説明

液晶表示装置

【課題】画面の上下方向等、所定の一方向におけるコントラストが高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第1の配向処理基板と第2の配向処理基板との間に、電界が存在しない状態でツイスト配列に配向した液晶分子を含む液晶層を有する液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された、第1のOプレートと、該液晶セルと該第2の偏光子との間に配置された、第2のOプレートと、該液晶セルと該第1のOプレートとの間に配置された、第1の二軸性位相差層と、該液晶セルと該第2のOプレートとの間に配置された、第2の二軸性位相差層とを有し、これらが所定の配置角度で配置された液晶表示装置によって上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角特性が制御された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は1対の偏光子の間に液晶セルを有する構成が一般的であり、液晶セルへの電圧の印加によって、液晶セル中の液晶分子の配向状態が変化することに伴い、液晶セルを透過する光の偏光状態が変換することを利用して、ピクセル毎の明暗を調整し、文字や画像を表示している。このような液晶セルによる偏光状態の変換は、液晶分子の複屈折を利用するものである。複屈折は、角度依存性を有するため、液晶表示装置においては、画面を見る方向(視角)によって表示特性が変化する、すなわち、視野角依存性を有するという課題がある。そのため、画面の正面方向の表示特性が優れていても、画面を斜め方向から見た場合は、コントラストが低下したり、カラーシフトを生じたりする場合がある。
【0003】
このような視角依存性をできる限り小さくして、斜め方向からの視認性を改善するために、液晶パネルに用いられる液晶セルの種類も、スーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)モードから、TFT駆動のツイステッド・ネマチック(TN)モードへと変遷し、さらに、視角特性に優れるインプレーン・スイッチング(IPS)モードや、バーティカル・アライメント(VA)モード等が主流となりつつある。特に、30インチ以上の大画面液晶表示装置においては、その傾向が顕著である。また、視野角依存性を解消するために、光学補償フィルムを用いる方法も多数提案されている。
【0004】
液晶表示装置の用途としては、家庭用のテレビや、パソコン用の用のモニタ、あるいは、携帯電話等のモバイル用のモニタ等、多岐に渡っている。また、近年は、公共施設や金融機関・デパートをはじめとする店舗での各種案内や、広告・宣伝などの情報を表示する、インフォメーションディスプレイにもその用途が拡がっている。インフォメーションディスプレイは多くの人に視認されることを目的とするものであるため、視界が開けた場所に設置されるのが一般的であり、多くの場合は、人間の目線より高い位置に設置される。そのため、インフォメーションディスプレイは、画面の斜め方向(下側)から視認されることが一般的である。しかし、前述のように、液晶表示装置は斜め方向の視認性に課題を生じる場合があるため、インフォメーションディスプレイとしては、視角特性に優れるIPSモードやVAモードの液晶セルを供えた液晶パネルを用いたものが主流である。
【0005】
一方で、TNモードの液晶表示装置は、IPSモードやVAモードの液晶表示装置と比較して、製造が容易、かつ安価である。そのため、一般に画面サイズの大きいインフォメーションディスプレイにおいて、TNモードの液晶パネルを用いることができれば、量産性及びコストの面で非常に有利である。
【0006】
TNモードの液晶パネルの視野角拡大を目的として種々の検討がなされており、中でも、液晶分子が傾斜配向した液晶配向層(所謂Oプレート)を用いた光学補償フィルムが多数提案されている。例えば、光学補償フィルムとして、Oプレートと二軸性位相差層とを用いたTNモードの液晶表示装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような光学補償フィルムを用いても、IPSモードやVAモードの液晶表示装置に匹敵する視角特性を発揮するには至っていないのが現状であった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−100031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液晶表示装置の斜視時、特に画面の上下方向からの斜視時におけるコントラストが高い液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、インフォメーションディスプレイ等の液晶表示装置においては、全方位の視角特性を良好とすることは必須ではなく、むしろ、一方向の視認性を改善すべきであることに着目して、鋭意検討を重ねた結果、Oプレートと、二軸性位相差層とを特定の配置で積層する構成により、一方向の視角特性に優れた液晶表示装置が得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、配向処理されてなる、第1の配向処理基板と第2の配向処理基板との間に、電界が存在しない状態でツイスト配列に配向した液晶分子を含む液晶層を有する液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された、第1のOプレートと、該液晶セルと該第2の偏光子との間に配置された、第2のOプレートと、該液晶セルと該第1のOプレートとの間に配置された、第1の二軸性位相差層と、該液晶セルと該第2のOプレートとの間に配置された、第2の二軸性位相差層と、を有し、該液晶セルにおける液晶層の、電界が存在しない状態における平均配向方向が、画面の上下方向と等しい液晶表示装置に関する。
【0011】
本発明の液晶表示装置においては、前記第1のOプレート及び、第2のOプレートは、いずれも棒状液晶化合物がハイブリッド配列した固化層又は硬化層であり、かつ、該棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)が、二軸性位相差層側のチルト角(θ)よりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明の液晶表示装置においては、 前記液晶セルの第1の配向処理基板の配向処理方向と、第2の配向処理基板の配向処理方向が直交することが好ましい。
【0013】
本発明の液晶表示装置においては、前記第1のOプレートの遅相軸方向と、上記第1の偏光子の吸収軸方向とが平行であり、かつ、前記第2のOプレートの遅相軸方向と、前記第2の偏光子の吸収軸方向とが平行であることが好ましい。
【0014】
本発明の液晶表示装置においては、前記第1の二軸性位相差層の遅相軸方向と、前記第1の偏光子の吸収軸方向とが直交し、かつ、前記第2の二軸性位相差層の遅相軸方向と、前記第2の偏光子の吸収軸方向とが直交することが好ましい。
【0015】
本発明の液晶表示装置においては、前記第1の偏光子の吸収軸方向と、前記第1の配向処理基板の配向処理方向とが平行であり、かつ前記第2の偏光子の吸収軸方向と、前記第2の配向処理基板の配向処理方向とが平行であることが好ましい。
【0016】
本発明の液晶表示装置においては、前記第1の偏光子と、前記第1のOプレートとの間に存在する媒体、前記第2の偏光子と、前記第2のOプレートとの間に存在する媒体の、少なくとも一方が光学等方性であることが好ましい。
【0017】
本発明の液晶表示装置においては、前記液晶セルの第1の配向処理基板及び第2の配向処理基板が、それぞれ、液晶層側に配向膜を有することが好ましく、該配向膜がラビング処理されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Oプレートと、二軸性位相差層の配置の組合せによって、一方向のコントラストが高い液晶表示装置を得ることができる。かかる液晶表示装置は、電界が存在しない状態における液晶セルの平均配向方向を、画面の上下方向と等しくすることによって上下方向の視角特性に優れたものとできるため、画面の下方向から視認されることが多いインフォメーションディスプレイ等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[液晶パネルの構成概要]
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルと、光源、若しくは反射板等の液晶パネルに光を供給する手段とを有する。図1に、本発明の液晶表示装置における液晶パネルの概略斜視図を示す。なお、図1においては、本願構成の配置角度の相対関係の理解を容易とするために、液晶セルを矩形とし、矩形の辺方向と、各構成部材の遅相軸や吸収軸等の光軸方向とが平行となるように描かれているが、実際の構成においては、本明細書の実施例において後述するように、矩形の辺方向と各構成部材の光軸方向とは45°、あるいは135°の角度をなすように配置されることに留意されたい。
【0020】
液晶セル10は、配向処理されてなる第1の配向処理基板11と第2の配向処理基板12との間に、電界が存在しない状態でツイスト配列に配向した液晶分子を含む液晶層13を有している。液晶パネル100は、液晶セル10の第1の配向処理基板11側に、第1の偏光子21を備え、第2の配向処理基板12側に第2の偏光子22を備える。液晶セル10と第1の偏光子21との間には、第1のOプレート31及び第1の二軸性位相差層41が配置されている。第1の二軸性位相差層41は、液晶セル10と第1のOプレート31との間に配置されている。液晶セル10と第2の偏光子22との間には、第2のOプレート32及び第2の二軸性位相差層42が配置されている。第2の二軸性位相差層42は、液晶セル10と第2のOプレート32との間に配置されている。
【0021】
なお、本願明細書、並びに特許請求の範囲において、「平行」とは、完全に平行であるもののみならず、実質的に平行であることを包含し、その角度は一般に±1°以内であり、好ましくは±0.5°以内、より好ましくは±0.2°以内、特に好ましくは±0.1°以内である。また、「直交」とは、完全に直交する場合のみならず、実質的に直交することを包含し、その角度は一般に90±1°の範囲であり、好ましくは90±0.5°、より好ましくは90±0.2°、特に好ましくは90±0.1°の範囲である。
【0022】
このような構成の液晶パネルは.液晶表示装置の画面を黒表示とした場合に、正面及び斜め方向、特に、第1の偏光子21の吸収軸方向3とのなす角が+45°または−45°の方位角において、バックライトからの光が漏れるのを防止することができる。結果として、斜め方向のうち、特に一方向のコントラストを高くすることができる。
【0023】
[液晶セル]
図1を参照すると、上記液晶セル10は、液晶層13と、液晶層13の第1の偏光子21側に配置された第1の配向処理基板11と、液晶層13の第2の偏光子22側に配置された第2の配向処理基板12とを含む。一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、好ましくは、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線とが設けられる(いずれも図示せず)。他方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルター(図示せず)が設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板に設けてもよい。あるいは、例えば、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段として、RGBの3色光源(さらに、多色の光源を含んでいてもよい)が用いられる場合は、上記カラーフィルターは省略することができる。また、白黒の液晶表示装置の場合のカラーフィルターを省略することができる。2枚の基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。
【0024】
上記第1の配向処理基板及び上記第2の配向処理基板としては、配向処理されたものが好適に用いられる。配向処理の手段は、基板の表面において、液晶分子を一定の配列状態にさせる処理であれば、任意の方法を採用し得るが、第1の配向処理基板及び第2の配向処理基板のそれぞれの液晶層13側に配向膜が設けられ、かかる配向膜が配向処理されたものであることが好ましい。配向膜としては、ポリイミドやポリビニルアルコール等の配向性の高分子を塗布した膜が好ましい。また、配向手段としては、配向膜をナイロンやポリエステルなどの繊維で一方向に擦る「ラビング法」が好適に用いられる。配向処理方向は、例えば、配向処理としてラビング法が用いられる場合は、ラビング方向に略等しい。
【0025】
上記液晶層は、電界が存在しない状態で、ツイスト配列に配向した液晶分子を含む。上記ツイスト配列は、一般には、液晶層中の液晶分子が、両方の基板面に対して略平行に配列し、その配列方位が両基板面で所定の角度(例えば、90°又は270°)捩れているものをいう。このような配列状態の液晶層を備える液晶セルは、代表的には、ツイステッド・ネマチック(TN)モード、又はスーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)モードの液晶セルである。本発明においては、各構成部材の特性が相乗効果的に発揮され、本発明の目的とする光学補償を実現し得る観点から、TNモードの液晶セルが好ましい。
【0026】
図2は、TNモードの液晶セルにおけるにおける液晶分子の配向状態を説明する概略斜視図である。第1の配向処理基板11の配向処理方向1と第2の配向処理基板12の配向処理方向2とは、直交、あるいは平行となるように配置し得るが、図2に示すように直交に配置されることが好ましい。基板11及び12の配向処理方向が直交している場合は、電界が存在しない状態(電圧無印加時)では、図2(a)に示すように、液晶層13の液晶分子は実質的に90°捩れた構造を有する配向状態となっている。すなわち、液晶層の厚み方向中心から離れるに従って対向する基板表面の配向処理方向と略平行となるように液晶層の厚み方向に沿って漸次連続的に変化している。このような配向状態は、所定の配向規制力を有する配向膜の間に、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で、第2基板12の面から光を入射させると、第2の偏光子22を通過して液晶層13に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の捩れに応じて変化する。電圧無印加時に液晶層を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、第2の偏光子22を透過して明状態の表示が得られる(ノーマリホワイトモード)。また、基板11及び12の配向処理方向が平行である場合には、電界が存在しない状態(電圧無印加時)では第2の偏光子22を通過して入射した光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるため、第2の偏光子22を透過できず、暗状態の表示となる(ノーマリブラックモード)。
【0027】
上述にように、液晶層13の液晶分子が正の誘電率異方性を有する場合、電極間に電圧が印加されると、図2(b)に示すように、液晶層13の液晶分子は、第1の配向処理基板11及び第2の配向処理基板12の面と垂直に配向する。このような状態で、第2基板12の面から光を入射させると、第2の偏光子22を通過して液晶層13に入射した直線偏光の光は、垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、第2の偏光子22の吸収軸4と直交する吸収軸3を有する第1の偏光子21で吸収される。これにより電圧印加時において暗状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により明状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して第1の偏光子21からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。なお、TNモードの液晶セルとして、市販の液晶表示装置に搭載されるものをそのまま用いることができる。
【0028】
図3は、図2(a)の電圧無印加のTNモードの液晶セルを、第1の配向処理基板11側から見た様子を模式的に示したものである。液晶層13において、液晶分子は第1の配向処理基板11側では紙面の左右方向に配向しており、第2の配向処理基板12側では紙面の上下方向に配向している。そして、液晶層13の厚み方向中心においては、液晶分子は紙面の斜め45°方向に配向している。液晶分子の配向方向は、液晶層の厚み方向に沿って漸次連続的に変化しているが、これらの配向方向を平均化した方向を、液晶セルの「平均配向方向」と定義する(図3においては、符号9が付された両矢印で示されている)。第1の配向処理基板11の配向処理方向1と第2の配向処理基板12の配向処理方向2が直交する場合においては、平均配向方向9と、第1の配向処理基板の配向方向1のなす角は約45°となる。同様に、平均配向方向9と、第2の配向処理基板の配向方向2のなす角も約45°となる。図3において、紙面の右側を方位角0°、反時計回りを正と定義した場合、平均配向方向は、方位角45°−225°の方向となる。このように、平均配向方向には、45°、225°という、2つの「向き」(方位)が存在するが、このうち、第1の配向処理基板11から第2の配向処理基板12に向かって、厚み方向に沿って液晶分子の配向方向が変化する側を、「平均配向方位」と定義する(図3においては、符号9’が付された片矢印で示してある)。上記の方位角の定義に従えば、平均配向方位は225°となる。
【0029】
本発明の液晶表示装置においては、かかる平均配向方向を、画面の上下方向と等しくすることで、上下方向から斜視した場合のコントラストを、他方向に比して高くすることができる。また、平均配向方位は、画面の上側で(上向き)あっても、下側(下向き)であってもよい。
【0030】
〔偏光子〕
本願明細書並びに特許請求の範囲において「偏光子」とは、自然光や偏光から任意の偏光に変換し得る素子をいう。本発明に用いられる偏光子は、特に制限はないが、好ましくは、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものである。このような偏光子は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分けたとき、そのうちの一方の偏光成分を透過させる機能を有し、且つ、他方の偏光成分を、吸収、反射、及び散乱させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する。
【0031】
本発明において、第1の偏光子、及び第2の偏光子として用いられる偏光子の厚みとしては、任意の適切な厚みが採用され得る。偏光子の厚みは、代表的には5〜80μmであり、好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは20〜40μmである。上記の範囲であれば、光学特性や機械的強度に優れる。
【0032】
上記偏光子の波長440nmの透過率(単体透過率ともいう)は、41%以上であることが好ましくは、43%以上であることがより好ましい。なお、単体透過率の理論的な上限は50%である。また、偏光度は、好ましくは99.8〜100%であり、更に好ましくは、99.9〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラストをより一層高くすることができる。
【0033】
上記単体透過率及び偏光度は、分光光度計を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H0)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlSZ8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0034】
本発明に用いられる偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのO型偏光子、米国特許6,049,428号等に開示されているリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子等も用いることができる。このような偏光子の中でも、高い偏光度を有するという観点から、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムによる偏光子が好適に用いられる。
【0035】
図1に示すようなノーマリホワイトモードの液晶表示装置においては、上記第1の偏光子の吸収軸方向と上記第2の偏光子の吸収軸方向は直交する。なお、本発明において、第1の偏光子と第2の偏光子は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0036】
[二軸性位相差層]
本願明細書並びに特許請求の範囲において「二軸性位相差層」とは、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満足するものである。ここで、nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは遅相軸に直交する面内の方向(進相軸方向ともいう)であり、nzは厚み方向の屈折率を表す。
【0037】
上記第1の二軸性位相差層と上記第2の二軸性位相差層は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記第1及び第2の二軸性位相差層は、単層若しくは多層の位相差層であってもよいし、基材と位相差層とを含む積層体であってもよい。上記第1及び第2の二軸性位相差層の厚みは、通常、0.5μm〜100μmである。
【0038】
図1を参照すると、第1の二軸性位相差層41は、第1のOプレート31と第1の配向処理基板11との間に配置され、第2の二軸性位相差層42は、第2のOプレート32と第2の配向処理基板12との間に配置される。
【0039】
上記第1及び第2の二軸性光学素子の好ましい実施形態について説明する。第1の二軸性位相差層41の遅相軸方向5は、第1の偏光子21の吸収軸方向3と直交し、第2の二軸性位相差層42の遅相軸方向6は、第2の偏光子22の吸収軸方向4と直交することが好ましい。また、第1の二軸性位相差層41の遅相軸方向5は、第2の二軸性位相差層42の遅相軸方向6と直交することが好ましい。
【0040】
上記第1の二軸性位相差層及び/又は上記第2の二軸性位相差層の波長590nmにおける光線透過率(T[590])は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0041】
上記第1の二軸性位相差層及び/又は上記第2の二軸性位相差層の波長590nmにおける面内のレターデーション(Re[590])は、好ましくは50nm〜200nmであり、より好ましくは80nm〜180nmであり、さらに好ましくは100nm〜160nmである。本発明においては、第1、第2の二軸性位相差層のうち少なくとも一方が、上記の面内レターデーションを有することが好ましいが、第1、第2の二軸性位相差層の両方が、上記の面内レターデーションを有することがより好ましい。ここで、Re[λ]は、波長λnmにおける面内レターデーションであり、位相差層(フィルム)の厚みをdとした場合に、Re[λ]=(nx−ny)×dで表される。なお、本願明細書並びに特許請求の範囲において、レターデーションや屈折率等は、断りのない限り、波長590nmにおける値を表す。
【0042】
上記第1の二軸性位相差層及び/又は上記第2の二軸性位相差層のNz係数は、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.1〜4.0であり、さらに好ましくは1.2〜2.0である。上記Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表される。また、後述する波長590nmにおける厚み方向レターデーション(Rth[590]を用いて、Nz=Rth[590]/Re[590]で表すこともできる。Nz係数を上記の範囲とすることによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、斜め方向のコントラストの高い液晶表示装置を得ることができる。本発明においては、第1、第2の二軸性位相差層のうち少なくとも一方のNz係数が上記範囲内にあることが好ましいが、第1、第2の二軸性位相差層の両方のNz係数が上記範囲内にあることがより好ましい。
【0043】
上記第1の二軸性位相差層及び/又は上記第2の二軸性位相差層の波長590nmにおける厚み方向レターデーション(Rth[590])は、nx>ny>nzの関係を満足する範囲(換言すると、Nz>1の範囲)で、80nm〜360nmであることが好ましく、100nm〜320nmであることがより好ましく、120nm〜280nmであることがさらに好ましい。なお、Rth[λ]は、波長λnmにおける厚み方向レターデーションを表す。Rth[λ]は、位相差層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求めることができる。厚み方向レターデーションを上記の範囲とすることによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、斜め方向のコントラストの高い液晶表示装置を得ることができる。本発明においては、第1、第2の二軸性位相差層のうち少なくとも一方が、上記の厚み方向レターデーションを有することが好ましいが、第1、第2の二軸性位相差層の両方が、上記の厚み方向レターデーションを有することがより好ましい。
【0044】
上記第1、及び第2の二軸性位相差層の材料や製造方法等は、上記の光学特性を満足するものであれば、特に制限されず、高分子フィルムを延伸したものや、液晶性化合物を配向させたもの等公知のものを用い得る。二軸性位相差層の遅相軸方向も任意に設定し得るが、二軸性位相差層の遅相軸方向とOプレートの遅相軸方向、あるいは偏光子の吸収軸方向を考慮して、これらをロール・トゥー・ロールで積層できるように遅相軸方向を調整することが好ましい。例えば、偏光子として、ヨウ素等の二色性物質を親水性ポリマーに吸着させて一軸延伸した偏光子を用いる場合、かかる偏光子は、延伸方向が吸収軸となるが、偏光度を高める観点等から、縦一軸延伸によって製造されるのが一般的である。すなわち、このような偏光子は、フィルム搬送方向(縦方向)に吸収軸を有しているが、偏光子と二軸性位相差層をロール・トゥー・ロールで積層した場合に偏光子の吸収軸方向と、二軸性位相差層の遅相軸方向とが直交するためには、二軸性位相差層がフィルム幅方向に遅相軸を有するように二軸製位相差層を作成することが好ましい。このような構成とすることで、ロール・トゥー・ロールでの積層が可能となり、生産性及び歩留まりを大幅に向上し得る。
【0045】
上記第1の異方性光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムの積層体であってもよい。好ましくは、第1の異方性光学素子は、単独の位相差フィルムである。偏光子の収縮応力や光源の熱によるレターデーションのズレやムラを低減し、且つ、液晶パネルを薄くすることができるからである。第1の異方性光学素子が積層体である場合には、2枚以上の位相差フィルムを貼着するための粘着剤層や接着剤層を含んでも良い。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていても良い。
【0046】
[Oプレ−ト]
本願明細書、並びに特許請求の範囲において「Oプレート」とは、分子が傾斜配列に配向した位相差層をいう。本発明においては、第1及び第2のOプレートは、上記のように、ハイブリッド配列に配向させた棒状液晶化合物の固化層又は硬化層(すなわち、位相差層)である。「ハイブリッド配列」とは、上記棒状液晶化合物の傾斜角度(チルト角)が、厚み方向で連続的又は間欠的に、増加又は減少しているものをいい、偏光子側のチルト角(θ)が二軸性位相差層側のチルト角(θ)と異なるものである。ここで、チルト角(θ)とは、隣接する層面と棒状液晶化合物分子とのなす角度を表し、当該分子が面内に平行に配列されている場合を0°とする。ハイブリッド配列における棒状液晶化合物分子の代表的な配列状態を図4に模式的に示す。上記第1のOプレートと上記第2のOプレートは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記第1及び第2のOプレートの厚みは、通常、0.1μm〜10μmであり、好ましくは0.5μm〜5μmである。
【0047】
図1を参照すると、第1のOプレート31は、第1の偏光子21と第1の二軸性位相差層41との間に配置され、第2のOプレート32は、第2の偏光子22と第2の二軸性位相差層42との間に配置される。
【0048】
本発明において、第1及び第2のOプレートは、図4に示すように、上記棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)が、二軸性位相差層側のチルト角(θ)よりも大きくなるように配置されることが好ましい。上記棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)と二軸性位相差層側のチルト角(θ)との差(△θ=θ−θ)は、好ましくは20°〜90°であり、より好ましくは40°〜85°であり、さらに好ましくは60°〜80°である。
【0049】
上記棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θp)は、好ましくは20°〜90°であり、より好ましくは40°〜85°であり、さらに好ましくは60°〜80°である。上記二軸性位相差層側のチルト角(θ)は、好ましくは0°〜10°であり、より好ましくは0°〜5°である。
【0050】
なお、棒状液晶化合物の隣接する層面に対するチルト角は、下記式(I)及び(II)に示すように、Journal of Applied Phisics Vol.38(1999年)P.748に記載のWitteの式に、予め測定したn、n、及びレターデーション(遅相軸と平行方向に、極角−40°〜十40°(法線方向を0°とする)に5°刻みで測定したそれぞれの値)を代入して求めることができる。ここで、θairは棒状液晶化合物の一方の側(例えば、空気界面)のチルト角を表し、θALは他方の側(例えば、基材又は配向膜)界面のチルト角を表す。dはハイブリッド配列に配向させた棒状液晶化合物の固化層又は硬化層の厚みを表す。nは棒状液晶化合物の異常光屈折率を表し、nは棒状液晶化合物の常光屈折率を表す。
【0051】
【数1】

【0052】
上記第1のOプレートの遅相軸は、好ましくは、上記第1の偏光子の吸収軸と平行である。上記第2のOプレートの遅相軸は、好ましくは、上記第2の偏光子の吸収軸と平行である。なお、本願明細書、並びに特許請求の範囲においてOプレートの「遅相軸」を、面内の屈折率の最大となる方向と定義する。このような軸関係で配置することによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、特定方向の視角特性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0053】
上記棒状液晶化合物のディレクタ方向を液晶セル面に投影した方向(配向方向ともいう)は、上記液晶セルの配向処理方向と平行であることが好ましい。「ディレクタ方向」とは、統計的に見た液晶分子全体の配列方位を意味し、平均傾斜角度(θave=(θ+θ)/2)ともいう。ここで上記θaveは、二軸性位相差層面とのなす角度を表し、面内に平行である場合を0°とする。なお、上記配向方向は、該Oプレートの遅相軸と略平行となる。すなわち、図1に示すように、上記配向方向は隣接する液晶セル基板のラビング方向と略平行である。
【0054】
上記平均傾斜角度(θave)は、好ましくは10°〜45°であり、より好ましくは15°〜42°であり、さらに好ましくは20°〜40°である。平均傾斜角度を上記の範囲とすることによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、特定方向の視角特性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0055】
上記第1のOプレート及び/又は前記第2のOプレートの波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0056】
上記第1のOプレート及び/又は上記第2のOプレートの波長590nmにおける面内のレターデーション(Re[590])は、液晶表示装置がノーマリホワイトモードである場合、黒表示時(電圧印加時)の液晶セルのレターデーションと、実質的に等しくなるように、適宜、適切な値に設定される。上記第1のOプレート及び/又は上記第2のOプレートのRe[590]は、好ましくは50nm〜200nmであり、さらに好ましくは70nm〜180nmであり、特に好ましくは90nm〜160nmである。Oプレートの面内レターデーションを上記の範囲とすることによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、特定方向の視角特性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0057】
本願明細書並びに特許請求の範囲において「棒状液晶化合物」とは、分子構造中にメソゲン基を有し、該メソゲン基の長軸方向の屈折率が、短軸方向に比べて大きいものであり、加熱、冷却などの温度変化によるか、又はある量の溶媒の作用により、液晶相を示す化合物をいう。「固化層」は、軟化、溶融又は溶液状態の液晶性組成物を冷却して固まった状態のものをいい、「硬化層」は、液晶性組成物の一部又は全部が、熱、触媒、光及び/又は放射線により架橋されて、不溶不融又は難溶難融の状態となったものをいう。
【0058】
上記棒状液晶化合物としては、任意の適切なものを選択し得るが、室温では結晶又はガラス状態を示し、高温にするとネマチック液晶相を発現するものを好適に用いることができる。上記棒状液晶化合物は、成膜前は液晶相を示すが、成膜後は、例えば、架橋反応によって網目構造を形成し、液晶相を示さなくなるものであってもよい。上記のような性質の棒状液晶化合物を用いることで、例えば、液晶相を示す状態で、ハイブリッド配列を形成した後に、冷却ないし架橋することによって、その配列状態を固定することができる。
【0059】
上記メソゲン基は、液晶相を形成するための構造部分であり、通常、環構造単位を含む。上記メソゲン基の具体例としては、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、フェニルシクロヘキサン基、アゾキシベンゼン基、アゾメチン基、アゾベンゼン基、フェニルピリミジン基,ジフェニルアセチレン基、ジフェニルベンゾエート基、ビシクロヘキサン基、シクロヘキシルベンゼン基、ターフェニル基等が挙げられる。なお、これらの環構造単位の末端は、例えば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。中でも、メソゲン基として、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基を有するものが好ましく用いられる。
【0060】
上記棒状液晶化合物は、メソゲン基を主鎖及び/又は側鎖に有する高分子物質(高分子液晶)であっても良いし、分子構造の一部分にメソゲン基を有する低分子物質(低分子液晶)であっても良い。高分子液晶は、液晶状態から冷却することで分子の配向状態を固定化できるため、生産性に優れる。一方、低分子液晶は、配向性が高く、透明性の高い位相差層を容易に得ることができる。
【0061】
上記棒状液晶化合物は、分子構造の一部分に少なくとも1つ以上の架橋性官能基を有するものが好ましい。架橋反応によって、機械的強度が増し、耐久性に優れた位相差層が得られるからである。上記架橋性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。上記棒状液晶化合物は、市販のものをそのまま用いることもできる。あるいは、市販又は合成された棒状液晶化合物に、他の液晶化合物や、重合開始剤やレベリング剤等の任意の添加剤を加えて、液晶性組成物として用いることもできる。
【0062】
Oプレートの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用し得るが、基材上に棒状液晶化合物を固化層、あるいは硬化層として配向させる方法を好適に用い得る。固化層、あるいは硬化層を形成するための基材は特に限定されないが、液晶化合物を溶剤に溶解、あるいは分散させた塗布液として基材上に塗布する場合においては、基材として塗布液の溶媒に侵食されないものを好適に用いることができる。また、前記二軸性位相差層が、Oプレートの固化層、あるいは硬化層を形成するための基材を兼ねていてもよい。このような場合、前記二軸性位相差層の一方の面には、棒状液晶化合物を配向させるために、配向処理を施したり、あるいは配向膜を有することもできる。
【0063】
[液晶パネルの形成]
液晶パネルは、上記の液晶セル10、第1の偏光子21、第2の偏光子22、第1のOプレート31、第2のOプレート32、第1の二軸性位相差層41、及び第2の二軸性位相差層42を用いて、任意の適切な方法で形成し得る。本発明の液晶表示装置においては、第1の偏光子21の吸収軸方向3と、第1の配向処理基板11の配向処理方向1が平行であり、かつ、第2の偏光子22の吸収軸方向4と、第2の配向処理基板12の配向処理方向2も平行であることが好ましい。このような軸関係で配置することによって、より適切な液晶セルの光学補償が行なわれ、特定方向の視角特性に優れる液晶表示装置を得ることができる。各部材は、それぞれ接着剤層や粘着剤層等を介して積層することが好ましい。
【0064】
本発明においては、前記第1の偏光子21と、第1のOプレート31の間、及び前記第2の偏光子22と第2のOプレート32の間に存在する媒体が光学等方性であることが好ましい。かかる媒体が光学等方性であるとは、液晶パネルの法線方向、及び斜め方向のいずれの方向を透過する光に対しても、その偏光状態を実質的に変換させないことを指す。具体的には、面内レターデーションRe[590]が10nm以下であり、かつ、厚み方向レターデーションRth[590]が30nm以下であるものを包含する。かかる媒体の面内レターデーションRe[590]は、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。また、厚み方向レターデーションRth[590]は、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、5nm以下であることが最も好ましい。このように、第1の偏光子21と、第1のOプレート31の間、及び前記第2の偏光子22と第2のOプレート32の間の媒体を光学等方性とすることで、本発明の目的とする光学補償設計を損なうことなく、特定方向の視角特性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0065】
(等方性光学素子)
このように、層間に存在する媒体が光学等方性である実施形態としては、他のフィルム等の光学素子を介さずに、第1の偏光子21と、第1のOプレート31とを、粘着層、あるいは接着層等を用いて積層する形態や、第1の偏光子21と、第1のOプレート31との間に等方性光学素子50を配置する形態が挙げられる。このように、等方性光学素子を設けた場合、かかる等方性光学素子が、偏光子の液晶セル側の保護フィルムとして機能することとなり、偏光子の劣化を防ぎ、結果として、液晶表示装置の表示特性を長時間高く維持することができる。なお、第1の偏光子21と、第1のOプレート31との間の光学等方性媒体について、上記したが、第2の偏光子22と、第2のOプレート32の間に関しても同様である。
【0066】
等方性光学素子の材料や製造方法等は、上記の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。上記等方性光学素子は、単独の光学フィルムであってもよく、2枚以上の光学フィルムの積層体であってもよい。好ましくは、等方性光学素子は、単独のフィルムである。偏光子の収縮応力や光源の熱による複屈折の発生やムラを低減し、液晶パネルを薄くすることができるからである。等方性光学素子が積層体である場合には、2枚以上の位相差フィルムを貼着するための粘着剤層や接着剤層を含んでも良い。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていても良い。例えば、2枚の位相差フィルムを積層する場合、各位相差フィルムは、それぞれの遅相軸が互いに直交するように配置することが好ましい。このように配置することによって、面内のレターデーションを小さくすることができる。また、各位相差フィルムは、厚み方向のレターデーションの正負が互いに逆であるフィルムを積層することが好ましい。このように積層することで、厚み方向のレターデーションを小さくすることができる。
【0067】
等方性光学素子に用いられる光学フィルムとしては、前記二軸性位相差層に用いられる位相差フィルムと同様、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れ、歪によって光学的なムラの生じにくいものが好ましく用いられる。上記フィルムとしては、高分子フィルムが好ましく用いられる。かかるフィルムの厚み、透過率や、その成形方法等は特に限定されないが、前記二軸性位相差層における記載と同様の範囲であることが好ましい。
【0068】
等方性光学素子に用いられる光学フィルムの光弾性係数の絶対値は、1.0×10−10/N以下であることが好ましく、5.0×10−11/N以下であることがより好ましく、1.0×10−11/N以下であることがさらに好ましく、5.0×10−12/N以下であることが特に好ましい。光弾性係数の値を上記の範囲とすることによって、光学的均一性に優れ、かつ、高温高湿等の環境においても光学特性の変化が小さく、耐久性に優れた液晶表示装置を得ることができる。また、光弾性係数の下限は特に制限されないが、一般には5.0×10−13/N以上である。光弾性係数の値は、第1の異方性光学素子に関して前記したのと同様の方法により、低く抑制することができる。
【0069】
(光学等方性フィルム)
等方性光学素子に用いられる光学フィルムとしては光学等方性フィルムが好ましい。「光学等方性フィルム」とは、等方性光学素子に関して前記したのと同様に法線方向及び斜め方向のいずれの方向を透過する光に対しても、その偏光状態を実質的に変換しないものを指す。
【0070】
上記光学等方性フィルムを構成する材料としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。また、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることもできる。光学等方性フィルム中には、任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。
【0071】
(偏光子と等方性光学素子の積層)
前記したように、第1の偏光子21と、第1のOプレート31の間、及び前記第2の偏光子22と第2のOプレート32の間に偏光子の保護フィルムの機能を兼ねた等方性光学素子(光学等方性フィルム)を配置する場合、偏光子と光学等方性フィルムは、接着剤を介して積層することが好ましい。
【0072】
(接着剤)
上記接着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム系、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、偏光子と光学等方性フィルムはとの積層には水性接着剤が好ましく用いられる。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものが用いられる。
【0073】
接着剤の塗布は、乾燥後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る点から、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。
【0074】
(その他の部材)
本発明の液晶表示装置において、液晶パネルは、上記の液晶セル10、第1の偏光子21、第2の偏光子22、第1のOプレート31、第2のOプレート32、第1の二軸性位相差層41、第2の二軸性位相差層42、等方性光学素子50以外の光学層やその他の部材を含むこともできる。その例としては、第1の偏光子21の第1のOプレートが配置されるのと反対側の面、あるいは、第2の偏光子22の第2のOプレートが配置されるのと反対側の面に設けられる透明保護層60、60’が挙げられる。また、このような透明保護層には、さらに反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の表面処理層70、70’を設けることができる。また、表面処理層は、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。このような構成の液晶パネル積層断面図の一例を図5に示す。
【0075】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0076】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0077】
また、本発明においては、図5に示すように、液晶パネルに輝度向上フィルム85を設けることも好ましい構成である。輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
【0078】
(粘着剤)
これらの各部材の積層には粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0079】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0080】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定できるが、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0081】
(液晶パネルの形成順序)
本発明において、液晶パネルの形成順序は特に限定されず、各部材を順次別個に積層する方式にて形成してもよく、予めいくつかの部材を積層したものを用いることもできる。また、その積層順序は特に制限されないが、本発明においては、第1の偏光子21、第1のOプレート31、第1の二軸性位相差層41、及び必要に応じて等方性光学素子50、透明保護層60、並びに表面処理層70を積層した第1の偏光板と、第2の偏光子22、第2のOプレート32、第2の二軸性位相差層42、及び必要に応じて等方性光学素子50、透明保護層60’、並びに表面処理層70’を積層した第2の偏光板を予め用意し、これらを液晶セル10と積層することによって、品質の安定性や組立の作業性に優れたものとすることができる。中でも、前述のように、二軸性位相差層の遅相軸方向を制御して、偏光子、Oプレート、二軸性位相差層を、ロール・トゥー・ロールで積層して長尺積層偏光板として用いることが、生産性の観点から好ましい
【0082】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルと、光源、若しくは反射板等の液晶パネルに光を供給する手段とを有する。前述の如く、本発明の液晶表示装置においては、平均配向方向を画面の上下方向と等しくすることで、上下方向から斜視した場合のコントラストを、他方向に比して高くすることができる。
【0083】
本発明の液晶表示装置の一例として、光源を備える透過型液晶表示装置について説明する。図6は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置300は、液晶パネル100と、液晶パネル100の一方の側に配置されたバックライトユニット200とを少なくとも備える。なお、図示例では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、これは例えば、サイドライト方式のものであってもよい。
【0084】
直下方式が採用される場合、上記バックライトユニット200は、好ましくは、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84とを備える。また、図示していないが、輝度向上フィルムを有することも好ましい。サイドライト方式が採用される場合、好ましくは、バックライトユニットは、上記の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを備える。なお、図6に例示した光学部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式等の設計に応じてその一部が省略され得るか、又は、他の光学部材に代替され得る。
【0085】
本発明の液晶表示装置は、前記したようにOプレートと、二軸性位相差層とを特定の配置で積層する構成を有する液晶パネルを備えることで、一方向の視角特性に優れたものとすることができる。特に、本発明の液晶表示装置は、液晶セルの「平均配向方向」におけるコントラスト変化が小さい、すなさち、液晶セルの平均配向方向の視認性が高い傾向を示す。そのため、視認性を高めたい方向を液晶セルの平均配向方向と一致させることによって、本発明の目的に適った液晶表示装置とすることができる。特に、画面下方向から視認されるインフォメーションディスプレイにおいては、液晶セルの平均配向方向が、画面の上下方向と一致するように液晶表示装置を形成することで、画面下方向からの視認性に優れたものとすることができる。この際、液晶セルの平均配向方向が上下方向と一致していれば、液晶セルの平均配向方位は、画面の上側、下側のいずれとなるように配置してもよい。また、画面上下方向の視認性に優れる液晶表示装置の形成に関して上記したが、液晶パネル(液晶セル)の配置角度を調整することにより、左右、あるいは、斜め方向の視認性に優れた液晶表示装置を形成することも可能である。
【0086】
本発明の液晶表示装置は、液晶セルの平均配向方向の極角40°におけるコントラストが、250以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。また、液晶セルの平均配向方向における、コントラストが30以上の領域を液晶表示装置の視野角とした場合、視野角は50°以上であることが好ましく、60°以上であることがより好ましく、70°以上であることがさらに好ましい。
【0087】
さらに、本発明の液晶表示装置のコントラスト100の等コントラスト曲線は、液晶セルの平均配向方向を長軸とする略楕円形状であることが好ましく、そのアスペクト比(長軸/短軸の比)は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。
【0088】
本発明の液晶表示装置は、種々の用途に用い得るが、従来の液晶表示装置に比べて、液晶セルの平均配向方向、すなわち、画面の上下方向において、格段に優れた高コントラスト特性(高視認性)を有することから、公共施設や金融機関・デパートをはじめとする店舗での各種案内や、広告・宣伝などの情報を表示する、インフォメーションディスプレイに特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0089】
本発明について、実施例及び比較例を用いて更に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた測定値等は、以下の方法によって得られたものである。
【0090】
[測定方法]
(屈折率)
アッベ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−M4」]を用いて測定した。
【0091】
(厚み)
液晶硬化層の厚みは、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。
【0092】
(レターデーション)
Axiometric社製の製品名「Axioscan」により、波長590nmのレターデーションを測定した。なお、測定に際しては、基材による複屈折の影響を排除するために、液晶硬化層を基材から剥離して、粘着剤を用いてガラス板上に転写した上で測定を行った。
【0093】
(棒状液晶化合物の、界面のチルト角)
Journal of Applied Phisics、 vol.38(1999年)、P.748に記載のWitteの式に、n、n、及びレターデーション(遅相軸と平行に、極角−40°〜十40°(法線方向を0°とする)に5°刻みで測定したそれぞれの値)を代入して求めた。
【0094】
(分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具及び測定条件により測定した。なお、測定に際しては、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して0.1重量%の溶液とし、一晩静置した後,0.45μmのメンブレンフイルターでろ過したろ液を用いた。
・分析装置:TOSOH製「HLC−8120GPC」
・カラム:TSKgeI SuperHMH/H4000/H3000/H2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流量:0.6ml/min.
・検出器・RI
・カラム温度:40℃
・注入量:20μl
【0095】
(コントラスト)
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、AUTRONIC−MELCHERS GmbH社製の製品名「コノスコープ」を用いて測定した。なお、液晶表示装置の画面左右方向の右側(右方位)を方位角0°、反時計回りを正とし、法線方向を極角0°とした。
【0096】
[実施例1]
(Oプレートの形成)
下記式(II)で表される高分子液晶(重量平均分子量:5,000)20重量部と、重合性液晶化合物[BSAF社製、商品名「Paliocolor LC242」(ne=1.654、no=1.523)]80重量部とを、233重量部のシクロペンタノンに溶解して固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、0.3重量部の表面調製剤[ビック・ケミー社製 商品名「BYK375」]を加え、さらに7重量部の重合開始剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製 商品名「イルガキュア907」]を加えた。この溶液に、196重量部のシクロペンタノンを加え、固形分濃度20重量%の液晶性組成物溶液を調製した。
なお、下記一般式(II)における「65」及び「35」の数値は、共重合比が65:35であることを表している。
【0097】
【化1】

【0098】
ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製 商品名「RC06」、厚み75μm]を、レーヨンのラビング布[吉川加工社製 商品名「YA181R」]を用いてラビング処理して配向基材とした。該配向基材のラビング処理表面に、ワイヤーバーを用いて前記液晶性組成物溶液を均一に塗布し、塗布層を形成した。
【0099】
このようにして基材上に形成された前記塗布層を、配向基材上とともに80℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥させ、傾斜配向した固化層を形成した。
【0100】
得られた固化層の表面に、コンベア式紫外線照射装置を用いて、室温(25℃)にて波長365nmにおける照射光量が600mJ/cmとなるように空気雰囲気下で紫外線を照射し、傾斜配向した液晶硬化層を形成した。
【0101】
このようにして、基材と液晶硬化層とを備えるOプレートを作製した。液晶硬化層を基材から剥離して物性を測定したところ、空気界面のチルト角(θair)=0°、基材界面のチルト角(θAL)=70°、平均チルト角=35°であった。また、正面レターデーションは90nmであった。
【0102】
(二軸性位相差層)
既に延伸してなる、ノルボルネン系樹脂を含有する二軸性の位相差フィルム[オプテス社製 商品名「ゼオノアフィルム」、正面レターデーションは130nm、Nz係数1.5]を用いた。
【0103】
(偏光子)
ヨウ素系の偏光子の一方主面に厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム、他方主面に厚み40μmのラクトン環構造アクリル系フィルム(特開2006−171464号公報の実施例1に従って作成したもの)が、各々ポリビニルアルコール系接着剤を介して積層された偏光板[日東電工社製 商品名「NPF−L−CAT1465CU」]を用いた。
【0104】
(液晶セル)
TNモードの液晶セルを備えた液晶表示装置[BENQ製 17型液晶モニタ(型番:FP71+)]から、液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた光学フィルムを全て取り除いて、上記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄して用いた。
【0105】
(積層偏光板の作成)
前記の二軸性位相差層の一方主面に、前記Oプレートの液晶硬化層を、Oプレートの遅相軸方向と二軸性位相差層の遅相軸方向が直交するように、配向基材を除去しながらアクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して転写して積層フィルムとした。このようにして得られた積層フィルムのOプレート側主面と前記偏光板のラクトン環構造アクリル系フィルム側が対向し、かつ、Oプレートの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向が平行となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、積層し、二軸性位相差層、Oプレート、偏光子がこの順で積層された積層偏光板を得た。このようにして得られた積層偏光板においては、Oプレートの棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)は70°であり、二軸性位相差層側のチルト角(θ)は0°であった。
【0106】
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた積層偏光板を、前記液晶セルの視認側の表面に、偏光子の吸収軸方向と、液晶セルの視認側の基板の配向処理方向とが直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して積層した。次に、同様の積層偏光板を、前記液晶セルの光源側の表面に、偏光子の吸収軸方向と、液晶セルの光源側の基板の配向処理方向とが直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して積層して、液晶パネルを得た。
【0107】
得られた液晶パネルの偏光子、Oプレート、二軸性位相差層、液晶セルの光学的な軸関係を図7に模式的に示す。図7に示しているように、液晶パネルの画面左右方向の右方位を方位角0°、反時計回りを正と定義している。また、偏光子、Oプレート、二軸性位相差層、液晶セルの積層順序、並びに光学的な軸関係を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
このように作製した液晶パネルを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置のバックライトユニットの光源を点灯し、30分経過した後、コントラストを測定した。図8にこの液晶表示装置のコントラスト等高線図を示す。なお、図8及び、後述する図9〜11において、最も内側(極角0°に近い方)の等コントラスト曲線(「CR=100」と表示)が、コントラスト100を表している。
【0110】
[比較例1]
(積層偏光板の作成)
前記実施例1と同様の二軸性位相差層、Oプレート、及び偏光板を、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を用いて、Oプレート、二軸性位相差層、偏光子がこの順で積層された積層偏光板を得た。なお、Oプレートの積層に際しては、実施例1と同様の転写法を用い、Oプレートの棒状液晶化合物の二軸性位相差層側のチルト角(θ)が70°、空気界面側(液晶セルと対向する側)のチルト角(θ)が0°となるように積層した。
【0111】
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた積層偏光板を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶セルの、視認側、光源側のそれぞれに、偏光子の吸収軸方向と、液晶セルの基板の配向処理方向とが直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して積層偏光板を積層して、液晶パネルを得た。この液晶パネルの偏光子、二軸性位相差層、Oプレート、液晶セルの積層順序、並び光学的な軸関係を表2に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
上記液晶パネルを用いた以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。図9にこの液晶表示装置のコントラスト等高線図を示す。
【0114】
[比較例2]
(積層偏光板の作成)
Oプレートを用いずに、前記実施例1と同様の二軸性位相差層、及び偏光板を用い、両者を、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を用いて、積層偏光板を得た。
【0115】
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた積層偏光板を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶セルの、視認側、光源側のそれぞれに、偏光子の吸収軸方向と、液晶セルの基板の配向処理方向とが直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して積層偏光板を積層して、液晶パネルを得た。この液晶パネルの偏光子、二軸性位相差層、液晶セルの積層順序、並び光学的な軸関係を表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
上記液晶パネルを用いた以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。図10にこの液晶表示装置のコントラスト等高線図を示す。
【0118】
[比較例3]
(積層偏光板の作成)
二軸性位相差層を用いずに、前記実施例1と同様の、Oプレート、偏光板を用い、両者を、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を用いて、積層偏光板を得た。なお、Oプレートの積層に際しては、実施例1と同様の転写法を用い、Oプレートの棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)が70°、空気界面側(液晶セルと対向する側)のチルト角(θ)が0°となるように積層した。
【0119】
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた積層偏光板を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶セルの、視認側、光源側のそれぞれに、偏光子の吸収軸方向と、液晶セルの基板の配向処理方向とが直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して積層偏光板を積層して、液晶パネルを得た。この液晶パネルの偏光子、Oプレート、液晶セルの積層順序、並び光学的な軸関係を表4に示す。
【0120】
【表4】

【0121】
上記液晶パネルを用いた以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。図11にこの液晶表示装置のコントラスト等高線図を示す。
【0122】
[評価]
図12に、実施例1及び比較例1〜3の液晶表示装置の方位角90°−270°方向(上下方向)における、コントラストの極角依存性のグラフを示す。図12の(b)は、図12の(a)の縦軸(コントラスト)のスケールを変更したものである。
【0123】
コントラストが30以上となる領域を液晶表示装置の「視野角」と定義した場合における、実施例1、比較例1〜3の液晶表示装置の上下方向の視野角を表5に示す。
【0124】
【表5】

【0125】
図12の(a)並びに(b)、及び表5から明らかなように、実施例1の液晶表示装置は上下方向において、視認方向の極角が大きくなった場合でも、コントラストが高く、視認性が高いのに対し、比較例の液晶表示装置の上下方向のコントラストは十分といえるものではなかった。実施例1と比較例1とを比較すると明らかなように、Oプレートと二軸性位相差層との配置順序によって、上下方向の視認性が大きく変化する。また、Oプレート、あるいは二軸プレートのどちらか一方を用いない比較例2、3においても、十分な視認性が得られないことがわかる。
【0126】
以上のように、本発明の液晶表示装置は、画面の上下方向等、所定の一方向におけるコントラストが高く、インフォメーションディスプレイ等に好適に用いることができる。また、TNモードの液晶パネルを用いる場合、製造が容易、かつ安価であるため、量産性及びコストの面でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の液晶表示装置における液晶パネルの概略斜視図である。
【図2】TNモードの液晶セルにおける液晶分子の配向状態を説明する概略斜視図である。
【図3】TNモードの液晶セルにおける液晶分子の平均配向方向及び平均配向方位を説明するための概念図である。
【図4】ハイブリッド配列における棒状液晶化合物分子の代表的な配列状態を説明する横式図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図7】実施例1の液晶パネルの、各層の光学的な軸関係を示す模式図である。
【図8】実施例1の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。
【図9】比較例1の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。
【図10】比較例2の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。
【図11】比較例3の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。
【図12】実施例1及び比較例1〜3の液晶表示装置の方位角90°−270°方向(上下方向)における、コントラストの極角依存性を表すグラフである。(b)は(a)の縦軸方向(コントラスト)を拡大したものである。
【符号の説明】
【0128】
1、2 配向処理(ラビング)方向
3、4 吸収軸(方向)
5、6 遅相軸(方向)
7、8 ディレクタ方向
7’、8’ 遅相軸(方向)
9 平均配向方向
9’ 平均配向方位
10 液晶セル
11 第1の配向処理基板
12 第2の配向処理基板
13 液晶層
21 第1の偏光子
22 第2の偏光子
31 第1のOプレート
32 第2のOプレート
41 第1の二軸性位相差層
42 第2の二軸性位相差層
50 等方性光学素子
60、60’ 透明保護層
70、70’ 表面処理層
80 バックライトユニット
81 光源
82 反射フィルム
83 拡散板
84 プリズムシート
85 輝度向上フィルム
100 液晶パネル
200 バックライトユニット
300 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向処理されてなる、第1の配向処理基板と第2の配向処理基板との間に、電界が存在しない状態でツイスト配列に配向した液晶分子を含む液晶層を有する液晶セルと、
該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、
該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、
該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された、第1のOプレートと、
該液晶セルと該第2の偏光子との間に配置された、第2のOプレートと、
該液晶セルと該第1のOプレートとの間に配置された、第1の二軸性位相差層と、
該液晶セルと該第2のOプレートとの間に配置された、第2の二軸性位相差層と、を有し、
該液晶セルにおける液晶層の、電界が存在しない状態における平均配向方向が、画面の上下方向と等しい液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1のOプレート及び、第2のOプレートは、いずれも棒状液晶化合物がハイブリッド配列した固化層又は硬化層であり、かつ、該棒状液晶化合物の偏光子側のチルト角(θ)が、二軸性位相差層側のチルト角(θ)よりも大きい、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶セルの第1の配向処理基板の配向処理方向と、第2の配向処理基板の配向処理方向が直交する、請求項1または2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1のOプレートの遅相軸方向と、上記第1の偏光子の吸収軸方向とが平行であり、かつ、前記第2のOプレートの遅相軸方向と、前記第2の偏光子の吸収軸方向とが平行である、請求項1〜3のいずれか記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の二軸性位相差層の遅相軸方向と、前記第1の偏光子の吸収軸方向とが直交し、かつ、前記第2の二軸性位相差層の遅相軸方向と、前記第2の偏光子の吸収軸方向とが直交する、請求項1〜4のいずれか記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の偏光子の吸収軸方向と、前記第1の配向処理基板の配向処理方向とが平行であり、かつ前記第2の偏光子の吸収軸方向と、前記第2の配向処理基板の配向処理方向とが平行である、請求項1〜5のいずれか記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の偏光子と、前記第1のOプレートとの間に存在する媒体、前記第2の偏光子と、前記第2のOプレートとの間に存在する媒体の、少なくとも一方が光学等方性である、請求項1〜6のいずれか記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記液晶セルの第1の配向処理基板及び第2の配向処理基板が、それぞれ、液晶層側に配向膜を有する、請求項1〜7のいずれか記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記配向膜がラビング処理されている、請求項8記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−157244(P2009−157244A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337648(P2007−337648)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】