説明

液晶表示装置

【課題】液晶の応答を高速化したフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示パネルと、液晶パネルを駆動する駆動回路と、複数色の光を順次出射するバックライトを備え、1フレーム期間が複数のサブフレームからなり、さらに各サブフレームは複数のフィールドに分割されたフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であって、前記各フィールドにおいて液晶に印加される電圧を、前記各フィールド終端近傍にてゼロにすることなく、前記液晶表示パネルに対して連続的に与えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般に光源として冷陰極管蛍光ランプ(以下、「CCFL」とする)の様な蛍光ランプを用いて、液晶表示パネルを背面から直接照明する構成が用いられている。その場合、液晶表示パネルとして、個々の画素が赤、青、緑のカラーフィルタからなるサブピクセルで構成されたパネルを用いるのが一般的であるが、CCFLから出射された光の内、例えば赤色光は赤のサブピクセルを透過することが出来るが、青、緑のサブピクセルにおいては各カラーフィルタにて吸収され、画像形成に寄与せずロスとなる。同様のことは青色光、緑色光に関しても言えるため、CCFLから出射した光の内、2/3は液晶表示パネルのサブピクセルにおいて吸収されてロスすることになる。
【0003】
一方近年、環境問題への配慮から、テレビ等の電気製品においても低消費電力化の要請が強く、活発な低消費電力化開発が続けられている。その中で、液晶表示装置における低消費電力化の方式として、フィールドシーケンシャル方式がある。この方式は、上述のCCFLの様な赤色光、青色光、緑色光を同時に出射する白色光源ではなく、赤色用光源、青色用光源、緑色用光源を別々に用意し、液晶パネルに各色に対応する画像を時分割で順次表示し、その表示タイミングにあわせて各色光を順次点灯させることで、眼球の残像現象を利用して画像を形成する方式である。この方式では、先に述べたような液晶表示パネルのカラーフィルタにおける光の吸収が原理的に存在しないため、光の利用効率を単純には3倍高めることが可能になる。また、液晶表示パネルは上述の様な赤、青、緑のサブ画素を含む必要はなく、モノクロの液晶表示パネルを用いることができるため、開口率が高く高効率、かつカラーフィルタが不要になるため安価に構成できるといった利点もある。
【0004】
一方、このフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置において画像1フレームを赤、青、緑の3つのフィールドで順次表示させる場合、液晶を従来の3倍の速度で駆動する必要がある。その場合、液晶自体の応答速度が追随せず、所望の画像を形成することが困難であるという課題があった。また、画像1フレームを3つのフィールドで表示させるだけでは、眼球の移動等により、視認している画像のエッジが虹色に分かれて見える(カラーブレーキング)といった課題があり、さらなる高速駆動が求められていた。
【0005】
それに対して、特許文献1においては、液晶の駆動電圧と透過率の関係を求め、応答速度の遅い中間階調での透過率を補正することで、液晶の応答速度が各フィールドの時間よりも長い場合であっても、正確な階調を表現できるとしている。
【0006】
また、特許文献2においては、液晶の駆動時間を確保するために、液晶への画像データの入力走査の位置に応じて、バックライトを上から順に順次点灯させることが提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3においては、フィールドを赤、青、緑の3つだけでなく、白色のフィールドを加えることで、カラーブレーキングを抑制することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3704984号公報
【特許文献2】特開2005−10800号公報
【特許文献3】特開2005−233982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記で説明した従来の技術において、例えば特許文献1においては、各サブフレーム内で液晶をON−OFFすることが前提であり、仮に隣接するフィールドの値が同じであったとしても一旦液晶をOFFする必要があり、その分液晶の駆動時間が短くなるという課題を有している。
【0010】
また、特許文献2においては、光源を順次発光させ、さらに光源の境界部分の輝度の低下を無くす様に、隣接する照明領域の境界部分をオーバラップさせているが、この場合、光源を発光させるタイミングによっては隣接する領域からの照明により、階調が正確に表現されない場合が生じるという課題を有している。
【0011】
さらに、特許文献3においては、白色フィールドを付加することで、カラーブレーキングは抑制できるが、1サブフレームに与えられる時間は短くなるため、液晶の応答速度の観点からさらに困難になるという課題を有している。
【0012】
本発明は、主に上記従来の課題を解決するものであり、フィールドシーケンシャル方式において、応答速度の長い液晶においても正確な階調を表現し、さらに液晶の応答速度が速くカラーブレーキングが抑制された、光利用効率の高い液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、複数の画素を有する液晶表示パネルと、前記液晶パネルを駆動する駆動回路と、複数色の光を順次出射するバックライトを備え、1フレーム期間が複数のサブフレームからなり、さらに各サブフレームは複数のフィールドに分割され、前記各フィールドにおいて、所望の画像データを前記液晶表示装置に入力し、該当する色の光を前記バックライトから前記液晶表示パネルに対して照明することで画像を形成する、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であって、前記各フィールドにおいて液晶に印加される電圧を、前記各フィールド終端近傍にてゼロにすることなく、前記液晶表示パネルに対して連続的に与えた。
【0014】
さらに、前記該当する色の光を点灯、消灯させるタイミングを調整可能にしても構わない。
【0015】
さらに、前記該当する色の光の点灯、消灯タイミングは、周囲照度により発光する幅とタイミングを変更することで調整しても構わない。
【0016】
さらに、前記該当する色の光の点灯、消灯タイミングは、前記液晶表示パネルの温度により、発光する幅とタイミングを変更することで調整可能にしても構わない。
【0017】
さらに、前記バックライトは、前記複数色の光源を前記液晶表示パネルの背面に面状に複数個配列し、さらに上下方向に複数ブロックに分割して各ブロックに順次照明するバックライトであり、前記各フィールドにおける前記液晶表示パネルの前記各画素に入力される画像データは、前記各画素の直下にあるブロックに隣接するブロックからの距離に応じて補正しても構わない。
【0018】
さらに、前記バックライトは、前記複数色の光源を前記液晶表示パネルの背面に面状に複数個配列し、さらに上下方向に複数ブロックに分割して各ブロックに順次照明するバックライトであり、前記各フィールドにおける前記液晶表示パネルに入力される画像データの内少なくとも一つの画素において、前記フィールドの1つ後のフィールドの画像データに応じて補正しても構わない。
【0019】
さらに、前記各サブフレームを構成する各フィールドに対して与えられる画像データは、同じ色のフィールドに対してサブフレーム間で異なるようにしても構わない。
【0020】
さらに、前記各サブフレームを構成する各フィールドに与えられる、少なくとも一つの色に該当する画像データに関し、ある画素における偶数サブフレームの画像データと奇数フレームの画像データの大小関係を、隣接する画素で逆転させても構わない。
【0021】
さらに、前記液晶表示パネルを固定する保持体に対して、前記複数色の光を出射する光源の放熱部を接続しても構わない。
【0022】
さらに、前記液晶表示パネルに液晶の駆動に寄与しないヒータを配設しても構わない。
【0023】
さらに、前記液晶表示パネルは、内部に液晶層と、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を有し、前記透明電極が前記各色の光を20%以上吸収させても構わない。
【0024】
さらに、前記液晶表示パネルは、内部に液晶層と、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を有し、前記バックライトから出射される前記複数色の光は、赤外光もしくは紫外光を含んでも構わない。
【0025】
さらに、前記複数色の光の内少なくとも一つの光を出射する光源は、赤外光もしくは紫外光を波長変換することで得られた光とし、波長変換されずに残った光が前記バックライトから出射するようにしても構わない。
【0026】
さらに、前記液晶表示パネルは内部に液晶層を有し、前記液晶層内には前記液晶層の厚みを均一にするスペーサを有し、前記スペーサは前記各色の光を20%以上吸収するようにしても構わない。
【0027】
さらに、前記バックライトから出射される光は、フィールドのタイミングに依らず常に出射させても構わない。
【0028】
さらに、前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射するレーザ光源を含んでも構わない。
【0029】
さらに、前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射する発光ダイオード(LED)を含んでも構わない。
【0030】
さらに、前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射するスーパールミネッセントダイオード(SLD)を含んでも構わない。
【発明の効果】
【0031】
本発明の液晶表示装置により、各フィールドの終端において液晶をゼロにリセットせずに次のフィールドを駆動するため、液晶の配向に掛けることの出来る時間を長く確保することができ、各フィールド終端部近傍での液晶の透過率を所望の値に近づけることが出来る。これに伴い、各光源の点灯タイミングも各フィールドの終端部近傍で点灯させることにより、所望の透過率に近い状態で光源を点灯することが可能になるため、光の利用効率が高く、所望の輝度を表示するための消費電力を低くすることが出来るという効果を有する。
【0032】
また、各フィールドにおける画像データを、直後のフィールドにおける画像データを用いて補正しておくことで、各画素から透過する光量を所望の光量になる様に出来ため、スクロール照明においても、隣接する照明ブロックの発光タイミングの相違による階調を補正し、元画像に忠実な高画質な画像を提供することが出来る。
【0033】
また、同じ色の各サブフィールドの値を異なる値に分解し、中間階調を取らなくすることで、高速に駆動することが可能になるため、元画像に忠実な高画質な画像を提供することが出来る。また、こうすることで、サブフレーム間で同じ色の階調が異なるため、視認上カラーブレーキングを抑制する効果も有する。また、隣接する画素において、高階調のサブフレームと低階調のサブフレームの順序を入れ替えることで、隣接する画素において同じ色の階調が異なるため、視認上さらにカラーブレーキングを抑制する効果も有する。
【0034】
また、レーザ光源やSLD(スーパールミネッセントダイオード)を用いることで、液晶表示パネル上のある一点を照明している時間が非常に短くなるため、液晶の応答速度を緩和することができるため、元画像に忠実な高画質な画像を提供することが出来る、さらにカラーブレーキングを視認しにくくする効果も有する。
【0035】
また、種々方法により液晶表示パネルを加温することで、液晶の応答を高速化することが出来るため、フィールドシーケンシャル方式の様に液晶の応答速度に数ミリ秒程度の高速な応答が要求される液晶表示装置においても、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態1にかかる液晶表示装置10の概略構成図で、(a)液晶表示装置10の平面図、(b)液晶表示装置10の10A−10A断面での断面図
【図2】実施の形態1にかかる液晶表示パネルの回路構成図
【図3】実施の形態1にかかる液晶表示パネル11の走査タイミングと光源点灯タイミングの説明図で、(a)一画面の走査が完了してから光源を点灯させる場合の図、(b)スクロール照明の場合の図
【図4】実施の形態1にかかる液晶応答波形と光源点灯タイミングの説明図で、(a)各フィールドの終端でゼロにする場合の図、(b)各フィールドの終端でゼロにせず連続的に駆動する場合の図
【図5】実施の形態1にかかる一般的なスクロール照明の説明図で、(a)液晶表示装置の断面図、(b)液晶の駆動タイミングと光源点灯タイミングを示す図
【図6】実施の形態1にかかる、隣接照明ブロックとの光源点灯タイミングの説明図
【図7】実施の形態1にかかる、同一画像フレーム内の異なるサブフレームにおいて、与える階調の差異に関する説明図
【図8】実施の形態1にかかる、別の液晶表示装置21の概略構成図で、(a)液晶表示装置21の平面図、(b)液晶表示装置21の矢印21A方向から見た側面図
【図9】実施の形態1の液晶表示装置を三次元表示に応用した場合の図で、(a)概略構成図、(b)右目画像と左目画像の表示タイミングの説明図
【図10】実施の形態1にかかる液晶表示装置21の概略構成図で、(a)液晶表示装置21の平面図、(b)液晶表示装置21の矢印21Aの方向から見た側面図
【図11】実施の形態2にかかる液晶表示装置30の概略構成図で、(a)液晶表示装置31の実施の形態1の図1(b)に対応する断面図、(b)液晶表示パネル11に金属配線34を施したことを説明する断面図
【図12】実施の形態2にかかる、液晶表示パネル11を図10(a)の矢印30Aの方向から見た拡大図
【図13】実施の形態2にかかる、液晶表示パネル11の図11の30B―30B断面での断面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図面は、理解しやすくするために模式的に示している。
【0038】
(実施の形態1)
図1はフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置10の概略構成図である。図1(a)は液晶表示装置10の平面図であり、図1(b)は図1(a)の液晶表示装置の10A−10A断面における断面図である。液晶表示装置10は、液晶表示パネル11と、液晶表示パネル11の視認側とは逆側に複数個配列された光源12、反射部13、制御部14からなり、光源12は赤色光源12r、緑色光源12g、青色光源12bからなり、反射部13と共に液晶表示パネル11に対してバックライトとして機能する。光源12はLEDを用いることができる。また、図2は液晶表示パネルの回路構成図である。
【0039】
まず、図1と図2を用いて、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置に関して説明する。光源12を構成する赤色光源12r、緑色光源12g、青色光源12bは、液晶表示パネル11と反射部13との間に、例えば図1(a)の様に混色により均一白色になる様に交互に配置する。各光源12は制御部14に接続されており、点灯、消灯タイミング、光量を制御される。各光源12から出射して液晶表示パネル11とは逆向きに出射した光も、反射部13で反射されて無駄なく均一に液晶表示パネル11を照射するように配置されている。液晶表示パネル11も制御部14に接続されており、液晶表示パネル11を構成する各画素の液晶を駆動することにより透過率を制御する。
【0040】
また、図2に示す様に、液晶表示パネル11内では、信号線(DL1、DL2、・・・、DLm)と走査線(GL1、GL2、・・・、GLn)を、各TFTのドレイン電極、ゲート電極に接続することでサブピクセルを形成する。さらにソース電極は透明電極に接続され、共通電極Vcomとの間で容量Clcの液晶に対して電圧を印加する。信号線はソースドライバ15に、走査線はゲートドライバ16に接続されており、所望の走査線にON信号が印加されたタイミングに同期して、各信号線に接続されているサブピクセルの液晶が所望の透過率になる様に、個々の信号線の電圧が液晶の両端に印加される。一般には走査線は上から順(GL1、GL2、・・・、GLn、の順)に順次ON信号を印加し、それに同期して信号線に所望の電圧を印加するため、液晶表示パネル11の上から下にむけて表示する画像が更新されることになる。
【0041】
図3は、液晶表示パネルの走査タイミングと光源点灯タイミングの説明図である。図3(a)に示す様に、液晶表示パネル11の上から下まで個々の液晶に信号を印加し、液晶が配向されるのを所定の時間待ってから該当する色の光源を全面同時に点灯させることで、その色の画像を表示することができる。この場合、1フィールドに要する時間Tf内で、液晶表示パネル11を上から下まで走査してデータを各画素に画像データをセットし(Ts)、液晶を配向させ(Td)、光源を点灯させる(Tl)必要があることになる。これに対して、図3(b)に示す様に、上から下まで液晶に信号を印加し終えるのを待たずに、所望の走査線がONされて所定の時間待った後に、その領域を該当する色の光で同期して照明する方式(スクロール照明)がある。こうすることにより、液晶表示パネル11の各画素を上から下まで走査する時間Tsによる待ち時間の発生が基本的になくなるため、1フィールドあたりの時間Tfを、液晶の配向(Td)と光源の点灯(Tl)のみに割くことができ、光源の点灯時間(Tl)が同じであるとすると、液晶の配向に要する時間(Td)はより長くても良いことになる。すなわち、スクロール照明を行うことにより、液晶に求められる応答速度は緩和されることになることが分かる。
【0042】
一方、1秒あたり60フレームの画像において1フレームを2つのサブフレームに分割する場合、1サブフレームあたりの秒数Tsfは8.3ミリ秒となり、赤色、緑色、青色等3色でフィールドシーケンシャル表示する場合1フィールドあたりの時間Tfは2.8ミリ秒となる。しかし、液晶の応答速度はVAモードやIPSモードでは速くても4ミリ秒程度が限界であり、上記の様に、例えばカラーブレーキングを緩和するために2つのサブフレームに分割して、赤、緑、青の3フィールドで駆動する場合、図4(a)に示す様に、1フィールドあたりの時間Tfよりも液晶の応答速度の方が長くなるため、液晶が所望の透過率まで到達せずにオフされることになり、光源を液晶が所望の透過率に到達する前に点灯、消灯することになる。また、液晶の透過率が最高に達する前に液晶をOFFすることになるため透過率が低く、光の利用効率が低下するため、所望の輝度を表示するための消費電力も高くなってしまう。ここで図4はある位置の画素における液晶の応答波形と光源の点灯タイミングの関係を表す図であり、液晶の応答波形は、透過率の時間変化に該当する。
【0043】
これに対し、本実施の形態で示す液晶表示装置10においては、図4(b)に示す様に、各フィールドの終端において液晶をゼロにリセットせず、次のフィールドの値に向けて液晶を駆動している。こうすることで、液晶の配向に掛けることの出来る時間を長く確保することができ、各フィールド終端部近傍での液晶の透過率を所望の値に近づけることが出来る。これに伴い、各光源の点灯タイミングも各フィールドの終端部近傍で点灯させており、こうすることで連続的に液晶を駆動しても所望の透過率に近い状態で光源を点灯することが可能になるため、光の利用効率が高く、所望の輝度を表示するための消費電力を低くすることが出来るという効果を有する。
【0044】
またこの時、各フィールドでの光源をONするタイミングに関して図4(b)を用いて説明する。本実施の形態で示す液晶表示装置10においては、各フィールドの終端において液晶をゼロにリセットせず、次のフィールドの値に向けて液晶を連続的に駆動している。よって光源は各フィールド内の所定のタイミングTonにおいて点灯させ、各フィールドの終端まで点灯させることになる。ここにおいて、Tonを短くして各光源を長く点灯させると、点灯時間が長いために明るい画像を表示することが可能になる。一方で、Tonを長くして各光源の点灯時間を相対的に短くすると、所望の透過率の時のみ光源を点灯することになるため、色再現範囲が広い高画質画像を提供することが可能になる。例えば、周囲が明るい環境下(例えば日中や高照度の照明下)では高輝度画像が望まれるため、Tonを短くして輝度を高くすることで、視認性に優れた画像を提供することが出来る。一方で、周囲が暗い環境下(例えば夜間や低照度の照明下)で例えば映画等を視聴する際は、Tonを長くすることで輝度を抑えて高画質な画像を提供することが出来る。これらの切り替えは、例えばテレビに内蔵されている時計で切り替えることが考えられる。即ち、日中の時間帯(例えば9時から15時等)はTonを短くすることで、高輝度の画像を提供し、15時を過ぎると徐々にTonを所定の値に近づけてゆくことで、視聴上違和感無く切り替えることが可能になる。また、ユーザが選択できる画像モード等で切り替えても構わない。例えばシネマモードであれば、Tonを長くして輝度を抑えつつ色再現範囲の広い高画質な画像を提供し、バラエティやニュース等を視聴するモート゛では、Tonを短くして高輝度な画像を提供することが出来る。他にも、例えばテレビに明るさセンサーを付けておき、測定された周囲の明るさに応じて、Tonを調整しても構わない。その他、例えばテレビに周囲温度を測定するための温度計を付けておき、測定された温度によって、点灯タイミングTonを切り替えても構わない。一般に、低温下では液晶の駆動速度が遅くなるが、Tonを長くすることで、色再現範囲を維持した画像を提供することが可能になる。温度が高くなると、徐々にTonを短くすることで、色再現範囲を維持したまま高輝度な画像を提供することが可能になる。もちろん測定された温度に応じて点灯する光源の光量を調整することで、温度に関わらず色再現範囲が高く高輝度な画像を提供することが可能である。もちろん、日付等の情報やユーザーによる設定等、上記例以外の手段にてTonや光源の光量を調整、切り替えても構わない。
【0045】
次に図5を用いて、一般的なスクロール照明の方法に関して説明する。図5(a)は図1(b)と同じく液晶表示装置10の10A―10A断面における断面図であり、照明タイミング別に4つの照明ブロック20a〜20dに分割してあり、各照明ブロックは赤色光源12r、青色光源12b、緑色光源12gを含んでいる。図5(b)の縦軸は液晶表示パネル11の垂直方向の画素位置を示しており、この図は液晶パネルの各画素の液晶を垂直方向に走査してONするタイミングと光源を点灯させるタイミングを示している。そして液晶表示パネル11上の各照明ブロックに該当する位置の最下行をONしてTon秒後に該当する照明ブロックの光源12を点灯し、液晶表示パネル11上の各照明ブロックに該当する位置の、次のフィールドの最上行がONされる直前に該当する照明ブロックの光源12を消灯する。これを赤色フィールド、緑色フィールド、青色フィールドと3色繰り返すことで1サブフレームを成し、これをさらに所定回数行うことで1フレームを成す。
【0046】
このスクロール照明において、例えば液晶表示パネル11上の照明ブロック20a内に存在する所定の行L1内のある画素において、液晶の応答波形と照明ブロック20aの点灯タイミングと照明ブロック20bの点灯タイミングを図6に示す。この図からわかる様に、赤色画像用のデータがセットされている時間Tfの間で、照明ブロック20aの赤色光源が時刻t1〜t2で点灯されている以外に、照明ブロック20bの赤色光源も時刻t3〜t4で点灯されていることが分かる。照明ブロック20a、20bは光源としては分割しているが、液晶表示パネル11は照明ブロック20aの直上であっても、照明ブロック20bからの光の一部が到達する。特に照明ブロック20aと20bの境界近傍の領域は、両側の照明ブロックからの光を受けることになる。よって、この画素を透過する赤色光量は、照明ブロック20aから出射される赤色光の内、本画素に到達する光量に各時刻の液晶の透過率(即ち液晶応答波形)を掛けて時刻t1〜t2まで積分した光量と、照明ブロック20bから出射される赤色光の内、本画素に到達する光量に各時刻の透過率を掛けて時刻t3〜t4まで積分した光量の和になる。この光量の和が所望の光量になる様にするためには、隣接する照明ブロック20bから本画素までの距離から、本画素に到達する隣接する照明ブロック20bからの光量を割り出し、本画素から透過する光量が所望の光量になる様に、事前に本画素の画像データを補正しておくことで、達成することが出来る。また、図6の様に、隣接する照明ブロック20bからの赤色光が、行L1において次のフィールド(図6においては緑色フィールド)にずれ込む場合、時刻t4の液晶応答波形は次のフィールドである緑色フィールドにおける画像データに依存する。よって、赤色フィールドにおける画像データを、直後のフィールドである緑色フィールドにおける画像データを用いて、本画素に到達する隣接する照明ブロック20bからの光量を割り出し、本画素から透過する光量が所望の光量になる様に、事前に本画素の画像データを補正しておくことで、本画素から透過する赤色光の光量を所望の光量になる様に補正することが出来る。この様にすることで、スクロール照明においても、隣接する照明ブロックの発光タイミングの相違による階調を補正し、元画像に忠実な高画質な画像を提供することが出来る。
【0047】
次に、画像1フレームを複数のサブフレームに分割した場合の色割れ対策に関して、例えば画像1フレームを2つのサブフレームに分割する場合について、図7を用いて説明する。図7において、画像ひとフレームをFP、2つに分割したサブフレームの内前側サブフレームをSF1、後側サブフレームをSF2とする。さらに各サブフレームを構成するフィールドを赤、緑、青の順とし、SF1の赤色フィールドをFR1、同緑色フィールド、青色フィールドをFg1、Fb2とし、SF2の赤色、緑色、青色各フィールドをFr2、Fg2、Fb2とする。通常、複数のサブフレームに分割する場合、その画像データは各サブフレームに等しく与える。例えば、ある画像1フレームの8ビットで赤、緑、青にそれぞれ256、130、20の画像データが与えられた場合、図7(a)の様にFr1、Fr2に256、Fg1、Fg2に130、Fb1、Fb2に20の画像データがあたえられ、それに応じた電圧が液晶に印加され液晶が駆動される。しかしながら、一般に液晶は中間階調(例えば8ビットでは128近傍)において応答速度が遅くなることが分かっている。よって図7(a)においては、緑のフィールドであるFg1、Fg2の応答速度が遅くなり、入力された画像に忠実な画像を再現できないことになる。それに対して、図7(b)の様に、緑のフィールドであるFg1、Fg2において、本来与えられる130という値に対し、Fg1において256を、Fg2において4(=130×2−256)を与える。1フレーム内の所定の色に関し、各サブフレーム内での値の和が同じであれば、人間の目には同じ明るさとして認識されるため、このように、Fg1とFg2の合計が260になれば、任意の値に分解しても問題ない。よって、上述の様にFg1を256に、Fg2を4に分解した場合、合計260(=130×2)を維持しつつ、緑のフィールドであるFg1、Fg2において中間階調ではなく設定することができるため、高速に駆動することが可能になる。また、こうすることで、サブフレーム間で同じ色の階調が異なるため、視認上カラーブレーキングを抑制する効果も有する。尚、上では、画像データが130の場合に関して説明したが、もちろんそれ以外の値でも構わない。ただし、赤色フィールドや青色フィールドの様に元々の画像データが256や20といった8ビットにおける上限もしくは下限に近いデータであれば、上述の様にサブフィールド間で異なる値に分割する必要はなく、8ビットにおいて特に85〜170といった中間階調に対して効果を有する。また、図7(b)においては、前側のサブフレームSF1の緑色フィールドFg1に256を配置したが、もちろん図7(c)の様に後側のサブフレームSF2の緑色フィールドFg2に256を配置しても構わない。また、上記はある画素においての振る舞いに関して説明したが、例えば所定の画素に図7(b)の様に前側サブフレームSF1に256に近い高階調を配置し、後側サブフレームSF2に0に近い低階調を配置し、さらに上記所定の画素に隣接する画素において、図7(c)の様に前側サブフレームSF1に0に近い低階調を配置し、後側サブフレームSF2に256に近い高階調を配置しても構わない。こうすることで、隣接する画素において同じ色の階調が異なるため、視認上さらにカラーブレーキングを抑制する効果も有する。
【0048】
また、液晶表示装置10は、液晶表示パネル11をパネル背面に光源を配置して直接液晶パネル11を照明する形態(直下型)を用いたが、図8に示す様に、液晶表示パネル11の背面に導光板22a〜22dを配置し、光源12を各導光板の側面に配置する形態をとることが出来る。図8(a)は本液晶表示装置21の正面図で、図8(b)は図8(a)の矢印21A方向から見た側面図である。
【0049】
本液晶表示装置21は図5(a)と同様に、照明領域が20a〜20dの照明ブロックに分割されており、各ブロックに各導光板22a〜22dが割り当てられており、さらに各導光板の左右に赤光源12r、緑光源12g、青光源12bが配置されている。各光源12r、12g、12bはLEDを用いることが出来る。図8(b)に示す様に、各光源は各導光板の側面近傍に配列されているため、例えば照明ブロック20aにおいて、各光源から出射した光は直接導光板22aに入射することになる。また、各光源は図8(b)の通り周囲を側面反射体24に覆われており、直接導光板22aに入射しなかった光も側面反射体24で反射することで、導光板22aに入射する。各導光板22a〜22dは、例えば内部に微小な拡散粒子を有しており、各導光板に入射した光は導光板内の微小な拡散粒子により散乱され、導光板から出射して液晶表示パネル11を照明することで画像形成に寄与する。各導光板から液晶表示パネル11とは逆向きに出射した光は、底面反射体23で反射して、再度導光板内で散乱されながら、最終的には液晶表示パネル11の照明に寄与する。また、導光板内部の拡散粒子の密度を例えば中央部の密度を上げる等、場所によって調整することで、導光板の左右方向の輝度を均一にすることが出来る。この様にすることで、図5(a)に示した液晶表示装置10と同様に、各照明ブロックの左右に配置した光源が、液晶表示パネル11の各照明ブロック直上の領域を照明することになる。
【0050】
本液晶表示装置21においても、図5(a)の液晶表示パネル10と同様に、図5(b)に示すタイミングで、各照明ブロックの両端に配置された光源を時分割で点灯させることで、フィールドシーケンシャル方式で画像を形成することが出来る。
【0051】
また、本液晶表示装置21において、例えば図7の(a)に示す様に、1フレームを2つのサブフレームに分割した場合、例えばSF1の照明は、各導光板の左側に配置された光源を点灯させて、SF2の照明は各導光板右側に配置された光源を点灯させても構わない。もちろんSF1において右側の光源、SF2において左側の光源を点灯させても構わない。さらに、SF1において、照明ブロック20aは左側の光源を、照明ブロック20bは右側の光源を、照明ブロック20cは左側の光源を、照明ブロック20dは右側の光源を点灯させ、さらにSF2において、照明ブロック20aは右側の光源を、照明ブロック20bは左側の光源を、照明ブロック20cは右側の光源を、照明ブロック20dは左側の光源を点灯させるという様に、照明ブロック毎に交互に点灯させても構わない。こうすることで、さらにカラーブレーキングを抑制する効果を有する。
【0052】
次に本液晶表示装置10を三次元表示可能な液晶表示装置とする場合に関して、図9を用いて説明する。三次元表示装置は、原理的には視聴する人の目に対して、視差を設けて撮影された右目画像と左目画像を表示し、右目画像を右目のみに見せ、左目画像を左目のみに見せる必要がある。一例としては、図9(a)に示す様に、右目、左目それぞれにシャッターを設け、制御装置に接続されたシャッター眼鏡を用意し、さらに制御装置を液晶表示装置10に接続する。液晶表示装置10が右目画像を表示するタイミングで、シャッター眼鏡の左目シャッターを閉じ、さらに液晶表示装置10が左目画像を表示するタイミングで、シャッター眼鏡の右目シャッターを閉じることで、表示された画像を人は三次元画像として認識する。この時、図9(b)に示す様に、画像ひとフレームを二つのサブフレームSF1、SF2に分割した場合、例えばSF1に右目画像を、SF2に左目画像を表示することで、三次元表示が可能になる。本実施の形態の液晶表示装置10の様に、液晶を各フィールドの終端においてゼロにすることなく駆動することで高速な応答をさせることが可能になり、図9に示すような三次元表示にも使用することが出来る。
【0053】
最後に図10において、光源としてレーザを用いた場合の一例として液晶表示装置30の構成図を示す。液晶表示装置30は、赤色レーザ光34rを出射する赤色レーザ光源32r、緑色レーザ光34gを出射する緑色レーザ光源32g、青色レーザ光34bを出射する青色レーザ光源32b、コリメータレンズ33、回転多面鏡35、フレネルレンズ36、37、導光板38からなる。図10(a)は液晶表示装置30の上面図であり、図10(b)は図10(a)を矢印30Aの方向から見た側面図である。赤色レーザ光源32rから出射された赤色レーザ光34rは、光軸上のコリメータレンズ33で略平行光に変換された後、回転多面鏡35に入射する。回転多面鏡35は矢印の方向に回転するため、赤色レーザ光34rは回転多面鏡35で反射されながら図中矢印30Bの方向に偏向走査される。フレネルレンズ36は導光板38の幅方向(図10(a)の上下方向)に曲率を持ち、フレネルレンズ37は導光板38の厚み方向(図10(b)の上下方向)に曲率を持っており、フレネルレンズ36に入射した赤色レーザ光34rは、フレネルレンズ36を透過後に光線の進行方向が略水平になる様に変換され、さらにフレネルレンズ37により導光板38の厚み方向に広げられながら、導光板38の入射面38aから導光板38に入射する。導光板38はアクリル等の光学樹脂で成型されており、導光板38内で全反射を繰り返しながら伝播する。また、導光板の底面38bは図10(b)に示す様に、導光板38の主面38cに平行な平面を、三角プリズムで周期的に接続した形状をしており、三角プリズムに入射した赤色レーザ光34rは三角プリズムでロス無く全反射して、導光板主面38cより液晶表示パネル11に向けて均一に出射する。また、赤色レーザ光34rは、導光板38内を図10(a)の上側から下側に向けて走査され、導光板38に入射した赤色レーザ光34rは導光板38内部では幅方向(図10(a)で上下方向)には拡散しないため、導光板38内を図10(a)において上から下に線状に走査することになるため、液晶表示パネル11も赤色レーザ光34rにより図10(a)の上から下に線状に走査されることになる。液晶表示パネル11内での画像データの走査タイミングに同期して、赤色レーザ光34rが液晶表示パネル11を照明することにより、本液晶表示装置30は、例えば図5(a)において、非常に多数の照明ブロックが存在し、かつ各照明ブロックからの光が略垂直に液晶表示パネルを照明している様にみなすことができる。よって、他の照明ブロックからの照明の影響を受けにくく、元画像に忠実な高画質な画像を提供することが出来る。また、液晶表示パネル上のある一点を照明している時間が非常に短くなるため、カラーブレーキングを視認しにくくする効果も有し、さらに液晶の配向に掛ける時間を長くすることができるため、所望の階調に忠実な高画質な画像を提供することが可能になる。次に、赤色レーザ光34rが検出器39に入射すると、赤色レーザ光34rの走査が終了したことになり、順次緑色レーザ光34g、青色レーザ光34bが出射され、赤色レーザ光34と同じ様にコリメータレンズ33で略平行光に変換された後、回転多面鏡35で偏向走査され、導光板38で立ち上げられて液晶表示パネル11を照明する。赤色レーザ光34r、緑色レーザ光34g、青色レーザ光34bは回転多面鏡35に対して入射角度がそれぞれ異なるが、入射位置を違わせることで、導光板38の入射面38aの同じ領域を走査させることが出来る。この様にして、レーザ光源を用いても、フィールドシーケンシャル方式の照明を行うことが出来る。
【0054】
尚、本液晶表示装置30においては、回転多面鏡35を用いて走査したが、もちろんこれに限定するものではなく、他の走査手段でも構わない。また本液晶表示装置30の光学系もあくまで一例であり、液晶表示パネル11を均一に走査照明できるのであれば、本液晶表示装置30の光学系に限定するものではなく、どのような形態でも構わない。
【0055】
また、本液晶表示装置30においては、光源にレーザ光源を用いたが、同様な性能を有する光源であればこれに限定するものではなく、例えばSLD(スーパールミネッセントダイオード)等を用いても構わない。SLDを用いることで、さらにスペックルが視認されにくい、高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。
【0056】
(実施の形態2)
本実施の形態2の液晶表示装置40に関して、図11(a)を用いて説明する。本実施の形態2の液晶表示装置40は、実施の形態1の液晶表示装置10と類似であるが、放熱に関して異なる。図11(a)は実施の形態1の図1(b)に対応する断面図である。図11(a)に示す様に、液晶表示装置40は、各光源12が熱伝導体41に接続されており、さらに各熱伝導体41が液晶パネル11を保持するパネル保持体42に接続されている。こうすることにより、各光源12から発した熱は、熱伝導体41を経由してパネル保持体42に伝わり、最終的に液晶表示パネル11につながる。一般に、液晶の応答速度は、温度が高くなるほど高速になることが知られている。よって、液晶を加熱することにより応答速度が高速になり、フィールドシーケンシャル方式の様に液晶の応答速度に数ミリ秒程度の高速な応答が要求される液晶表示装置においても、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。本実施の形態の液晶表示装置40においては、光源12で発生した熱を用いることで、本来熱損失としてロスになるエネルギーをロス無く用いている。もちろん、図11(a)に示す様に、各光源12だけでなく、熱損失の発生する制御部14や電源43もパネル保持体42に接触させて、各光源12から発生した熱と同様に、制御部14や電源43で発生した熱も液晶表示パネルに伝えても構わない。そうすることで、液晶表示パネル11をさらに加温することができ、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。
【0057】
また、光源12が例えばLEDであった場合、発光した光量の倍程度が熱エネルギーとして発生することが知られており、仮に液晶表示装置40の画面サイズ(対角線長さ)が37インチで、定格電力が120Wで、仮に定格電力の半分に相当する60Wが熱損失として発生している場合、液晶表示パネル11が厚み1.2mmであれば、3分程度で10℃上昇することになる。よって、液晶表示装置40が内部に温度計を備えておき、電源をONしたときの温度が所定の温度より低ければ、各光源12を各フィールドにおいて出来るだけ長く明るく点灯させることで、早期に液晶表示パネル11を加温することができ、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。もちろん、各光源12の廃熱を用いる以外にも、図11(b)に示す様に、液晶表示パネル11に制御装置14から直接金属配線44を這い回して、必要に応じて金属配線44に電流を流して金属配線44を発熱させることで、液晶表示パネル11を加温しても構わない。この場合金属配線44は、各信号線DLmや走査線GLnの近傍等、各液晶画素の開口以外の場所を這い回すことで、透過する光を遮ることなく加温することが可能である。ここで、金属配線44は、ヒータとして機能すれば、その素材は金属に限定せず、さらに形状も線状か否かは問わない。
【0058】
次に、液晶を加温する他の方法に関して、図12を用いて説明する。図12は液晶表示パネル11を図11(a)の矢印40Aの方向から見た拡大図であり、走査線(GLn−2〜GLn)と信号線(DLm−2〜DLm)で囲まれた領域が個々の画素に該当する。画素45においては、走査線GLn−2と信号線DLm−2の交点近傍にTFTを配置し、TFTのゲート電極に走査線GLn−2が、ドレイン電極に信号線DLm−2が接続されている。さらにTFTのソース電極には、図12に示す様に透明電極46が接続されており、信号印加時には図示しない共通電極との間で電位差を生じさせ、液晶に電圧を印加して液晶を駆動する。この透明電極は通常はワイドギャップ半導体膜が使われ、例えば酸化インジウムに5〜10%の酸化スズを添加したITO膜をスパッタ等の方法で製作されることが多い。ここで液晶を加温するためには、透明電極において各光源12から出射された光が吸収されると良い。一般に、ITO等のワイドギャップ半導体は、電磁波の吸収端を400nm近傍の紫外線領域に有するため、約400nm以下に該当する紫外線はほとんどが吸収される。よって、光源12のひとつとして、紫外線を発光する光源を含み、この紫外線を発光する光源から出射された紫外線を透明電極が吸収することにより、透明電極が発熱し液晶を加温することが出来る。例えば、液晶表示装置30内に温度計を設けておき、測定された温度が低い時は、内蔵されている紫外線光源を駆動し、出射した紫外線を透明電極に吸収させることで、液晶を加温し、液晶の応答速度を加速することが出来る。この様にすることで、フィールドシーケンシャル方式の様に液晶の応答速度に数ミリ秒程度の高速な応答が要求される液晶表示装置においても、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を構成することが可能になる。尚、本紫外線光源は、画像形成に寄与しないため、各フィールドの周期には関係せず、常時点灯させても構わない。
【0059】
また、光源12のひとつとして、紫外線で蛍光体を励起して赤、青、緑色等の可視光をそれぞれ発光させたようなLED光源を用いても構わない。例えば、紫外線で励起して緑色を発光するLEDを用いた場合、励起に用いた紫外線の内、蛍光体に吸収されて緑色に変換された紫外線の残りは、蛍光体を透過して液晶表示パネル11を照射することになる。よって透明電極36は残りの紫外線を吸収することで発熱し、液晶を加温することに加担する。こうすることで、紫外線光源を専用に設けることなく液晶表示装置40を構成することが出来るため、上に述べた様なフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置を安価に構成することが可能になる。また、一般に波長400nm近傍のLEDの変換効率は、外部量子効率で50%を越えているものもあるが、緑色のLEDの外部量子効率は20%以下と低い。よって、緑色光を外部量子効率の高い紫外線LEDから得ることは、変換効率的にも有利であるというメリットを有する。
【0060】
また、例えば光源12のひとつに緑色光源として赤外レーザ光を波長変換することで得られる緑色レーザ光源を用いた場合、波長変換されずに残った赤外レーザ光を吸収させることでも、液晶を加温することが出来る。例えば、赤外レーザ光を発する赤外レーザ光源として、YAGレーザの1064nmのレーザ光源を用い、出射された赤外レーザ光源を基本波としてLiNbO3等の波長変換素子に入射させることで、倍波に相当する532nmの緑色レーザ光を得ることができる。一方で波長変換されずに残った1064nmの基本波を透明電極46に吸収させる。ITO等の透明電極は、吸収端は400nm程度に存在するが、酸素欠陥やチタンやクロム、鉄等の着色性の遷移金属イオンを導入することで、可視域や赤外域でも吸収帯を生成することが可能になる。透明電極46に例えば鉄イオンを導入することで、赤外域においても光を吸収させることが出来るため、波長変換されずに残った1064nmの基本波を、画像形成に寄与する他の可視域の光と同様に出射させることで、透明電極46に1064nmの基本波を吸収させることができるため、光源を専用に設けることなく液晶を加温することができる。よってフィールドシーケンシャル方式の様に液晶の応答速度に数ミリ秒程度の高速な応答が要求される液晶表示装置においても、明るく、入力された画像データに忠実な高画質な液晶表示装置を安価に構成することが可能になる。
【0061】
尚、ここでは1064nmのYAGレーザ光を波長変換した時の例を示したが、本実施の形態はこれに限定するものではなく、赤外の光を波長変換して画像形成に寄与する光源であれば同様に用いることが出来る。また、画像形成に寄与する可視域の光源とは別に、赤外光源を加温専用に用意しても勿論構わない。
【0062】
また、透明電極に吸収させる光を発する光源を専用に設けない液晶表示装置40としては、他に例えば、画像形成に用いる可視域の光を、透明電極46に吸収させることも可能である。例えば上で鉄イオンを導入することで赤外光を吸収させた場合と同様に、チタニウムイオンを導入することで、青色に着色させることが可能となる。即ち、青色の補色である黄色領域に吸収を有するため、緑色と赤色の光を吸収することになる。この様にして、画像形成に用いる光の内の一部を透明電極に吸収させることにより、透明電極に吸収させる光を発する光源を専用に設けることなく、液晶表示装置40を構成することができ、応答速度が速く高画質な液晶表示装置を安価に提供できるという効果を有する。例えば、出射された光の20%程度を吸収させることができれば、上記で述べた画面サイズ(対角線長さ)が37インチの液晶表示装置であれば、20分程度で液晶パネルを10℃程度加温することができ、望ましい。
【0063】
さらに、図13に示す様に他の方法においても、液晶を加温することが可能である。図13は液晶表示パネル11における、図12の40B―40B断面での断面図である。液晶表示パネル11は、下側ガラス板48の上に信号線(DLm−2〜DLm)を配置し、上側ガラス板49の下に共通電極47を設け、その間に厚さ数マイクロメートルの液晶層50を挟みこむ構造を取っている。さらに、液晶層50の数マイクロメートルの厚みを維持する様に、スペーサ51を液晶層内に導入している。一般に、スペーサ51はシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)が用いられており、通常画像形成に用いられる可視域においては透明で吸収が無い。このスペーサ51に染料で着色された着色シリカを用いた場合、上で述べた着色された透明電極と同様に、各光源12から出射された画像形成に寄与する可視域の光の一部を吸収させることができる。この様にすることで、スペーサ51が光を吸収することで発熱するため、液晶を加温することができ液晶の応答速度を高速化することが可能であり、応答速度が速く高画質な液晶表示装置を提供できるという効果を有する。また、シリカは紫外域を含めて透明であるが、アクリルは可視域においては透明であるが紫外域に吸収を持つため、スペーサ51としてシリカではなくアクリルを用いると、上述のITO等の透明電極と同様に、光源12のひとつに紫外線を出射する光源を用いた場合や、紫外線を蛍光体等で可視域の光に変換した場合において、スペーサ51で紫外線を吸収させることでスペーサ51を発熱させ、液晶を加温することができる。この様にスペーサ51としてアクリルの様な紫外域に吸収を持つ材料を用いることでも、液晶を加温することができ液晶の応答速度を高速化することが可能であるため、応答速度が速く高画質な液晶表示装置を提供できるという効果を有する。もちろん、アクリル以外でも紫外域に吸収を持ち、可視域が透明である材料であれば、同様の効果を持つことは言うまでも無い。また、透明電極の場合と同様に、出射された光の20%程度を吸収させることができれば、上記で述べた画面サイズ(対角線長さ)が37インチの液晶表示装置であれば、20分程度で液晶パネルを10℃程度加温することができ、望ましい。
【0064】
尚、本実施の形態2において、赤色光源、青色光源、緑色光源等から出射される光を順次駆動するが、本来光源を消灯するタイミングにおいてもわずかに点灯させることで、透明電極やスペーサでの光の吸収量を増やすことで液晶の加温を促進できるため、さらに応答速度が速く、高画質な液晶表示装置を提供することが出来る。例えば、光源として波長455nm、532nm、635nmのレーザ光源を用いて、常時10%ずつ光量を点灯させた場合でも、各フィールドにおいて所望の色を最大出力で発光させることで、表示可能な色範囲としてNTSC比で84%を満たす。こうすることで、実用上何ら問題の無い色再現範囲を確保しながら、一方で液晶表示パネルを加温して液晶の応答速度を高速化することが可能であるため、応答速度が速く高画質な液晶表示装置を提供できるという効果を有する。
【0065】
尚、本実施の形態においては、透明電極やスペーサにおける光の吸収を例として示したが、本実施の形態はそれに限定するものではなく、同様な効果を有するものであれば他の構成でも構わない。例えば液晶自体に光を吸収させても構わないし、ガラス板等に吸収させても構わない。
【0066】
また、前述した各実施例は、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置に関して説明したが、それ以外の方式においても、液晶を高速で駆動する場合には同様に有効である。例えば従来の液晶表示パネルの様に各画素を赤色、緑色、青色の三色のサブピクセルで構成された液晶表示パネルを用いた液晶表示装置であっても、動画応答性改善のために画像ひとフレームを複数のサブフレームに分割する2倍速以上の高速駆動の液晶表示装置においても有効である。
【0067】
なお、前述した各実施例は考えられる一例であり、その適用範囲を限定するものではなく、本発明の真意および範囲を逸脱することなしに種々変形、組合せを行うことは、容易に理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の液晶表示装置は、簡便な構成で液晶を高速に応答させることが可能であり、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10,21,30,40,60 液晶表示装置
11 液晶表示パネル
12 光源
12r 赤色光源
12g 緑色光源
12b 青色光源
13 反射部
14 制御部
15 ソースドライバ
16 ゲートドライバ
20a,b,c,d 照明ブロック
22a,b,c,d 導光板
23 底面反射体
24 側面反射体
25 シャッター眼鏡
26 制御装置
32r 赤色レーザ光源
32g 緑色レーザ光源
32b 青色レーザ光源
33 コリメータレンズ
34r 赤色レーザ光
34g 緑色レーザ光
34b 青色レーザ光
35 回転多面鏡
36,37 フレネルレンズ
38 導光板
39 検出器
41 熱伝導体
42 パネル保持体
43 電源
44 金属配線
45 画素
46 透明電極
47 共通電極
48 下側ガラス板
49 上側ガラス板
50 液晶層
51 スペーサ
TFT 薄膜トランジスタ
Clc 容量
Vcom 共通電極
DL 信号線
GL 走査線
FP 画像ひとフレーム
SF1 前側サブフレーム
SF2 後側サブフレーム
Fr1,Fr2 赤色フィールド
Fg1,Fg2 緑色フィールド
Fb1,Fb2 青色フィールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する液晶表示パネルと、
前記液晶パネルを駆動する駆動回路と、
複数色の光を順次出射するバックライトを備え、
1フレーム期間が複数のサブフレームからなり、さらに各サブフレームは複数のフィールドに分割され、前記各フィールドにおいて、所望の画像データを前記液晶表示装置に入力し、該当する色の光を前記バックライトから前記液晶表示パネルに対して照明することで画像を形成する、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であって、
前記各フィールドにおいて液晶に印加される電圧を、前記各フィールド終端近傍にてゼロにすることなく、前記液晶表示パネルに対して連続的に与えられることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項2】
前記該当する色の光の発光時間幅と発光タイミングを調整可能にしたことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記該当する色の光の点灯、消灯タイミングは、周囲照度により発光する幅とタイミングを変更することで調整可能にしたことを特徴とする、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記該当する色の光の点灯、消灯タイミングは、前記液晶表示パネルの温度により、発光する幅とタイミングを変更することで調整可能にしたことを特徴とする、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記バックライトは、前記複数色の光源を前記液晶表示パネルの背面に面状に複数個配列し、さらに上下方向に複数ブロックに分割して各ブロックに順次照明するバックライトであり、前記各フィールドにおける前記液晶表示パネルの前記各画素に入力される画像データは、前記各画素の直下にあるブロックに隣接するブロックからの距離に応じて補正することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記バックライトは、前記複数色の光源を前記液晶表示パネルの背面に面状に複数個配列し、さらに上下方向に複数ブロックに分割して各ブロックに順次照明するバックライトであり、前記各フィールドにおける前記液晶表示パネルに入力される画像データの内少なくとも一つの画素において、前記フィールドの1つ後のフィールドの画像データに応じて補正されていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記各サブフレームを構成する各フィールドに対して与えられる画像データは、同じ色のフィールドに対してサブフレーム間で異なることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記各サブフレームを構成する各フィールドに与えられる、少なくとも一つの色に該当する画像データに関し、ある画素における偶数サブフレームの画像データと奇数フレームの画像データの大小関係を、隣接する画素で逆転させたことを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示パネルを固定する保持体に対して、前記複数色の光を出射する光源の放熱部を接続したことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記液晶表示パネルに液晶の駆動に寄与しないヒータを配設したことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶表示パネルは、内部に液晶層と、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を有し、前記透明電極が前記各色の光を20%以上吸収することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶表示パネルは、内部に液晶層と、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を有し、前記バックライトから出射される前記複数色の光は、赤外光もしくは紫外光を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記複数色の光の内少なくとも一つの光を出射する光源は、赤外光もしくは紫外光を波長変換することで得られた光であり、波長変換されずに残った光が前記バックライトから出射していることを特徴とする、請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶表示パネルは内部に液晶層を有し、前記液晶層内には前記液晶層の厚みを均一にするスペーサを有し、前記スペーサは前記各色の光を20%以上吸収することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記バックライトから出射される光は、フィールドのタイミングに依らず常に出射されていることを特徴とする、請求項11から14に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射するレーザ光源を含むことを特徴とする、請求項1から15に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射する発光ダイオード(LED)を含むことを特徴とする、請求項1から15に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記バックライトから複数色の光を出射する光源は、赤、青、緑色光を出射するスーパールミネッセントダイオード(SLD)を含むことを特徴とする、請求項1から15に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−19921(P2013−19921A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256733(P2009−256733)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】