説明

液晶表示装置

【課題】 低電圧駆動が可能で、且つ視野角特性が改善されたTNモード液晶表示装置の提供。
【解決手段】 一対の基板(14a,14b)と、該一対の基板のそれぞれの内面に形成された配向処理された配向膜と、該一対の基板間に液晶層(16)とを有する液晶素子(LC)であって、前記液晶層(16)が、少なくとも液晶材料と、該液晶材料が前記配向膜に施された配向処理により決定されるユニフォームツイスト構造を形成するときのねじれ方向とは反対方向のねじれを誘発する光学活性材料とを含有し、駆動時にユニフォームツイスト構造である液晶素子;及びディスコティック液晶化合物を少なくとも含有する組成物から形成された層を少なくとも含む位相差膜 (12a,12b);を有することを特徴とする液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧駆動が可能な液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のTNモード液晶表示装置では、液晶をユニフォームツイスト状態とし、その状態で駆動している。ユニフォームツイスト状態とは、液晶材料のねじれる方向が上下の配向膜上でプレチルト角の立ち上がる方向、即ちラビング処理の方向で決定する配向状態である。これに対して、液晶に、ラビング処理で決定するねじれ方向と反対方向のねじれを誘発する光学活性物質を添加すると、スプレツイスト状態になる。このスプレツイスト状態の液晶に飽和電圧を印加すると、ユニフォームツイスト状態に転移する。このユニフォームツイスト状態のTNモード液晶セルは、通常のユニフォームツイスト状態のTNモード液晶セルを駆動するよりも低電圧駆動が可能である。特許文献1には、このユニフォームツイスト状態を利用することにより、低電圧駆動が可能な新規なTNモード液晶表示装置が提案されている(以下、このモードを「RTNモード」という)。
【特許文献1】特開2007−293278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1には、RTNモード液晶表示装置の視野角特性についてはなんら言及がない。
本発明は、視野角特性が改善されたRTNモード液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明は、一対の基板と、該一対の基板のそれぞれの内面に形成された配向処理された配向膜と、該一対の基板間に液晶層とを有する液晶素子であって、前記液晶層が、少なくとも液晶材料と、該液晶材料が前記配向膜に施された配向処理により決定されるユニフォームツイスト状態になるときのねじれ方向とは反対方向のねじれを誘発する光学活性材料とを含有し、駆動時にユニフォームツイスト状態にある液晶素子;及びディスコティック液晶化合物を少なくとも含有する組成物から形成された層を少なくとも含む位相差膜;を有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、低電圧駆動が可能であるのみならず、視野角特性が改善されたRTNモード液晶表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
まず、本明細書で使用する用語についてその定義を説明する。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(10)及び式(11)よりRthを算出することもできる。
【0007】
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0008】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 210ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、レターデーション等の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0009】
本発明はRTNモード液晶表示装置に関する。図1に本発明のRTNモード液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。図1の液晶表示装置は、一対の偏光子10a及び10bと、その間にRTNモード液晶セル(液晶素子)LCとを有する。偏光子10aと液晶セルLCとの間、及び偏光子10bと液晶セルLCとの間に、それぞれ位相差膜12a及び12bを有する。なお、図1中省略したが、偏光子10a及び10bは、それぞれ外側表面に、セルロースアシレートフィルム、熱可塑性樹脂フィルム、及びノルボルネン系ポリマーフィルム等の保護フィルムを有しているのが好ましい。また、偏光子10a及び10bと、位相差膜12a及び12bとの間にも、偏光子10a及び10bそれぞれの保護フィルムが配置されているのが好ましいが、位相差膜12a及び12bが、保護フィルムとして機能し得るポリマーフィルムを含む態様では、偏光子10a及び10bそれぞれと、位相差膜12a及び12bそれぞれとの間には、保護フィルムは不要である。
【0010】
液晶セルLCは一対の基板14a及び14bと、その間に液晶層16を有する。基板14a及び14bの内面には、それぞれラビング処理を施された配向膜を有し、それぞれのラビング方向15a及び15bは45°方向(表示面左右方向が0°方向、上下方向が90°方向)でおおむね直交関係(70〜110°程度)にある。偏光子10a及び10bは、それぞれの吸収軸11a及び11bを45°方向においておおむね直交関係で配置されている。即ち、基板14aの内面にある配向膜のラビング軸15aと偏光子10aの吸収軸11aとおおむね平行であり、及び基板14bの内面にある配向膜のラビング軸15bと偏光子10bの吸収軸11bとはおおむね平行である。
【0011】
位相差膜12a及び12bは、それぞれディスコティック液晶を少なくとも含有する組成物を硬化させて形成した層からなる、又はそれを含む位相差膜である。その形成に、配向膜(不図示)を利用するのが好ましい。配向膜にはラビング処理が施され、そのラビング軸に応じて、ディスコティック液晶の分子が配向し、その状態に固定されている。ディスコティック液晶分子の配向は、液晶セルLCの視野角を補償するのに要求される光学特性を示すように調整されている。位相差膜の光学特性の詳細は後述する。位相差膜12aの作製に利用された配向膜のラビング方向13aは偏光子10aの吸収軸11aとおおむね平行であり、及び位相差膜12bの作製に利用された配向膜のラビング方向13bは偏光子10bの吸収軸11bとおおむね平行である。
なお、図1では、位相差膜12a及び12bを単層体として示したが、上記した通り、位相差膜12a及び12bは、前記組成物を配向させるのに利用される配向膜や、前記組成物からなる層を支持するポリマーフィルム等を含んでいてもよく、即ち積層体であってもよい。
【0012】
RTNモード液晶セルLCの液晶層16は、少なくとも液晶材料と光学活性材料とを含有する。光学活性材料は、液晶材料が基板14a及び14bの内面にある配向膜に施されたラビング処理で決定されるねじれ方向とは反対方向のねじれを誘発する性質を有する。その添加によって、液晶材料は、ユニフォームツイストとは反対のねじれ配向状態である、スプレツイスト状態になるが、電圧の印加によって、ユニフォームツイスト状態に転移する。RTNモードでは、このユニフォームツイスト状態で駆動することが特徴である。液晶層16をこの状態で駆動させることにより、低電圧での駆動が可能である。RTNモード液晶セル(液晶素子)については、上記特許文献1に詳細が記載されている。本発明のRTNモード液晶素子の例及びその駆動方法、並びに作製方法及びそれに用いる材料については、特許文献1中に記載の内容と同様である。
【0013】
図1の液晶表示装置では、位相差膜12a及び12bにより、液晶層16の視野角依存性が改善されているので、RTNモードの利用により低電圧駆動が可能であるのみならず、視野角特性にも優れる。
【0014】
以下、本発明に利用される位相差膜について説明する。本発明では、ディスコティック液晶化合物を含有する組成物からなる層を少なくとも有する位相差膜を利用する。本発明では、図1に示す通り、液晶セルを挟んで2つの位相差膜を配置するのが好ましく、図1に示す軸関係で、同一の位相差膜を配置するのがより好ましい。
図1に示す態様では、2つの位相差膜のそれぞれのRe(550)は0〜100nmであるのが好ましく、10〜50nmであるのがより好ましい。また、Rth(550)は、0〜200nmであるのが好ましく、20〜150nmであるのがより好ましい。
【0015】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明では、位相差膜の作製にディスコティック液晶化合物を用いる。
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0016】
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性分子から形成する位相差膜は、最終的に位相差膜に含まれる化合物がディスコティック液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0017】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(5)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(5)
D(−L11n
式(5)において、Dは円盤状コアであり;L1は二価の連結基であり、Q1は重合性基であり、そして、nは4〜12の整数である。
【0018】
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L1)と重合性基(Q1)との組み合わせを意味する。
【化1】

【0019】
ディスコティック液晶化合物の分子をハイブリッド配向させると、Re及びRthが前記好ましい範囲の位相差膜を形成することができる。ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度すなわち傾斜角が、位相差膜の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に局所的にはランダム性をもちつつ増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
【0020】
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
【0021】
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50重量%の範囲にあり、5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と液晶組成物からなる層との間の密着性を高めることができる。
【0022】
前記組成物中には、セルロースエステルを添加してもよい。セルロースエステルを、液晶性化合物を含有する組成物中に混合することにより、該組成物を塗布する際にハジキが発生するのを抑制することができる。さらに、セルロースエステルは、液晶性化合物の傾斜角を制御するのに寄与する。好適に使用可能なセルロースエステルには、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどが含まれる。中でも、セルロースアセテートブチレートが好ましく、さらに、ブチリル化度が40%以上であるセルロースアセテートブチレートがより好ましい。添加量については、ディスコティック液晶性化合物の総量に対して重量百分率で、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.05〜10%、特に好ましくは0.05〜5%である。
【0023】
前記組成物中には、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と下記一般式(1a)で表される繰り返し単位とを含む共重合体(ポリマーA)を添加してもよい。ポリマーAは主に、配向膜側界面近傍の液晶性分子の傾斜角を調整するのに寄与する。
【化2】

【0024】
式中、R1a、R2aおよびR3aは、それぞれ、水素原子または置換基を表し;Laは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基または下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し、
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4a−(R4aは水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5a)−(R5aはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す)、アルキレン基およびアリーレン基;Qaはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、またはホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。
【0025】
前記ポリマーAの添加量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8重量%であるのが好ましく、0.01〜5重量%であるのがより好ましく、0.05〜1重量%であるのがさらに好ましい。
【0026】
前記組成物は、前記ポリマーAを2種以上含有していてもよい。また、前記組成物は、前記ポリマーAとともに、フルオロ脂肪族基を含有するポリマーBをさらに含有しているのが好ましい。ここで、ポリマーBは、フルオロ脂肪族基を有するポリマーであり、中でも、前記一般式(2a)で表される繰り返し単位と、下記一般式(3a)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式(3a)において、R3aは水素原子またはメチル基を表し、Yaは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、酸素原子、イオウ原子または−N(R5a)−等を採用することができる。ここでR5aは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。R5aは、水素原子およびメチル基であるのが好ましい。Yaは、酸素原子、−N(H)−および−N(CH3)−が特に好ましい。R4aは置換基を有してもよいポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有しても良い炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。
【0029】
また、前記位相差膜は、ディスコティック液晶性化合物と、一般式(1b)で表される重量平均分子量5000以上20000未満のポリマーCの少なくとも一種と、一般式(1b)で表される重量平均分子量20000以上のポリマーDの少なくとも一種とを含有する組成物を利用して、作製することができる。
【0030】
ポリマーC及びDは、液晶性化合物の傾斜角制御剤、特に空気界面側の傾斜角制御剤として機能する。
【0031】
【化4】

【0032】
一般式(1b)中、Aは水素結合性基を有する繰り返し単位であり、式中にi(iは1以上の整数である)種類含まれる。Bは重合性基を有する繰り返し単位であり、式中にj種類含まれ、Cはエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返しであり、式中にk種類含まれるが、jとkが同時に0になることはない。即ち、B及びCの少なくとも一方は必ず少なくとも1種類含まれる。a、b及びcは重合比を表す重量百分率で、i種類のAの総量の比率であるΣaiは1〜99重量%であり、j種類のBの総量の比率であるΣbjは0〜99重量%であり、k種類のCの比率であるΣckは0〜99重量%であるが、上記と同様、Σbj及びΣckが同時に0重量%になることはなく、少なくとも一方は0重量%を超え99重量%以下含まれる。
【0033】
さらに詳細に説明すると、上記一般式(1b)中、Aは下記一般式(2b)で表される水素結合性極性基を含有するモノマー(以下「モノマーA」とも言う)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位A」とも言う)を表す。
【0034】
【化5】

【0035】
一般式(2b)中、R1b、R2b及びR3bはそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)又はL1b−Q1bで表される基を表し、L1bは2価の連結基を表し、Q1bは水素結合性基を有する極性基を表す。
【0036】
上記一般式(1b)において、Bは下記一般式(3b)で表される重合性基を含有するモノマー(以下「モノマーB」とも言う)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位B」とも言う)を表す。
【0037】
【化6】

【0038】
一般式(3b)中、R4b、R5b及びR6bは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、−L2b−Q2bで表される基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L2b−Q2bで表される基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましいのは水素原子、炭素数1〜2のアルキル基である。該アルキル基の具体例としては、一般式(2b)中、R1b、R2b、及びR3bで表された具体例を挙げることができる。該アルキル基の置換基としては、一般式(2b)中、R1b、R2b、及びR3bで表されたアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0039】
上記一般式(1b)のCは、エチレン性不飽和モノマー(以下「モノマーC」とも言う)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位C」とも言う)である。例えば、下記に例示したモノマーC群から独立かつ自由に組み合わせた重合体として選択することが可能である。使用可能なモノマーには特に制限はなく、通常のラジカル重合反応が可能なものであれば、好適に用いることができる。
【0040】
モノマーC群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、及び1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど;
(4)不飽和ニトリル類
リロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルブニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、下記一般式(6b)で表される化合物:
【化7】

【0041】
一般式(6b)中、R9b及びR10bはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基(好ましくは、メチル基又はエチル基)を表す。
など。
【0042】
ポリマー中に含まれる上記繰り返し単位A、B及びCは、それぞれ、1種単独でも、2種以上の繰り返し単位が存在していてもよい。また、B及びCのうち一方は存在しなくてもよいが、A、B及びCの全てを少なくとも1種類含有するのが好ましい。上記モノマーAは、例えば、一般式(1b)において、iが1のとき、Aiは、一種類のモノマーA(A1)のみがa1(=a)重量%含まれる。また、iが2のとき、Aiは、A1及びA2の2種類のモノマーAが、それぞれ、a1重量%及びa2重量%(a=a1+a2)含まれる。以下、モノマーB及びCについても同様である。さらに、i、j及びkは、3以上の整数であってもよく、好ましくは、iは1〜5の整数である。より好ましくは、1又は2である。そして、モノマーAの総含量Σaは1〜99重量%、モノマーBの総含量Σbは0〜99重量%、モノマーCの総含量Σcは0〜99重量%の数値であるが、好ましくはΣaが5〜90重量%、Σbが5〜90重量%、Σcが5〜90重量%であり、特に好ましくはΣaが10〜80重量%、Σbが10〜80重量%、Σcが10〜80重量%である。さらに、モノマーA、B及びCの組成比(重量)は、モノマーAを1としたとき、モノマーBが0.1〜5、モノマーCが1〜10であるのが好ましい。
【0043】
前記位相差膜は、支持体表面に直接又は配向膜表面に、ディスコティック液晶化合物等を含有する組成物を適用して作製することができる。前記組成物は、液晶性化合物、および種々の添加剤を含有する。これらの原料を溶媒に溶解して塗布液として、支持体表面等に塗布するのが好ましい。前記位相差膜の作製に利用される配向膜については特に制限はなく、ポリビニルアルコール等のポリマー層を形成した後、該ポリマー層の表面を所定の方向にラビング処理することによって形成された配向膜などが利用できる。配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。前記配向膜の膜厚は、10μm以下であるのが好ましい。なお、配向膜は位相差膜の作製時のみに用い、位相差膜を作製した後は、剥離可能な場合は剥離してもよい。例えば、仮支持体上に配向膜を形成し、配向膜上で前記層を形成した後に、該層を、透明支持体に転写して、位相差膜を作製してもよい。
【0044】
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学フィルムを作製する場合には、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることが更に好ましい。
【0045】
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0046】
前記塗布液を、支持体表面もしくは配向膜表面に塗布した後、液晶性分子を所望の配向状態にする。
液晶性化合物を、所望の配向状態とした後、その配向状態に固定して、位相差膜を作製する。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。塗布液中には、液晶性化合物の固定化に寄与する、重合性モノマーや重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合性モノマーとしては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。上記化合物の添加量は、液晶性化合物に対して、一般に1〜50重量%であり、5〜30重量%であるのが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が3以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と前記層との間の密着性を高めることができる。
【0047】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
【0048】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20重量%であるのが好ましく、0.5〜5重量%であるのがさらに好ましい。
【0049】
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0050】
この様にして形成された前記組成物からなる層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることがよりさらに好ましい。また、前記層上に、保護層を設けてもよい。
【0051】
前記位相差膜は、前記液晶組成物からなる層を支持する支持体を有していてもよい。該支持体は、ガラス又は透明なポリマーフィルムであることが好ましい。前記支持体は、光透過率(400〜700nm)が80%以上、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。更に好ましくは光透過率が86%以上、ヘイズが1.0%以下である。ポリマーフィルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースのモノ〜トリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックス(いずれも商品名))を用いてもよい。又、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開第00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、前記基板に用いることができる。
【0052】
前記支持体として用いられるポリマーフィルムの作製方法については特に制限はない。溶融成形方法及び溶液成形方法のいずれも利用することができる。
【0053】
前記位相差膜は、偏光子である直線偏光膜と一体化した楕円偏光板として、液晶表示装置に組み込むことができる。例えば、長尺状のポリマーフィルム上に、配向膜を連続的に形成し、その上にディスコティック液晶化合物を含む塗布液を塗布して、配向及び固定化を連続的に行うことで、長尺状の位相差膜が得られる。これと、長尺状の偏光膜とをロール・トゥ・ロール法で貼り合せることにより、楕円偏光板を連続的に作製することができる。該楕円偏光板は、ロール状に巻き取られ、その後、保管・搬送等され、使用時に所望の大きさに切断されて用いられる。
【0054】
前記偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜等、一般的なものを用いることができる。偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在、汎用の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、質量基準であるものとする。
【0056】
[実施例1]
(ポリマー基材の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
───────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(重量部) 内層 外層
───────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100重量部 100重量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8重量部 0.8重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤)
3.9重量部 3.9重量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 293重量部 314重量部
メタノール(第2溶媒) 71重量部 76重量部
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5重量部 1.6重量部
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0重量部 0.8重量部
下記レターデーション上昇剤 1.4重量部 0重量部
────────────────────────────────────
【0057】
【化8】

【0058】
得られた内層用ドープおよび外層用ドープを三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70重量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3重量%のセルロースアセテートフィルム(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフイルム(CF−02)について、光学特性を測定した。
得られたポリマー基材(PK−1)の幅は1340mmであり、厚さは、80μmであった。エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長630nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、8nmであった。また、波長630nmにおけるレターデーション値(Rth)を測定したところ、93nmであった。
【0059】
作製したポリマー基材(PK−1)を2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。このPK−1の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
【0060】
このPK−1上に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10重量部
水 371重量部
メタノール 119重量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5重量部
【0061】
【化9】

【0062】
ポリマー基材(PK−1)の遅相軸(波長632.8nmで測定)と平行方向に配向膜にラビング処理を実施した。
【0063】
(位相差層の形成)
位相差層形成用組成物
下記のディスコティック液晶性化合物 41.01重量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06重量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0・2、イーストマンケミカル社製) 0.69重量部
下記P−33(ポリマーA) 0.18重量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35重量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45重量部
【0064】
【化10】

【0065】
上記位相差層形成用組成物を、102重量部のメチルエチルケトンに溶解し塗布液とし、これを配向膜上に、#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布し、130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、位相差膜(F−1)を作製した。
この位相差膜のRe(550)及びRth(550)はそれぞれ、48nm及び85nmであった。
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた位相差膜のムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
【0066】
(偏光子の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。この溶液をダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜した。
【0067】
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で長手方向に延伸して、そのままよう素0.5g/L、よう化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、よう化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽において20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してよう素系偏光子(H−1)を得た。偏光子は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
【0068】
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で作製した位相差膜F−1をポリマー基材(PK−1)面で偏光子(H−1)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフイルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
【0069】
偏光子の吸収軸とポリマー基材(PK−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。このようにして偏光板HB−1をそれぞれ作製した。
【0070】
(RTN液晶表示装置の評価)
図1に示す構成と同様の液晶表示装置を作製した。まず2枚の基板14a及び14bの内側にそれぞれ配向膜(不図示)を形成した。この配向膜はプレチルト角17度を示す配向膜であり、プレチルト角17度のポリイミド樹脂からなる配向膜である。配向処理は通常のラビング処理で行った。ラビング処理の方向は図1に示す通りである。液晶層16には、液晶材料としてメルク(株)社製ZLI2293を使用した。この液晶材料の屈折率異方性は0.1362である。液晶層16の厚みは5μmとした。従って、液晶層16のリタデーションR=Δndは0.681μm(0.1362×5μm)である。液晶材料に、ユニフォームツイスト捩じれ方向とは逆の捩じれを誘起する光学活性物質(メルク(株)社製S−811を使用)を添加した。光学活性物質の強さを示す螺旋ピッチpは60μmとした。この様にして液晶セルLCを作製した。
液晶層16は、光学活性物質の添加によりスプレイツイスト状態になったが、電圧を印加することにより、ユニフォームツイスト状態に転移し、電圧の印加を止めても、その状態を維持した。
【0071】
この液晶セルLCの基板14a、14bの外側表面に、上記で作製した各偏光板を、位相差膜を基板表面側として貼合し、RTNモード液晶表示装置を作製した。
作製した各液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、左右方向コントラスト比10以上の領域を評価した。下記表に評価結果を示す。下記表中、「右(又は左)θ度」とは、画面法線方向から右(又は左)方位に画面方向へθ度回転させた領域において、コントラスト比が10以上であったことを意味する。
【0072】
【表1】

【0073】
上記表に示す結果から、本発明の実施例のRTNモード液晶表示装置は、位相差膜を有しない比較例1のRTNモード液晶表示装置と比較して、視野角が格段に改善されていることが理解できる。ディスコティック液晶化合物を少なくとも含有する組成物から形成された層を有する位相差膜を利用すると、RTNモード液晶表示装置の視野角特性を改善できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図、及び各層の光学的軸の方向を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
10a、10b 偏光子
11a、11b 吸収軸
12a、12b 位相差膜
13a、13b 位相差膜作製時に利用されるラビング方向
14a、14b 基板
15a、15b 液晶層用ラビング方向
16 液晶層
LC 液晶層(液晶素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、該一対の基板のそれぞれの内面に形成された配向処理された配向膜と、該一対の基板間に液晶層とを有する液晶素子であって、前記液晶層が、少なくとも液晶材料と、該液晶材料が前記配向膜に施された配向処理により決定されるユニフォームツイスト状態になるときのねじれ方向とは反対方向のねじれを誘発する光学活性材料とを含有し、駆動時にユニフォームツイスト状態にある液晶素子;及びディスコティック液晶化合物を少なくとも含有する組成物から形成された層を少なくとも含む位相差膜;を有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−180879(P2009−180879A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18895(P2008−18895)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】