液晶表示装置および電子機器
【課題】 マルチギャップ構造に伴うコントラスト低下を生じることなく、高コントラスト、広視野角の半透過反射型の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶表示装置は、初期配向状態が垂直配向の液晶層50を用いた垂直配向モードを採用しており、画素電極9の外側の領域、画素電極9の外縁部と平面的に重なる領域、および配向制御手段である共通電極31の開口部31Sと平面的に重なる領域が反射表示領域、それ以外が透過表示領域とされ、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層厚が略同一となっている。
【解決手段】 本発明の液晶表示装置は、初期配向状態が垂直配向の液晶層50を用いた垂直配向モードを採用しており、画素電極9の外側の領域、画素電極9の外縁部と平面的に重なる領域、および配向制御手段である共通電極31の開口部31Sと平面的に重なる領域が反射表示領域、それ以外が透過表示領域とされ、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層厚が略同一となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、特に反射モードと透過モードの双方で表示を行う半透過反射型の液晶表示装置において、高コントラスト、広視野角の表示が得られる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
明るい場所では反射型液晶表示装置と同様に外光を利用し、暗い場所ではバックライト等の内部光源により表示を視認可能にした液晶表示装置が提案されている。つまり、この液晶表示装置は、反射型と透過型を兼ね備えた表示方式を採用しており、周囲の明るさに応じて反射モード、透過モードのいずれかの表示方式に切り替えることで消費電力を低減しつつ周囲が暗い場合でも明瞭な表示を行うことができ、特に携帯機器等の表示部に好適なものである。以下、本明細書では、この種の液晶表示装置のことを「半透過反射型液晶表示装置」という。
【0003】
このような半透過反射型液晶表示装置としては、上基板と下基板との間に液晶層が挟持されるとともに、例えばアルミニウム等の金属膜に光透過用の開口部を形成した反射膜を下基板の内面に備え、この反射膜を半透過反射板として機能させる液晶表示装置が提案されている。この場合、反射モードでは上基板側から入射した外光が、液晶層を通過した後に下基板の内面の反射膜で反射され、再び液晶層を通過して上基板側から出射され、表示に寄与する。一方、透過モードでは下基板側から入射したバックライトからの光が、反射膜の開口部から液晶層を通過した後、上基板側から外部に出射され、表示に寄与する。したがって、反射膜の形成領域のうち、開口部が形成された領域が透過表示領域、その他の領域が反射表示領域となる。
【0004】
ところが、従来の半透過反射型液晶表示装置には、透過表示での視角が狭いという課題があった。これは、視差が生じないよう液晶セルの内面に半透過反射板を設けている関係で、観察者側に備えた1枚の偏光板だけで反射表示を行わなければならないという制約があり、光学設計の自由度が小さいためである。そこで、この課題を解決するために、垂直配向液晶を用いる新しい半透過反射型液晶表示装置が提案された。その特徴は、以下の3点である。
(1)誘電異方性が負の液晶を基板に対して垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」を採用している点。
(2)透過表示領域と反射表示領域の液晶層厚(セルギャップ)が異なる、いわゆる「マルチギャップ構造」を採用している点(例えば特許文献1,2参照)。
(3)透過表示領域を正八角形とし、この領域内で液晶が8方向に倒れるように対向基板上の透過表示領域の中央に突起を設けている点。すなわち、「配向分割構造」を採用している点。
【特許文献1】特開平11−242226号公報
【特許文献2】特開2002−350853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記の特許文献2では、マルチギャップ構造を採用している。これは、表示に寄与する光が透過表示では液晶層を1回通過するのに対し反射表示では2回通過するため、透過表示に必要なリタデーションと反射表示に必要なリタデーションとを最適化するためである。マルチギャップ構造を実現するためには、例えば反射表示領域に樹脂層を形成して透過表示領域との間に段差を形成することにより、反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚の略半分とするのが一般的である。
【0006】
しかしながら、このような構成を液晶セル内で実現しようとすると、階段状の段差を形成するのが難しく、透過表示領域と反射表示領域との境界部分に樹脂層のスロープ部(傾斜部)ができてしまうのが避けられない。そのため、垂直配向モードでありながら、樹脂層のスロープ部では液晶が基板面に対して斜めに配向してしまい、この部分が表示のコントラストを低下させる原因になる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、半透過反射型液晶表示装置において、広視角等の垂直配向モードの利点を生かしつつ、高コントラスト化が可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、素子基板と対向基板とから構成される一対の基板間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられた液晶表示装置であって、前記素子基板上には、前記液晶層を駆動するための画素電極が設けられ、少なくとも、前記画素電極の外側の領域、および前記画素電極の外縁部と平面的に重なる領域が前記反射表示領域とされ、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚が略同一とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の液晶表示装置は、半透過反射型液晶表示装置に垂直配向モードの液晶を組み合わせたものである。上述したように、近年の半透過反射型液晶表示装置において、反射、透過両表示モードにおけるリタデーション差によるコントラスト低下の問題を解消するために、例えば基板上の反射表示領域内に所定の厚みを有する樹脂層を液晶層側に向けて突出するように形成することによって、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層厚を変えた構造、いわゆるマルチギャップ構造が提案されている。この種の液晶表示装置に関する発明は本出願人も既に多数出願している。この構成によれば、樹脂層の存在によって反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚よりも小さくすることができるので、反射表示のリタデーションと透過表示のリタデーションを略等しくすることができ、理論上はコントラストの向上を図ることができる。しかしながら、実際には樹脂層のスロープ部に起因してコントラストの低下が生じていた。
【0010】
そこで、本発明者は発想を変え、マルチギャップ構造を採用しなくても、垂直配向モードの液晶表示装置において1つのドット領域内に必然的にリタデーションが異なる部分ができることに着目した。すなわち、1つのドット領域内に1つの画素電極を有するアクティブマトリクス型の液晶表示装置の場合、隣接する画素電極間の領域には電界が印加されないので、この部分では液晶分子が倒れない。一方、画素電極の中央部では電界印加に応じて液晶分子が水平方向に倒れる。また、その中間の領域である画素電極の縁の部分では液晶層には基板面の法線方向から傾いた方向に電界が印加され、液晶分子が中途半端に倒れた状態となる。したがって、画素電極の中央部に対して画素電極の外縁部、隣接する画素電極間(画素電極の外側)の領域の順にリタデーションが連続的に小さくなる。そこで、画素電極の外側領域および画素電極の外縁部に相当する領域を反射表示領域に利用し、それ以外の領域を透過表示領域に利用すれば、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。この構成によれば、マルチギャップ構造における樹脂層の悪影響を排除できるので、高コントラストの液晶表示装置を実現することができる。
【0011】
上記本発明の構成において、前記画素電極と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段を設けることが望ましい。具体的な配向制御手段の形態として、電極に設けた開口部、もしくは電極上に設けた凸部(突起)等を採用することができる。
上述したように、画素電極の外縁部の液晶層には基板法線方向に対して斜め方向に電界が印加されるので、この作用により液晶分子を放射状に倒すことができ、配向方向を一応制御することができる。しかしながら、この作用だけでは必ずしも配向制御が充分になされるとは言えないので、例えば画素電極の中央部に相当する対向基板上の位置に配向制御手段を設けることによって配向制御力がより強められる。その結果、配向分割構造をより確実に実現することができ、広視野角化を図ることができる。
【0012】
上記の構成において、少なくとも配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
配向制御手段の中央部では画素電極の外側の領域と同様、液晶分子がほとんど倒れない領域ができ、配向制御手段の外縁部では画素電極の外縁部と同様、液晶分子が中途半端に倒れる領域ができる。したがって、配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることによって、この部分においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0013】
垂直配向モードの液晶表示装置において、近年、1つのドット領域を複数のサブドット領域に分割し、画素電極がこれらサブドット領域を構成する複数の島状部と隣接する島状部間を連結する連結部とを有する構成(例えば串刺しの団子に似た形状)が採用されている。このように1つの画素電極を複数の島状部に分割することで各島状部の形状を円形、または正多角形に近づけることができ、360°の各方向に対してより均等な配向分割構造を実現することで、どの方向から見ても視認性に優れた液晶表示装置を実現している。
【0014】
この構成を本発明に採用した場合、少なくとも、各島状部の外縁部、および連結部と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
この構成の場合、全ての島状部の外縁部で上述の画素電極の外縁部と同様の現象が起こり、液晶分子が中途半端に倒れる領域ができる。また、連結部は、液晶分子が様々な方向に倒れようとする領域であるため、液晶分子がほとんど倒れない領域や中途半端に倒れる領域ができる。したがって、これらの部分をさらに反射表示領域とすることによって、この部分においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0015】
また、各島状部と平面的に重なる対向基板上の領域にも、液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段を設けることが望ましい。
上述したように、各島状部の外縁部の液晶層には斜め方向に電界が印加されるので、この作用により液晶分子を各島状部毎に放射状に倒すことができ、配向方向を一応制御することができる。しかしながら、この作用だけでは必ずしも配向制御が充分になされるとは言えないので、例えば島状部の中央部に相当する対向基板上の位置に配向制御手段を設けることによって配向制御力がより強められる。その結果、配向分割構造をより確実に実現することができ、更なる広視野角化を図ることができる。
【0016】
この場合、少なくとも配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
上述したように、この構成によれば、配向制御手段と平面的に重なる領域においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0017】
さらに、前記一対の基板のそれぞれに対して略円偏光を入射させるための略円偏光入射手段を備えることによって、反射表示、透過表示ともに良好な表示を行うことができる。
【0018】
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、使用環境によらずに明るく、高コントラスト、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。
本実施の形態の液晶表示装置は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の例である。
図1は本実施の形態の液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットの等価回路図、図2はTFTアレイ基板のドット領域内の構造を示す平面図、図3は同、液晶装置の構造を示す断面図であって、図2のA−A’線に沿う断面図、図4は液晶分子の配向の様子を示す図である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
本実施の形態の液晶表示装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットには、画素電極9と当該画素電極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。また、走査線3aがTFT30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0021】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。なお、符号3bは容量線である。
【0022】
次に、図2に基づいて、本実施の形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板10上に、複数の略矩形状(正確には八角形状)の画素電極9がマトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線(図2においては図示略)が設けられている。画素電極9の左下の部分に当該画素電極9を駆動するTFT30が形成されている。本実施の形態において、各画素電極9、および各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、TFT30等が形成された領域の内側が一つのドット領域であり、マトリクス状に配置された各ドット領域毎に表示が可能な構造になっている。
【0023】
データ線6aは、TFT30を構成する、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのソース領域に電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのドレイン領域に電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、チャネル領域に対向するようにゲート電極3が配置されており、走査線3aからドット領域内部に向けて分岐した部分がゲート電極として機能する。
【0024】
図2に示すように、一つのドット領域において、画素電極9の外側の領域および画素電極9の外縁部には矩形枠状の反射膜20が形成されている。さらに、画素電極9の中央部にあたる位置には、後述する対向基板25上の共通電極31に矩形状の開口部31S(配向制御手段、輪郭を破線で示す)が形成されている。この開口部31Sの内部および外周部を囲むように、開口部より一回り大きい輪郭で矩形状の反射膜20が形成されている。これらの反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20が形成されていない矩形環状の領域が透過表示領域Tとなる。
【0025】
次に、図3に基づいて本実施の形態の液晶表示装置の断面構造について説明する。図3は図2のA−A’線に沿う断面図であるが、本発明は反射膜や電極の構成や位置関係に特徴があり、TFTやその他の配線等の断面構造は従来のものと変わらないため、TFTや配線部分の図示および説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、TFTアレイ基板10(素子基板)とこれに対向配置された対向基板25との間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層50が挟持されている。本実施形態の場合、上側(視認側)の基板がTFTアレイ基板10、下側(背面側)の基板が対向基板25である。TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aの表面に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる画素電極9が形成されている。また、画素電極9上を含むTFTアレイ基板10の最表面には垂直配向膜(図示略)が形成されている。
【0027】
一方、対向基板25側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体25A上に、アルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が形成されている。反射膜の表面には、例えばアクリル樹脂等からなる下地の絶縁層(図示略)の表面形状を反映した凹凸が形成されている。この凹凸により反射光が散乱し、反射表示の視認性が向上する。上述したように、画素電極9の外側から外縁部にかけての領域、および共通電極31の開口部31Sの内部からその外周部にかけての領域に反射膜20が形成されている。反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域が透過表示領域Tとなる。
【0028】
反射表示領域R内に位置する反射膜20上、および透過表示領域T内に位置する基板本体25A上に、カラーフィルターを構成する色素層22が設けられている。この色素層22は、隣接するドット領域毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる色の色素層22が配置されており、隣接する3つのドット領域で1つの画素を構成する。あるいは、反射表示と透過表示とで表示色の彩度が異なるのを補償すべく、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで色純度や膜厚を変えた色素層を別個に設けてもよい。なお、色素層22上には、樹脂等からなる平坦化膜を形成しても良い。
【0029】
カラーフィルターの色素層22の上には、ITO等の透明導電膜からなる共通電極31が形成されている。上述したように、共通電極31には、画素電極9の中央部にあたる位置に矩形状の開口部31Sが形成されている。共通電極31上には、垂直配向膜(図示略)が形成されている。TFTアレイ基板10、対向基板25の双方の配向膜には、ともに垂直配向処理が施されているが、本実施の形態においては、ラビング処理などにより液晶分子にプレチルトを付与する手段は施されていない。あるいは、プレチルトを付与しても良い。
【0030】
また、TFTアレイ基板10の外面側、および対向基板25の外面側には、それぞれ基板本体側から位相差板43,41、偏光板44,42が設けられている。位相差板43,41は可視光の波長に対して略1/4波長の位相差を持つものであり、この位相差板43,41と偏光板44,42との組み合わせによりTFTアレイ基板10側および対向基板25側の双方から液晶層50に略円偏光が入射されるようになっている。また、2枚の偏光板44,42の透過軸は平面視垂直(クロスニコル)に配置されている。対向基板25の外面側にあたる液晶セルの外側には、光源61、リフレクタ62、導光板63などを有するバックライト64が設置されている。
【0031】
本実施形態の液晶表示装置において、選択電圧印加(電圧オン)時の液晶分子の配向の様子を示したのが図4である。
選択電圧印加によって、液晶分子50Bは垂直配向から水平配向へと変化するが、一つのドット領域内で一様に水平配向となるのではなく、図4に示すように、配向が連続的に変化する。すなわち、画素電極9と共通電極31とが完全に対向している領域では、基板面の法線方向に電界が印加されるので、液晶分子50Bがほぼ水平方向に倒れる。一方、画素電極9の外側の画素電極9から離れた領域では、液晶層50に電界が印加されないので、液晶分子50Bは垂直配向のままである。また、その中間の領域である画素電極9の縁の近傍では、液晶層50には基板面の法線方向から傾いた方向に電界が印加されるので、液晶分子50Bが中途半端に倒れ、花びらが下向きに開いたように倒れた状態となる。同様に、共通電極31の開口部31Sの中心部に対応する領域は液晶分子50Bは垂直配向のままであるが、開口部31Sの縁の近傍では液晶分子50Bが中途半端に倒れた状態となり、花びらが上向きに開いたように倒れた状態となる。
【0032】
すなわち、図4の配向状態におけるリタデーションを考えると、液晶分子50Bが略水平配向となった画素電極9の中央部ではリタデーションが所定の値を取り、液晶分子50Bが略垂直配向となった隣接する画素電極9間の中央部および共通電極31の開口部31Sの中央部ではリタデーションが0となる。そして、画素電極9の中央部から隣接する画素電極9間の中央部に向けて、また、画素電極9の中央部から共通電極31の開口部31Sの中央部に向けてリタデーションが連続的に小さくなる。本実施の形態では画素電極9の中央部にあたる領域を透過表示領域T、隣接する画素電極9間および共通電極31の開口部31Sにあたる領域を反射表示領域Rとしている。
【0033】
ここで、液晶層の屈折率異方性Δnと液晶層厚dを適切な値に設定することによって、図4のような配向状態における透過表示領域Tでのリタデーション(R=Δn・d)の値を可視光の波長の1/2(緑色光の波長をλとすると、λ/2=270〜280nm程度)とすることができる。すると、図4の下側に示したように、反射表示領域RでのリタデーションRはλ/2からλ/4を経て0まで低下する。本実施の形態においては、リタデーションRの値がλ/4以下(130〜140nm程度以下)となる領域に反射膜20を形成し、反射表示領域Rとするのが望ましい。透過表示領域TよりリタデーションRが小さい領域であっても、リタデーションRの値がλ/2からλ/4の間の領域を反射表示領域Rとすると、反射表示の色付きが生じてしまい、表示品位が低下するからである。この領域を透過表示領域Tとして使う分にはさほど問題は生じない。
【0034】
以上述べたように、本実施の形態の液晶表示装置においては、液晶層50の配向状態の異なる部分を反射表示領域Rと透過表示領域Tに振り分けたことによって、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rのリタデーションを透過表示領域Tのリタデーションよりも小さくすることができ、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。この構成によれば、マルチギャップ構造における樹脂層の悪影響を排除できるので、高コントラストの液晶表示装置を実現することができる。さらに、画素電極9の形状と共通電極31の開口部31Sの作用によって、1ドット領域内の液晶の配向方向が略放射状に分割された配向分割構造が実現できるので、広視野角の表示を実現することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図5、図6を参照して説明する。
図5は本実施の形態の液晶表示装置を示す断面図、図6は液晶の配向状態を示す図である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と全く同様であるため、図5、図6において図3、図4と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0036】
本実施の形態の場合、共通電極31の開口部31Sに代えて、図5に示すように、対向基板25側の共通電極31上に断面が三角形状の凸部29(配向制御手段)が形成されている。この凸部29は、例えばアクリル樹脂等の誘電体材料から形成されており、その平面形状は、第1の実施の形態の図2に示した開口部31Sの形状と同様、ドット領域の中央に直線状に形成されている。そして、対向基板25においては、共通電極31および凸部29を覆うように垂直配向膜(図示略)が形成されている。すなわち、本実施の形態の液晶表示装置は、配向制御手段を凸部29としたことだけが第1の実施の形態と異なっている。
【0037】
選択電圧印加時の液晶の配向状態についても、図6に示したように、第1の実施の形態の図4と同様である。上述したように、共通電極31に開口部を設けた場合、開口部の縁の部分で基板法線方向に対して電界が斜め方向に印加されることで液晶分子も斜めに倒れる。一方、共通電極31上に凸部29を設けた場合、凸部29の形状効果によって液晶分子50Bが傾斜面に対して垂直に配向しようとするので、結果的に液晶分子50Bが斜めに倒れることになる。このように、凸部29を設けた場合は、液晶の配向のメカニズムは開口部を設けた場合と異なるものの、配向状態としては花びらが上向きに開くような方向に倒れる点では一致している。また、図6の下側に示したリタデーションの変化の様子も第1の実施の形態と同様である。
【0038】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、ドット領域内で配向分割構造が実現できるので、広視野角の表示を実現することができる、といった第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態を図7〜図9を参照して説明する。
図7は本実施の形態の液晶表示装置のドット領域内の構成を示す平面図、図8は同、液晶表示装置の構成を示す断面図であって、図7のB−B’線に沿う断面図、図9は選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図、である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と同様であるため、図7〜図9において図2〜図4と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施の形態では、図7に示すように、画素電極9は3つの島状部9a,9b,9cを含んで構成されており、各島状部9a,9b,9c同士が連結部39を介して電気的に接続されて1つの画素電極9を構成している。つまり、本実施形態では、各ドット領域を、略同じ形状の3つのサブドット領域S1,S2,S3に分割して構成している。つまり、TFTアレイ基板10側の画素電極9が、3つの島状部9a,9b,9cと、隣接する各島状部を互いに電気的に接続する連結部39,39とを含んで構成されており、各島状部9a,9b,9cがそれぞれサブドット領域S1,S2,S3を構成している。
【0041】
通常、カラーフィルターを備えた液晶表示装置では、1つのドット領域の縦横比が約3:1となるので、本実施の形態のように、1つのドット領域に3つのサブドット領域S1,S2,S3を設けると、1つのサブドット領域の形状を円形や正多角形に近づけることができ、360°全方向に広視野角化するのに好ましい。各サブドット領域S1,S2,S3(島状部9a,9b,9c)の形状は、図7では八角形状であるが、これに限らず、例えば円形状、その他の多角形状のものとすることができる。また言い換えると、画素電極9において、各島状部9a,9b,9cの間には、電極を部分的に切り欠いた形状のスリット(連結部39,39を除いた部分)が形成されていることになる。
【0042】
そして、各島状部9a,9b,9cの中央部にあたる位置には、対向基板25上の共通電極31に円形の開口部31S(配向制御手段、輪郭を破線で示す)が形成されている。一つのドット領域において、各島状部9a,9b,9cの外側の領域、各島状部9a,9b,9cの外縁部、および連結部39と平面的に重なる領域には矩形枠状の反射膜20が形成されている。さらに、共通電極31の開口部31Sの内部および外周部を囲むように、開口部31Sより一回り大きい輪郭で円形の反射膜20が形成されている。これらの反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20が形成されていない矩形環状の領域が透過表示領域Tとなる。
【0043】
本実施の形態の液晶表示装置の断面構造は、図8に示すように、第1の実施の形態の図3と何ら変わるところがない。また、図9に示す液晶の配向状態も同様である。さらに、図示していないが、連結部39の箇所を通る直線で破断した断面においても、連結部39の直下の領域での配向状態は図9の中央の開口部の直上の領域の配向状態と同様であり、花びらが上向きに開くような方向に液晶分子50Bが倒れている。
【0044】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、といった第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態の場合、1つのドット領域内を複数のサブドット領域S1,S2,S3に分割したことによって、略全方位にわたって広視野角の表示を実現することができる。
【0045】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4の実施の形態を図10、図11を参照して説明する。
図10は本実施の形態の液晶表示装置を示す断面図、図11は選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図、である。本実施の形態の液晶表示装置は1つのドット領域内を複数のサブドット領域に分割したものであり、その平面構造は第3の実施の形態と全く同様であるため説明は省略し、断面構造の異なる部分だけを説明する。
【0046】
第1〜第3の実施の形態ではTFTアレイ基板10を視認側、対向基板25をバックライト64側に配置していたのに対し、本実施の形態ではカラーフィルターを備えた対向基板25を視認側、TFTアレイ基板10をバックライト64側に配置している。
すなわち、図10に示すように、TFTアレイ基板10(下基板)側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体10A上に、アルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が形成されている。反射膜20の表面には、例えばアクリル樹脂等からなる下地の絶縁層(図示略)の表面形状を反映した凹凸が形成されている。この凹凸により反射光が散乱し、反射表示の視認性が向上する。後述する画素電極9の外側から外縁部にかけての領域、および共通電極31の開口部31Sの内部からその外周部にかけての領域に反射膜20が形成されている。反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域が透過表示領域Tとなる。反射膜20上を含む基板本体10Aの全面にはアクリル樹脂等からなる平坦化膜49が形成され、平坦化膜49上にITO等の透明導電膜からなる画素電極9が形成されている。画素電極9上には垂直配向膜(図示略)が形成されている。
【0047】
一方、対向基板25(上基板)側は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体25Aの内面に、カラーフィルターを構成する色素層22が設けられている。この色素層22は、隣接するドット領域毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる色の色素層が配置されており、隣接する3つのドット領域で1つの画素を構成する。あるいは、反射表示と透過表示とで表示色の彩度が異なるのを補償すべく、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで色純度や膜厚を変えた色素層を別個に設けてもよい。なお、色素層22上には、樹脂等からなる平坦化膜を形成しても良い。カラーフィルターの色素層22上にITO等の透明導電膜からなる共通電極31が形成されている。共通電極31には、画素電極9の島状部9a,9b,9cの中央部にあたる位置に開口部31S(配向制御手段)が形成されている。共通電極31上には垂直配向膜(図示略)が形成されている。その他、各基板の外面側の位相差板41,43、偏光板42,44、バックライト64等の構成は上記実施の形態と同様である。
【0048】
選択電圧印加時の液晶の配向状態については、図11に示すように、第1〜第3の実施の形態と上下逆向きとなる。すなわち、本実施の形態では、画素電極9が下基板側、共通電極31の開口部31Sが上基板側に配置されており、第1〜第3の実施の形態と上下が逆転している。したがって、画素電極9や開口部31Sの縁の部分において電界が斜めに傾く方向が第1〜第3の実施の形態と逆方向になり、画素電極9の縁の部分においては花びらが上向きに開くような方向、開口部31Sの縁の部分においては花びらが下向きに開くような方向に液晶分子50Bが倒れることになる。ただし、図11の下側に示したリタデーションの変化の様子は第1〜第3の実施の形態と同様である。
【0049】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、1つのドット領域内を複数のサブドット領域に分割したことで略全方位にわたって広視野角の表示を実現することができる、といった第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
[電子機器]
次に、本発明の上記実施の形態の液晶表示装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
図12は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記液晶表示装置を用いた表示部を示している。
図12に示す電子機器は、上記実施の形態の液晶表示装置を用いた表示部を備えているので、使用環境によらずに明るく、コントラストが高く、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態ではTFTをスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用した例を示したが、薄膜ダイオード(Thin Film Diode,TFD)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用することも可能である。その他、各種構成要素の材料、寸法、形状等に関する具体的な記載は、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の液晶表示装置の等価回路図である。
【図2】同、液晶表示装置の1ドットの構成を示す平面図である。
【図3】同、液晶表示装置の図2のA−A’線に沿う断面図である。
【図4】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の液晶表示装置の断面図である。
【図6】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態の液晶表示装置のドット構成を示す平面図である。
【図8】同、液晶表示装置の図7のB−B’線に沿う断面図である。
【図9】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態の液晶表示装置の断面図である。
【図11】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図12】本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
9…画素電極、9a,9b,9c…島状部、10…TFTアレイ基板、20…反射膜、25…対向基板、29…凸部(配向制御手段)、31…共通電極、31S…開口部(配向制御手段)、41,43…位相差板(略円偏光入射手段)、42,44…偏光板(円偏光入射手段)、50…液晶層、50B…液晶分子、R…反射表示領域、T…透過表示領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、特に反射モードと透過モードの双方で表示を行う半透過反射型の液晶表示装置において、高コントラスト、広視野角の表示が得られる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
明るい場所では反射型液晶表示装置と同様に外光を利用し、暗い場所ではバックライト等の内部光源により表示を視認可能にした液晶表示装置が提案されている。つまり、この液晶表示装置は、反射型と透過型を兼ね備えた表示方式を採用しており、周囲の明るさに応じて反射モード、透過モードのいずれかの表示方式に切り替えることで消費電力を低減しつつ周囲が暗い場合でも明瞭な表示を行うことができ、特に携帯機器等の表示部に好適なものである。以下、本明細書では、この種の液晶表示装置のことを「半透過反射型液晶表示装置」という。
【0003】
このような半透過反射型液晶表示装置としては、上基板と下基板との間に液晶層が挟持されるとともに、例えばアルミニウム等の金属膜に光透過用の開口部を形成した反射膜を下基板の内面に備え、この反射膜を半透過反射板として機能させる液晶表示装置が提案されている。この場合、反射モードでは上基板側から入射した外光が、液晶層を通過した後に下基板の内面の反射膜で反射され、再び液晶層を通過して上基板側から出射され、表示に寄与する。一方、透過モードでは下基板側から入射したバックライトからの光が、反射膜の開口部から液晶層を通過した後、上基板側から外部に出射され、表示に寄与する。したがって、反射膜の形成領域のうち、開口部が形成された領域が透過表示領域、その他の領域が反射表示領域となる。
【0004】
ところが、従来の半透過反射型液晶表示装置には、透過表示での視角が狭いという課題があった。これは、視差が生じないよう液晶セルの内面に半透過反射板を設けている関係で、観察者側に備えた1枚の偏光板だけで反射表示を行わなければならないという制約があり、光学設計の自由度が小さいためである。そこで、この課題を解決するために、垂直配向液晶を用いる新しい半透過反射型液晶表示装置が提案された。その特徴は、以下の3点である。
(1)誘電異方性が負の液晶を基板に対して垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」を採用している点。
(2)透過表示領域と反射表示領域の液晶層厚(セルギャップ)が異なる、いわゆる「マルチギャップ構造」を採用している点(例えば特許文献1,2参照)。
(3)透過表示領域を正八角形とし、この領域内で液晶が8方向に倒れるように対向基板上の透過表示領域の中央に突起を設けている点。すなわち、「配向分割構造」を採用している点。
【特許文献1】特開平11−242226号公報
【特許文献2】特開2002−350853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記の特許文献2では、マルチギャップ構造を採用している。これは、表示に寄与する光が透過表示では液晶層を1回通過するのに対し反射表示では2回通過するため、透過表示に必要なリタデーションと反射表示に必要なリタデーションとを最適化するためである。マルチギャップ構造を実現するためには、例えば反射表示領域に樹脂層を形成して透過表示領域との間に段差を形成することにより、反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚の略半分とするのが一般的である。
【0006】
しかしながら、このような構成を液晶セル内で実現しようとすると、階段状の段差を形成するのが難しく、透過表示領域と反射表示領域との境界部分に樹脂層のスロープ部(傾斜部)ができてしまうのが避けられない。そのため、垂直配向モードでありながら、樹脂層のスロープ部では液晶が基板面に対して斜めに配向してしまい、この部分が表示のコントラストを低下させる原因になる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、半透過反射型液晶表示装置において、広視角等の垂直配向モードの利点を生かしつつ、高コントラスト化が可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、素子基板と対向基板とから構成される一対の基板間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられた液晶表示装置であって、前記素子基板上には、前記液晶層を駆動するための画素電極が設けられ、少なくとも、前記画素電極の外側の領域、および前記画素電極の外縁部と平面的に重なる領域が前記反射表示領域とされ、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚が略同一とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の液晶表示装置は、半透過反射型液晶表示装置に垂直配向モードの液晶を組み合わせたものである。上述したように、近年の半透過反射型液晶表示装置において、反射、透過両表示モードにおけるリタデーション差によるコントラスト低下の問題を解消するために、例えば基板上の反射表示領域内に所定の厚みを有する樹脂層を液晶層側に向けて突出するように形成することによって、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層厚を変えた構造、いわゆるマルチギャップ構造が提案されている。この種の液晶表示装置に関する発明は本出願人も既に多数出願している。この構成によれば、樹脂層の存在によって反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚よりも小さくすることができるので、反射表示のリタデーションと透過表示のリタデーションを略等しくすることができ、理論上はコントラストの向上を図ることができる。しかしながら、実際には樹脂層のスロープ部に起因してコントラストの低下が生じていた。
【0010】
そこで、本発明者は発想を変え、マルチギャップ構造を採用しなくても、垂直配向モードの液晶表示装置において1つのドット領域内に必然的にリタデーションが異なる部分ができることに着目した。すなわち、1つのドット領域内に1つの画素電極を有するアクティブマトリクス型の液晶表示装置の場合、隣接する画素電極間の領域には電界が印加されないので、この部分では液晶分子が倒れない。一方、画素電極の中央部では電界印加に応じて液晶分子が水平方向に倒れる。また、その中間の領域である画素電極の縁の部分では液晶層には基板面の法線方向から傾いた方向に電界が印加され、液晶分子が中途半端に倒れた状態となる。したがって、画素電極の中央部に対して画素電極の外縁部、隣接する画素電極間(画素電極の外側)の領域の順にリタデーションが連続的に小さくなる。そこで、画素電極の外側領域および画素電極の外縁部に相当する領域を反射表示領域に利用し、それ以外の領域を透過表示領域に利用すれば、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。この構成によれば、マルチギャップ構造における樹脂層の悪影響を排除できるので、高コントラストの液晶表示装置を実現することができる。
【0011】
上記本発明の構成において、前記画素電極と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段を設けることが望ましい。具体的な配向制御手段の形態として、電極に設けた開口部、もしくは電極上に設けた凸部(突起)等を採用することができる。
上述したように、画素電極の外縁部の液晶層には基板法線方向に対して斜め方向に電界が印加されるので、この作用により液晶分子を放射状に倒すことができ、配向方向を一応制御することができる。しかしながら、この作用だけでは必ずしも配向制御が充分になされるとは言えないので、例えば画素電極の中央部に相当する対向基板上の位置に配向制御手段を設けることによって配向制御力がより強められる。その結果、配向分割構造をより確実に実現することができ、広視野角化を図ることができる。
【0012】
上記の構成において、少なくとも配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
配向制御手段の中央部では画素電極の外側の領域と同様、液晶分子がほとんど倒れない領域ができ、配向制御手段の外縁部では画素電極の外縁部と同様、液晶分子が中途半端に倒れる領域ができる。したがって、配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることによって、この部分においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0013】
垂直配向モードの液晶表示装置において、近年、1つのドット領域を複数のサブドット領域に分割し、画素電極がこれらサブドット領域を構成する複数の島状部と隣接する島状部間を連結する連結部とを有する構成(例えば串刺しの団子に似た形状)が採用されている。このように1つの画素電極を複数の島状部に分割することで各島状部の形状を円形、または正多角形に近づけることができ、360°の各方向に対してより均等な配向分割構造を実現することで、どの方向から見ても視認性に優れた液晶表示装置を実現している。
【0014】
この構成を本発明に採用した場合、少なくとも、各島状部の外縁部、および連結部と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
この構成の場合、全ての島状部の外縁部で上述の画素電極の外縁部と同様の現象が起こり、液晶分子が中途半端に倒れる領域ができる。また、連結部は、液晶分子が様々な方向に倒れようとする領域であるため、液晶分子がほとんど倒れない領域や中途半端に倒れる領域ができる。したがって、これらの部分をさらに反射表示領域とすることによって、この部分においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0015】
また、各島状部と平面的に重なる対向基板上の領域にも、液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段を設けることが望ましい。
上述したように、各島状部の外縁部の液晶層には斜め方向に電界が印加されるので、この作用により液晶分子を各島状部毎に放射状に倒すことができ、配向方向を一応制御することができる。しかしながら、この作用だけでは必ずしも配向制御が充分になされるとは言えないので、例えば島状部の中央部に相当する対向基板上の位置に配向制御手段を設けることによって配向制御力がより強められる。その結果、配向分割構造をより確実に実現することができ、更なる広視野角化を図ることができる。
【0016】
この場合、少なくとも配向制御手段と平面的に重なる領域をさらに反射表示領域とすることが望ましい。
上述したように、この構成によれば、配向制御手段と平面的に重なる領域においても反射表示領域のリタデーションを透過表示領域のリタデーションよりも小さくでき、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。
【0017】
さらに、前記一対の基板のそれぞれに対して略円偏光を入射させるための略円偏光入射手段を備えることによって、反射表示、透過表示ともに良好な表示を行うことができる。
【0018】
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、使用環境によらずに明るく、高コントラスト、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。
本実施の形態の液晶表示装置は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の例である。
図1は本実施の形態の液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットの等価回路図、図2はTFTアレイ基板のドット領域内の構造を示す平面図、図3は同、液晶装置の構造を示す断面図であって、図2のA−A’線に沿う断面図、図4は液晶分子の配向の様子を示す図である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
本実施の形態の液晶表示装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットには、画素電極9と当該画素電極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。また、走査線3aがTFT30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0021】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。なお、符号3bは容量線である。
【0022】
次に、図2に基づいて、本実施の形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板10上に、複数の略矩形状(正確には八角形状)の画素電極9がマトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線(図2においては図示略)が設けられている。画素電極9の左下の部分に当該画素電極9を駆動するTFT30が形成されている。本実施の形態において、各画素電極9、および各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、TFT30等が形成された領域の内側が一つのドット領域であり、マトリクス状に配置された各ドット領域毎に表示が可能な構造になっている。
【0023】
データ線6aは、TFT30を構成する、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのソース領域に電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのドレイン領域に電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、チャネル領域に対向するようにゲート電極3が配置されており、走査線3aからドット領域内部に向けて分岐した部分がゲート電極として機能する。
【0024】
図2に示すように、一つのドット領域において、画素電極9の外側の領域および画素電極9の外縁部には矩形枠状の反射膜20が形成されている。さらに、画素電極9の中央部にあたる位置には、後述する対向基板25上の共通電極31に矩形状の開口部31S(配向制御手段、輪郭を破線で示す)が形成されている。この開口部31Sの内部および外周部を囲むように、開口部より一回り大きい輪郭で矩形状の反射膜20が形成されている。これらの反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20が形成されていない矩形環状の領域が透過表示領域Tとなる。
【0025】
次に、図3に基づいて本実施の形態の液晶表示装置の断面構造について説明する。図3は図2のA−A’線に沿う断面図であるが、本発明は反射膜や電極の構成や位置関係に特徴があり、TFTやその他の配線等の断面構造は従来のものと変わらないため、TFTや配線部分の図示および説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、TFTアレイ基板10(素子基板)とこれに対向配置された対向基板25との間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層50が挟持されている。本実施形態の場合、上側(視認側)の基板がTFTアレイ基板10、下側(背面側)の基板が対向基板25である。TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aの表面に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる画素電極9が形成されている。また、画素電極9上を含むTFTアレイ基板10の最表面には垂直配向膜(図示略)が形成されている。
【0027】
一方、対向基板25側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体25A上に、アルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が形成されている。反射膜の表面には、例えばアクリル樹脂等からなる下地の絶縁層(図示略)の表面形状を反映した凹凸が形成されている。この凹凸により反射光が散乱し、反射表示の視認性が向上する。上述したように、画素電極9の外側から外縁部にかけての領域、および共通電極31の開口部31Sの内部からその外周部にかけての領域に反射膜20が形成されている。反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域が透過表示領域Tとなる。
【0028】
反射表示領域R内に位置する反射膜20上、および透過表示領域T内に位置する基板本体25A上に、カラーフィルターを構成する色素層22が設けられている。この色素層22は、隣接するドット領域毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる色の色素層22が配置されており、隣接する3つのドット領域で1つの画素を構成する。あるいは、反射表示と透過表示とで表示色の彩度が異なるのを補償すべく、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで色純度や膜厚を変えた色素層を別個に設けてもよい。なお、色素層22上には、樹脂等からなる平坦化膜を形成しても良い。
【0029】
カラーフィルターの色素層22の上には、ITO等の透明導電膜からなる共通電極31が形成されている。上述したように、共通電極31には、画素電極9の中央部にあたる位置に矩形状の開口部31Sが形成されている。共通電極31上には、垂直配向膜(図示略)が形成されている。TFTアレイ基板10、対向基板25の双方の配向膜には、ともに垂直配向処理が施されているが、本実施の形態においては、ラビング処理などにより液晶分子にプレチルトを付与する手段は施されていない。あるいは、プレチルトを付与しても良い。
【0030】
また、TFTアレイ基板10の外面側、および対向基板25の外面側には、それぞれ基板本体側から位相差板43,41、偏光板44,42が設けられている。位相差板43,41は可視光の波長に対して略1/4波長の位相差を持つものであり、この位相差板43,41と偏光板44,42との組み合わせによりTFTアレイ基板10側および対向基板25側の双方から液晶層50に略円偏光が入射されるようになっている。また、2枚の偏光板44,42の透過軸は平面視垂直(クロスニコル)に配置されている。対向基板25の外面側にあたる液晶セルの外側には、光源61、リフレクタ62、導光板63などを有するバックライト64が設置されている。
【0031】
本実施形態の液晶表示装置において、選択電圧印加(電圧オン)時の液晶分子の配向の様子を示したのが図4である。
選択電圧印加によって、液晶分子50Bは垂直配向から水平配向へと変化するが、一つのドット領域内で一様に水平配向となるのではなく、図4に示すように、配向が連続的に変化する。すなわち、画素電極9と共通電極31とが完全に対向している領域では、基板面の法線方向に電界が印加されるので、液晶分子50Bがほぼ水平方向に倒れる。一方、画素電極9の外側の画素電極9から離れた領域では、液晶層50に電界が印加されないので、液晶分子50Bは垂直配向のままである。また、その中間の領域である画素電極9の縁の近傍では、液晶層50には基板面の法線方向から傾いた方向に電界が印加されるので、液晶分子50Bが中途半端に倒れ、花びらが下向きに開いたように倒れた状態となる。同様に、共通電極31の開口部31Sの中心部に対応する領域は液晶分子50Bは垂直配向のままであるが、開口部31Sの縁の近傍では液晶分子50Bが中途半端に倒れた状態となり、花びらが上向きに開いたように倒れた状態となる。
【0032】
すなわち、図4の配向状態におけるリタデーションを考えると、液晶分子50Bが略水平配向となった画素電極9の中央部ではリタデーションが所定の値を取り、液晶分子50Bが略垂直配向となった隣接する画素電極9間の中央部および共通電極31の開口部31Sの中央部ではリタデーションが0となる。そして、画素電極9の中央部から隣接する画素電極9間の中央部に向けて、また、画素電極9の中央部から共通電極31の開口部31Sの中央部に向けてリタデーションが連続的に小さくなる。本実施の形態では画素電極9の中央部にあたる領域を透過表示領域T、隣接する画素電極9間および共通電極31の開口部31Sにあたる領域を反射表示領域Rとしている。
【0033】
ここで、液晶層の屈折率異方性Δnと液晶層厚dを適切な値に設定することによって、図4のような配向状態における透過表示領域Tでのリタデーション(R=Δn・d)の値を可視光の波長の1/2(緑色光の波長をλとすると、λ/2=270〜280nm程度)とすることができる。すると、図4の下側に示したように、反射表示領域RでのリタデーションRはλ/2からλ/4を経て0まで低下する。本実施の形態においては、リタデーションRの値がλ/4以下(130〜140nm程度以下)となる領域に反射膜20を形成し、反射表示領域Rとするのが望ましい。透過表示領域TよりリタデーションRが小さい領域であっても、リタデーションRの値がλ/2からλ/4の間の領域を反射表示領域Rとすると、反射表示の色付きが生じてしまい、表示品位が低下するからである。この領域を透過表示領域Tとして使う分にはさほど問題は生じない。
【0034】
以上述べたように、本実施の形態の液晶表示装置においては、液晶層50の配向状態の異なる部分を反射表示領域Rと透過表示領域Tに振り分けたことによって、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rのリタデーションを透過表示領域Tのリタデーションよりも小さくすることができ、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる。この構成によれば、マルチギャップ構造における樹脂層の悪影響を排除できるので、高コントラストの液晶表示装置を実現することができる。さらに、画素電極9の形状と共通電極31の開口部31Sの作用によって、1ドット領域内の液晶の配向方向が略放射状に分割された配向分割構造が実現できるので、広視野角の表示を実現することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図5、図6を参照して説明する。
図5は本実施の形態の液晶表示装置を示す断面図、図6は液晶の配向状態を示す図である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と全く同様であるため、図5、図6において図3、図4と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0036】
本実施の形態の場合、共通電極31の開口部31Sに代えて、図5に示すように、対向基板25側の共通電極31上に断面が三角形状の凸部29(配向制御手段)が形成されている。この凸部29は、例えばアクリル樹脂等の誘電体材料から形成されており、その平面形状は、第1の実施の形態の図2に示した開口部31Sの形状と同様、ドット領域の中央に直線状に形成されている。そして、対向基板25においては、共通電極31および凸部29を覆うように垂直配向膜(図示略)が形成されている。すなわち、本実施の形態の液晶表示装置は、配向制御手段を凸部29としたことだけが第1の実施の形態と異なっている。
【0037】
選択電圧印加時の液晶の配向状態についても、図6に示したように、第1の実施の形態の図4と同様である。上述したように、共通電極31に開口部を設けた場合、開口部の縁の部分で基板法線方向に対して電界が斜め方向に印加されることで液晶分子も斜めに倒れる。一方、共通電極31上に凸部29を設けた場合、凸部29の形状効果によって液晶分子50Bが傾斜面に対して垂直に配向しようとするので、結果的に液晶分子50Bが斜めに倒れることになる。このように、凸部29を設けた場合は、液晶の配向のメカニズムは開口部を設けた場合と異なるものの、配向状態としては花びらが上向きに開くような方向に倒れる点では一致している。また、図6の下側に示したリタデーションの変化の様子も第1の実施の形態と同様である。
【0038】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、ドット領域内で配向分割構造が実現できるので、広視野角の表示を実現することができる、といった第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態を図7〜図9を参照して説明する。
図7は本実施の形態の液晶表示装置のドット領域内の構成を示す平面図、図8は同、液晶表示装置の構成を示す断面図であって、図7のB−B’線に沿う断面図、図9は選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図、である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と同様であるため、図7〜図9において図2〜図4と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施の形態では、図7に示すように、画素電極9は3つの島状部9a,9b,9cを含んで構成されており、各島状部9a,9b,9c同士が連結部39を介して電気的に接続されて1つの画素電極9を構成している。つまり、本実施形態では、各ドット領域を、略同じ形状の3つのサブドット領域S1,S2,S3に分割して構成している。つまり、TFTアレイ基板10側の画素電極9が、3つの島状部9a,9b,9cと、隣接する各島状部を互いに電気的に接続する連結部39,39とを含んで構成されており、各島状部9a,9b,9cがそれぞれサブドット領域S1,S2,S3を構成している。
【0041】
通常、カラーフィルターを備えた液晶表示装置では、1つのドット領域の縦横比が約3:1となるので、本実施の形態のように、1つのドット領域に3つのサブドット領域S1,S2,S3を設けると、1つのサブドット領域の形状を円形や正多角形に近づけることができ、360°全方向に広視野角化するのに好ましい。各サブドット領域S1,S2,S3(島状部9a,9b,9c)の形状は、図7では八角形状であるが、これに限らず、例えば円形状、その他の多角形状のものとすることができる。また言い換えると、画素電極9において、各島状部9a,9b,9cの間には、電極を部分的に切り欠いた形状のスリット(連結部39,39を除いた部分)が形成されていることになる。
【0042】
そして、各島状部9a,9b,9cの中央部にあたる位置には、対向基板25上の共通電極31に円形の開口部31S(配向制御手段、輪郭を破線で示す)が形成されている。一つのドット領域において、各島状部9a,9b,9cの外側の領域、各島状部9a,9b,9cの外縁部、および連結部39と平面的に重なる領域には矩形枠状の反射膜20が形成されている。さらに、共通電極31の開口部31Sの内部および外周部を囲むように、開口部31Sより一回り大きい輪郭で円形の反射膜20が形成されている。これらの反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20が形成されていない矩形環状の領域が透過表示領域Tとなる。
【0043】
本実施の形態の液晶表示装置の断面構造は、図8に示すように、第1の実施の形態の図3と何ら変わるところがない。また、図9に示す液晶の配向状態も同様である。さらに、図示していないが、連結部39の箇所を通る直線で破断した断面においても、連結部39の直下の領域での配向状態は図9の中央の開口部の直上の領域の配向状態と同様であり、花びらが上向きに開くような方向に液晶分子50Bが倒れている。
【0044】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、といった第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態の場合、1つのドット領域内を複数のサブドット領域S1,S2,S3に分割したことによって、略全方位にわたって広視野角の表示を実現することができる。
【0045】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4の実施の形態を図10、図11を参照して説明する。
図10は本実施の形態の液晶表示装置を示す断面図、図11は選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図、である。本実施の形態の液晶表示装置は1つのドット領域内を複数のサブドット領域に分割したものであり、その平面構造は第3の実施の形態と全く同様であるため説明は省略し、断面構造の異なる部分だけを説明する。
【0046】
第1〜第3の実施の形態ではTFTアレイ基板10を視認側、対向基板25をバックライト64側に配置していたのに対し、本実施の形態ではカラーフィルターを備えた対向基板25を視認側、TFTアレイ基板10をバックライト64側に配置している。
すなわち、図10に示すように、TFTアレイ基板10(下基板)側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体10A上に、アルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が形成されている。反射膜20の表面には、例えばアクリル樹脂等からなる下地の絶縁層(図示略)の表面形状を反映した凹凸が形成されている。この凹凸により反射光が散乱し、反射表示の視認性が向上する。後述する画素電極9の外側から外縁部にかけての領域、および共通電極31の開口部31Sの内部からその外周部にかけての領域に反射膜20が形成されている。反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域が透過表示領域Tとなる。反射膜20上を含む基板本体10Aの全面にはアクリル樹脂等からなる平坦化膜49が形成され、平坦化膜49上にITO等の透明導電膜からなる画素電極9が形成されている。画素電極9上には垂直配向膜(図示略)が形成されている。
【0047】
一方、対向基板25(上基板)側は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体25Aの内面に、カラーフィルターを構成する色素層22が設けられている。この色素層22は、隣接するドット領域毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる色の色素層が配置されており、隣接する3つのドット領域で1つの画素を構成する。あるいは、反射表示と透過表示とで表示色の彩度が異なるのを補償すべく、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで色純度や膜厚を変えた色素層を別個に設けてもよい。なお、色素層22上には、樹脂等からなる平坦化膜を形成しても良い。カラーフィルターの色素層22上にITO等の透明導電膜からなる共通電極31が形成されている。共通電極31には、画素電極9の島状部9a,9b,9cの中央部にあたる位置に開口部31S(配向制御手段)が形成されている。共通電極31上には垂直配向膜(図示略)が形成されている。その他、各基板の外面側の位相差板41,43、偏光板42,44、バックライト64等の構成は上記実施の形態と同様である。
【0048】
選択電圧印加時の液晶の配向状態については、図11に示すように、第1〜第3の実施の形態と上下逆向きとなる。すなわち、本実施の形態では、画素電極9が下基板側、共通電極31の開口部31Sが上基板側に配置されており、第1〜第3の実施の形態と上下が逆転している。したがって、画素電極9や開口部31Sの縁の部分において電界が斜めに傾く方向が第1〜第3の実施の形態と逆方向になり、画素電極9の縁の部分においては花びらが上向きに開くような方向、開口部31Sの縁の部分においては花びらが下向きに開くような方向に液晶分子50Bが倒れることになる。ただし、図11の下側に示したリタデーションの変化の様子は第1〜第3の実施の形態と同様である。
【0049】
本実施の形態の液晶表示装置においても、マルチギャップ構造を採用することなく、反射表示領域Rと透過表示領域Tのリタデーションを最適化でき、マルチギャップ構造の樹脂層に起因するコントラスト低下を生じることなく、反射表示、透過表示ともにコントラストの向上を図ることができる、1つのドット領域内を複数のサブドット領域に分割したことで略全方位にわたって広視野角の表示を実現することができる、といった第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
[電子機器]
次に、本発明の上記実施の形態の液晶表示装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
図12は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記液晶表示装置を用いた表示部を示している。
図12に示す電子機器は、上記実施の形態の液晶表示装置を用いた表示部を備えているので、使用環境によらずに明るく、コントラストが高く、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態ではTFTをスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用した例を示したが、薄膜ダイオード(Thin Film Diode,TFD)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用することも可能である。その他、各種構成要素の材料、寸法、形状等に関する具体的な記載は、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の液晶表示装置の等価回路図である。
【図2】同、液晶表示装置の1ドットの構成を示す平面図である。
【図3】同、液晶表示装置の図2のA−A’線に沿う断面図である。
【図4】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の液晶表示装置の断面図である。
【図6】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態の液晶表示装置のドット構成を示す平面図である。
【図8】同、液晶表示装置の図7のB−B’線に沿う断面図である。
【図9】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態の液晶表示装置の断面図である。
【図11】同、液晶表示装置の選択電圧印加時の液晶の配向状態を示す図である。
【図12】本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
9…画素電極、9a,9b,9c…島状部、10…TFTアレイ基板、20…反射膜、25…対向基板、29…凸部(配向制御手段)、31…共通電極、31S…開口部(配向制御手段)、41,43…位相差板(略円偏光入射手段)、42,44…偏光板(円偏光入射手段)、50…液晶層、50B…液晶分子、R…反射表示領域、T…透過表示領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と対向基板とから構成される一対の基板間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられた液晶表示装置であって、
前記素子基板上には、前記液晶層を駆動するための画素電極が設けられ、
少なくとも、前記画素電極の外側の領域、および前記画素電極の外縁部と平面的に重なる領域が前記反射表示領域とされ、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚が略同一とされていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記画素電極と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
少なくとも前記配向制御手段と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記画素電極が、各ドット領域内において各々がサブドット領域を構成する複数の島状部とこれら複数の島状部間を連結する連結部とを有してなり、
少なくとも、前記各島状部の外縁部、および前記連結部と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記各島状部と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
少なくとも前記配向制御手段と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記一対の基板のそれぞれに対して略円偏光を入射させるための略円偏光入射手段が備えられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
素子基板と対向基板とから構成される一対の基板間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられた液晶表示装置であって、
前記素子基板上には、前記液晶層を駆動するための画素電極が設けられ、
少なくとも、前記画素電極の外側の領域、および前記画素電極の外縁部と平面的に重なる領域が前記反射表示領域とされ、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚が略同一とされていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記画素電極と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
少なくとも前記配向制御手段と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記画素電極が、各ドット領域内において各々がサブドット領域を構成する複数の島状部とこれら複数の島状部間を連結する連結部とを有してなり、
少なくとも、前記各島状部の外縁部、および前記連結部と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記各島状部と平面的に重なる前記対向基板上の領域に、前記液晶層の配向方向を制御するための配向制御手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
少なくとも前記配向制御手段と平面的に重なる領域がさらに前記反射表示領域とされていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記一対の基板のそれぞれに対して略円偏光を入射させるための略円偏光入射手段が備えられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−78742(P2006−78742A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262272(P2004−262272)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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