説明

液晶表示装置

【課題】広視野角での高コントラストを実現することが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】一対の透明電極13で液晶層11を挟んで構成される垂直配向型の液晶表示装置は、一対の透明電極13が第1透明電極13Aと第2透明電極13Bとで構成され、第1透明電極13Aに、第1スリット21で4方向が囲まれた単位領域Sが複数並設されると共に、所定方向に隣接する一対の第1スリット21どうしが接続スリット25で接続され、第1スリット21に不連続部22を設けてなる連続パターンを形成し、第2透明電極13Bには、液晶層11の厚み方向に沿う方向視で第1スリット21と重複しない位置に第2スリット31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の透明電極で液晶層を挟んで構成される垂直配向型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置として視野角を広げると共にコントラストを高めるべく、VA(Vertical Alignment:垂直配向)型の液晶ディスプレイが利用されてきた。中でも、更に視野角を広げる技術として、PMVA(Pattern Multi Vertical Alignment)型も利用されている。この種の技術として下記に出典を示す特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の液晶表示素子は、一対の透明電極に、互いに直交するX軸及びY軸で規定された表示領域に対して、X軸に対し傾斜した方向に長手の第1スリット部と、X軸に対し第1スリット部とは反対方向に傾斜した方向に長手の第2スリット部とを備えて構成される。一方の透明電極の第1スリット部と他方の透明電極の第1スリット部とがY軸方向に交互に配置されると共に、一方の透明電極の第2スリット部と他方の透明電極の第2スリット部とがY軸方向に交互に配置される。
【0004】
また、特許文献2に記載の広視野角液晶表示装置は、互いに対向して配置される第1電極及び第2電極に、それぞれ複数の第1開口部及び複数の第2開口部が形成される。この第1開口部及び第2開口部は、厚み方向に見た場合、閉じた閉曲線を形成するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−256300号公報
【特許文献2】特開平11−352490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術では、透明電極の通電時の開口率が低いのでコントラストを高くすることができない。更には、効率も悪くなり省エネルギー化にも反する。また、配向安定性も悪く、更に視野角を広げることは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、視野角が広く、コントラストが高い液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る液晶表示装置の特徴構成は、一対の透明電極で液晶層を挟んで構成される垂直配向型の液晶表示装置であって、前記一対の透明電極が第1透明電極と第2透明電極とで構成され、前記第1透明電極に、第1スリットで4方向が囲まれた単位領域が複数並設されると共に、所定方向に隣接する一対の第1スリットどうしが接続スリットで接続され、前記第1スリットに不連続部を設けてなる連続パターンを形成し、前記第2透明電極には、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で前記第1スリットと重複しない位置に第2スリットを備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、液晶分子を単位領域に起因して主に4方向に配向させることができるので、視野角を広げることができる。更には、開口率を高くすることができるので、コントラストも高めることが可能となる。
【0010】
また、前記第2スリットは、前記第1スリットと同じ形状であり、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で前記第1スリットの不連続部が前記第2スリットの不連続部と噛み合うように形成されていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、単位領域の形状を同一のものとすることができる。したがって、製造工程を簡素化することができるので、製造コストを低減できる。また、各単位領域を横断する状態に通電できるので、各単位領域の通電状態を一様にすることができる。
【0012】
また、前記第1スリットと前記第2スリットとが、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で点対象に構成されていると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、第1透明電極と第2透明電極とが対向する領域の面積を広くすることができると共に、第1透明電極と第2透明電極との間に生じる電界の強度が著しく弱い部分が生じなくすることができる。したがって、液晶分子の配向を適切に変更することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液晶表示装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】本実施形態に係る透明電極を模式的に示した図である。
【図3】液晶分子の配向について模式的に示した図である。
【図4】等コントラスト曲線の見方について示した図である。
【図5】本実施形態に係る透明電極を備えた液晶表示装置の評価結果を示した図である。
【図6】比較対照の透明電極を備えた液晶表示装置の評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る液晶表示装置100の構成を模式的に示した図である。本液晶表示装置100は一対の透明電極で液晶層を挟んで構成される垂直配向型であり、視野角が広く、コントラストが高い特性を有するように構成される。
【0016】
1.液晶表示装置の全体構成
図1に示されるように、液晶表示装置100は、液晶層11、配向膜12、透明電極13、ガラス基板15、偏光板16、バックライト17を備えて構成される。
【0017】
液晶層11は有機物の一種の液体である液晶材料からなる。この液晶材料は、棒状又は円盤状等の液晶分子を含んで構成される。液晶分子は、当該液晶分子の長軸方向に対して長距離秩序を有する。これにより、液晶材料は、液体でありながら固体と同様の規則正しい分子配列を有することができる。配向膜12は一対の配向膜12A、12Bからなり、液晶層11を挟持する。配向膜12は、液晶分子の長軸方向が無通電状態において配向膜12A及び配向膜12Bの対向方向に沿うように配列させる。
【0018】
透明電極13は一対の透明電極13A、13Bからなり、上述の液晶層11を挟持している状態の配向膜12を更に外側から挟持する。透明電極13は、液晶表示装置100を駆動させる電極に相当する。透明電極13に通電されることにより電界が生じ、液晶分子の配向が変更される。透明電極13は、液晶表示装置100としての表示の妨げとならないように、透明度の高い材料で構成される。
【0019】
このような構造で構成される構造体の両側には、一対のガラス基板15(15A、15B)が設けられる。これにより、透明電極13を他の導電物から絶縁する。更に外側には、偏光板16が設けられる。したがって、偏光板16も一対の偏光板16A、16Bからなる。偏光板16は、入射光に対して特定の光のみを透過させるように所定の吸収軸が設定される。本実施形態では、偏光板16Aの吸収軸は、x方向の画素エッジ91(図2参照)及びy方向の画素エッジ92(図2参照)で規定された1画素における一対の対角線のうちの一方向に平行に設定される。また、偏光板16Bの吸収軸は、前記一対の対角線のうちの他方向に平行に設定される。
【0020】
偏光板16Bの外側には、バックライト17が設けられる。バックライト17は、表示面を背面から均一に照射する。本発明に係る液晶表示装置100はこのような構造で構成される。
【0021】
2.透明電極の構成
次に、透明電極13の構成について説明する。図2には、透明電極13の模式図が示される。特に、(a)は液晶表示装置100の1画素に対応する透明電極13の展開図が示され、(b)はその一部を拡大した正面視が示される。理解を容易にするために、図2においては配向膜12は省略し、一対の透明電極13A,13Bと液晶層11が示される。本実施形態では、透明電極13Aを第1透明電極13Aとし、透明電極13Bを第2透明電極13Bとして説明する。
【0022】
第1透明電極13Aには、第1スリット21で4方向が囲まれた単位領域Sが複数並設される。第1スリット21とは、所定の幅からなる第1透明電極13Aを開口する開口部である。したがって、第1スリット21は、第1透明電極13Aとしては作用しない。4方向が囲まれた単位領域Sとは、本実施形態では長方形で形成される領域が相当する。したがって、4方向とは長方形が有する辺に直交する方向が相当する。ここで、単位領域Sを形成する第1スリット21のスリット部分は、1画素を規定するx方向の画素エッジ91及びy方向の画素エッジ92に対して平行に設けられる。
【0023】
第1透明電極13Aには、このような長方形の形状からなる単位領域Sが複数構成される。この際、所定方向に隣接する一対の第1スリット21どうしが接続スリット25で接続され、第1スリット21に不連続部22を設けてなる連続パターンが形成される。本実施形態では、所定方向とは一方の対角線の方向が相当する。したがって、一方の対角線の方向に隣接する一対の第1スリット21どうしが、接続スリット25により接続される。また、不連続部22は、第1スリット21が有するスリットのうち、一部のスリット部分に設けられる。したがって、不連続部22が設けられるスリットは、他のスリットよりも短く構成される。このように構成されることにより、第1透明電極13Aには、不連続部22が設けられた第1スリット21を連続して配置した連続パターンが形成される。
【0024】
第2透明電極13Bには、液晶層11の厚み方向に沿う方向視で第1スリット21と重複しない位置に第2スリット31が備えられる。液晶層11の厚み方向とは、第1透明電極13A及び第2透明電極13Bに直交するz方向である。第2スリット31は、第1透明電極13A及び第2透明電極13Bをz方向から見て重複しないように設けられる。
【0025】
本実施形態では、第2スリット31は、第1スリット21と同じ形状であり、液晶層11の厚み方向に沿う方向視で第1スリット21の不連続部32が第2スリット31の不連続部22と噛み合うように形成されている。第2スリット31は、第1スリット21と同様に、所定のスリット部分に不連続部23を有する長方形の形状で構成される。z方向視において、第1スリット21の不連続部22と、第2スリット31の不連続部32とは、図2に示されるように、互いに噛み合うように構成される。このように構成することにより、図2に示されるように、第1スリット21と第2スリット31とで、一つの長方形の形状を形成するよう構成される。
【0026】
また、第1スリット21と第2スリット31とが、液晶層11の厚み方向に沿う方向視で点対象に構成されている。これにより、適切に第1スリット21の不連続部22と、第2スリット31の不連続部32とが噛み合い、第1スリット21と第2スリット31との間隔を略均等にすることができる。
【0027】
このように構成することにより、第1透明電極13Aと第2透明電極13Bとに電圧を印加した場合には、液晶層11内に一様に電界を生じさせることができる。したがって、第1透明電極13Aと第2透明電極13Bとに電圧を印加する前には、図3(a)に示されるような液晶層11内の液晶分子が垂直配向していたものが、電圧を印加した場合には、図3(b)に示されるように、第2スリット31を中心として放射状に配向させることができる。このため、視野角を広くすることができると共に、コントラストも高めることが可能となる。
【0028】
上記のように構成した液晶表示装置100について、視覚特性の評価を行った。以下では、視覚特性の評価結果について等コントラスト曲線を用いて説明する。等コントラスト曲線とは、画面(ディスプレイ)の視覚特性を示す手法の一つであり、画面を様々な角度から観察した時のコントラストをプロットし、同一のコントラスト値を線で結んだグラフである。ここで、コントラストは、Ton(ON表示の透過率)/Toff(OFF表示の透過率)で示される。
【0029】
等コントラスト曲線は、図4に示されるような、観察位置と画面の法線とのなす角θと、画面のxy平面とした際に、観察位置とy軸とがxy平面上でなす角φとで規定された円グラフで示される。円グラフの外周に規定された角度がなす角φに対応し、円グラフの内部に規定された角度がなす角θに対応する。今回は、θは0°≦θ<80°とし、φは0°≦φ≦360°として評価した。また、評価条件としては、画面の1ラインの書き込み周期を1/64周期とした。
【0030】
本実施形態に係る等コントラスト曲線が、図5(a)に示される。一方、参考として単位領域を正方形で構成した第1スリットと、液晶層11の厚み方向に沿う方向視で第1スリットと重複しない位置に単位領域を正方形で構成した第2スリットと、有する液晶表示装置(図6(a)の等コントラスト曲線が図6(b)に示される。図5及び図6から明らかなように、本実施形態における液晶表示装置100の方が、等コントラスト曲線が略同心円状であることから、視野角が広く、コントラストも一様であり、良好な視野角特性であることが理解される。また、正面視における透過率Tonは、図6に係るものでは1.6%であったものが、本実施形態のものでは3.4%と大きく改善されていることがわかった。
【0031】
また、ON画素を確認したところ、本実施形態に係る第1透明電極13A及び第2透明電極13Bでも、適切に配向していることがわかった。更に、図6(c)に係るものよりも、本実施形態のもの(図5(b))の方が効率良く配向されており、明るい表示となっていることがわかった。
【0032】
3.その他の実施形態
上記実施形態では、単位領域Sが長方形の形状であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。単位領域Sを正方形の形状で構成することも可能であるし、他の四角形の形状で構成することも当然に可能である。
【0033】
上記実施形態では、第2スリット31が第1スリット21と同じ形状で構成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2スリット31を例えば円形や他の多角形のような第1スリット21と異なる形状で構成することも可能である。
【0034】
上記実施形態では、第1スリット21の不連続部22と第2スリット31に不連続部32とが噛み合うように構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1スリット21の不連続部22と第2スリット31に不連続部32とが噛み合わないように構成することも可能である。更には、噛み合うように構成する場合であっても、第1スリット21と第2スリット31とで、長方形の形状を形成しないように構成することも当然に可能である。
【0035】
上記実施形態では、第1スリット21と第2スリット31とが液晶層11の厚み方向に沿う方向視で点対称に構成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1スリット21と第2スリット31とが点対称にならないように構成することも当然に可能である。
【0036】
上記実施形態では、偏光板16Aの吸収軸は、x方向の画素エッジ91及びy方向の画素エッジ92で規定された1画素における一対の対角線のうちの一方向に平行に設定され、偏光板16Bの吸収軸は、前記一対の対角線のうちの他方向に平行に設定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。偏光板16A、16Bの吸収軸は、対角線に対して平行でない方向に沿って設定することも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、一対の透明電極で液晶層を挟んで構成される垂直配向型の液晶表示装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
11:液晶層
13:透明電極
13A:第1透明電極
13B:第2透明電極
21:第1スリット
22:不連続部
25:接続スリット
31:第2スリット
32:不連続部
100:液晶表示装置
S:単位領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明電極で液晶層を挟んで構成される垂直配向型の液晶表示装置であって、
前記一対の透明電極が第1透明電極と第2透明電極とで構成され、
前記第1透明電極に、第1スリットで4方向が囲まれた単位領域が複数並設されると共に、所定方向に隣接する一対の第1スリットどうしが接続スリットで接続され、前記第1スリットに不連続部を設けてなる連続パターンを形成し、
前記第2透明電極には、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で前記第1スリットと重複しない位置に第2スリットを備えている液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2スリットは、前記第1スリットと同じ形状であり、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で前記第1スリットの不連続部が前記第2スリットの不連続部と噛み合うように形成されている請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1スリットと前記第2スリットとが、前記液晶層の厚み方向に沿う方向視で点対象に構成されている請求項1又は2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105032(P2013−105032A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248814(P2011−248814)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】