説明

液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、調光材料および液晶組成物の調製方法

【課題】短いらせんピッチ長でもホメオトロピック配向を維持でき且つ高いオーダーパラメーター値を示す液晶組成物及びその調製方法を提供し、表示コントラスト比の高い液晶素子、反射型表示材料及び調光材料を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料及び調光材料は、剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される棒状液晶性基が結合したカイラル剤を含む。式中、*1は光学活性化合物との結合位置を示し、D1及びD2はアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L1及びL2は2価の連結基を表し、T1はアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3、fは0〜2、mは1〜3、kは1〜2、gは0〜1、iは0〜20、tは1〜4の整数を表す。D1とD2で表される基の総数は2〜5の整数である。(g+i)×tは1〜40の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、調光材料および液晶組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶に溶解させた二色性色素の配向状態の変化によって表示をおこなうゲストホスト方式の表示素子は、明るい表示が可能であって、反射型の表示素子のみならず調光用途に適した方式としても期待されている。
このゲストホスト方式において、二色性色素は一軸の光吸収軸を有し、光吸収軸方向に振動する光のみを吸収する。そこで、電場による液晶の動きに合わせて二色性色素の配向を変化させれば、光吸収軸の向きを制御でき、セルの吸光状態を変化させることができる。更に、ゲスト−ホスト方式液晶素子の表示コントラストは、液晶層を構成する液晶組成物に含まれる二色性色素のオーダーパラメーター、ホスト液晶、又はセル構造によって左右されることが知られている。
【0003】
一般に、ネマチック液晶と二色性色素を組み合わせた液晶組成物を、配向処理した基板間に存在させると、ネマチック液晶が一軸配向状態を呈するため、二色性色素は一方の軸の直線偏光しか吸収できない。したがって、半分の光が透過してしまい、表示コントラスト比を高くすることができない。
また、配向処理をしていない基板間に、ネマチック液晶と二色性色素を組み合わせた液晶組成物を注入した場合にも、ネマチック液晶はマルチドメイン状態を呈し、二色性色素は一方の軸の直線偏光しか吸収できない。したがって、半分の光が透過してしまい、表示コントラスト比を高くすることができない。
そこで、二色性色素が全方位の光を吸収できるよう、カイラル剤との組み合わせによるカイラルネマチック相を利用した相転移型ゲスト−ホスト方式が提案されている(非特許文献1参照)。この方式では、偏光板を使用しない明るい表示が可能となる。
【0004】
しかしながら、相転移型ゲスト−ホスト方式では、入射した光が、らせん構造(カイラルネマチック相)に追随して旋回するため(ウェーブガイド)、二色性色素による光吸収量が低下するという問題がある。光吸収量を高めるには、ホスト液晶の屈折率異方性Δnを可能な限り小さくするか、入射光が追随できない程度にらせんピッチ長を短くする必要がある。
【0005】
なお、電圧無印加時に非吸収(無色)となるモード(ノーマリーホワイト)では、液晶はホメオトロピック配向であることが好ましい。しかし、ホメオトロピック配向において光吸収量を高めることを目的に、上述のようにらせんピッチ長を短くすると、液晶のねじれ力が配向膜のアンカリング力に打ち勝ち、フォーカルコニック状態(らせん軸が基板に平行)となってしまう結果、非吸収状態の透過率が低下するといった問題があった。
【0006】
ホメオトロピック配向を維持できるらせんピッチ長は、ホスト液晶の弾性定数比K33/K22に相関し、この値が大きいホスト液晶ほど、該らせんピッチ長を短くすることができることが報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。しかし、この報告は、理論計算によるものであり、実現するための具体的方策については記載されていない。
更に、弾性定数比K33/K22は、ホスト液晶そのものを変えるしかないとされていた。そのため、弾性定数比K33/K22の他に、ゲストホスト方式に必要な諸物性(屈折率異方性Δn、液晶温度範囲、オーダーパラメーター、粘度)のすべてを満足させることは困難であり、新たな方法が求められていた。
【非特許文献1】D. L. White; G. N. Taylor; J. Appl. Phys., Vol.45, 4718(1974)
【非特許文献2】Physical Review A, Vol.44, No.12, 8198-8210 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向を維持でき、且つ高いオーダーパラメーター値を示す液晶組成物およびその調製方法を提供することである。
また、本発明の他の課題は、表示コントラストの高い液晶素子、反射型表示材料、調光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、棒状液晶性基を有する剛直な光学活性化合物をカイラル剤として用いると、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向が維持できることが明らかとなった。
なお、ホメオトロピック配向を維持できるらせんピッチ長は、ホスト液晶そのものを変えるしかないとされていたので、カイラル剤の添加によって、上記効果が得られるということは新たな事実である。
【0009】
更に、棒状液晶性基を有する剛直な光学活性化合物をカイラル剤として用いると、液晶のオーダーパラメーターが向上するという予期せぬ効果が得られた。
カイラル剤によって、ホスト液晶のオーダーパラメーターを高くできるという報告はされておらず(Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1986, Vol.141, 97-106、国際公開第02/06195号パンフレット、国際公開第02/06196号パンフレット)、この事実についても新たな知見である。
したがって、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
[1] 液晶と、剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤と、を含有することを特徴とする液晶組成物である。
【化1】

【0011】
一般式(1)中、*1は前記光学活性化合物との結合位置を示し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表す。
とDで表される基の総数が2〜5の整数である。
e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。
(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが2以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0012】
[2] 前記剛直な光学活性化合物が、縮環構造を有することを特徴とする前記[1]に記載の液晶組成物である。
【0013】
[3] 前記剛直な光学活性化合物が、光学活性部位を2点以上有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の液晶組成物である。
【0014】
[4] 前記剛直な光学活性化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化2】

【0015】
一般式(2)中、R〜Rは置換基を表す。R〜Rのうち、少なくとも1つは前記一般式(1)における液晶性基を表し、該液晶性基が連結する炭素原子は不斉炭素である。A〜Aは炭素原子を表し、A−A、A−Aは、単結合又は二重結合を表す。
【0016】
[5] 前記カイラル剤が、下記一般式(3)で表されるカイラル剤であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0017】
【化3】

【0018】
一般式(3)中、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表す。
とDで表される基の総数が2〜5の整数である。
e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。
(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが3以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0019】
[6] 前記一般式(3)で表されるカイラル剤が、下記一般式(4)又は一般式(5)で表されるカイラル剤であることを特徴とする前記[5]に記載の液晶組成物である。
【0020】
【化4】

【0021】
一般式(4)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。
【0022】
【化5】

【0023】
一般式(5)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。
【0024】
[7] 前記液晶が、ネマチック液晶であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0025】
[8] 更に、少なくとも1種の二色性色素を含むことを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0026】
[9] 前記二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(6)で表される置換基を有する色素であることを特徴とする前記[8]に記載の液晶組成物である。
【0027】
一般式(6): −(Het)−((B−(Q−(B−C
【0028】
一般式(6)中、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表し、jは0又は1を表し、p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、(p+r)×nは3〜10の整数であり、p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
[10] 前記液晶が、二周波駆動性を示すことを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0030】
[11] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、
前記一対の電極の間に、前記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶層と、
を有する液晶素子である。
【0031】
[12] 前記[11]に記載の液晶素子を備える反射型表示材料である。
【0032】
[13] 前記[11]に記載の液晶素子を備える調光材料である。
【0033】
[14] 剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤を、ホスト液晶に添加することで、液晶組成物のオーダーパラメーターを高くすることを特徴とする液晶組成物の調製方法である。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(1)中、*1は光学活性化合物との結合位置を示し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数である。e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが2以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0036】
[15] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極の間に前記液晶組成物を含有する液晶層を有する液晶素子に適用する場合に、
前記一対の電極の間の距離をd、液晶組成物のヘリカルピッチをPとしたときに、0.1≦d/P≦3となるように前記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤を添加することを特徴とする前記[14]に記載の液晶組成物の調製方法である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によって、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向を維持でき、且つ高いオーダーパラメーター値を示す液晶組成物およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、表示コントラストの高い液晶素子、反射型表示材料、調光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0039】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は、少なくとも、液晶とカイラル剤を含む。カイラル剤は、剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合した化合物である。本発明の液晶組成物は、その他の添加物を含んでいてもよい。
以下、本発明の液晶組成物の構成物を説明する。
【0040】
(カイラル剤)
本発明におけるカイラル剤は、剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合した化合物である。
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(1)中、*1は光学活性化合物との結合位置を示し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数である。
e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((D−(L)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。
(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが2以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0043】
一般式(1)において、T−(D−((L−((D−は、液晶性の部位であり、−((L−(CH−は、光学活性化合物との連結部位である。
したがって、本発明におけるカイラル剤は、T−(D−((L−((D−で表される液晶性の部位と、剛直な光学活性化合物とが、−((L−(CH−で表される連結部位で連結されている。
このようなカイラル剤を液晶に添加することで、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向を維持できる理由については明らかとなっていないが、以下のように推測される。但し、本発明は、下記推測によって限定されない。
【0044】
ホメオトロピック配向を維持できるらせんピッチ長は、弾性定数比K33/K22の値が大きくなるほど短くできるとされている。K22はねじれ弾性定数を表し、K33は、曲がり弾性定数を表す。つまり、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向を維持するには、曲がり弾性定数(K33)が大きく、且つねじれ弾性定数(K22)が小さくなるように液晶の状態を調整することが望ましい。
【0045】
本発明におけるカイラル剤は、剛直かつホスト液晶との相互作用が小さな光学活性化合物の部位を有するため、緩やかにねじれているものと推測される。一方で、本発明におけるカイラル剤は、T−(D−((L−((D−で表される液晶性部位を有するため、ホスト液晶に馴染みやすく、結果、曲がり弾性定数が大きくなっているものと推測される。
【0046】
更に、一般的には、K22とK33は連動して変動し、K33が大きな値となれば、K22も増加してしまう。これに対し本発明におけるカイラル剤では、これら液晶性部位と剛直な光学活性化合物の部位とが連結しているため、ねじれ弾性定数K22と曲がり弾性定数K33とが独立に変動し、ねじれ弾性定数K22が小さく且つ曲がり弾性定数K33が大きくなっているのではないかと推測される。
以下、本発明におけるカイラル剤における各部位を詳細に説明する。
【0047】
−液晶性部位−
一般式(1)において、D及びDで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。好ましいアリーレン基の具体例を挙げると、フェニレン基及びナフタレン基であり、例えば、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基が挙げられる。
【0048】
一般式(1)において、D及びDで表されるヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜9のヘテロアリーレン基である。好ましいヘテロアリーレン基の具体例には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環及びトリアゾール環からなる基、及びこれらが縮環して形成される縮環の2個の炭素原子から水素をそれぞれ1個ずつ除いて得られるヘテロアリーレン基が含まれる。
【0049】
一般式(1)において、D及びDで表される2価の環状脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜12の2価の環状脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキサンジイル、デカヒドロナフタレンジイル、スピロ[5.5]ウンデシレンであり、より好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、3,9−スピロ[5.5]ウンデシレン基である。
【0050】
一般式(1)において、D及びDの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても、無置換であってもよい。また、一般式(1)中、e、m又はkが、2以上の場合、複数のD、Dは、各々独立に置換基を有していてもよく、同一の置換基を有していても、異なる置換基を有していても、或いは、無置換であってもよい。
【0051】
これらの置換基としては、下記の置換基群Vが挙げられる。
(置換基群V)
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカロボニル)、炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルフォニル)、ニトロ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−エチルフェニルアミノ、3−n−プロピルフェニルアミノ、4−n−プロピルフェニルアミノ、3−n−ブチルフェニルアミノ、4−n−ブチルフェニルアミノ、3−n−ペンチルフェニルアミノ、4−n−ペンチルフェニルアミノ、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ、3−ピリジルアミノ、2−チアゾリルアミノ、2−オキサゾリルアミノ、N,N−メチルフェニルアミノ、N,N−エチルフェニルアミノ)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ)、炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、2−ピリジルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ)、炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ、3−ピリジルチオ、4−ピリジルチオ、2−キノリルチオ、2−フリルチオ、2−ピロリルチオ)、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれる}、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換又は無置換のヘテロアリール基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)。
【0052】
これら置換基群Vは、ベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造であってもよい。さらに、これらの置換基上にさらに此処までに説明したVの説明で示した置換基が置換していてもよい。
【0053】
置換基群Vの中でも、D及びDの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基の置換基として、好ましい置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基である。
【0054】
一般式(1)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、アルカンジイル基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基、アゾ基(−CH=N−,−N=CH−)、アゾキシ基、アルキレンオキシ基であり、より好ましくは、アルカンジイル基(例えば、エチレン基)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基)、エステル基、アルキレンオキシ基(例えば、メチレンオキシ基)である。
【0055】
一般式(1)中、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。T1として好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルキル基(例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれる)をあげることができる);炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシロキシ基をあげることができる);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)である。
【0056】
一般式(1)中のTで表される上記アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基及びアシルオキシ基は、置換基を有していてもいなくてもよく、置換基としては、上記置換基群Vが挙げられる。
で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基及びアシルオキシ基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子(特に塩素原子、フッ素原子)、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアシル基であることが好ましい。
【0057】
一般式(1)中、eは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。eが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(1)中、mは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。mが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、複数のLはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(1)中、kは1又は2である。kが2の場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(1)中、fは0〜2の整数を表し、好ましくは0〜2である。fが2以上の場合、複数のLはそれぞれ異なる連結基を表す。
【0058】
一般式(1)中、DとDで表される基の総数、すなわちe×m+kが2〜5の整数であり、より好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2〜3の整数である。e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、mが2以上の時、2以上の(L−(Dは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0059】
特に好ましいe、f、m、kの組み合わせを以下に記す。
(I)e=1、f=0、m=1、k=1
(II)e=1、f=1、m=1、k=1
(III)e=1、f=0、m=2、k=1
(IV)e=2、f=1、m=1、k=1
(V)e=1、f=1、m=1、k=2
(VI)e=1、f=1、m=2、k=1
(VII)e=2、f=1、m=1、k=2
【0060】
−連結部位−
一般式(1)において、光学活性化合物と液晶性基との連結部位は、−((L−(CH−である。
【0061】
一般式(1)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、エーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基であり、より好ましくは、エーテル基、エステル基である。
【0062】
一般式(1)中、gは0又は1である。
一般式(1)中、iは0〜20の整数を表し、好ましくは0〜11である。
一般式(1)中、tは1〜4を表し、好ましくは1〜3である。tが2以上の場合、複数の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、iは同数であっても、異なる数であってもよい。
ここで、(g+i)×tは、1〜40の整数であり、1〜30の整数であることが好ましく、1〜20の整数であることがより好ましい。
【0063】
−剛直な光学活性化合物−
本発明において、剛直な光学活性化合物とは、結合まわりの自由回転が抑えられた化合物を指し、縮環構造であることが好ましく、光学活性部位を2点以上有することが更に好ましい。ここでいう縮環構造とは、ナフタレンのように芳香環の縮環構造であってもよいし、デカヒドロナフタレンのように脂肪族環が縮環した構造であってもよい。ここで光学活性部位とは、不斉炭素のことを指す。
【0064】
また、一般式(1)において、剛直な光学活性化合物は、光学活性部位を2点以上有することが、相互作用の小さなホスト液晶をゆるやかにねじる(弾性定数比のK22を大きくしない)という観点から好適であり、光学活性部位を3点以上有することがより好ましい。
【0065】
このような剛直な光学活性化合物としては、以下のものを挙げることができるが、本発明の化合物は、これに限定されるわけではない。なお、下記具体例において、2点以上の光学活性部位は、環状構造上であれば、どこであってもよい。
【0066】
【化8】



【0067】
更に、一般式(1)における剛直な光学活性化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0068】
【化9】

【0069】
一般式(2)中、R〜Rは置換基を表す。R〜Rのうち、少なくとも1つは前記一般式(1)における前記液晶性基を表し、該液晶性基が連結する炭素原子は不斉炭素である。A〜Aは炭素原子を表し、A−A、A−Aは、単結合又は二重結合を表す。
【0070】
前記一般式(2)におけるR〜Rのうち、液晶性基は、R又はRであることが好ましく、Rであることが好ましい。
【0071】
一般式(2)におけるRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン、水酸基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基であることがより好ましく、炭素数1〜15のアルキル基であることが更に好ましく、特に炭素数1〜10の分岐のアルキル基であることが好ましい。
【0072】
一般式(2)におけるRは及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン、水酸基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基であることがより好ましく、水素原子であることより好ましい。
【0073】
上記剛直な光学活性化合物の中でも、コレステリック化合物であることが特に好ましい。
【0074】
−一般式(1)で表されるカイラル剤−
前記一般式(1)で表されるカイラル剤は、剛直な光学活性化合物がコレステリック化合物である下記一般式(3)で表されるカイラル剤がより好ましい。
【0075】
【化10】

【0076】
一般式(3)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、g、iおよびtは、一般式(1)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、g、iおよびtとそれぞれ同義である。
【0077】
更に、前記一般式(1)で表されるカイラル剤は、下記一般式(4)又は一般式(5)で表されるカイラル剤であることがより好ましい。
【0078】
【化11】



【0079】
一般式(4)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。
【0080】
【化12】

【0081】
一般式(5)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。
【0082】
以下に、本発明に使用可能なカイラル剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

【0086】
【化16】

【0087】
本発明の液晶組成物において、ネマチック液晶およびカイラル剤の含有量について制限はないが、本発明の液晶素子として用いる液晶セルのセルギャップをd、液晶のヘリカルピッチをPとしたときに、0.1≦d/P≦3となるように含有されることが好ましい。より好ましくは、0.25≦d/P≦1.5であり、特に好ましくは、0.4≦d/P≦2であり、最も好ましくは、0.6≦d/P≦1.5である。なおヘリカルピッチとは、液晶分子のらせん構造が360°旋回する距離として定義される。
具体的には、ピッチ長Pが、0.01μm〜100μmとなるように、ネマチック液晶にカイラル剤を添加することが好ましく、0.1μm〜50μmとなるように添加することがより好ましく、1μm〜20μmとなるように添加することが更に好ましい。
【0088】
(ホスト液晶)
次に本発明の液晶組成物に用いられるホスト液晶について説明する。
本発明の液晶素子に用いられるホスト液晶は、二色性色素と共存しうるものであれば特に制限はないが、たとえば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。
その具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第154〜192頁ならびに第715〜722頁に詳しい。TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもできる。
【0089】
また、表示コントラストを高める為には、屈折率異方性(Δn)の絶対値が0.25以下のものが好ましい。より好ましくは、|Δn|≦0.15であり、特に好ましくは、|Δn|≦0.10であり、最も好ましくは、|Δn|≦0.08である。
【0090】
また、ホスト液晶として、二周波駆動性液晶を適用することもできる。
二周波駆動液晶とは、該液晶に印加される電場の周波数が低周波数領域の場合に正の誘電率異方性を示し、高周波数領域の場合に誘電率異方性の符号が負に逆転する液晶である。日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第189〜192頁に詳しい。その具体例として、アルドリッチ社製の二周波駆動液晶を示す。
【0091】
【化17】

【0092】
市販の二周波駆動液晶材料として、チッソ社製DF−02XX、DF−05XX、FX−1001、FX−1002、メルク社製MLC−2048などを挙げることができる。
具体的な骨格としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。
二周波駆動液晶を用いる場合には、本発明の調光材料に、低周波と高周波数の異なる電圧を印加して切り替えて駆動する。
【0093】
本発明で用いられる二周波駆動液晶は、複数の液晶化合物の混合物であってもよい。さらに、印加される電場の低周波数領域と高周波数領域で誘電率異方性の符号が逆転しない液晶化合物を含んでもよい。
【0094】
該液晶に印加される電場の周波数領域は、好ましくは0.1Hz〜10MHzの囲であり、より好ましくは1Hz〜1MHzである。ここで、低周波数領域として用いられるのは0.1Hz〜100kHzであり、好ましくは、1Hz〜10kHzであり、より好ましくは10Hz〜10kHzである。高周波数領域として用いられるのは100Hz〜10MHzであり、好ましくは、100Hz〜1MHzであり、より好ましくは1kHz〜1MHzである。
【0095】
本発明では、前記一般式(1)で表される棒状液晶性基を有するカイラル剤を用いるため、ホスト液晶の構造は、前記一般式(1)で表される棒状液晶性基の構造に似ていることが、短いらせんピッチ長においてもホメオトロピック配向が維持できる観点から好ましい。しかし、本発明にかかるカイラル剤は、構造が類似しない液晶に対しても、表示コントラストを向上させるという効果を奏することが明らかとなっている。
したがって、上述のように、ホスト液晶としては、二色性色素と共存しうるものであれば特に制限はない。
【0096】
屈折率異方性Δn、誘電率異方性Δε、液晶オーダーパラメーターおよび実用的な液晶温度範囲の観点から、ZLI−2806、MLC−6609(Merck社)などの液晶が好ましいホスト液晶としてあげることができる。
【0097】
本発明の液晶組成物には、ホスト液晶の物性(例えば、液晶相の温度範囲)を所望の範囲に変化させることを目的として、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。
【0098】
(二色性色素)
次に本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素について説明する。
二色性色素は、ホスト液晶中に溶解し、光を吸収する機能を有する化合物と定義される。前記二色性色素の吸収極大ならびに吸収帯に関しては特に制限はないが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する場合が好ましい。
【0099】
本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素は、単独で使用してもよいが、複数を混合したものであってもよい。複数の色素を混合する場合には、同一種の発色団を有する色素同士を混合してもよいし、互いに異なる発色団を有する二色性色素を混合してもよく、Y、M、Cに吸収極大を有する二色性色素の混合物を用いるのが好ましい。
公知の二色性色素としては、例えば、A. V. Ivashchenko著、Diachronic Dyes for Liquid Crystal Display、CRC社、1994年に記載のものが挙げられる。イエロー色素、マゼンタ色素ならびにシアン色素を混合することによるフルカラー化表示を行う方法については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に詳しい。ここでいう、イエロー域とは、430〜490nmの範囲、マゼンタ域とは、500〜580nmの範囲、シアン域とは600〜700nmの範囲である。
【0100】
次に、本発明の二色性色素に用いられる発色団について説明する。
前記二色性色素の発色団はいかなるものであってもよいが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素、フェノキサジン色素などが挙げられる。好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、フェノキサジン色素であり、特に好ましくはアントラキノン色素、フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)である。
【0101】
アゾ色素はモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては芳香族基(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかにも複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0102】
アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0103】
フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。
【0104】
本発明の二色性色素は、下記一般式(6)で表される置換基を有することが好ましい。
一般式(6):−(Het)−((B−(Q−(B−C
【0105】
一般式(6)中、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。
【0106】
一般式(6)中、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、いずれも置換基を有していてもいなくてもよい。
【0107】
及びBで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。好ましいアリーレン基の具体例を挙げると、フェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基である。特に好ましくは、置換フェニレン基であり、さらに好ましくは1、4−フェニレン基である。
及びBで表されるヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1から20、より好ましくは炭素数2〜9のヘテロアリーレン基である。好ましいヘテロアリーレン基の具体例は、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環からなる基、及びこれらが縮環して形成される縮環の2個の炭素原子から水素をそれぞれ1個ずつ除いて得られるヘテロアリーレン基である。
及びBで表される2価の環状脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜10の2価の環状脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキサンジイル、シクロペンタンジイルであり、より好ましくは、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、(E)−シクロヘキサン−1、4−ジイル基である。
【0108】
及びBの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基は、さらに置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基群Vが挙げられる。
【0109】
置換基群Vのうち、B及びBの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状炭化水素基の置換基として好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0110】
一般式(6)におけるQは2価の連結基を表し、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子から構成される原子団からなる連結基である。
が表す2価の連結基としては、好ましくは炭素数0〜60、より好ましくは炭素数0〜30、更に好ましくは炭素数0〜20の2価の連結基である。
また、Qが表す2価の連結基としては、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アミド基、エーテル基、エステル基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子又はアルキル基、アリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基を1つ又はそれ以上組み合わせて構成される2価の連結基が挙げられる。
【0111】
で表されるアルキレン基として、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキシル−1,4−ジイル基を挙げることができる。
で表されるアルケニレン基として、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニレン基であり、例えば、エテニレン基を挙げることができる。
で表されるアルキニレン基として、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニレン基であり、例えば、エチニレン基を挙げることができる。
−NR−基におけるRの表すアルキル基において、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、Rの表すアリール基において、好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。
で表される複素環として、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数4〜10であり、例えば、ピペラジン−1,4−ジイル基を挙げることができる。
【0112】
の表す2価の連結基として、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、及びそれらを組み合わせた基である。
【0113】
で表される2価の連結基として、特に好ましくは、アルキレン基、アルキニレン基、エーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基である。
【0114】
一般式(6)におけるCは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表す。
として好ましくは、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル及びシクロアルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアシル基、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基である。
【0115】
で表される上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基は、置換基を有していてもいなくてもよく、置換基としては上記置換基群Vが挙げられる。
【0116】
で表されるアルキル基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0117】
で表されるシクロアルキル基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基であることが好ましい。
【0118】
で表されるアルコキシ基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0119】
で表されるアルコキシカルボニル基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0120】
で表されるアシル基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0121】
で表されるアシルオキシ基の置換基としては、置換基群Vのうち、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0122】
で表されるアルキル基及びシクロアルキル基としての具体例は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基を挙げることができる。
で表されるアルコキシ基としての具体例は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基を挙げることができる。
で表されるアシルオキシ基としての具体例は、例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基を挙げることができる。
で表されるアシル基としての具体例は、例えば、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基を挙げることができる。
で表されるアルコキシカルボニル基としての具体例は、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0123】
は特に好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基であり、さらに好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフルオロメトキシ基である。
【0124】
jは0又は1を表し、好ましくは0である。
p、q、及びrは、各々独立に、0から5までの整数を表し、nは1から3までの整数を表す。BとBで表される基の総数、すなわち(p+r)×nは、3〜10の整数であり、より好ましくは3〜5の整数である。p、q及びrが2以上の時、2以上のB、Q及びBは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、((B−(Q−(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0125】
好ましいp、q、r及びnの組合せを以下に記す。
(i)p=3、q=0、r=0、n=1
(ii)p=4、q=0、r=0、n=1
(iii)p=5、q=0、r=0、n=1
(iv)p=2、q=0、r=1、n=1
(v)p=2、q=1、r=1、n=1
(vi)p=1、q=1、r=2、n=1
(vii)p=3、q=1、r=1、n=1
(viii)p=2、q=0、r=2、n=1
(ix)p=1、q=1、r=1、n=2
(x)p=2、q=1、r=1、n=2
【0126】
特に好ましくは、(i)p=3、q=0、r=0、n=1、(iv)p=2、q=0、r=1、n=1、又は(v)p=2、q=1、r=1、n=1の組合せである。
【0127】
さらに、−((B−(Q−(B−Cは、液晶性を示す構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコティック液晶であり、特に好ましくは、ネマチック液晶、スメクチック液晶である。
【0128】
−((B−(Q−(B−Cの具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない(下記化学式中、波線は連結位置を表す)。
【0129】
【化18】

【0130】
【化19】

【0131】
本発明に用いられる二色性色素は、−((B−(Q−(B−Cで表される置換基を1つ以上有しているのが好ましく、1〜8個有しているのがより好ましく、1〜4個有しているのがさらに好ましく、特に好ましくは1又は2個有している場合である。
【0132】
前記一般式(6)で表される置換基の好ましい構造は、下記の組み合わせである。
〔1〕Hetが硫黄原子であり、Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、j=1、p=2、q=0、r=1及びn=1を表す構造。
〔2〕Hetが硫黄原子であり、Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、j=1、p=1、q=0、r=2及びn=1を表す構造。
【0133】
特に好ましい構造は、
〔1〕Hetが硫黄原子を表し、Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキシル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、j=1、p=2、q=0、r=1及びn=1である下記一般式(a−1)で表される構造、
〔2〕Hetが硫黄原子を表し、Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、j=1、p=1、q=0、r=2及びn=1である下記一般式(a−2)で表される構造、である。
【0134】
【化20】

【0135】
前記一般式(a−1)及び(a−2)中、Ra1〜Ra12は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれる置換基が挙げられる。Ra1〜Ra12は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であることが好ましい。Ra1〜Ra12で表されるアルキル基、アリール基及びアルコキシ基のうち、好ましいものは、前述の置換基群Vに記載のアルキル基、アリール基及びアルコキシ基と同義である。
【0136】
前記一般式(a−1)及び(a−2)中、Ca1及びCa2は、各々独立してアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基である。
【0137】
アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては、芳香族(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかヘテロ環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0138】
アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基である。
該置換基の置換数はいかなる数であっても良いが、ジ置換、トリ置換、テトラ置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であっても良いが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0139】
アントラキノン色素としては、より好ましくは、下記一般式(7)で表される化合物である。
【0140】
【化21】

【0141】
一般式(7)中、R、R、R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つは、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cであり、他は各々独立に水素原子又は置換基である。
−(Het)−{(B−(Q−(B−Cにおいて、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表し、jは0又は1を表し、p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。BとBで表される基の総数、すなわち(p+r)×nは3〜10の整数を表し、より好ましくは、3〜5の整数である。p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の((B−(Q−(B)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
ここで、Het、B、B、Q、C、j、p、q、r及びnの好ましい範囲は、それぞれ前記一般式(6)で記載したHet、B、B、Q、C、j、p、q、r及びnの好ましい範囲と同様である。
【0142】
一般式(7)における前記置換基としては、前記置換基群Vを挙げることができ、好ましくは、ハロゲン原子、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0143】
また、更に好ましくは、一般式(7)において、R、R、R、及びRの少なくとも一つが、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cの場合である。
【0144】
フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい例として挙げられる。
【0145】
フェノキサゾン色素として、より好ましくは、下記一般式(8)で表される化合物である。
【0146】
【化22】

【0147】
一般式(8)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の少なくとも一つ以上は、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cであり、他はそれぞれ水素原子又は置換基である。
−(Het)−{(B−(Q−(B−Cにおいて、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表し、jは0又は1を表し、p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。BとBで表される基の総数、すなわち(p+r)×nは3〜10の整数を表し、より好ましくは、3〜5の整数である。p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の((B−(Q−(B)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
ここで、Het、B、B、Q、C、j、p、q、r及びnの好ましい範囲は、それぞれ前記一般式(6)で記載したHet、B、B、Q、C、j、p、q、r及びnの好ましい範囲と同様である。
【0148】
一般式(8)における前記置換基としては、前記置換基群Vを挙げることができ、好ましくは、アミノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは、アミノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基、アリール基である。
【0149】
また、更に好ましくは、一般式(8)において、R11、R14、R16の少なくとも一つが、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cの場合である。
【0150】
以下に、本発明に使用可能なアントラキノン色素及び/又はフェノキサゾン色素の二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0151】
【化23】

【0152】
【化24】

【0153】
【化25】



【0154】
【化26】

【0155】
以下に、本発明に使用可能なアゾ系二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0156】
【化27】

【0157】
以下に本発明に使用可能なジオキサジン系二色性色素及びメロシアニン系二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0158】
【化28】



【0159】
前記一般式(6)で表される置換基を有する二色性色素は、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、特開2003−192664号公報記載の方法に従い合成することができる。
【0160】
本発明の液晶組成物におけるホスト液晶に対する二色性色素の比率は、吸光係数が色素によって異なるため、いかなる割合であってもよいが、0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜8質量%が特に好ましい。
【0161】
ホスト液晶への二色性色素の溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用することができる。その他、本発明の液晶組成物の調製については、公知の方法を採用することができる。
【0162】
<液晶素子>
本発明の液晶素子は、少なくとも一方が透明電極である一対の電極の間に、上記液晶組成物を含む液晶層を備える。
本発明の液晶素子に用いられる電極基板としては、通常ガラスあるいはプラスチック基板が用いられ、プラスチック基板が好ましい。本発明に用いられるプラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ポリイミド(PI)などが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0163】
プラスチック基板の厚みには、特に規定されないが30μm〜700μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0164】
プラスチック基板には、必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤及び潤滑剤などの樹脂改質剤を添加しても良い。
【0165】
前記プラスチック基板は光透過性及び非光透過性のいずれであってもよい。前記支持体として、非光透過性支持体を用いる場合には、光反射性を有する白色の支持体を用いることができる。白色支持体としては、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料を添加したプラスチック基板が挙げられる。なお、前記支持体が表示面を構成する場合は、少なくとも可視域の光に対して光透過性を有することが必要である。
基板については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第218〜231頁に詳しい。
【0166】
一対の基板のうち少なくとも一方の基板表面に、電極層、好ましくは透明電極層が形成される。その電極層としては、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどが用いられる。透明電極については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第232〜239頁に記載のものが用いられる。透明電極は、スパッタ法、ゾルゲル法、印刷法により形成することができる。
【0167】
本発明の液晶素子は液晶を配向させる目的で、液晶と基板の接する表面に配向処理を施した層を形成することが好ましい。該配向処理としては、たとえば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。配向膜については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0168】
本発明では、垂直配向、水平配向のいずれの配向膜であっても本発明の効果を奏することができる。なお、電圧無印加時に非吸収(無色)となるモード(ノーマリーホワイト)においては、垂直配向膜を設けて、誘電率異方性Δεが負の液晶を組み合わせることが好適である。
【0169】
本発明の液晶素子は一対の基板同士をスペーサーなどを介して、1〜50μmの間隔を設け、その空間に注入することができる。スペーサーについては、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第257〜262頁に記載のものが用いられる。本発明の液晶組成物は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
【0170】
本発明の液晶素子は、更に白色反射板、反射防止膜、輝度向上膜などを備えていてもよい。
【0171】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0172】
本発明の相転移型GHモード液晶素子を用いた液晶ディスプレイは、他の方式と組み合わせたものであってもよい。例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている(1)ホモジニアス配向、(2)ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移)として(3)フォーカルコニック配向及び(4)ホメオトロピック配向、(5)Super Twisted Nematic(STN)との組合せ、(6)強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、内田龍男監修、反射型カラーLCD総合技術、シーエムシー社、1999年、第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、(1)Heilmeier型GHモード、(2)1/4波長板型GHモード、(3)2層型GHモード、(4)高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
【0173】
本発明にかかる液晶層では、1つの液晶組成物中に複数の二色性色素を混合してもよい。液晶組成物の色についても、いかなるものであってもよい。例えば、複数の二色性色素を混合して用いる等、黒色の液晶組成物を調製した場合には、電圧の印加によって白黒表示用の液晶素子として利用することができる。
また、レッド、グリーン及びブルーに各々着色された液晶組成物を調製し、3種類の組成物を基板上に並置配置することにより、カラー表示用の液晶素子を作製することもできる。
【0174】
一方、本発明にかかる液晶層は、特開平10−90715号公報などに記載されているように、1対の電極に挟まれた積層構造であってもよい。既述の本発明の液晶素子の表示方法について説明したとおり、積層方向の層は、減法混色の関係にある二色性色素あるいは補色の関係にある二色性色素をそれぞれに添加することが好ましい。
例えば、イエロー、マゼンタ及びシアンに着色した液晶組成物の各々からなる層を3層積層させる構成;及びイエロー、マゼンタ及びシアンに着色した液晶組成物と、補色の関係にあるブルー、グリーン及びレッドに着色した液晶組成物の各々からなる層を並置配置させた層とを2層積層させる構成;及び黒に着色した液晶組成物の層と、レッド、ブルー及びグリーンの液晶組成物の各々からなる層を並置配置させた層とを、2層積層させる構成;などが挙げられる。
【0175】
<反射型表示材料、調光材料>
本発明の液晶組成物は、コレステリック液晶を用いる用途(例えば、選択反射を利用した表示物、センサーおよび擬一次のフォトニック結晶として用いるレーザー等)であれば、いずれにも用いることができる。
例えば、本発明の液晶素子は、高い表示性能・調光性能を与えることができる為、反射型表示材料、調光、セキュリテイー、車載用途、インテリア、広告、情報表示板として好適に利用することができる。
【0176】
反射型表示材料として使用する場合には、一対の電極基板のうち少なくとも一方が透明電極であればよい。その一対の電極の間に上記液晶組成物を含む液晶層を設け、更に反射板を設ける。反射型表示材料では、観察者側から入射した光が反射板によって反射され、その反射光を観察者は観察することになる。
その他、反射型表示材料では、位相差板など公知の部材を適宜設けることができる。
【0177】
調光材料として使用する場合には、一対の電極基板はいずれも透明である。調光材料では、観察者の反対側から入射した光を、調光材料を介して反対側から観察する。
調光材料は、屋外に曝されて使用されることがあるため、バリア膜、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、汚れ防止層、紫外線吸収層などを設けることが好ましい。
【実施例】
【0178】
次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0179】
[実施例1]
(カイラル剤(1)の合成)
4’−ブチルビシクロヘキシル−4−カルボン酸(0.76g)、コレステロール(1g)(和光純薬製)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(0.19g)のジクロロメタン溶液(10ml)に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.65g)(和光純薬製)のジクロロメタン溶液(5ml)を滴下し、加熱還流下で1時間攪拌した。反応液をクロロホルム/1N塩酸水に注加し、有機層を1N塩酸水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)し、得られた粗結晶をイソプロピルアルコールから再結晶することにより、カイラル剤(1)(1.2g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。
【0180】
H−NMR(CDCl
δ:0.67(3H,s)、0.75−2.06(66H,m)、2.15(1H,ddt)、2.28(2H,d)、4.6(1H,m)、5.38(1H,m)
【0181】
(カイラル剤(3)の合成)
下記スキームに従って、カイラル剤(3)の合成をおこなった。
【0182】
【化29】

【0183】
(化合物3aの合成)
2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸(20g)(ALDRICH製)及びCsF−Celite(58.4g)(SYNTHETIC COMMUNICATIONS, 28(11), 2021-2026 (1998)に従い調製した)のアセトニトリル溶液(400ml)に、ベンジルブロミド(39.6g)を滴下し、加熱還流下で3時間攪拌した。反応液を減圧にて濃縮後、酢酸エチル(400ml)を加え、濾過をおこなった。濾液を減圧にて濃縮後、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)し、得られた粗結晶を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物3a(26.7g)を得た。
【0184】
(化合物3bの合成)
化合物3a(10g)、4’−ペンチルビシクロヘキシル−4−カルボン酸(10.7g)及びジメチルアミノピリジン(0.9g)の塩化メチレン溶液(100ml)に、ジシクロカルボジイミド(9.4g)の塩化メチレン溶液(50ml)を滴下し、加熱還流下で1時間撹拌した。反応液を濾過後、酢酸エチル/1N塩酸水に注加し、有機層を1N塩酸水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5)し、得られた粗結晶をイソプロピルアルコールから再結晶することにより化合物3b(16.8g)を得た。
【0185】
(化合物3cの合成)
化合物3b(16.7g)のイソプロピルアルコール(120ml)/THF(130ml)混合溶液に、10%Pd/C(2.0g)を添加し、常圧水素添加条件で3時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をエタノールから再結晶することにより化合物3c(12.6g)を得た。
【0186】
(カイラル剤(3)の合成)
化合物3c(1.2g)の酢酸エチル溶液(10ml)に、塩化チオニル(0.25ml)を加え、85℃にて2時間攪拌した。これをコレステロール(1g)のピリジン溶液(10ml)に、氷冷下で滴下し、2時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/1N塩酸水に注加し、有機層を1N塩酸水続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/1)し、得られた粗結晶をエタノールから再結晶することによりカイラル剤(3)(1.1g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。
【0187】
H−NMR(CDCl
δ:0.65(3H,s)、0.80−1.65(53H,m)、1.65−2.09(13H,m)、2.14(2H,d)、2.40−2.52(3H,m)、4.86(1H,m)、5.42(1H,m)、7.04(1H,d)、7.20(1H,s)、7.84(1H,d)
【0188】
カイラル剤(2)、(5)、(7)〜(18)についても、前記合成法と同様にして合成をおこなうことができる。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。
【0189】
カイラル剤(2)
1H−NMR(CDCl
δ:0.69(3H,s)、0.83−2.08(58H,m)、2.44(2H,d)、2.52(1H,ddt)、4.85(1H,m)、5.41(1H,m)、7.25(2H,d)、7.95(2H,d)
【0190】
カイラル剤(5)
1H−NMR(CDCl
δ:0.70(3H,s)、0.81−2.10(49H,m)、2.49(2H,d)、2.82(2H,t)、4.90(1H,m)、5.44(1H,m)、7.27(1H,d)、7.43(2H,sd)、7.69(1H,s)、7.87(1H,d)、7.91(1H,d)、7.94(1H,d)、8.12(1H,d)、8.73(1H,s)
【0191】
カイラル剤(7)
1H−NMR(CDCl
δ:0.68(3H,s)、0.82−1.65(48H,m)、1.76−1.90(8H,m)、1.90−2.12(4H,m)、2.31(2H,d)、2.40(1H,ddt)、2.47(2H,t)、3.96(2H,t)、4.63(1H,m)、5.36(1H,m)、6.80(2H,d)、7.10(2H,d)
【0192】
カイラル剤(8)
1H−NMR(CDCl
δ:0.68(3H,s)、0.83−1.70(46H,m)、1.77−2.05(10H,m)、2.35(2H,d)、2.45(1H,ddt)、2.72(2H,t)、2.85(2H,t)、4.64(1H,m)、5.38(1H,m)、6.99(2H,d)、7.19(2H,d)
【0193】
カイラル剤(9)
1H−NMR(CDCl
δ:0.65(3H,s)、0.74−2.06(68H,m)、2.30(2H,d)、2.57(4H,bs)、4.55−4.72(2H,m)、5.37(1H,m)
【0194】
カイラル剤(10)
1H−NMR(CDCl
δ:0.66(3H,s)、0.80−1.70(42H,m)、1.85−2.06(5H,m)、2.33(2H,d)、2.62(2H,t)、2.74(2H,t)、2.90(2H,t)、4.68(1H,m)、5.38(1H,m)、7.10(2H,d)、7.23(4H,dd)、8.22(2H,d)
【0195】
カイラル剤(11)
1H−NMR(CDCl
δ:0.66(3H,s)、0.81−1.70(48H,m)、1.75−2.05(10H,m)、2.33(2H,d)、2.50(1H,ddt)、2.72(2H,t)、2.89(2H,t)、4.66(1H,m)、5.36(1H,m)、7.14(2H,d)、7.28(2H,d)、7.48(2H,d)、7.55(2H,d)
【0196】
カイラル剤(12)
1H−NMR(CDCl
δ:0.66(3H,s)、0.81−1.70(48H,m)、1.75−2.06(10H,m)、2.33(2H,d)、2.51(1H,ddt)、2.75(2H,t)、2.95(2H,t)、4.67(1H,m)、5.38(1H,m)、6.98(1H,ddd)、7.16(1H,ddd)、7.29(2H,d)、7.43(2H,d)
【0197】
カイラル剤(13)
1H−NMR(CDCl
δ:0.68(3H,s)、0.76−2.06(64H,m)、2.32(2H,d)、2.42(1H,ddt)、2.71(2H,t)、2.90(2H,t)、4.67(1H,m)、5.38(1H,m)、6.91−7.08(3H,m)
【0198】
カイラル剤(14)
1H−NMR(CDCl
δ:0.67(3H,s)、0.84−1.68(56H,m)、1.71−1.90(10H,m)、1.90−2.05(2H,m)、2.30(2H,d)、2.40(1H,ddt)、2.59(4H,m)、3.91(2H,t)、4.07(2H,t)、4.62(1H,m)、5.36(1H,m)、6.81(2H,d)、7.10(2H,d)
【0199】
カイラル剤(15)
1H−NMR(CDCl
δ:0.69(3H,s)、0.75−1.91(74H,m)、1.92−2.05(4H,m)、2.19(1H,ddd)、2.33(2H,d)、2.61(4H,bs)、4.04(2H,t)、4.09(2H,t)、4.62(1H,m)、5.38(1H,m)
【0200】
カイラル剤(16)
1H−NMR(CDCl
δ:0.68(3H,s)、0.76−2.06(86H,m)、2.19(1H,ddd)、2.33(2H,d)、2.63(4H,s)、4.04(2H,t)、4.08(2H,t)、4.63(1H,m)、5.38(1H,m)
【0201】
カイラル剤(17)
1H−NMR(CDCl
δ:0.68(3H,s)、0.82−1.91(74H,m)、1.98(2H,ddd)、2.16(2H,d)、2.32(2H,d)、2.48(1H,ddd)、2.61(4H,s)、4.09(2H,t)、4.32(2H,t)、4.63(1H,m)、5.38(1H,m)、7.14(2H,d)、8.06(2H,d)
【0202】
カイラル剤(18)
1H−NMR(CDCl
δ:0.70(3H,s)、0.81−1.68(71H,m)、1.68−1.91(11H,m)、1.99(2H,ddd)、2.16(2H,d)、2.32(2H,d)、2.48(1H,ddd)、2.61(4H,s)、4.07(2H,t)、4.31(2H,t)、4.62(1H,m)、5.39(1H,m)、7.13(2H,d)、8.06(2H,d)
【0203】
本発明のカイラル剤(2mg)をホスト液晶ZLI−2806(98mg)(Merck社製)と混合し、160℃のホットプレート上で2時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、1晩放置させて、カイラルネマチック液晶組成物を作製した。得られた液晶組成物をくさび形液晶セル(Gap1.1mm、EHC社製)に注入し、偏光顕微鏡にて観察することで、ピッチ長を測定し、HTP値(Helical Twisting Power)を算出した。なお、HTP値は下記式によって算出される、カイラル剤のホスト液晶に対するねじれ力(旋回能)を表す。
【0204】
HTP=1/(P×C)
(P:ピッチ長、C:カイラル剤の含率)
【0205】
【表1】

【0206】
算出したHTP値をもとに、ピッチ長が10〜11μmとなるように、本発明のカイラル剤をホスト液晶ZLI−2806(Merck社製)と混合し、160℃のホットプレート上で2時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、1晩放置させて、カイラルネマチック液晶組成物1〜10を作製した。
【0207】
比較として、市販のカイラル剤R−1011(Merck社製)、CN(ADEKA製)を用い、同様にして液晶組成物11〜12を調製した。
【0208】
得られた液晶組成物1〜12をガラスプレートにのせ、ホットステージ(東陽テクニカ製)にて昇温し、偏光顕微鏡で観察することにより、転移温度(Tiso)を測定した。なお、ピッチ長は、実施例1と同様の方法により測定をおこなうことで求めた。
【0209】
【表2】

【0210】
表2から明らかな様に、本発明のカイラル剤を添加することにより、液晶組成物の転移温度が増加することがわかる。
【0211】
[実施例2]
実施例1と同様にして、ピッチ長が10〜11μmとなるように、本発明のカイラル剤をフッ素系ネマチック液晶MLC−6609(Merck社製)と混合し、160℃のホットプレート上で2時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、1晩放置させて、カイラルネマチック液晶組成物13を作製した。
【0212】
比較として、市販のカイラル剤CN(ADEKA製)を用い、同様にして液晶組成物14を調製した。
【0213】
得られた液晶組成物13〜14をガラスプレートにのせ、ホットステージ(東陽テクニカ製)にて昇温し、偏光顕微鏡で観察することにより、転移温度(Tiso)を測定した。なお、ピッチ長は、実施例4と同様の方法により測定をおこなうことで求めた。
【0214】
【表3】

【0215】
表3から明らかな様に、本発明のカイラル剤は、F系ネマチック液晶においても、転移温度が増加することがわかる。
【0216】
[実施例3]
ホスト液晶ZLI−2806(Merck社製)に添加する本発明のカイラル剤量を変えて、異なるピッチ長の液晶組成物を作製した。得られた液晶組成物を液晶評価用セル(垂直配向膜SE−1211(日産化学製)、セルギャップ15μm、ガラス板1.1mm、エポキシ樹脂シール付き)に、室温にて注入し、一晩放置した。偏光顕微鏡にて、配向状態を観察することで、ホメオトロピック配向を維持できる限界らせんピッチ長Pを測定し、d/Pを求めた(dはセルギャップを表す)。
【0217】
比較として、市販のカイラル剤R−811、R−1011(Merck社製)、CNL−617L、CN(ADEKA製)を用い、同様にして、d/Pを求めた。
【0218】
【表4】

【0219】
表4から明らかな様に、本発明のカイラル剤の方がd/Pが大きく、ホメオトロピック配向を維持できる限界らせんピッチ長Pが短くなることがわかる。
【0220】
[実施例4]
本発明のカイラル剤をホスト液晶に添加することで液晶組成物のオーダーパラメーターが高くなることは、ピッチ長が等しいカイラルネマチック液晶組成物を調製し、二色性色素を溶解させ、液晶評価用セル中で電界駆動させて、表示コントラスト比を測定することで確認することができる。
【0221】
(ゲストホスト液晶組成物の調製)
ピッチ長が9.2μmとなるように、本発明のカイラル剤をホスト液晶ZLI−2806に添加し、160℃のホットプレート上で1時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。電圧無印加時の透過率が60%となるように、二色性色素(1−14)を得られたカイラルネマチック液晶組成物に混合し(色素含率1.0wt%〜1.2wt%)、160℃のホットプレート上で1時間加熱したあと、室温まで冷却させ、ゲストホスト液晶組成物を調製した。
【0222】
(ゲストホスト液晶素子の作製)
上記のゲストホスト液晶組成物を、液晶評価用セル(ITO透明電極付き、垂直配向膜SE−1211(日産化学製)、セルギャップ8μm、ガラス板1.1mm、エポキシ樹脂シール付き)に注入し、液晶素子を作製した。
【0223】
比較として、市販のカイラル剤R−811、R−1011(Merck社製)、CNL−617L、CN(ADEKA製)を用い、上記と同様にして液晶素子を作製した。
【0224】
<コントラスト比の評価>
作製した液晶素子のコントラスト比(電圧無印加時透過率/電圧印加時透過率)を、分光光度測定器(島津製作所社製、UV−2400)を用いて測定した。なお、100Hz、20Vp−pの電圧を印加した。
【0225】
【表5】

【0226】
表5から明らかな様に、本発明の液晶素子は、表示コントラスト比が高くなることがわかる。このことから、本発明のカイラル剤を用いることで、液晶組成物のオーダーパラメーターが高くなることが確認できた。
【0227】
[実施例5]
(ゲストホスト液晶組成物の調製)
ピッチ長が8.6μmとなるように、本発明のカイラル剤の添加量を調節する他は、実施例4と同様にして、ゲストホスト液晶組成物の調製をおこなった。
【0228】
二色性色素として(1−8)を用いる他は、上記と同様にして、ゲストホスト液晶組成物(色素含率3.0質量%〜3.5質量%)を調製した。
【0229】
(ゲストホスト液晶素子の作製)
上記のゲストホスト液晶組成物を用い、実施例4と同様にして液晶素子を作製した。
【0230】
比較として、市販のカイラル剤R−811、R−1011(Merck社製)、CNL−617L、CN(ADEKA製)を用い、ピッチ長をホメオトロピック配向を維持できる長さにする以外は、上記と同様にして、液晶素子を作製した。
【0231】
<コントラスト比の評価>
実施例4と同様にしておこなった。
【0232】
【表6】

【0233】
【表7】

【0234】
表6〜表7から明らかな様に、本発明の液晶素子は、表示コントラスト比が高くなることがわかる。このことから、本発明のカイラル剤を用いることで、液晶組成物のオーダーパラメーターが高くなり、かつホメオトロピック配向を維持できる限界らせんピッチ長Pが短くなることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶と、
剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤と、
を含有することを特徴とする液晶組成物。
【化1】


〔一般式(1)中、*1は前記光学活性化合物との結合位置を示し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数である。e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが2以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記剛直な光学活性化合物が、縮環構造を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記剛直な光学活性化合物が、光学活性部位を2点以上有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記剛直な光学活性化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化2】


〔一般式(2)中、R〜Rは置換基を表す。R〜Rのうち、少なくとも1つは前記一般式(1)における液晶性基を表し、該液晶性基が連結する炭素原子は不斉炭素である。A〜Aは炭素原子を表し、A−A、A−Aは、単結合又は二重結合を表す。〕
【請求項5】
前記カイラル剤が、下記一般式(3)で表されるカイラル剤であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化3】


〔一般式(3)中、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数であり、e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが3以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項6】
前記一般式(3)で表されるカイラル剤が、下記一般式(4)又は一般式(5)で表されるカイラル剤であることを特徴とする請求項5に記載の液晶組成物。
【化4】


〔一般式(4)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。〕
【化5】


〔一般式(5)中、D、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiは、一般式(3)におけるD、D、L、L、T、e、f、m、k、gおよびiとそれぞれ同義である。〕
【請求項7】
前記液晶が、ネマチック液晶であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
更に、少なくとも1種の二色性色素を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
前記二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(6)で表される置換基を有する色素であることを特徴とする請求項8に記載の液晶組成物。
一般式(6): −(Het)−((B−(Q−(B−C
〔一般式(6)中、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表し、jは0又は1を表し、p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、(p+r)×nは3〜10の整数であり、p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項10】
前記液晶が、二周波駆動性を示すことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、
前記一対の電極の間に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶層と、
を有する液晶素子。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶素子を備える反射型表示材料。
【請求項13】
請求項11に記載の液晶素子を備える調光材料。
【請求項14】
剛直な光学活性化合物に下記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤を、ホスト液晶に添加することで、液晶組成物のオーダーパラメーターを高くすることを特徴とする液晶組成物の調製方法。
【化6】


〔一般式(1)中、*1は光学活性化合物との結合位置を示し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数である。e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の時、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上の時、2以上のLは異なる連結基を示す。(g+i)×tは、1〜40の整数である。tが2以上の時、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項15】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極の間に前記液晶組成物を含有する液晶層を有する液晶素子に適用する場合に、
前記一対の電極の間の距離をd、液晶組成物のヘリカルピッチをPとしたときに、0.1≦d/P≦3となるように前記一般式(1)で表される液晶性基が結合したカイラル剤を添加することを特徴とする請求項14に記載の液晶組成物の調製方法。

【公開番号】特開2008−291113(P2008−291113A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138062(P2007−138062)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】