説明

液晶性ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるコネクター

【課題】流動性に優れ、鉛フリーはんだ対応の高温リフロー後の成形品のソリを低減することができる液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、アスペクト比が100以上であるマイカを5〜100重量部含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性樹脂は、優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気・電子部品などに用途が拡大されつつある。特に、良流動性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品に好適に用いられている。
【0003】
これらの成形品は、近年の機器の小型化や軽量化に伴い、薄肉化や形状の複雑化が進みつつあることから、ソリの小さい成形品を得ることのできる樹脂組成物が提案されている。例えば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と、薄片状無機充填材および/または非晶性重合体を含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、液晶性ポリマー100重量部に、平均粒子径が0.5〜100μmであり、D/W≦5、3≦W/H≦200(Dは板状充填材の最大粒子径であり、その方向をx方向とし、Wはx方向と直角方向(y方向)の粒子径、Hはxy面に垂直なz方向の粒子厚)である板状充填材を5〜100重量部配合してなる液晶性ポリマー組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。一方で、その他にフィラーを含有する樹脂組成物を用いた成形品として、熱可塑性樹脂とフィラーの合計量100重量部に対し、カルボン酸アマイド系物質を0.1〜10重量部含有してなる錠剤を溶融成形した成形品(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0004】
また、近年、環境面の配慮から鉛フリーはんだ対応の製品が数多く見られるようになった。鉛フリーはんだは、はんだ付けに必要な温度が従来のはんだよりも非常に高く、樹脂組成物から得られる成形品にも、高温でのリフロー処理が行われる。このため、従来公知の樹脂組成物から得られる成形品は、リフロー処理によりソリが生じる課題があった。高温リフローによる成形品のソリを低減する手段としては、液晶性ポリマー100重量部に対して、平均粒子径が5〜100μmであり、縦横比が3.0〜5.0であるタルクを1〜200重量部含む液晶ポリマー組成物(例えば、特許文献4参照)や、溶融温度が300℃以上である合成樹脂に、水分散pHが5.5〜8.0、溶出アルカリ量がNa:30ppm以下、K:40ppm以下、最大径が50μm以下、厚さが1.0μm以下、アスペクト比が20以上である板状無機充填材を含有させた樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、成形品の形状がより複雑化する近年、高温リフロー後のソリをより低減することが求められており、上記手段によってもなお、鉛フリーはんだ対応の成形品としては低ソリ性が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−157638号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2001−106923号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2004−1487号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2008−138181号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】WO2001−040380号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決し、流動性に優れ、鉛フリーはんだ対応の高温リフロー後の成形品のソリを低減することができる液晶性ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるコネクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
1.液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、アスペクト比が100以上であるマイカを5〜100重量部含有することを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
2.前記マイカのアスペクト比が100以上200以下であることを特徴とする1に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
3.前記マイカの数平均厚みが0.05〜0.35μmであることを特徴とする1または2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
4.さらに、数平均繊維長が20〜70μmである無機繊維状充填材を含有する1〜3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
5.1〜4のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られるコネクター。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、アスペクト比が100以上であるマイカを5〜100重量部含有するようにしたので流動性に優れる。本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物によれば、高温リフロー後においてもソリの少ない優れた成形品を得ることができる。本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物により得られる成形品は、形状が複雑で薄肉の電気・電子部品や機械部品、特に鉛フリーはんだに使用されるコネクターとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は実施例において作製したコネクター成形品の斜視図、(b)はソリ量の測定部位を示す概念図である。
【図2】(a)は実施例において作製したコネクター成形品、並びにスプルーおよびランナーの概要を示す正面図であり、(b)は(a)に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、特定のマイカを5〜100重量部含有する。
【0012】
本発明において用いる液晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、下記式(I)で表される構造単位、下記一般式(II)で表される構造単位および下記一般式(IV)で表される構造単位を有する液晶性ポリエステル樹脂、下記式(I)で表される構造単位、下記一般式(II)で表される構造単位、下記式(III)で表される構造単位および下記一般式(IV)で表される構造単位を有する液晶性ポリエステル樹脂、下記式(I)で表される構造単位、下記式(III)で表される構造単位および下記一般式(IV)で表される構造単位を有する液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。液晶性ポリエステル樹脂としては、これらのなかから2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0013】
【化1】

【0014】
ただし、上記一般式(II)中のR1
【化2】

から選ばれる1種以上の基を示し、一般式(IV)中のR2
【化3】

から選ばれる1種以上の基を示す。ただし、上記式中Xは水素原子または塩素原子を示す。
【0015】
これらのうちR1としては、
【化4】

が好ましく、R2としては、
【化5】

が好ましい。
【0016】
以下、式(I)で表される構造単位を構造単位(I)、一般式(II)で表される構造単位を構造単位(II)、式(III)で表される構造単位を構造単位(III)、一般式(IV)で表される構造単位を構造単位(IV)と称する。
【0017】
上記構造単位(I)は、p−ヒドロキシ安息香酸から生成する構造単位を示す。構造単位(II)は、好ましくは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどの芳香族ジオールから生成する構造単位を示す。構造単位(III)は、エチレングリコールから生成する構造単位を示す。構造単位(IV)は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成する構造単位を示す。
【0018】
本発明においては、上記構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(IV)を有する共重合体、または、上記構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)および構造単位(IV)を有する共重合体が好ましい。かかる液晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性をより向上させ、射出成形時に発生する糸引きを抑制し、成形品のソリをより低減することができる。上記各構造単位の含有量は任意であるが、次の範囲であることが好ましい。
【0019】
すなわち、上記構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(IV)を有する共重合体の場合、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、構造単位(I)は、構造単位(I)および構造単位(II)の合計100モル%中、40〜90モル%が好ましく、60〜88モル%がより好ましい。構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルである。
【0020】
上記構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)および構造単位(IV)を有する共重合体の場合、液晶性ポリエステル樹脂組成物の耐熱性、難燃性、機械的特性および射出成形時の糸引き抑制の点から、上記構造単位(I)および構造単位(II)の合計は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計100モル%に対して60〜95モル%が好ましく、75〜93モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計100モル%に対して40〜5モル%が好ましく、25〜7モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の構造単位(II)に対するモル比[(I)/(II)]は、耐熱性と流動性のバランスの点から、好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルである。
【0021】
なお、本発明において「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしてはジオキシ単位とジカルボニル単位が等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0022】
本発明において、液晶性ポリエステル樹脂には、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、例えば、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオール、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0023】
上記液晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。例えば、上記液晶性ポリエステル樹脂の製造方法として、次の方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、および必要によりポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルから、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、無水酢酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、および必要によりポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルから、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0024】
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、必要に応じて、例えば、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加してもよい。
【0025】
液晶性ポリエステル樹脂の製造に際し、熱分解を抑制する酸化防止剤または熱安定剤を用いてもよい。また、酸化防止剤および熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類、ホスフィナート類およびこれらの置換体などが用いられる。これらの中でも、ホスファイト類およびホスフィナート類が好ましく、亜リン酸、次亜リン酸の金属塩がより好ましい。
【0026】
亜リン酸、次亜リン酸の金属塩の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属(I族の金属)、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属(II族の金属)が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
【0027】
これらの酸化防止剤および熱安定剤の中でも、さらに具体的には、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウムなどが好ましく、より好ましくは、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムなどのナトリウム金属塩が使用される。
【0028】
本発明に用いられる液晶性ポリエステル樹脂は、0.1g/dlの濃度のペンタフルオロフェノール溶液中、60℃で測定した対数粘度が0.3dl/g以上であることが好ましく、0.5〜3.0dl/gがより好ましい。
【0029】
また、本発明における液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度は、1〜2,000Pa・sが好ましく、特に2〜1,000Pa・sがより好ましい。
【0030】
ここで、液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度とは、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値を指す。また、融点(Tm)とは、示差熱量測定において、重合を完了した液晶性ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を指す。
【0031】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、アスペクト比が100以上であるマイカを液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して5〜100重量部含有する。マイカのアスペクト比が100未満であると、液晶性ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品のソリ、特に高温リフロー後のソリが増大し、射出成形時に糸引きが発生しやすくなる。高温リフロー後のソリをより低減し、射出成形時に発生する糸引きを抑制する観点から、マイカのアスペクト比は110以上が好ましく、120以上がより好ましい。マイカのアスペクト比の上限は、溶融加工時のマイカの破損を抑制する観点から400以下にするとよい。さらに、射出成形時に発生する糸引きを抑制する観点から、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、160以下がさらに好ましい。射出成形時に発生する糸引きを抑制することにより、生産性の低下を抑制できることに加え、糸引きに起因する金型の破損も抑制することができる。
【0032】
ここで、マイカのアスペクト比は、マイカの体積平均粒子径と数平均厚みを求め、体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)により算出する。体積平均粒子径は、マイカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)により求める。また、数平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製“JSM−6360LV”)により2000倍の倍率で観察したマイカの画像から無作為に選んだ10個の厚みを測定し、その数平均値を求める。
【0033】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、アスペクト比が100以上であるマイカの含有量は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して5〜100重量部である。マイカの含有量が5重量部未満であると、成形品のソリが増大し、射出成形時に糸引きが発生する。11重量部以上が好ましく、16重量部以上がより好ましい。一方、マイカの含有量が100重量部より多いと、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性が低下する。また、成形品のブリスタ性が増大する。75重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
【0034】
また、本発明に用いられるマイカの数平均厚みは、0.05μm以上が好ましく、高温リフロー前後の成形品のソリをより低減することができる。0.08μm以上がより好ましく、0.10μm以上がより好ましい。一方、マイカの数平均厚みは、0.35μm以下が好ましく、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性を向上させ、高温リフロー後の成形品のソリをより低減することができる。0.33μm以下がより好ましく、0.30μm以下がより好ましい。
【0035】
本発明に用いられるマイカの体積平均粒子径は、5μm以上が好ましい。マイカのアスペクト比を容易に100以上にすることができ、高温リフロー前後の成形品のソリをより低減することができる。一方、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、マイカの体積平均粒子径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0036】
本発明において使用されるアスペクト比が100以上であるマイカは、天然に産出される白雲母、黒雲母、金雲母、人工的に製造される合成マイカのいずれでもよい。これらを2種以上含んでもよい。
【0037】
マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、石臼による湿式摩砕等の湿式粉砕や、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕などが挙げられる。
【0038】
また、本発明においては、マイカと液晶性ポリエステル樹脂との濡れ性を向上させる目的でマイカの表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。また、不純物の除去、マイカの硬質化を目的に熱処理加工をしたマイカを用いてもよい。
【0039】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、無機繊維状充填材を含有してもよい。無機繊維状充填材を含有することにより、液晶性ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品のブリスタ性を低減し、射出成形時の糸引きをより抑制することができる。
【0040】
本発明に用いられる無機繊維状充填材の数平均繊維長は、20μm以上が好ましく、液晶性ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品のブリスタ性をより低減することができる。一方、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、無機繊維状充填材の数平均繊維長は、70μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0041】
ここで、無機繊維状充填材の数平均繊維長は、顕微鏡用スライドガラス上に無機繊維状充填材を各繊維が積み重ならないように散布し、800倍の倍率で顕微鏡写真を撮影し、顕微鏡写真から無作為に選んだ500本以上の繊維長を測定し、その数平均値を求める。
【0042】
無機繊維状充填材の含有量は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して100重量部以下が好ましく、より好ましくは50重量部以下であり、さらに好ましくは35重量部以下である。無機繊維状充填材の含有量が100重量部以下であれば、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性を高く保つことができる。
【0043】
本発明において用いられる無機繊維状充填材としては、例えば、ミルドガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、アスベスト繊維などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。特にこの中でもミルドガラス繊維を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、有機臭素化合物を少量含有してもよい。有機臭素化合物の好ましい例としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシポリマー、臭素化ポリフェニレンエーテルや、臭素原子を有する有機リン化合物などを挙げることができる。
【0045】
また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、無機繊維状充填材以外の充填材を含有してもよく、機械的特性、耐熱性をいっそう改善することができる。無機繊維状充填材以外の充填材としては、例えば、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラステナイト、酸化チタン、二硫化モリブデン等の粉状、粒状あるいは板状の無機フィラーを挙げることができる。
【0046】
また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤および熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(例えば、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えば、ニトロシンなど)および顔料(例えば、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない程度の範囲で含有して、所定の特性を付与することができる。
【0047】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、例えば、上記液晶性ポリエステル樹脂、マイカおよび必要により他の成分を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練する方法としては、例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。マイカや無機繊維状充填材を均質に分散性良く混練するため、押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましく、中間添加口を有する二軸押出機を用いることがより好ましい。
【0048】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、公知の成形法により各種成形品に成形されるが、その優れた薄肉流動性を活かして、射出成形することが好ましい。
【0049】
かくして得られる成形品は、高温リフロー後のソリが少ないことから、鉛フリーはんだに使用される成形品に好適に用いることができる。鉛フリーはんだに使用される成形品の具体例としては、例えば、基板対電線、基板対基板、基板対FPCもしくは基板対FFCのプリント基板用コネクターやカード用コネクター、丸型コネクター、角型コネクター、車載コネクター、同軸コネクター、高周波用コネクターなどの電気コネクター、光コネクター及び複合コネクターなどのコネクター成形品が挙げられる。その中でも、高さが0.3〜1.2mmであり、端子間ピッチが0.1〜0.4mmであり、20芯以上のピン数を持つ形状のプリント基板用コネクターや、高さが0.8〜2.0mmであり、幅が10.0〜20.0mmであり、奥行きが10.0〜30.0mmである形状のカード用コネクターに好ましく用いられる。
【0050】
その他、コネクター以外にも、表示装置のワク・ハウジング、コイル封止部品、気体・液体・固体等を封入した容器、リレー部品、金属インサート部品、リモコン内部接合部品、電装部品のモジュール部品、エンジンルーム内のモジュール部品、インテークマニホールド、アンダーフード部品、ラジエター部品、インパネなどに用いるコックピットモジュール部品、あるいは筐体、その他情報通信分野において電磁波などの遮蔽性を必要とする設置アンテナなどの部品、あるいは建築部材で高寸法精度を必要とする用途に用いられる成形体などが挙げられる。また、マイカを含有することで表面外観に優れることから、カメラモジュール部品、光ピックアップレンズホルダ、オートフォーカスカメラレンズモジュールなどの摺動性部品に使用できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0052】
実施例および比較例において使用した材料を略号と共に説明する。
(A)液晶性ポリエステル樹脂
[参考例1] 液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の合成
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.30モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g(1.89モル)、ハイドロキノン89g(0.81モル)、テレフタル酸292g(1.76モル)、イソフタル酸157g(0.95モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を得た。この液晶性ポリエステル樹脂は、p−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位、1,4−ジオキシベンゼン単位、テレフタレート単位およびイソフタレート単位からなり、p−オキシベンゾエート単位をp−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位を4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、テレフタレート単位をテレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して65モル%有する。また、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計はp−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位、1,4−ジオキシベンゼン単位、テレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して23モル%であり、テレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計はp−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位、1,4−ジオキシベンゼン単位、テレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して23モル%である。液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の融点(Tm)は314℃で、液晶開始温度は295℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は20Pa・sであった。
【0053】
なお、融点(Tm)は示差熱量測定において、液晶性ポリエステル樹脂を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)とした。
【0054】
[参考例2] 液晶性ポリエステル樹脂(A−2)の合成
p−ヒドロキシ安息香酸994g(7.20モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル184g(0.99モル)、テレフタル酸165g(0.99モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート156g(0.81モル)を撹拌翼、留出管を備えた重合容器に計量した。重合容器上部に設けられ、重合容器の上部と配管で結ばれた撹拌設備を有する、重合容器とは別の容器(重合容器の容積の1/10)に、次亜リン酸ナトリウムを0.3g/mLの濃度で溶解した酢酸溶液を調製し、重合容器に添加される次亜リン酸ナトリウムが2.6g(液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して0.2重量部)になるように計量して重合容器に添加した。
【0055】
さらに無水酢酸1031重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を重合容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、335℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を335℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱撹拌した。その後、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0056】
この液晶性ポリエステル樹脂は、p−オキシベンゾエート単位80モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位11モル%、エチレンジオキシ単位9モル%、テレフタレート単位20モル%を有し、融点(Tm)は330℃、液晶開始温度は298℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度340℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は13Pa・sであった。
【0057】
[参考例3] 液晶性ポリエステル樹脂(A−3)の合成
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸900g(5.00モル)と6−アセトキシ−ナフトエ酸288g(1.25モル)を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。得られた液晶性ポリエステル樹脂(A−3)は、p−アセトキシ安息香酸から生成した構造単位62モル当量および6−アセトキシ−ナフトエ酸から生成した構造単位16モル当量からなり、融点(Tm)は320℃であった。
【0058】
(B)マイカ
(B−1)マイカ、体積平均粒子径:18μm、数平均厚み:0.12μm、アスペクト比:150
(B−2)マイカ、体積平均粒子径:24μm、数平均厚み:0.20μm、アスペクト比:120
(B−3)(B−1)を体積平均粒子径が36μmになるように篩い分けしたマイカ、体積平均粒子径:36μm、数平均厚み:0.12μm、アスペクト比:300
(B−4)マイカ、体積平均粒子径:19μm、数平均厚み:0.3μm、アスペクト比:60
(B−5)マイカ、体積平均粒子径:30μm、数平均厚み:1.0μm、アスペクト比:30
上記体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置HORIBA社製“LA−300”により求めた。数平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製“JSM−6360LV”)を用いて2000倍の倍率で観察した。画像から無作為に10個を選び、厚みを測定し、その数平均値を求めた。アスペクト比は体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)より算出した。
【0059】
(C)無機繊維状充填材
(C−1)ミルドガラス繊維、数平均繊維長40μm、数平均繊維径9μm
(C−2)ガラス繊維、数平均繊維長3.0mm、数平均繊維径10.5μm
上記数平均繊維長は、顕微鏡用スライドガラス上に無機繊維状充填材を各繊維が積み重ならないように散布し、800倍の倍率で顕微鏡写真を撮影し、顕微鏡写真から無作為に選んだ500本以上の繊維長を測定し、その数平均値を求めた。数平均繊維径は、JIS“R−3420”(1978年4月1日制定、最新改正日2006年9月1日)に則って測定を行った。
【0060】
その他
ポリエーテルエーテルケトン樹脂:ビクトレックス(株)社製“PEEK450G、Tm:334℃”
【0061】
また、液晶性ポリエステル樹脂組成物の各特性の評価方法は以下の通りである。
【0062】
(1)ソリ量
射出成形機SE30D(住友重機械工業(株)社製)を用いて、シリンダー温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、図1(a)に示す端子間ピッチ(Lp)が0.3mm、製品の最小肉厚部(Lt)(隔壁部3)が0.1mm、外形寸法が幅3mm×高さ1mm×長さ23mm、平均肉厚が0.2mmのコネクター型の長尺成形品(コネクター成形品)の連続成形を行った。図1(a)は上記コネクター成形品1の斜視図である。端子間ピッチ0.3mmで、0.1mmの最小肉厚部である隔壁部3を有する箱形のコネクター成形品1の片側の短尺面2に設置したピンゲートG1(ゲート径0.3mm)から樹脂を充填し、コネクター成形品を得た。得られたコネクター成形品を用い、リフローシミュレーターを用いてソリ量を測定した。
【0063】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂についても同様に射出成形機SE30Dを用いて、シリンダー温度を360℃に設定し、金型温度90℃の条件で、コネクター成形品の射出成形を行ったが、ピーク圧力が大きくなりコネクター成形品を得ることができなかった。
【0064】
(リフロー前ソリ量)
成形直後のコネクター成形品のソリ量を測定した。コネクター成形品の長尺方向の両端を結ぶ面を基準面とし、基準面からの距離の最大値を測定した。図1(b)は上記コネクター成形品においてソリ量の測定部位を示す概念図である。長尺方向の両端を結ぶ線をA、短尺方向の両端を結ぶ線をBとし、A−B面を基準面aとして、最大変形面bとの距離をソリ量とした。ソリ量が0.03mm以下の場合には「優れる」(◎)、0.03mmを超えて0.05mm以下の場合には「良好」(○)、0.05mmよりも大きい場合には「劣る」(×)と評価した。
【0065】
(リフロー後ソリ量)
成形直後のコネクター成形品を260℃に加熱されたオーブン中に10分間放置し、ついで室温まで冷却した後のコネクター成形品のソリ量を、前記方法と同様に測定した。ソリ量が0.08mm以下の場合には「優れる」(◎)、0.08mmを超えて0.15mm以下の場合には「良好」(○)、0.15mmよりも大きい場合には「劣る」(×)と評価した。
【0066】
(2)流動性
射出成形機SE30D(住友重機械工業(株)社製)を用いて、シリンダー温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、図1(a)に示すコネクター成形品を得た。この成形品を成形したときのピーク圧力を測定した。ピーク圧力が80MPaより小さい場合には「流動性が優れている(◎)」、80MPa以上100MPa以下の場合には「流動性が良好である(○)」、100MPaより大きい場合には「流動性が劣っている(×)」と評価した。
【0067】
(3)ブリスタ性
コネクター成形品を以下に示す条件で吸湿処理した後、リフローテストを実施した。
・吸湿処理:85℃、85%RHに設定した恒温恒湿槽プラチナスKシリーズPR−1ST(エスペック社製)にコネクター成形品を入れ、162時間処理した。
・リフローテスト:250℃に加熱されたオーブン中に上記吸湿処理後のコネクター成形品200個を10分間放置した後、表面のフクレの有無を観察した。表面に一個でもフクレが存在した場合にはフクレ発生とし、(フクレ発生率)=(フクレが一個でも発生した試験片)/(フクレがなかった試験片)[%]で定義されるフクレ発生率を算出した。フクレ発生率が1%以下の場合には「優れる」(◎)、1%を超えて5%以下の場合には「良好」(○)、5%より大きい場合には「劣る」(×)と評価した。
【0068】
(4)糸引き性
射出成形機SE30D(住友重機械工業(株)社製)を用いて、シリンダー温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃、射出速度300mm/s、冷却時間4秒の条件で射出成形を行い、図1に示すコネクター成形品を得た。連続で200ショットの射出成形を行い、200ショット目の糸引き長さ(e[mm])を測定した。図2は、実施例において作製した図1に示すコネクター成形品Cと、スプルーDおよびランナーFを示す概念図であり、(a)が正面図、(b)が側面図である。射出成形機のノズルから射出された液晶性ポリエステル樹脂組成物は、スプルーD、ランナーFを通してコネクター成形品Cの金型キャビティに導かれる。スプルーDは射出成形機のノズルと接しており、金型が開く際に溶融した液晶性ポリエステル樹脂組成物がスプルーDに引っ張られることにより、スプルーDの先に細い樹脂組成物の糸が付着する糸引き部分Eが発生する。図2(b)に示す糸引き部分Eの長さ(糸引き長さe[mm])を測定し、糸引き性を評価した。糸引き長さeが長いものは糸引きし易いと言える。また、200ショット未満で糸引きの糸が金型中に残ったものは×とした。
【0069】
[実施例1〜9]
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂を元込め部から添加し、(B)マイカ、(C)無機繊維状充填材を中間添加口から投入した。その後、シリンダー温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、スクリュー回転数250r.p.mの条件で溶融混練したのち、ストランドカッターにより液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
【0070】
得られたペレットを熱風乾燥後、前記の方法によりソリ量、流動性、ブリスタ性および糸引き性を評価した。表1にその結果を示した。
【0071】
[比較例1〜4]
組成を表1に示すとおり変更した以外は実施例1〜9と同様にして、ソリ量、流動性、ブリスタ性および糸引き性を評価した。表1にその結果を示した。
【0072】
[比較例5]
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示すポリエーテルエーテルケトン樹脂を元込め部から添加し、(B)マイカを中間添加口から投入した。その後、シリンダー温度を360℃に設定し、スクリュー回転数250r.p.mの条件で溶融混練したのち、ストランドカッターによりポリエーテルエーテルケトン樹脂組成物のペレットを得た。
【0073】
得られたペレットを熱風乾燥後、射出成形機SE30D(住友重機械工業(株)社製)を用いて、シリンダー温度を360℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行ったが、ピーク圧力が大きくなりコネクター成形品を得ることができなかった。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、比較例1〜5に示した液晶性ポリエステル樹脂組成物およびポリエーテルエーテルケトン樹脂組成物に比較して、流動性に優れ、成形品のソリを低減できることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
1 コネクター成形品
2 短尺面
3 隔壁部
G1 ピンゲート
a 基準面(A−B面)
b 最大変形面
Lp 端子間ピッチ
Lt 最小肉厚部
A 長尺方向の両端を結ぶ線
B 短尺方向の両端を結ぶ線
C コネクター成形品
D スプルー
E 糸引き部分
F ランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、アスペクト比が100以上であるマイカを5〜100重量部含有することを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記マイカのアスペクト比が100以上200以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記マイカの数平均厚みが0.05〜0.35μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、数平均繊維長が20〜70μmである無機繊維状充填材を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られるコネクター。

【図1】
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【図2】
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