説明

液化天然ガス充填設備

【課題】タンクローリーにローリー用加圧蒸発器を備えさせないものでありながら、ローリー用加圧蒸発器を位置的制約少なく設置できるようにするとともにタンクローリーから貯槽に液化天然ガスを手間少なくかつ良好に充填できるようにする。
【解決手段】貯槽1の下方側に予備タンク15を接続し、予備タンク15に空温式のローリー用加圧蒸発器18を接続し、そのローリー用加圧蒸発器18に第2のガス配管19を接続する。貯槽1の下部に接続した液化天然ガス充填用配管11と第1のローリー側配管33とを接続し、第2のガス配管19と第2のローリー側配管36とを接続し、予備タンク15内の液化天然ガスをローリー用加圧蒸発器18に供給して蒸発気化させ、その気化した加圧用天然ガスをタンクローリーTLに供給し、タンクローリーTL内の圧力を上昇させ、タンクローリーTL内の液化天然ガスを貯槽1に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリーから供給される液化天然ガスを貯蔵する貯槽と、その貯槽に接続されるとともにタンクローリーに接続分離可能に接続されてタンクローリーから貯槽に液化天然ガスを供給する液化天然ガス充填用配管とを備えた液化天然ガス充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスを充填する必要がある液化天然ガスサテライト基地としては、従来一般に、次のようなものが知られている。
すなわち、液化天然ガス貯蔵タンク(貯槽)に液化天然ガスを貯め、その貯められた液化天然ガスを気化器に供給して気化し、気化した天然ガスを熱量調整装置に供給し、ガス圧力調節器により設定圧力に調整してホルダーに貯蔵し、そのホルダー内の天然ガスを、供給ガス圧力調節器により設定圧力に調整して需要家に供給するように構成されている。液化天然ガス貯蔵タンク(貯槽)には、タンクローリー受け入れ口を供えた配管が接続され、その配管を通じて液化天然ガスを充填するように構成されている。(特許文献1参照)。
【0003】
上述のような従来例で、液化天然ガス貯蔵タンク(貯槽)への液化天然ガスの充填は、加圧器を備えたタンクローリーによって行われる。
すなわち、図4の(a)の従来例の全体概略構成図に示すように、液化天然ガスを貯蔵する貯槽1の下方側に液化天然ガス充填用配管11の一端側が接続され、その液化天然ガス充填用配管11の他端側に第1のフランジ13が付設されている。一方、タンクローリーTLに開閉弁付きの第1のローリー側配管01が付設されるとともに、その第1のローリー側配管01の先端に第1のローリー側フランジ02が付設され、タンクローリーTLにローリー用加圧蒸発器03が搭載されている。
【0004】
上記構成により、第1のフランジ13と第1のローリー側フランジ02とをボルト(図示せず)などにより連結して第1のローリー側配管01と液化天然ガス充填用配管11とを接続し、ローリー用加圧蒸発器03にタンクローリーTL内の液化天然ガスを供給して外気温により蒸発させ、それによって得られる加圧用天然ガスをタンクローリーTL内に供給し、タンクローリーTL内を加圧して液化天然ガスを貯槽1に充填するようになっている。
【特許文献1】特開2003−20294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のようにタンクローリーTLにローリー用加圧蒸発器03を搭載する場合、例えば、10トンのタンクローリーTLに搭載する場合で、ローリー用加圧蒸発器03の重量が300〜500kg程度あるため、その重量分だけ液化天然ガスの積載量が減少する欠点があった。
また、タンクローリーTLそれぞれにローリー用加圧蒸発器03を搭載するために、イニシャルコストが高くなる欠点があった。そのうえ、ローリー用加圧蒸発器03がガス製造設備であるために、ローリー用加圧蒸発器03を搭載したタンクローリーTLが製造設備の扱いを受け、定期点検が必要で点検費用が多くなるとともに、点検の間はタンクローリーTLが使用できず、稼動率が低下する欠点があった。
【0006】
上記問題を回避するものとして、図4の(b)の全体概略構成図に示すような別の従来例がある。
すなわち、上述従来例と同じ液化天然ガス充填用配管11に加え、外気温によって加熱する空温式のローリー用加圧蒸発器011が基地側に設置され、そのローリー用加圧蒸発器011に、液配管012とガス配管013が接続されるとともに、両配管012,013それぞれの先端に第2および第3のフランジ014,015が付設されている。一方、タンクローリーTL側に、それぞれ開閉弁付きの第1、第2および第3のローリー側配管016,017,018が付設されるとともに、それらの第1、第2および第3のローリー側配管016,017,018それぞれの先端に第1、第2および第3のローリー側フランジ019,020,021が付設されている。
【0007】
上記構成により、液化天然ガス充填用配管11に付設された第1のフランジ13、ならびに第2および第3のフランジ014,015それぞれと第1、第2および第3のローリー側フランジ019,020,021それぞれとをボルト(図示せず)などにより連結して、第1のローリー側配管016と液化天然ガス充填用配管11とを接続するとともに、第2および第3のローリー側配管017,018と液配管012およびガス配管013を接続し、ローリー用加圧蒸発器011にタンクローリーTL内の液化天然ガスを供給して外気温により蒸発気化させ、それによって得られる加圧用天然ガスをタンクローリーTL内に供給し、タンクローリーTL内を加圧して液化天然ガスを貯槽1に充填するようになっている。
【0008】
しかしながら、別の従来例の場合、タンクローリーTL側との接続箇所が3箇所になり、接続作業および開閉弁の開閉作業に多大な手間を要する欠点があった。また、タンクローリーTLからローリー用加圧蒸発器011への液化天然ガスの供給が高低差を利用して行うため、タンクローリーTLのタンクよりも低い位置にローリー用加圧蒸発器011を設置しなければならない。これに対して基地設備は、基礎、排水等の都合で道路面より高い位置に設置されることが多く、ローリー用加圧蒸発器011の設置場所に制約を受けることが多い欠点があった。
【0009】
更に、図4の(b)に示すように、貯槽1への充填終了後、窒素ボンベ24をガス配管013に接続し、ガス配管012→ローリー用加圧蒸発器011→液配管013と窒素ガスを流し、残存する液化天然ガスおよび天然ガスを窒素ガスで置換するパージ作業を行う必要があるが、低位置にあるローリー用加圧蒸発器011から逆流させて行うため、液化天然ガスを完全に置換するために時間を要する欠点があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、タンクローリーにローリー用加圧蒸発器を備えさせないものでありながら、ローリー用加圧蒸発器を位置的制約少なく設置できるようにするとともにタンクローリーから貯槽に液化天然ガスを手間少なくかつ良好に充填できるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、イニシャルコストを低減できるようにすることを目的とし、請求項3に係る発明は、スペースを小さくかつ充分に加圧してタンクローリーから貯槽に液化天然ガスを良好に充填できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
タンクローリーから供給される液化天然ガスを貯蔵する貯槽と、前記貯槽に接続されるとともに前記タンクローリーに接続分離可能に接続されて前記タンクローリーから前記貯槽に液化天然ガスを供給する液化天然ガス充填用配管とを備えた液化天然ガス充填設備において、
前記貯槽に液配管を介して接続されて、前記貯槽から供給される液化天然ガスを、前記タンクローリー内を昇圧するに足る量だけ貯蔵する予備タンクと、
前記予備タンクに接続されて前記予備タンクから供給される液化天然ガスを蒸発気化するローリー用加圧蒸発器と、
前記ローリー用加圧蒸発器に接続されるとともに前記タンクローリーに接続分離可能に接続されて前記タンクローリーに加圧用天然ガスを供給する昇圧用配管と、
前記液配管に介装されて昇圧時の前記予備タンク側から前記貯槽側への液化天然ガスの逆流を防止する弁機構と、
を備えて構成する。
【0012】
(作用・効果)
請求項1に係る発明の液化天然ガス充填設備の構成によれば、液化天然ガス充填用配管および昇圧用配管をタンクローリーに接続し、貯槽からの液化天然ガスを予備タンクに貯め、その予備タンクからローリー用加圧蒸発器に供給して液化天然ガスを蒸発気化し、気化した加圧用天然ガスをタンクローリーに供給してタンクローリー内を加圧し、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを充填することができる。
したがって、液化天然ガス充填用配管と昇圧用配管の2本の配管をタンクローリー側に接続するだけで液化天然ガスを充填でき、タンクローリーにローリー用加圧蒸発器を備えさせないものでありながら、接続作業および開閉弁の開閉作業の手間少なく際、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを充填できる。
しかも、液化天然ガスを予備タンクからローリー用加圧蒸発器に供給して蒸発気化するから、予備タンクの位置を比較的高位置に設置するとともに、それに伴ってローリー用加圧蒸発器も比較的高位置に設置できるなど、ローリー用加圧蒸発器を位置的制約少なく設置できるとともに、タンクローリーからの液化天然ガスを供給して蒸発気化する場合に比べてタンクローリー内の圧力変化の影響を受けず、充分加圧して、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを良好に充填できる。
また、ローリー用加圧蒸発器も比較的高位置に設置できるから、ローリー用加圧蒸発器から液化天然ガス充填用配管および昇圧用配管をタンクローリーに窒素ガスなどを流して置換するばあいでも、ローリー用加圧蒸発器内に残存した液化天然ガスの排出が容易であり、パージ作業の時間を短くできる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1に記載の液化天然ガス充填設備において、
貯槽に接続されて前記貯槽から供給される液化天然ガスを気化する気化器と、
前記貯槽から前記気化器に液化天然ガスを供給するために前記貯槽内を昇圧するタンク用加圧蒸発器とを備え、
ローリー用加圧蒸発器を前記タンク用加圧蒸発器で兼用構成する。
【0014】
(作用・効果)
請求項2に係る発明の液化天然ガス充填設備の構成によれば、ローリー用加圧蒸発器を、貯槽内の液化天然ガスを気化器に供給するために昇圧するタンク用加圧蒸発器で兼用するから、専用のローリー用加圧蒸発器が不要にできるとともに設置スペースを小さくできてイニシャルコストを低減できる。
【0015】
請求項3に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項2に記載の液化天然ガス充填設備において、
タンク用加圧蒸発器を温水加熱式で構成する。
【0016】
(作用・効果)
請求項3に係る発明の液化天然ガス充填設備の構成によれば、液化天然ガスを温水で加熱して蒸発気化させるから、外気によって加熱する場合に比べて、タンク用加圧蒸発器をコンパクトにできるとともに平面スペースを小さくできる。
しかも、寒冷地とか冬期などのように外気温が低い場合でも、外気温に関係なく所定の加熱により蒸発能力を確実に発揮させることができ、タンクローリー内を充分に加圧してタンクローリーから貯槽に液化天然ガスを良好に充填できる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明の液化天然ガス充填設備によれば、液化天然ガス充填用配管および昇圧用配管をタンクローリーに接続し、貯槽からの液化天然ガスを予備タンクに貯め、その予備タンクからローリー用加圧蒸発器に供給して液化天然ガスを蒸発気化し、気化した加圧用天然ガスをタンクローリーに供給してタンクローリー内を加圧し、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを充填することができる。
したがって、液化天然ガス充填用配管と昇圧用配管の2本の配管をタンクローリー側に接続するだけで液化天然ガスを充填でき、タンクローリーにローリー用加圧蒸発器を備えさせないものでありながら、接続作業および開閉弁の開閉作業の手間少なく際、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを充填できる。
しかも、液化天然ガスを予備タンクからローリー用加圧蒸発器に供給して蒸発気化するから、予備タンクの位置を比較的高位置に設置するとともに、それに伴ってローリー用加圧蒸発器も比較的高位置に設置できるなど、ローリー用加圧蒸発器を位置的制約少なく設置できるとともに、タンクローリーからの液化天然ガスを供給して蒸発気化する場合に比べてタンクローリー内の圧力変化の影響を受けず、充分加圧して、タンクローリーから貯槽に液化天然ガスを良好に充填できる。
また、ローリー用加圧蒸発器も比較的高位置に設置できるから、ローリー用加圧蒸発器から液化天然ガス充填用配管および昇圧用配管をタンクローリーに窒素ガスなどを流して置換するばあいでも、ローリー用加圧蒸発器内に残存した液化天然ガスの排出が容易であり、パージ作業の時間を短くできる。
【実施例1】
【0018】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例1を示す全体概略構成図であり、液化天然ガスを貯蔵する貯槽1の下方側に、第1の開閉弁2,2を介装した第1の液配管3を介して、外気によって加熱する空温式の気化器4,4が接続されるとともに、気化器4,4それぞれに第2の開閉弁5,5を介装した天然ガス供給管6を介して消費設備(図示せず)が接続されている。
【0019】
第1の液配管3の途中箇所に第2の液配管7を介して温水によって加熱する温水式のタンク用加圧蒸発器8が接続され、タンク用加圧蒸発器8と貯槽1の上部とが、第1の圧力調整器(設定圧力としては、例えば、0.70MPa)9を介装した第1のガス配管10を介して接続されている。
上記構成により、貯槽1内からの液化天然ガスをタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化し、その気化した天然ガスを貯槽1内の上部に供給して貯槽1内の圧力を上昇させ、貯槽1内の液化天然ガスを気化器4に供給し、気化器4で気化させ、その気化した天然ガスを消費設備に供給できるようになっている。
【0020】
貯槽1の下部に、タンクローリーTLからの液化天然ガスを供給する液化天然ガス充填用配管11が接続され、その液化天然ガス充填用配管11に第3の開閉弁12が介装されるとともに、貯槽1とは反対側の先端に第1のフランジ13が付設されている。
【0021】
貯槽1の下方側に、第3の液配管14を介して予備タンク15が接続され、その予備タンク15に、第4の開閉弁16を介装した第4の液配管17を介して、外気によって加熱する空温式のローリー用加圧蒸発器18が接続され、そのローリー用加圧蒸発器18に昇圧用配管としての第2のガス配管19が接続されるとともに、ローリー用加圧蒸発器18とは反対側の先端に第2のフランジ20が付設されている。第3の液配管14には、予備タンク15から貯槽1側への液化天然ガスの逆流を防止する弁機構としての閉止弁21が介装されている。
【0022】
第4の液配管17の第4の開閉弁16とローリー用加圧蒸発器18との間に、第5の開閉弁22を介装した窒素ガス配管23を介して窒素ボンベ24が接続されている。
液化天然ガス充填用配管11の第3の開閉弁12より上流側箇所に、第2の圧力調整器25(設定圧力としては、例えば、0.70MPa)と第6の開閉弁26とを介装した第1のボイルオフガス配管27が接続され、その第1のボイルオフガス配管27の第2の圧力調整器25と第6の開閉弁26との間の箇所に、第3の圧力調整器28(設定圧力としては、例えば、0.70MPa)を介装した第2のボイルオフガス配管29を介して、貯槽1の上部が接続されるとともに、配管30を介して天然ガス供給管6が接続されている。
【0023】
タンクローリーTLには、第1のローリー側開閉弁31を介装するとともに先端に第1のローリー側フランジ32を備えた第1のローリー側配管33と、第2のローリー側開閉弁34を介装するとともに先端に第2のローリー側フランジ35を備えた第2のローリー側配管36とが付設されている。
【0024】
上記構成により、通常の天然ガス供給時には、図1の(a)に示すように、両気化器4,4のいずれか一方の第1および第2の開閉弁2,5のみを開くとともに、第3、第4および第6の開閉弁12,16,26を閉じ、前述したように、貯槽1内からの液化天然ガスをタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化し、その気化した天然ガスを貯槽1内の上部に供給して貯槽1内の圧力を上昇させ、貯槽1内の液化天然ガスを気化器4に供給し、気化器4で気化させ、その気化した天然ガスを消費設備に供給する。図面では、開き状態の開閉弁を白抜きで示している。他の図においても同様である。
このとき、閉止弁21を開いておき、貯槽1内の液化天然ガスを予備タンク15内に供給して貯めておく。閉止弁21は、貯まった時点で閉じておけば良い。図では、タンクローリーTLを示しているが、通常の天然ガス供給時には無関係である。
【0025】
一方、タンクローリーTLから貯槽1に液化天然ガスを充填する時には、第1のフランジ13と第1のローリー側フランジ32とをボルト(図示せず)などで連結して液化天然ガス充填用配管11と第1のローリー側配管33とを接続するとともに、第2のフランジ20と第2のローリー側フランジ35とをボルト(図示せず)などで連結して第2のガス配管19と第2のローリー側配管36とを接続する。
【0026】
その後、図1の(b)に示すように、両気化器4,4のいずれか一方の第1および第2の開閉弁2,5のみを開くとともに、閉止弁21および第6の開閉弁26を閉じ、かつ、第3および第4の開閉弁12,16、ならびに、第1および第2のローリー側開閉弁31,34を開く。
【0027】
これにより、予備タンク15内の液化天然ガスをローリー用加圧蒸発器18に供給して蒸発気化させ、その気化した加圧用天然ガスをタンクローリーTLに供給し、タンクローリーTL内の圧力を所定圧力(例えば、0.7MPa程度)に上昇させ、タンクローリーTL内の液化天然ガスを貯槽1に充填する。この充填作業の間でも、天然ガスを消費設備に供給できる。
【0028】
充填終了後は、図示しないが、第3の開閉弁12を閉じるとともに、第5および第6の開閉弁22,26を開き、窒素ガスを窒素ボンベ24から、ローリー用加圧蒸発器18、第2のガス配管19、タンクローリーTL、液化天然ガス充填用配管11へと流すとともに、天然ガスを第1のボイルオフガス配管27および配管30を通じて流し、ローリー用加圧蒸発器18、第2のガス配管19、タンクローリーTLおよび液化天然ガス充填用配管11内の残存天然ガスを窒素ガスで置換する。そのパージ作業終了後に、タンクローリーTLとの接続を分離して一連の液化天然ガス充填作業を終了する。
【実施例2】
【0029】
図2は、本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例2を示す全体概略構成図であり、実施例1と異なるところは、タンク用加圧蒸発器8をローリー用加圧蒸発器に兼用構成した点にあり、次の通りである。
すなわち、第2の液配管7が無くされ、貯槽1の下方側に、第5の液配管41を介して予備タンク42が接続され、その予備タンク42に、第6の液配管43を介して、温水によって加熱する温水式のタンク用加圧蒸発器8(ローリー用加圧蒸発器に兼用)が接続されている。第5の液配管41には、予備タンク42から貯槽1側への液化天然ガスの逆流を防止する弁機構としての第7の開閉弁44が介装されている。
【0030】
タンク用加圧蒸発器8に接続された第1のガス配管10の第1の圧力調整器9よりも上流側箇所に、昇圧用配管としての第3のガス配管45が接続され、その第3のガス配管45に第8の開閉弁46が介装されるとともに、タンク用加圧蒸発器8とは反対側の先端に第3のフランジ47が付設されている。
実施例1における空温式の気化器4に代えて、温水によって加熱する1台の温水式の気化器48が設けられている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付すことにより、その説明は省略する。
【0031】
上記構成により、通常の天然ガス供給時には、図2の(a)に示すように、第7の開閉弁44を開くとともに、第3、第6および第8の開閉弁12,26,46を閉じ、貯槽1内からの液化天然ガスを予備タンク42を通じながらタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化し、その気化した天然ガスを貯槽1内の上部に供給して貯槽1内の圧力を上昇させ、貯槽1内の液化天然ガスを気化器48に供給し、気化器48で気化させ、その気化した天然ガスを消費設備に供給する。
このとき、貯槽1内の液化天然ガスは予備タンク42内に供給されて自ずと貯められている。図では、タンクローリーTLを示しているが、通常の天然ガス供給時には無関係である。
【0032】
一方、タンクローリーTLから貯槽1に液化天然ガスを充填する時には、第1のフランジ13と第1のローリー側フランジ32とをボルトで連結して液化天然ガス充填用配管11と第1のローリー側配管33とを接続するとともに、第3のフランジ47と第2のローリー側フランジ35とをボルトで連結して第3のガス配管45と第2のローリー側配管36とを接続する。
【0033】
その後、図2の(b)に示すように、第7の開閉弁44を閉じるとともに、第3および第8の開閉弁12,46ならびに、第1および第2のローリー側開閉弁31,34を開き、かつ、第6の開閉弁26を閉じ状態にしておく。
【0034】
これにより、予備タンク42内の液化天然ガスをタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化させ、その気化した加圧用天然ガスをタンクローリーTLに供給し、タンクローリーTL内の圧力を所定圧力(例えば、0.7MPa程度)に上昇させ、タンクローリーTL内の液化天然ガスを貯槽1に充填する。この充填作業の間でも、天然ガスを消費設備に供給できる。
【0035】
充填終了後は、図示しないが、第3および第8の開閉弁12,46を閉じるとともに、第5および第6の開閉弁22,26を開き、窒素ガスを第3のガス配管45の途中からタンクローリーTL、液化天然ガス充填用配管11と流すとともに、天然ガスを第1のボイルオフガス配管27および配管30を通じて流し、第3のガス配管45、タンクローリーTLおよび液化天然ガス充填用配管11内の残存天然ガスを窒素ガスで置換する。そのパージ作業終了後に、タンクローリーTLとの接続を分離して一連の液化天然ガス充填作業を終了する。
【実施例3】
【0036】
図3は、本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例3を示す全体概略構成図であり、実施例2と異なるところは、次の通りである。
すなわち、第1の液配管3が無くされ、貯槽1の下方側に、第5の液配管41を介して予備タンク51が接続され、その予備タンク51に、第7の液配管52を介して、温水式の気化器48が接続されている。予備タンク51の容量が、実施例2における予備タンク42よりも、タンクローリーTLから貯槽1に液化天然ガスを充填している間、消費設備に天然ガスを供給するに足る量だけ多く貯めることができるように大きなものに設定されている。
第7の液配管52の途中箇所に、第8の液配管53を介して温水式のタンク用加圧蒸発器8(ローリー用加圧蒸発器に兼用)が接続されている。他の構成は実施例2と同じであり、同一図番を付すことにより、その説明は省略する。
【0037】
上記構成により、通常の天然ガス供給時には、図3の(a)に示すように、第7の開閉弁44を開くとともに、第3、第6および第8の開閉弁12,26,46を閉じ、貯槽1内からの液化天然ガスを予備タンク51を通じながらタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化し、その気化した天然ガスを貯槽1内の上部に供給して貯槽1内の圧力を上昇させ、貯槽1内の液化天然ガスを予備タンク51を通じて気化器48に供給し、気化器48で気化させ、その気化した天然ガスを消費設備に供給する。
このとき、貯槽1内の液化天然ガスは予備タンク51内に供給されて自ずと貯められている。図では、タンクローリーTLを示しているが、通常の天然ガス供給時には無関係である。
【0038】
一方、タンクローリーTLから貯槽1に液化天然ガスを充填する時には、実施例2と同様に液化天然ガス充填用配管11と第1のローリー側配管33とを接続するとともに、第3のガス配管45と第2のローリー側配管36とを接続し、その後、図3の(b)に示すように、第7の開閉弁44を閉じるとともに、第3および第8の開閉弁12,46ならびに、第1および第2のローリー側開閉弁31,34を開き、かつ、第6の開閉弁26を閉じ状態にしておく。
【0039】
これにより、予備タンク51内の液化天然ガスをタンク用加圧蒸発器8に供給して蒸発気化させ、その気化した加圧用天然ガスをタンクローリーTLに供給し、タンクローリーTL内の圧力を所定圧力(例えば、0.7MPa程度)に上昇させ、タンクローリーTL内の液化天然ガスを貯槽1に充填する。この充填作業の間でも、天然ガスを予備タンク51から消費設備に供給できる。充填終了後は、実施例2と同様にして、第3のガス配管45、タンクローリーTLおよび液化天然ガス充填用配管11内の残存天然ガスを窒素ガスで置換する。そのパージ作業終了後に、タンクローリーTLとの接続を分離して一連の液化天然ガス充填作業を終了する。
【0040】
上記実施例3によれば、タンクローリーTLから貯槽1内に液化天然ガスを充填する、いわゆる払出しの最中、第7の開閉弁44を閉じて貯槽1との連通を絶った状態で、予備タンク51からの液化天然ガスにより消費設備に天然ガスを供給するから、この間の貯槽1の内圧を消費設備への天然ガスの供給圧(0.2MPa)よりも小さい圧力(例えば、0.05MPaなど)にできる。これにより、タンクローリーTLの内圧との圧力差を大きくでき、払出しの時間を短縮することができる。もしくは、タンクローリーTLの内圧を、必ずしも貯槽1の通常の天然ガス供給時における内圧(0.2MPa)以上にする必要性がなくなるため、タンクローリーTLの設計圧力を下げることができ、タンクローリーTL自体を軽量化できるとともに、その軽量化できた重量分だけ液化天然ガスの積載量を増加できる。
【0041】
次に、実施例1および2の予備タンク15,42の容量の選定の仕方について説明する。
1台の10トンのタンクローリーTLから液化天然ガスを充填する場合で、約0.5klである。貯槽1としては、50〜100klである。
また、2台の10トンのタンクローリーTLから液化天然ガスを充填する場合で、約0.8kl、3台の10トンのタンクローリーTLから液化天然ガスを充填する場合で、約1.1klである。
【0042】
上記予備タンク15,42の容量を5〜10kl程度(貯槽1の容量の10重量%程度)に構成し、貯槽1内の液化天然ガスの量が不足したときの緊急時用として利用できるようにしても良い。
【0043】
上記実施例1および実施例2では、1台のタンクローリーTLを接続する場合を示しているが、2台や3台などの複数台のタンクローリーTLから充填する場合には、第2のガス配管19または第3のガス配管45および液化天然ガス充填用配管11それぞれのタンクローリーTL側に、それぞれ開閉弁とフランジとを備えた複数の接続部が並列に分岐して備えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例1を示す全体概略構成図であり、(a)は通常の天然ガス供給時の状態を、(b)はタンクローリーから貯槽への液化天然ガス充填時の状態をそれぞれ示している。
【図2】本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例2を示す全体概略構成図であり、(a)は通常の天然ガス供給時の状態を、(b)はタンクローリーから貯槽への液化天然ガス充填時の状態をそれぞれ示している。
【図3】本発明に係る液化天然ガス充填設備の実施例3を示す全体概略構成図であり、(a)は通常の天然ガス供給時の状態を、(b)はタンクローリーから貯槽への液化天然ガス充填時の状態をそれぞれ示している。
【図4】(a)は従来例の液化天然ガス充填設備の全体概略構成図、(b)は別の従来例の液化天然ガス充填設備の全体概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
1…貯槽
4…気化器
8…タンク用加圧蒸発器(ローリー用加圧蒸発器兼用も含む)
11…液化天然ガス充填用配管
14…第3の液配管(液配管)
15…予備タンク
18…ローリー用加圧蒸発器
19…第2のガス配管(昇圧用配管)
21…閉止弁(弁機構)
41…第5の液配管(液配管)
42…予備タンク
44…第7の開閉弁(弁機構)
45…第3のガス配管(昇圧用配管)
TL…タンクローリー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクローリーから供給される液化天然ガスを貯蔵する貯槽と、前記貯槽に接続されるとともに前記タンクローリーに接続分離可能に接続されて前記タンクローリーから前記貯槽に液化天然ガスを供給する液化天然ガス充填用配管とを備えた液化天然ガス充填設備において、
前記貯槽に液配管を介して接続されて、前記貯槽から供給される液化天然ガスを、前記タンクローリー内を昇圧するに足る量だけ貯蔵する予備タンクと、
前記予備タンクに接続されて前記予備タンクから供給される液化天然ガスを蒸発気化するローリー用加圧蒸発器と、
前記ローリー用加圧蒸発器に接続されるとともに前記タンクローリーに接続分離可能に接続されて前記タンクローリーに加圧用天然ガスを供給する昇圧用配管と、
前記液配管に介装されて昇圧時の前記予備タンク側から前記貯槽側への液化天然ガスの逆流を防止する弁機構と、
を備えたことを特徴とする液化天然ガス充填設備。
【請求項2】
請求項1に記載の液化天然ガス充填設備において、
貯槽に接続されて前記貯槽から供給される液化天然ガスを気化する気化器と、
前記貯槽から前記気化器に液化天然ガスを供給するために前記貯槽内を昇圧するタンク用加圧蒸発器とを備え、
ローリー用加圧蒸発器を前記タンク用加圧蒸発器で兼用構成したものである液化天然ガス充填設備。
【請求項3】
請求項2に記載の液化天然ガス充填設備において、
タンク用加圧蒸発器が温水加熱式である液化天然ガス充填設備。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate