説明

液晶組成物、液晶素子および液晶表示装置

【課題】オーダーパラメーターが高く、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を有する液晶組成物、液晶素子および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】
少なくとも1種の液晶性化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物とを含む液晶組成物であって、該二色性スクアリリウム化合物のアスペクト比が2.3以上である液晶組成物、この液晶組成物を用いた液晶素子および液晶表示装置である。
一般式(1)中、A及びAはそれぞれ独立に、芳香族もしくは脂肪族の置換もしくは無置換の、縮環していてもよい炭化水素環基又は複素環基を表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲスト−ホスト型液晶表示装置に好ましく用いられる液晶組成物、それを利用した液晶素子、および液晶表示装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子(液晶素子)は、すでに多くの方式が提案されており、中でもゲストホスト型液晶表示素子は、明るい表示が可能であって、反射型に適した液晶表示素子として期待されている。ゲストホスト型液晶表示素子は、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封入し、これに電場を与え、電場による液晶の動きに合わせて、二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることによって表示する方式である。
【0003】
ゲストホスト型液晶素子に用いられる二色性色素には、適切な吸収特性、高いオーダーパラメーター、ホスト液晶に対する高い溶解性および耐久性などの性能が要求されるが、二色性色素は、十分に高いオーダーパラメーターを与えるものは少なく、その結果、ゲストホスト方式の液晶表示素子における表示コントラストの低下を招くという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、二色性色素として剛直な直線状の構造を有するアゾ色素および長波長領域(550〜800nm)において吸収を示すアントラキノン色素の少なくともいずれかを使用することで、比較的高いオーダーパラメーターを与えるゲストホスト型液晶素子が提案されている(特許文献1〜3)。
しかしながら、これらの色素は、ホスト液晶、とりわけ近年多く使用されているフッ素系の液晶に対する溶解性が低く、液晶表示素子に用いた場合に十分に高い光学濃度を与えることができないという問題があった。
また、二色性アゾ色素は、一般にイエロー〜マゼンダの色調を示すため、長波長領域において十分な吸収を得られないという問題があった。アゾ色素の吸収の長波長化は、置換基や複素環の導入によって達成することができるが、この場合、直線状の構造とすることが困難となり高い二色比を得られないという問題もあった。同様に、アントラキノン色素も二色比が不十分であるという問題もあった。
【0005】
このように、オーダーパラメーターが高く、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を有する液晶組成物、液晶セルおよび液晶表示装置の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−64886号公報
【特許文献2】特開平2−178390号公報
【特許文献3】特開平10−260386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、オーダーパラメーターが高く、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を有する液晶組成物、液晶セルおよび液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、アスペクト比が2.3以上の二色性スクアリリウム化合物を二色性色素として用いることで、従前では達成が困難であった、オーダーパラメーターが高く、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を有する液晶組成物、液晶素子および液晶表示装置を安定的に製造できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 少なくとも1種の液晶性化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物とを含む液晶組成物であって、該二色性スクアリリウム化合物のアスペクト比が2.3以上であることを特徴とする液晶組成物。
【化1】

(一般式(1)中、A及びAはそれぞれ独立に、芳香族もしくは脂肪族の置換もしくは無置換の、縮環していてもよい炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
[2] 前記二色性スクアリリウム化合物が、550〜800nmの波長領域に少なくとも一つの極大吸収を有することを特徴とする[1]の液晶組成物。
[3] 前記二色性スクアリリウム化合物の分子幅が、0.9nm以下であることを特徴とする[1]又は[2]の液晶組成物。
[4] 下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、又は下記一般式(IV)で表わされるネマチック液晶性を示す二色性アゾ色素の少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物。
【化2】

(一般式(I)中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化3】

(一般式(II)中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表す。但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ独立に、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表す。)
【化4】

(一般式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化5】

(一般式(III)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は、2価の連結基を表し;A31は、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化6】

(一般式(IV)中、R41及びR42はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
[5] 前記一般式(1)中のAもしくはAの少なくともいずれかが、下記一般式(A−1a)で表されることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶組成物。
【化7】

(一般式(A−1a)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はメチル基を表し;Rc1およびRc2それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基を表わす。)
[6] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の液晶組成物を液晶層に含むことを特徴とする液晶素子。
[7] ゲスト−ホストモード液晶素子であることを特徴とする[6]の液晶素子。
[8] [6]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶素子を有することを特徴とする液晶表示装置。
[9] 前記液晶素子が、ゲスト−ホストモード液晶素子であることを特徴とする[8]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オーダーパラメーターが高く、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を有する液晶組成物、液晶素子および液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の液晶組成物、液晶素子および液晶表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
(液晶組成物)
本発明の液晶組成物は、下記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物と、液晶性化合物(ホスト液晶)とを含み、必要に応じてその他の成分を含む。
以下、本発明の液晶組成物の各成分について説明する。
【0012】
二色性スクアリリウム化合物(二色性スクアリリウム色素ともいう。)は、アスペクト比が2.3以上であり、下記一般式(1)で表される。
【化8】

一般式(1)中、A及びAはそれぞれ独立に、芳香族もしくは脂肪族の、置換もしくは無置換の、縮環していてもよい炭化水素環基又は複素環基を表わす。
【0013】
一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物は、ドナー(D)−アクセプター(A)−ドナー(D)の分子内電荷移動型色素であるために長波長化し、550〜800nmの波長領域に極大吸収を示すことが好ましい。
極大吸収の波長は、より好ましくは600〜800nmであり、特に好ましくは650〜800nmであり、最も好ましくは650〜750nmである。
該吸収の遷移モーメントの方向は分子長軸に平行であるため、前記一般式(1)で表される化合物は、シアンの色調を示す二色性色素として好適に用いることができる。ここで分子長軸とは、化合物中で原子間距離が最大となる2つの原子を結ぶ軸をいう。
【0014】
高いオーダーパラメーターSを得るためには、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物は、剛直な直線状の構造である必要がある。具体的には、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物のアスペクト比は、2.3以上であり、好ましくは2.5以上であり、特に好ましくは2.6以上である。分子のアスペクト比を上記範囲とすることで、良好な一軸配向が達成され、二色比の高いゲスト−ホスト型液晶表示装置を得ることができる。
ここで、オーダーパラメーターSは、熱的に揺らぎを受ける分子の分子長軸が、ダイレクターに対して時間平均でずれ角θ傾いているとき、S=(3cos2θ−1)/2で定義される。
オーダーパラメーターSが0.0の場合、分子は全く秩序がない状態であることを示し、オーダーパラメーターSが1.0の場合、分子は分子長軸がダイレクターの方向に一致して配列している状態にあることを示す。
前記アスペクト比は、分子軌道計算により分子長、分子幅を算出することにより前記アスペクト比を算出することができる。例えば、分子軌道計算ソフトMOPAC(Version 6.03)およびMOS−F(Version 5.0A)を用いて分子軌道計算を行い、分子長、分子幅を算出することにより前記アスペクト比を算出することができる。
【0015】
また、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物の分子長は、好ましくは1.7nm(17Å)以上であり、より好ましくは1.9nm(19Å)以上であり、さらに好ましくは2.1nm(21Å)以上である。
さらに、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物の分子幅は、好ましくは0.9nm(9Å)以下であり、より好ましくは0.85nm(8.5Å)以下である。
ここで分子長とは、化合物中で最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。アスペクト比とは分子長/分子幅であり、分子幅とは、分子長軸に垂直な面に各原子を投影したときの最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。
【0016】
前記一般式(1)中のAおよびAがそれぞれ表す炭化水素環基は、3〜6員の単環又は縮合環の基が好ましい。前記炭化水素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。前記炭化水素環を構成している炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは、水素原子又はC1−10のアルキル基)であってもよい。また、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、後述する置換基群Gから選択することができる。前記炭化水素環基としては、以下の炭化水素環基が挙げられるが、本発明は、下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0017】
【化9】

【0018】
式A−1〜A−5中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができ、ホスト液晶への溶解性や波長調整のため、R〜Rは、少なくとも一つは置換基であるのが好ましい。該置換基としては、アスペクト比の観点から分子幅を広げない置換基が好ましく、例えば、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等)、炭素数2〜4のアシルオキシ基、炭素数1〜4のスルホニルオキシ基、炭素数2〜4のカルバモイルオキシ基、無置換のアミノ基又は炭素数1〜8のアミノ基、炭素数1〜4のカルバモイル基、無置換のスルファモイル基、炭素数1〜4のスルファモイル基、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0019】
式A−1としては、Rは、−N(Rc1)(Rc2)であり、Rc1及びRc2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R及びRは水素原子が好ましい。即ち、下記式A−1aで表される基が好ましい。
式A−2としては、Rはヒドロキシ基が好ましい。即ち、下記式A−2aで表される基が好ましい。
式A−3としては、Rはヒドロキシ基であり、R及びRは水素原子が好ましい。即ち、下記式A−3aで表される基が好ましい。
式A−4としては、Rがヒドロキシ基であり、R、R、R及びRは水素原子が好ましい。即ち、下記式A−4aで表される基が好ましい。
式A−5としては、Rはヒドロキシ基が好ましい。即ち、下記式A−5aで表される基が好ましい。
【0020】
【化10】

【0021】
式A−1a中、Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし;RおよびRは、前記式A−1中と同義であるが、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はメチル基が好ましい。式A−1a中、Rc1及びRc2が、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、互いに連結して、含窒素複素環基を形成することも、分子幅を広げることなく分子長を上げることができ、その結果としてアスペクト比を高くできるため、好ましい態様の一つである。また、Rc1及びRc2の少なくとも一方が、式A−1a中のベンゼン環の炭素原子と結合して、縮合環を形成していてもよい。例えば、以下の式A−1b及びA−1cであってもよい。
上記式A−2a〜A−5a中の記号は、前記式A−2〜A−5中のそれぞれと同義である。アルキル基の置換基の例としては、後述の置換基群Gが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0022】
【化11】

【0023】
式A−1bおよび式A−1c中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、Rは、水素原子又は置換基を表す。該置換基の例には、後述の置換基群Gが含まれる。Rは、ベンゼン環を1以上含む置換基が好ましい。
【0024】
前記炭化水素環基としては、式A−1、式A−2、及び式A−4で表される炭化水素環基が好ましい。より好ましくは、式A−1a、式A−2a及び式A−4aである。特に好ましくは、式A−1及び式A−2で表される炭化水素環基であり、より好ましくは式A−1a及び式A−2aである。さらに好ましくは、式A−1aであり、中でも、R及びRが水素原子又は水酸基を表わす式A−1aで表される炭化水素環基である。
【0025】
前記一般式(1)中のAおよびAがそれぞれ表す複素環基は、5〜20員の単環又は縮合環の基であるのが好ましい。前記複素環基は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つを環構成原子として有する。また、前記環構成原子としては、1以上の炭素原子を含んでいてもよく、複素環を構成しているヘテロ原子又は炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、複素環を構成している1以上の硫黄原子は、S=O又はS(O)であってもよく、また、例えば、複素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは、水素原子又はC1−10のアルキル基)であってもよい。また、前記複素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。前記複素環基を構成している1以上のヘテロ原子および炭素原子のいずれかは、置換基を有していてもよく、置換基の具体例については、後述する置換基群Gから選択することができる。前記複素環基としては、以下の複素環基が挙げられるが、下記の具体例に限定されるものではない。
【0026】
【化12】

【0027】
【化13】

【0028】
前記式中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができる。
前記式A−6〜A−43中、Rcは、ヒドロキシ基(OH)又はチオール基(SH)が好ましい。
【0029】
前記複素環基としては、式A−6、式A−7、式A−8、式A−9、式A−10、式A−11、式A−14、式A−24、式A−34、式A−37及び式A−39で示される複素環である。特に好ましくは、式A−6、式A−7、式A−8、式A−9、式A−11、式A−14、式A−34及び式A−39で示される複素環基が好ましい。これらの式中、Rcはヒドロキシ基(OH)又はチオール基(SH)がより好ましい。
【0030】
前記一般式(1)中、A及びAの少なくとも一方が、式A−1がより好ましく、下記一般式(1’)で表されるように式A−1aが特に好ましい。
【化14】

【0031】
一般式(1’)で表されるスクアリリウム骨格は、分子長が1.16nm(11.6Å)、分子幅が0.76nm(7.6Å)と、剛直で直線性の高い部分構造であるため、Aによらず高いアスペクト比が期待でき、したがって、高い二色性が実現できる。
は、特に好ましくは、分子幅を広げることなく波長調整可能な炭化水素環基又は複素環基であり、式A−1a、式A−2a、式A−4a、式A−6、式A−7、式A−8、式A−9、式A−11、式A−14、式A−39であり、最も好ましくは、式A−1a、式A−2a、式A−4a、式A−7、式A−8、式A−11、式A−14である。
【0032】
前記炭化水素環基及び複素環基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、下記の置換基群Gが含まれる。
置換基群G:
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メトキシエチル、エトキシカルボニルエチル、シアノエチル、ジエチルアミノエチル、ヒドロキシエチル、クロロエチル、アセトキシエチル、トリフルオロメチル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアラルキル基(例、ベンジル、カルボキシベンジル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル等);
【0033】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、クロロアセチル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルまたはアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、メトキシエトキシ等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等);炭素数6〜10のアリールチオ基(例、フェニルチオ等);
【0034】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルキシ、ベンゾイルオキシ、クロロアセチルオキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等);無置換のアミノ基又は炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、メチルスルファモイルアミノ、フェニルスルファモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等);
【0035】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル等);無置換のスルファモイル基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等);ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等);水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基;ヘテロ環基(例、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドレニン、ピリジン、スルホラン、フラン、チオフェン、ピラゾール、ピロール、クロマン、クマリンなど)。
【0036】
前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物としては、以下の例示化合物が挙げられるが、本発明は下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】
【化18】

【0041】
一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物の合成方法としては、例えば、Journal of Chemical Society, Perkin Trans. 1(2000), 599−603、Synthesis(2002),No3, 413−417等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0042】
一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物は単独で用いてもよいし、或いは二種以上の二色性スクアリリウム化合物を併用してもよい。また、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物とこれら以外の色素を併用してもよい。前記これら以外の色素としては、二色性色素が好ましく、前記これら以外の色素としては、例えば、アゾ系色素、シアニン系色素、アゾ金属錯体、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、トリフェニルメタン系色素、トリアリルメタン系色素等が挙げられる。
【0043】
前記アゾ色素としては、下記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素が挙げられる。前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物と下記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素とを併用すると、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物の配向性が改善される。
【0044】
【化19】

【0045】
一般式(I)中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
上記一般式(I)において、R11〜R14で表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0047】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜15、特に好ましくは2〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0048】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、アゾ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0049】
11〜R14で表される基としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0050】
15及びR16で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R15及びR16で表されるアルキル基の置換基としては、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。R15又はR16がアルキル基を表す場合、R12又はR14と連結して環構造を形成してもよい。R15及びR16は、好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0051】
11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
該フェニル基又は該ナフチル基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0052】
該フェニル基又は該ナフチル基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。フェニル基についてより好ましくは、Lに対してパラ位に1個置換基を有していることである。
【0053】
芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
【0054】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がより好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がさらに好ましい。
【0055】
11は、特に好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基である。
【0056】
11は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は2価の芳香族複素環基を表す。nは1〜4を表し、nが2以上のとき、複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0057】
該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、及びシアノ基が挙げられる。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子がより好ましく、メチル基、又はハロゲン原子がさらに好ましい。
【0058】
該芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアジアゾール基、フタルイミド基、チエノチアゾール基等が挙げられる。中でも、チエノチアゾール基が特に好ましい。
該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、及びエチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;無置換あるいはメチルアミノ基等のアミノ基;アセチルアミノ基、アシルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0059】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素としては、以下のアゾ色素が挙げられるが、下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
【化23】

【0064】
【化24】

【0065】
【化25】

【0066】
【化26】

【0067】
【化27】

【0068】
【化28】

【0069】
【化29】

【0070】
【化30】

【0071】
【化31】

【0072】
【化32】

【0073】
【化33】

【0074】
【化34】

【0075】
【化35】

【0076】
式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表す。L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよい。Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
【0077】
中でも、R21及びR22の一方が、水素原子又はC〜C程度の短鎖の置換基であり、R21及びR22の他方が、C〜C30程度の長鎖の置換基であると、溶解性がより改善されるので好ましい。
【0078】
21及びR22がそれぞれ表すアルキル基としては、C〜C30のアルキル基が挙げられる。上記短鎖のアルキル基の例としては、C〜Cが好ましく、C〜Cがより好ましい。一方、上記長鎖のアルキル基としては、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0079】
21及びR22がそれぞれ表すアルコキシ基としては、C〜C30のアルコキシ基が挙げられる。上記短鎖のアルコキシ基の例としては、C〜Cが好ましく、C〜Cがより好ましい。一方、上記長鎖のアルコキシ基としては、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0080】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、L22が表すアルキレン基は、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。前記アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、及び−SONR−(Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)からなる2価基の群から選択された1以上によって置換されていてもよい。勿論、前記2価基の群から選択される2以上の基によって置換されていてもよい。また、L22の末端であって、Yと結合するCHが、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。また、L22の先端であって、フェニル基と結合するCHが、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。
【0081】
特に、溶解性向上の観点では、L22がアルキレンオキシ基である、又はアルキレンオキシ基を含んでいるのが好ましく、L22が、−(OCHCH−(但し、pは3以上の数を表し、3〜10であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい)で表されるポリエチレンオキシ基であるか、又はポリエチレンオキシ基を含んでいるのがさらに好ましい。
以下に、−L22−の例を示すが、以下の例に限定されるものではない。下記式中、qは1以上の数であり、1〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがより好ましい。また、rは5〜30であり、好ましくは10〜30であり、より好ましくは10〜20である。
−(OCHCH
−(OCHCH−O−(CH
−(OCHCH−OC(=O)−(CH
−(OCHCH−OC(=O)NH−(CH
−O(CH
−(CH
【0082】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくはC〜C10、より好ましくはC〜Cのアルコキシ基である)、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
22とYとの組合せにより、−L22−Yの末端は、例えばカルボキシル基やアミノ基、アンモニウム基などの分子間相互作用を強める置換基となり得るし、またスルホニルオキシ基、ハロゲン原子等の脱離基にもなり得る。
また、−L22−Yの末端は、架橋性基、重合性基など、他分子と共有結合を形成する置換基であってもよく、例えば、−O−C(=O)CH=CH、及び−O−C(=O)C(CH)=CH等の重合性基であってもよい。
【0083】
前記一般式(II)中、L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表す。中でも、ビニレン基が好ましい。
【0084】
前記一般式(II)中、Dyeはそれぞれ独立に、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表す。
【0085】
【化36】

【0086】
一般式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0087】
21で表されるアルキル基は、好ましくはC〜C12、より好ましくは、C〜Cのアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。アルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0088】
21で表されるアルコキシは、好ましくはC〜C20、より好ましくはC〜C10、さらに好ましくはC〜Cのアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンタオキシ基、ヘキサオキシ基、ヘプタオキシ基、オクタオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0089】
21で表される置換もしくは無置換のアミノ基は、好ましくはC〜C20、より好ましくはC10、さらに好ましくはC〜Cのアミノ基である。具体的には、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチル・ヘキシルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる。
【0090】
中でも、X21はアルコキシ基であるのが好ましい。
【0091】
Ar21で表される芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基の例には、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、ピリジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、キノリン環基、チオフェン環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、チエノチアゾール環基などが含まれる。中でも、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、チエノチアゾール環基が好ましく、1,4−フェニレン基が最も好ましい。
【0092】
Ar21が有してもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基などが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。
【0093】
nは、1又は2であるのが好ましく、1がより好ましい。
【0094】
一般式(IIa)で表されるアゾ色素としては、以下のアゾ色素が挙げられるが、下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0095】
【化37】

【0096】
【化38】

【0097】
【化39】

【0098】
【化40】

【0099】
一般式(III)中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0100】
31〜R35で表される置換基の例としては、前記式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0101】
前記一般式(III)において、R36及びR37で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R36及びR37で表されるアルキル基の置換基としては、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。R36及びR37がアルキル基を表す場合、互いに連結して環構造を形成してもよい。R36又はR37がアルキル基を表す場合、それぞれR32又はR34と連結して環構造を形成してもよい。
36及びR37で表される基としては、特に好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0102】
前記一般式(III)において、Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン環基を表す。
31で表される基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R31〜R35で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0103】
該芳香族炭化水素基、該芳香族複素環基又は該シクロヘキサン環基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。Q31がフェニル基である場合は、L31に対してパラ位に1個置換基を有しているのが好ましく、シクロヘキサン環基である場合は、L31に対して4位にトランス配置となるように1個置換基を有しているのが好ましい。
【0104】
31で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が特に好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が最も好ましい。
【0105】
31で表される基としては、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チエノチアゾリル基又はシクロヘキサン環基であり、より好ましくは、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基又はシクロヘキサン環基である。
【0106】
前記一般式(III)において、L31で表される連結基としては、単結合、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基などが挙げられる)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エチニレン基などが挙げられる)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレンオキシ基などが挙げられる)、アミド基、エーテル基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、又はこれらを2つ以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0107】
31で表される基としては、特に好ましくは単結合、アミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、イミノ基、アゾ基又はアゾキシ基であり、よりさらに好ましくはアゾ基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、又はイミノ基である。
【0108】
前記一般式(III)において、A31は酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
【0109】
前記一般式(III)で表される化合物は、置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は分子末端に位置するのが好ましく、即ち、式(III)中では、R36及び/又はR37の置換基として、並びにQの置換基として、存在するのが好ましい。
【0110】
一般式(III)で表されるアゾ色素としては、以下のアゾ色素が挙げられるが、下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0111】
【化41】

【0112】
【化42】

【0113】
【化43】

【0114】
【化44】

【0115】
【化45】

【0116】
【化46】

【0117】
【化47】

【0118】
【化48】

【0119】
【化49】

【0120】
一般式(IV)中、R41及びR42はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。
【0121】
一般式(IV)において、R41及びR42がそれぞれ表す置換基の例としては、前記一般式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。R41及びR42としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基であり、よりさらに好ましくは水素原子、メチル基、シアノ基である。
【0122】
41とR42は互いに連結して環を形成することも好ましい。特に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を形成することが好ましい。芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
41とR42が互いに連結して形成する環状基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、より好ましくはベンゼン環又はピリジン環であり、もっとも好ましくはピリジン環である。
41とR42は互いに連結して形成する環状基は置換基を有していてもよく、その範囲はR、Rで表される基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0123】
41及びR42がそれぞれ表すアルキル基としては、C〜C30のアルキル基が挙げられる。上記短鎖のアルキル基の例としては、C〜Cが好ましく、C〜Cがより好ましい。一方、上記長鎖のアルキル基としては、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0124】
43及びR44で表されるアルキル基の範囲は前記R41、R42で表されるアルキル基と同様である。
【0125】
前記一般式(IV)で表されるアゾ色素としては、以下のアゾ色素が挙げられるが、下記の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0126】
【化50】

【0127】
【化51】

【0128】
【化52】

【0129】
【化53】

【0130】
【化54】

【0131】
【化55】

【0132】
【化56】

【0133】
【化57】

【0134】
【化58】

【0135】
【化59】

【0136】
【化60】

【0137】
【化61】

【0138】
上記以外にも、前記二色性スクアリリウム化合物と併用可能な色素としては、例えば、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に記載の色素を用いることができる。
【0139】
本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素の色調については、特に制限はなく、用途に応じて、種々の色調の組成物として調製することができる。例えば、本発明の液晶組成物を黒色表示のために用いる場合には、可視域全体の光を吸収することが必要であり、上述したように複数の二色性色素を混合して用いるのが好ましい。混合する色素の割合について特に制限はなく、所望の組成物の色調と用いる色素の色調に応じて適宜選ばれる。
【0140】
前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物の含有量としては、特に制限はないが、ホスト液晶の含有量に対して0.05〜15質量%であることが好ましく、0.1〜6質量%であることが特に好ましい。
また、一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される色素の占める割合は、各々0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることが特に好ましい。
【0141】
前記二色性スクアリリウム化合物は、ホスト液晶に対する溶解度が高く、かつ液晶組成物のオーダーパラメーターの向上に寄与する。特に、TFT駆動に適しているフッ素系ホスト液晶に対する溶解度が高いという特徴を有している。
また、前記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物をゲストホスト型液晶表示素子の二色性色素として機能させた場合に、表示コントラストの向上に寄与する。
【0142】
液晶性化合物(ホスト液晶ともいう。)は、前記二色性スクアリリウム化合物と共存しうるものであれば特に制限はないが、例えば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。
その具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。
また、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることもできる。
本発明の液晶組成物としては、TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもでき、例えば、MLC−6267,6284,6287,6288,6406,6422,6423,6425,6435,6437,7700,7800,9000,9100,9200,9300,10000,12200,ZLI−4692(Merck(メルク社製)),LIXON 5036XX,5037XX,5039XX,5040XX,5041XX(Chisso(チッソ社製)などが挙げられる。
【0143】
本発明の液晶組成物には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。
また、カイラル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を含有させてもよい。そのような添加剤は、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤などが挙げられる。
【0144】
前記ホスト液晶の含有量としては、特に制限はないが、75〜99.9質量%が好ましく、89〜99.7質量%が特に好ましい。
【0145】
本発明の液晶組成物は、ホスト液晶へ二色性スクアリリウム化合物を溶解させることによって調製することができる。
前記溶解の方法としては、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用して行うことができる。
【0146】
(液晶素子、液晶表示装置)
本発明の液晶素子(液晶セル)は、一対の電極基板間と、一対の電極基板に挟持される本発明の液晶組成物を含有する液晶層とから構成することができる。また、本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶素子を有することを特徴とする。
【0147】
前記電極基板は、通常ガラスあるいはプラスチックからなる基板上に、電極層を形成したものを用いることができる。
プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
基板については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。
基板上に形成される電極層は、好ましくは透明電極層である。例えば、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ等から形成することができる。
透明電極については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0148】
前記液晶層と接する基板表面には、配向処理を施した層(配向膜)を形成することが好ましい。
前記配向処理としては、例えば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。
配向膜については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0149】
本発明の液晶素子は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μmの間隔で対向させ、基板間に形成された空間に本発明の液晶組成物を注入することにより作製することができる。
前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。
【0150】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。
駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載されていて、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0151】
本発明の液晶素子は、液晶ディスプレイに利用することができる。
特にその方式については制限されないが、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている(1)ホモジニアス配向、(2)ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移型)として(3)フォーカルコニック配向および(4)ホメオトロピック配向、(5)Super Twisted Nematic(STN)方式との組合せ、(6)強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、「反射型カラーLCD総合技術」(内田龍男監修、シーエムシー社、1999年)の第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、(1)Heilmeier型GHモード、(2)1/4波長板型GHモード、(3)2層型GHモード、(4)相転移型GHモード、(5)高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
【0152】
さらに、本発明の液晶素子は、特開平10−67990号、同10−239702号、同10−133226号、同10−339881号、同11−52411号、同11−64880号、特開2000−221538号などの各公報に記載されている積層型GHモード、特開平11−24090号公報などに記載されているマイクロカプセルを利用したGHモードの液晶ディスプレイに用いることができる。
さらに、特開平6−235931号、同6−235940号、同6−265859号、同7−56174号、同9−146124号、同9−197388号、同10−23346号、同10−31207号、同10−31216号、同10−31231号、同10−31232号、同10−31233号、同10−31234号、同10−82986号、同10−90674号、同10−111513号、同10−111523号、同10−123509号、同10−123510号、同10−206851号、同10−253993号、同10−268300号、同11−149252号、特開2000−2874号などの各公報に記載されている反射型液晶ディスプレイに用いることができる。
また、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号などの各公報に記載されている高分子分散液晶型GHモードに用いることができる。
その他、本発明の液晶素子は、空間変調素子、光または熱書き込み型液晶ディスプレイなどにも適用することができる。
【実施例】
【0153】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は、以下の具体例に制限されるものではない。
なお、分子長、分子幅、及びアスペクト比は、特に断りがない限りMOPAC(Version 6.03)およびMOS−F(Version 5.0A)による分子軌道計算より算出した。
【0154】
(実施例1)
下記構造式で表される二色性スクアリリウム化合物VI−2(極大吸収波長(クロロホルム溶液):644nm、分子長:2.10nm(21.0Å)、分子幅:0.870nm(8.70Å)、アスペクト比:2.40)0.08質量%を市販のフッ素系液晶(商品名「ZLI−2806」、E. Merck社製)99.92重量%と混合し、80℃に加熱撹拌溶解させた後、濾過して液晶組成物を得た。
【0155】
【化62】

【0156】
得られた液晶組成物を市販の液晶セル用基板(E.H.C.社製)に注入し、液晶セルHS1を作製した。用いた市販の液晶セル用基板は、ITO透明電極層およびポリイミド配向膜(ラビング処理によりパラレル配向処理付き)が形成されたガラス板(厚さ0.7mm)であり、セルギャップ10μm、エポキシ樹脂シール付きであった。
作製した液晶セルに、ラビング方向と平行な偏光および垂直な偏光を各々照射し、吸収スペクトル(A‖およびA⊥)をUV3100(島津製作所製、可視吸収スペクトル計)にて測定した。
極大吸収波長におけるA‖およびA⊥から、オーダーパラメーターSを下式1に従い求めた。
求めたオーダーパラメーターS、λmax(nm)を表1に示す。

S = (A‖−A⊥)/(A‖+2・A⊥) 式1
【0157】
(実施例2)
実施例1において、二色性スクアリリウム化合物VI−2を下記構造式で表される二色性スクアリリウム化合物VI−4(極大吸収波長(クロロホルム溶液):633nm、分子長:2.53nm(25.3Å)、分子幅:0.870nm(8.70Å)、アスペクト比:2.90)に変更した以外は実施例1と同一の方法にて、液晶セルHS2を作製した。実施例1と同様に、オーダーパラメーターSおよびλmax(nm)を求めた。
【0158】
【化63】

【0159】
(実施例3)
実施例1において、二色性スクアリリウム化合物VI−2を下記構造式で表される二色性スクアリリウム化合物VI−5(極大吸収波長(クロロホルム溶液):636nm、分子長:2.14nm(21.4Å)、分子幅:0.801nm(8.01Å)、アスペクト比:2.67)に変更した以外は実施例1と同一の方法にて、液晶セルHS3を作製した。実施例1と同様に、オーダーパラメーターSおよびλmax(nm)を求めた。
【0160】
【化64】

【0161】
(実施例4)
実施例1において、二色性スクアリリウム化合物VI−2を下記構造式で表される二色性スクアリリウム化合物VI−25(極大吸収波長(クロロホルム溶液):630nm、分子長:1.99nm(19.9Å)、分子幅:0.804nm(8.04Å)、アスペクト比:2.48)に変更した以外は実施例1と同一の方法にて、液晶セルHS4を作製した。実施例1と同様に、オーダーパラメーターSおよびλmax(nm)を求めた。
【0162】
【化65】

【0163】
(比較例1)
実施例1において、二色性スクアリリウム化合物VI−2を下記構造式で表されるシアンアゾ色素A3−1に変更した以外は実施例1と同一の方法にて、液晶セルHT1を作製した。実施例1と同様に、オーダーパラメーターSおよびλmax(nm)を求めた。
【0164】
【化66】

【0165】
(比較例2)
実施例1において、二色性スクアリリウム化合物VI−2を下記構造式で表される特開平5−27270号公報の実施例3に記載のスクアリリウム化合物(分子長:2.24nm(22.4Å)、分子幅:1.003nm(10.03Å)、アスペクト比:2.24)に変更した以外は実施例1と同一の方法にて、液晶セルHT2を作製した。実施例1と同様に、オーダーパラメーターSおよびλmax(nm)を求めた。
【0166】
【化67】

【0167】
【表1】

【0168】
表1から、実施例1〜4のアスペクト比が2.3以上である二色性スクアリリウム化合物を含む液晶組成物を用いた液晶セルは高いオーダーパラメーターSを有しており、且つ可視光域の長波長領域(アゾ系シアン色素A3−1より長波長域)に吸収域を有するシアン色素として適する二色性色素であることが理解できる。
一方、スクアリリウム骨格を有する色素であっても、分子幅が1nm(10Å)以上と大きく、そのためアスペクト比が2.3未満である比較例2は、オーダーパラメーターSが実施例1〜4と比較して顕著に低いことが理解できる。
【0169】
(実施例5)
下記構造式で表されるイエローアゾ色素A2−3 0.8質量%、下記構造式で表されるマゼンタアゾ色素A−46 0.8質量%、下記構造式で表されるシアンアゾ色素A3−1 0.8質量%、及び前記構造式で表される二色性スクアリリウム化合物VI−4 0.2質量%を市販のフッ素系液晶(商品名「ZLI−2806」、E. Merck社製)97.6質量%と混合し、80℃に加熱撹拌溶解させた後、濾過して液晶組成物を得た。
得られた液晶組成物を市販の液晶セル用基板(E.H.C.社製)に注入し、液晶セルHS5を作製した。用いた市販の液晶セル用基板は、ITO透明電極層およびポリイミド配向膜(ラビング処理によりパラレル配向処理付き)が形成されたガラス板(厚さ0.7mm)であり、セルギャップ10μm、エポキシ樹脂シール付きであった。
作製した液晶セルに、ラビング方向と平行な偏光および垂直な偏光を各々照射し、吸収スペクトル(A‖およびA⊥)をUV3100(島津製作所製、可視吸収スペクトル計)にて測定した。
測定波長450nm,550nm,650nmにおけるA‖およびA⊥から、各測定波長でのオーダーパラメーターSを前記式1に従い求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0170】
【化68】

【0171】
【化69】

【0172】
【化70】

【0173】
(実施例6)
実施例5において、イエローアゾ色素A2−3を下記構造式で表されるイエローアゾ色素C−26に変更し、マゼンタアゾ色素A−46を下記構造式で表されるマゼンタアゾ色素A−16に変更し、シアンアゾ色素A3−1を添加しなかった以外は、実施例5と同一の方法にて液晶セルHS6を作製した。実施例5と同様に、オーダーパラメーターSおよび各波長での吸光度を求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0174】
【化71】

【0175】
【化72】

【0176】
(実施例7)
実施例6において、イエローアゾ色素C−26を下記構造式で表されるイエローアゾ色素C−22に変更し、マゼンタアゾ色素A−16を下記構造式で表されるマゼンタアゾ色素B−4に変更した以外は、実施例6と同一の方法にて液晶セルHS7を作製した。実施例5と同様に、オーダーパラメーターSおよび各波長での吸光度を求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0177】
【化73】

【0178】
【化74】

【0179】
(実施例8)
実施例7において、さらに上記構造式で表されるシアンアゾ色素A3−1 0.8質量%を添加した以外は、実施例7と同一の方法にて液晶セルHS8を作製した。実施例5と同様に、オーダーパラメーターSおよび各波長での吸光度を求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0180】
(実施例9)
実施例8において、シアンアゾ色素A3−1を下記構造式で表されるシアンアゾ色素A4−120に変更した以外は、実施例8と同一の方法にて液晶セルHS9を作製した。実施例5と同様に、オーダーパラメーターSおよび各波長での吸光度を求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0181】
【化75】

【0182】
(比較例3)
実施例5において、二色性スクアリリウム化合物VI−4を添加しない以外は実施例4と同一の方法にて液晶セルHT3を作製した。実施例5と同様に、オーダーパラメーターSおよび各波長での吸光度を求めた。求めたオーダーパラメーターS及び各波長での吸光度を表2に示す。
【0183】
【表2】

【0184】
表2の結果から明らかなように、本発明の二色性スクアリリウム化合物を含む液晶組成物を用いた液晶セルは広い波長領域において高いオーダーパラメーターSを有しており、かつ長波長領域に及ぶ広い吸収域を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の液晶組成物は、液晶素子の作製に広く用いることができ、特にゲストホスト方式液晶表示素子の作製に用いるのが好ましい。本発明の液晶組成物を用いて作製されたゲストホスト方式液晶表示素子は、高いオーダーパラメーター、二色比が高く、長波長領域に広い吸収域を与え、視認性にも優れる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の液晶性化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される二色性スクアリリウム化合物とを含む液晶組成物であって、該二色性スクアリリウム化合物のアスペクト比が2.3以上であることを特徴とする液晶組成物。
【化1】

(一般式(1)中、A及びAはそれぞれ独立に、芳香族もしくは脂肪族の置換もしくは無置換の、縮環していてもよい炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
【請求項2】
前記二色性スクアリリウム化合物が、550〜800nmの波長領域に少なくとも一つの極大吸収を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記二色性スクアリリウム化合物の分子幅が、0.9nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、又は下記一般式(IV)で表わされるネマチック液晶性を示す二色性アゾ色素の少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化2】

(一般式(I)中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化3】

(一般式(II)中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表す。但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ独立に、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表す。)
【化4】

(一般式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化5】

(一般式(III)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は、2価の連結基を表し;A31は、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化6】

(一般式(IV)中、R41及びR42はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
【請求項5】
前記一般式(1)中のAもしくはAの少なくともいずれかが、下記一般式(A−1a)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化7】

(一般式(A−1a)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はメチル基を表し;Rc1およびRc2それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基を表わす。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶組成物を液晶層に含むことを特徴とする液晶素子。
【請求項7】
ゲスト−ホストモード液晶素子であることを特徴とする請求項6に記載の液晶素子。
【請求項8】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の液晶素子を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶素子が、ゲスト−ホストモード液晶素子であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−57046(P2012−57046A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201269(P2010−201269)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】