説明

液晶ポリエステル成形材料及びその成形体

【課題】安定した可塑化が可能で、高耐熱の液晶ポリエステル成形体を良好な品質で生産性良く与えうる成形材料を提供する。
【解決手段】液晶ポリエステルから構成されるペレットに、ポリアミドを混合して、成形材料とする。液晶ポリエステルとしては、流動開始温度が370℃以上であるものを用いる。ポリアミドの使用量は、ペレット100質量部に対して、0.005〜0.5質量部とする。ポリアミドとしては、式(A):−NH−(CH2n−CO−(nは、3〜11の整数を表す。)で表される繰返し単位を有するものが好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルを用いてなる成形材料及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性にも優れることから、電気・電子部品を製造するための成形材料として好ましく用いられている。液晶ポリエステルの成形は、射出成形により行うのが一般的であるが、その際、可塑化時間(射出ユニットにおける溶融体の計量に要する時間)が安定せず、冷却時間(金型ユニットにおける成形体の冷却に要する時間)内に可塑化が完了しないことがあり、成形体の生産性が低下すると共に、成形体の品質が悪化することがある。このような問題を解決するため、液晶ポリエステルに所謂滑剤を混合することが検討されており、例えば、特許文献1には、滑剤として高級脂肪酸エステルを用いることが提案されており、具体的には流動開始温度が323℃である液晶ポリエステルとガラス繊維とを含む組成物のペレットに高級脂肪酸エステルを混合することが開示されている。また、特許文献2には、滑剤として脂肪酸アミドを用いることが提案されており、具体的には流動開始温度が324℃である液晶ポリエステルとガラス繊維とを含む組成物のペレットに脂肪酸アミドを混合することが開示されている。また、特許文献3には、滑剤としてポリアミドを用いることが提案されており、具体的には流動開始温度が327℃である液晶ポリエステルとガラス繊維とを含む組成物のペレットにポリアミドを混合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−143347号公報
【特許文献2】特開2003−12908号公報
【特許文献3】特開2004−182748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高耐熱の液晶ポリエステル成形体を得るには、特許文献1〜3に開示の液晶ポリエステルよりも流動開始温度が高い液晶ポリエステルを用いる必要があるが、流動開始温度が高い液晶ポリエステルを成形する場合、成形温度を高くする必要があり、可塑化時間がより安定し難くなるという問題がある。そこで、本発明の目的は、流動開始温度が高い液晶ポリエステルを用いてなり、安定した可塑化が可能で、高耐熱の液晶ポリエステル成形体を良好な品質で生産性良く与えうる成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、流動開始温度が370℃以上である液晶ポリエステルから構成されるペレット100質量部に対して、ポリアミド0.005〜0.5質量部を混合してなる成形材料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の成形材料は、流動開始温度が高い液晶ポリエステルを含み、成形温度を高くする必要がありながら、安定した可塑化が可能であることから、これを成形することにより、高耐熱の液晶ポリエステル成形体を良好な品質で生産性良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0008】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0009】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0010】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0011】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0012】
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0013】
(4)−Ar4−Z−Ar5
【0014】
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0015】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0016】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。
【0017】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0018】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0019】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0020】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0021】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0022】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0023】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いので、好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
【0024】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(以下、「プレポリマー」ということがある。)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0025】
本発明で用いる液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、370℃以上であり、好ましくは370〜410℃、より好ましくは375〜400℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性に優れ、強度・剛性にも優れる成形体を与えるが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0026】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0027】
液晶ポリエステルは、これに充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上配合して、液晶ポリエステル組成物として用いてもよい。
【0028】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0029】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
【0030】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜20質量部である。
【0031】
液晶ポリエステルから構成されるペレットは、液晶ポリエステル及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0032】
本発明の成形材料は、前記ペレットにポリアミドを混合してなるものであり、これにより、流動開始温度が高い液晶ポリエステルを含み、成形温度を高くする必要がありながら、安定した可塑化が可能である。
【0033】
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,12等の脂肪族ポリアミド;ナイロン6T、ナイロン9T等の半芳香族ポリアミド;及びポリp−フェニレンテレフタルアミド等の全芳香族ポリアミドが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも脂肪族ポリアミドが好ましく用いられ、また、前記ナイロン6、ナイロン11及びナイロン12の如き下記式(A)で表される繰返し単位を有するポリアミドがより好ましく用いられる。
【0034】
(A)−NH−(CH2n−CO−
【0035】
(nは、3〜11の整数を表す。)
【0036】
ポリアミドとしては、粒子状のものを用いることが好ましく、その平均粒径は、通常1000μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0037】
ポリアミドの使用量は、前記ペレット100質量部に対して、0.005〜0.5質量部、好ましくは0.005〜0.3質量部、より好ましくは0.01〜0.1質量部である。ポリアミドの使用量があまり少ないと、可塑化時間の安定化効果が不十分になり、あまり多いと、成形時にポリアミドの分解に起因するガスが発生し易くなり、成形体にブリスター(表面膨れ)に発生し易くなったり、成形品からガスが発生し易くなったりする。
【0038】
前記ペレットとポリアミドとの混合は、前記ペレット中の流動開始温度より低い温度で行うことが好ましく、室温で行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。また、混合機の例としては、ヘンシェルミキサー及びタンブラーが挙げられる。
【0039】
こうして得られる本発明の成形材料を成形することにより、高耐熱の液晶ポリエステル成形体を良好な品質で生産性良く得ることができる。成形方法としては、射出成形法が一般的であるが、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法も採用できる。また、射出成形法として、射出圧縮成形法も採用できる。
【0040】
こうして得られる成形体である製品・部品の例としては、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。
【0041】
また、フィルム状乃至シート状の成形体やその加工品として、表示装置用部品、電気絶縁用フィルム、フレキシブル回路基板用フィルム、包装用フィルム及び記録媒体用フィルムも挙げられる。
【0042】
また、押出成形による樹脂部品や金属部品の被覆材、例えば、配管被覆材や電線被覆材も挙げられる。さらに、連続繊維、短繊維、パルプ等の繊維状成形体やその加工品として、衣料、耐熱断熱材、FRP用補強材、ゴム補強材、ロープ、ケーブル及び不織布も挙げられる。
【実施例】
【0043】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0044】
〔可塑化時間の安定性の評価〕
成形材料を、射出成形機(日精樹脂工業(株)製「PS40E1ASE」)を用いて、シリンダー温度400℃、金型温度130℃、射出速度80%で、DTUL試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.4mm)に成形し、連続80ショットの計量時間を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。
【0045】
〔耐ブリスター性の評価〕
成形材料を、射出成形機(日精樹脂工業(株)製「PS40E1ASE」)を用いて、シリンダー温度400℃、金型温度130℃、射出速度80%で、JIS K7113(1/2)号ダンベル試験片(厚さ1.2mm)に成形した。この試験片20本を、245℃に加熱したハンダ浴に60秒間浸漬した後、試験片表面のブリスターの有無を観察し、ブリスター有の本数を全本数(20本)で割った値(%)をブリスター発生率とした。
【0046】
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸830.7g(5.0モル)、テレフタル酸394.6g(2.375モル)、イソフタル酸20.8g(0.125モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル465.5g(2.5モル)及び無水酢酸1153g(11.0モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から150℃まで15分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で保持し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から320℃まで5時間かけて昇温し、320℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、385℃であった。
【0047】
実施例1〜2、比較例1〜4
液晶ポリエステル100質量部に対し、マイカ((株)ヤマグチマイカ製「AB−25S」)18.8質量部及び中空状充填材(住友スリーエム(株)製「グラスバブルズS60HS」)6.3質量部を混合した後、二軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」)を用いて、シリンダー温度390℃で造粒し、ペレットを得た。得られたペレット100質量部に対し、表1に示す量のポリアミド(ダイセルデグザ(株)製「VESTOSINT2070」)又は脂肪酸アミド(ライオンアクゾ(株)製「アーモスリップE」)を、タンブラーミキサーを用いて室温で混合し、成形材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動開始温度が370℃以上である液晶ポリエステルから構成されるペレット100質量部に対して、ポリアミド0.005〜0.5質量部を混合してなる成形材料。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有する液晶ポリエステルである請求項1に記載の成形材料。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有する液晶ポリエステルである請求項2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記ポリアミドが、下記式(A)で表される繰返し単位を有するポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載の成形材料。
(A)−NH−(CH2n−CO−
(nは、3〜11の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の成形材料を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2012−136625(P2012−136625A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289602(P2010−289602)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】