説明

液晶表示装置、及びコレステリック液晶層

【課題】 斜め方向から見た場合に、赤色に着色することを抑制できる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶セル2と、前記液晶セル2の視認面側に設けられた視認側偏光子31と、前記液晶セル2のバックライト側に設けられた反視認側偏光子41と、前記反視認側偏光子41に光を入射させるバックライト部8と、を有する液晶表示装置において、前記反視認側偏光子41のバックライト光入射面側に、光を選択的に反射しうるコレステリック液晶層7が設けられ、前記コレステリック液晶層7は、前記コレステリック液晶層7に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有する光学部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、及び該液晶表示装置に用いられるコレステリック液晶層に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶分子の電気光学特性を利用して、文字や画像を表示する装置である。液晶表示装置は、携帯電話、ノートパソコン、液晶テレビ等に広く利用されている。液晶表示装置には、通常、液晶セルの両側に偏光子が配置された液晶パネルが設けられ、更に、該液晶パネルには、視野角改善のために、光学補償層が設けられている。
通常、液晶表示装置は、液晶パネルの直下又は側部に設けられたバックライト部の光が液晶セル及び視認側偏光子を透過することによって、液晶パネルの視認面にカラー画像を表示する。該バックライト部の光源としては、赤緑青領域の3波長において発光スペクトルのピークを有する冷陰極管(いわゆる3波長管)が用いられている(特許文献1)。
前記バックライト部の発光スペクトルのピークは、一般に、波長400nm〜500nmの範囲(青領域。この範囲の波長を「波長B」という場合がある)、波長500nm〜590nmの範囲(緑領域。この範囲の波長を「波長G」という場合がある)、波長590nm〜630nmの範囲(赤領域。この範囲の波長を「波長R」という場合がある)にある。
【特許文献1】特開2004−117562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の液晶表示装置は、光学補償層によって視野角補償が行われているにも拘わらず、斜め方向から見た場合に、赤色に着色することがある。
【0004】
本発明の目的は、斜め方向から見た場合に、赤色に着色することを抑制できる液晶表示装置を提供することである。
【0005】
本発明者らは、上記目的の下、光学補償層や偏光板などの様々な液晶表示装置の構成部材を検討した結果、バックライト部に着目した。
具体的には、上述のように、バックライト部は、上記3波長において発光スペクトルのピークを有する。しかしながら、近年、上記3波長において発光スペクトルのピークを有し、且つ、上記波長Rよりも長波長側に発光スペクトルのピークを有する冷陰極管が、バックライト部の光源として使用されるようになってきている。かかるバックライト部を有する液晶表示装置は、上記波長Rよりも長波長の光(赤色の光)が透過し、表示面に表示される。このように波長Rよりも長波長側の光を発するバックライト部に変わりつつあるにも拘わらず、従来の液晶パネルには、上記3波長において発光スペクトルのピークを有するバックライト部を使用することを前提として、偏光板や光学補償層などが設計されている。このため、偏光板の長波長側の吸収不足や、光学補償層の長波長側での光学補償のズレなどが生じ、斜め方向から見た場合に、特に、長波長側の光(赤色の光)が漏れてくる。これが原因で、液晶表示装置の表示面を斜め方向から視た場合、赤色に着色する現象が生じていると考えられる。
【0006】
上記のように、表示面の赤着色は、バックライト部が波長Rよりも長波長側の光を発することが原因と考えられる。仮に、波長Rよりも長波長側の光を遮れば、斜め方向から見た場合の赤着色は抑制できるが、表示面を正面方向(極角0°)から見た場合、表示面の光量が少なくなり、表示面のカラー画像が低下する。このため、正面方向から見た場合に、カラー画像が劣化せず、斜め方向から見た場合に、赤色付きを抑制することが求められる。
【0007】
ここで、コレステリック液晶層は、液晶のらせんピッチに対応した波長の光を選択的に反射する性質(選択反射特性)を有する。このコレステリック液晶層の選択反射特性は、光の入射角によって異なる。具体的には、コレステリック液晶層は、斜め方向から光が入射する場合の選択反射の中心波長(λ2)が、前記正面方向から光が入射する場合の選択反射の中心波長(λ1)よりも短波長側にシフトする。つまり、{正面方向からの入射光に対する選択反射の中心波長(λ1)}>{斜め方向からの入射光に対する選択反射の中心波長(λ2)}の関係となる。
【0008】
選択反射の中心波長λは、λ=(ne+no)P/2で表される。ただし、Pは、コレステリック液晶層の一回転ねじれに要するらせんピッチ(μm)を示す。noは、前記コレステリック液晶層の正常光に対する屈折率を示し、neは、コレステリック液晶層の異常光に対する屈折率を示す。
上記λ=(ne+no)P/2において、斜め方向の光が入射する場合には、見かけ上「ne+no」が小さくなるため、選択反射の中心波長が短波長側にシフトする(上記Pが大きくなるが、そのPの大きくなる割合以上に「ne+no」が小さくなるため、λが小さくなる)。
【0009】
本発明者らは、斜め方向の光に対する選択反射の中心波長が、正面方向の光に対する選択反射の中心波長よりも小さくなるという上記コレステリック液晶層の選択反射特性に着目した。
例えば、正面方向から光が入射する場合における選択反射の中心波長が770nm〜950nmの範囲内にあるコレステリック液晶層は、斜め方向から光が入射する場合には、選択反射の中心波長がこれよりも短波長側(例えば、波長630nm〜850nm)にシフトする。かかるコレステリック液晶層を液晶パネルに用いれば、該コレステリック液晶層により、斜め方向から入射する光のうち、上記波長Rよりも長波長側(例えば、波長630nm〜850nm)の光の一部を反射でき、正面方向から入射する光のうち、波長770nm〜950nmの範囲内の光の一部を反射できる。従って、該液晶パネルを有する液晶表示装置は、正面方向から見た場合には可視光の透過量が低下せず、斜め方向から見た場合には赤色の光漏れを抑制できる。
【0010】
そこで、本発明の解決手段は、液晶セルと、前記液晶セルの視認面側に設けられた視認側偏光子と、前記液晶セルのバックライト側に設けられた反視認側偏光子と、前記反視認側偏光子に光を入射させるバックライト部と、を有する液晶表示装置において、前記反視認側偏光子のバックライト光入射面側に、光を選択的に反射しうるコレステリック液晶層が設けられ、前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい液晶表示装置は、上記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜1000nmの範囲内において選択反射域を有する。前記選択反射域とは、反射率の最大値の半分の値以上の反射率を有する波長領域をいう。
【0012】
本発明の好ましい液晶表示装置は、上記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有する。
【0013】
本発明の好ましい液晶表示装置は、上記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において選択反射域を有する。
【0014】
本発明の好ましい液晶表示装置は、上記バックライト部が、波長630nm以上において発光スペクトルのピークを有する。
【0015】
本発明の好ましい液晶表示装置は、上記バックライト部が、波長400nm〜500nmの範囲、波長500nm〜590nmの範囲、波長590nm〜630nmの範囲、及び波長630nm〜800nmの範囲のそれぞれにおいて、発光スペクトルのピークを有する。
【0016】
別の局面によれば、本発明は、コレステリック液晶層を提供する。該コレステリック液晶層は、入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有し、且つ入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶表示装置は、斜め方向から見た場合に、赤色に着色することを抑制できる。従って、本発明は、正面及び広視野角において、カラー画像の表示特性に優れた液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[本発明の液晶表示装置の概要]
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルと、バックライト部と、を少なくとも有する。
液晶パネルは、液晶セルと、液晶セルの両側に設けられた視認側偏光子及び反視認側偏光子と、反視認側偏光子のバックライト光入射面側(バックライト部の光が入射する面側)に設けられたコレステリック液晶層と、を有する。
該コレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有する。かかる選択反射特性を有するコレステリック液晶層は、斜め方向から入射する光に対する反射率の最大値が波長770nm〜950nmよりも短波長側となる。
【0019】
上記液晶表示装置は、バックライト部の光源から発せられる光が、コレステリック液晶層に入射し、その後、前記光が、反視認側偏光子、液晶セル及び視認側偏光子の順に入射し且つ出射することにより、表示面にカラー画像を表示できる。
本発明のコレステリック液晶層は、入射角に応じて上記選択反射特性を有するので、バックライト部からの光が、コレステリック液晶層の斜め方向から入射する場合には、波長770nm〜950nmよりも短波長側(例えば、波長630nm〜780nm)の光の一部がコレステリック液晶層によって反射される。
従って、斜め方向から入射する光のうち、前記短波長側の光が液晶セルに入射することを抑制できる。
他方、バックライト部からの光が、コレステリック液晶層の正面方向から入射する場合には、波長770nm〜950nmの範囲の光の一部が反射される。従って、正面方向から見た場合には可視光の透過量が低下せず、斜め方向から見た場合には赤色の光漏れを抑制できる。
なお、コレステリック液晶層は、特定の波長の光を完全に反射するわけではないので、コレステリック液晶層は、特定の波長の光の一部を反射する(つまり、特定の波長の光の透過を抑制する)。
【0020】
波長630nm以上において発光スペクトルのピークを有するバックライト部と、上記コレステリック液晶層を有する液晶パネルと、を有する液晶表示装置は、正面方向から見た場合に波長630nm〜800nm(630nm以上800nm以下)の可視光の透過量が低下せず、斜め方向から見た場合に波長630nm〜800nmの光を反射し、赤色の光漏れを抑制できる。
【0021】
[液晶パネルの構成例]
図1は、本発明の液晶パネルを含む液晶表示装置の一例を示している。なお、見やすくするために、各構成部材の縦、横及び厚みの比率は、実際とは異なっていることに留意されたい(以下、他の図も同様)。
図1に於いて、10は、液晶パネル1と、バックライト部8と、を有する液晶表示装置を示す。液晶パネル1は、液晶セル2と、液晶セル2の視認面側に設けられた視認側偏光板3と、液晶セル2のバックライト側(視認面と反対側)に設けられた反視認側偏光板4と、液晶セル2と反視認側偏光板4の間に設けられた光学補償層5と、反視認側偏光板4のバックライト光入射面側(液晶セル2と反対側)に設けられたコレステリック液晶層7と、を有する。視認側偏光板3と液晶セル2などのような各構成部材の積層は、例えば、接着層を介して接着される。
【0022】
上記視認側偏光板3は、偏光子31と、偏光子31の両側に設けられた保護層32,32と、を有する。上記反視認側偏光板4は、偏光子41と、偏光子41の両側に設けられた保護層42,42と、を有する。
視認側偏光板3と反視認側偏光板4は、視認側偏光板3の偏光子31の吸収軸方向が反視認側偏光板4の偏光子41の吸収軸方向と直交するように配置されている。
バックライト部8は、液晶パネル1(コレステリック液晶層7)の直下に設けられている。ただし、後述するように、バックライト部8は、液晶パネル1の側部に設けることもできる。
【0023】
液晶パネル1は、好ましくは、その視認面が正面視長方形状に形成されている。例えば、液晶パネル1の視認面の横長さは、縦長さよりも長く形成されている。液晶パネル1の横縦長さ比は、特に限定されないが、一般的には、横長さ:縦長さ=4:3、或いは16:9などである。
【0024】
上記視認側偏光板及び反視認側偏光板は、少なくとも偏光子を含み、好ましくは偏光子の一面側又は両側に応じて保護層が設けられる。
偏光子とは、自然光又は偏光から特定の直線偏光を透過させることができる光学部材をいう。偏光子は、特に限定されず、従来公知の偏光子を用いることができる。偏光子としては、例えば、ヨウ素などの二色性物質を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを延伸することによって得られた延伸フィルムを用いることができる。
前記保護層は、通常、透明性に優れた等方性フィルムが用いられる。保護層としては、トリアセチルセルロースフィルムなどを用いることができる。
なお、上記偏光子に、光学補償層を直接積層してもよい。この場合、該光学補償層が、偏光子を保護するので、上記保護層を省略することもできる。
【0025】
上記光学補償層とは、面内又は/及び厚み方向に複屈折性を有する光学部材であり、一般に、位相差板、複屈折フィルム、補償板などとも呼ばれている。
光学補償層は、例えば、23℃で波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上である光学部材を含む。
なお、光学補償層の配置は、図1に示すような、反視認側偏光板4と液晶セル2の間に設けられている場合に限られず、従来公知な構成を採用できる。光学補償層は、例えば、視認側偏光板と液晶セルの間に設けられていてもよく、或いは、光学補償層は、視認側偏光板と液晶セルの間及び反視認側偏光板と液晶セルの間のそれぞれに設けられていてもよい(いずれも図示せず)。光学補償層の配置は、適宜設計することができる。
また、光学補償層は、単層のフィルムから形成されていてもよいし、複層の積層フィルムでもよい。
【0026】
光学補償層の材質は、特に限定されず、液晶性化合物、非液晶性ポリマーなどを例示できる。液晶性化合物から形成された光学補償層としては、例えば、ディスコチック液晶性化合物のカラムナー配向層、ネマチック液晶性化合物の配向層などを例示できる。非液晶性ポリマーから形成された光学補償層としては、例えば、前記ポリマーを一軸配向させたフィルム、前記ポリマーを二軸配向させたフィルムなどを例示できる。非液晶性ポリマーとしては、アミド系、イミド系、エステル系、エーテルケトン系、アミドイミド系、エステルイミド系、セルロース系、カーボネート系、ビニルアルコール系、ノルボルネン系、オレフィン系、アクリレート系、スチレン系、アクリロニトリル−スチレン共重合体やスチレン−マレイミド共重合体などの共重合体などを例示できる。
【0027】
上記液晶性化合物を用いる場合、液晶性化合物を配向膜に塗工後、配向状態を固定化することにより、上記光学補償層を形成できる。前記液晶性化合物が、UV(紫外線)重合性を有する官能基を有している場合には、UVを照射して固定化することができる。上記非液晶性ポリマーを用いる場合、前記ポリマーを製膜した後、適温で延伸処理を行うなどにより、上記光学補償層を形成できる。
【0028】
光学補償層の光学特性についても、特に限定されない。例えば、光学補償層は、その屈折率楕円体がnx>ny=nz、nx=nz>ny、nx=ny<nz、nx=ny>nz、nx>ny>nzなどを満足するフィルムを用いることができる。光学補償層は、視野角特性の改善などを考慮して、従来公知の光学部材の中から適宜選択される。
なお、上記「nx」、「ny」及び「nz」とは、互いに異なる方向の屈折率を示す。nxは、光学補償層の面内において屈折率が最大となる方向(通常、X軸方向という)の屈折率を示し、nyは、光学補償層の面内において前記X軸方向と直交する方向(通常、Y軸方向という)の屈折率を示し、nzは、前記X軸方向及びY軸方向に直交する方向(通常、Z軸方向という)の屈折率を示す。
本発明のコレステリック液晶層を具備する液晶パネルは、上記光学補償層の配置や光学特性などに拘わらず、斜め方向から見た際の赤着色を抑制できるという効果を奏する。
【0029】
上記液晶セルは、カラー表示可能な液晶セルであれば特に限定されず、従来公知の液晶セルを用いることができる。例えば、液晶セルは、一対の液晶セル基板と、該液晶セル基板の間に介在されたスペーサーと、一対の液晶セル基板の間に形成され、且つ液晶材料が注入された液晶層と、視認側の液晶セル基板の内面に設けられたカラーフィルターと、他方の液晶セル基板の内面に設けられた駆動用のTFT基板などの電極素子と、を有する。
液晶セル基板は、透明性に優れるものであれば特に限定されない。液晶セル基板は、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどの透明ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂などの光学用樹脂板等のような可撓性を有する透明フレキシブル材などを用いることができる。
【0030】
液晶層に注入される液晶材料は特に限定されず、液晶モードに応じて適宜なものを選択できる。液晶モードとしては、例えば、VA型、IPS型、TN型、STN型、OCB型などを例示できる。中でもVA型(垂直配向型)の液晶セルは、非常に高いコントラストを実現できるので好ましい。
【0031】
上記接着層の形成材料としては、従来公知の接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等を例示できる。前記接着層は、接着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、該接着層は、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0032】
バックライト部は、少なくとも光源を有する。
光源としては、例えば、冷陰極管、発光ダイオード(好ましくは、白色発光ダイオード)などを用いることができる。
バックライト部の光源は、波長B(400nm〜500nm)、波長G(500nm〜590nm)及び波長R(590nm〜630nm)に発光スペクトルのピークを有する三波長管でもよいが、本発明の効果を特に奏するためには、下記光源が好ましい。
かかる好ましいバックライト部の光源は、上記波長B、波長G及び波長Rに発光スペクトルのピークを有し、且つ波長630nm以上においても発光スペクトルのピークを有する。より好ましいバックライト部の光源は、上記波長B、波長G及び波長Rに発光スペクトルのピークを有し、且つ波長630nm〜800nm(特に好ましくは、波長630nm〜700nm)の範囲においても発光スペクトルのピークを有する。
【0033】
バックライト部の配置は、直下型でもよいし、側部型でもよい。
図2は、バックライト部を液晶セルの直下に配置した液晶表示装置の構成例である。
この液晶表示装置10は、液晶パネル1と、液晶パネル1の一方の側に配置されたバックライト部8と、を少なくとも備える。直下型が採用される場合、上記バックライト部8は、好ましくは、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85と、を少なくとも備える。
【0034】
バックライト部として、側部型が採用される場合、上記光源が、液晶パネルの側部側に配置される(図示せず)。さらに、側部型のバックライト部の場合、上記直下型と同様に、反射フィルム、拡散板、プリズムシート及び輝度向上フィルムを有し、これに加えて、さらに、導光板及びライトリフレクターを有する。
もっとも、バックライト部は、直下型及び側部型の何れの場合も、上記構成例に限定されず、従来公知の構成例を採用できる。
【0035】
[コレステリック液晶層]
本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有する。好ましくは、本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長780nm〜900nmの範囲内において反射率の最大値を有する。
また、本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有する。好ましくは、本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜750nmの範囲内において反射率の最大値を有する。
上記反射率の最大値は、通常、30%〜50%の範囲、好ましくは35%〜45%の範囲内である。コレステリック液晶層の選択反射特性上、特定の波長の光の全てを反射するわけではないからである。
【0036】
本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜1000nmの範囲内において選択反射域を有する。この「コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜1000nmの範囲内において選択反射域を有する」とは、入射角0°の光に対する選択反射域が、波長770nm〜1000nmの範囲内に含まれているという意味である。
また、本発明のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において選択反射域を有する。この「コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において選択反射域を有する」とは、入射角60°の光に対する選択反射域が、波長630nm〜850nmの範囲内に含まれているという意味である。
ただし、上記選択反射域は、反射率の最大値の半分の値以上の反射率を有する波長領域をいう。
【0037】
本発明において、コレステリック液晶層(コレステリック液晶フィルム)とは、その構成分子がらせん構造をとり、そのらせん軸が面方向にほぼ垂直に配向している層をいう。該コレステリック液晶層には、液晶性化合物が、コレステリック液晶相となっている層の他、非液晶性化合物が、前記コレステリック液晶相のようにねじれた状態で配向している層も含まれる。
【0038】
上記コレステリック液晶層のRe(590)は、例えば、5nm以下であり、好ましくは3nm以下である。また、上記コレステリック液晶層のRth(590)は、例えば、50nm〜400nmであり、好ましくは50nm〜100nmである。
ただし、上記Re(590)は、23℃で波長590nmにおいて測定される面内位相差値であり、Re(590)=(nx−ny)×dで求められる。上記Rth(590)は、23℃で波長590nmにおいて測定される厚み方向位相差値であり、Rth(590)=(nx−nz)×dで求められる。なお、前記「nx」は、コレステリック液晶層の面内において屈折率が最大となる方向(通常、X軸方向という)の屈折率を示し、「ny」は、同面内において前記X軸方向と直交する方向(通常、Y軸方向という)の屈折率を示し、「nz」は、前記X軸方向及びY軸方向に直交する方向の屈折率を示す。前記「d」は、コレステリック液晶層の厚み(nm)を示す。
【0039】
上記コレステリック液晶層は、透明性に優れていることが好ましい。この透明性の指標としては、可視光に於ける光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ただし、前記光線透過率は、分光光度計(日立製作所製、製品名:U−4100型)で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。また、そのヘイズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。ただし、前記ヘイズ値は、JIS−K7105に準じて測定された値をいう。
【0040】
上記コレステリック液晶層は、例えば、コレステリック液晶性化合物をプラナー配向させ、該配向状態を固定化することによって得ることができる。また、上記コレステリック液晶層は、例えば、ネマチック液晶性化合物にカイラル剤を適量添加し、これを配向膜上に塗布した後、重合硬化させることによって得ることができる。
反射率の最大値が上記の範囲となるように調整し易いことから、上記コレステリック液晶層は、液晶性化合物にカイラル剤を添加した硬化層(硬化フィルム)が好ましい。
【0041】
上記ネマチック液晶性化合物としては、特に限定されないが、その分子構造中に重合性官能基を1個又は2個以上有することが好ましい。このようなネマチック液晶性化合物としては、例えば、下記式(1)〜(8)で示される重合性メソゲン化合物を例示できる。
【0042】
【化1】

【0043】
上記カイラル剤としては、前述のように液晶性化合物等をらせん状に配向できるものであれば、その種類は特に制限されない。
上記カイラル剤は、好ましくは、そのねじり力が1×10−6nm−1・(質量%)−1以上であり、より好ましくは、1×10−5nm−1・(質量%)−1以上であり、特に好ましくは、1×10−5〜1×10−2nm−1・(質量%)−1の範囲である。
このようなねじり力のカイラル剤を使用すれば、例えば、コレステリック液晶層のらせんピッチを制御でき、上記選択反射特性を有するコレステリック液晶層を容易に形成できる。
【0044】
なお、上記ねじり力とは、一般に、化合物をらせん状に配向させる能力のことを指し、下記式で表すことができる。
式:ねじり力=1/{コレステリックピッチ(nm)×カイラル剤質量比(質量%)}。
このカイラル剤質量比とは、例えば、液晶性化合物とカイラル剤とを含む混合物における前記カイラル剤の質量比をいい、下記式で表される。
式:カイラル剤質量比(質量%)={カイラル剤の質量/(カイラル剤の質量+液晶性化合物の質量)}×100。
【0045】
上記選択反射特性を有する本発明のコレステリック液晶層のらせんピッチは、例えば、0.01〜0.25μmであり、好ましくは、0.03〜0.20μmであり、より好ましくは、0.05〜0.15μmである。
かかるらせんピッチを有するコレステリック液晶層は、例えば、液晶性化合物やカイラル剤の種類、配合量を調整することによって得ることができる。
【0046】
上記カイラル剤としては、その分子構造中に重合性官能基を1個又は2個以上有することが好ましい。このようなカイラル剤としては、例えば、下記式(9)〜(12)で示される化合物を例示できる。
【0047】
【化2】

【0048】
また、本発明のコレステリック液晶層を構成する液晶性化合物やカイラル剤は、上記の化合物以外を用いることもできる。例えば、特開2003−287623号公報に記載されているネマチック液晶性化合物やカイラル剤を用いてもよい。
【0049】
上記コレステリック液晶層においては、液晶性化合物のらせん状配向を固定するために、重合剤(又は架橋剤)を含むことが好ましい。また、重合性官能基を有する液晶性化合物及びカイラル剤を含むコレステリック液晶層の場合には、重合開始剤を含むことが好ましい。前記重合開始剤としては、紫外線などの光重合開始剤が好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、チバガイギー社製の商品名「イルガキュア184」、同商品名「イルガキュア907」、同商品名「イルガキュア369」、同商品名「イルガキュア651」などを例示できる。なお、紫外線照射条件などによっては、光重合開始剤を添加しなくても、硬化する場合がある。
【0050】
上記コレステリック液晶層に於ける液晶性化合物(好ましくは重合性官能基を有するネマチック液晶性化合物)及びカイラル剤(好ましくは重合性官能基を有するカイラル剤)の割合は、特に限定されず、上記選択反射特性を考慮して適宜設定される。
上記コレステリック液晶層に於ける液晶性化合物の割合は、好ましくは75質量%〜99質量%であり、より好ましくは80質量%〜99質量%である。また、上記コレステリック液晶層に於けるカイラル剤の割合は、好ましくは1質量%〜20質量%であり、より好ましくは2質量%〜6質量%である。
また、光重合開始剤を配合する場合、上記コレステリック液晶層における光重合開始剤の割合は、好ましくは0.01質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.05質量%〜6質量%である。
【0051】
上記コレステリック液晶層は、例えば、上記液晶性化合物及びカイラル剤、さらに必要に応じて光重合開始剤を、適当な溶媒に溶解して溶液を調製し、該溶液を適当な基板上に塗工し、乾燥硬化することによって形成できる。
前記溶媒としては、特に限定されず、従来公知の有機溶媒を用いることができる。該溶媒としては、好ましくは、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを例示できる。
【0052】
上記溶液には、必要に応じて各種添加物を適宜配合してもよい。前記添加物としては、例えば、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等を例示できる。
【0053】
上記溶液の粘度は、通常、前記液晶性化合物の濃度や温度等に応じて異なるが、例えば、0.2〜20mPa・sであり、好ましくは0.5〜15mPa・sである。
【0054】
上記溶液を、基板上に塗布することにより塗工膜を形成する。前記溶液の塗布法としては、例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法等を例示できる。
【0055】
上記溶液を塗布する基板としては、液晶性化合物を配向できるものであれば特に制限されず、通常、配向基板が用いられる。また、基板は、上記保護層と同様に、透明性に優れていることが好ましい。配向基板としては、例えば、各種合成樹脂フィルム、、該フィルムの表面をラビング処理したフィルム、石英シート、ガラス板などを例示できる。前記合成樹脂フィルムとしては、特に制限されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂等を例示できる。なお、配向基板自体が複屈折性を有する場合は、ラビング処理などを省略することもできる。基板自体に複屈折性を付与する方法としては、基板の形成時に延伸処理を行ったり、基板をキャスティング法にて製膜するなどの方法を例示できる。
【0056】
溶液を塗布後、塗工膜に加熱処理を施すことによって、溶媒を揮発させると共に、液晶性化合物を配向させる。前記塗工膜には、液晶性化合物とカイラル剤が含まれているため、液晶相(液晶状態)となった液晶性化合物が、前記カイラル剤によってねじりを付与された状態で配向する。つまり、液晶性化合物がコレステリック構造(らせん構造)となる。
【0057】
前記加熱処理の温度条件は、例えば、前記液晶性化合物が液晶相を示す温度に応じて適宜決定できるが、通常、80〜160℃の範囲であり、好ましくは80〜120℃の範囲である。
【0058】
次に、前記液晶性化合物が配向した状態の塗工膜を硬化させる。硬化は、前記液晶性化合物とカイラル剤を重合(または架橋)させることによって行われる。これによって、液晶性化合物がコレステリック構造をとって配向した状態のまま固定される。
【0059】
前記重合処理(または架橋処理)は、例えば、使用する重合剤などの種類によって適宜決定できる。例えば、光重合開始剤を使用した場合には、紫外線などの光を照射すればよい。
紫外線を照射する場合、紫外線の照度は、好ましくは0.1〜30mW/cmであり、より好ましくは1〜20mW/cmである。紫外線の照射時間は、通常、5分以下であり、好ましくは3分以下であり、より好ましくは1分以下である。
【0060】
このようにして前記配向基板上に、コレステリック液晶層を形成できる。該コレステリック液晶層は、液晶性化合物の配向が固定されているため非液晶性である。従って、温度変化によって、液晶相などに変化することがない。つまり、上記コレステリック液晶層は、温度による配向変化が生じない。
【0061】
上記コレステリック液晶層の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5μm〜20μmであり、好ましくは1μm〜10μmである。コレステリック液晶層の厚みが20μmを超えても、選択反射特性の変化がなく、単に高コストとなるからである。
【0062】
上記コレステリック液晶層は、配向基板から剥離して使用してもよいし、配向基板に積層したまま使用してもよい。
コレステリック液晶層を配向基板から剥離する場合には、コレステリック液晶層の表面(配向基板の積層面と反対面)に粘着剤を塗工し、該粘着剤を介して他の光学部材(例えば、偏光板または偏光子など)にコレステリック液晶層を転写することができる。
また、コレステリック液晶層を配向基板に積層したままで使用する場合には、同様に、粘着剤を介して他の光学部材(例えば、偏光板または偏光子など)に積層接着すればよい。この場合、配向基板を保護層として利用することもできる。
【0063】
また、本発明のコレステリック液晶層には、1/4波長板などの光学補償層、ワイヤーグリッド型偏光子などを積層することもできる。
【0064】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、バックライト部から発せられる光が、コレステリック液晶層に入り、その後、反視認側偏光子、液晶セル、視認側偏光子の順に入射して、前記光が視認側偏光子の視認面から出射することにより、カラー画像を表示できる。
上記液晶表示装置の液晶パネルには、反視認側偏光子の反視認面側(バックライト部の光が入射する面側)に、入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有し、且つ入射角60°の場合に波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有する上記コレステリック液晶層が設けられている。このため、コレステリック液晶層の正面方向(入射角0°)から入射する光のうち、波長770nm〜950nmの範囲内の光の一部が反射され、且つ斜め方向から入射する光のうち、波長630nm〜850nmの光の一部が反射される。従って、該コレステリック液晶層を有する液晶表示装置は、正面方向から見た場合には可視光の透過量が低下し難く、斜め方向から見た場合には赤色の光漏れを抑制できる。よって、本発明の液晶表示装置は、正面方向から見た際には、明るく且つ色変化も生じず、他方、斜め方向から見た際には、赤色に色付くことを抑制できる。
【0065】
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルのバックライト側から光を照射して画面を見る透過型であってもよいし、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
【0066】
本発明の液晶表示装置の用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、又は、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0067】
本発明の液晶表示装置の好ましい用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0068】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例によって限定されるものではない。
下記実施例及び各比較例における各種測定等は、下記の方法で行った。
【0069】
(1)コレステリック液晶層の反射率の測定:
大塚電子(株)製、製品名「MCPD3000」を用いて、25℃で波長400nm〜1100nmの反射率を測定した。測定は、光の入射角が、0°、15°、30°、45°及び60°のそれぞれについて行った。反射率(%)=(反射された光量/照射した光量)×100。
(2)選択波長域の求め方:
反射率を縦軸、波長を横軸とするグラフに、上記(1)で測定された各波長での反射率をプロットする。このグラフの反射率曲線から、反射率の最大値を目視で読み取り、且つ該反射率の最大値の半分の値以上の反射率を有する波長を目視で読みとった。反射率の最大値の半分の値以上の反射率を有する波長の範囲を、選択波長域とした。
(3)発光スペクトル強度の測定:
大塚電子(株)製、製品名「MCPD3000」を用いて測定した。
(4)色変化の測定:
色度特性測定装置(ELDIM社製、製品名:Ez−Contrast)を用いて、白画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた際の色変化を測定した。また、同装置を用いて、黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた際の色変化を測定した。測定結果は、横軸をx値とし、縦軸をy値として、xy色度図上に各極角に於けるx,y値の変化をプロットした。
【0070】
[実施例1]
(コレステリック液晶層の作製)
下記の要領で、選択反射域が770〜1000nmの範囲にあるコレステリック液晶層を作製した。
官能性メソゲン化合物(下記式(1)に示す)を97.5質量部と、官能性カイラル化合物(BASF社製、商品名:LC756)を2.5質量部と、をシクロペンタノンに溶解して溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。
この溶液に、光重合開始剤(チバガイギー社製:イルガキュア907)を添加した(溶液中における光重合開始剤が5質量%となるように添加した)。この溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にワイヤーバーを用いて厚み3μmで塗布した後、該塗工膜を90℃の乾燥機中で2分間乾燥し、メソゲン化合物を配向させた。次に、乾燥後の塗工膜を、UVコンベア(ウシオ電機(株)製、製品名:UVC321AM1)を用いて、窒素雰囲気中で塗工膜の表面側からUV照射(照度50mW/cm、照射量500mJ/cm)することにより、厚み2μmの硬化層を得た。この硬化層がコレステリック液晶層である。
このコレステリック液晶層の表面に、各波長の光を、入射角を変えて入射させた場合(0°、15°、30°45°及び60°)の反射率を測定した。その結果を図4に示す。なお、この入射角とは、図3に示す角αである。
その結果、入射角0°(正面入射)において、反射率の最大値は、波長880nm付近に生じ、選択波長域は、775nm〜975nmであった。また、入射角60°(斜め方向)において、反射率の最大値は、波長720nm付近に生じ、選択波長域は、630nm〜840nmであった。
【0071】
【化3】

【0072】
(液晶パネルの準備)
市販の液晶テレビ(シャープ(株)製、商品名:AQUOS LC37−GH1)から、液晶パネルを取り出し、該液晶セルのバックライト側に設けられている偏光板をきれいに取り外した。この液晶テレビのバックライトの各波長における発光スペクトル強度を、図5に示す。
このバックライトは、波長400nm〜500nm、波長500nm〜590nm、波長590nm〜630nm、及び波長630nm〜700nmの範囲内に、それぞれ発光スペクトルのピークを有する。
【0073】
他方、上記コレステリック液晶層を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、偏光板(日東電工(株)製、商品名:NIBCOM−NJP)に貼り合わせ、前記コレステリック液晶層の裏面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。このようにして上記コレステリック液晶層が積層された偏光板を作製した。
上記偏光板を取り外した市販の液晶パネルに、上記コレステリック液晶層が積層された偏光板を貼り合わせた。この際、コレステリック液晶層が積層されていない側の偏光板の面を、20μmのアクリル系粘着剤を介して、前記液晶セルに貼り合わせた。従って、得られた液晶パネルのバックライト側には、液晶セル、偏光板及びコレステリック液晶層が、この順で配置されている。
この液晶パネルを、上記元の液晶テレビに組み込んだ。
【0074】
この液晶テレビの白画面表示時及び黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた場合の色変化を測定した。なお、方位角とは、図3に示す角βであり、極角とは、同図の角αである。白画面表示時の色変化の結果を図6に、黒画面表示時の色変化の結果を図7に示す。
上記色変化試験をした結果、実施例1の液晶テレビは、比較例1に比して、正面(極角0°)における色相差はないが、斜め方向においては、実施例1の液晶テレビは、比較例1に比して色変化が小さかった。
【0075】
[実施例2]
(コレステリック液晶層の作製)
下記の要領で、選択反射域が780〜910nmの範囲にあるコレステリック液晶層を作製した。
官能性メソゲン化合物(BASF社製、商品名:LC242)を96.8質量部と、官能性カイラル化合物(BASF社製、商品名:LC756)を3.2質量部と、をシクロペンタノンに溶解して溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。
この溶液に、光重合開始剤(チバガイギー社製:イルガキュア907)を添加した(溶液中における光重合開始剤が5質量%となるように添加した)。この溶液を、実施例1と同様にして、塗工し、UV硬化させて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にコレステリック液晶層を形成した。
実施例2のコレステリック液晶層の表面に、各波長の光を、入射角を変えて入射させた場合(0°、15°、30°、45°及び60°)の反射率を測定した。その結果を図8に示す。
その結果、入射角0°(正面方向)において、反射率の最大値は、波長850nm付近に生じ、選択波長域は、800nm〜905nmであった。また、入射角60°(斜め方向)において、反射率の最大値は、波長690nm付近に生じ、選択波長域は、620nm〜780nmであった。
【0076】
実施例2のコレステリック液晶層を、実施例1と同様にして、実施例1に用いた液晶テレビの液晶パネルに貼り合わせ、これを液晶テレビに組み込んだ。
実施例2の液晶テレビの白画面表示時及び黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた場合の色変化を測定した。白画面表示時の色変化の結果を図6に、黒画面表示時の色変化の結果を図7に示す。
上記色変化試験の結果、実施例2の液晶テレビは、比較例1に比して、正面(極角0°)における色相差はないが、斜め方向においては、実施例2の液晶テレビは、比較例1に比して色変化が小さかった。
【0077】
[実施例3]
シャープ(株)製の液晶テレビに代えて、下記ソニー(株)製の液晶テレビを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3の液晶テレビを作製した。
実施例3で用いた液晶テレビは、ソニー(株)製の商品名「BRAVIA KDL−32S2000」である。この液晶テレビのバックライトの各波長における発光スペクトル強度を、図9に示す。この液晶テレビのバックライトは、波長630nm以上において輝線ピークを実質的に有しない。
【0078】
実施例3の液晶テレビの白画面表示時及び黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた場合の色変化を測定した。白画面表示時の色変化の結果を図10に、黒画面表示時の色変化の結果を図11に示す。
630nm以上に発光スペクトルピークを有しないバックライトを用いた実施例3の液晶テレビは、実施例1及び2と比較すると、色変化抑制効果がやや劣っていた。しかしながら、実施例3の液晶テレビと、本発明のコレステリック液晶層を有しない比較例2と比較すると、図10及び図11の通り、実施例3の液晶テレビは、色変化抑制効果に優れていた。
【0079】
[比較例1]
コレステリック液晶層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして(つまり、実施例1では、偏光板にコレステリック液晶層を貼り付けたが、比較例1では、偏光板(日東電工(株)製、商品名:NIBCOM−NJP)そのものを用いた)、比較例1の液晶テレビを作製した。
比較例1の液晶テレビの白画面表示時及び黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた場合の色変化を測定した。白画面表示時の色変化の結果を図6に、黒画面表示時の色変化の結果を図7に示す。
【0080】
[比較例2]
コレステリック液晶層を積層しなかったこと以外は実施例3と同様にして(つまり、実施例3では、偏光板に実施例2と同じコレステリック液晶層を貼り付けたが、比較例2では、偏光板(日東電工(株)製、商品名:NIBCOM−NJP)そのものを用いた)、比較例2の液晶テレビを作製した。
比較例2の液晶テレビの白画面表示時及び黒画面表示時において、方位角45°で極角を0°〜80°まで傾けた場合の色変化を測定した。白画面表示時の色変化の結果を図10に、黒画面表示時の色変化の結果を図11に示す。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の液晶表示装置の一構成例を示す模式側面図。
【図2】本発明の液晶表示装置のバックライト部の一構成例を示す模式断面図である。
【図3】入射角、極角及び方位角の位置を示す参考斜視図である。
【図4】実施例1で用いたコレステリック液晶層の反射率を示すグラフ図である。
【図5】実施例1、実施例2及び比較例1で用いたバックライトの発光スペクトル強度を示すグラフ図である。
【図6】実施例1、実施例2及び比較例1の液晶テレビの白画面表示時の色変化を示すグラフ図である。
【図7】実施例1、実施例2及び比較例1の液晶テレビの黒画面表示時の色変化を示すグラフ図である。
【図8】実施例2で用いたコレステリック液晶層の反射率を示すグラフ図である。
【図9】実施例3及び比較例2で用いたバックライトの発光スペクトル強度を示すグラフ図である。
【図10】実施例3及び比較例2の液晶テレビの白画面表示時の色変化を示すグラフ図である。
【図11】実施例3及び比較例2の液晶テレビの黒画面表示時の色変化を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0082】
1…液晶パネル、2…液晶セル、3…視認側偏光板、4…反視認側偏光板、5…光学補償層、7…コレステリック液晶層、8…バックライト部、10…液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルと、前記液晶セルの視認面側に設けられた視認側偏光子と、前記液晶セルのバックライト側に設けられた反視認側偏光子と、前記反視認側偏光子に光を入射させるバックライト部と、を有する液晶表示装置において、
前記反視認側偏光子のバックライト光入射面側に、光を選択的に反射しうるコレステリック液晶層が設けられ、
前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜1000nmの範囲内において選択反射域を有する請求項1に記載の液晶表示装置。
ただし、前記選択反射域は、反射率の最大値の半分の値以上の反射率を有する波長領域である。
【請求項3】
前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有する請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層に入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において選択反射域を有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記バックライト部が、波長630nm以上において発光スペクトルのピークを有する請求項1〜4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記バックライト部が、波長400nm〜500nmの範囲、波長500nm〜590nmの範囲、波長590nm〜630nmの範囲、及び波長630nm〜800nmの範囲のそれぞれにおいて、発光スペクトルのピークを有する請求項1〜4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記バックライト部の光源が、冷陰極管を含む請求項1〜6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記バックライト部の光源が、発光ダイオードを含む請求項1〜6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
視認側偏光子及び反視認側偏光子の間に、光学補償層が配置されている請求項1〜8のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項10】
入射する光が入射角0°の場合、波長770nm〜950nmの範囲内において反射率の最大値を有し、且つ入射する光が入射角60°の場合、波長630nm〜850nmの範囲内において反射率の最大値を有することを特徴とするコレステリック液晶層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−53327(P2009−53327A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218311(P2007−218311)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】