説明

液晶表示素子

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶と高分子を互いに分散させた高分子分散型液晶表示素子及びその製造方法に関し、コンピュータディスプレイあるいはビデオプロジェクター等に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】近年、社会生活の場へのコンピュータの導入にともない、マンマシンインターフェイスの開発が加速されている。特にコンピュータディスプレイの分野が最も開発が急がれるところであるが、いまだにツイストネマチック型液晶表示素子に頼っているのが現状である。この表示素子は、二枚の偏光板を使用する為、入射光の利用効率が低く、表示が暗いという欠点がある。
【0003】そこで、最近、偏光板が不要で、液晶と高分子の屈折率の差を利用した高分子分散型液晶(polymer dispersed liquid crystal)の表示素子が開発されている。この高分子分散型液晶表示素子は、液晶と高分子を互いに分散させて、これらを相分離させた表示素子である。その動作原理は、電界の印加又は除去により、両者の屈折率が一致すると、光の透過する透明状態となり、両者の屈折率が相違すると、光の散乱する白濁状態(半透明状態)となるものである。
【0004】従来の高分子分散型液晶表示素子を、図58R>8に示す(アメリカ特許3600060 等参照)。この高分子分散型液晶表示素子は、液晶高分子複合層を二枚の透明基板01,08の間に挟持したものであり、二枚の透明基板01,08の内側面には透明電極02,07が夫々形成されている。液晶高分子複合層は、液晶05の微粒子が高分子04中に分散したものであり、液晶05と高分子04とが相分離した状態にある。液晶05は、正の誘電異方性を有し、電界が印加されると、電界方向に揃う。液晶05は、電界が印加されないときには、無秩序に配向しているために屈折率が常光屈折率(1.5 程度)と異常光屈折率(1.7 程度)の平均である1.6 程度である。高分子04は、無秩序に配向した状態で硬化しているために、その屈折率は1.5 程度である。図中において、矢印は配向方向が無秩序であることを示す。
【0005】このように、液晶05と高分子04との界面には、0.1 程度の屈折率の差があるため、電界無印加時においては、図58(a) に示すように、図中上方から液晶高分子複合層に入射した光は散乱状態となり、素子は白濁状態(半透明状態)となる。但し、入射した光の全てが散乱するではなく、液晶分子の配向方向に対して平行方向の偏光が散乱する。
【0006】また、図58(b) に示すように透明電極02,07の間に電源を接続し、液晶高分子複合層に電界を図中上下方向に印加した時には、液晶05は電界方向に揃うため、電界方向において、その屈折率は1.5 程度となり、高分子04の屈折率に一致又は近似する。この為、電界印加時においては、電界方向から高分子液晶混合層に入射した光は散乱せず通過し、素子は透明状態となる。
【0007】又、上記説明では、電界無印加時においては、素子は白濁状態となり、電界印加時においては透明状態となるとしていたが、液晶、高分子の種類、組合せを調整することにより、その逆の動作をさせることも可能である。
【0008】即ち、電界を無印加時において、液晶と屈折率と高分子の屈折率とを一致又は近似させると、入射した光は液晶高分子複合層を散乱することなく透過し、そのため、素子は透明となる。また、電界印加時において、液晶を電界方向に揃わせることにより、電界方向において、液晶の屈折率と高分子の屈折率の差を大きくすると、入射した光は液晶と高分子との界面で散乱し、この為、素子は白濁状態となる。
【0009】尚、ここでは液晶と高分子の屈折差を利用する原理を示したが、この原理と異なる原理により透明、白濁状態となる高分子分散型液晶表示素子の例もある。例えば、ビフェニル骨格の側鎖を有するメタクリル酸エステル等の高分子と液晶のを混合し、紫外線を照射してなる液晶高分子複合層において、電界を印加して白濁する現象は、このような原理では説明がつかない。
【0010】更に、2色性色素を添加した高分子液晶複合表示素子も開発されている(1990Society for Information Display International Symposium digest of technology Papers、講演番号12.1, May 1990)。この高分子分散型液晶表示素子は、二枚の透明基板間で狭持される液晶高分子複合層における液晶中に、2色性色素を添加したものである。この素子では、電界を印加しないとき、液晶と高分子とが屈折率に差がある為、入射した光は散乱する。ここで、2色性色素は液晶と同様に無秩序に配向しているために、散乱した光により、色素の色が観察される。また、この素子に電界を印加すると、色素を含む液晶が電界方向に揃い、電界方向において、液晶と高分子との界面に屈折率の差が無くなり、素子は透明となる。この素子の裏面には、背景として色紙を置くのが一般的である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の高分子分散型液晶表示素子は、液晶の微粒子が高分子中に分散しており、しかも、高分子が無秩序に配向しているため、液晶と高分子との屈折率を一致させるときでも、十分な透過状態が得られず、完全な透明状態とならなかった。また、液晶の粒子径が不揃いのため、表示品質が均一でなく、信頼性に欠けていた。更に、電界無印加のときには、液晶も無秩序に配向している為、各液晶分子は電界に対する応答が不揃いとなり、素子全体としての透過率特性の閾特性が急峻でなかった。
【0012】また、高分子の屈折率1.5 と、液晶の平均屈折率1.6 との差が小さい為、液晶と高分子との屈折率を異ならせるときでも、十分な散乱状態とならず、完全な不透明とならなかった。散乱度を稼ぐために、液晶高子複合層を厚くすると、駆動電力が数十ボルトと高くなる問題も生じる。
【0013】更に、従来の表示素子は、閾特性の急峻度が低いため、コントラストがとれないという問題がある。例えば、走査線数の数としては、単純マトリックス駆動では3本が限界であり、大容量表示素子として電圧駆動する際にはアクティブ素子、例えば、TFT(thin film transistor)素子あるいはMIM(metal inslatormetal)素子などを用いる必要があった。
【0014】また、2色性色素を添加した高分子液晶表示素子の場合には、電界の印加又は除去により、透明状態か色素の色を切り替えて表示するのであるが、表示が奥まって見える。また、色素の含量を増やすと表示が暗くなり、駆動電圧も高くなるなどの課題を有している。
【0015】本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、液晶及び高分子を同一方向に配向させることにより、閾特性の優れたコントラストの良好な明るい高分子分散型液晶表示素子を提供することを目的とするものである。本発明の他の目的は、駆動電圧の低いコントラストの良好な視認性の良い反射型の高分子分散型液晶表示素子を提供することであり、さらにこの表示素子を用いて大容量表示体を提供することにある。本発明の更に他の目的は、比抵抗が高く、電荷保持特性の優れた高分子分散型液晶表示素子を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、このような高分子分散型液晶表示素子を、容易な方法により、安定して製造することのできる製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の液晶表示素子は、液晶と高分子とから液晶高分子複合層を一対の基板間に挟持してなる液晶表示素子において、前記基板のうち一方の基板に位相差板が配置され、この位相差板の表面に反射層が配置されてなることを特徴とする。本発明の前記位相差板の光軸は、前記液晶高分子複合層の配向方向と45度の角度をなすことを特徴とする。本発明は、前記位相差板として四分の一波長板を用いることを特徴とする。
【0017】ここで、前記液晶高分子複合層は二枚の基板の間に挾持され、また、該二枚の基板の内側面に透明電極を有するか、或いは、一枚の基板上に形成され、該一枚の基板は表面に透明電極を有し、また、前記液晶高分子複合層の上面には透明電極が形成されるものとすることができる。また、前記液晶は正の誘電異方性を有し、前期液晶及び前記高分子は電界の無印加時には前記基板と平行方向に配向するか、或いは、負の誘電異方性を有し、前記液晶及び前記高分子は電界の無印加時には前記基板と垂直方向に配向するものとすることができる。
【0018】また、前記二枚の基板の少なくとも一方の内側面には、前記液晶及び液晶相の前記高分子又は重合して高分子となる高分子前駆体を当該基板と平行方向に配向させる配向処理が施されるか、前記液晶及び液晶相の前記高分子又は重合して高分子となる高分子前駆体を当該基板と垂直方向に配向させる配向処理が施されることが望ましい。更に、前記二枚の基板のうちの一方には、前記液晶及び液晶相の前記高分子又は重合して高分子となる高分子前駆体を当該基板と平行方向に配向させる配向処理が施され、前記二枚の基板のうちの他方には、前記液晶及び液晶相の前記高分子又は高分子を構成する高分子前駆体を当該基板と垂直方向に配向させる配向処理が施されることが望ましい。尚、前記配向処理として配向膜が形成されてもよい。
【0019】ここで、前記二枚の基板のうちの一方は、内側面に反射層を兼ねた電極を有するか、または、反射層が付加されても良い。また、前記一枚の基板は、反射層を兼ねた電極を有するか、または、反射層が付加されても良い。
【0020】また、前記液晶は、カイラル成分を含有するネマチック液晶でもよく、また、2色性色素を含んでもよい。
【0021】更に、前記高分子は、ビフェニル側鎖を含有する高分子、紫外線硬化型高分子、熱硬化型高分子、熱可塑型高分子、高分子液晶とすることができ、また、前記高分子は、前記液晶との共溶媒を有し、相溶した状態で液晶相をとるものとすることができる。更に、前記高分子は重合部と芳香環部を有する高分子前駆体を少なくとも二種類以上重合してなるものとすることができる。
【0022】また、前記高分子前駆体の少なくとも一種類は、芳香環部あるいは芳香環部に付随する側鎖上にフッ素原子を含有しているか、芳香環部にナフタレン、フェニルあるいはビフェニルおよびこれらの誘導体を含んでいるものとすることができ、前記高分子前駆体が紫外線により重合して硬化するものとすることができる。更に、前記液晶高分子複合層と反射層との間に位相差板を配置し、この位相差板の光軸は、前記液晶高分子複合層の配向方向と45度の角度を成し、更に、この位相差板として、四分の一波長板を用いても良い。この位相差板の表面には透明電極が蒸着されていても良い。前記反射層は位相差板の表面に蒸着されていても良い。
【0023】前記液晶高分子複合層における液晶及び高分子の配向方向が互いに直交するように二枚の高分子分散型液晶表示素子を重ね合わせても良く、また、前記高分子の配向方向は、前記基板の法線と入射光の光軸を含む面に直交する方向であることが望ましい。更に、前記基板の背面に偏光板及び反射板を配置し、或いは、前記基板の背面に位相補正板、減光板及び反射板を配置するようにしても良い。
【0024】前記目的を達成する本発明の高分子分散型液晶表示素子の製造方法に係る構成は液晶と熱可塑性高分子とを相溶して混合すると共に前記液晶及び高分子を液晶相にて同一方向に配向させ、その後、前記高分子を冷却硬化させることにより、前記液晶と前記高分子とを配向状態を保ったまま相分離するか、或いは、液晶と高分子前駆体とを相溶して混合すると共に前記液晶及び高分子前駆体を液晶相にて同一方向に配向させ、その後、前記高分子前駆体を重合し高分子として硬化させることにより、前記液晶と前記高分子とを配向状態を保ったまま相分離することを特徴とする。このとき2枚の基板あるいは1枚の基板を利用できる。また、これらの基板の少なくとも1枚に配向処理を施すことが望ましい。
【0025】ここで、前記高分子が最もよく光散乱する粒径 0.1〜10μmとなる条件で相分離する速度を調整することが望ましい。
【0026】ここで、前記高分子前駆体としてビフェニルメタノールのメタクリル酸エステルあるいはアクリル酸エステルあるいはこれら化合物の誘導体を用いることができ、また、ナフトールのメタクリル酸エステルあるいはアクリル酸エステルあるいはこれら化合物の誘導体を用いることが可能である。また、前記高分子前駆体として前記エステルにビフェノールのメタクリル酸エステル誘導体あるいはアクリル酸エステル誘導体を混合したものを使用しても良い。
【0027】
【発明の実施の形態】(実施例1)本発明の第1の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図1に示す。同図に示すように二枚の透明な基板101、基板108の間には液晶高分子複合層が挾持され、この液晶高分子複合層は、高分子104の粒子が液晶105中に分散して相分離した状態となっている。高分子104としては、液晶相の状態において液晶105と相溶して、その後、硬化する際に、液晶105と相分離するものが使用される。液晶105としては、電界方向と平行方向に配向する正の誘電異方性を有するものが使用される。二枚の基板101,108は、内側面にそれぞれ透明電極102,107を有しており、更に、その上にはそれぞれ配向膜103,106が形成されている。
【0028】配向膜103,106は、二枚の基板101,108の間に相溶して封入された液晶105び液晶相の高分子104を、当該基板101,108と平行な方向に配向させる配向処理が施されている。高分子104は、配向する際は液晶相であるが、その後、硬化される為、その配向状態が保たれたまま固定されている。この為、高分子104は、その後、電界が印加されても、配向方向が電界方向に揃うことはない。また、液晶105は、配向状態が固定されていない為、電界を印加すると電界方向に揃うことになる。
【0029】従って、電界を印加していない場合には、高分子104と液晶105の配向方向は、基板101,108に対して平行方向に一致する状態となり、この状態において、両者の屈折率を一致させることにより、上記素子は透明状態となる。
【0030】また、透明電極102,107の間に電源を接続して、液晶高分子複合層に電界を印加すると、液晶105の配向方向が電界方向に揃うため、電界方向において、液晶105と高分子104と界面で屈折率の不一致により光散乱状態となり、素子は白濁状態となる。
【0031】尚、高分子104としては、液晶相の高分子前駆体を二枚の基板101,108の間に封入した後、この液晶相の高分子前駆体を重合したものでも良い。また、本実施例の液晶高分子複合層では、高分子104の粒子が液晶105中に分散しているが、これと逆に、液晶105の粒子が高分子105中に分散するようにしても良い。
【0032】次に、上記高分子分散型液晶表示素子の作製法について説明する。
【0033】先ず、二枚の透明な基板101,108の表面に、透明電極102,107を蒸着法により形成した。更に、透明電極102,107の表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜103,106とした。その後、配向膜103,106の形成された二枚の基板101,108を150 ℃にて焼成した。焼成後、配向膜103,106の表面に配向処理を施した。配向処理として、さらし木綿で配向膜103,106の表面を一方向に擦るラビング(rubbing) 処理を行なった。擦る方向は二枚の基板101,108を組み合わせたときに擦る方向が平行となるようにした。
【0034】これら二枚の基板101,108の配向膜103,106を向かい合わせて間隙が10μmになるように固定した。以下、この隙間をセル厚と呼ぶ。この間隙中に高分子前駆体と液晶を1:10の割合で相溶して混合したものを封入した。ここでは、高分子前駆体としてはパラフェニルフェノールメタクリル酸エステル、液晶としてはPN001(商品名,ロディック社製)を使用した。引続き、高分子前駆体と液晶の混合物を徐冷し、室温にて紫外線を照射して高分子前駆体を重合して硬化させると共に液晶105と高分子104として相分離させた。
【0035】このようにして製造された表示素子の動作原理について説明する。
【0036】図1に示す高分子104、液晶105は、同様の屈折率異方性を示し、配向方向と平行方向における屈折率は1.5 程度あり、配向方向と垂直方向の屈折率は1.7 程度である。
【0037】従って、電界無印加時には、液晶105が高分子104と同方向に配向している為、基板101,108と垂直方向な方向における液晶105と高分子104の屈折率は一致する。従って、この時この素子は、ほとんど透明な状態となり、透過率は80%となった。液晶及び高分子が無秩序に配列する従来例では、透過率が60%程度であるので、本実施例のように高分子及び液晶を配向すると透過率がかなり改善されることが判る。
【0038】一方、電極102,107との間に電源を接続して、高分子液晶複合層に電界を印加すると、高分子104の配向方向はそのままであるのに対し、液晶105だけが電界方向、つまり、基板101,108に対して垂直な方向に配向する。このため、基板101,108と垂直な電界方向において、高分子104の屈折率は1.7 程度のままであるのに対し、液晶105の屈折率は1.5 程度となる。
【0039】従って、電界方向における高分子104と液晶105での屈折率の差は0.2 程度となり、基板101,108と垂直な方向から入射した光は散乱することになる。この為、この時この素子は、電界方向において、白濁する。二つの電極間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、白濁状態となった。光透過状態と光散乱状態とのコントラストは、50:1以上と良好な値が得られた。
【0040】尚、上記実施例においては、配向膜103,106としてポリイミドを使用していたが、本発明は、これに限るものではなく、液晶105及び液晶相の高分子104、つまり、物理的な意味での液晶を配向させる力のある配向膜を広く使用することができる。配向処理としては、配向膜を利用するものに限らず基板上をこするだけでない。また、物理的な意味での液晶を配向できる磁気的、電気的処理等も用いられる。
【0041】また、液晶105としては、コントラストを向上させる為に、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものが好ましい。液晶105の含有量は、全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。高分子104としては、高分子主鎖にベンゼン骨格あるいはビフェニル骨格を有する側鎖をつけたものであれば、熱可塑性高分子、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子の別を問わず、広く使用することができる。
【0042】(実施例2)本実施例は、高分子として熱可塑性のα−メチルスチレンを、また、配向膜としてポリビニルアルコールを用いた例である。その素子の基本的構造は、図1に示す実施例1と同様である。
【0043】この高分子分散型液晶素子の製作法について説明する。
【0044】先ず、二枚の基板にポリビニルアルコールの2%水溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜とし、更に、100 ℃にて焼成した。次に、液晶と高分子を、3:1の割合で混合し、この混合物を150 ℃にて、前述した二枚の基板間に封入した。高分子としてはα−メチルスチレン(屈折率1.61)、液晶としてはSS−5008(製品番号,チッソ社製、異常光屈折率1.60)を使用した。引続き、高分子及び液晶の混合物を冷却することにより、これらを配向させ、高分子を硬化すると共に液晶と高分子を相分離させた。
【0045】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率60%が得られた。配向処理しない従来例では、透過率が50%程度であるので、本実施例はかなり改善されていることが判る。
【0046】また、二つの電極間に10KHz,60Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。また、コントラストは、15:1以上と良好な値が得られた。
【0047】尚、上記実施例では、配向膜としてポリビニルアルコールを使用したが、先に示したポリイミドなど、液晶を配向させる力のあるものを広く使用することができる。また、液晶としては、コントラストを向上させるためには、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよく、さらに液晶の異常光屈折率が高分子の屈折率に近いものがよい。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。これより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。更に、高分子としては、本実施例で使用した熱可塑性高分子の他、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子なども同様に用いることができる。
【0048】更に、スイッチング素子を組み合わせても同様の効果が得られる。また、以上の実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、配向膜は二枚の基板の双方に形成する必要はなく、一方の基板だけでも有効である。更に、配向処理としては、配向膜によるものに限らず基板をこするだけでない。また、物理的な意味での液晶を配向させる電気的、磁気的手段を使用することが出来る。
【0049】本発明は以上の実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0050】(実施例3)本発明の第3の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図2に示す。本実施例は、カイラル成分を含有するネマチック液晶を使用するものである。即ち、同図に示すように二枚の透明な基板301、基板308の間には液晶高分子複合層が挾持され、この液晶高分子複合層は、高分子304とネマチック液晶305とが互いに捩じれて相分離した状態となっている。高分子304としては、液晶相の状態においてネマチック液晶305と相溶して分散し、その後、硬化する際に、液晶305と相分離するものが使用される。ネマチック液晶305としては、電界方向と平行方向に配向する正の誘電異方性を有するものが使用される。
【0051】ネマチック液晶305には、カイラル成分が添加されている。高分子304とネマチック液晶305が相互に捩れたいるのは、カイラル成分を添加した為と考えられる。二枚の基板301,308は、内側面にそれぞれ透明電極302,307を有しており、更に、その上にはそれぞれ配向膜303,306が形成されている。配向膜303,306は、二枚の基板301,308の間に相溶して封入されたネマチック液晶305及び液晶相の高分子304を、当該基板301,308と平行な方向に配向させる配向処理が施されている。
【0052】高分子304は、配向する際は液晶相であるが、その後、硬化される為、その配向状態が保たれたまま固定されている。この為、高分子304は、その後、電界が印加されても、配向方向が電界方向に揃うことはない。また、液晶305は、配向状態が固定されていない為、電界を印加すると電界方向に揃う。
【0053】従って、電界を印加していない場合には、高分子304とネマチック液晶305の配向方向は、基板301,308と平行方向に一致し、この状態において、両者の屈折率を一致させることにより、この素子は透明状態となる。ネマチック液晶305にカイラル成分を混合しないと、基板301,308に対して垂直に入射する光のうち、液晶305の動き得る平面、つまり、図2における紙面と平行な面に振動方向を持つ偏光のみ変調を受けるため、コントラストを十分に向上させることができない。
【0054】本実施例のようにカイラル成分をネマチック液晶305に混合すると、基板301,308に対して垂直に入射する光のうち、液晶305の動き得る平面に対して平行以外の方向に振動方向を持つ偏光に対しても有効に変調がかかるために、十分にコントラストを向上させることができる。
【0055】また、透明電極302,307の間に電源を接続して、液晶高分子複合層に電界を印加すると、液晶305の配向方向が電界方向に揃うため、電界方向において、液晶305と高分子304と界面で屈折率の不一致により光散乱状態となり、この素子は白濁状態となる。
【0056】次に、上記高分子分散型液晶表示素子の作製法について説明する。
【0057】先ず、二枚の透明な基板301,308の表面に透明電極302,307を蒸着法により形成した。更に、透明電極の表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜303,306とした。その後、配向膜303,306の形成された二枚の基板301,308を150 ℃にて焼成した。焼成後、配向膜303,306の表面に配向処理を施した。配向処理として、さらし木綿で配向膜303,306の表面を一方向に擦るラビング処理を行なった。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。
【0058】これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせて間隙10μmになるように固定した。この間隙に高分子前駆体とネマチック液晶を1:10の割合で100 ℃にて混合したものを封入した。高分子前駆体としては、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルを、ネマチック液晶としてはLV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用した。ネマチック液晶には、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、高分子及びネマチック液晶の混合物を徐冷し、これらを配向させた。その後、室温にて紫外線を照射して高分子前駆体を重合させて硬化させると共に液晶と高分子としてを相分離させた。
【0059】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、図3に示すように透過率は80%となった。
【0060】また、二つの電極302,307間に10KHz,20Vなる交流電界を印加したところ、高分子304と液晶305の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は図3に示すように1%であった。カイラル成分を添加しない場合は、図4に示すように透過率が40%程度であるので、本実施例では、透過率がかなり改善されていることが判る。
【0061】また、本実施例では、液晶にカイラル成分を添加した為、電圧を変化に対する透過光量の変化を示す閾特性も格段に改善され、閾特性の急峻性β=1.34が得らた。この為、単純マトリックス駆動において走査線数は16本が可能であった。
【0062】尚、配向膜としては上記実施例で使用したポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、液晶を配向させることができるものを広く使用できる。また、配向処理は一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には、互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化することが望ましい。液晶としては、コントラストの向上の為に、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。
【0063】液晶に混入させるカイラル成分は、ここに示した物でなくとも用いることができる。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内であることが望ましい。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0064】尚、高分子としては、高分子主鎖にビフェニル骨格を有する側鎖をつけたものであれば、熱可塑性高分子、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子の別を問わず、広く使用することができる。液晶分子と同様の骨格を有する高分子も、同様に用いることができる。
【0065】(実施例4)本実施例は、実施例3において反射型とした場合についての例を示す。基本的構成は、図2に示す実施例3と同様である。ただ、実施例3において一方の基板308上の電極307として透明導電材料に代えて、アルミニウム等の金属材料を使用するものである。従って、素子に入射した光は、反射層である電極307で反射するため、高分子液晶複合層を往復して通過することになる。
【0066】本実施例では、一方の電極307が反射層を兼ねる為、実施例3と同じセル厚とした場合、散乱時の透過率(反射率)を半減することができ、コントラストが2倍となった。また、実施例3と同じコントラストを得るには半分のセル厚で良いため、駆動電圧を半分にできる利点がある。具体的には、セル厚7μmで駆動電圧7Vとすることができた。
【0067】本実施例では、電極307が反射層を兼ねていたが、電極307の他に反射層を付加するようにしても良い。
【0068】(実施例5)本発明の第5の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図5に示す。本実施例は、複合2端子素子であるMIM(metal inslater metal)素子を組み合わせたものである。MIM素子は、アクティブ素子の一つであり、非線型的な抵抗特性を有する。基本構成については実施例3に同じである。
【0069】この素子の作製法について説明する。実施例3と異なる点は基板508にMIM素子を形成した点である。即ち、基板508の表面に電極511としてタンタルを蒸着し、表面を酸化して絶縁層510とした。この上に反射層を兼ねる画素電極509としてアルミニウムを蒸着した。更に、この上に配向膜506としてポリイミドを塗布し、焼成し、配向処理を施した。配向膜506には、配向処理としてはラビング処理を組み合わせた。配向処理としては、これに限らず、斜方蒸着法を用いることもできる。こうして作製したMIM素子を形成した基板508と透明電極502、配向膜503を形成した基板501とを対向させ、セル厚7μmに固定して周囲をモールドした。
【0070】この間隙に高分子前駆体とネマチック液晶を1:10の割合で100 ℃にて混合したものを封入した。高分子前駆体としては、ビフェノールメタクリル酸エステル、ネマチック液晶としてはLV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用した。ネマチック液晶には、カイラル成分S−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。引続き、ネマチック液晶と高分子前駆体との混合物を徐冷し、その後、室温にて紫外線を照射して、高分子前駆体を重合して高分子として硬化させると共に液晶と高分子を相分離させた。
【0071】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率75%が得られた。
【0072】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子504と液晶505の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における、反射率は1%であった。カイラル成分を添加しない場合は、透過率が40%程度であるので、本実施例では、透過率がかなり改善されていることが判る。
【0073】本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、一方の基板に反射層を形成することにより、MIM素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。尚、配向膜としてはポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、液晶を配向させる力のあるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化することが望ましい。
【0074】液晶としては、コントラストを向上させる為に、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。液晶分子の構造と高分子前駆体の構造が似ている物同士を用いると透過状態での透過率あるいは反射率を向上させることができる。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。但し、混合した場合の液晶のピッチを決める旋回能が重要である。
【0075】すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内であることが望ましい。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0076】尚、高分子としては、高分子主鎖にビフェニル骨格を有する側鎖をつけたものであれば、熱可塑性高分子、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子の別を問わず、広く用いることができる。あるいは液晶分子と同様の骨格を有する高分子であれば同様に用いることができる。
【0077】本実施例では、反射膜を兼ねる電極509は、MIM素子の形成された基板508に設けたが、基板508と対向する基板501の電極502上に反射層をかねさせるか、その上に反射層を積層させることもできる。
【0078】(実施例6)本発明の第6の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図6に示す。本実施例は、3端子素子であるTFT(thin film transistor)素子を組み合わせたものである。基本構成については実施例3に同じである。実施例3と異なる点は基板608にTFT素子を形成した点である。
【0079】この素子の製作法について説明する。先ず、基板608の表面にゲート電極617を形成して、その上にゲート絶縁層616を設けて、さらに半導体層615、ドレイン電極614、ソース電極613、反射層を兼ねる画素電極609を形成した。この素子基板の上に配向膜606を形成して配向処理を施した。基板601については、電極602を形成してその上に配向膜603を形成して配向処理を施した。この配向処理は、基板を擦る方法の他、斜方蒸着法LB膜法などを用いることもできる。次に、これらの二枚の基板601,608を配向処理方向がほぼ平行となるように組み合わせ、セル厚7μmとなるように固定して周囲をモールドした。
【0080】この間隙に高分子前駆体とネマチック液晶とを1:10の割合で100 ℃にて混合して封入した。高分子前駆体としては、ビフェノールメタクリル酸エステルを、ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用した。ネマチック液晶には、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。引続き、高分子前駆体とネマチック液晶との混合物を徐冷し、これらを配向させた。その後、室温にて紫外線を照射して高分子前駆体を重合して高分子とすると共にネマチック液晶と高分子を相分離させた。
【0081】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率75%が得られた。
【0082】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子604と液晶605の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は1%であった。カイラル成分を添加しない場合は、透過率は40%程度であるので、本実施例では、透過率がかなり改善されていることが判る。
【0083】本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、反射層を形成することにより、TFT素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。
【0084】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化する必要がある。
【0085】液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。また、液晶の誘電異方性は正のものを用いることができる。液晶分子の構造と高分子前駆体の構造が似ている物同士を用いると透過状態での透過率あるいは反射率を向上させることができる。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。
【0086】液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内である必要がある。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0087】高分子としては、は高分子主鎖にビフェニル骨格を有する側鎖をつけたものであれば、熱可塑性高分子、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子の別を問わず、広く用いることができる。あるいは液晶分子と同様の骨格を有する高分子であれば同様に用いることができる。
【0088】上記実施例では、MIM素子、TFT素子への応用について反射型での実施例を示したが、高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧が低減されれば、透過型でのMIM素子、TFT素子への応用も実現できる。あるいは、高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧が低減されなくても、MIM素子、TFT素子の耐圧が向上すれば、そのままで透過型でMIM素子、TFT素子と組み合わせることができる。
【0089】以上の実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、配向膜は両側基板に形成する必要はなく片側基板処理だけでも効果を発揮する。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。
【0090】本発明は、上記実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0091】(実施例7)本発明の第7の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図7に示す。本実施例では、熱硬化型高分子としてエポキシ系樹脂を用いたものである。基本的構成ついては、図2に示す実施例3と同様である。
【0092】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板701,708の表面に電極702,707を蒸着法により形成した。これらの電極702,707の表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜703,706とした。このように配向膜703,706の形成された基板701,708を150 ℃にて焼成した。その後、この配向膜703,706の表面をさらし木綿で一方向に擦ることにより配向処理を施した。配向処理は、ラビング処理の他配向膜なしでラビングする方法、斜方蒸着法、LB膜法など、物理的な液晶を基板701,708と平行に配向する手段が用いられる。擦る方向は二枚の基板701,708を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。これら二枚の基板701,708の配向膜703,706の表面を向かい合わせ、セル厚が10μmになるように固定した。
【0093】この間隙にエポキシ系樹脂とネマチック液晶とをを1:9で100 ℃にて混合したものを封入した。エポキシ系樹脂としては、YDF−170(商品名,東都化成製)を使用し、硬化剤121(商品名,油化シエル製)を添加した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。引続き、エポキシ系樹脂とネマチック液晶の混合物を徐冷して、これらを配向させ、更に、室温にて1日放置することにより、エポキシ系樹脂を硬化させると共に液晶705と高分子704とを相分離させた。図7R>7中において、矢印は高分子704,液晶705の配向方向を示す。他の図面においても同様である。
【0094】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、図7(a) に示すように電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、図8に示すように透過率は80%となった。また、図7(b) に示すように二つの電極702,707間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子704と液晶705の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は図8に示すように1%であった。カイラル成分を添加しない場合は、図9に示すように透過率が40%程度であるので、本実施例では、透過率がかなり改善されていることが判る。また、電圧を変化したときの透過光量の変化を示す閾特性も格段に改善されている。
【0095】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化するのが望ましい。液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。また、液晶の誘電異方性は正のものを用いることができる。
【0096】液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内である必要がある。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0097】高分子としては、液晶と混合した状態で配向し、その状態で硬化重合できる熱硬化型高分子であれば同様に用いることができる。たとえば、4,4′−n−プロピルビフェニル−ω,ω′−ジイソシアネートとビフェニルのジオールを混合し重合させることもできる。理想的には液晶分子に似た骨格を有する高分子前駆体であれば同様に用いることができる。
【0098】(実施例8)本実施例では、熱可塑型高分子として熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンを用いたものである。基本的な構成は、図7に示す実施例7と同様である。
【0099】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極を蒸着法により形成した。これらの基板表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜とした。
【0100】これらの基板を150 ℃にて焼成した。その後この配向膜の表面をさらし木綿で一方向に擦った。配向処理は、ここに示したラビング処理の他、斜方蒸着法、LB膜法など、液晶が配向する方法であれば広く用いることができる。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。
【0101】これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。この間隙に熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンと液晶とを100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としてはRDP80616(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンと液晶との混合物を徐冷して、これらを配向させ、室温とすることにより相分離させると共に熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンを硬化させた。
【0102】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、図10に示すように電圧無印加の状態において、透過率は20%であった。
【0103】また、二つの電極間に10KHz,6Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は、図10に示すように1%であった。この特性はそれほど良好な特性ではないが、熱可塑樹脂の構造を最適化すれば、更に特性の向上が期待される。具体的にはビフェニル基を側鎖あるいは主鎖に導入するなど、液晶分子となじみやすい骨格を導入すれば良い。
【0104】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。また、カイラル成分、例えば、S−1011(製品番号,メルク社製)を添加すると、閾特性の向上及びコントラストの向上の効果が確認された。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化するのが望ましい。
【0105】尚、液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分は実施例7に示した条件で添加すれば良い。高分子としては、使用温度よりも高温で液晶と相溶し、更に相溶した液晶相で配向し、冷却して高分子と液晶を相分離できる熱可塑性高分子であれば同様に用いることができる。
【0106】(実施例9)本実施例は、高分子液晶としてシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶を用いたものである。基本的構成は、図7に示す実施例7と同様である。
【0107】素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板1及び基板8の表面に電極2及び電極7を蒸着法により形成した。これらの基板表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜とした。これらの基板を150 ℃にて焼成した。その後この配向膜表面をさらし木綿で一方向に擦った。配向処理は、ここに示したラビング処理の他、斜方蒸着法、LB膜法など、液晶が配向する方法であれば広く用いることができる。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0108】この間隙に、化1に示すシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶とネマチック液晶を120℃にて混合したものを封入した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。
【0109】
【化1】


【0110】引続き、側鎖型高分子液晶とネマチック液晶との混合物を徐冷して、これらを配向させ、70℃として液晶と高分子液晶とを相分離させた。
【0111】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、図11に示すように電圧無印加の状態において、透過率は80%であった。
【0112】また、二つの電極間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は、図11に示すように1%であった。この特性は、図9R>9に示すカイラル成分を添加していない従来例に比べ、格段に改良されている。カイラル成分がなくとも表示は可能であるが特性は劣る。
【0113】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化するのが望ましい。液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。また、液晶の誘電異方性は正のものを用いることができる。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。
【0114】液晶中に混入させるカイラル成分は実施例7に示した条件で添加すれば良い。高分子としては、液晶は使用温度より高温で液晶と相溶し、更に相溶した液晶相で配向し、冷却して高分子と液晶を使用温度にて相分離できるものであれば側鎖型主鎖型を問わず同様に用いることができる。たとえば、化2〜化9などの高分子液晶を用いることができる。もちろんここに示した高分子はほんの一例であり、液晶との組合せ等により、構造の最適化を図ることが望ましい。また、本実施例において、液晶と高分子液晶との相溶性が悪い場合には、液晶と高分子液晶の共溶媒を用いることもできる。その場合、高分子液晶としては共溶媒を混合した時点で液晶相となるものを使用し、配向させた後に溶媒を留去し、液晶と高分子液晶を相分離させるようにすると良い。
【0115】
【化2】


【0116】
【化3】


【0117】
【化4】


【0118】
【化5】


【0119】
【化6】


【0120】
【化7】


【0121】
【化8】


【0122】
【化9】


【0123】(実施例10)本実施例は、実施例7、実施例8、実施例9において反射型とした場合についての例を示す。基本的構成は、図7に示す実施例7と同様である。ただ、図7において基板708上に形成した電極707として、透明導電材料に代えてアルミニウム等の金属材料とした点が異なる。
【0124】本実施例では、電極707が反射層をかねる為、実施例7と同じセル厚とした場合、散乱時の透過率(反射率)を半減することができた。即ちコントラストが2倍となった。実施例7と同じコントラストを得るには半分のセル厚で良いため駆動電圧を半分にできる利点がある。具体的には、セル厚5μmで駆動電圧5Vとすることができた。
【0125】(実施例11)本発明の第11の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図12に示す。本実施例は、複合2端子素子であるMIM素子を組み合わせたものである。基本構成については、図7に示す実施例7に同じである。ただ、基板1108にMIM素子を形成した点が異なる。即ち、二枚の基板1108の表面に電極1111としてタンタルを蒸着し、表面を酸化して絶縁層1110とした。この上に画素電極1109としてアルミニュウムを蒸着した。さらにこの上に配向膜1106としてポリイミドを塗布し、焼成し、配向処理した。この配向処理は配向膜とラビングを組み合わせる方法の他、斜方蒸着法を用いることもできる。こうしてMIM素子を形成した基板1108と、配向膜1103、電極1102を形成した基板1101を組み合わせ、セル厚7μmに固定して周囲をモールドした。
【0126】この間隙にエポキシ系樹脂とネマチック液晶とを1:9の割合で100 ℃にて混合したものを封入した。エポキシ系樹脂としては、YDF−170(商品名,東都化成製)を使用し、硬化剤121(商品名,油化シェル製)を添加した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、エポキシ系樹脂とネマチック液晶との混合物を徐冷し、これらを配向させ、室温にて1日放置することにより、エポキシ系樹脂を硬化させると共に液晶1105と高分子1104として相分離させた。
【0127】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率75%が得られた。
【0128】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子1104と液晶1105の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における、反射率は1%であった。本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、一方の基板に反射層を形成することにより、MIM素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。
【0129】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化するのが望ましい。
【0130】液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。液晶分子の構造と高分子前駆体の構造が似ている物同士を用いると透過状態での透過率あるいは反射率を向上させることができる。液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。
【0131】液晶中に混入させるカイラル成分は実施例7に示した条件で添加すれば良い。高分子としては、は実施例8および実施例9に示した高分子でも良い。
【0132】本実施例では、反射膜を兼ねる電極1109は、MIM素子の形成された基板1108に設けたが、基板1108と対向する基板1101の電極1102上に反射層をかねさせるか、その上に反射層を積層させることもできる。
【0133】(実施例12)本発明の第12の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図13に示す。本実施例は、3端子素子であるTFT素子を組み合わせたものである。基本構成については図7に示す実施例9に同じである。
【0134】この素子の作製法について説明する。実施例9と異なる点は基板1208にTFT素子を形成した点である。即ち、一方の基板1208の表面にゲート電極1217を形成してその上にゲート絶縁層1216を設けて、さらに半導体層1215、ドレイン電極1214、ソース電極1213、反射層を兼ねる画素電極9を形成した。この上に配向膜1206を形成して配向処理を施した。他方の基板1201については、電極1202を形成して、その上に配向膜1203を形成して配向処理を施した。配向処理としては、配向膜を擦ることにより行なう他、斜方蒸着法を用いることもできる。次に、これらの二枚の基板1201,1208を配向処理方向がほぼ平行となるように組み合わせ、セル厚7μmとなるように固定して周囲をモールドした。
【0135】この間隙にシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶とネマチック液晶とをを120℃にて混合したものを封入した。ネマチック液晶としてはLV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、側鎖型高分子液晶とネマチック液晶との混合物を徐冷し、これらを配向させ、70℃として液晶1205と高分子液晶1204として相分離させた。
【0136】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率75%が得られた。
【0137】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子1204と液晶1205の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は1%であった。
【0138】本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、反射層を形成することにより、TFT素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。
【0139】尚、配向膜としては、ポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向についてはカイラル成分の含量と関係するのでその都度最適化するのが望ましい。また、液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。液晶分子の構造と高分子の構造が似ている物同士を用いると透過状態での透過率あるいは反射率を向上させることができる。
【0140】液晶の含有量は全体の50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分は実施例7に示した条件で添加すれば良い。高分子としては、は実施例9に示した高分子液晶のほか、実施例7および実施例8に示した高分子も同様に用いることができる。
【0141】上記実施例では、MIM素子、TFT素子への応用について反射型での実施例を示したが、高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧が低減されれば、透過型でのMIM素子、TFT素子への応用も実現できる。あるいは、MIM素子、TFT素子の耐圧が向上すれば、そのまま透過型でMIM素子、TFT素子と組み合わせることができる。
【0142】また、上記実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、配向膜は両側基板に形成する必要はなく片側基板処理だけでも効果を発揮する。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。
【0143】(実施例13)本発明の第13の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を14図に示す。本実施例は、負の誘電異方性を有する液晶を使用し、液晶及び高分子を基板に対して垂直に配向させたものである。同図に示すように二枚の透明な基板1301、基板1308の間には液晶高分子複合層が挾持され、この液晶高分子複合層は、高分子1304の粒子が液晶1305中に分散して相分離した状態となっている。高分子1304としては、液晶相の状態において液晶1305と相溶して分散し、その後、硬化する際に、液晶1305と相分離するものが使用される。液晶1305としては、電界方向と垂直方向に配向する負の誘電異方性を有するものが使用される。
【0144】二枚の基板1301,1308は、内側面にそれぞれ透明電極1302,1307を有しており、更に、その上にはそれぞれ配向膜1303,1306が形成されている。配向膜1303,1306は、二枚の基板1301,1308の間に相溶して封入された液晶1305び液晶相の高分子1304を、当該基板101,108と垂直な方向に配向させる配向処理が施されている。高分子1304は、配向する際は液晶相であるが、その後、硬化される為、その配向状態が保たれたまま固定されている。この為、高分子1304は、その後、電界が印加されても、配向方向が電界方向に揃うことはない。また、液晶1305は、配向状態が固定されていない為、電界を印加すると電界方向に揃うことになる。
【0145】従って、電界を印加していない場合には、図13(a)に示す溶に高分子1304と液晶1305の配向方向は、基板1301,1308に対して垂直方向に一致する状態となり、この状態において、両者の屈折率を一致させることにより、上記素子は透明状態となる。
【0146】また、図13(b) に示すように透明電極1302,1307の間に電源を接続して、液晶高分子複合層に電界を印加すると、液晶1305の配向方向が電界方向に対して垂直方向に揃うため、電界方向において、液晶105と高分子104と界面で屈折率の不一致により光散乱状態となり、素子は白濁状態となる。
【0147】尚、高分子1304としては、液晶相の高分子前駆体を二枚の基板1301,1308の間に封入した後、この液晶相の高分子前駆体を重合したものでも良い。また、本実施例の液晶高分子複合層では、高分子1304の粒子が液晶1305中に分散しているが、これと逆に、液晶1305の粒子が高分子1305中に分散するようにしても良い。
【0148】次に、この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板1301及び基板1308の表面に電極層1302,1307を蒸着法により形成した。これらの基板1301,1308をLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いして130℃にて乾燥し配向膜1303,1306とした。これら二枚の基板1301,1308の配向膜1303,1306を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶を1:10の割合で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としては、RDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶との混合物を徐冷し、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射することにより、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルを硬化させると共に液晶1305と高分子1304として相分離させた。
【0149】このようにして製造された表示素子の動作原理について説明する。図14に示す高分子1304、液晶1305は、同様の屈折率異方性を示し、配向方向と平行方向における屈折率は1.5 程度あり、配向方向と垂直方向の屈折率は1.7 程度である。
【0150】従って、図14(a) に示すように電界無印加時には、液晶1305が高分子1304と同方向に配向している為、基板1301,1308と垂直方向な方向における液晶1305と高分子1304の屈折率は1.5 に一致する。従って、この時この素子は、ほとんど透明な状態となり、透過率は50%となった。
【0151】一方、図14(b) に示すように電極1302,1307との間に電源を接続して、高分子液晶複合層に電界を印加すると、高分子1304の配向方向はそのままであるのに対し、液晶1305だけが電界方向と垂直方向、つまり、基板1301,1308に対して平行な方向に配向する。このため、基板1301,1308と垂直な電界方向において、高分子1304の屈折率は1.5 程度のままであるのに対し、液晶1305の屈折率は1.7 程度となる。
【0152】従って、電界方向における高分子1304と液晶1305での屈折率の差は0.2程度となり、基板1301,1308と垂直な方向から入射した光は従来の2倍程度で散乱することになる。この為、この時この素子は、電界方向において、白く白濁する。二つの電極間に10KHz,20Vなる交流電界を印加したところ、透過率は5%であった。
【0153】また、上記実施例では、液晶高分子複合層を配向させるためのラビング処理は不必要であり、垂直配向処理だけでよいので工程が簡略化される利点がある。また、電圧無印加の状態で液晶が垂直配向しているので紫外線に対して寿命が長くなる。
【0154】尚、高分子としては液晶と混合しても、液晶相を示す物であり、高分子中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されているものである。更に、液晶相で紫外線の照射により重合できなければならない。また、高分子中にベンゼン骨格を有しなくとも、液晶とともに配向する高分子であれば同様に用いることができる。
【0155】(実施例14)本実施例は、熱硬化型高分子を用いた例である。基本的構成は、図14に示す実施例13と同様である。
【0156】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極を蒸着法により形成した。これらの基板をLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いして130℃にて乾燥し配向膜とした。これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせてセル厚10μmになるように固定した。この間隙にエポキシ系樹脂と液晶とを1:9での割合で100 ℃にて混合したものを封入した。エポキシ系樹脂としてYDF−170(商品名,東都化成製)を使用し、硬化剤121(商品番号,油化シェル製)を添加した。液晶としては、RDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、エポキシ系樹脂と液晶との混合物を徐冷し、これらをを配向させ、室温にて1日放置することにより、エポキシ系樹脂を硬化させると共に液晶と高分子とを相分離させた。
【0157】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率は40%であった。
【0158】また、二つの電極間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は10%であった。
【0159】尚、高分子としては、は液晶と混合してもしかも、液晶相を示し、液晶相で熱硬化重合できるもので、高分子骨格中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されていれば液晶との親和性が向上するので配向しやすくなり好都合である。また、高分子中にベンゼン骨格を有しなくとも、液晶とともに配向する高分子であれば同様に用いることができる。たとえば、4,4′−n−プロピルビフェニル−ω,ω′−ジイソシアネートとビフェニルのジオールを混合し重合させることもできる。
【0160】(実施例15)本実施例は、熱可塑型高分子を用いたものである。基本的構成は、図14に示す実施例13と同様である。
【0161】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極を蒸着法により形成した。これらの基板をLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いし130℃にて乾燥し配向膜とした。これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせてセル厚10μmになるように固定した。この間隙に熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンと液晶とを100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としてはRDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンと液晶とを混合したものを徐冷し、これらを配向させ、室温とすることにより、熱可塑樹脂ポリαメチルスチレンを硬化させると共に液晶と高分子とに相分離させた。
【0162】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率は50%であった。
【0163】また、二つの電極間に10KHz,6Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は10%であった。
【0164】この特性はそれほど良好な特性ではないが、熱可塑樹脂の構造を最適化すれば更に特性の向上が期待される。具体的にはビフェニル基を側鎖あるいは主鎖に導入するなど、液晶分子となじみやすい骨格を導入すれば良い。
【0165】尚、高分子としては、は使用温度より高温で液晶と相溶し、更に相溶した液晶相で配向し、冷却して高分子と液晶を相分離できる熱可塑性高分子であれば同様に用いることができる。
【0166】(実施例16)本実施例は、高分子液晶を用いたものである。基本的構成は、図14に示す実施例13と同様である。
【0167】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極を蒸着法により形成した。これらの基板をLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いし130℃にて乾燥し配向膜とした。これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせてセル厚10μmになるように固定した。この間隙に化10に示すシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶と液晶とを120℃にて混合したものを封入した。液晶としは、RDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、側鎖型高分子液晶と液晶との混合物を徐冷して、これらを配向させ、70℃として液晶と高分子液晶を相分離させた。
【0168】
【化10】


【0169】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率は80%であった。
【0170】また、二つの電極間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における透過率は10%であった。
【0171】尚、高分子としては、液晶は使用温度より高温で液晶と相溶し、更に相溶した液晶相で配向し、冷却して高分子と液晶を使用温度にて相分離できるものであれば側鎖型主鎖型を問わず同様に用いることができる。たとえば、化11〜化18などの高分子液晶を用いることができる。もちろんここに示した高分子はほんの一例であり、液晶との組合せ等により、構造の最適化を図ることが望ましい。
【0172】また、本実施例において、液晶と高分子液晶との相溶性が悪い場合には液晶と高分子液晶の共溶媒を用いることもできる。この場合、高分子液晶としては共溶媒を混合した時点で液晶相となるものを使用し、配向させた後に溶媒を留去し、液晶と高分子液晶とを相分離させると良い。
【0173】
【化11】


【0174】
【化12】


【0175】
【化13】


【0176】
【化14】


【0177】
【化15】


【0178】
【化16】


【0179】
【化17】


【0180】
【化18】


【0181】(実施例17)本実施例は、実施例13、実施例14、実施例15及び実施例16において反射型としたものである。基本的構成は、図14に示す実施例13と同様である。ただ、図14において基板1308上に形成した電極1307を透明導電材料からアルミニウム等の金属材料にしたものである。
【0182】本実施例では、電極1307が反射層を兼ねる為、実施例13と同じセル厚とした場合、散乱時の透過率(反射率)を半減することができた。即ちコントラストが2倍となった。実施例13と同じコントラストを得るには半分のセル厚で良いため駆動電圧を半分にできる利点がある。具体的には、セル厚5μmで駆動電圧5Vとすることができた。
【0183】(実施例18)本発明の第18の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図15に示す。本実施例は、複合2端子素子であるMIM素子を組み合わせたものである。基本的構成は、図14に示す実施例13と同様である。ただ、一方の基板1808にMIM素子を形成したものである。
【0184】この素子の作製法について説明する。先ず、一方の基板1808の表面に電極1811としてタンタルを蒸着し、表面を酸化して絶縁層1810とした。この上に画素電極1809としてアルミニュウムを蒸着した。このようにMIM素子を形成した基板と、電極1802の形成された基板1801とをLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いし130℃にて乾燥し配向膜1803,1806とした。これら二枚の基板1801,1808の配向膜1803,1806を向かい合わせてセル厚7μmになるように固定した。
【0185】この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶を1:10で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としては、RDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶の混合物を徐冷し、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射することにより、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルを硬化させると共に液晶1805と高分子1804とを相分離させた。
【0186】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率50%が得られた。
【0187】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子1104と液晶1105の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における、反射率は5%であった。本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、一方の基板に反射層を形成することにより、MIM素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。
【0188】尚、高分子としては、は実施例14、実施例15及び実施例16に示した高分子でも良い。本実施例では、反射膜を兼ねる電極1809は、MIM素子の形成された基板1808に設けたが、基板1808と対向する基板1801の電極1802上に反射層を兼ねさせるか、その上に反射層を積層させることもできる。
(実施例19)本発明の第19の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図16に示す。本実施例は、3端子素子であるTFT素子を組み合わせたものである。基本的構成は、図14に示す実施例16と同様である。ただ、基板1908にTFT素子を形成した点が異なる。
【0189】この素子の作製法について説明する。先ず、一方の基板1908の表面にゲート電極1917を形成してその上にゲート絶縁層1916を設け、さらに半導体層1915、ドレイン電極1914、ソース電極1913、反射層を兼ねる画素電極1909を形成した。このようにTFT素子を形成した基板1908の上に配向膜1906を形成した。他方の基板1901については、電極1902を形成して、その上に配向膜1903を形成した。この配向処理は実施例13に同じである。次に、これらの基板1901,1908を組み合わせ、セル厚7μmとなるように固定して周囲をモールドした。
【0190】この間隙にシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶と液晶とを120℃にて混合したものを封入した。液晶としては、RD00775(製品番号,ロディック社製)を使用した。引続き、側鎖型高分子液晶と液晶との混合物を徐冷し、これらを配向させ、70℃として液晶と高分子液晶を相分離させた。
【0191】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、反射率50%が得られた。
【0192】また、二つの電極間に10KHz,7Vなる交流電界を印加したところ、高分子1904と液晶1905の屈折率の差により、光散乱状態となった。光散乱状態における、反射率は5%であった。本実施例では走査線数400 本、信号線数640 本なる表示体の試作を行ったが、全画面で均一な表示を得ることができた。このように、一方の基板に反射層を形成することにより、TFT素子と組み合わせることが可能となり、大容量表示体への応用が可能となった。
【0193】尚、高分子としては、は実施例16に示した高分子液晶のほか、実施例13、実施例14及び実施例15に示した高分子も同様に用いることができる。上記実施例では、MIM素子、TFT素子への応用について反射型での実施例を示したが、もちろん表示素子部の駆動電圧が低減されれば透過型でのMIM素子、TFT素子への応用も実現できる。あるいは、MIM素子、TFT素子の耐圧が向上すれば、そのまま透過モードでMIM素子、TFT素子と組み合わせることができる。
【0194】実施例13〜19では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。用いる配向膜はLP−8T(商品名,信越シリコン製)に限らず、DMOAP、ステアリン酸など、液晶を垂直配向させる物を広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。液晶は、負の誘電異方性を持つものを用いることができる。また、液晶の複屈折率Δnはできるだけ大きい方がよい。
【0195】液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に2色性色素、例えばS−314(製品番号,三井東圧化学製)を混入すれば、電界印加により色素の色に散乱、電界除去で透明となる。高分子の屈折率については、複屈折性を有し、常光屈折率が液晶の常光屈折率と同じになる物が望ましい。
【0196】本発明は以上の実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0197】(実施例20)本発明の第20の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図18に示す。本実施例は、高分子前駆体として光重合性前駆体を用いたものである。その製造装置の概念図を、図17に示す。
【0198】この素子の製造方法について説明する。先ず、二枚の基板2001,2008の表面に電極2002,2007を蒸着法により形成した。これらの電極2002,2007の表面にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜2003,2006とした。これらの配向膜2003,2006を150 ℃にて焼成した。その後、この配向膜2003,2006の表面をさらし木綿で一方向に擦った。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。これら二枚の基板2001,2008の配向膜2003,2006を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0199】この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルとネマチック液晶を1:10で100 ℃にて混合したものを封入した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分として、S−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルとネマチック液晶の混合物を徐冷し、これらを配向させ、室温にて、図17に示すように紫外線照射装置2009により紫外線を照射した。これにより、パラフェニルフェノールメタクリル酸エステルが硬化すると共に高分子2004と液晶2005として相分離した。
【0200】紫外線照射装置2009では、紫外線照射用ランプとして、4Wの紫外線蛍光灯(NEC社製GL−4殺菌ランプ)を2本用い、ランプから1センチ離れた位置において表示素子に対して紫外線を20分照射した。この紫外線蛍光灯は254nmに発光強度のピークがあり、照射量は 5mW/cm2である。また、ランプの照射量を強くすると、生成する高分子の粒径が小さくなり、散乱強度を稼げない。しかも、高分子の粒径を小さくすると、液晶中に高分子粒子が浮遊する構造となり、配向して重合固定されるはずの高分子粒子が固定されず、電界により泳動するので安定した表示が得られない。
【0201】そのため、紫外線照射用ランプの照射量は50mW/cm2以下が望ましく、更に望ましくは10mW/cm2以下が良い。つまり、弱い発光強度でゆっくり時間をかけて重合させるのがよい。以上の条件を満足すれば光重合用蛍光灯でなくとも他のランプを用いることができる。
【0202】このようにして製造した素子の断面の電子顕微鏡写真を図19に示す。図19から、生成した高分子の粒子が配向方向に沿って配列していることが判る。
【0203】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率80%が得られた。
【0204】また、二つの電極間に10KHz,20Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。このときの透過率は、1%であった。また、図20に示すように印加電圧に対する透過光変化における閾特性は急峻となり、その結果、時分割駆動法で走査線数16本を走査することができた。
【0205】尚、高分子としては、前駆体にはビフェニル骨格など液晶の骨格に似た骨格を含んでいれば広く用いることができる。また、重合活性部の構造は紫外線重合できる物であればエチレン骨格に限らない。たとえばエポキシ系の高分子前駆体を用いることができる。本実施例は基板に垂直配向処理した場合にも応用できる。
(実施例21)本実施例は、高分子前駆体として熱重合性前駆体を用いたものである。基本的構成は、図18に示す実施例20と同様である。
【0206】この素子の製造方法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極層を蒸着法により形成した。これらの基板表面にポリイミドとしてSP−740(商品名,東レ社製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜とした。これらの基板を250 ℃にて焼成した。その後,この配向膜表面をさらし木綿で一方向に擦った。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。これら二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0207】この間隙にエポキシ系樹脂とネマチック液晶とを1:9の割合で100 ℃で混合したもの封入した。エポキシ系樹脂としては、YDF−170(商品名,東都化成製)を使用し、硬化剤121(商品名,油化シェル製)を添加した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、エポキシ系樹脂とネマチック液晶の混合物を徐冷し、これらを配向させ、温度コントローラ(図17参照)を用いて50℃にて2時間放置して、エポキシ系樹脂を硬化させると共に液晶と高分子を相分離させた。このように形成した高分子粒子の形状は図19に類似する物であった。熱硬化条件は用いる高分子前駆体により異なるので、その都度温度及び硬化時間を調整することが望ましい。要するに図19に示したような構造になるように硬化温度を決めることである。
【0208】尚、高分子としては、前駆体にはビフェニル骨格など液晶の骨格に似た骨格を含んでいれば広く用いることができる。また、重合活性部の構造は熱重合できる物であればエポキシ骨格に限らない。
【0209】(実施例22)本実施例は、高分子として熱可塑性高分子を用いたものである。基本的構成は、図1818に示す実施例20と同様である。
【0210】この素子の製造方法について説明する。先ず、二枚の基板の表面に電極層を蒸着法により形成した。これらの基板表面にポリイミドとしてSP−740(商品名,東レ社製)の2%溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜とした。これらの基板を250 ℃にて焼成した。その後、この配向膜表面をさらし木綿て一方向に擦った。擦る方向は二枚の基板を組み合わせたときに擦る方向がほぼ平行となるようにした。これらの二枚の基板の配向膜表面を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0211】この間隙にポリα−メチルスチレンとネマチック液晶とを120℃にて15:85の比率で混合したものを封入した。ネマチック液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を用い、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。液晶相にて液晶と高分子との混合物を配向させ温度コントローラ(図17参照)により50℃/min の冷却速度で冷却し、室温として、液晶と高分子液晶を相分離させた。このように生成した高分子粒子の形状は図19に類似した物であった。
【0212】このようにして製作された高分子分散型液晶表示素子は、電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率20%が得られた。
【0213】また、二つの電極間に10KHz,10Vなる交流電界を印加したところ、高分子と液晶の屈折率の差により、光散乱状態となった。このときの透過率は、1%であった。
【0214】尚、熱可塑性高分子は、上述したものに限るものではなく、液晶と相溶してかつ相溶した状態で液晶相を有する物で、使用温度では液晶と相分離している物であれば用いることができる。また、この条件を満たす高分子液晶も同様に用いることができる。
【0215】高分子を配向した状態で相分離させ、かつ相分離した高分子の粒径を最も効率よく光散乱する粒径に揃えるための冷却速度は、高分子の種類により異なるので図19に示した形状あるいはこれに類似した形状が得られるようにその都度最適化するのが望ましい。
【0216】尚、配向膜はここに示した物で無くともよく、物理的な意味の液晶を配向できるものを広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。二枚の基板表面を配向処理する場合には互いの配向処理方向については用いる用途などに応じて最適化すれば良い。
【0217】液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものがよい。誘電異方性の負の物も用いることができるが、その際は配向処理として垂直配向処理をしなければならない。液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。混合する比率は液晶に対して0.1 %から5%の間が望ましい。
【0218】上記実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、配向膜は両側基板に形成する必要はなく片側基板処理だけでも効果を発揮する。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。
【0219】紫外線照射装置および温度コントローラは素子の片側に配置したが、両側に配置しても良い。
【0220】本発明は以上の実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。もちろん、2端子素子、3端子素子と組み合わせて大容量表示体を作製することも容易である。
【0221】(実施例23)本発明の第23の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図21に示す。本実施例は、液晶として正の誘電異方性を有するものでも、負の誘電異方性を有する物でも使用することができるものである。
【0222】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板2301、2308の表面に電極2302、2307を蒸着法により形成した。一方の基板2301の表面にLP−8T(商品名,信越シリコン(株)製)の0.5%アルコール溶液を2000r.p.m.にてスピンコートして垂直配向膜2303とした。その後、この配向膜2303を120℃にて焼成した。垂直配向処理はここに示した方法のほか、垂直あるいは垂直に近い角度で液晶の配向する方法であれば広く用いることができる。他方の基板2308の表面にポリイミドとして、JIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液(溶媒はジメチルアセトアミド)を2000r.p.m.にてスピンコートして水平配向膜2306とした。この水平配向膜2306を150 ℃にて焼成した。
【0223】その後、この水平配向膜2306の表面をさらし木綿で一方向に擦った。水平配向処理はここに示した方法の他、ほかの高分子配向膜も用いることができ、ほかに斜方蒸着法、LB膜法など、液晶が配向する方法であれば広く用いることができる。これら二枚の基板2301,2308の配向膜2303,2306を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。この間隙に紫外線硬化型高分子前駆体と液晶とを1:9で100 ℃にて混合したものを封入した。紫外線硬化型高分子前駆体としては、ビフェノールメタクリレートを使用した。液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。
【0224】この紫外線硬化型高分子前駆体と液晶との混合物を除冷して、これらを配向させ、紫外線を照射して紫外線硬化型高分子前駆体を重合させるとともに高分子2304と液晶2305として相分離させた。高分子2304及び液晶2305は、基板2301に近い部分は、垂直配向膜2302の影響により、基板2301に対して垂直方向に配向するが、基板2308に近い部分は、水平配向膜2306により、基板2308に対して平行方向に配向する。従って、この高分子液晶複合層に電界を印加すると、正の誘電異方性を有する液晶を使用した場合には、基板2308に近い範囲の液晶2305が電界に対して応答し、逆に、負の誘電異方性を有する液晶を使用した場合には、基板2301に近い範囲の液晶2305が電界に対して応答することになる。
【0225】このようにして製造された素子の電気光学特性を測定した。その結果を図22に示す。図22は、二つの電極間に10KHz の交流電界を印加し、電圧値を変化させた時の電圧値と透過率の関係を示している。従来の素子の電気光学特性を図23に示す。両図を比較すると明らかなように、本実施例は前述した実施例に比べ格段に急峻性が改善されている。
【0226】次に、本実施例の素子に時分割駆動波形を印加した時のコントラストを測定した。コントラストは1/4デューティで13:1、1/8デューティで5:1、1/16デューティで3:1であった。従来は時分割駆動は1/3デューティが限界であったので格段に改善されている。
【0227】尚、本実施例では液晶としては、正或いは負の誘電異方性を有する液晶の何れもを使用することができる。液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。
【0228】他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内である必要がある。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。高分子としては、液晶と混合した状態で配向し、その状態で光重合できる高分子前駆体であれば同様に用いることができる。液晶分子に似た骨格を有する高分子前駆体であればここに示した例と同様にコントラスト透過率ともに優れた表示素子を作製することができる。
【0229】(実施例24)本実施例は、高分子として高分子液晶を用いたものである。基本的構成は、図21に示す実施例23と同様である。ただ、二枚の基板の隙間に、化19に示すシアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶と液晶とを120℃にて1:9で混合したものを封入して除冷し、これらを配向させ、70℃とすることにより、液晶と高分子液晶を相分離させた点が異なる。尚、液晶としては、RDP80616を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%添加した。
【0230】
【化19】


【0231】このようにして製造された素子について、電気光学的特性を測定したところ、実施例23と同一の結果がえられた。
【0232】尚、高分子としては、液晶は使用温度より高温で液晶と相溶し、更に相溶した液晶相で配向し、冷却して高分子と液晶を使用温度にて相分離できるものであれば側鎖型主鎖型を問わず同様に用いることができる。たとえば、化20〜化27に示す高分子液晶を用いることができる。もちろんここに示した高分子はほんの一例であり、液晶との組合せ等により、構造の最適化を図ることが望ましい。また、本実施例において、液晶と高分子液晶との相溶性が悪い場合には液晶と高分子液晶の共溶媒を用いることもできる。その場合、高分子液晶としては共溶媒を混合した時点で液晶相となるものを使用し、配向させた後に溶媒を留去し、液晶と高分子液晶とを相分離させると良い。
【0233】
【化20】


【0234】
【化21】


【0235】
【化22】


【0236】
【化23】


【0237】
【化24】


【0238】
【化25】


【0239】
【化26】


【0240】上記実施例では、二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。液晶としては、正或いは負の誘電異方性を有する液晶を使用することができる。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。本発明は透過型としてだけではなく、反射型として用いることもできる。また、3端子素子あるいは2端子素子と組み合わせて大容量表示体を作製することもできる。上記実施例では、シアノビフェノール基を有する側鎖型高分子液晶を使用したが、これに限るものではなく、熱可塑型高分子や熱硬化型高分子も同様に用いることができる。
【0241】本発明は以上の実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0242】(実施例25)本発明の第25の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図24に示す。本実施例は、液晶に2色性色素を添加し、更に、一方の電極に反射層を兼ねさせたものである。
【0243】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板2501,2508に電極2502,2507を蒸着法により形成した。電極2507は反射層を兼ねる為、アルミニウムを使用した。電極2502は、透明電極(ITO:indium-tin-oxide) とした。電極2502,2507上にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液(溶媒はジメチルアセトアミド)を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜2503,2506とし、更に150 ℃にて焼成した。その後、配向膜2503,2506の表面をさらし木綿で一方向に擦った。水平配向処理はここに示した方法の他、ほかの高分子配向膜も用いることができ、ほかに斜方蒸着法、LB膜法など、液晶が配向する方法であれば広く用いることができる。配向膜を設けず基板をこするだけでもよい。
【0244】これら二枚の基板2501,2508の配向膜2503,2506を向かい合わせて、セル厚が5μmになるように固定した。この間隙に紫外線硬化型高分子前駆体と液晶を15:85で100 ℃にて混合して封入した。紫外線硬化型高分子前駆体としては、ビフェノールメタクリレートを使用した。液晶としては正の誘電異方性を有するLV−2Rを使用し、これにカイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)、2色性色素としてS−344をそれぞれ97:1:2の割合で混合した。引続き、紫外線硬化型高分子前駆体と液晶の混合物を徐冷して、これらを配向させ、更に紫外線を照射して紫外線硬化型高分子前駆体を重合すると共に液晶2505と高分子2504として相分離させた。
【0245】このようにして製造された表示素子の動作原理について説明する。図24に示す高分子2504、液晶2505は、同様の屈折率異方性を示し、配向方向と平行方向における屈折率は1.5 程度あり、配向方向と垂直方向の屈折率は1.7 程度である。
【0246】従って、図24(a) に示すように電界無印加時には、液晶2505が高分子2504と同方向に配向している為、基板2501,2408と垂直方向な方向における液晶2505と高分子2504の屈折率は一致する。ここで、2色性色素は、液晶2504に添加され、液晶2505と同方向に配向する為、液晶2505の配向方向、つまり、基板2501,2408に対して垂直な方向から入射した光を最も効果的に吸収する。従って、この時この素子は、この2色性色素の色である黒色が表示されることになる。
【0247】一方、図24(b) に示すように電極2502,2507との間に電源を接続して、高分子液晶複合層に電界を印加すると、高分子2504の配向方向はそのままであるのに対し、液晶2505だけが電界方向、つまり、基板2501,2508に対して垂直な方向に配向する。このため、基板2501,2508と垂直な電界方向において、高分子2504の屈折率は1.7 程度のままであるのに対し、液晶2505の屈折率は1.5 程度となる。従って、電界方向における高分子2504と液晶2505での屈折率の差は0.2 程度となり、基板2501,2508と垂直な方向から入射した光は散乱することになる。ここで、2色性色素も液晶2505と同方向、つまり、電界方向に配向する為、電界方向においては色素の吸収はなくなり、白く白濁する。
【0248】カイラル成分をネマチック液晶2508に混合しないと、基板2501,2508に対して垂直に入射する光のうち、液晶2505の動き得る平面、つまり、図24における紙面と平行な面に振動方向を持つ偏光のみ変調を受けるため、コントラストを十分に向上させることができない。本実施例のようにカイラル成分を液晶2505に混合すると、基板2501,2508に対して垂直に入射する光のうち、液晶の動き得る平面に対して平行以外の方向に振動方向を持つ偏光に対しても有効に変調がかかるために、十分にコントラストを向上させることができる。
【0249】次に素子の電気光学特性を測定した。二つの電極間に1KHzの交流電界を印加し、電圧値を変化させた時の電圧値と反射率の関係を測定したところ、図25に示す結果が得られた。従来の反射型高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性に比べ、駆動電圧が約10分の1になり、見栄えも改善されている。電極2502,2507を文字の形状としておけば、この表示素子は黒い鏡の中に白い文字が浮きでるように表示される。また、急峻性も優れており、1/4デューティの時分割駆動も可能であった。
【0250】尚、液晶としては、上記実施例に示すものに限らず、また、液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中での2色性色素の含有量は1〜10%、望ましくは2〜5%である。これは色素の種類及び用途により最適化すれば良い。液晶中でのカイラル成分の含有量は0.1 〜5%程度がよい。もちろんこれは用いるカイラル成分により変わり、コレステリックピッチにして0.3〜0.006μmで良い結果が得られる。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0251】高分子前駆体としては、ビフェノールエステルのほか、液晶とよく混ざるもので混ざった状態で液晶相を有し、しかも、光で重合するものであれば用いることができる。液晶分子に似た骨格を有する高分子前駆体であればここに示した例と同様にコントラスト透過率ともに優れた表示素子を作製することができる。反射層を兼ねる電極としては、アルミニウムの他、光を反射する材料であれば用いることができる。
【0252】(実施例26)本実施例は、基本的構成は、図24に示す実施例25と同様であり、電極2507として透明電極を用い、基板2508の裏側に反射層を設けたものである。
【0253】本実施例によれば、正面から表示を見る場合は実施例25と同様の表示が観察され、更に、斜め方向から見ると基板2508の厚さ分の視差ができて像が2重に見える特徴がある。
【0254】本発明は、MIM素子、あるいはTFT素子などのアクティブ素子と組み合わせて明るい大容量コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0255】(実施例27)本発明の第27の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図26に示す。本実施例は、高分子としてビフェニルメタノールのメタクリル酸エステルおよびビフェノールのメタクリル酸エステルを用いたものである。
【0256】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板2701,2708の表面に電極2702,2707を蒸着法により形成した。電極2702,2707上にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液(溶媒はジメチルアセトアミド)を2000r.p.m.にてスピンコートして配向膜2703,2706とした。この配向膜2703,2706を150 ℃で焼成した。その後、配向膜2703,2706の表面をさらし木綿で一方向に擦った。水平配向処理はここに示した方法の他、ほかの高分子配向膜も用いることができ、ほかに斜方蒸着法、LB膜法など、液晶が配向する方法であれば広く用いることができる。これら二枚の基板2701,2708の配向膜2703,2706を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0257】この間隙に紫外線硬化型高分子前駆体としてビフェノールメタクリレートとビフェニルメタノールのメタクリル酸エステルの1:1混合物と、液晶とを1:9の割合で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としては、LV−R2(製品番号,ロディック社製)にカイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、高分子前駆体と液晶との混合物を除冷しして、これらをを配向させ、紫外線を照射して高分子前駆体を重合すると共に、液晶2705と高分子2704として相分離させた。
【0258】このようにして製造された素子の電気光学特性を測定した。二つの電極間に10KHz の交流電界を印加し、電圧値を変化させた時の電圧値と透過率の関係を示したところ、図27に示す結果が得られた。従来の高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を図28に示す。両図に示すように、本実施例の素子は従来に比べ格段に急峻性が改善されている。次に時分割駆動波形を印加してコントラストを測定した。この時のコントラストは1/4デューティで33:1、1/8デューティで27:1、1/16デューティで4:1であった。従来は時分割駆動は1/3デューティが限界であったので格段に改善されている。
【0259】尚、液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1%〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内である必要がある。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0260】ビフェニルメタノールエステルの含有量が増えるほど閾特性における急峻性は良好となるが、余り加えすぎると電界に対して光学応答しなくなる。そこで高分子中におけるビフェニルメタノールエステルの許容含有量は用いる液晶の種類により大きく変化するが液晶としてLV−R2(製品番号,ロディック社製)あるいはRDP80616を用いる際には高分子中における含有比率は80%以下である必要がある。
【0261】高分子としては、液晶と混合した状態で配向し、その状態で光重合できる高分子前駆体であれば同様に用いることができる。ただし本実施例の効果を得るためには混合する際の一つの高分子前駆体はビフェニルメタノールのビニルエステル誘導体である必要がある。液晶分子に似た骨格を有する高分子前駆体であればここに示した例と同様に閾特性、コントラスト透過率ともに優れた表示素子を作製することができる。
【0262】(実施例28)本実施例は、高分子としてナフトールのメタクリル酸エステルを用いたものである。基本的構成は、図26に示す実施例27と同様である。
【0263】この素子の作製法について説明する。基板の配向処理及び組立までは実施例27に同じである。二枚の基板の間隙に紫外線硬化型高分子前駆体としてビフェノールアクリレートとナフトールのアクリル酸エステルの1:1混合物と、液晶を1:9で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としては、RDP80616を使用し、カイラル成分としてS−1011(製品番号,メルク社製)を1%混合した。引続き、紫外線硬化型高分子前駆体と液晶との混合物を除冷して、これらを配向させ、紫外線を照射して紫外線硬化型高分子前駆体を重合すると共に液晶と高分子を相分離させた。
【0264】このようにして製造された素子の電気光学特性を測定したところほとんど実施例27と同じ電気光学特性となった。時分割駆動特性についてもコントラストは1/4デューティで20:1、1/8デューティで15:1、1/16デューティで4:1であった。
【0265】液晶の含有量は高分子前駆体に対して50〜95%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。液晶中に混入させるカイラル成分はここに示した物でなくとも用いることができる。但し、液晶のピッチを決める旋回能が重要である。すなわち、カイラル成分を混合したときの液晶のピッチは、P=1/34Cのように書き表せる。ここでPはピッチで単位はμm、Cは濃度で単位は%である。濃度は0.1 %〜5%程度であり、ピッチに直すと0.29〜0.0059μmである。他のカイラル成分を用いる場合でも液晶のピッチがこの範囲内である必要がある。もちろんカイラル成分が多成分系でも何等問題ない。
【0266】ナフトールエステルの含有量が増えるほど閾特性における急峻性は良好となるが、余り加えすぎると電界に対して光学応答しなくなる。そこで高分子中におけるナフトールエステルの許容含有量は用いる液晶の種類により大きく変化するが液晶として、LV−R2(製品番号,ロディック社製)あるいはRDP80616を用いる際には高分子中における含有比率は80%以下である必要がある。高分子としては、液晶と混合した状態で配向し、その状態で光重合できる高分子前駆体であれば同様に用いることができる。ただし本実施例の効果を得るためには混合する際の一つの高分子前駆体はナフトールのビニルエステル誘導体である必要がある。液晶分子に似た骨格を有する高分子前駆体であればここに示した例と同様に閾特性、コントラスト透過率ともに優れた表示素子を作製することができる。
【0267】本発明は以上の実施例のみならず、さらに改良して明るい大中容量コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0268】(実施例29)本発明の第29の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図29に示す。
【0269】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板2901,2908の表面に電極層2902,2907を蒸着法により形成した。これらの基板をLP−8T(商品名,信越シリコン製)の2%溶液に30分浸して水洗いして130℃にて乾燥し配向膜2903,2906とした。これら二枚の基板2901,2908の配向膜2903,2906を向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。
【0270】この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶を15:85で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としては、RDN00775(製品番号,ロディック社製)を使用し、これに2色性色素としてはS−344(製品番号,三井東圧染料社製)を98:2で割合で混合した。引続き、高分子前駆体及び液晶の混合物を徐冷して、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射して、液晶2905と高分子2904とを相分離させた。
【0271】このようにして製造された素子は、図30に示すように電圧無印加の状態において、ほとんど透明であり、透過率は68%であり、二つの電極間に10KHz20Vなる交流電界を印加すると、光は遮断され透過率は10%であった。
【0272】本実施例の表示素子の動作原理を説明する。図29に示したように高分子2904は基板2901,2908に対して垂直に配向し、液晶2905と同様の屈折率異方性を示し、電界方向での屈折率は1.5 程度である。このため、図29(a) に示すように電界無印加時には液晶2905と高分子2904の電界方向での屈折率の差がなくなり、また、2色性色素も液晶2905と同方向に配向するため無色となり、透明状態となる。
【0273】また、図29(b)に示すように電界を印加すると高分子2904はそのままで液晶2905だけ基板2901,2908に対して水平に配向するために、高分子2904の屈折率は1.5 程度のままであるのに対し、液晶2905の屈折率は1.7 程度となる。そのため高分子2904と液晶2905での屈折率の差は0.2程度となり、また、2色性色素が液晶と同方向に配向するため色素の色に散乱する。
【0274】尚、高分子としては液晶と混合してもしかも、液晶相を示す物であり、高分子中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されているものである。更に液晶相で紫外線重合できなければならない。また、高分子中にベンゼン骨格を有しなくとも、液晶とともに配向する高分子であれば同様に用いることができる。配向膜はLP−8T(商品名,信越シリコン製)に限らず、DMOAP、ステアリン酸など、液晶を垂直配向させる物を広く使用できる。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。
【0275】液晶はここに示したものに限らず、誘電異方性が負の液晶であればよいのであるが、屈折率異方性が大きい方がコントラストを大きくすることができる。液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。2色性色素はここに示したものに限らないが、2色比の大きいものの方がコントラストを大きくすることができる。
【0276】(実施例30)本実施例は、実施例29において反射型としたものである。図29に示す実施例29において基板2908上に形成した電極2907を透明導電材料からアルミニウム等の金属材料にしたものである。
【0277】本実施例では、実施例29と同じセル厚とした場合、散乱時の透過率(反射率)を半減することができた。即ちコントラストが2倍となった。実施例29と同じコントラストを得るには半分のセル厚で良いため駆動電圧を半分にできる利点がある。具体的には、セル厚5μmで駆動電圧5Vとすることができた。
【0278】本実施例のように、電極2907に反射層を兼ねさせると、透過状態の部分は裏からの反射により鏡のようになってとても見ずらいので、素子の表面に散乱度の低い散乱板を配置すると良い。また、電極2907を通常の透明電極とし、素子の裏側に散乱板付きの反射板を配置しても良い。
【0279】上記実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、セル厚についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。
【0280】本発明は、上記実施例のみならず、MIM素子やTFT素子と組み合わせることも可能となり、大容量表示体への応用も可能である。また、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0281】(実施例31)本発明の第31の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図31に示す。本実施例は、位相差板3108、反射層3109を設けたものである。
【0282】この素子の作製方法について説明する。先ず、表面の平坦なガラス基板3101,位相差板3108の表面に透明電極3102,3107を蒸着法により形成した。位相差板3108としては、四分の一波長板を使用した。引続き、ガラス基板3110の表面にアルミニウムの反射層3109を蒸着法により形成した。透明電極3102,310の上にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%ジメチルアセトアミド溶液を3000r.p.m.で30秒間スピンコートして配向膜3103,3106とした。この配向膜3103,3106を130℃にて焼成し、ラビング処理を施した。配向処理としては、配向膜3103,3106を付けずに、ラビング処理だけでも良い。配向膜3103及び配向膜3106の配向方向は平行とし、四分の一波長板の光軸は配向処理の方向と45度の角度をなすように、基板3101と位相差板3108を配置した。
【0283】そして、基板3101と位相差板3108の配向膜3103,3106を向かい合わせて、セル厚が5μmになるように固定した。この間隙にビフェノールメタクリル酸エステルと液晶を15:85で100 ℃に混合したものを封入した。液晶としては、ZLI−3926(商品名,メルク社製)を使用した。引続き、高分子前駆体と液晶との混合物を徐冷して、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射して、高分子前駆体を効果させると共に液晶3105と高分子3104として相分離させた。その後、反射層21099を形成した基板3110を重ね合わせた。
【0284】本実施例に係る素子の動作原理を図34を参照して説明する。本実施例の素子に入射する自然光3111は二つの偏光成分で分かれる。その一つは高分子3104の配向方向と平行する偏光3112であり、もう一つは高分子3104の配向方向と垂直する偏光3113である。
【0285】この素子に電圧を印加しない場合は、図34R>4(a) に示すように液晶3105と高分子4105の屈折率は等しいので、高分子液晶複合層に入射した自然光3111は、、反射層3109で全反射して、高分子液晶複合層及び位相差板3108を往復して通過する。つまり、電圧無印加の状態においては、単なる反射層3109により反射するだけである。 この素子に電界を印加すると、図34(b)に示すように液晶3105が電界に応答して液晶分子が電界方向に回転し、液晶3105と高分子3104の屈折率の差が生じる。偏光3112は液晶3105と高分子4104に対して異常光線であるため、液晶3105と高分子3104の屈折率の差の為に散乱する。
【0286】偏光3113は液晶3105と高分子3104に対して常光線であるため、液晶3105と高分子3105の屈折率の差に無関係であり、散乱することはない。偏光3112は、反射層3109の入射の前後において位相差板3108を往復して通過する為、偏光方向が90度回転し、異常光線になって高分子液晶複合層に入射して散乱する。つまり、自然光3111に対する散乱効率は、従来の表示素子に比べ倍になる。
【0287】上述して製造された本実施例の素子の対向する二枚の電極間に10Vの交流電界を印加して、電気的特性を測定したところ、図32示す結果が得られた。また、四分の一波長板のないの反射型表示素子について、同様の測定を行なったところ、図33に示す電気光学特性が得られた。両図に示す結果から明らかなように、本実施例の素子は、従来に比較して散乱効率が優れていることが判る。
【0288】本実施例の反射部の構成は、液晶と高分子を基板に水平に配向させる実施例についてはすべて応用できる。
【0289】(実施例32)本実施例は、実施例31において液晶中に2色性色素を入れたゲストホスト反射型表示素子である。基本的構成は、図31に示す実施例31と同様である。但し、液晶の中に2色性色素としてS−344(製品番号,三井東圧染料社製)を2%添加した。S−344の色素の色は黒色である。
【0290】この素子の動作原理を図36を参照して説明する。この素子に入射する自然光3211は二つの偏光成分にで分かれる。一つは高分子の配向方向と平行な偏光3212、もう一つは高分子の配向方向と垂直な偏光3213である。
【0291】この素子に電圧を印加しない場合は、図36R>6(a)に示すように液晶と高分子の屈折率は等しい。しかし、高分子液晶複合層に入射した自然光3211のうち、色素分子の配向方向と同じである偏光3212は、黒色の色素であるにS−344に効率良く吸収され強度は0に近い。一方、高分子液晶複合層に入射した自然光3211のうち、色素分子の配向方向と垂直である偏光3213は、あまり吸収されず通過する。通過した偏光3213は、反射層により反射する前後において位相差板を往復して通過する為、偏光方向は90度回転される。その後、高分子複合層に入射する時、黒色の色素であるにS−344に効率良く吸収され強度は0に近い。
【0292】この素子に電界を印加すると、図36(b) に示すように色素分子は液晶分子によって電界方向に回転され、偏光3212,3213もほとんど吸収されることはない。この為、図34(b) と同様に、偏光3212,3213は、高分子液晶複合層を往復して通過する際に、液晶と高分子の屈折率の差により、それぞれ分散する為、本実施例の表示素子は、自然光3211に対する散乱効率は従来のものと比べたら倍になる。
【0293】上記方法により製造された素子について、電気的特性を測定したところ、図35に実線で示す結果が得られた。従来の四分の一波長板なしのゲストホスト反射型表示素子について電気光学特性を測定したところ、図35に破線で示す結果が得られた。この結果から明らかなように、本実施例は、従来に比較し、コントラストが向上し、且つ、閾特性が改善されていることが判る。
【0294】(実施例33)本発明の第33の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子の一方の基板を図37に示す。本実施例は、四分の一波長板等の位相差板が基板を兼ねるものである。即ち、基板を兼ねる硬い位相差板3310に反射層3309を蒸着法により形成し、更に、の上に、透明電極3307、配向膜3306を形成したものである。
【0295】本実施例においても、図32のような反射型表示素子の電気光学特性を示した。この反射型表示素子は、図31の構造の素子より基板が一枚減るために軽量化でき、様々な応用が考えられる。
【0296】以上の実施例に於いて、液晶としては複屈折率異方性Δnが大きいもの、高分子前駆体としては液晶と良く混ざり、液晶相を取るもので屈折率の良く似たものを用いると良い。液晶と高分子の比率は95:5から80:20の間がよい。これより液晶は多いと応答しなくなり、液晶が少ないと駆動電圧が高く成りすぎる。
【0297】(実施例34)本発明の第34の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図38に示す。本実施例は、偏光素子として利用されるものである。
【0298】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板3401,3408の表面に電極層3402,3407を蒸着法により形成した。これらの電極3402,3407上にポリイミド(東レ社製のSP740の2%ジメチルアセトアミド溶液)をスピンコートして250℃にて焼成し配向膜3403,3406とした。これら二枚の基板3401,3408の配向膜3403,3406を布で一方向にこすって、擦った方向が平行となるように向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶を15:85で100 ℃にて混合したものを封入した。液晶としてはLV−R2(製品番号,ロディック社製)を使用した。
【0299】引続き、高分子前駆体及び液晶の混合物を徐冷して、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射することにより高分子前駆体を硬化させるとともに液晶3405と高分子3405として相分離させた。
【0300】本実施例の動作原理を説明する。図38に示したように高分子3404は液晶3405に沿って基板3401,3408の配向処理方向に対して平行に配向し、液晶3405と同様の屈折率異方性を示し、電界方向での屈折率1.5 程度である。そのため電界無印加時には図38(a) に示すように液晶3405と高分子3404の電界方向での屈折率の差がなくなり、透明状態となる。
【0301】電界を印加すると、図38(b)に示すように高分子3404の配向方向と平行な方向に振動する偏光については、液晶3405だけ電界方向に配向するために、高分子3404の屈折率は1.5 程度のままであるのに、液晶3405での屈折率は1.7 程度となる。そのため、高分子3404と液晶3405での屈折率の差は0.2 程度となり、光散乱する。一方、高分子3405の配向方向に対して垂直に振動する偏光については、電界を印加しても、高分子3404の屈折率も液晶3405の屈折率も1.5 程度であり屈折率の差がないために光散乱せず透過する。そのため、高分子3405の配向方向に対して垂直に振動する偏光はこの素子を通過することになる。つまり、この素子を偏光素子として利用することができる。
【0302】上述した方法により製造された素子の二つの電極間に10KHz ,20Vなる交流電界を印加すると、配向方向に振動する偏光は100%近く散乱され、これに直交する偏光はほとんど透過した。図39に本発明の偏光素子の電気光学特性図を示す。十分電界を印加すると、一振動方向の偏光が十分散乱され、透過光量が約半分になることがわかる。
【0303】尚、高分子としては液晶として混合してもしかも、液晶相を示すものであり、高分子中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されているものである。さらに液晶相で紫外線重合できなければならない。また、高分子中にベンゼン骨格を有しなくとも、液晶とともに配向する高分子であれば同様に用いることができる。配向膜はポリイミドに限らず、強いて言えば無くてもよく、液晶が配向する処理であれば広く用いることができる。尚、液晶としては、上記実施例に示すものに限らないが、屈折率異方性の大きい液晶を用いるとコントラストを改善することができる。液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。
【0304】(実施例35)本発明の第35の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図40に示す。本実施例は、実施例34に係る素子を偏光素子として、偏光方向が互いに直交するように二枚組合せたものである。基本構成は、実施例34の実施例と同様である。尚、図40R>0において、黒丸は、配向方向が紙面と垂直方向であることを示す。他の図面においても同様である。
【0305】本実施例の動作原理を説明する。電界を印加しない状態においては、図40(a) に示すように、各偏光素子において高分子3404と液晶3405の屈折率は等しい為、それぞれ偏光することなく、入射光はすべて通り抜けてくる。
【0306】電界印加時では図40(b) に示すように、入射光のうち一枚目の偏光素子の高分子3404の配向方向に平行な偏光は一枚目の偏光素子により散乱され、これと直交する偏光は一枚目の素子を素通りし、二枚目の偏光素子に到達する。二枚目の素子に到達した光の偏光方向は二枚目の素子の配向方向と平行であるため有効に光散乱される。つまり、電界印加時では入射光が完全に散乱されることになる。
【0307】本実施例の電気光学特性を図41に示すた。電界無印加時では透過率75%、電界印加時で透過率1%が得られた。
【0308】尚、本発明は、本実施例のみならずMIM素子やTFT素子と組み合わせることも可能となり、大容量表示体への応用も可能である。また、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどにも応用が可能である。
【0309】(実施例36)本発明の第36の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図42に示す。本実施例は高分子前駆体として光硬化型のものを用いたものである。
【0310】この表示素子の製作法について説明する。先ず、表面の平坦な透明基板3601、3608の表面に透明電極3602、3607を蒸着法により形成した。更に、これらの透明電極3602,3607の上にポリイミドとしてJIB(商品名,日本合成ゴム(株)製)の2%溶液を2000r.p.m. にてスピンコートして配向膜3603,3606とした。このように透明電極3602,3607及び配向膜3603,3606の形成された透明基板3601,3608を150 ℃にて焼成した。その後、配向膜3603,3606の表面をさらし木綿で一方向に擦ることにより、配向処理を施した。擦る方向は二枚の透明基板3601,3608を組み合わせたときに、ほぼ平行となるようにした。
【0311】引続き、二枚の透明基板3601,3608を、それらの間隙が10μmとなるように固定した。そして、この間隙に二種の高分子前駆体メタクリル酸4−ビフェニルエステル、メタクリル酸4−フロロフェニルエステルと液晶を7:7:86の割合で100 ℃にて混合してなる液晶高分子複合相を封入した。液晶としては、RDP10248(商品名,ロディック社製)を使用した。引続き、二種類の高分子前駆体と液晶の混合物を徐冷して、これらを配向した。この状態のまま、室温にて紫外線を照射したところ、二種類の高分子前駆体が重合して硬化することにより、液晶3605と高分子3604を相分離させた。
【0312】このようにして製造された素子の比抵抗を測定したところ、比抵抗は、図43に実線で示すように2.40×1011Ωcmであった。測定には、横河ヒューレットパッカード社製LCRメータ4272Aを使用し、透明電極3602,3607間には、100Hz 、2Vの交流電界を印加した。更に、この表示素子について、電荷保持状態を測定したところ、図45に実線で示すように電荷保持率は93%であった。電荷保持率とは、電界を印加して一定時間後に解放状態としたときの、電荷の保持される比率とした。電界は、図44に示すように約14Vの電界を100ms 間隔で60μs 印加した。
【0313】一方、メタクリル酸4−ビフェニルエステルを高分子前駆体として単独に用い、液晶と高分子前駆体を85:15で混合し同様に製作した素子について同様の測定をしたところ、図43に破線で示すように比抵抗は4.06×1010Ωcmであり、電荷保持率は図45に破線で示すように32%であった。また、メタクリル酸4−フロロフェニルエステルを高分子前駆体として単独で用いた場合、同様の方法では重合せず素子を作製する事ができなかった。このように高分子前駆体を混合して使う事により、比抵抗、電荷保持率共に格段に改善されており、実際にTFT素子、MIM素子と組み合わせたところフリッカーのほとんどない表示が得られた。
【0314】ここで、高分子前駆体としては、本実施例に限らず、液晶の配列とほぼ同一方向、あるいは別方向の場合でもおおよそ揃った方向に配列する高分子前駆体であれば問題なく使用することができる。また、重合部位としては、光硬化型重合部位として用いることができる全ての官能基が使用できる。
【0315】ここで、配向膜としてはポリイミドに限らず、ポリビニルアルコールなど、液晶を或る方向に配向させる力のあるものが使用できる。また、配向膜は必ずしも必要でなく、基板をこすり合わせることにより配向処理を行うだけでも良い。こする材料は木綿に限らない。また、配向処理は、一方の基板のみでも有効である。基板の配向処理の方向は特に限定されない。
【0316】ここで、液晶としては、コントラストを向上させる為、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものが良い。また、液晶は誘電異方性が正のものを用いることができる。液晶の含有量は高分子前駆体に対して50〜95%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが不十分となる。本実施例ではカイラル成分を混合していないが、0.1〜1%の範囲でカイラル成分を添加すると、閾特性の向上がみられた。また、高分子前駆体の重合部は光硬化型のものしか用いていないが、熱硬化型のものでも液晶と互いに配向して分散した状態で、相分離するものであるならば用いる事ができる。
【0317】(実施例37)本実施例は、高分子前駆体の一種類として、フッ素原子を含んだビフェニル誘導体を用いたものである。即ち、二種類の高分子前駆体としてメタクリル酸4−(2−フロロ)ビフェニルエステル、メタクリル酸4−ビフェニルエステルとを使用した。これらの高分子前駆体と液晶との割合は、順に7:7:86とし、その他の条件も前述した実施例36と同様とした。液晶としては、RDP10248(商品名,ロディク社製)を使用した。
【0318】次に、表示素子の比抵抗及び電荷保持率について測定したところ、比抵抗は図46に実線で示すように4.64×1010Ωcm、電荷保持率は図47に実線で示すように95%であった。測定方法は、実施例36と同様とした。一方、メタクリル酸4−ビフェニルエステルを高分子前駆体として単独に用いた場合については、比抵抗は図46に破線で、電荷保持率は図47に破線でそれぞれ示す。図46,47に示すように本実施例の表示素子はこれらの例に比較し、比抵抗、電荷保持率共に格段に改善されており、実際にTFT素子、MIM素子と組み合わせたところフリッカーのほとんどない表示が得られた。また、メタクリル酸4−(2−フロロ)ビフェニルエステルを高分子前駆体として単独に用い、同様に素子を作製し同様の測定をしたが、高分子前駆体は重合せず素子を作製する事ができなかった。
【0319】(実施例38)本実施例は、高分子前駆体の一種類にナフタレン誘導体を用いたものである。即ち、二種類の高分子前駆体としてメタクリル酸4−(4′−ノニロキシ)ビフェニルエステル、メタクリル酸2−ナフチルエステルを用いた。これら高分子前駆体と液晶との割合は、順に7:7:86の割合とし、その他の条件も前述した実施例36と同様とした。液晶としては、RDP10248(商品名,ロディク社製)を使用した。
【0320】次に、表示素子の比抵抗及び電荷保持率を測定したところ、比抵抗は図48に実線で示すように1.07×1012Ωcm、電荷保持率は図39に実線で示すように97%であった。測定方法は、実施例36と同様とした。一方、メタクリル酸4−(4′−ノニロキシ)ビフェニルエステルを高分子前駆体として単独に用い、同様に素子を作製し同様の測定をしたところ、比抵抗は、図48に破線で示すように2.07×1011Ωcm、電荷保持率は図49R>9に破線で示すように約36%であった。また、もう一種類の高分子前駆体であるメタクリル酸2−ナフチルエステルを単独に用いた場合、同様の方法を用いたが重合せず素子を作製する事ができなかった。
【0321】本実施例の表示素子も、これらの例に比較し比抵抗、電荷保持率共に格段に改善されており、実際にTFT素子、MIM素子と組み合わせたところフリッカーのほとんどない表示が得られた。
【0322】(実施例39)本実施例は、高分子前駆体として、フッ素原子、ナフタレン誘導体の何れも含まないものを用いるものである。即ち、二種類の高分子前駆体としてメタクリル酸4−(4′−ノニロキシ)ビフェニルエステル、メタクリル酸4−ビフェニルエステルを用いた。その他の条件は、前述した実施例36と同様である。
【0323】次に、表示素子の比抵抗及び電荷保持率を測定したところ、比抵抗は図50に実線で示すように3.90×1011Ωcm、電荷保持率は図51に実線で示すように89%であった。測定方法は、実施例36と同様とした。一方、高分子前駆体を各々単独で用いた場合は、実施例36及び38でも述べたが、確認の為に図50,51にも描いた。図50は比抵抗を示すものであり、メタクリル酸4−(4′−ノニロキシ)ビフェニルエステルについては破線で、メタクリル酸4−ビフェニルエステルについては点線で示した。図51において、単独で用いた場合、両者に電荷保持率の差がないので合わせて破線で示した。
【0324】本実施例の表示素子は、従来例に比較し、比抵抗については若干ではあるが改善され、電荷保持率については大幅に改善されている。また、本実施例の表示素子について、実際にTFT素子、MIM素子と組み合わせ駆動させてみたが、フリッカーがありきれいな表示を得る事はできなかった。
【0325】上記実施例では二枚の基板を用いたが、一枚の基板上に液晶高分子複合層を形成することもできる。また、配向膜は両側基板に形成する必要はなく片側基板処理だけでも効果を発揮する。また、二枚の基板の間隙についてもここに示した値でなくとも良く、用途に合わせて決めれば良い。
【0326】本発明は以上の実施例のみならず、コンピュータディスプレイ、調光素子、ライトバルブ、調光ミラーなどに応用が可能である。
【0327】(実施例40)本発明の第40の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図52に示す。本実施例では二枚の電極付き基板の間に液晶と高分子を互いに一方向に配向分散した構造を有する反射型の表示素子において、高分子の配向方向が基板の法線と入射光の光軸を含む面に直交するものである。図52は、電界印加時における概念図である。
【0328】この素子の作製法について説明する。先ず、二枚の基板4001,4008の表面に電極4002,4007を蒸着法により形成した。これらの電極4002,4007上にポリイミド(東レ社製SP740の2%ジメチルアセトアミド溶液)をスピンコートして250℃にて焼成し配向膜4003,4006とした。これら二枚の基板4001、,4008の配向膜4003,4006を布で一方向に擦って配向処理を施し、擦った方向が平行となるように向かい合わせて、セル厚が10μmになるように固定した。この間隙にパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルと液晶を15:85で100℃にて混合したものを封入した。液晶としては、PNOO1(商品名,ロディック社製)を使用した。引続き、高分子前駆体及び液晶の混合物を徐冷して、これらを配向させ、室温にて紫外線を照射して、液晶4005と高分子4004として相分離させた。この素子の背景としては黒のベルベット布を用いた。
【0329】この素子を図52に示したように配置し、電気光学特性を測定したところ、図53に示す結果が得られた。入射光4011の入射角は基板表面の法線に対して65度とした。図53において、横軸は印加電圧(周波数1KHz)、縦軸は完全散乱板を100%反射とした場合の反射率を示す。図53の中の実線は、高分子4004の配向方向が基板4001の法線と入射光4011の光軸を含む面、つまり、紙面に直交する場合の電気光学特性を示す。また、図53の中の破線は、高分子4004の配向方向が基板4001の法線と入射光4011の光軸を含む面に平行である場合の電気光学特性を示す。同図に示すように、実線の方が破線に比べ特性が良好である。
【0330】この理由は、高分子配向型液晶表示素子はその散乱能に異方性がある為である。すなわち、配向方向に振動する偏光に対しては有効に散乱する。そのため、基板の法線と入射光光軸を含む平面に対して直交する偏光に対しては有効に散乱するのである。通常、室内においては天井方向からの光は壁で反射してかなり偏光しており、この偏光は、素子に入射するときに透明基板の界面によりさらに偏光し、この偏光方向が高分子配向方向と一致するように配置すると効率的に散乱するのである。
【0331】尚、高分子としては液晶と混合して、液晶相を示す物であり、高分子中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されているものである。更に液晶相で紫外線重合できなければならない。また、高分子中にベンゼン骨格を有しなくとも、液晶とともに配向する高分子であれば同様に用いることができる。 用いる配向膜はポリイミドに限らず、配向膜を用いず基板を布で擦るだけでも良い。また、配向処理は液晶が配向する処理であれば広く用いることができる。
【0332】尚、液晶としては、上記実施例に示すものに限らないが、屈折率異方性の大きい液晶を用いるとコントラストを改善することができる。液晶の含有量は全体に対して50〜97%が最適である。液晶含有量がこれより少ないと電界に対して応答しなくなり、また、これより多いとコントラストが取れなくなる。この液晶の中に2色性色素を混合しておけば、電界無印加時の反射率を減らすことができコントラストを向上させることができる。
【0333】(実施例41)本発明の第41の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図54に示す。本実施例は、実施例40に係る素子の背面に偏光板4009,反射板4010を配置したものである。基本的構成は、図52に示す実施例40と同様である。偏光板4009は、実施例40に係る素子の背面に、高分子4004の配向方向と偏光方向が直交するように配置され、反射板4010は、さらにその背面に配置される。図40において、偏光板4009は、矢印は偏光方向を示す。
【0334】本実施例での電気光学特性を図55に示す。電界印加時の反射光量は完全散乱板に比べ60%であり、効率的に光を散乱していることがわかる。本実施例によれば、実施例40に係る素子を通過した光は、偏光板4009を通過し、反射板4010で反射され、再び偏光板4009を通過して、上記素子を通過する。この光が上記素子を通過して外にでてくるために明るくなると考えられる。
【0335】本実施例では、偏光板4009の偏光方向を高分子4004の配向方向に対して直交させたが、直交に近い角度で有れば同様の効果が得られる。上記実施例において、偏光板4009と反射板4010、あるいは基板4008と偏光板4009と反射板4010を一体化しても良い。液晶4005に2色性色素を混合して、かつ偏光板4009の偏光方向を高分子4005の配向方向と平行にすると、電界無印加時は黒くなりコントラストを向上させることができる。
【0336】(実施例42)本発明の第42の実施例に係る高分子分散型液晶表示素子を図56に示す。本実施例は、実施例40に係る素子の背面に、位相補正板4013、減光板4014及び反射板4010を配置したものである。基本的構成は、図52示す実施例40と同様である。位相補正板4013は、その配向方向が高分子4004の配向方向と45度の角度をなすように、実施例40に係る素子の背面に配置され、減光板14、反射板10は更にその背面に順に配置される。位相補正板の配向方向は、高分子4004の配向方向に対し45度でなくとも明るさについては改善効果がある。ここで用いた位相補正板4013は、緑の光に対して1/4波長位相のずれる(144nm)補正板であるが、もちろん他の位相補正板でも素子部との位置関係を最適化すれば用いることができる。
【0337】図57に本実施例の表示素子の電気光学特性図を示す。電界印加時の反射光量は完全散乱板に比べ80%であり、先の実施例よりもさらに効率的に光を散乱していることがわかる。本構成によれば、図40に係る素子を通過した光は、位相補正板4013で位相補正され、減光板4014、反射板4010で反射され、再び減光板4014を通過して、再び位相補正板4013で位相補正され、偏光方向が90度回転して上記素子に戻る。そのため、反射板4010で反射した光は再び上記素子で効率的に散乱されるためにより明るく見えるのである。減光板4014は電界無印加時に素子を黒くみせるために必要である。減光板4014は、透過率60%のものを用いたが用途により最適化すれば良い。また、色彩も自由に選べる。
【0338】本実施例において、位相補正板4013と減光板4014、減光板4014と反射板4010、あるいは位相補正板4013と減光板4014と反射板4010を一体化しても良い。液晶に2色性色素を混合するとコントラストを向上することができる。
【0339】本発明は、上記実施例のみならずMIM素子やTFT素子と組み合わせることも可能であり、大容量表示体への応用も可能である。また、調光素子、ライトバルブなどにも応用が可能である。
【0340】
【発明の効果】以上、実施例に基づいて具体的に説明したように本発明は、液晶高分子複合層において液晶及び高分子を一定方向に配向させることにより、電界無印加時に良好な透明状態を実現できるようになった。これを車窓などに用いれば、電界が印加されなくなったときに透明となる、いわゆるフェールセイフな調光窓ガラスとなり安全である。さらに、液晶中にカイラル成分を添加することにより、電圧印加時に良好な散乱状態を実現することが可能となり、同時に閾特性も良好となり、電圧を上下した際にみられる応答におけるヒステリシスも低減された。更に、反射層を設けることにより、駆動電圧の低いコントラストの良好な視認性の良い反射型液晶表示素子を提供することが可能となり、この表示素子を用いて大容量表示体を提供することも可能となった。
【0341】また、高分子前駆体を改良し、高分子前駆体を少なくとも2種類以上用いることにより、素子作製後の比抵抗を改善し、電荷保持率も同時に改善する事ができた。また、2色性色素を液晶中に混合することにより、電界無印加時に良好な透明状態、電圧印加時に良好な着色散乱状態を実現することが可能となった。また、この電界制御型偏光素子を用いてコントラストの良好な視認性の良い明るい表示素子を提供することも可能となった。本発明を用いれば通常は普通のサングラスで電界印加により偏光をカットできる防眩偏光サングラスを作ることも容易である。
【0342】本発明は、高分子分散型液晶素子の単純マトリックス型表示素子への応用の可能性を広げる基本的な技術であり、また、同時にアクティブマトリックス型表示素子との組み合わせによる大容量表示の可能性を広げる基本的な技術でもある。
【0343】本発明は、高分子分散型液晶表示素子の単純マトリックス型表示素子への応用の可能性を広げる基本的な技術であり、また、同時にアクティブマトリックス型表示素子との組み合わせによる大容量表示の可能性を広げる基本的な技術でもある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例2に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図である。
【図3】本発明の実施例2における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図4】従来の高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例5に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図6】本発明の実施例6に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図7】本発明の実施例7に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は無電界印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図8】本発明の実施例7における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図9】従来の高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例8における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例9における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例11に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図13】本発明の実施例12に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図14】本発明の実施例13に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は無電界印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作を示す。
【図15】本発明の実施例18に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図16】本発明の実施例19に係る高分子分散型液晶表示素子の部分断面を示す概念図である。
【図17】本発明の高分子分散型液晶表示素子の製造方法に係る製造装置の一実施例を示す概念図である。
【図18】本発明の実施例20に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図19】本発明の実施例20の高分子分散型液晶表示素子における断面の電子顕微鏡写真を示す説明図であり、倍率5万倍、基板表面45度の角度で見おろした。ラビング方向は縦方向である。
【図20】本発明の実施例20における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図21】本発明の実施例23に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図である。
【図22】本発明の実施例23における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図23】前述した実施例における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図24】本発明の実施例25に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図25】本発明の実施例25における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図26】本発明の実施例27に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図27】本発明の実施例27における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図28】前述した実施例における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図29】本発明の実施例29に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は無電界印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図30】本発明の実施例29における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図31】本発明の実施例31に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、図中(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図32】四分の一波長板を使用する本発明の反射型高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図33】四分の一波長板を使用しない従来の反射型高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図34】本発明の実施例31における高分子分散型液晶表示素子の光学原理を示す説明図である。
【図35】反射型高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフであり、図中実線は四分の一波長板を使用する本発明の場合、図中点線は四分の一波長板を使用しない従来の場合を示す。
【図36】本発明の実施例32における高分子分散型液晶表示素子の光学原理を示す説明図である。
【図37】本発明の実施例33に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図である。
【図38】本発明の実施例34に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図39】本発明の実施例34における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図40】本発明の実施例35に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は電界無印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【図41】本発明の実施例35における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図42】本発明の実施例36に係る高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図である。
【図43】高分子配向型高分子分散型液晶表示素子の周波数と比抵抗の関係を示す図であり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例36について、また、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図44】本発明の高分子分散型液晶表示素子の電荷保持率を測定する際に印加した電圧波形を示すグラフであり、約14Vの電界を100mS 間隔でプラスとマイナスに交互に60μs 時間印加し、印加後に解放状態としたものである。
【図45】高分子分散型液晶表示素子の電荷保持率を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例36について、点線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図46】高分子配向型高分子分散型液晶表示素子の周波数と比抵抗の関係を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例37について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図47】高分子分散型液晶表示素子の電荷保持率を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例37について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図48】高分子分散型液晶表示素子の周波数と比抵抗の関係を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例38について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図49】高分子分散型液晶表示素子の電荷保持率を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例38について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図50】高分子配向型高分子分散型液晶表示素子の周波数と比抵抗の関係を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例39について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図51】高分子分散型液晶表示素子の電荷保持率を示すグラフであり、実線は二種類の高分子前駆体を用いた実施例39について、破線は一種類の高分子前駆体を用いた従来例について示す。
【図52】本発明の実施例40に係る高分子分散型液晶表示素子を示す概念図であり、液晶の配向方向は電界印加時の方向に一致している。高分子は紙面に対して垂直方向に細長い楕円体であり、配向方向は紙面に対して垂直方向である。
【図53】本発明の実施例40における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフであり、実線は入射光が図52に示す方向から入射した場合について、破線は入射光が基板の法線方向に関して90度回転した方向から入射した場合について示す。
【図54】本発明の実施例41における高分子分散型液晶表示素子を示す概念図であり、偏光板は矢印方向に偏光している。
【図55】本発明の実施例41における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図56】本発明の実施例42に係る高分子分散型液晶表示素子を示す概念図である。
【図57】本発明の実施例42における高分子分散型液晶表示素子の電気光学特性を示すグラフである。
【図58】従来の高分子分散型液晶高分子分散型液晶表示素子の断面を示す概念図であり、同図(a) は無電界印加時の動作状態を、同図(b) は電界印加時の動作状態を示す。
【符号の説明】
101,301,501,601,701,1101,1201,1301,1801,1901、2001,2301,2501,2701,2901,3101,3401,3601,4001 基板
102,302,502,602,702,1102,1202,1302,1802,1902、2002,2302,2502,2702,2902,3102,3402,3602,4002 電極
103,303,503,603,703,1103,1203,1303,1803,1903、2003,2303,2503,2703,2903,3103,3403,3603,4003 配向膜
104,304,504,604,704,1104,1204,1304,1804,1904、2004,2304,2504,2704,2904,3104,3404,3604,4004 高分子
105,305,505,605,705,1105,1205,1305,1805,1905、2005,2305,2505,2705,2905,3105,3405,3605,4005 液晶
106,306,506,606,706,1106,1206,1306,1806,1906、2006,2306,2506,2706,2906,3106,3306,3406,3606,4006 配向膜
107,307,511,707,1111,1307,1811,2007,2307,2507,2707,2907,3107,3307,3407,3607,4007 電極
108,308,508,608,708,1108,1208,1308,1808,1908、2008,2308,2508,2708,2908,3110,3408,3608,4008 基板
509,609,1109,1209,1809 画素電極
510,10,1110,1810 絶縁層
613,1213,1913 ソース電極
614,1214,1914 ドレイン電極
615,1215,1915 半導体層
616,1216,1916 ゲート絶縁層
617,1217,1917 ゲート電極
2009 紫外線照射装置
3108,3310 位相差板
3109,3309 反射層
3111,3211 自然光
3112,3212 偏光
3113,3213 偏光
4009 偏光板
4010 反射板
4011 入射光
4012 散乱光
4013 位相補正板
4014 減光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液晶と高分子とから液晶高分子複合層を一対の基板間に挟持してなる液晶表示素子において、前記基板のうち一方の基板に位相差板が配置され、この位相差板の表面に反射層が配置されてなることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】 前記位相差板の光軸は、前記液晶高分子複合層の配向方向と45度の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】 前記位相差板として四分の一波長板を用いることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図17】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図9】
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【図13】
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【図15】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図37】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図42】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【特許番号】特許第3298522号(P3298522)
【登録日】平成14年4月19日(2002.4.19)
【発行日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−307686
【分割の表示】特願平10−273734の分割
【出願日】平成3年10月29日(1991.10.29)
【公開番号】特開平11−237618
【公開日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【審査請求日】平成10年11月27日(1998.11.27)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【参考文献】
【文献】特開 昭59−178428(JP,A)
【文献】実開 平2−75601(JP,U)
【文献】実開 昭61−179531(JP,U)
【文献】実開 昭61−185033(JP,U)