説明

液晶表示装置の包装体および液晶表示装置の包装方法

【課題】 液晶表示装置を保管あるいは輸送する際に、吸湿による品質の劣化を防止し、高品質の製品をそのまま搬送可能とすること。
【解決手段】 透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材20によって、液晶表示装置10を包み、ヒートシール等により密閉包装して包装体を形成し、発泡スチロール30a,30bやダンボール40a,40bを用いて梱包する。より好ましくは、透湿度が1g/m2・24hr以下の包装材20を使用し、また、包装材20の内部に吸湿材を設けることによって防湿効果をさらに高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置を保管あるいは輸送するための液晶表示装置の包装体およびその包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体(IC,LSI)やそれらを組み込んだ基板の保護に使用される、防湿性を有する包装材が提案されている(特許文献1,特許文献2)。また、基板(カラーフィルタ基板等)を保護するための、防湿性を有する基板梱包材が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2002−210861号公報
【特許文献2】特開2005−28808号公報
【特許文献3】特開2005−112447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のとおり、電子部品や基板については、吸湿を防止するために、防湿性の包装材による密閉包装(梱包)がなされる場合がある。一方、例えば、液晶ディスプレイや液晶テレビのような完成品の包装(梱包)については、防湿を考慮した密閉包装(梱包)はなされていないのが現状である。すなわち、液晶表示装置(本明細書では、液晶ディスプレイや液晶テレビのような、液晶パネルによる表示機能をもつ完成品としての電気機器の意味として使用する)を保管あるいは輸送する際は、外箱のダンボール箱の中に、発砲スチロールや段ボール片などの転倒防止部材および緩衝材を入れ、さらに液晶表示装置を包装なしの状態、表示部分に保護フィルムをつけただけの状態、あるいは、軟質の薄手の包装袋に包んだ状態で包装するのが一般的である。軟質の薄手の包装袋としては、ナイロン、塩化ビニール、スチロール、ポリエチレン等の薄手の樹脂袋、紙袋等、などが用いられる。また、特に密閉しないことが一般的であり、逆に、通気性を良くするために包装材に小さな穴を開ける場合もある。
【0004】
液晶ディスプレイや液晶テレビ等の完成品について防湿を考慮した密閉包装をしないのは、工場から出荷されるのは所定の検査に合格した良品だけであり、製品の品質に問題がないことが明らかであるため、そのような配慮が必要ないと判断されていたものと考えられる。事実、最終形態である液晶表示装置が実使用環境に近い温度下で、高湿あるいは低湿の環境に置かれることによる性能変動は、これまで特に問題になることはなかった。
【0005】
しかし、近年、液晶表示装置のサイズが大きくなるにともない、液晶表示装置そのものが高湿環境に置かれた場合などに、表示ムラの発生あるいは表示品質の低下などの問題が生じることがわかった。これは、大画面化により表示ムラ等が目立ち易くなったこと、あるいは、高画質の画像を受信することができるようになったために、わずかの画質低下も目立つようになってきたこと、等によるものと考えられる。
【0006】
すなわち、製品検査により良品として判定された液晶表示装置(完成品)を保管、配送する際に、外気の温湿度によっては液晶表示装置が高温高湿の環境に短時間置かれたり、常温高湿の環境に長時間置かれたりする。そのときに、吸湿によって偏光膜や光学フィルム等の特性が変動すると、表示ムラの発生あるいは表示品質の低下が生じることになる。その結果、従来では表示ムラ等が軽微なもので実用的に問題がなかったが、近年の大画面化や高精細化に起因して、これが目立つようになり、無視できなくなってきた。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、液晶表示装置を保管あるいは輸送する際に、この保管・搬送中における吸湿に起因する品質劣化を防止し、高品質の製品をそのまま搬送先に届けることのできる液晶表示装置の包装体および液晶表示装置の包装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明に係る課題は、下記構成により達成される。
(1)液晶表示装置を包装する包装体であって、透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材によって、前記液晶表示装置が密閉包装されていることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【0009】
この液晶表示装置の包装体によれば、液晶表示装置(完成品)の防湿のために必要な包装体の透湿度の範囲を前記範囲にすることにより、表示ムラを防止する効果を得ることができる。
【0010】
(2) (1)記載の液晶表示装置の包装体であって、前記包装材の透湿度は、1g/m2・24hr以下であることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【0011】
この液晶表示装置の包装体によれば、包装体の透湿度の範囲を前記範囲にすることで、さらに良好な表示ムラ防止効果を得ることができる。
【0012】
(3) (1)又は(2)記載の液晶表示装置の包装体であって、前記包装材の内部には吸湿材が設けられることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【0013】
この液晶表示装置の包装体によれば、吸湿材を併用することによって、防湿効果が向上し、さらに良好な表示ムラ防止効果を得ることができる。
【0014】
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載の液晶表示装置の包装体であって、前記包装材が、一端側を開口とする袋状に形成されたことを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【0015】
この液晶表示装置の包装体によれば、袋状に形成することで、一端側の開口から液晶表示装置を挿入するだけで簡単に包装することができる。
【0016】
(5) 液晶表示装置を包装体を用いて包装する液晶表示装置の包装方法であって、透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材を用いて液晶表示装置を包み込む第1の工程と、前記包装材の前記液晶表示装置を収容する内側空間を密閉する第2の工程と、を含むことを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【0017】
この液晶表示装置の包装方法によれば、所定範囲の透湿度をもつ包装体により液晶表示装置を包み、密閉することで、防湿効果の高い包装体を得ることができる。
【0018】
(6) (5)記載の液晶表示装置の包装方法であって、前記第2の工程では、前記包装体をヒートシールにより密閉することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【0019】
この液晶表示装置の包装方法によれば、ヒートシールにより、簡単かつ確実に密閉することができる。
【0020】
(7) (5)記載の液晶表示装置の包装方法であって、前記第2の工程では、袋状の前記包装体の開口側を多重折りして密閉することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【0021】
この液晶表示装置の包装方法によれば、簡単な方法でありながら、所望の密閉効果を得ることができる。
【0022】
(8) (5)〜(7)のいずれか1項記載の液晶表示装置の包装方法であって、前記第2の工程を実施する前に、前記液晶表示装置を収容する内側空間に吸湿材を投入する第3の工程を有することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【0023】
この液晶表示装置の包装方法によれば、包装体内部への吸湿材の投入により、防湿効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、保管あるいは輸送による液晶表示装置の品質劣化を防止することのできる液晶表示装置の包装体および液晶表示装置の包装方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液晶表示装置の包装体とその梱包形態を概念的に示す斜視図である。
図示されるように、液晶表示装置を保管あるいは輸送する際の包装形態として、外箱のダンボール箱40a,40bの中に、発砲スチロールや段ボール片などの転倒防止部材および緩衝材30a,30bを入れ、そして、大型液晶テレビ(完成品としての液晶表示装置の一例)10を包装材20により密閉してなる包装体25を収納している。
【0026】
図3に液晶表示装置の液晶パネルの概念的な断面図を示した。
液晶表示装置の液晶パネルは、保護フィルム(52a,52b,54a,54b)と、偏光膜(53a,53b)からなる偏光板55と、粘着層(51a,51b)と、液晶セル(50)と、により構成されるが、特に、保護フィルム(52a,52b,54a,54b)および偏光膜(53a,53b)が湿度に敏感であり、湿度変動により特性の変動が生じる。具体的には、高湿状態では伸び、低湿状態では収縮することで、液晶セルに用いられるガラス基板との間で応力を発生し、これにより、液晶セルに歪みが生じて表示画面の隅部で光漏れが生じる現象等が発生する。
【0027】
製品検査により良品として判定された液晶表示装置(完成品)10を保管、配送する際に、外気の温湿度によっては液晶表示装置10が、何ら密閉包装されることなく、高温高湿の環境に長時間置かれたりする場合、吸湿によって偏光膜(53a,53b)や光学フィルム(52a,52b,54a,54b)の特性が変動すると、表示ムラの発生あるいは表示品質の低下が生じる状態となる。従来では表示ムラ等が軽微なもので実用的に問題がなかったが、近年の大画面化や高精細化に起因して、これが目立つようになり、無視できなくなってきている。すなわち、組み立て前の部品や基板の段階のみならず、最終形態の完成品の保管時や出荷(輸送)時についても品質管理に万全を期す必要が生じている。
【0028】
そこで、図1のように、大型液晶テレビ等の液晶表示装置10を、透湿度が規定の範囲となる包装材20により包んで密閉した包装体25を構成し、この包装体25を発泡スチロールやダンボールを使用して梱包する。
【0029】
液晶表示装置10を包む包装材20は、透湿度が5g/m2・24hr以下であり、これによって、所望の表示ムラ低減効果を得ることができる。包装材の透湿度を、1g/m2・24hr以下とするのがさらに好ましく、この場合、表示ムラ低減効果がさらに高まる。
なお、本発明において、透湿度とはJIS−Z−0208に従って測定された値をいう。
【0030】
本発明に用いられる包装材20の材料は、上記のとおり、透湿度が5g/m2・24hr以下であれば特に限定されるものではないが、具体的には、以下のような材料を使用することができる。
【0031】
すなわち、ナイロン樹脂、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールフィルムなど、また、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等にアルミニウム、金属酸化物等の無機物を蒸着、スパッタリング等の真空薄膜形成したものなどを使用することができる。中でも、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等にアルミニウム、金属酸化物等の無機物を蒸着、スパッタリング等の真空薄膜形成したものなどが好ましい。
【0032】
無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜があげられる。例えば、Cr23、Si(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、Al23等が用いられる。
【0033】
透明防湿材料のベースフィルムとしてはエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、2軸延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、2軸延伸ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されているフィルム材料を使用する事ができる。
【0034】
蒸着膜を作る方法としては真空技術ハンドブック及び包装技術Vol29−No.8に記載されている如き一般的な方法、例えば抵抗又は高周波誘導加熱法、エレクトロビーム(EB)法、プラズマ(PCVD)等により作ることができる。
【0035】
無機物蒸着層を使用しない場合は、上述のフィルムより必要に応じて単体でも良いし又は、2種以上のフィルムを積層させて用いることができる。
【0036】
例えばCPP/OPP、PET/OPP/LDPE、Ny/OPP/LDPE、CPP/OPP/EVOH、サランUB/LLDPE(ここでサランUBとは旭化成工業株式会社製の塩化ビニリデン/アクリル酸エステル系共重合樹脂を原料とした2軸延伸フィルムを示す)K−OP/PP、K−PET/LLDPE、K−Ny/EVA(ここでKは塩化ビニリデン樹脂をコートしたフィルムを示す)等を使用することができる。
【0037】
上述したような防湿材料以外にも、本発明に使用する透湿度の小さい材料としては、特開平6−95302号、特開昭60−151045号、同60−189438号、同61−54934号、同63−30842号、同63−247033号、同63−272668号、同63−283936号、同63−193144号、同63−183839号、同64−16641号、特開平1−93348号、特開昭64−77532号、特開平1−251031号、同2−186338号、同1−267031号、同2−235048号、同2−278256号、実開平1−152336号、同2−21645号、同2−44738号に記載されているように、アルミニウム箔及びアルミニウム蒸着層を少なくとも一層有する材料などを挙げることができる。
【0038】
上記の防湿性フィルムの製造方法としては、コンバーテック1990.5月号40〜48頁に記載されている如き一般的に知られている各種の方法が用いられ、例えばウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出しラミネート法、熱ラミネート法を利用して作る事が可能である。使用材料によっては多層インフレーション方式により作ることができる。
【0039】
積層する際に使用される接着剤としてはコンバーテック1996.1月号18〜22頁、1997.10月号13〜17頁、21〜25頁に記載されているように、一般的に知られている接着剤が使用できる。上記接着剤を用いて各層を接着する時、接着強度は350g/15mm巾以下になる様に積層することが好ましい。
【0040】
上記の包装材としては、等幅の連続シートであってもよく、袋状であってもよい。袋状であれば、一端側の開口から液晶表示装置を挿入するだけで簡単に包装することができる。
また、上記のような透湿度の小さい包装材の開口部を密閉して包装することを特徴としている。その密閉方法としては、開口部をヒートシールすることが最も好ましいが、包装材の開口部を多重(例えば2重〜3重)に折り重ねてもよく、さらに折り重ねた上にテープを貼り固定して包装することもできる。
【0041】
また、包装材の開口部を多重に折り重ねて、さらに緩衝材により固定して包装することもできる。また、密閉包装する際に、内部を脱気することにより、防湿効果が高められる。
【0042】
本発明では、密閉された包装材の内部(液晶表示装置を収容する内側空間)に吸湿材(図1では不図示)を具備することが好ましい。具体的な態様としては、包装材の内側に、防塵性及び透湿性を有する袋に包まれた吸湿剤をテープ等で貼り付けておくことが好ましい。また、この他にも単に包装材の内側に吸湿剤を投入することでもよい。
【0043】
本発明で使用できる除湿剤としては、特に限定されないが、固形のシリカゲル、シリカアルミナゲル、モレキュラーシーブ、活性アルミナ、五酸化燐、生石灰、塩化カルシウム加工品、粘土系乾燥剤、合成ゼオライト等の粉末など、および、それらの混入樹脂の微粉末など、が好適に使用できる。除湿剤の量は、除湿剤の種類により異なるが、好ましくは5〜5000g、より好ましくは10〜1000gである。
【0044】
さらに、本発明では包装材を密閉する際、内部にダンボール紙などの紙類を入れておくこともできる。ダンボール紙などを入れておくことにより、湿度緩衝効果が得られ内部の相対湿度を安定させることができる。
【0045】
本発明に適用される液晶表示装置は特に限定されず、一般に市販されている液晶モニター、液晶テレビなどのいずれにも適用することができ、TNモード、OCB、VA、IPS、STN、HAN、ECBなど、いずれの液晶表示装置にも好適に利用できる。
【0046】
図2(a)〜(d)は各々、本発明の液晶表示装置の包装方法の態様を示す断面図である。
図2(a)は、液晶表示装置10を包装材20で包んだ後、ヒートシール部22により密閉した状態を示している。図2(b)は、同じく、液晶表示装置10を包装材20で包んだ後、三重折りとテープを用いた密閉部24により密閉した状態を示している。図2(c)では、図2(a)の包装体25を構築するときに、吸湿材41を包装材20の内部に入れる工程を追加し、これによって、包装体の内部に吸湿剤41を封入した構造を得ている。図2(d)では、図2(b)の包装体25を構築するときに、吸湿剤41を包装材20の内部に入れる工程を追加し、これによって、包装体の内部に吸湿剤41を封入した構造を得ている。
【0047】
密閉方法としてヒートシールを採用した包装体25は、多重折りとテープを用いた密閉を採用した包装体25よりもが防湿効果が高く、吸湿材41を封入すると、さらに防湿効果が高まる。
【実施例1】
【0048】
以下、3つの実施例について説明する。各実施例では、液晶表示装置としての液晶テレビを、透湿度が異なり、材料が異なる包装材で包装し、ヒートシールまたは3重折りとテープにより密閉したサンプルを用意し、また、吸湿剤を入れたサンプルと入れないサンプルも用意した。すなわち、各実施例で使用される本発明のサンプルは、図2(a)〜(d)のいずれかに示される態様のサンプルである。また、比較例として、液晶テレビを包装材で包んだまま密閉しないサンプルも用意した。そして、各サンプルを高温かつ高湿の環境下で所定時間放置した後、表示ムラの程度を調べ、10点満点の評価により判定した。
【0049】
なお、実施例1では、液晶テレビとして、シャープ株式会社製LC−20S4−S(20インチ)を用い、実施例2では、日立製作所株式会社製W32L−H7000(32インチ)を用いた。実施例3では、日本サムスン株式会社製LT20M22C(20インチ)を用いた。
包装材用フィルムとして、ポリプロピレン(P.P)、高密度ポリエチレン(HOPE)のフィルム厚が異なるシートフィルムを用いて、吸湿度の異なる包装材を得た。
【0050】
次に、包装材A1として、最外層から、ポリエチレンテレフタレート12ミクロン/ポリエチレン20ミクロン/アルミニウム箔7ミクロン/ポリエチレン20ミクロン/ヒートシール層・低密度ポリエチレン80ミクロンの構成の材料を作製した。製造方法としては一般的な方法で行った。すなわち、最上層ポリエチレンテレフタレートとアルミニウム箔は接着剤としてポリエチレン押し出しで、また、ヒートシール層の低密度ポリエチレンも同様にポリエチレン押し出し法により積層することにより製造した。
さらに、包装材A1に対しアルミニウム箔の厚みを変えることにより、吸湿度の異なる包装材を得た。
【0051】
これらの材料の透湿度はJIS−Z−0208法により測定した。結果を表1に示す。こうして得られた包装材を液晶テレビの包装に使用した。
【0052】
次に、市販されているシャープ株式会社製LC−20S4−S(20インチ)の液晶テレビの包装材を取り外し、上記で得られた包装材で再包装した。そして、密閉せず、開口部をヒートシール、開口部を3重折りしてテープで貼り付け、のいずれかの方法により包装した。
また、吸湿材としてシリカゲル200gを繊維状四フッ素エチレン樹脂フィルター(不織布)に包み、一部の包装材の内部に入れた。使用した包装材、密閉方法、吸湿材の有無をそれぞれ変更したサンプルを表1のように作製した。
【0053】
こうして得られたサンプルを40℃、80%の環境に20日間放置した。その後、液晶テレビを開封し全面黒表示状態を暗室にて目視で観察して、画面4隅に発生する光漏れおよび画面全体に生じる輝度ムラなどの表示ムラを目視評価した。結果は10段階で評価し、10が最も良好であり5が実用許容レベルである。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、開口部を密閉しないサンプル(比較例1−1〜1−6)と、透湿度が5g/m2・24hrより高い包装材を用いたサンプル(比較例1−7,1−8,1−9,1−10)の表示ムラの評価点はいずれも「2点もしくは3点」であり、実用許容レベルに達していない。
【0056】
これに対し、透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材を用い密閉したサンプル(実施例1−1〜1−12)は表示ムラが改良され、いずれも表示ムラの評価点が「5点」以上となり、実用許容レベル以上であることがわかる。また、ヒートシールと3重折りとテープを用いたものを比べるとヒートシールのサンプルの方が得点が高く、また、吸湿材を内部に入れたサンプルは評価点が高まり、さらに表示ムラが改善されることがわかる。
【実施例2】
【0057】
実施例1において、シャープ株式会社製LC−20S4−S(20インチ)の液晶テレビを用いる代わりに、日立製作所株式会社製W32L−H7000(32インチ)の液晶テレビを用いる以外は、全く同様の方法で試験を行った。このとき、表2のように包装材の種類、密閉方法、吸湿材の有無をそれぞれ変更しサンプルを作成した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から明らかなように、開口部を密閉しないサンプル(比較例2−1〜2−3)と、透湿度が5g/m2・24hrより高い包装材を用いたサンプル(比較例2−4,2−5)の表示ムラの評価点は「1点から3点」であり、実用許容レベルに達していない。
【0060】
これに対し、透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材を用い密閉したサンプル(実施例2−1〜2−5)は表示ムラが改善され、いずれも表示ムラの評価点が「5点」以上となり、実用許容レベル以上であることがわかる。
【0061】
また、ヒートシールと3重折りとテープを用いたものを比べるとヒートシールのサンプルの方が得点が高く、また、吸湿材を内部に入れたサンプルは評価点が高まり、さらに表示ムラが改善されることがわかる。すなわち、実施例1と同様に、本発明の構成のサンプルが良好な性能を示した。
【実施例3】
【0062】
実施例1において、シャープ株式会社製LC−20S4−S(20インチ)の液晶テレビを用いる代わりに、日本サムスン株式会社製LT20M22C(20インチ)の液晶テレビを用いる以外は、全く同様の方法で試験を行った。このとき、表3のように包装材の種類、密閉方法、吸湿材の有無をそれぞれ変更しサンプルを作成した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3から明らかなように、開口部を密閉しないサンプル(比較例3−1〜3−3)と、透湿度が5g/m2・24hrより高い包装材を用いたサンプル(比較例3−4,3−5)の表示ムラの評価点は「2点もしくは3点」であり、実用許容レベルに達していない。
これに対し、透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材を用い密閉したサンプル(実施例3−1〜3−5)は表示ムラが改善され、いずれも表示ムラの評価点が「5点」以上となり、実用許容レベル以上であることがわかる。
【0065】
また、ヒートシールと3重折りとテープを用いたものを比べるとヒートシールのサンプルの方が得点が高く、また、吸湿材を内部に入れた試料は評価点が高まり、さらに表示ムラが改善されることがわかる。すなわち、実施例1,実施例2と同様に、本発明の構成のサンプルが良好な性能を示した。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、保管あるいは輸送による品質の変動が少ない液晶表示装置の包装体を得ることができ、また、保管あるいは輸送による品質の変動が少ない液晶表示装置の包装方法を提供することができる。
また、本発明によれば、液晶表示装置(特に、大型の最終形態としての液晶ディスプレイ装置や液晶テレビ等)を保管あるいは輸送する際に、吸湿による品質の劣化を防止し、高品質の製品を配送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の液晶表示装置の包装体とその梱包形態を概念的に示す斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は各々、本発明の液晶表示装置の包装方法の態様を示す断面図である。
【図3】液晶表示装置の液晶パネルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 大型液晶テレビ(完成品としての液晶表示装置)
20 所定範囲の吸湿度をもつ包装材
25 包装体
30a,30b 発泡スチロールの梱包材
40a,40b ダンボールによる梱包材
22 ヒートシール部
24 三重折りとテープ貼りによる密閉部
41 防湿材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置を包装する包装体であって、
透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材によって、前記液晶表示装置が密閉包装されていることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置の包装体であって、
前記包装材の透湿度は、1g/m2・24hr以下であることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置の包装体であって、
前記包装材の内部には吸湿材が設けられることを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の液晶表示装置の包装体であって、
前記包装材が、一端側を開口とする袋状に形成されたことを特徴とする液晶表示装置の包装体。
【請求項5】
液晶表示装置を包装体を用いて包装する液晶表示装置の包装方法であって、
透湿度が5g/m2・24hr以下の包装材を用いて液晶表示装置を包み込む第1の工程と、
前記包装材の前記液晶表示装置を収容する内側空間を密閉する第2の工程と、を含むことを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【請求項6】
請求項5記載の液晶表示装置の包装方法であって、
前記第2の工程では、前記包装体をヒートシールにより密閉することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【請求項7】
請求項5記載の液晶表示装置の包装方法であって、
前記第2の工程では、袋状の前記包装体の開口側を多重折りして密閉することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1項記載の液晶表示装置の包装方法であって、
前記第2の工程を実施する前に、前記液晶表示装置を収容する内側空間に吸湿材を投入する第3の工程を有することを特徴とする液晶表示装置の包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−69922(P2007−69922A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256478(P2005−256478)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】