば、差分データDDの最大値DDmaxがしきい値PT2より大きい場合には、吐出詰まりが発生したものと判定し、そうでない場合には吐出詰まりが発生していないと判定する。
【0035】
差分データDDは、実際の吐出時圧力データDから予備送出時圧力データDを引いたものであるので、配管内での圧力伝達液400の圧力損失と流動の動圧との影響が取り除かれており、よって、ノズル203が検体液300を吐出することによる圧力変化のみを正確に表したものとなっている。したがって、この差分データDDに基づいて判定を行うことにより、異常検出手段213は、上記のような吐出異常の有無を正確に判定することができる。
【0036】
このように、従来例2の分注装置は、圧力センサの出力データを基に分注異常の有無を正確に判定・検出することができる。
【特許文献1】特開2004−125780公報(第17頁、図1,3)
【特許文献2】特開2005−227102公報(第12,13頁、図1,5−10 )
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
ところが従来例においては、サンプルプローブ、分注シリンジを含む分注流路系に圧力センサを接続し、試料の分注動作時における圧力センサの出力値を基準の圧力値と比較することで、分注異常を検出しているが、圧力センサは応答時間が長く、感度にばらつきがあるため、分注異常の判定が遅れるという問題点があった。また、分注用アクチュエータの異常判定ができないという問題点があった。
【0038】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、吐出動作記憶部に時系列的に記憶された分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと正常吐出動作記憶部に記憶された分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する液体試料分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、液体試料を吸引保持する分注用ノズルと、液体試料の吸引・吐出圧力を発生させるシリンダとプランジャより構成されるシリンジと、液体試料を流すフレキシブルチューブと、前記液体試料の吸引・吐出を前記シリンジと前記フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルから実施させる分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部を備え、前記分注用ノズルによって保持された前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する吐出動作判定部を備えたものである。
【0040】
請求項2に記載の発明は、液体試料を吸引保持する分注用ノズルと、液体試料の吸引・吐出圧力を発生させるシリンダとプランジャより構成されるシリンジと、液体試料を流すフレキシブルチューブと、前記液体試料の吸引・吐出を前記シリンジと前記フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルから実施させる分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部を備え、前記分注用ノズルによって保持された前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとからマハラノビス距離を算出し、前記算出結果と予め定められた閾値とを比較することにより前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定するものである。
【0041】
請求項3に記載の発明は、前記正常吐出動作時における動作関連のデータは分注条件に応じて用意され、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記分注用アクチュエータの正常吐出時における動作関連のデータとから算出されたマハラノビス距離と、予め定められた閾値とを比較することにより前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定するものである。
【0042】
請求項4に記載の発明は、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータが複数回の吐出動作時における速度、加速度、減速度、および推力を選択的に用いるものである。
【0043】
請求項5に記載の発明は、前記分注用アクチュエータが異常と判定した場合、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータの各動作指令との差分を算出し、各動作指令と前記差分を加算したものを新たな動作指令とする動作指令補正部を備えたものである。
【発明の効果】
【0044】
請求項1および2に記載の発明によると、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する吐出動作判定部を備え、前記算出結果と予め定められた閾値とを比較することにより、分注用アクチュエータの異常の有無を正確に判定することができる。
【0045】
請求項3に記載の発明によると、前記正常吐出動作時における動作関連のデータは分注条件に応じて用意されているので、任意の分注条件において分注用アクチュエータの異常の有無を正確に判定することができる。
【0046】
請求項4に記載の発明によると、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータが複数回の吐出動作時における速度、加速度、減速度、および推力を選択的に用いることで、分注用アクチュエータの動作状態を常に監視でき、分注用アクチュエータの異常の有無を正確に判定することができる。
【0047】
請求項5に記載の発明によると、前記吐出条件判定部が前記分注用アクチュエータの異常有りと判定した場合、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータの各動作指令との差分を算出し、各動作指令と前記差分を加算したものを新たな動作指令とすることで、分注用アクチュエータが異常の際の動作を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0049】
図1は、本発明の第1の実施の形態の液体試料分注装置の構成を示す図である。1は液体試料分注装置、2は液体試料を吸引保持する分注用ノズル、3は液体試料を流すウレタンまたはフッ化樹脂等の材料からなるフレキシブルチューブ、4はシリンダとプランジャから構成されるシリンジ、5はシリンダ、6はシリンジ内にて液体試料を吐出・吸引するプランジャ、7は分注用アクチュエータ(例えばリニアモータ)、8は分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部、9は分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部、10は分注用アクチュエータ制御部にあるCPU、11は分注用アクチュエータ制御部にある、シリンジ4内におけるプランジャ6のストロークに対する吐出量と液体試料吸引後の吐出回数を記憶する吐出条件記憶部、12は分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部、13は分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶、14は吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと正常吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する吐出動作判定部、15は液体試料を供給する液体試料容器、16は液体試料を吐出する反応容器、17は液体試料である。
【0050】
分注用ノズル2は中空であり、先端に行くほど内径が小さくなるように成形されている。分注用ノズル2は液体試料17に対して垂直な姿勢に保持されており、液体試料容器15に内包された液体試料17を吸引し、反応容器16に液体試料17を吐出する。また、図示しないが、分注用ノズル2は洗浄水容器の洗浄水を吸引・吐出する。洗浄水の供給法や吸引・吐出法として、一般的な種々の方法を採用できる。
【0051】
シリンダ5は、プランジャ6の移動に伴ってシリンジ4内の容積が変化する。シリンダ4はフレキシブルチューブ3を介して分注用ノズル2に接続されている。液体試料17を吸引しシリンジ4内の容積が増加するようにプランジャ6はシリンジ4の紙面上方に移動し、液体試料14を吐出しシリンジ4内の容積が減少するようにプランジャ6はシリンジ4の紙面下方に移動する。プランジャ6は分注用アクチュエータ7により駆動され、分注用アクチュエータ駆動部8によって制御される。分注用アクチュエータ駆動部8は、分注用アクチュエータ制御部9に接続され、動作指令に基づいて分注用アクチュエータ7を駆動する。分注用アクチュエータ制御部9は、CPU10と吐出条件記憶部11からなり、所定の液体試料17を吐出するよう分注用アクチュエータ駆動部8に動作指令を指令している。CPU10は、予めオペレータにより入力されるか、或るいは、液体試料容器15等に表示された識別マークから読み取られた試料数と所望の分析項目に基づいて、所要の分注量及び分注順序に対応するように分注用アクチュエータ駆動部8に指令している。また、吐出条件記憶部11は吐出時におけるストローク、圧力、ノズル径、吐出速度、液体試料吸入量、空気吸入量、吐出量、液体試料吸引後の吐出回数、および吐出時の吸引−吐出動作パターンにおける吸引最大速度、吸引加減速時間、吐出最大速度および吐出加減速時間の関係を記憶している。
【0052】
つぎに、本実施例の動作について図2、図3を用いて説明する。図2はアクチュエータ制御部のフローを示す図、図3はノズルの吸引状態を示す図である。
【0053】
以下に示す手順により、予め実験により吐出精度の良い、吐出量に対する液体試料吸入量を確認しておく。内部圧力が気泡などで低下していない正常状態のとき、流体の質量保存則(流入する質量流量(密度×流速×断面積)と流出する流量(密度×流速×断面積)は等しい。)が成立し、ノズル先端における流速が液切れ速度以上になれば液だまりが生じることがなく吐出できる。そこで、内部圧力を正常状態に保ち、例えばプランジャの動作パターン(台形パターン)である最高速度、加速度、減速度を固定し、空気吸入量を一定値とした場合、シリンジ内におけるプランジャのストローク、液体試料吸入量、吐出量、液体試料吸引後の吐出回数の関係を確認し、図4に示す表のようにまとめておく。
(1) 先ず、液体試料吸入量を記憶する(F0)。
予め計測した吐出量に対する液体試料吸入量を吐出量記憶部に記憶する。
(2) 洗浄水を吸引する(F1)。
アクチュエータ7によりシリンジ4内のプランジャ6が吸引駆動されると、ノズル2から図示しない洗浄水容器の洗浄水18を吸引する。または、図示しない弁と図示しない別のフレキシブルチューブを介して図示しないポンプからフレキシブルチューブとノズル2に洗浄水を供給してもよい。
(3) 空気を吸引する(F2)。
アクチュエータ7によりシリンジ4内のプランジャ6が吸引駆動され、ノズル2からシリンジ4内に一定量の空気19を吸引する。
(4) 液体試料を吸引する(F3)。
アクチュエータ7によりシリンジ4内のプランジャ6が吸引駆動され、予め記憶した液体試料吸入量に基づき、ノズル2から液体試料容器15の液体試料17を吸引する。
(5)液体試料を排出する(F4)
ノズル先端の初期メニスカスの影響を排除するため、予め記憶した排出動作パターンを基にしたアクチュエータ7への推力指令により、アクチュエータ7によりシリンジ4内のプランジャ6から吐出駆動され、ノズル2から図示しない排出容器もしくは液体試料容器15へ液体試料17を予め記憶した回数だけ排出する。
(6) 液体試料を吐出する(F5)。
吐出動作パターンを基にしたアクチュエータ7への推力指令により、アクチュエータ7によりシリンジ4内のプランジャ6から吐出駆動され、ノズル2から反応容器16へ液体試料17を吐出する。
(7) 吐出ごとに(2)〜(6)を繰り返す。
【0054】
このように、吐出量に対する液体試料吸入量、液体試料吸引後の吐出回数を予め記憶し液体試料を吐出するため、CV値と正確度ともに精度良く吐出できる。
なお、予め定めた回数吐出した際の吐出量の平均値をσ、予め定めた回数吐出した際の吐出量の標準偏差をμ、吐出量の目標値をαとすると、CV値、正確度はそれぞれ式(1)、式(2)で計算できる。
【0055】
【数1】

【0056】
【数2】

【0057】
また、オペレータがノズル2の下に液体試料容器15、反応容器16を準備することを想定しているが、制御部9がアクチュエータ7と同期してノズル2もしくは図示しない液体試料容器15、反応容器16を搭載したテーブル等を制御し、自動的に液体試料を吸引・吐出してもよい。
本実施例では、吐出条件記憶部11を分注用アクチュエータ制御部9に設けているが、吐出条件記憶部11を分注用アクチュエータ駆動部8に設けてもよく、分注用アクチュエータ駆動部8と分注用アクチュエータ駆動部9と吐出条件記憶部11を一体化してもよい。
【0058】
次に分注用アクチュエータの動作異常の判定方法について説明する。
【0059】
図5は本発明の実施の形態の分注用アクチュエータの異常検知の処理フロー図である。
【0060】
分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータは、図示しない分注用アクチュエータ駆動部8に備えられたサーボアンプ内部の記憶部より取得する。本発明は吐出動作毎に変化する分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列に沿って逐一読込み、これらの動作関連の時系列データ群を取得する(G1)。吐出動作記憶部12が、吐出動作毎に変化する分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを記憶しておく。また、正常吐出動作記憶部13が、分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを記憶しておく。
【0061】
次に、上記取得したデータ群から、吐出条件判定部14がマハラノビス距離を求める(G2)。ここで、マハラノビス距離は多変量解析の一つであり、ある被検査対象が基準となる集団(以下、基準空間と称する)に属するかを測る尺度となる。本発明では、分注用アクチュエータが正常に動作したときの時系列データ群を基準とし、この集団が基準空間となる。
【0062】
分注用アクチュエータが正常に動作したときのマハラノビス距離は1近傍の値となるが、異常であった場合はマハラノビス距離が1より大きな値となる。これを利用して、吐出条件判定部14が閾値判定により分注用アクチュエータの正常・異常の判定を行う(G3)。
例えば、マハラノビス距離が1.1未満を正常、1.1以上を異常と判定する。閾値は必ずしも1.1に限らず、液体試料分注装置を運転する前に事前に確認しておく必要がある。
【0063】
分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群の取得方法およびマハラノビス距離の算出方法について説明する。
【0064】
図6は分注用アクチュエータの動作関連における時系列データ群の取得方法を示したもので、一例として応答速度の取得方法を示した図である。刻々と変化する動作関連の時系列データ波形から、図6のようにk点の時系列データを取込む。
【0065】
分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群の取得箇所は、試料吸引区間、試料吐出区間、および試料吸引区間と試料吐出区間の全区間でもよい。
【0066】
分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群の取込み間隔については、一定間隔でもよいし可変にしてもよい。分注用アクチュエータの異常が起こりやすい箇所では取込み間隔を狭めたり、異常がほとんど生じない箇所では荒めにデータを取込んだりすることがあってもよく、必ずしも等間隔である必要はない。
【0067】
なお、k点の時系列データ群の取得方法として、各点の取込み時刻をあらかじめ指定して、k点のデータのみ得る方法でも、初めは出来る限り細かくデータを取込み、それらを間引いてk点のデータを残す方法でも、どちらでも構わない。
【0068】
上記の通り取得した分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群は図7のようにまとめられる。ここで、各時刻における時系列データ群はそれぞれマハラノビス距離を求める際の項目として利用する。
【0069】
上記操作を、分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを取得すれば、基準となる分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群を取得することができる。図8は、正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの動作関連の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間である。
【0070】
上記によって得られた分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群u,u,・・・,uの取込みをn回実施した図8のようなn事象k項目の基準空間から、各項目毎に平均
μ,μ,・・・,μ
および標準偏差σ,σ,・・・,σを求め、式(3)の演算を行い正規化する。
【0071】
【数3】

【0072】
基準空間をn行k列の行列として、この行列の相関行列を求めるとk×kの行列Aが得られる。この行列Aの逆行列をA−1とすれば、マハラノビス距離Dは式(4)のように表すことができる。
【0073】
【数4】

【0074】
なお、これらの計算のうち、基準空間の各項目毎の平均および標準偏差や、基準空間の相関行列の逆行列は予め計算しておき、記憶しておけば、マハラノビス距離を繰り返して算出する場合、これらの計算処理時間が短縮できる。
【0075】
このように、本実施例では、分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群におけるマハラノビス距離を求め、分注用アクチュエータの動作異常の有無を判定できる。
【0076】
本発明が特許文献1、特許文献2と異なる部分は、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと正常吐出動作記憶部に記憶された分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する液体試料分注装置を提供することである。
【実施例2】
【0077】
本実施例の構成は、実施例1と同様なので説明は省略する。
本実施例では、分注量毎に、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連の時系列データ群の取込み数、方法を変更し、基準空間も分注量ごとにそれぞれ持つものである。液体試料分注装置は装置の仕様により最小、最大分注量、および分注分解能が決められているので、その数だけの分注用アクチュエータの吐出動作時の動作関連データ群および基準空間を持てばよい。
【0078】
図9は正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの動作関連の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間であり、分注量1、分注量2、分注量3、・・・、分注量X毎に準備したものである。
【0079】
ある分注量を分注する際にはその分注量のマハラノビス距離を算出し、予め記憶されたその分注量における基準空間と比較し、あらかじめ定められた閾値との大小関係により分注用アクチュエータの動作異常を判定することができる。
【0080】
このように、本実施例では、分注量毎に、分注用アクチュエータの吐出動作時の動作関連における時系列データ群によりマハラノビス距離を求め、あらかじめ定められた閾値と比較することで、分注用アクチュエータの動作異常の有無を判定することができる。
【実施例3】
【0081】
本実施例の構成は、実施例1と同様なので説明は省略する。
図10は、正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの速度、加速度、減速度、および推力の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間であり、分注量1、分注量2、分注量3、・・・、分注量X毎に準備したものである。
【0082】
ある分注量を分注する際にはその分注量のマハラノビス距離を算出し、予め記憶されたその分注量における基準空間と比較し、予め定められた閾値との大小関係により分注用アクチュエータの動作異常の有無を判定することができる。
【0083】
このように、本実施例では、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータが複数回の吐出動作時における速度、加速度、減速度、および推力を選択的に用いることにより、分注用アクチュエータの動作異常の有無を判定することができる。
【実施例4】
【0084】
図11は、本発明の第4の実施の形態の液体試料分注装置の構成を示す図である。実施例1の構成に、前記分注用アクチュエータが異常と判定した場合、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータの各動作指令との差分を算出し、各動作指令と前記差分を加算したものを新たな動作指令とする動作指令補正部20を追加したものである。
【0085】
図12は、動作指令補正部のフローを示す図である。前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとからマハラノビス距離を算出し、前記算出結果と予め定められた閾値とを比較し、分注用アクチュエータの異常を判定するとともに、例えば速度が異常と判定した場合、新しい最大速度指令=現在の最大速度指令+(現在の最大速度指令−現在の最大応答速度)と設定する。このように設定しても分注用アクチュエータの動作が改善されない場合は異常と判定し、図示しない視覚、聴覚、触覚などの提示手段により使用者に異常を提示する。
【0086】
このように、本実施例では、吐出条件判定部が分注用アクチュエータの異常有りと判定した場合、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータの各動作指令との差分を算出し、各動作指令と前記差分を加算したものを新たな動作指令とすることで、分注用アクチュエータが異常の際の動作を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
なお、分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、吐出動作記憶部に時系列的に記憶された分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと正常吐出動作記憶部に記憶された分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定することができるので、分注用アクチュエータに限らず、それ以外のアクチュエータにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態の液体試料分注装置の構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示すフロー図
【図3】図1のノズルの吸引状態を示す断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態のシリンジ内におけるプランジャのストローク、液体試料吸入量、吐出量、液体試料吸引後の吐出回数の関係を示す表
【図5】本発明の第1の実施の形態の分注用アクチュエータの異常検知の処理フロー図
【図6】分注用アクチュエータの動作関連における時系列データ群の取得方法を示したもので、一例として応答速度の取得方法を示した図
【図7】分注用アクチュエータの動作関連の時系列データ群を示した表
【図8】正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの動作関連の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間を示す図
【図9】本発明の第2の実施の形態の正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの動作関連の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間であり、分注量1、分注量2、分注量3、・・・、分注量X毎に準備した表
【図10】本発明の第3の実施の形態の正常な分注をn回行ったときに得られた分注用アクチュエータの速度、加速度、減速度、および推力の各時系列データ群をまとめたもので、n事象k項目の基準空間であり、分注量1、分注量2、分注量3、・・・、分注量X毎に準備した表
【図11】本発明の第4の実施の形態の液体試料分注装置の構成を示す図
【図12】本発明の第4の実施の形態の動作指令補正部のフローを示す図
【図13】従来例1の実施の形態のサンプル分注装置の概略構成図
【図14】従来例1の実施の形態の分注の異常検知の処理フロー図
【図15】従来例2の分注装置の実施形態を模式的に示す図
【図16】従来例2の実施の形態の分注ポンプが予備動作したときに圧力センサで検出される圧力の変化を示すグラフ
【図17】従来例2の実施の形態の基準圧力データを示すグラフ
【図18】従来例2の実施の形態の実際の吸入時圧力データを示すグラフ
【図19】従来例2の実施の形態の予備吸引時圧力データと吸入時圧力データとの差分データを示すグラフ
【図20】従来例2の実施の形態の実際の吐出時圧力データを示すグラフ
【図21】従来例2の実施の形態の予備送出時圧力データと吐出時圧力データとの差分データを示すグラフ
【符号の説明】
【0089】
1 液体試料分注装置
2 分注用ノズル
3 フレキシブルチューブ
4 シリンジ
5 シリンダ
6 プランジャ
7 分注用アクチュエータ
8 分注用アクチュエータ駆動部
9 分注用アクチュエータ制御部
10 CPU
11 出条件記憶部
12 吐出動作記憶部
13 正常吐出動作記憶
14 吐出動作判定部
15 液体試料容器
16 反応容器
17 液体試料
18 洗浄水
19 空気
20 動作指令補正部
101 サンプルプローブ
102 チューブ
103 分注シリンジ
103a シリンダ
103b プランジャ
104 分注シリンジ駆動手段
105 サンプルプローブ駆動手段
106 制御部
107 試料容器
108 試料
109 給水ポンプ
110 給水タンク
111 洗浄水
112 電磁弁
113 圧力センサ
114 分岐ブロック
115 アンプ
116 A/D変換器
117 マイクロコンピュータ
201 分注装置
202 分注ポンプ
203 ノズル
204 ノズル移動機構
205 制御手段
206 配管
207 チューブ配管
209 圧力センサ
212 メモリ
213 異常検出手段
214 圧力センサ出力回路
221 シリンダ
222 ピストン
223 ポンプ駆動部
231 先端開口
300 検体液(対象液)
400 圧力伝達液
500 分注元容器
600 分注先容器
700 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を吸引保持する分注用ノズルと、液体試料の吸引・吐出圧力を発生させるシリンダとプランジャより構成されるシリンジと、液体試料を流すフレキシブルチューブと、前記液体試料の吸引・吐出を前記シリンジと前記フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルから実施させる分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部を備え、前記分注用ノズルによって保持された前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、
前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、
前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、
前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとを多変量解析し、解析結果に基づき前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定する吐出動作判定部を備えたことを特徴とする液体試料分注装置。
【請求項2】
液体試料を吸引保持する分注用ノズルと、液体試料の吸引・吐出圧力を発生させるシリンダとプランジャより構成されるシリンジと、液体試料を流すフレキシブルチューブと、前記液体試料の吸引・吐出を前記シリンジと前記フレキシブルチューブを介して前記分注用ノズルから実施させる分注用アクチュエータと、前記分注用アクチュエータを駆動する分注用アクチュエータ駆動部と、前記分注用アクチュエータ駆動部を制御する分注用アクチュエータ制御部を備え、前記分注用ノズルによって保持された前記液体試料を複数の反応容器に所定量ずつ分注する液体試料分注装置において、
前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する吐出動作記憶部と、
前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータを時系列的に記憶する正常吐出動作記憶部と、
前記吐出動作記憶部に時系列的に記憶された前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記正常吐出動作記憶部に記憶された前記分注用アクチュエータの正常吐出動作時における動作関連のデータとからマハラノビス距離を算出し、前記算出結果と予め定められた閾値とを比較することにより前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定するものであることを特徴とする液体試料分注装置。
【請求項3】
前記正常吐出動作時における動作関連のデータは分注条件に応じて用意され、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータと前記分注用アクチュエータの正常吐出時における動作関連のデータとから算出されたマハラノビス距離と、予め定められた閾値とを比較することにより前記分注用アクチュエータの異常の有無を判定するものであることを特徴とする請求項2記載の液体試料分注装置。
【請求項4】
前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータが複数回の吐出動作時における速度、加速度、減速度、および推力を選択的に用いることを特徴とする請求項2記載の液体試料分注装置。
【請求項5】
前記吐出条件判定部が前記分注用アクチュエータの異常有りと判定した場合、前記分注用アクチュエータの吐出動作時における動作関連のデータの各動作指令との差分を算出し、各動作指令と前記差分を加算したものを新たな動作指令とする動作指令補正部を備えたことを特徴とする請求項2記載の液体試料分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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