説明

液晶表示装置用カラーフィルタ、液晶表示装置

【課題】カラーフィルタを通過する過程における光損失を抑制することが可能な、液晶表示装置用カラーフィルタ、及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置の各画素に対応させて赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光をそれぞれ透過させる着色層12が配置された液晶表示装置用カラーフィルタにおいて、上記着色層12には、量子ドット、又はその代替として色素分子、又はイオンからなる波長変換体が注入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、パーソナルコンピュータ用ディスプレイや携帯用情報端末機器用液晶表示部のような液晶表示装置に用いられる液晶表示装置用カラーフィルタ、並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細加工技術の進展から液晶パネルの高解像度化が進み、パーソナルコンピュター(PC)を中心とする情報機器のディスプレイや、テレビジョン受像機、プロジェクターを中心とする映像機器のディスプレイにおいて、低電圧駆動、薄型、軽量を特徴とする液晶表示装置の需要が高まっている。
【0003】
また、この液晶パネルの高解像度化とともに、液晶パネルのカラー表示技術の開発も進展している(例えば特許文献1参照。)。このカラー液晶表示装置には、3原色(R、G、B)の制御を行なうためにアクティブマトリックス方式と単純マトリックス方式があり、いずれの方式においてもカラーフィルタ が用いられている。そして、液晶表示装置は、構成画素部を3原色(R、G、B)のサブピクセルとし、電気的スイッチングによる液晶の位相変化を利用して、3原色の各光の透過光量を制御してカラー表示が行なわれている。
【特許文献1】特開平10−260401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バックライトに冷陰極管を使う場合には、元々の光源の白の発光スペクトルは決まっており、その上のパターニングされたカラーフィルタとして、画素毎に顔料を使用した吸収型のカラーフィルタを用いて余分な光を吸収して、画素毎の色を変えている。そのため、実際にディスプレイの表面に出てくる光の強度は、偏光板を通過する過程で減少するとともに、カラーフィルタによって、多くのエネルギーが吸収されてしまうため、光損失が大きくなり、光効率が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、上述した課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、カラーフィルタを通過する過程における光損失を抑制することが可能な、液晶表示装置用カラーフィルタ、及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の液晶表示装置用カラーフィルタは、液晶表示装置の各画素に対応させて赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光をそれぞれ透過させる着色層が配置された液晶表示装置用カラーフィルタにおいて、上記着色層には、量子ドット、又はその代替として色素分子、又はイオンからなる波長変換体が注入されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の液晶表示装置用カラーフィルタは、請求項1記載の発明において、上記波長変換体は、少なくとも一の着色層における透過波長よりも短波長の光を吸収し、各波長変換体同士のエネルギー移動を経て上記一の着色層の透過波長に対応する光を放出することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の液晶表示装置用カラーフィルタは、請求項2記載の発明において、上記波長変換体は、量子ドットであり、上記量子ドットは、供給される光のうち少なくとも一の着色層における透過波長よりも短波長の光に応じて励起子が励起される第1のエネルギー準位を有する複数の量子ドットからなる入力側量子ドットグループと、上記第1のエネルギー準位との共鳴に応じて上記入力側量子ドットグループを構成する各量子ドットから励起子が注入される共鳴エネルギー準位を有し、当該共鳴エネルギー準位から放出されたエネルギーに応じて上記一の着色層の透過波長に対応する出力光を生成する出力側の量子ドットとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の液晶表示装置用カラーフィルタは、請求項3記載の発明において、請求項1〜3のうち何れか1項記載の液晶表示装置用カラーフィルタを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した構成からなる本発明によれば、本来ならば吸収されてしまうはずの短波長帯域の光を効果的に利用することが可能となり、カラーフィルタを設けることによる多くのエネルギーの吸収を防止することができ、ひいては光損失を少なくすることができ、液晶表示装置全体の光効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、携帯電話を初めとしたモバイル通信端末や携帯型ゲーム機のディスプレイに適用される液晶表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明は、例えば図1に示すような構成の液晶表示装置1に適用される。
【0013】
この液晶表示装置1は、液晶素子2とバックライト3を備え、液晶素子の後側に配置されたバックライト3からの照明光を利用する透過表示を実行可能とされている。この液晶表示装置1は、互いに対向配置された透明基板11間に液晶層12を封入した液晶素子2と、液晶素子2の前側に設置された第1の偏光板14と、液晶素子2の後側に設置された第2の偏光板15とを備えている。
【0014】
液晶素子2は、ガラス等で構成された2枚の透明な透明基板11を互いに対向配置させ、その間隙に、例えば、ツイステッドネマチック(TN)液晶を封入した液晶層12を設けた構成となっている。透明基板11は、それぞれTFT基板11aと、対向電極基板11bからなる。TFT基板11aには、マトリクス状に配置された信号線21と、走査線22と、この信号線21 、走査線22の交点に配置されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ23と、画素電極24とが形成されている。
【0015】
薄膜トランジスタ23は、走査線22により順次選択されると共に、信号線21から供給される映像信号を、対応する画素電極24に書き込む。一方、対向電極基板11bの内表面には、対向電極26及びカラーフィルタ27が形成されている。
【0016】
この液晶表示装置1は、このような構成の液晶素子2を2枚の偏光板14、15で挟み、バックライト3により後側から白色光としての照明光を照射した状態で、或いは前側から入射する外光を照射した状態でアクティブマトリクス方式で駆動することによって、所望の映像を表示させることができる。
【0017】
第1の偏光板14は、透過軸がB方向とされており、第2の偏光板15は、透過軸がA方向とされている。ちなみに、このA方向とB方向は互いに直交する関係にある。
【0018】
カラーフィルタ27は、図2に示すように、赤色(R)の光をそれぞれ透過させる着色層28a、緑色(G)の光をそれぞれ透過させる着色層28b、青色(B)の光をそれぞれ透過させる着色層28cが順次形成されている。即ち、この着色層28aは、700nm程度の波長の光を、また着色層28bは、546nm程度の波長の光を、更に着色層28cは、436nm程度の波長の光を透過し、それ以外の波長の光を吸収する構成とされている。そして、この各着色層28a〜28cがそれぞれ1画素に対応している。
【0019】
図3は、カラーフィルタ27の詳細な構成を説明するための図である。カラーフィルタ27は、基板41と、この複数の量子ドット42からなる入力側量子ドットグループ43と、入力側量子ドットグループ43近傍に設けられた出力側の量子ドット44とを備えている。
【0020】
基板41は、ガラスに加え、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の各樹脂からなる。そして、この基板11には、各色の顔料が分散されている。
【0021】
入力側量子ドットグループ43を構成する量子ドット42や、出力側の量子ドット44は、CuCl等の材料系で構成され、励起子を三次元的に閉じ込めることにより形成される離散的なエネルギー準位に基づき、単一電子(励起子)を制御する。各量子ドット42、44は、CuCl、GaN又はZnO等の材料系からなる。ちなみに、各量子ドット42、44を構成する材料系がCuClである場合に、これらは立方体として構成され、また各量子ドット42,44を構成する材料系がGaNやZnOである場合に、これらは球形或いは円盤形として構成される。
【0022】
これら各量子ドット42、44を構成する材料系として上記CuClを用いる場合において、先ずCuClの粉末と、NaClの粉末を混合して約800℃の温度で融解する。次に、上下方向に温度勾配が施された炉内へ上記融解した混合粉末をつり下げ、数mm/hの速度で炉内を上下移動させることにより、混合粉末内部に温度勾配を作り出して序々に結晶化させてゆく。そして約200℃程度の温度で数分から数10分間熱処理をすると、CuClの量子ドット42,44を包含したNaCl結晶を作製することができる。ちなみに、このブリッジマン法では、熱処理温度や熱処理時間を変えることにより、生成する量子ドット42,44のサイズを自在に制御することもでき、これらを100nm以下の領域に並べて形成させることも可能となる。
【0023】
なお、これら各量子ドット42,44は、更に分子エピタキシー(MBE)成長法に基づいて基板41上に作製してもよいし、また近接場光CVDを利用して量子ドット42、44の形成位置を精度よく制御してもよい。
【0024】
以下の説明においては、量子ドット42、44を構成する材料系としてCuClを用いる場合を例に挙げて説明をする。これら量子ドット42、44では、励起子の閉じ込め系によりキャリアのエネルギー準位が離散的になり、状態密度をデルタ関数的に尖鋭化させることができる。また、この量子ドット42、44におけるエネルギー準位は、下位において比較的離散的に存在しているが、上位になるにつれて連続して存在することとなり、次第に帯状になる。
【0025】
このような量子ドット42、44が形成された基板41に対して、バックライト3から白色光が入射されると、量子ドット42により吸収されることになる。
【0026】
図4は、各量子ドット42、44のエネルギー準位を示している。各量子ドット42,44における量子閉じ込め準位E(nx,ny,nz)は、粒子の質量をmとし、また量子ドットの辺長をLとしたときに、以下の式(1)により定義される。
【0027】
E(nx,ny,nz)=h2/8π2m(π/L)2(nx2+ny2+nz2)・・・・・(1)
【0028】
この式(1)に基づき、各量子ドット42,44のE(nx,ny,nz)を計算する。ここで量子ドット42と、量子ドット44との辺長比が、およそ1:√2であるとき、図4に示すように、量子ドット42における量子準位が(1,1,1)であるときのE(111)と、量子ドット44における量子準位が(2,1,1)であるときのE(211)とが等しくなる。即ち、量子ドット42の量子準位(1,1,1)と、量子ドット44の量子準位(2,1,1)は、互いに励起子の励起エネルギー準位が共鳴する関係にある。実際これらの間で共鳴を起こさせるためには、量子ドット42における量子準位(1,1,1)に対応する波長の入射光Aをそれぞれ供給することにより、かかる量子準位へ励起子を励起させることができる。
【0029】
仮に波長λ1の入射光Aを供給することにより、量子ドット42における量子準位(1,1,1)へ励起子を励起させた場合には、かかる量子準位(1,1,1)と量子ドット44における量子準位(2,1,1)との間で共鳴が生じる。
【0030】
その結果、第1の量子ドット42における量子準位(1,1,1)に存在する励起子が、量子ドット44の量子準位(2,1,1)へ移動し、さらに量子ドット44の量子準位(1,1,1)へ遷移する。この結果、見かけ上、量子ドット42から量子ドット44へ励起子が移動することになる。
【0031】
そして、この量子ドット44の量子準位(1,1,1)へ移動した励起子は、そこから発光する。この量子ドット44の下位の量子準位(1,1,1)からの発光は、出力信号としての出力光として取り出されることになるが、その波長λ2は、入射光の波長λ1と比較して長くなる。これは、量子ドット44のサイズが、量子ドット42と比較して大きいからである。
【0032】
即ち、このような互いに共鳴準位を持つとともに、量子ドット44のサイズを量子ドット42よりも大きく構成することにより、量子ドット42から量子ドット44へ励起子を移動させることが可能となる。基板41上において辺長比が互いに異なる各量子ドット42,44を形成させることにより、(1)式に基づく量子準位をほぼ等しくすることができ、これらの間で共鳴を起こさせることにより、体積の小さい量子ドット42から体積の大きい量子ドット44へ励起子を注入することができる。換言すれば、量子ドット間で体積(サイズ)を互いに異ならせることにより、これらの間で励起子を伝送することができる。
【0033】
このため、かかる励起子の伝送原理を利用して、体積の小さい量子ドット42に応じた波長λ1の入射光Aを供給することにより、それぞれの量子準位に励起子を励起させ、これを体積の大きい量子ドット44へ伝送する。量子ドット44では、かかる伝送された励起子を下位準位へ放出することにより波長λ2からなる出力光Bを生成する。その結果、この量子ドット42から量子ドット44への励起子の移動を通じて、波長λ1の入射光Aをより長波長からなる波長λ2の出力光Bへ変換することが可能となる。
【0034】
ここで図5に示すように、この着色層28aは、700nm程度の波長の光を透過するが、出力光Bの波長がこの700nmとなるような関係のある量子ドット42、44が形成されている場合には、これよりも短波長帯域sの光を吸収して、700nm程度の出力光Bを放出することが可能となる。その結果、放出される出力光Bの光強度を増強することができ、また本来ならば吸収されてしまうはずの短波長帯域sの光を効果的に利用することが可能となる。
【0035】
同様に、着色層28bは、546nm程度の波長の光を透過するが、出力光Bの波長がこの546nmとなるような関係のある量子ドット42、44が形成されている場合には、これよりも短波長帯域tの光を吸収して、546nm程度の出力光Bを放出することが可能となる。その結果、放出される出力光Bの光強度を増強することができ、また本来ならば吸収されてしまうはずの短波長帯域tの光を効果的に利用することが可能となる。
【0036】
着色層28cは、436nm程度の波長の光を透過するが、出力光Bの波長がこの436nmとなるような関係のある量子ドット42、44が形成されている場合には、これよりも短波長帯域uの光を吸収して、436nm程度の出力光Bを放出することが可能となる。その結果、放出される出力光Bの光強度を増強することができ、また本来ならば吸収されてしまうはずの短波長帯域uの光を効果的に利用することが可能となる。
【0037】
このため、カラーフィルタ27によって、多くのエネルギーが吸収されてしまうことが無くなり、光損失を少なくすることができ、光効率を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図6に示すように、量子ドット42’が基板41上において更に形成されていてもよい。この量子ドット42’は、量子ドット42よりもさらにサイズが小さく構成されている。また、量子ドット42’と、量子ドット44との辺長比が1:2であるとき、この量子ドット12’における量子準位(1,1,1)におけるE(111)は、量子ドット44の量子準位(2,2,2)におけるE(222)と等しく、互いに共鳴する準位である。この量子ドット42’からも同様に励起子が量子ドット44へと移動していくことになる。量子ドット42’により吸収される入射光A’の波長λ1’は、量子ドット42により吸収される入射光Aの波長λ1とは異なるものであるが、係る入射光A’も同様に量子ドット42’内において光励起させ、これを量子ドット44へ伝送してより長波長の波長λ2の出力光Bに変換することが可能となる。
【0039】
各着色層28における透過波長は、それぞれ700nm、546nm、436nmであるが、多岐に亘る波長をも量子ドット42で吸収してこれを出力光Bに変換することで、波長変換効率を向上させる必要がある。このため、多岐に亘るサイズや種類からなる量子ドット42を基板41上に形成させ、紫外光のいずれの波長をも量子ドット42で吸収できる構成とする必要がある。仮にサイズを異ならせた場合においても、出力側の量子ドット44において、これと共鳴準位をもたせることにより、励起子の移動を実現することが可能となる。
【0040】
なお出力側の量子ドット44は、出力光Bの波長λ2が700nm、546nm、436nm程度となるように制御される場合に限定されるものではなく、これらの帯域を中心として±50nm程度の範囲であってもよい。
【0041】
ちなみに、この出力側量子ドット44も同様に、多岐に亘るサイズや材質で構成することにより、その出力光Bの波長λ2や共鳴準位が互いに相違するものであってもよい。但し、この出力光の波長λ2が各着色層28における透過波長に対応する波長であり、しかも量子ドット42における量子準位と共鳴準位を有することが必須となる。
【0042】
また、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図7に示すように、入力側量子ドットグループ43を構成する量子ドット42から、出力側の量子ドット44へ励起子を伝送する際において、他の量子ドット46を介して行うようにしてもよい。
【0043】
例えば、量子ドット42、量子ドット46、量子ドット44間において、それぞれ辺長比が1:√2:2で構成されているものとする。このとき、量子ドット42におけるE(111)と、量子ドット46におけるE(211)とが共鳴することになり、よりサイズの大きい量子ドット46に対して量子ドット42から励起子によるエネルギー移動が起きることになる。また、量子ドット46におけるE(111)と、量子ドット44におけるE(211)とが共鳴することになり、よりサイズの大きい量子ドット44に対して量子ドット46から励起子によるエネルギー移動が起きることになる。その結果、最終的に量子ドット42により吸収された波長λ1からなる入射光Aは、波長λ2からなる出力光Bに波長変換されることになる。このように、量子ドット42、44のみではなく、その間に他の量子ドット44を介して励起子を伝送する構成においても、本発明所期の効果を得ることが可能となる。ちなみに、この量子ドット46は1種類で構成されている場合に限定されるものではなく、段階的に徐々に小さくなるように構成されていてもよい。
【0044】
更に本発明においては、量子ドットの代替として、色素分子(ローダミン分子等)、イオン(Cu,Fe等)を上記基板中に分散させて構成するようにしてもよい。具体的には、供給される白色光のうち、上述したs〜u等の帯域成分を十分に吸収し得るだけの濃度を持つ、分子、イオンと、波長400nm以上の入力光をほとんど吸収しないように濃度調整された波長400nm以上に発光帯域を持つ分子、イオンが同時に分散されたガラス、樹脂、結晶などである。
【0045】
次に、上述の如き構成からなるカラーフィルタ27を有する液晶表示装置1の動作について説明をする。バックライト3から出射された照明光のうち直線偏光方向がA方向の光Pは、そのまま第2の偏光板15を通過する。そして、この光Pは、透明基板11を通過し、液晶層12中に出射する。液晶層12は、電圧が印加されていない場合には、入射された光Pの偏光状態を90°向きを変えて出射させる。その結果、この光Pの偏光方向は、B方向となる。これに対して、電圧が印加されている場合には、第2の偏光板15を通過してきた光Pの偏光状態を変えることなくそのまま出射する。即ち、電圧が印加されている場合に、この液晶層12から出射する光Pの偏光方向は、A方向となる。これらの性質は、TN液晶の性質に依拠するものである。
【0046】
この液晶層12を出射した光Pは、透明基板11を通過した上で上述したカラーフィルタ27を通過する。このとき、カラーフィルタ27は、入射された光Pについて上述したメカニズムに基づいて波長変換を行う。そして、このカラーフィルタを通過した光Pは第1の偏光板14へと到達することになる。
【0047】
第1の偏光板14は、その透過軸がA方向に対して垂直であるB方向とされている。このため、光Pの偏光方向がB方向であれば、透過する偏光成分が多くなり、明るい表示となる。これに対して、光Pの偏光方向がA方向であれば、殆どがこの第1の偏光板14により吸収されることになることから、暗い表示となる。
【0048】
このように、本発明を適用した液晶表示装置1は、透過表示を行う上で、カラーフィルタ27によって、多くのエネルギーが吸収されてしまうことが無くなり、光損失を少なくすることができ、光効率を向上させた透過表示を行うことが可能となる。
【0049】
なお、本発明を適用した液晶表示装置1は、例えば図8に示すような反射表示を行う場合にも同様に適用可能である。この図8において、上述した図1と同一の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0050】
反射表示を行うこの液晶表示装置1は、第2の偏光板15の後側において反射板18を配設している。この反射板18は、第2の偏光板15から出射されてきた光を反射する機能を担う。
【0051】
次に、この図8に示す構成に基づいて液晶表示装置1により反射表示動作を行う場合について説明をする。外部から入射されてくる外光Qは、第1の偏光板14へと入射され、B方向の偏光成分のみがこの第1の偏光板14を透過する。この第1の偏光板14を透過した光Qは、そのまま透明基板11を通過し、液晶層12中に出射する。液晶層12は、電圧が印加されていない場合には、入射された光Qの偏光状態を90°向きを変えて出射させる。その結果、この光Qの偏光方向は、A方向となる。これに対して、電圧が印加されている場合には、第1の偏光板14を通過してきた光Qの偏光状態を変えることなくそのまま出射する。即ち、電圧が印加されている場合に、この液晶層12から出射する光Qの偏光方向は、そのままB方向となる。
【0052】
この液晶層12を出射した光Qは、透明基板11を通過し、第2の偏光板15へと到達する。この第2の偏光板15は、その透過軸がA方向とされている。このため、光Qの偏光方向がA方向であれば、透過する偏光成分が多くなる。これに対して、光Qの偏光方向がB方向であれば、殆どがこの第2の偏光板15により吸収されることになる。
【0053】
この第2の偏光板15を通過した偏光方向がA方向の光Qは、反射板18を反射し、そのまま第2の偏光板15を通過する。そして、この光Qは、液晶層12を通過することになるが、このときも上述した透過表示と同様のメカニズムにより、電圧が印加の有無に応じて偏光方向を制御する。この液晶層12を出射した光Qは、透明基板11を通過した上で上述したカラーフィルタ27を通過する。このとき、カラーフィルタ27は、入射された光Qについて上述したメカニズムに基づいて波長変換を行う。そして、このカラーフィルタを通過した光Qは第1の偏光板14へと到達することになる。第1の偏光板14の透過軸としてのB方向と同一か否かにより、明暗を表示していくことになる。
【0054】
このような反射表示を行う場合においても、同様にカラーフィルタ27によって、多くのエネルギーが吸収されてしまうことが無くなり、光損失を少なくすることができ、光効率を向上させることが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の方式を採用するいかなる液晶表示装置に対して適用してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を適用した透過式の液晶表示装置の構成図である。
【図2】各波長の光をそれぞれ透過させる着色層が順次形成させる例について説明するための図である。
【図3】カラーフィルタ27の詳細な構成を説明するための図である。
【図4】各量子ドットのエネルギー準位を示す図である。
【図5】照明光のスペクトル分布について示す図である。
【図6】各量子ドットのエネルギー準位を示す他の図である。
【図7】各量子ドットのエネルギー準位を示す更なる他の図である。
【図8】本発明を適用した反射式の液晶表示装置の構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 液晶表示装置
2 液晶素子
3 バックライト
11 透明基板
12 液晶層
14 第1の偏光板
15 第2の偏光板
21 信号線
22 走査線
23 薄膜トランジスタ
24 画素電極
26 対向電極
27 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置の各画素に対応させて赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光をそれぞれ透過させる着色層が配置された液晶表示装置用カラーフィルタにおいて、
上記着色層には、量子ドット、又はその代替として色素分子、又はイオンからなる波長変換体が注入されていること
を特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ。
【請求項2】
上記波長変換体は、少なくとも一の着色層における透過波長よりも短波長の光を吸収し、各波長変換体同士のエネルギー移動を経て上記一の着色層の透過波長に対応する光を放出すること
を特徴とする請求項1記載の液晶表示装置用カラーフィルタ。
【請求項3】
上記波長変換体は、量子ドットであり、
上記量子ドットは、供給される光のうち少なくとも一の着色層における透過波長よりも短波長の光に応じて励起子が励起される第1のエネルギー準位を有する複数の量子ドットからなる入力側量子ドットグループと、上記第1のエネルギー準位との共鳴に応じて上記入力側量子ドットグループを構成する各量子ドットから励起子が注入される共鳴エネルギー準位を有し、当該共鳴エネルギー準位から放出されたエネルギーに応じて上記一の着色層の透過波長に対応する出力光を生成する出力側の量子ドットとを備えること
を特徴とする請求項2記載の液晶表示装置用カラーフィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか1項記載の液晶表示装置用カラーフィルタを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−251129(P2009−251129A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96597(P2008−96597)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 低損失オプティカル新機能部材技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173636)財団法人光産業技術振興協会 (19)
【Fターム(参考)】