液体駆動システムを備えたロケット段
【課題】ロケット段を、可能な限り軽量で、コンパクトなデザインを有し、さらに可能な限り低コストであるように構成する。
【解決手段】推進装置スラストフレーム(2)の少なくとも一部分はタンク(3)の内部に配置されている。推進剤の成分を貯留するために前記タンク(3)内で互いに分離される領域(I,II)が形成されるように、前記推進装置スラストフレーム(2)の前記一部分(2b)は前記タンク(3)内部で完全に閉じるように形成されている。
【解決手段】推進装置スラストフレーム(2)の少なくとも一部分はタンク(3)の内部に配置されている。推進剤の成分を貯留するために前記タンク(3)内で互いに分離される領域(I,II)が形成されるように、前記推進装置スラストフレーム(2)の前記一部分(2b)は前記タンク(3)内部で完全に閉じるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と酸化剤とを分離して貯留する少なくともそれぞれ1つのタンクと、推進装置スラストフレームと、種々の構成要素を互いに結合させている一次構造部とを備えている、宇宙飛行体を作動させるためのロケット段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現今使用されている液体駆動システムを備えたキャリアロケット段は、異なる機能を持つ一連の構成要素を含んでいる。これには燃料および酸化剤を貯留するタンクが含まれ、燃料と酸化剤とは別個のタンクで貯留されるか、或いは、燃料と酸化剤との間に仕切り壁を備えたタンクで貯留される。前記構成要素にはさらにいわゆる推進装置スラストフレーム(英語ではEngine Thrust Frame (ETF))が含まれる。推進装置スラストフレームは、推進装置の荷重をタンクと一次構造部へ誘導するとともに、キャリアの荷重を一次構造部を介してタンクと推進装置とへ誘導する。さらにこの種のロケット段は推進剤処理装置(英語ではPropellant Management Devices (PMD))を含んでいる。推進剤処理装置は、とりわけ、推進剤残量が最少である場合でも推進装置へのガスおよび粒子を含まない推進剤の供給を確保するために用いられ、或いは、液体の渦流を抑止するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類のロケット段を、可能な限り軽量で、コンパクトなデザインを有し、さらに可能な限り低コストであるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を、この種のロケット段において、推進装置スラストフレームの少なくとも一部分がタンクの内部に配置され、推進剤の成分を貯留するためにタンク内で互いに分離される領域が形成されるように、推進装置スラストフレームの前記一部分がタンク内部で完全に閉じるように形成されていることによって解決する。
【0005】
本発明に従って本来は別個の構成要素であるタンクと推進装置スラストフレームとを1つのユニットに統合することにより、極めてコンパクトな配置構成が得られるとともに、かなりの軽量化が得られる。さらに、このようにして、境を接している構造部の重量も対応的に低減する。コンパクトなデザインにより、本発明によるロケット段の全長は従来の構成のものよりも著しく短くなる。このことは、風による荷重、積載重量によって誘導される荷重のような機械的荷重を減少させる。加えて、本発明に従って設けられるロケット段の構成により、種々の機能が個々の構成要素に最適に分配される。たとえば、実質的に円錐状の推進装置スラストフレームはタンク内で燃料と酸化剤とを分離するためにも用いられる。さらに、余分な幾何学的構成も少なくなる。
【0006】
さらに本発明の有利な構成にしたがって推進剤処理装置をも統合することにより、配置構成のコンパクト性が一層改善される。同時に、誘導板、再充填可能な燃料容器のような推進剤処理装置の構成要素は荷重誘導にも利用される。最後に、本発明によるロケット段は特殊なケースで必要な再点火能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【図1】ロケット段の一部分の断面図である。
【図2】図1の配置構成の前記一部分の拡大図である。
【図3】図1の配置構成の拡大部分を他の方向から見た図である。
【図4】図3の配置構成の一部分の拡大図である。
【図5】ロケット段用タンクの形状を示す図である。
【図6】ロケット段用タンクの他の形状を示す図である。
【図7】ロケット段用タンクの他の形状を示す図である。
【図8】推進装置スラストフレームをタンク内に配置する構成を示す図である。
【図9】推進装置スラストフレームをタンク内に配置する他の構成を示す図である。
【図10】ロケット弾用推進装置スラストフレームの1実施形態を示す図である。
【図11】ロケット弾用推進装置スラストフレームの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面において、同一の部材または互いに対応している部材には同一の符号が付してある。
【0009】
図1はロケット段の鉛直断面図である。一次構造部1には円錐状の推進装置スラストフレーム2が結合され、図示した実施形態では、推進装置スラストフレームはその大部分が球状のタンク3に組み込まれている。この場合、推進装置スラストフレーム2の部分2bはタンク内部に配置され、外側リング2aはこのタンク3の外側にある。図1に図示した配置構成は、さらに、推進装置4と推進剤処理装置5とを含み、推進剤処理装置5は誘導板5aと再充填可能な少なくとも1つの液体容器5bとを備えている。図から明らかなように、従来のロケット段では通常互いに切り離されていたタンク3と推進装置スラストフレーム2とは、そのそれぞれの機能を限定されることなく且つ阻害されることなく、互いに結合されている。
【0010】
円錐状の推進装置スラストフレーム2を球状のタンク3内に組み込むことにより、円錐状の推進装置スラストフレーム2にはさらに2つの機能が付与される。すなわち、特に図1に認められるように、タンク3内に配置されて仕切り壁2bとして作用する部分によってタンク3を2つの領域I,IIに分割する。これら両領域IとIIのうち、貯留中は一方の領域が燃料を受容し、他方の領域が酸化剤を受容する。これにより複数のタンクまたは別個の仕切り壁の組み込みは必要ない。さらに、両タンク領域IとIIとの間でインテリジェント圧力制御を行うことにより、円錐状仕切り壁2bの構造質量を最小に低減させることができる。
【0011】
図1に図示したタンク3の球状形状は、圧縮荷重のみを考慮するだけならば、燃料と酸化剤とを貯留するための圧力タンクの最適な形状を表わしている。推進装置4は、図1にも図示したように、1か所で残りのロケット段と結合されているにすぎず、一次構造部1は実質的に筒状の形状を有しているので、円錐状の推進装置スラストフレーム2は、一次構造部1の筒体から推進装置4用結合点へ荷重を導入し、これから戻すためにも最適な形状を形成している。
【0012】
誘導板5aはロケット段の対称軸線に対し垂直に位置し、タンク3の最大幅広部分をタンク排出部と結合させることで、液体の渦流を抑止しこれをタンク排出部に誘導している。再充填可能な液体容器5bはタンク排出部の上方に固定され、一方では表面張力により燃料にガスが含まれないことを保証するために、他方では推進装置4を新たに点火した時に、加速のために残量燃料がタンク排出部へ誘導される以前に燃料をすぐに提供できるよう保証するために、排出部に十分な量の液体を保持している。なお、誘導板5aと再充填可能な液体容器5bとはタンク3の両領域IとII内に配置されている。
【0013】
図2に示す、上述した配置構成の部分領域の拡大図は、ロケット段の最後の燃焼段階の終了時に燃料6および酸化剤7の幾分かの残量が最大許容角度で推進剤処理装置5の領域にいかに集積するかを示している。タンク3および円錐状の推進装置スラストフレーム2の統合型幾何学的構成の内部にいくつかの屈曲部または隅角部が設けられているために、従来のタンクに比べて燃料残量6と7は減少している。縦方向加速度により液体6と7はタンク底部方向に押され、そこには推進装置4が配置されているとともに、搬送管に通じるタンク排出接続部が設けられている。総じて、この統合型タンク形状は、従来のものに比べて燃料残量6,7をほぼ50%減少させる。隅角部が設けられていることによって生じる表面張力は、この燃料残量をさらに減少させ、しかもこのために他の推進剤処理装置は必要ない。
【0014】
図1の配置構成の部分領域の拡大図をもう一度図3および図4に示すが、これは誘導板5aおよび再充填可能な液体容器5bとともにタンク3を領域IIに組み込んだ状態を示している。液体容器はディスク状の補強部8bによって支持される通路部8aから組み立てられ、補強部8bはふるい8cによって覆われている。
【0015】
前記配置構成に推進剤処理装置5を組み込んだことにより、タンク3の排出部の領域において、円錐状の推進装置スラストフレーム2を、推進装置の荷重を一次構造部1へ導入させる耐荷力機能の点でアシストする。この場合、荷重経路は主に円錐状の推進装置スラストフレーム2を通り、その結果補助的なサポートは必要ない。さらに、誘導板は液体を拘束してタンク3の下部部分へ誘導し、そこで保持する毛細管機能を有している。なお、図1および図2で認められる領域Iもこの種の誘導板5aおよび再充填可能な液体容器5bを備えていてもよい。
【0016】
ロケット段の直径と高さの最適化はキャリア構成全体にも依存しているので、ロケット段のキャリア能力を最適化するには、タンクの直径と長さとを変えることができることが重要である。純粋に球形状のタンクドームは場合によっては比較的大きな空容積を生じさせることがあり、その結果キャリア段が不必要に大きくなることがあるので、この種のタンクの純粋に球形の形状はすべてのケースで最適ではない。それ故、図5ないし図7にはタンクの可能な実施形態が図示されており、これらの実施形態はほとんどのケースでより好適に適合する解決手段を生じさせる。
【0017】
これは、図5に図示したような、筒状の中間部材9を備えたタンク、図6に図示したような、実質的に楕円形のドーム10を備えたタンク、或いは、図7に図示したような、球冠状ドーム11を備えたタンク11であってよい。
【0018】
推進装置スラストフレーム2が実質的に円錐状である場合、図9に図示したように、仕切り壁2bは、一方では円錐状のリング2a、いわゆるコニカルタンクアタッチメントリングを用いて一次構造部1のほうへ延長することができ、他方ではタンク延長部2cを用いて推進装置4のほうへ延長することができる。タンク延長部2cはアクチュエータ調整力と推進装置推進力とのより好適な導入を可能にする。しかしながらこの配置構成はあまりコンパクトでなく、しかもこの種のタンク延長部2cを設けていない配置構成よりも複雑である。他方、これとは択一的に、既存の容積をより好適に利用するため、図9に図示したように円錐状のリング2aを完全に省略してもよい。しかしながら、このようなケースでは、キャリア体の荷重はタンクシェルによって受けねばならない。
【0019】
上述した配置構成では、推進装置スラストフレームは円錐状に形成されている。しかし、システムに対する要請に応じては、この形状と異なっていてもよい。図10と図11には、縦面がそれぞれ湾曲しているフレームが図示されている。これは、図10に示唆されているように凹状湾曲部13によって実現するか、或いは、図11に示したように凸状湾曲部14によって実現することができる。推進装置スラストフレームの縦面の最適な湾曲の選択は、とりわけ、両タンクチャンバーIとIIとの間の差圧に依存し、さらには一次構造部での結合点と両タンクチャンバーIとIIの必要容積とに依存している。いずれにしろ、湾曲した縦面を考慮する場合には、へこみが生じる恐れがあるので、前記差圧が常に湾曲部の方向に作用するよう保証されていなければならない。また、推進装置の荷重の荷重推移はさらに好ましいものではない。というのは、この荷重変位は直線を成さないからである。さらに、このような円錐構造の製造はより複雑である。
【符号の説明】
【0020】
1 一次構造部
2 推進装置スラストフレーム
3 タンク
4 推進装置
5 推進剤処理装置
5a 誘導板
5b 液体容器
I,II タンク内の領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と酸化剤とを分離して貯留する少なくともそれぞれ1つのタンクと、推進装置スラストフレームと、種々の構成要素を互いに結合させている一次構造部とを備えている、宇宙飛行体を作動させるためのロケット段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現今使用されている液体駆動システムを備えたキャリアロケット段は、異なる機能を持つ一連の構成要素を含んでいる。これには燃料および酸化剤を貯留するタンクが含まれ、燃料と酸化剤とは別個のタンクで貯留されるか、或いは、燃料と酸化剤との間に仕切り壁を備えたタンクで貯留される。前記構成要素にはさらにいわゆる推進装置スラストフレーム(英語ではEngine Thrust Frame (ETF))が含まれる。推進装置スラストフレームは、推進装置の荷重をタンクと一次構造部へ誘導するとともに、キャリアの荷重を一次構造部を介してタンクと推進装置とへ誘導する。さらにこの種のロケット段は推進剤処理装置(英語ではPropellant Management Devices (PMD))を含んでいる。推進剤処理装置は、とりわけ、推進剤残量が最少である場合でも推進装置へのガスおよび粒子を含まない推進剤の供給を確保するために用いられ、或いは、液体の渦流を抑止するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類のロケット段を、可能な限り軽量で、コンパクトなデザインを有し、さらに可能な限り低コストであるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を、この種のロケット段において、推進装置スラストフレームの少なくとも一部分がタンクの内部に配置され、推進剤の成分を貯留するためにタンク内で互いに分離される領域が形成されるように、推進装置スラストフレームの前記一部分がタンク内部で完全に閉じるように形成されていることによって解決する。
【0005】
本発明に従って本来は別個の構成要素であるタンクと推進装置スラストフレームとを1つのユニットに統合することにより、極めてコンパクトな配置構成が得られるとともに、かなりの軽量化が得られる。さらに、このようにして、境を接している構造部の重量も対応的に低減する。コンパクトなデザインにより、本発明によるロケット段の全長は従来の構成のものよりも著しく短くなる。このことは、風による荷重、積載重量によって誘導される荷重のような機械的荷重を減少させる。加えて、本発明に従って設けられるロケット段の構成により、種々の機能が個々の構成要素に最適に分配される。たとえば、実質的に円錐状の推進装置スラストフレームはタンク内で燃料と酸化剤とを分離するためにも用いられる。さらに、余分な幾何学的構成も少なくなる。
【0006】
さらに本発明の有利な構成にしたがって推進剤処理装置をも統合することにより、配置構成のコンパクト性が一層改善される。同時に、誘導板、再充填可能な燃料容器のような推進剤処理装置の構成要素は荷重誘導にも利用される。最後に、本発明によるロケット段は特殊なケースで必要な再点火能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【図1】ロケット段の一部分の断面図である。
【図2】図1の配置構成の前記一部分の拡大図である。
【図3】図1の配置構成の拡大部分を他の方向から見た図である。
【図4】図3の配置構成の一部分の拡大図である。
【図5】ロケット段用タンクの形状を示す図である。
【図6】ロケット段用タンクの他の形状を示す図である。
【図7】ロケット段用タンクの他の形状を示す図である。
【図8】推進装置スラストフレームをタンク内に配置する構成を示す図である。
【図9】推進装置スラストフレームをタンク内に配置する他の構成を示す図である。
【図10】ロケット弾用推進装置スラストフレームの1実施形態を示す図である。
【図11】ロケット弾用推進装置スラストフレームの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面において、同一の部材または互いに対応している部材には同一の符号が付してある。
【0009】
図1はロケット段の鉛直断面図である。一次構造部1には円錐状の推進装置スラストフレーム2が結合され、図示した実施形態では、推進装置スラストフレームはその大部分が球状のタンク3に組み込まれている。この場合、推進装置スラストフレーム2の部分2bはタンク内部に配置され、外側リング2aはこのタンク3の外側にある。図1に図示した配置構成は、さらに、推進装置4と推進剤処理装置5とを含み、推進剤処理装置5は誘導板5aと再充填可能な少なくとも1つの液体容器5bとを備えている。図から明らかなように、従来のロケット段では通常互いに切り離されていたタンク3と推進装置スラストフレーム2とは、そのそれぞれの機能を限定されることなく且つ阻害されることなく、互いに結合されている。
【0010】
円錐状の推進装置スラストフレーム2を球状のタンク3内に組み込むことにより、円錐状の推進装置スラストフレーム2にはさらに2つの機能が付与される。すなわち、特に図1に認められるように、タンク3内に配置されて仕切り壁2bとして作用する部分によってタンク3を2つの領域I,IIに分割する。これら両領域IとIIのうち、貯留中は一方の領域が燃料を受容し、他方の領域が酸化剤を受容する。これにより複数のタンクまたは別個の仕切り壁の組み込みは必要ない。さらに、両タンク領域IとIIとの間でインテリジェント圧力制御を行うことにより、円錐状仕切り壁2bの構造質量を最小に低減させることができる。
【0011】
図1に図示したタンク3の球状形状は、圧縮荷重のみを考慮するだけならば、燃料と酸化剤とを貯留するための圧力タンクの最適な形状を表わしている。推進装置4は、図1にも図示したように、1か所で残りのロケット段と結合されているにすぎず、一次構造部1は実質的に筒状の形状を有しているので、円錐状の推進装置スラストフレーム2は、一次構造部1の筒体から推進装置4用結合点へ荷重を導入し、これから戻すためにも最適な形状を形成している。
【0012】
誘導板5aはロケット段の対称軸線に対し垂直に位置し、タンク3の最大幅広部分をタンク排出部と結合させることで、液体の渦流を抑止しこれをタンク排出部に誘導している。再充填可能な液体容器5bはタンク排出部の上方に固定され、一方では表面張力により燃料にガスが含まれないことを保証するために、他方では推進装置4を新たに点火した時に、加速のために残量燃料がタンク排出部へ誘導される以前に燃料をすぐに提供できるよう保証するために、排出部に十分な量の液体を保持している。なお、誘導板5aと再充填可能な液体容器5bとはタンク3の両領域IとII内に配置されている。
【0013】
図2に示す、上述した配置構成の部分領域の拡大図は、ロケット段の最後の燃焼段階の終了時に燃料6および酸化剤7の幾分かの残量が最大許容角度で推進剤処理装置5の領域にいかに集積するかを示している。タンク3および円錐状の推進装置スラストフレーム2の統合型幾何学的構成の内部にいくつかの屈曲部または隅角部が設けられているために、従来のタンクに比べて燃料残量6と7は減少している。縦方向加速度により液体6と7はタンク底部方向に押され、そこには推進装置4が配置されているとともに、搬送管に通じるタンク排出接続部が設けられている。総じて、この統合型タンク形状は、従来のものに比べて燃料残量6,7をほぼ50%減少させる。隅角部が設けられていることによって生じる表面張力は、この燃料残量をさらに減少させ、しかもこのために他の推進剤処理装置は必要ない。
【0014】
図1の配置構成の部分領域の拡大図をもう一度図3および図4に示すが、これは誘導板5aおよび再充填可能な液体容器5bとともにタンク3を領域IIに組み込んだ状態を示している。液体容器はディスク状の補強部8bによって支持される通路部8aから組み立てられ、補強部8bはふるい8cによって覆われている。
【0015】
前記配置構成に推進剤処理装置5を組み込んだことにより、タンク3の排出部の領域において、円錐状の推進装置スラストフレーム2を、推進装置の荷重を一次構造部1へ導入させる耐荷力機能の点でアシストする。この場合、荷重経路は主に円錐状の推進装置スラストフレーム2を通り、その結果補助的なサポートは必要ない。さらに、誘導板は液体を拘束してタンク3の下部部分へ誘導し、そこで保持する毛細管機能を有している。なお、図1および図2で認められる領域Iもこの種の誘導板5aおよび再充填可能な液体容器5bを備えていてもよい。
【0016】
ロケット段の直径と高さの最適化はキャリア構成全体にも依存しているので、ロケット段のキャリア能力を最適化するには、タンクの直径と長さとを変えることができることが重要である。純粋に球形状のタンクドームは場合によっては比較的大きな空容積を生じさせることがあり、その結果キャリア段が不必要に大きくなることがあるので、この種のタンクの純粋に球形の形状はすべてのケースで最適ではない。それ故、図5ないし図7にはタンクの可能な実施形態が図示されており、これらの実施形態はほとんどのケースでより好適に適合する解決手段を生じさせる。
【0017】
これは、図5に図示したような、筒状の中間部材9を備えたタンク、図6に図示したような、実質的に楕円形のドーム10を備えたタンク、或いは、図7に図示したような、球冠状ドーム11を備えたタンク11であってよい。
【0018】
推進装置スラストフレーム2が実質的に円錐状である場合、図9に図示したように、仕切り壁2bは、一方では円錐状のリング2a、いわゆるコニカルタンクアタッチメントリングを用いて一次構造部1のほうへ延長することができ、他方ではタンク延長部2cを用いて推進装置4のほうへ延長することができる。タンク延長部2cはアクチュエータ調整力と推進装置推進力とのより好適な導入を可能にする。しかしながらこの配置構成はあまりコンパクトでなく、しかもこの種のタンク延長部2cを設けていない配置構成よりも複雑である。他方、これとは択一的に、既存の容積をより好適に利用するため、図9に図示したように円錐状のリング2aを完全に省略してもよい。しかしながら、このようなケースでは、キャリア体の荷重はタンクシェルによって受けねばならない。
【0019】
上述した配置構成では、推進装置スラストフレームは円錐状に形成されている。しかし、システムに対する要請に応じては、この形状と異なっていてもよい。図10と図11には、縦面がそれぞれ湾曲しているフレームが図示されている。これは、図10に示唆されているように凹状湾曲部13によって実現するか、或いは、図11に示したように凸状湾曲部14によって実現することができる。推進装置スラストフレームの縦面の最適な湾曲の選択は、とりわけ、両タンクチャンバーIとIIとの間の差圧に依存し、さらには一次構造部での結合点と両タンクチャンバーIとIIの必要容積とに依存している。いずれにしろ、湾曲した縦面を考慮する場合には、へこみが生じる恐れがあるので、前記差圧が常に湾曲部の方向に作用するよう保証されていなければならない。また、推進装置の荷重の荷重推移はさらに好ましいものではない。というのは、この荷重変位は直線を成さないからである。さらに、このような円錐構造の製造はより複雑である。
【符号の説明】
【0020】
1 一次構造部
2 推進装置スラストフレーム
3 タンク
4 推進装置
5 推進剤処理装置
5a 誘導板
5b 液体容器
I,II タンク内の領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤とを分離して貯留する少なくともそれぞれ1つのタンクと、推進装置スラストフレームと、種々の構成要素を互いに結合させている一次構造部とを備えている、宇宙飛行体を作動させるためのロケット段において、
前記推進装置スラストフレーム(2)の少なくとも一部分が前記タンク(3)の内部に配置され、推進剤の成分を貯留するために前記タンク(3)内で互いに分離される領域(I,II)が形成されるように、前記推進装置スラストフレーム(2)の前記一部分(2b)が前記タンク(3)内部で完全に閉じるように形成されていることを特徴とするロケット段。
【請求項2】
前記タンク(3)の内部に、誘導板(5a)を備えた推進剤処理装置(5)がさらに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のロケット段。
【請求項3】
前記推進剤処理装置(5)が再充填可能な液体容器(5b)を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のロケット段。
【請求項4】
前記推進装置スラストフレーム(2)が実質的に円錐状のリング(2a)により前記一次構造部(1)と結合されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項5】
前記推進剤スラストフレーム(2)が、さらに、ディスク状の補強部(8b)により前記推進装置(4)と結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項6】
前記推進剤スラストフレーム(2)が延長部(2c)を介して前記推進装置(4)と結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項7】
前記タンク(3)が実質的に球形に形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項8】
前記タンクが実質的に楕円形のドーム(10)を備えていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項9】
前記タンクが実質的に球冠状のドーム(11)を備えていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項10】
前記タンクが筒状の中間部材(9)を備えていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項1】
燃料と酸化剤とを分離して貯留する少なくともそれぞれ1つのタンクと、推進装置スラストフレームと、種々の構成要素を互いに結合させている一次構造部とを備えている、宇宙飛行体を作動させるためのロケット段において、
前記推進装置スラストフレーム(2)の少なくとも一部分が前記タンク(3)の内部に配置され、推進剤の成分を貯留するために前記タンク(3)内で互いに分離される領域(I,II)が形成されるように、前記推進装置スラストフレーム(2)の前記一部分(2b)が前記タンク(3)内部で完全に閉じるように形成されていることを特徴とするロケット段。
【請求項2】
前記タンク(3)の内部に、誘導板(5a)を備えた推進剤処理装置(5)がさらに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のロケット段。
【請求項3】
前記推進剤処理装置(5)が再充填可能な液体容器(5b)を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のロケット段。
【請求項4】
前記推進装置スラストフレーム(2)が実質的に円錐状のリング(2a)により前記一次構造部(1)と結合されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項5】
前記推進剤スラストフレーム(2)が、さらに、ディスク状の補強部(8b)により前記推進装置(4)と結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項6】
前記推進剤スラストフレーム(2)が延長部(2c)を介して前記推進装置(4)と結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項7】
前記タンク(3)が実質的に球形に形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項8】
前記タンクが実質的に楕円形のドーム(10)を備えていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項9】
前記タンクが実質的に球冠状のドーム(11)を備えていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載のロケット段。
【請求項10】
前記タンクが筒状の中間部材(9)を備えていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載のロケット段。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−112340(P2013−112340A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257356(P2012−257356)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【出願人】(500443888)アストリウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【出願人】(500443888)アストリウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
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