説明

液体調味料

【課題】ネギ科野菜の風味及び旨味が増強された、油脂を含有する液体調味料を提供する。
【解決手段】水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、香辛料、ごま、醸造酢(酸度10%)、食塩、還元水飴、砂糖、ネギチップまたはタマネギチップ(加熱品または加熱乾燥品)を所定量配合し、撹拌混合して溶解し、水相部を調製した。該水相部を常温から加熱して80℃に到達してから4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填し、次いでジアシルグリセロール高含有油脂又はサラダ油を充填することにより液体調味料を調製した。該液体調味料は、ジアシルグリセロールを4質量%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ科野菜加工品を含む液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ科の野菜は、その香り、風味から種々の料理の香り付け、薬味、汁物、鍋物、煮物、炒め物等として広く利用されている。しかし、ネギ科野菜は、香りが強いことから、その不快臭を除去するためにエタノール中で磨砕する方法(特許文献1)、ユリ科野菜へ甘味を引き出すために水浴中で加熱する方法(特許文献2)等が報告されている。また、ネギ等の粒状乾燥野菜等を予め水で膨潤させることなく、そのまま混和して、具材感、食感、風味が良好な液状調味料を製造する方法(特許文献3)が報告されている。
【特許文献1】特開2007−236362号公報
【特許文献2】特開2007−319139号公報
【特許文献3】特開2007−209295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ネギ科野菜の風味及び旨味が増強された、油脂を含有する液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者らは、油脂とネギ科野菜とを配合してその風味及び旨味の変化を検討してきたところ、油脂として一定量のジアシルグリセロールを配合し、かつ加熱処理されたネギ科野菜を配合した場合に、通常の油脂を配合した場合や、生のネギ科野菜を直接配合した場合に比べて、顕著にネギ科野菜の風味と旨味が増強された液体調味料が得られることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、ジアシルグリセロールを4質量%以上含有し、加熱処理されたネギ科野菜を配合した液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の調味料は、ネギ科野菜の風味と旨味が増強された液体調味料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の液体調味料は、油相部と水相部とを含有するものであり、その形態は乳化系であると、油相部水相部分離型であるとを問わないが、水相部には加熱処理されたネギ科野菜が配合されている。ネギ科野菜としては、タマネギ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ツリーオニオン、アサツキ、青ネギ(葉ネギ)、ワケギ、チャイブ、ニラ、白ネギ、リーキ、ノビル及びギョウジャニンニク等が挙げられ、このうち特に、タマネギ、アサツキ、青ネギ(葉ネギ)、ワケギ、白ネギが外観、風味の点から好ましい。これらは1種でも、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0008】
またネギ科野菜は、チップ状とするのが良好な食感・外観を有する点、風味及び旨味の増強効果の点から好ましい。ここでチップ状のネギ科野菜としては、好ましくは長辺及び短辺が1〜15mmからなる野菜、より好ましくは長辺及び短辺が3〜15mmからなる野菜、更に好ましくは長辺及び短辺が3〜10mmからなる野菜が挙げられる。このようなチップ状ネギ科野菜を液状調味料に配合することにより、ネギ科野菜含有液状調味料中でネギ科野菜が良好な食感及び外観を呈し、かつネギ科野菜の特有の風味、旨味が得られる点から好ましい。長辺及び短辺が1mm未満の野菜又は粉末状のネギ科野菜はチップ状に比べて旨味、風味が液状調味料中に浸透しやすいが、良好な食感・外観を有する点からは長辺及び短辺が1mm以上であることが好ましい。また、液状調味料中のネギ科野菜の旨味、風味を充分発現させる点から長辺及び短辺が15mm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、これらのネギ科野菜を生のまま配合するのではなく、加熱処理したものを配合することによって、ネギ科野菜の風味と旨味が増強される。本発明における加熱処理としては、ネギ科野菜を50℃以上の温度で1秒以上加熱処理するなど、一般的な方法を用いてよく、好ましくは50〜80℃に1〜60分の加熱処理を行うのがよい。また、乾燥ネギ科野菜の場合は50〜80℃で5〜10時間の加熱処理を行ってもよい。
【0010】
加熱調理されたネギ科野菜の含有量は、ネギ科野菜の風味及び旨味を生かす点から、水相部中に(すなわち、水相部の全質量を基準として)乾燥質量で0.1質量%(以下、単に%で示す)以上とし更に0.1〜20%、特に0.5〜10%、殊更0.5〜7%が好ましい。
【0011】
本発明の液体調味料には、油相部原料としてジアシルグリセロールを調味料中に4%以上含有する。油相部原料としてジアシルグリセロールを含有させることにより、加熱処理されたネギ科野菜の風味と旨味が増強される。好ましいジアシルグリセロールの含有量は、液体調味料中に(すなわち、調味料の全質量を基準として)10%以上、更に10〜50%、特に12〜30%が好ましい。
【0012】
また油相部中のジアシルグリセロールの含有量は、ネギ科野菜の風味及び旨味を増強させる点、生理効果、油脂の生産性の点から、15%以上、更に15〜95%、更に35〜95%、特に50〜95%、特に70〜93%、特に75〜93%、殊更80〜90%とするのが好ましい。
【0013】
また、本発明の液体調味料中の加熱調理されたネギ科野菜(乾燥重量)とジアシルグリセロールとの比率(質量比)は、ネギ科野菜の風味及び旨味増強効果の点から、2.5:1〜1:500、更に1:1〜1:100、特に1:1〜1:50が好ましい。
【0014】
本発明において、油相部として使用するジアシルグリセロールを含む食用油脂は、動物性、植物性のいずれを原料とするものでも良く、例えば、動物油としては牛脂、豚脂、魚油等、植物油としては大豆油、パーム油、パーム核油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油、米油等が挙げられるが、液体調味料製造直後の具材の風味を良好に維持する点から、大豆油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油等の植物油を用いることが好ましい。
【0015】
ジアシルグリセロールの起源としては、植物性、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、あまに油、米油、紅花油、綿実油、牛脂、魚油等を挙げることができる。またこれらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、食用油脂を構成する全脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。また、生理効果、製品が白濁せず外観が良好となる点から、不飽和脂肪酸含有量が高い植物油が好ましく、中でも菜種油、大豆油がより好ましい。
【0016】
本発明において使用される食用油脂は、トリアシルグリセロールを油相部中に4.9〜84.9%含有することが好ましく、より好ましくは4.9〜64.9%、更に6.9〜39.9%、特に6.9〜29.9%、殊更9.8〜19.8%含有するのが生理効果、油脂の工業的生産性、外観の点で好ましい。
【0017】
本発明において使用される食用油脂に含まれるトリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、ジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0018】
本発明において使用される食用油脂は、モノアシルグリセロールを油相部中に0.1〜5%含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜2%、更に0.1〜1.5%、特に0.1〜1.3%、殊更0.2〜1%含有するのが風味、外観、油脂の工業的生産性等の点で好ましい。電子レンジ調理により加熱されやすいという点でモノアシルグリセロールは0.1%以上含有するのが好ましく、風味の点から5%以下が好ましい。モノアシルグリセロールの構成脂肪酸はジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0019】
また、本発明において使用される食用油脂に含まれる遊離脂肪酸(塩)含量は、油相部中5%以下に低減されるのが好ましく、より好ましくは0〜3.5%、更に0〜2%、特に0.01〜1%、特に0.05〜0.5%とするのが風味、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0020】
本発明の液体調味料における、ネギ科野菜以外の水相部成分としては、ネギ科以外の野菜類、果実類、水、食酢、塩、醤油、香辛料、糖、蛋白質素材、有機酸、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、動植物エキス、発酵調味料、酒類、デンプン、増粘剤、安定剤、着色料等の各種添加剤等が挙げられる。
【0021】
ネギ科以外の野菜類、果実類としては例えば、アブラナ科の野菜、セリ科の野菜、ナス科の野菜、ウリ科の野菜等が挙げられる。更に、調味液に一般に使用される香辛料植物等も挙げられる。果実類としては、例えば、ウリ科の果実、ミカン科果実、バラ科果実、バショウ科の果実、パイナップル科の果実、マタタビ科の果実、クスノキ科の果実、パパイア科の果実等が挙げられる。
【0022】
また、水相部のpHは5.5以下であることが保存性の点から好ましく、更に2〜5、特に2.5〜4、殊更3.2〜3.9の範囲が好ましい。この範囲にpHを低下させるためには、食酢、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の酸味料を使用することができるが、保存性を良くする点、液体調味料製造直後の具材の風味を維持する点から食酢を用いることが好ましい。食酢は穀物酢、りんご酢、ビネガー類など様々な種類を用いることができ、その配合量は、液体調味料中に3〜50%、更に5〜30%、特に6〜26%とすることが好ましい。また、水相部中の酸度は0.15〜10%、更に0.25〜6、特に0.3〜3とすることが風味の点から好ましい。塩としては、並塩、天日塩、岩塩等、様々な種類のものを用いることができ、その一部を塩化カリウムや硫酸マグネシウム等に置き換えたものも用いることができる。塩の配合量は、液体調味料中に1〜20%、更に2〜15%、特に2〜11%とすることが風味の点から好ましい。
【0023】
本発明における液体調味料は、水相部中の塩化ナトリウム濃度は10%以下であることが、風味の点から好ましく、更に7〜2%、特に6〜2%であることが好ましい。
【0024】
本発明における液体調味料の水相部の調製は、成形加工した具材を水相成分に添加した後に他の水相成分を順次加えるか、成形加工した具材に予め調製した水相成分を加えることができる。水相部は、安全性の面から加熱殺菌することが好ましい。殺菌方法としては、一般に用いられている方法が使用可能である。具体的には、ヒーター加熱方式、高周波電磁誘導加熱方式、チューブ式高温加熱方式などの方法が利用可能である。その後容器に充填等し、油相部を積層して製品とすることが好ましい。
【0025】
油相部成分としては、食用油脂の他に植物ステロール、レシチン、乳化剤等が挙げられる。植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。植物ステロールは、液体調味料の油相部中に0.05〜4.7%、更に0.05〜4%含有することが、血中コレステロール低下効果の点から好ましい。レシチンは、卵黄レシチン、大豆レシチン、卵黄リゾレシチンなどが用いることができ、これらの液体調味料の油相部中に0.01〜5.0%、更に0.05%から4%含有することが、使用時に攪拌混合された場合の液体調味料の均一性と風味の点から好ましい。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステルなど食品添加物として認められている乳化剤が使用でき、含有量としては、0.01%〜1%、更に0.1〜0.6%含有することが、使用時に攪拌混合された場合の液体調味料の均一性と風味の点から好ましい。
【0026】
本発明における液体調味料は、食用油脂を含む油相部と水相部の質量比率は、液体調味料製造直後の具材の風味を維持する点、栄養及び官能の点から5/95〜60/40、更に15/85〜45/55、特に15/85〜35/65であるのが好ましい。
【0027】
本発明における液体調味料には、抗酸化剤を添加することが好ましい。抗酸化剤は、通常、食品に使用されるものであればいずれでもよいが、天然抗酸化剤、トコフェロール、カテキン、リン脂質、アスコルビン酸脂肪酸エステル、BHT、BHA、TBHQから選ばれる1種以上が好ましく、天然抗酸化剤、トコフェロールから選ばれる1種以上が特に好ましい。抗酸化剤は、油相部、水相部どちらにも配合できるが、油相部への添加が好ましい。特に好ましい抗酸化剤の含有量は、油相部中50〜5000μg/mL、更に200〜2000μg/mLである。
【0028】
本発明の液体調味料は、乳化系又は油相部水相部分離型の液体調味料であり、特にドレッシングとして有用である。本発明でいうドレッシングとは、油脂及び食酢若しくはかんきつ類の果汁に、必要に応じて食塩、砂糖類、香辛料又はピクルスの細片等を加え調製した液状の調味料であって、主としてサラダに使用するものをいう。
【実施例】
【0029】
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示した原材料を用い、次に示す製造法に従って液体調味料を製造した。
〔液体調味料の調製1〕
水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、香辛料、ごま、醸造酢(酸度10%)、食塩、還元水飴、砂糖、ネギチップまたはタマネギチップ(加熱品または加熱乾燥品)を、表1に示した量配合し、撹拌混合して溶解し、調味液(水相部)を調製した。次に、常温から加熱して80℃に到達してから4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填し、次いでDAG高含有油脂又はサラダ油を充填することにより液体調味料を調製した。使用したDAG高含有油脂は、TAG:19.3%、DAG:80%、MAG:0.7%、サラダ油は、TAG:94.3%、DAG:1.5%、MAG:0.2%を含有するものであった(ここで、DAGとはジアシルグリセロール、TAGとはトリアシルグリセロール、MAGとはモノアシルグリセロールのことをいう。)なお、ネギ科野菜の加熱条件は、「加熱品」については、ネギを刻み、70〜80℃で10分間加熱、「加熱乾燥品」については、ネギを刻み、60〜70℃で7時間加熱乾燥させたものである。
【0030】
実施例4及び比較例4
表1に示した原材料を用い、次に示す製造法に従って液体調味料を製造した。
〔液体調味料の調製2〕
水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、香辛料、ごま、醸造酢(酸度10%)、食塩、還元水飴、砂糖、ネギチップ(加熱品または非加熱品)、及び前記DAG高含有油脂またはサラダ油を表1に示した量を配合し、撹拌混合して溶解し、次いで、ホモディスパーにて乳化を行い調味液を調製した。次に、常温から加熱して80℃に到達してから4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填することにより液体調味料を調製した。
【0031】
【表1】

【0032】
〔官能評価〕
市販レタスを20〜30mmの大きさに切断した。試食直前に液体調味料をよく攪拌し、速やかに本レタス約100g当たり液体調味料15gを均一に分散するようにかけ、試食することにより風味の評価を行った。評価は、専門パネル5名により、各液体調味料のネギ科野菜特有の風味・旨味について、下記基準に従って行った。
【0033】
〔ネギ科野菜の甘旨味の評価基準〕
5:非常に感じる
4:かなり感じる
3:感じる
2:あまり感じない
1:感じない
ここでいう「ネギ科野菜の甘旨味」とは、焼きネギ等に代表される、濃厚な甘い旨味のことをいう。
【0034】
〔ネギ科野菜に由来する風味の評価基準〕
5:非常に感じる
4:かなり感じる
3:感じる
2:あまり感じない
1:感じない
【0035】
その結果、実施例1、2、3、4の液体調味料はネギ科野菜に由来する風味が強く、ネギ科野菜の甘旨味も強く維持されていた。一方、比較例1、2、3、4の液体調味料は、実施例1、2、3、4の調味料に比べ、明らかにその風味が弱く旨みも感じにくい傾向であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアシルグリセロールを4質量%以上含有し、加熱処理されたネギ科野菜を含有した液体調味料。
【請求項2】
加熱処理されたネギ科野菜の含有量が乾燥質量で水相部中0.1質量%以上である請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
ネギ科野菜が、タマネギ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ツリーオニオン、アサツキ、青ネギ、ワケギ、チャイブ、ニラ、白ネギ、リーキ、ノビル及びギョウジャニンニクから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の液体調味料。