説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置において、液晶モジュールの一部を構成する偏光板の変形に伴う表示品位の劣化を防止した液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2の基板15、16間に挟持された液晶層14と、前記第1の基板15の外側に配置された上側偏光板18と、この上側偏光板18の外側に固定配置された保護板11とを備え、前記上側偏光板18の外周部186と前記保護板11とを非固定構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に輝度むらの抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置として液晶表示装置が多用されている。特に液晶表示装置は、薄型,軽量及び省電力であることからTV受像機、携帯端末、車載用機器等の表示部として用いられている。
【0003】
これらの液晶表示装置において、特に携帯端末用液晶表示装置ではその使用形態から、屋外視認性の確保、液晶モジュール強度向上、薄型化の確保等の要求が強い。
【0004】
しかしながら、これらの要求の中、例えば液晶モジュール強度向上と薄型化は相反する要求を求められるケースが存在する。例えば、薄型化では液晶モジュール構成部材の薄肉化は避けられず、これは一般には強度低下を来たす傾向にあり、液晶モジュール強度向上及び安全性の確保に逆行する。
【0005】
又、液晶モジュール構成部材の薄肉化は構成部材の変形を招く恐れがあり、変形に伴う例えば輝度むら等の発生により表示品位が低下し、屋外視認性の確保が困難となる等の問題が有った。
【0006】
これらの問題に加え、更に携帯という使用形態から携帯使用者に対する安全性の確保は重要課題となっている。この種の液晶表示装置を開示したものとしては、特許文献1を挙げることができる。
【特許文献1】特開平9−318932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す液晶表示装置は、手書入力用やナビゲーションシステム等に用いる車載用等に関するもので、液晶表示パネルと透明保護板の配置にかかる構成が開示されている。
【0008】
図7(a)、(b)は、特許文献1に関連する従来の液晶表示装置を説明するための模式断面図、及びその要部拡大断面図である。図7(a)、(b)において、液晶層71を挟持するTFT基板72とカラーフィルタ(CF)基板73は相似形で略矩形状を呈しており、しかもTFT基板72はCF基板73の端面731より突出した搭載部721を有してCF基板73より大形に形成されている。又、これらTFT基板72及びCF基板73の外側にはそれぞれ下側偏光板74と上側偏光板75とが配置されている。
【0009】
前記下側偏光板74の外側の近接した位置には、光源、導光板、拡散板、レンズ等の組み合わせからなるバックライトユニット76が配置され、更に前記TFT基板72の前記搭載部721の上表面には駆動回路等のドライバー77等が配置されている。符号78は液晶モジュールを示す。
【0010】
一方、上側偏光板75の外側の表示面上部には透明板、例えばガラス板やアクリル板等からなる保護板80を配置し、この保護板80は前記液晶モジュール78の全体を覆い上側偏光板75の外面と接着剤81を介して全面接着固定されている。
【0011】
図7(a)、(b)に示す液晶表示装置では、液晶モジュール78を保護板80で覆い、液晶モジュール78を外部の衝撃から保護する構成となっている。従って、一般には前記保護板80の板厚は1mm程度或はそれ以上で、前記CF基板73やTFT基板72に比べ数倍乃至十数倍程度の厚を有する構成となっている。
【0012】
ところが、この図7(a)、(b)に示すような保護板を備えた構成の液晶表示装置において、画面周辺部に輝度むらが発生する問題が生じた。この問題の原因は、CF基板73が図7(b)に一点斜線732で示すような形状に変形し、これに伴ってTFT基板72との間隔が変位することに一因があることが判明した。前記CF基板73の変形原因を調査した結果、上側偏光板75の偏光子層の性状に起因することが判明した。
【0013】
この上側偏光板75を含む一般的な偏光板の構成は、図8に模式的に示すような3層構造を基本構造としている。すなわち、図8に示すように、上側偏光板75は、偏光子層751を中心にその外側を保護フィルム層752で狭持し、この保護フィルム層752の外側にハードコート層753と粘着層754を配置した構成となっている。
【0014】
このような構成の偏光板では、結露試験(高湿度下で温度サイクル試験)で偏光子層751が収縮する変化が起こり、これに伴って偏光板先端付近では偏光板の厚さが増大する。この現象を図7(b)に模式的に示す。
【0015】
図7(b)において収縮した偏光子層751の先端部分は集積部755を形成し、この集積部755部分で保護フィルム層753を含めた偏光板厚さが増大する。この偏光板厚さの増大に伴い、保護板80とCF基板73双方に外側方向への力が作用するが、保護板80は前述した板厚の関係で変形しにくく、力はCF基板73を変形させる方向に働く。この結果、CF基板73が一点鎖線732で示すように変形し、TFT基板72との間隔を変位させ、画面周辺部に輝度むらを発生させる原因となっている。
【0016】
輝度むらの発生は表示品位の低下を招き、視認性の確保や液晶モジュール強度の確保等に関して依然として解決すべき課題が残されている。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は液晶表示装置、特に携帯端末用液晶表示装置において、輝度むらの発生を抑制し、屋外視認性の確保、液晶モジュール強度向上、薄型化及び安全性の確保を可能とした液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために、本発明による液晶表示装置は、対向配置される一対の基板間に液晶層を介挿し前記基板の外側に偏光板を配置した液晶モジュールと、この液晶モジュールを覆う寸法の透明な保護板を前記偏光板を覆って固定配置し、前記偏光板の外周部を前記保護板又は前記基板と非固定構造とした構成を特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、偏光板の外周部をこの外周部を挟持する保護板又は基板と非固定構造としたことにより、偏光板の厚さ増大に伴う外側方向への力は偏光板と保護板又は基板間の空隙によって吸収されてCF基板の変形発生まで及ぶことは無く、従ってCF基板とTFT基板間の間隔は一定に確保でき、輝度むらの発生を抑制して視認性の確保、薄型化及び安全性の確保を可能とした。又、本願発明によれば、保護板の外表面に飛散防止シートを配置したことにより、視認性の確保、薄型化及び安全性の確保を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1乃至図3は、本発明による液晶表示装置の実施例を説明する模式図であり、図1は本発明の実施形態に係る携帯電話機の全体構成の概略を示す斜視図、図2は図1の要部平面図、図3(a)は図2のA−A線に沿った断面図、図3(b)は図3(a)の要部拡大断面図である。図1乃至図3において、先ず、図1において全体を斜視図で示す携帯電話機100は、表示面となる液晶表示部1を配置した第1の筐体2と、操作ボタン3を有する操作部4を配置した第2の筐体5をヒンジ部6で折畳み可能に結合した構成である。
【0022】
前記表示面となる液晶表示部1は、図2及び図3に示すように、ガラスからなる保護板11を液晶モジュール12の表示面側に配置している。この保護板11の外表面111には飛散防止シート13を密着接合している。この飛散防止シート13は前記外表面111の略全面を覆っている。一方、前記液晶モジュール12は液晶層14を挟んで対向配置された第1の基板(以下TFT基板という)15と第2の基板(以下CF基板という)16を有している。又、TFT基板15の外側にはこのTFT基板15よりやや小面積の下側偏光板17を備えている。
【0023】
一方、CF基板16の外側には、このCF基板16と略同一面積の上側偏光板18が配置されている。この上側偏光板18は前述した図8と同様に、偏光子層181を中心にその外側を保護フィルム層182で狭持し、この保護フィルム層182の外側に図示しないハードコート層と粘着層183を配置した構成となっている。又、参照符号184は集積部である。
【0024】
又、前記TFT基板15とCF基板16は略相似形状を呈し、TFT基板15の一辺がCF基板16の端面161より突出した搭載部151を備えた構成となっている。
【0025】
更に、液晶モジュール12の下方にはバックライトユニット19が配置され、又TFT基板15の搭載部151の上表面には駆動回路等のドライバー20が搭載されている。
【0026】
この様な構成の液晶モジュール12と前記保護板11とは、前記上側偏光板18の外表面185側の外周部186を除く接合部分187と、この接合部分187に対向する前記保護板11の内表面112の接合部分1121とを接着剤21で接着している。この接着は例えばUV光照射と熱硬化の組み合わせにより行われる。
【0027】
前記保護板11と非接着となる外周部186の寸法L1は、前記保護板11やCF基板16更には上側偏光板18等の寸法によって決定すれば良いが、一般的には外端面から中心方向に向かって0.8mm〜3mm程度が必要である。これより狭いと偏光板の変位の吸収が困難となり、又広過ぎると表示面積が小さくなる。
【0028】
一方、前記保護板11は前記CF基板16と略相似形状を呈しており、その板厚Tは前記CF基板16の数倍乃至十数倍程度、面積は前記CF基板より大面積で、特に前記TFT基板15の搭載部151側ではこの搭載部151を覆って更にこれより延在した突出部113を備えた構成となっている。
【0029】
又、前記保護板11は前記内表面112の接合部分1121の終端から保護板11先端に亘る端部114の内表面1122を外表面111側に後退させた構成となっている。この端部114の内表面1122の後退形状は、前記保護板11先端が最大の後退量となる形状のテーパ状を呈し、外周部186に対向する部分でも接着剤21の厚さ以上の空隙22が形成されている。
【0030】
実施例1では、上側偏光板の外周部と保護板間に空隙を持たせて非固定構造としたことにより、前記外周部の収縮による偏光板の厚さ増大に伴う外側方向への力は偏光板と保護板間の空隙によって吸収されてしまい、CF基板の変形発生まで及ぶことは無く、従ってCF基板とTFT基板間の間隔は一定に確保でき、輝度むらの発生を抑制して視認性の確保、薄型化及び安全性の確保を可能とした。又、保護板の外表面を飛散防止シートで覆ったことにより、視認性の向上、薄型化及び安全性を確保できる。
【0031】
更に、保護板の外表面に飛散防止シートを装着したことにより、CF基板端面から片持ち状態で突出した突出部に例え外力が加わっても、飛散防止シートの耐力によりクラックの発生を回避できる。又、更に大きな外力により例え前記端面を基点として突出部が折損しても、飛散防止シートによりガラス片の飛散が防止でき、安全性が確保できる。
【実施例2】
【0032】
図4(a)、(b)は本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する模式断面図及び要部拡大断面図で、前述した図3(a)、(b)にそれぞれ対応し、前述した図と同じ部分には同一記号を付してある。図4(a)、(b)において、保護板11はその端部114の内表面1122を前記上側偏光板18の外周部186から離隔するように外表面111側に後退させた構成である。この後退量は、接着剤21の厚さ以上に設定し、しかも内表面1122を外表面111と略平行に後退させて端部114を接合部に比べて薄板形状とした構成としている。
【0033】
実施例2では、保護板11の端部114が略均一厚さの薄板状を呈することから後退形状の加工が容易となる。
【実施例3】
【0034】
図5(a)、(b)は本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する模式断面図及び要部拡大断面図で、前述した図3(a)、(b)にそれぞれ対応し、前述した図と同じ部分には同一記号を付してある。図5(a)、(b)において、上側偏光板18は外周部186の粘着層183を除去した構成である。又、CF基板16は前記外周部186に対向する部分から先端部分に亘る端部162の外表面1621を内表面1622側に後退させた構成である。
【0035】
この端部162の外表面1621の後退形状は、前記CF基板16先端が最大の後退量となる形状のテーパ状を呈し、粘着層183の終端部分でも粘着層183の厚さ以上の空隙22が形成されている。
【0036】
この実施例3では、CF基板16の後退面の加工が全周に亘って略同一寸法となり加工効率を高めることが出来る。
【実施例4】
【0037】
図6(a)、(b)は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する模式断面図及び要部拡大断面図で、前述した図3(a)、(b)にそれぞれ対応し、前述した図と同じ部分には同一記号を付してある。図6(a)、(b)において、上側偏光板18と保護板11とは外周部186部分の接着剤21を無くし、この部分に接着剤21の膜厚さに相当する空隙22を設け、この空隙22部分で外周部186部分の変位を吸収しCF基板16の変形を抑制する構成となっている。
【0038】
この実施例4では、保護板11やCF基板16等を特に加工することなく接着剤21の塗布範囲を特定することでCF基板16の変形を防止でき、作業効率の向上を図ることが出来る。
【0039】
ここで、実施例4では接着剤21の塗布範囲を特定したが、粘着層183の塗布範囲を特定することでも同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による液晶表示装置の実施形態に係る携帯電話機の全体構成の概略を示す模式斜視図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】図3(a)は図2のA−A線に沿った模式断面図、図3(b)は図3(a)の要部拡大断面図である。
【図4】本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する図3に対応する図で、図4(a)は模式断面図、図4(b)は図4(a)の要部拡大断面図である。
【図5】本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する図3に対応する図で、図5(a)は模式断面図、図5(b)は図5(a)の要部拡大断面図である。
【図6】本発明による液晶表示装置の他の実施例を説明する図3に対応する図で、図6(a)は模式断面図、図6(b)は図6(a)の要部拡大断面図である。
【図7】従来の液晶表示装置を説明する図で、図7(a)は模式断面図、図7(b)は図7(a)の要部拡大断面図である。
【図8】偏光板の構成を説明する模式断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・液晶表示部、2・・・第1の筐体、3・・・操作ボタン、4・・・操作部、5・・・第2の筐体、11・・・保護板、111・・・外表面、112・・・内表面、113・・・突出部、114・・・端部、12・・・液晶モジュール、13・・・飛散防止シート、14・・・液晶層、15・・・第1の基板(TFT基板)、151・・・搭載部、16・・・第2の基板(CF基板)、161・・・端面、162・・・端部、17・・・下側偏光板、18・・・上側偏光板、181・・・偏光子層、182・・・保護フィルム層、183・・・粘着層、184・・・集積部、186・・・外周部、187・・・接合部分、19・・・バックライトユニット、20・・・ドライバー、21・・・接着剤、22・・・空隙、100・・・携帯電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1の基板と、平板状で前記第1の基板より小面積の第2の基板と、これら第1及び第2の基板間に挟持された液晶層と、前記第1の基板の外側に配置された下側偏光板と、前記第2の基板の外側に配置された上側偏光板とを備えた液晶モジュールと、
前記第2の基板より大面積で前記上側偏光板の外側に固着配置された透明な保護板とを有する液晶表示装置であって、
前記上側偏光板は、その外周部をこの外周部と対向する前記保護板又は前記第2の基板と非固定構造としたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記保護板は前記上側偏光板の前記外周部に対向する内表面をこの保護板の外表面側に後退させ前記上側偏光板と非接触で対面していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記保護板は、前記上側偏光板の前記外周部に対向する内表面をテーパ状としたことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記保護板は、前記上側偏光板の前記外周部に対向する内表面を前記外表面と略平行に後退させこの後退部分を薄板形状としたことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2の基板は、前記外周部と対向する外表面を前記第1の基板側に後退させ前記外周部と非固定構造としたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第2の基板は、前記上側偏光板の前記外周部に対向する外表面をテーパ状としたことを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記保護板は、ガラス板であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記保護板は、前記外表面の略全面にUV光が透過可能な透明な樹脂部材からなる飛散防止シートを密着接合してなることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−216763(P2009−216763A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57537(P2008−57537)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】