説明

液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルム

【課題】虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない液晶表示装置を提供する。
【解決手段】バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、前記バックライト光源として白色発光ダイオードを用い、前記偏光板が偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つが、3000〜30000nmのリタデーションを有する配向フィルムである、液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。詳しくは、視認性が良好で、薄型化に適した液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板は、通常ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで挟んだ構成となっていて、偏光子保護フィルムとしては通常トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられている。近年、LCDの薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし、このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題が発生する。また、TACフィルムは非常に高価であり、安価な代替素材が強く求められている。
【0003】
そこで、偏光板の薄層化のため、偏光子保護フィルムとして厚みが薄くても高い耐久性が保持できるよう、TACフィルムの代わりにポリエステルフィルムを用いることが提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−116320号公報
【特許文献2】特開2004−219620号公報
【特許文献3】特開2004−205773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエステルフィルムは、TACフィルムに比べ耐久性に優れるが、TACフィルムと異なり複屈折性を有するため、これを偏光子保護フィルムとして用いた場合、光学的歪みにより画質が低下するという問題があった。すなわち、複屈折性を有するポリエステルフィルムは所定の光学異方性(リタデーション)を有することから、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察すると虹状の色斑が生じ、画質が低下する。そのため、特許文献1〜3では、ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いることで、リタデーションを小さくする対策がなされている。しかし、その場合であっても虹状の色斑を完全になくすことはできなかった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち、十分な機械的強度を有する)であり、且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない、液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いたときに生じる虹状色斑の発生メカニズムについて鋭意検討を行なった。その結果、この虹状の色斑は、ポリエステルフィルムのリタデーションとバックライト光源の発光スペクトルに起因することがわかった。従来、液晶表示装置のバックライト光源としては、冷陰極管や熱陰極管などの蛍光管を用いられる。冷陰極管や熱陰極管などの蛍光灯の分光分布は複数のピークを有する発光スペクトルを示し、これら不連続な発光スペクトルが合わさって白色の光源が得られている。リタデーションが高いフィルムを光が透過する場合、波長によって異なる
透過光強度を示す。このため、バックライト光源が不連続な発光スペクトルであると、特定の波長のみ強く透過されることになり虹状の色斑が発生すると考えられた。
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、特定のバックライト光源と特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムとを組み合せて用いることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1A)〜(8A)及び(1B)〜(9B)に係る発明である。
(1A)バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、前記バックライト光源として白色発光ダイオードを用い、前記偏光板が偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つが、3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。
(2A)前記液晶セルが、入射光側に配される偏光板と、液晶セルと、出射光側に配される偏光板とを配されてなり、出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなるフィルムである、前記液晶表示装置。
(3A)前記ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である前記液晶表示装置。
(4A)白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板であって、前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、偏光板。
(5A)白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板の偏光子保護フィルムであって、3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルム。
(6A)前記ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.200以上である前記偏光子保護フィルム。
(7A)前記ポリエステルフィルムが易接着層を有する、前記偏光子保護フィルム。
(8A)前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層以上からなり、最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、380nmの光線透過率が20%以下である、前記偏光子保護フィルム。
(1B)バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は白色発光ダイオードであり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つは3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。
(2B)前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなるフィルムである、1Bに記載の液晶表示装置。
(3B)前記ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上1.2以下である1Bまたは2Bに記載の液晶表示装置。
(4B)前記白色発光ダイオードが、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される、1B〜3Bのいずれかに記載の液晶表示装置。
(5B)白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板であって、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000〜30000nmのリタデーションを
有するポリエステルフィルムである、偏光板。
(6B)白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板用の偏光子保護フィルムであって、
3000〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルム。
(7B)前記ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である6Bに記載の偏光子保護フィルム。
(8B)前記ポリエステルフィルムが易接着層を有する、6Bまたは7Bに記載の偏光子保護フィルム。
(9B)前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層以上からなり、
最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、
380nmの光線透過率が20%以下である、6B〜8Bのいずれかに記載の偏光子保護フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムは、いずれの観察角度においても透過光のスペクトルは光源に近似したスペクトルを得ることが可能となり、虹状の色斑が無い良好な視認性を確保することができる。また、好適な一実施形態において、本発明の偏光子保護フィルムは、薄膜化に適した機械的強度を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に、液晶パネルは、バックライト光源に対向する側から画像を表示する側(視認側)に向かう順に、後面モジュール、液晶セルおよび前面モジュールから構成されている。後面モジュールおよび前面モジュールは、一般に、透明基板と、その液晶セル側表面に形成された透明導電膜と、その反対側に配置された偏光板とから構成されている。ここで、偏光板は、後面モジュールでは、バックライト光源に対向する側に配置され、前面モジュールでは、画像を表示する側(視認側)に配置されている。
【0012】
本発明の液晶表示装置は少なくとも、バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを構成部材とする。また、これら以外の他の構成、例えばカラーフィルター、レンズフィルム、拡散シート、反射防止フィルムなどを適宜有しても構わない。
【0013】
バックライトの構成としては、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わないが、本発明では、液晶表示装置のバックライト光源として白色発光ダイオード(白色LED)を用いることが必要である。本発明において、白色LEDとは、蛍光体方式、すなわち化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体やテルビウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体等がある。なかでも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有しているとともに発光効率にも優れるため、本発明のバックライト光源として好適である。なお、ここで発光スペクトルが連続的であるとは、少なくとも可視光の領域において光の強度がゼロとなる波長が存在しないことをいう。また、本発明の方法により消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。
【0014】
なお、赤・緑・青の各色を発するLEDを組み合わせて白色光源として用いる方式(三色LED方式)も実用化されているが、この方式では発光スペクトルが狭くかつ不連続であるため、本発明の所期の効果を得ることが困難になると予想されるため、好ましくない

【0015】
また、従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管についても、発光スペクトルが特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルしか有していないことから、本発明の所期の効果を得ることが困難である。
【0016】
偏光板は、PVAなどにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで貼り合せた構成を有するが、本発明では、偏光板を構成する偏光子保護フィルムの少なくともひとつとして、特定範囲のリタデーションを有するポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとして用いることを特徴とする。
【0017】
上記態様により虹状の色斑の発生が抑制される機構としては、次のように考えている。
【0018】
偏光子の片側に複屈折性を有するポリエステルフィルムを配した場合、偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に乱れが生じる。透過した光はポリエステルフィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。そのため、光源として冷陰極管や熱陰極管など不連続な発光スペクトルを用いると、波長によって異なる透過光強度を示し、虹状の色斑となる(参照:第15回マイクロオプティカルカンファレンス予稿集、第30〜31項)。
【0019】
これに対して、白色発光ダイオードでは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となる。このように、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで、虹状の色斑が発生せずに、視認性が顕著に改善すると考えられる。
【0020】
以上のように、本発明では幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを光源に用いるため、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。
【0021】
上記効果を奏するために、偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、3000〜30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。
【0022】
一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。
【0023】
なお、本発明のリタデーションは、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。
【0024】
本発明では、偏光子保護フィルムの少なくとも一つが上記特定のリタデーションを有する偏光子保護フィルムであることを特徴とする。当該特定のリタデーションを有する偏光
子保護フィルムの配置は特に限定されないが、入射光側(光源側)に配される偏光板と、液晶セルと、出射光側(視認側)に配される偏光板とを配された液晶表示装置の場合、入射光側に配される偏光板の入射光側の偏光子保護フィルム、もしくは出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが当該特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムであることが好ましい。特に好ましい態様は、出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムを当該特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムとする態様である。上記以外の位置にポリエステルフィルムを配する場合は、液晶セルの偏光特性を変化させてしまう場合がある。偏光特性が必要とされる箇所には本発明の高分子フィルムを用いることは好ましくない為、このような特定の位置の偏光板の保護フィルムとして使用されることが好ましい。
【0025】
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムを張り合わせた構造を有し、いずれかの偏光子保護フィルムが上記特定のリタデーションを有する偏光板保護フィルムであることを特徴とする。他方の偏光子保護フィルムには、TACフィルムやアクリルフィルム、ノルボルネン系フィルムに代表されるような複屈折が無いフィルムを用いることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる偏光板には、写り込み防止やギラツキ抑制、キズ抑制などを目的として、種々のハードコートを表面に塗布することも好ましい様態である。
【0027】
本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができるが、他の共重合成分を含んでも構わない。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは固有複屈折が大きく、フィルムの厚みが薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られるので、最も好適な素材である。
【0028】
また、ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制することを目的として、本発明の保護フィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、本発明における透過率は、フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。
【0029】
本発明の保護フィルムの波長380nmの透過率を20%以下にするためには、紫外線吸収剤の種類、濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、より紫外線吸収効果を改善することができる。
【0030】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤としては例えば2−[2'−ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキ
シメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾ
ール、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ(
2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−
(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールなどが挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては例えば2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンなどが挙げられる。しかし特にこれらに限定されるものではない。
【0031】
また、紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外の各種の添加剤を含有させることも好ましい様態である。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。また、高い透明性を奏するためにはポリエステルフィルムに実質的に粒子を含有しないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0032】
さらに、本発明のポリエステルフィルムには、偏光子との接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0033】
本発明においては、偏光子との接着性を改良のために、本発明のフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の易接着層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0034】
易接着層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる偏光子との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に易接着層を設ける場合は、両面の易接着層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
【0035】
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。こ
れらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
【0036】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0037】
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0038】
本発明の保護フィルムであるポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0039】
本発明のポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意が必要である。
【0040】
この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向によりリタデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するためである。従って、液晶表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、リタデーションがゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色斑が同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色斑が見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色斑は見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムのほうが虹状の色斑は見え難くなり好ましい。
【0041】
しかしながら、完全な1軸性(1軸対称)フィルムでは配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下するので好ましくない。本発明は、実質的に虹状の色斑を生じない範囲、または液晶表示画面に求められる視野角範囲において虹状の色斑を生じない範囲で、2軸性(2軸対象性)を有していることが好ましい。
【0042】
本発明者等は、保護フィルムの機械的強度を保持しつつ、虹斑の発生を抑制する手段として、保護フィルムのリタデーション(面内リタデーション)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比が特定の範囲に収まるように制御することを見出した。厚さ方向位相差は、フィルムを厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz、△Nyzにそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られる位相差の平均を意味する。面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの差が小さいほど、観察角度による複屈折の作用は等方性を増すため、観察角度によるリタデーションの変化が小さくなる。そのため、観察角度による虹状の色斑が発生し難くなると考えられる。
【0043】
本発明のポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.500以上、さらに好ま
しくは0.600以上である。上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度による虹状の色斑の発生が生じ難くなる。そして、完全な1軸性(1軸対称)フィルムでは上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は2.0となる。しかし、前述のように完全な1軸性(1軸対称)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する。
【0044】
一方、本発明のポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下である。観察角度による虹状の色斑発生を完全に抑制するためには、上記リタデーションと厚さ方向位相差の比(Re/Rth)が2.0である必要は無く、1.2以下で十分である。また、上記比率が1.0以下であっても、液晶表示装置に求められる視野角特性(左右180度、上下120度程度)を満足することは十分可能である。
【0045】
本発明のポリエステルフィルムの製膜条件を具体的に説明すると、縦延伸温度、横延伸温度は80〜130℃が好ましく、特に好ましくは90〜120℃である。縦延伸倍率は1.0〜3.5倍が好ましく、特に好ましくは1.0倍〜3.0倍である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.5倍である。リタデーションを上記範囲に制御するためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率を制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとリタデーション高くすることが難しくなり好ましくない。また、延伸温度を低く設定することもリタデーションを高くする上では好ましい対応である。続く熱処理においては、処理温度は100〜250℃が好ましく、特に好ましくは180〜245℃である。
【0046】
リタデーションの変動を抑制する為には、フィルムの厚み斑が小さいことが好ましい。延伸温度、延伸倍率はフィルムの厚み斑に大きな影響を与えることから、厚み斑の観点からも製膜条件の最適化を行う必要がある。特にリタデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑が悪くなることがある。縦厚み斑は延伸倍率のある特定の範囲で非常に悪くなる領域があることから、この範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
【0047】
本発明のフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。
【0048】
前述のように、フィルムのリタデーションを特定範囲に制御する為には、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚みを適宜設定することにより行なうことができる。例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど高いリタデーションを得やすくなる。逆に、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど低いリタデーションを得やすくなる。但し、フィルムの厚みを厚くすると、厚さ方向位相差が大きくなりやすい。そのため、フィルム厚みは後述の範囲に適宜設定することが望ましい。また、リタデーションの制御に加えて、加工に必要な物性等を勘案して最終的な製膜条件を設定する必要がある。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは任意であるが、15〜300μmの範囲が好ましく、より好ましくは15〜200μmの範囲である。15μmを下回る厚みのフィルムでも、原理的には3000nm以上のリタデーションを得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。特に好ましい厚みの下限は25μmである。一方、偏光子保護フィルムの厚みの上限は、300μmを超えると偏光板の厚みが厚く
なりすぎてしまい好ましくない。偏光子保護フィルムとしての実用性の観点からは厚みの上限は200μmが好ましい。特に好ましい厚みの上限は一般的なTACフィルムと同等程度の100μmである。上記厚み範囲においてもリタデーションを本発明の範囲に制御するために、フィルム基材として用いるポリエステルはポリエチレンタレフタレートが好適である。
【0050】
また、本発明におけるポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得るが、例えば予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリマー原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリマー原料を混合する方法などによって配合することができる。
【0051】
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30質量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し温度1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
【0052】
また、本発明ではフィルムを少なくとも3層以上の多層構造とし、フィルムの中間層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエステルのペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとポリエステルのペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。なお、発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0054】
(1)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx−Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx−Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした
。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0055】
(2)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx−Nz|)、△Nyz(=|Ny−Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0056】
(3)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として各フィルムの波長300〜500nm領域の光線透過率を測定し、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0057】
(4)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエステルフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置の出射光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。この液晶表示装置は、液晶セルの入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。
【0058】
なお、比較例3では白色LEDの代わりに冷陰極管を光源とするバックライト光源を用いた。
◎ : いずれの方向からも虹斑の発生無し。
○ : 斜め方向から観察した時に、一部極薄い虹斑が観察できる。
× : 斜め方向から観察した時に、明確に虹斑が観察できる。
【0059】
(5)引裂き強度
東洋精機製作所製エレメンドルフ引裂試験機を用いて、JIS P−8116に従い、各フィルムの引裂き強度を測定した。引裂き方向はフィルムの配向軸方向と平行となるように行ない、以下のように判定した。なお、配向軸方向の測定は分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定した。
○:引裂き強度が50mN以上
×:引裂き強度が50mN未満
【0060】
(製造例1−ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチ
ル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合
反応を行った。
【0061】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0062】
(製造例2−ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0063】
(製造例3−接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0064】
(実施例1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0065】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0066】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た

【0067】
(実施例2)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚み約100μmとすること以外は実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に1.5倍延伸した後、実施例1と同様の方法で幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約50μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0069】
(実施例4)
実施例3と同様の方法で、走行方向に2.0倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約50μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0070】
(実施例5)
実施例3と同様の方法で、走行方向に3.3倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約75μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0071】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、中間層に紫外線吸収剤を含有するPET樹脂(B)を用いずに、フィルム厚み50μmの一軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムは虹状の色斑は解消されたが、380nmの光線透過率が高く、光学機能性色素を劣化させる懸念がある。
【0072】
(実施例7)
実施例3と同様の方法で、走行方向に4.0倍、幅方向に1.0倍延伸して、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムはReが3000nm以上で視認性は良好であるが、機械強度はやや劣っていた。
【0073】
(実施例8)
実施例3と同様の方法で、走行方向に3.5倍、幅方向に3.7倍延伸して、フィルム厚み約250μmの二軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムはReが4500nm以上であるが、Re/Rth比が0.2を下回ったため、斜め方向での極薄い虹斑が認められた。
【0074】
(実施例9)
実施例1と同様の方法で、走行方向に1.0倍、幅方向に3.5倍延伸して、フィルム厚み約75μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0075】
(実施例10)
実施例1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚み約275μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0076】
(比較例1)
実施例3と同様の方法で、走行方向に3.6倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約38μmの二軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムはリタデーションが低く、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察された。
【0077】
(比較例2)
実施例1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚み約10μmの一軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムは非常に裂けやすく、コシ感が無いので偏光子保護フィルムとして用いることが出来なかった。また、リタデーションも低く、虹状の色斑が観察された。
【0078】
(比較例3)
液晶表示装置の光源を冷陰極管として虹斑観察を行った以外は、実施例1と同様にした。
【0079】
実施例1〜10及び比較例1〜3のポリエステルフィルムについて虹斑観察及び引裂き強度を測定した結果を以下の表1に示す。
【表1】

表1に示されるように、実施例1〜10のフィルムを用いて虹斑観察を行ったところ、正面方向から観察した場合は、いずれのフィルムでも虹斑は観察されなかった。実施例3〜5及び8のフィルムについては、斜めから観察した場合に部分的に虹斑が観察される場合があったが、実施例1、2、6、7、9及び10のフィルムについては、斜めから観察した場合も虹斑は全く観られなかった。一方、比較例1〜3のフィルムは、斜めから観察した際に明らかな虹斑が観られた。
【0080】
また、実施例7及び比較例2のフィルムは引裂き強度が十分ではないことが判明した。実施例7のフィルムは、Re/Rthが大きすぎるためであり、比較例2のフィルムは膜圧が薄すぎるためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムを用いることで、虹状の色斑により視認性を低下させること無く、LCDの薄型化、低コスト化に寄与することが可能となり、産業上の利用可能性は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は連続的な発光スペクトルを有する白色光源であり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つは3000〜30000nmのリタデーションを有する配向フィルムである、液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000〜30000nmのリタデーションを有する配向フィルムからなるフィルムである、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記配向フィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上1.2以下である請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000〜30000nmのリタデーションを有する配向フィルムである、連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光板。
【請求項5】
3000〜30000nmのリタデーションを有する配向フィルムからなる、連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光子保護フィルム。
【請求項6】
前記配向フィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である請求項5に記載の連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光子保護フィルム。
【請求項7】
前記配向フィルムが易接着層を有する、請求項5または6に記載の連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光子保護フィルム。
【請求項8】
前記配向フィルムが少なくとも3層以上からなり、最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、380nmの光線透過率が20%以下である、請求項5〜7のいずれかに記載の連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光子保護フィルム。

【公開番号】特開2013−68954(P2013−68954A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225124(P2012−225124)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2011−236004(P2011−236004)の分割
【原出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】