説明

液晶表示パネル及びその製造方法

【課題】シール材近傍のセル厚ムラを低減することができる液晶表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】液晶表示パネルの製造方法は、一方のマザー基板11上に相互に隣接する少なくとも一対の液晶封入部12のそれぞれを区画するようにシール材13を描画するシール材描画ステップと、シール材描画ステップでシール材13を描画した一方のマザー基板11上にシール材13を挟むように他方のマザー基板14を貼り合わせると共にシール材13を基板間で押し潰す基板貼り合わせステップと、を備える。シール描画ステップにおいて、相互に隣接する一対の液晶封入部12間におけるそれぞれのシール材13の部分を重畳して描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは、一対の基板が外周部でシール材によって貼り合わされ、それらの一対の基板及びシール材で囲われた領域に液晶材料が封入されて液晶層を構成した構造を有する。この液晶層を形成する方法としては滴下法及び真空注入法が挙げられるが、いずれの方法も一方の基板上にシール材を設け、そのシール材を挟むように他方の基板を貼り合わせると共にシール材を基板間で押し潰すことを行う(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、マザー基板に複数の液晶表示パネルを作り込むことが一般に行われているが、その場合、マザー基板上に複数の液晶封入部のそれぞれを区画するようにシール材を設けることとなり、相互に隣接する液晶封入部間には、それぞれを区画するシール材の部分が2本並んで延びるように設けられる。
【特許文献1】特開2007−132985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相互に隣接する一対の液晶封入部間に間隔をおいて2本のシール材を設けた場合、特にその間隔が狭い場合、製造される液晶表示パネルにシール材近傍のセル厚ムラによる表示不良が発生し易いという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、シール材近傍のセル厚ムラを低減することができる液晶表示パネルの製造方法及びそれによって製造される液晶表示パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一方のマザー基板上に相互に隣接する少なくとも一対の液晶封入部のそれぞれを区画するようにシール材を描画するシール材描画ステップと、
上記シール材描画ステップでシール材を描画した一方のマザー基板上にシール材を挟むように他方のマザー基板を貼り合わせると共にシール材を基板間で押し潰す基板貼り合わせステップと、
を備えた液晶表示パネルの製造方法であって、
上記シール描画ステップにおいて、相互に隣接する一対の液晶封入部間におけるそれぞれのシール材の部分を重畳して描画する。
【0007】
このようにすれば、相互に隣接する一対の液晶封入部間におけるそれぞれのシール材の部分を重畳して描画することにより、製造される液晶表示パネルのシール材近傍のセル厚ムラを低減することができる。
【0008】
本発明は、上記シール描画ステップにおいて、シール材を重畳して描画する際に、相互に隣接する一対の液晶封入部のうち一方のシール材描画時のシール材使用量を他方のシール材描画時のシール材使用量よりも少なくしてもよい。
【0009】
このようにすれば、相互に隣接する一対の液晶封入部間におけるそれぞれのシール材の部分について、それらの間に間隔をおいて2本のシール材を設けた場合に比較して、シール材使用量を低減することができ、また、後の基板貼り合わせステップにおいてシール材を基板間で押し潰す際の力を低くすることができ、そのためシール材の押し潰し不足に起因したシール材近傍のセル厚ムラを低減することができる。
【0010】
また、この場合、上記シール描画ステップにおいて、シール材を重畳して描画する際に、相互に隣接する一対の液晶封入部のシール材描画時で、シール材の描画速度条件、ディスペンサヘッドのシール材の吐出圧力条件、及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップ条件を同一にすればよい。
【0011】
このようにすれば、描画条件の設定を変更することなく、後に描画する方のシール材使用量を先に描画するシール材使用量よりも少なくすることができる。
【0012】
本発明は、以上の製造方法によって製造された液晶表示パネルである。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り、本発明によれば、製造される液晶表示パネルのシール材近傍のセル厚ムラを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、マザー基板に複数の液晶表示パネルを作り込むものであり、TFTマザー基板及びCFマザー基板を作製するアレイ工程、TFTマザー基板及びCFマザー基板の一方のマザー基板11にシール材13及び液晶材料Lを設けると共に他方のマザー基板14を貼り合わせた後に個々のパネルに分断するパネル工程、並びに、各パネルを電気的に制御可能に加工するモジュール工程を備える。アレイ工程及びモジュール工程は公知のものと同様であることから、以下ではパネル工程について詳述する。
【0016】
パネル工程は、シール材描画ステップ、液晶材料滴下ステップ、基板貼り合わせステップ、及び分断ステップを有する。従って、これは滴下法により液晶材料Lを封入するものである。
【0017】
<シール材描画ステップ>
ディスペンサ方式のシールパターニング装置を用い、TFTマザー基板及びCFマザー基板のうち一方のマザー基板11上に、マトリクス状に配置される複数の液晶封入部12のそれぞれを矩形に区画するようにシール材13を描画する。そして、図1に示すように相互に隣接する一対の液晶封入部12間におけるそれぞれのシール材13の部分については重畳して描画する。このとき、一方のマザー基板11上には、図2に示すように、相互に隣接する液晶封入部12間に隙間を有さない状態にシール材13が描画される。
【0018】
このようにすれば、相互に隣接する一対の液晶封入部12間におけるそれぞれのシール材13の部分を重畳して描画することにより、製造される液晶表示パネルのシール材13近傍のセル厚ムラを低減することができ、その結果として、表示不良の発生を抑制することができる。相互に隣接する一対の液晶封入部12間に狭い間隔をおいて2本のシール材を設けた場合、基板間でそれらを押し潰したとき、それぞれが幅方向に広がり、それらが合一した後には、中央部分が外向きに或いは長さ方向に流れの向きを変えて複雑な流動挙動を示す。一方、本実施形態のように相互に隣接する一対の液晶封入部12間におけるそれぞれのシール材13の部分を重畳して描画すれば、それらの間のシール材13の基板間で押し潰したとき、それが幅方向に広がるだけの単純な流動挙動を示す。上記のシール材13近傍のセル厚ムラの低減効果は、この流動挙動の相異によるシール材13の幅のバラツキが抑えられるためのものではないかと考えられる。
【0019】
ここで、ディスペンサ方式のシールパターニング装置としては、公知のものを用いることができる。ディスペンサ方式のシールパターニング装置は、一般的には、マザー基板11を載せるテーブル、ディスペンサヘッド、ヘッド移動機構、ディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップを設定する側長機構、ディスペンサヘッド内のシール材13を加圧吐出させるための加圧吐出機構を備える。
【0020】
TFTマザー基板及びCFマザー基板は、基板本体が例えばガラス基板やアクリル樹脂等のプラスチック基板で構成されている。TFTマザー基板及びCFマザー基板は、例えば、縦横の長さが300〜2000mmであり、厚さが0.5〜0.7mmである。
【0021】
一方のマザー基板11上に設けられる液晶封入部12の数は、基板のサイズ及び製造する液晶表示パネルのサイズにもよるが、例えば1〜500個である。
【0022】
シール材13としては、例えば、紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂や一液加熱硬化型樹脂のペースト状のものが挙げられるが、ディスペンサへの対応性の観点からは無溶剤で低温硬化が可能な紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、具体的な樹脂種としては、例えば、アクリレート樹脂やエポキシ樹脂が挙げられる。シール材13には、樹脂成分や重合開始剤の他、必要に応じて粒状のスペーサが含まれていてもよい。シール材13の粘度は例えば50000〜500000mPa・sである。
【0023】
描画するシール材13の線幅は例えば100〜2000μmである。
【0024】
シール材13の描画速度は10〜150mm/sec、好ましくは50〜80mm/secに設定する。
【0025】
ディスペンサヘッドのシール材13の吐出圧力は0.1〜0.7MPa、好ましくは0.3〜0.5MPaに設定する。
【0026】
ディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップは10〜70μm、好ましくは20〜40μmに設定する。
【0027】
シール材13を重畳して描画する際には、相互に隣接する一対の液晶封入部12のうち一方のシール材描画時のシール材量を他方のシール材描画時のシール材量よりも少なくしてもよい。このようにすれば、相互に隣接する一対の液晶封入部12間におけるそれぞれのシール材13の部分について、それらの間に間隔をおいて2本のシール材13を設けた場合に比較して、シール材使用量を低減することができ、また、後の基板貼り合わせステップにおいてシール材13を基板間で押し潰す際の力を低くすることができ、そのためシール材13の押し潰し不足に起因したシール材13近傍のセル厚ムラを低減することができる。
【0028】
この場合、先に描画する方のシール材使用量を後に描画するシール材使用量よりも少なくしてもよく、また、後に描画する方のシール材使用量を先に描画するシール材使用量よりも少なくしてもよい。但し、シール材13の描画の途中にシール材13の吐出圧力条件等を変更してシール材使用量を多くしたり或いは少なくすることは、条件が変更されるまでにある程度の時間を要するため、装置の構成上非常に困難である。
【0029】
しかしながら、この点について、シール材13を重畳して描画する際に、相互に隣接する一対の液晶封入部12のシール材描画時で、シール材13の描画速度条件、ディスペンサヘッドのシール材13の吐出圧力条件、及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップ条件を同一とすれば、描画条件の設定を変更することなく、後に描画する方のシール材使用量を先に描画するシール材使用量よりも少なくすることができる。以下、これに関する検証実験について説明する。
【0030】
シール材13の描画速度を80mm/secで固定し、ディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップを5μm及び25μmとしたそれぞれの場合について、ディスペンサヘッドのシール材13の吐出圧力を変量し、描画されるシール材13の断面積を調べた。なお、シール材13として粒径5μmの粒状スペーサを含有させた紫外線硬化性樹脂を用いた。
【0031】
図3は、ディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップを5μm及び25μmとしたそれぞれの場合についてシール材13の吐出圧力とシール材13の断面積の関係を示す。
【0032】
一般的な液晶表示パネルの製造過程において、分断ステップまでに必要となるシール材13の断面積は、シール材13に含まれる粒状スペーサの外径が5μm及びシール材13の幅が1000μmとすると、5μm×1000μm=5000μmである。そこで、シール材13の断面積が約5000μmであるシール材13の吐出圧力が0.3MPa及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップが25μmの条件でシール材13を重畳して描画する場合ついて検討してみる。
【0033】
まず、基板上に、上記条件でシール材13を描画すると、断面積が約5000μm分のシール材13が使用される。なお、このときの描画直後のシール材13の高さは20μmと算出される。
【0034】
そして、その上にさらに同じ条件、つまり、シール材13の吐出圧力を0.3MPa及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップを25μmとの条件でシール材13を描画する。このとき、既に先に描画されたシール材13が存在するため、実効のギャップは25μm−20μm=5μmとなる。図3によれば、シール材13の吐出圧力が0.3MPa及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップが5μmの条件の場合、シール材13の断面積は約2000μmである。
【0035】
従って、シール材13を重畳して描画した場合には、合わせて約5000μm+約2000μm=約7000μm分のシール材13が使用される。一方、この条件で2本のシール材13を設けた場合には約5000μm×2=約10000μm分のシール材13が使用される。このことから、シール材13を重畳して描画することにより30%のシール材13の使用量の削減を図ることができるということとなる。
【0036】
<液晶材料滴下ステップ>
液晶材料滴下装置を用い、図4に示すように、一方のマザー基板11上におけるシール材描画ステップでシール材13によって区画された複数の液晶封入部12のそれぞれに液晶材料Lを滴下する。
【0037】
ここで、液晶材料滴下装置としては公知のものを用いることができる。また、液晶材料Lも公知のものを使用することができる。
【0038】
<基板貼り合わせステップ>
貼り合わせ装置を用い、シール材描画ステップでシール材13を描画し、そして、液晶材料滴下ステップで液晶材料Lを滴下した一方のマザー基板11上に、減圧下において、図5に示すように、シール材13及び液晶材料Lを挟むように他方のマザー基板14を貼り合わせると共にシール材13及び液晶材料Lを基板間で押し潰す。このとき、両基板間においてシール材13が幅方向に広がると共に、液晶材料Lも液晶封入部12に広がる。そして、しかる後、シール材13を硬化させることにより一対のマザー基板間に複数の液晶表示パネルが作り込まれた複合体を形成する。
【0039】
ここで、貼り合わせ装置としては、シール材13が紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂の場合には光照射型貼り合わせ装置、また、一液加熱硬化型樹脂の場合には熱硬化型貼り合わせ装置の公知のものを用いることができる。シール材硬化手段は、シール材13が紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂の場合には光照射手段が、また、一液加熱硬化型樹脂の場合には加熱手段がそれぞれ相当する。
【0040】
両基板を貼り合わせる際の周囲の圧力は例えば0.1〜100Paとする。基板間でシール材13及び液晶材料Lを押し潰す際の応力は例えば1000〜100000Paとする。
【0041】
重畳したシール材13の押し潰して硬化させた後の幅は例えば100〜2000μmとなり、その厚さ、つまり、セル厚は例えば2.0〜6.0μmとなる。
【0042】
<分断ステップ>
分断装置を用い、図6に示すように、基板貼り合わせステップで形成した一対のマザー基板間に複数の液晶表示パネルが作り込まれた複合体をカッターCにより個々のパネルに分断する。
【0043】
ここで、分断装置としては公知のものを用いることができる。
【0044】
この後、モジュール工程を経て製造される液晶表示パネルは携帯電話器等に搭載されて使用される。なお、本実施形態で製造される液晶表示パネルは、上記のようにシール材13を重畳して描画しているので、シール材13を顕微鏡等により拡大して観察すると、その痕跡を確認することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、滴下法により液晶材料Lを封入するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、真空注入法により液晶材料を封入するものであってもよい。その場合、TFTマザー基板及びCFマザー基板のうち一方のマザー基板上に液晶注入口を有する液晶封入部を区画するようにシール材を描画し、それに他方のマザー基板を貼り合わせると共にシール材を硬化させて液晶セルを形成した後、液晶セル内外の気圧差及び毛細管現象を利用して液晶注入口から液晶材料を注入し、しかる後、液晶注入口を封止材で封じる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は液晶表示パネル及びその製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】シール材描画ステップを示す説明図である。
【図2】シール材描画ステップの後の一方のマザー基板の平面図である。
【図3】シール材の吐出圧力とシール材の断面積の関係を示すグラフである。
【図4】液晶材料滴下ステップを示す説明図である。
【図5】基板貼り合わせステップを示す説明図である。
【図6】分断ステップを示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
11 一方のマザー基板
12 液晶封入部
13 シール材
14 他方のマザー基板
L 液晶材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のマザー基板上に相互に隣接する少なくとも一対の液晶封入部のそれぞれを区画するようにシール材を描画するシール材描画ステップと、
上記シール材描画ステップでシール材を描画した一方のマザー基板上にシール材を挟むように他方のマザー基板を貼り合わせると共にシール材を基板間で押し潰す基板貼り合わせステップと、
を備えた液晶表示パネルの製造方法であって、
上記シール描画ステップにおいて、相互に隣接する一対の液晶封入部間におけるそれぞれのシール材の部分を重畳して描画する液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された液晶表示パネルの製造方法において、
上記シール描画ステップにおいて、シール材を重畳して描画する際に、相互に隣接する一対の液晶封入部のうち一方のシール材描画時のシール材使用量を他方のシール材描画時のシール材使用量よりも少なくする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された液晶表示パネルの製造方法において、
上記シール描画ステップにおいて、シール材を重畳して描画する際に、相互に隣接する一対の液晶封入部のシール材描画時で、シール材の描画速度条件、ディスペンサヘッドのシール材の吐出圧力条件、及びディスペンサヘッドのシール材吐出口から基板表面までのギャップ条件を同一にする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された製造方法で製造された液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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