説明

液晶表示装置

【課題】垂直配向型の液晶表示装置における表示均一性の向上。
【解決手段】液晶表示装置は、第1基板、第2基板、第1基板に設けられた第1電極13、第2基板に設けられた第2電極14、第1基板に設けられた第1垂直配向膜、第2基板に設けられた第2垂直配向膜、少なくとも第1電極と第2電極の重畳する領域内に配置され、第1基板と第2基板の双方に当接した複数の柱状スペーサー18、第1基板と第2基板の相互間に設けられた液晶層を備える。第1垂直配向膜は、一方向へ配向処理を施され、液晶層は、電圧無印加時においてプレティルト角を有しており、複数の柱状スペーサーは、各々、平面視において液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向に対して直交せず、かつ平行ではない線からなる輪郭を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向型の液晶表示装置における表示品質の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上下基板間に配置された液晶層内の液晶分子が電圧無印加時において各基板に対してほぼ垂直に配向する垂直配向型の液晶表示装置(液晶表示素子)は、上下基板を挟んで配置される各偏光板をクロスニコル配置としたノーマリーブラックモードを採用することで暗状態の透過率を極めて低くすることができる。それにより、コントラスト比が大きく表示品位に優れた液晶表示装置を実現することができる。このような垂直配向型の液晶表示装置の先行例は、例えば特開2008−281752号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
上記のような垂直配向型の液晶表示装置は、下基板に設けられた下側電極と上基板に設けられた上側電極によって液晶層に電圧を印加することで液晶層の配向状態が制御される。電圧印加方法としては、例えばマルチプレックス駆動法(単純マトリクス駆動法)が用いられる。液晶表示装置の表示部の構成としては主に、表示画像に対応させた形状の電極を用いるセグメント型と、上基板、下基板のそれぞれに設けられたストライプ状の電極を各々の延在方向が交差するように配置し、電極同士の重なった部分のそれぞれを画素とするドットマトリクス型がある。液晶層は、電圧無印加時において各基板に対して僅かに傾斜したプレティルト角を有するモノドメイン垂直配向状態に制御するために、各基板の表面には垂直配向膜が設けられ、かつこれらの垂直配向膜にはラビング処理などの配向処理が施される。配向処理の方向は、例えば液晶表示装置の表示面において上下方向(12時方向、6時方向)に設定されたアンチパラレル状態とされる。液晶層を構成する液晶材料としては誘電率異方性が負の値のものが用いられる。各電極を用いて液晶層に電圧が印加された際には、液晶層の大部分の領域において配向処理の方向に沿って液晶分子が基板面に対して水平に再配向する。上下基板の外側には、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置された上側偏光板、下側偏光板が設けられる。各偏光板の吸収軸は、例えば配向処理の方向に対して略45°に配置される。各基板と各偏光板の間には適宜、視角補償板が設けられる。視角補償板としては負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有するものが用いられる。負の二軸光学異方性を有する視角補償板を用いる場合には、その面内遅相軸が近接する偏光板の吸収軸に対して略直交であることが好ましい。
【0004】
上述のような垂直配向型の液晶表示装置は、最も表示品位に優れる最良視認方向を表示面の6時方向に設定することができる。一方、この最良視認方向を180°回転した方向においては、表示面の法線方向を基準にして極角方向にある程度の角度をつけて観察すると本来明表示としている部位が非常に暗くなりコントラストが低下する反視認方向が存在する。最良視認方向および反視認方向と直交する方向である表示面の左右方向においては、比較的に良好な視角特性が得られる。このため、多くの用途においては上記構造を有する液晶表示装置が好適に用いられる。
【0005】
ところで、従来の液晶表示装置においては、上下基板間の間隔(セル厚)を一定にするために上下基板間に球状スペーサーを分散配置させていた。この球状スペーサーの粒径に応じて液晶表示装置のセル厚が設定される。ところが、特に垂直配向型の液晶表示装置では球状スペーサーの周辺において液晶層に配向不均一な領域が発生しやすく、当該領域が電圧無印加時における光抜けや電圧印加時の暗領域を生じさせる誘因となっている。この不都合に対しては、球状スペーサーに代えて、感光性樹脂を用いて形成される柱状スペーサーを上下基板間に配置することが考えられる。例えば、ドットマトリクス型の場合には上下基板の各々のストライプ状電極の間に柱状スペーサーを配置することで表示均一性ならびにセル厚均一性の向上を図ることができる。
【0006】
しかしながら、上述のように垂直配向型の液晶表示装置に柱状スペーサーを導入した場合であっても、反視認方向(12時方向)を中心にして時計回りならびに反時計回りにそれぞれ60°程度の方向から液晶表示装置を観察したときに、例えばドットマトリクス型の表示部全体においてざらつき感が視認されるという現象が起こる。このような表示均一性の損なわれた状態は、画素のエッジ付近と柱状スペーサーのエッジ付近で特に顕著に観察される。さらに、柱状スペーサーのエッジ付近では、反視認方向ではなくそれ以外の方向において表示不均一が観察される場合もある。また、このような表示不均一は、マルチプレックス駆動法におけるフレーム周波数を低くした場合により顕著になる傾向が認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−281752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明に係る具体的態様は、垂直配向型の液晶表示装置における表示均一性を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、(a)対向配置された第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、(c)前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、(d)前記第1基板の一面側に設けられた第1垂直配向膜と、(e)前記第2基板の一面側に設けられた第2垂直配向膜と、(f)少なくとも前記第1電極と前記第2電極の重畳する領域内に配置され、前記第1基板と前記第2基板の双方に当接した複数の柱状スペーサーと、(g)前記第1基板と前記第2基板の相互間に設けられた液晶層を含み、(h)前記第1垂直配向膜は、一方向へ配向処理を施され、(i)前記液晶層は、電圧無印加時においてプレティルト角を有しており、(j)前記複数の柱状スペーサーは、各々、平面視において前記液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向(あるいは前記配向処理の方向)に対して直交せず、かつ平行ではない線からなる輪郭を有する、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、垂直配向型の液晶表示装置に柱状スペーサーを導入した場合に表示部にざらつき感が視認される要因となる暗線の交差点の発生位置のバラツキを抑え、当該交差点の発生位置を規則的な状態にすることができる。したがって、垂直配向型の液晶表示装置における表示均一性を向上させることが可能となる。
【0011】
上記の液晶表示装置において、複数の柱状スペーサーの各々の輪郭は、例えば直線からなることが好ましい。
【0012】
また、複数の柱状スペーサーの各々の輪郭は、例えば折線若しくは曲線又はこれらの組み合わせからなることも好ましい。また、この場合において複数の柱状スペーサーの各々は、全体的な延在方向が配向処理の方向に対して略直交し又は略平行であることも好ましい。
【0013】
上記の液晶表示装置において、複数の柱状スペーサーは、各々、例えば略台形状の断面形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マトリクス型の電極構造の一例を示す模式的な平面図である。
【図2】図1に示す電極構造を採用した垂直配向型の液晶表示装置の一例を示す部分断面図である。
【図3】図2に示した液晶表示装置における電圧印加時の法線方向から観察した1画素の配向組織像を示す図である。
【図4】配向状態を図3の配向組織像に重ねて矢印で示した図である。
【図5】液晶表示装置における電圧印加時の1画素内のダイレクタ分布を概略的に示す概念図である。
【図6】一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。
【図7】図6に示す本実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の電極構造の一例を示す模式的な平面図である。
【図8】図7に示す液晶表示装置のVIII-VIII線に対応する断面を示した部分断面図である。
【図9】柱状スペーサーの概略平面図である。
【図10】プレティルト角を約89°に設定し、配向処理の方向(ラビング方向)の角度を−10°に設定した実施例の液晶表示装置の電圧印加時における1画素分の配向組織の観察像を示す図である。
【図11】他の実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。
【図12】図11に示す実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の構造の模式的な平面図である。
【図13】図12に示す電極構造における柱状スペーサーの構成例を示す平面図である。
【図14】他の実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の構造を示す模式的な平面図である。
【図15】他の実施形態の液晶表示装置の1画素分の断面を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、始めに垂直配向型の液晶表示装置に柱状スペーサーを導入した場合において表示不均一を生じる原因についての本願発明者による考察を説明し、その後この考察により得られた知見に基づく本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、マトリクス型の電極構造の一例を示す模式的な平面図である。図1に示すように、図示のY方向に延在するストライプ形状の複数の上側電極63と、Y方向と直交するX方向に延在するストライプ形状の複数の下側電極64を組み合わせることによりマトリクス型の電極構造が得られる。上側電極63と下側電極64が交差した領域のそれぞれが画素部60となり、全体としてはマトリクス状に配列された複数の画素部60が構成される。
【0017】
図2は、図1に示す電極構造を採用した垂直配向型の液晶表示装置の一例を示す部分断面図である。図2に示す部分断面図は、図1に示したII−II線断面(画素部1つ分の断面)に対応している。図2に示す液晶表示装置は、上側基板(第1基板)61および下側基板(第2基板)62と、上側基板61の一面に設けられた上側電極63および配向膜65と、下側基板62の一面に設けられた下側電極64および配向膜66と、上側基板61と下側基板62の間に設けられた液晶層67および柱状スペーサー68と、を含んで構成されている。
【0018】
各柱状スペーサー68は、図示のように上側電極63から下側電極64に向かって末萎みのテーパー断面形状(略台形状の断面形状)であり、それぞれ下側電極64の延在方向と略同じ方向に延在して設けられている。本例では1つの画素部60(図1参照)に対して3つの柱状スペーサー68が配置されている。これらの柱状スペーサー68は、感光性樹脂などを用いて形成されており、上側電極63に固着し、下側基板62側の配向膜64側に当接している。なお、下側電極64と各柱状スペーサー68の間には絶縁膜が設けられていてもよい。
【0019】
各配向膜65、66は、液晶層67の液晶分子を略垂直に配向させる垂直配向膜であり、それぞれに配向処理(本例ではラビング処理)が施されている。配向膜65へ施されたラビング処理の方向(以下「ラビング方向」という。)53と、配向膜66のラビング方向54は相互に反対方向とされている(アンチパラレル状態)。図1に示すように、配向膜65のラビング方向53および配向膜66のラビング方向54は、上側電極63の延在方向と略平行に設定されている。本例では、このラビング方向53、54が液晶表示装置の表示部の上下方向と一致している。各配向膜65、66にラビング処理が施されることにより、液晶層67の液晶分子にはプレティルト角が発現している。液晶層67は、負の誘電率異方性を有する液晶材料を上側基板61と下側基板62の間に充填することによって形成されている。
【0020】
図2に示す液晶表示装置において、上側電極63と下側電極64の間に電圧が印加された場合には、両電極が上下で重なる領域のほぼ全域で各々のラビング方向53、54によって規定された方向に沿って液晶層67の液晶分子が傾斜する。しかし、上側電極63、下側電極64の各々のエッジ付近においては、図中に破線で示すように上下基板間に斜め電界が生じるため、エッジ付近の液晶分子はこの斜め電界と直交する方向に長軸方向が傾斜する。このため、液晶層67内では、ラビング方向によって規定された配向方向(容易軸)とは異なる方位に液晶分子が配向する領域が発現する。このような液晶分子の配向方向を図2においては液晶層67の内部に棒状に示している。図示のように、画素エッジ付近以外および柱状スペーサー68から比較的に離れた領域においては、液晶分子がラビング方向53、54に従って規定される配向方向に沿って均一に配向する。しかし、画素エッジ付近の斜め電界が生じる領域では斜め電界により規定される配向方向とラビング方向53、54により規定される配向方向が異なる場合は、斜め電界により規定される配向方向に液晶分子が配向する。さらに、柱状スペーサー68の周辺においても、テーパー断面形状の影響により、ラビング方向53、54で規定される配向方向とは異なる方向に液晶分子が配向すると考えられる。
【0021】
図3は、図2に示した液晶表示装置における電圧印加時の法線方向から観察した1画素の配向組織像を示す図である。ラビング方向53、54は図示の通りであり、かつ各偏光板の吸収軸55、56は相互に直交し、かつ各ラビング方向53、54に対して略45°の方向に設定されている。図示のように、1つの画素内には下側電極の延在方位と平行に複数のストライプ状の柱状スペーサーが配置されている。1つの画素における左右辺及び上辺においてエッジ付近に暗領域または暗線が観察される。これは斜め電界による配向方向とラビング方向(容易軸)により規定される配向方向とが異なるために画素エッジ周辺でダイレクタの回転が生じ、上下の各偏光板の吸収軸55、56のいずれか一方に配向方向が略一致することで暗領域が生じるためである。詳細には、左右辺のエッジ付近においては配向方向が90°回転し、上辺のエッジ付近では180°回転していると考えられる。一方、図3に示すように各柱状スペーサーの上辺においても暗線(暗領域)が観察される。これは柱状スペーサーのテーパー断面形状による配向方向とラビング方向(容易軸)により規定される配向方向が略180°異なるために観察される現象であり、この領域付近でもダイレクタは180°回転していることが分かる。これらの配向状態を図3の配向組織像に重ねて矢印で示すと図4のようになる。画素部の上辺エッジ付近および柱状スペーサーの上辺エッジ付近において、いずれも暗線(暗領域)が生じているが、一部においては画素部の上辺エッジまたは柱状スペーサーの上辺エッジと交差している部分が観察される。しかも、この暗線の交差点は不規則に発生しており、各画素部によっても異なる位置に発生することが確認されている。
【0022】
図5は、上記した液晶表示装置における電圧印加時の1画素内のダイレクタ分布を概略的に示す概念図である。図中の矢印は液晶層の厚み方向における中央の液晶分子が下側基板に近い側を基準として傾いている方向を指し示している。図5に示すように、画素部の上辺エッジにおける上記した交差点では、液晶分子が電圧印加状態にもかかわらず基板に対して垂直であるポイントディスクリネーションが形成されており、このポイントディスクリネーションを中心に液晶分子が放射状に配向していると考えられる。このため、この交差点が画素部ごとに不規則な位置にあると、特に上辺エッジ付近における視角特性が変化し、反視認方位を中心に時計、反時計回りに60°程度で液晶表示装置の法線方位から極角方向に対して観察角度を傾けた場合、画素部ごとに視角特性が異なることから外観観察上は表示のざらつき感として認識され、表示不均一性が顕在化すると考えられる。したがって、何らかの方法により上記した交差点をすべての画素部でほぼ等しい位置に固定化することにより、表示不均一性を解消することが可能になると予想される。これは180°のダイレクタ回転を生じる柱状スペーサーの上辺エッジ付近においても同様と考えられる。なお、上記においては柱状スペーサーを上側電極に設けていたが、下側電極に形成した場合にはテーパー断面形状が逆テーパーとなるため、画素部内の柱状スペーサーによる暗線の発生位置は柱状スペーサーの下辺エッジ側にシフトする傾向が見られる。
【0023】
次に、上述のような知見に基づいて創作された本発明に係る一実施形態の液晶表示装置について詳細に説明する。
【0024】
図6は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図(正面図)である。図6に示す本実施形態の液晶表示装置は、上下基板間に配置された液晶層内の液晶分子が電圧無印加時において各基板に対してほぼ垂直に配向する垂直配向型の液晶表示装置であり、上下基板を挟んで配置される各偏光板をクロスニコル配置としたノーマリーブラックモードを採用している。本実施形態の液晶表示装置は、図示のように表示領域内にマトリクス型表示部とセグメント型表示部を備えている。この液晶表示装置は、例えば車載用の情報表示部として用いられる。
【0025】
図7は、図6に示す本実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の電極構造の一例を示す模式的な平面図である。図7(A)または図7(B)に示すように、図示のY方向に延在するストライプ形状の複数の上側電極(第1電極)13と、Y方向と直交するX方向に延在するストライプ形状の複数の下側電極(第2電極)14を組み合わせることによりマトリクス型の電極構造が得られる。上側電極13と下側電極14が交差した領域のそれぞれが画素部10となり、全体としてはマトリクス状に配列された複数の画素部10が構成される。
【0026】
図8は、図7に示す液晶表示装置のVIII−VIII線に対応する断面構造を示した部分断面図である。図8に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、対向配置された上側基板(第1基板)11および下側基板(第2基板)12と、両基板の間に配置された液晶層17を基本構成として備える。なお、液晶層17の周囲を封止するシール材等の部材については図示および説明を省略する。
【0027】
上側基板11は、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。下側基板12は、上側基板11と同様に、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、上側基板11と下側基板12は、各々に設けられた上側電極13と下側電極14とが対向するようにして、所定の間隙(例えば3μm程度)を設けて貼り合わされている。
【0028】
上側電極13は、上側基板11の一面側に設けられている。同様に、下側電極14は、下側基板12の一面側に設けられている。上側電極13および下側電極14は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。これらの上側電極13と下側電極14の重なる領域において、上記した図6に示したセグメント表示部およびマトリクス表示部が形成される。
【0029】
配向膜15は、上側基板11の一面側に、上側電極13を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜16は、下側基板12の一面側に、下側電極14を覆うようにして設けられている。これらの配向膜15、16は、液晶層17の配向状態を規制するものである。本実施形態では、配向膜15、16として垂直配向膜を用いる。
【0030】
液晶層17は、上側基板11の上側電極13と下側基板12の下側電極14との間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層17が構成される。液晶層17に図示された太線は、液晶層17における液晶分子の配向方向を模式的に示したものである。本実施形態の液晶層17は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向が上側基板11および下側基板12の各基板面に対して略垂直となる垂直配向モードに設定されている。
【0031】
柱状スペーサー18は、透明樹脂あるいは所望の着色がなされた樹脂(ブラック樹脂、カラー透明樹脂等)を用いて形成されており、図8に示すように上側電極13から下側電極14に向かって末萎みのテーパー断面形状(略台形状の断面形状)に形成されている。この柱状スペーサー18の概略平面図を図9に示す。図9においてはマトリクス型表示部の1画素分の構造が示されている。図示のように、上側電極13と下側電極14の重畳する領域が1つの画素部に対応しており、この1つの画素部あたりに複数(図示の例では3つ)の柱状スペーサー18が配置されている。各柱状スペーサー18は、それぞれ下側電極14の延在方向(X方向)と略同じ方向に延在するストライプ状の形状に設けられている。別言すると、各柱状スペーサー18は、平面視において直線からなる輪郭(外縁形状)を有しており、この直線がX方向と略平行となるように配置されている。各柱状スペーサー18は、上側電極13に固着し、下側基板12側の配向膜16に当接している。なお、上側電極13と各柱状スペーサー18の間には絶縁膜が設けられていてもよい。
【0032】
上側偏光板19は、上側基板11の外側に配置されている。同様に、下側偏光板21は、下側基板12の外側に配置されている。上側偏光板19と下側偏光板21は、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。また、上側偏光板19と下側偏光板21の各吸収軸は、配向処理の方向に対応して定義される液晶層17の層厚方向の略中央における液晶分子(以下「液晶層中央分子」と称する。)の配向方向に対して略45°の角度をなす位置に設定される。なお、各偏光板と各基板との間には適宜Cプレート等の光学補償板が配置されてもよい。例えば本実施形態では、上側基板11と上側偏光板19の間、下側基板12と下側偏光板22の間のそれぞれに光学補償板20、22が配置されている。
【0033】
次に、再び図7を参照しながら、各配向膜15、16への配向処理の方向について詳細に説明する。配向膜15と配向膜16は、それぞれに対する配向処理の方向がアンチパラレル配向となるように一軸配向処理され、配置されている。このとき、図7(A)に示すように、各配向膜15、16への配向処理の方向23、24は上側電極13の延在方向(Y方向)を基準として0°より大きく90°より小さい角度φをなすように設定される。また、配向膜15への配向処理の方向23と配向膜16への配向処理の方向24とは互いに平行とされている。配向膜15、16は、例えば液晶層17に対して約89°のプレティルト角を付与し得るものが用いられる。配向処理としては、例えば公知のラビング処理、光配向処理等を用いることができる。なお、配向膜15と配向膜16のいずれか片方にのみ配向処理を行ってもよい。例えば、配向膜15にのみ配向処理を行う場合であれば、図7(B)に示すように配向処理の方向23を上側電極13の延在方向に対して角度φをなすように設定すればよい。また、図7に示す例では上側電極13の延在方向を基準にして角度φを規定していたが、下側電極14の延在方向(X方向)を基準にして角度φを規定してもよい。以上のように配向処理の方向を規定することにより、この配向処理の方向に対応して定義される液晶層中央分子の配向方向を、上側電極13、下側電極14のいずれの延在方向に対しても直交せず、平行にもならない状態にし、かつ柱状スペーサー18の平面視における輪郭をなす直線とも直交せず、かつ平行にもならない状態とすることができる(図9参照)。
【0034】
次に、本発明に係る液晶表示装置の実施例を説明する。
【0035】
始めに、上側電極を有する上側基板、下側電極を有する下側基板をそれぞれ作製した。具体的には、片面が研磨処理され、その表面にSiOアンダーコートが施された後、ITO(インジウム錫酸化物)からなる透明電極が成膜された一対のガラス基板を用意した。これらのガラス基板の透明電極に対してフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を行うことにより所望の形状にパターニングした。なお、本実施例では省略しているが、必要に応じて、パターニングされた透明電極の一部表面上にSiOなどによる絶縁層を形成してもよい。
【0036】
次に、上側基板側、もしくは下側基板側に、感光性樹脂を用いて、フォトリソグラフィー工程を実行することにより柱状スペーサーを形成した。柱状スペーサーの形状をより詳細に説明すると、断面台形状であり、その上底長は約7μm、下底長は約28μm、高さは約2.3μmである。これらより、柱状スペーサーの側辺の傾斜角度は約12.4°と算出される。
【0037】
次に、柱状スペーサーを形成した基板ともう一方の基板をアルカリ溶液等で洗浄し、各基板に垂直配向膜をフレキソ印刷法にて塗布し、クリーンオーブン内にて180℃で30分間焼成した。
【0038】
垂直配向膜の焼成後、綿製ラビング布を用いて、各基板共に基板面内の一方向にラビング処理を施した。ここでは、上述した図7に示した配向処理の方向(ラビング方向)の角度を−15°〜+15°の範囲内で5°刻みで異なる設定とした。
【0039】
さらに、下側基板には粒径約2μmのシリカスペーサーを混入した熱硬化型シール材をディスペンサーにて所望のパターンに塗布した。その後、上側基板と下側基板を、双方の電極面が対向し、かつ上記の図7に示した配向処理の方向(ラビング方向)がアンチパラレルになるようにして貼り合わせ、熱圧着にてシール材を硬化させた。これにより、ラビング方向の角度φの設定値が異なる複数種類の空セルが完成した。
【0040】
次に、これらの空セルに対して、Δnが0.1566程度、Δεが負の値である液晶材料を真空注入法にて注入した後、セル厚がより均一になるようにプレスして注入口を封止し、120℃にて1時間焼成した。
【0041】
次に、空セルの表面側(上側基板の外側)および裏面側(下側基板の外側)のそれぞれに偏光板を貼り合わせた。各偏光板は、互いの吸収軸がクロスニコル配置となり、かつそれぞれの吸収軸がラビング処理により定義される液晶層中央分子の配向方位に対して略45°となるように配置された。また、各偏光板と各ガラス基板の間には適宜、視角補償板を配置した。
【0042】
最後に、液晶材料を充填し、偏光板も貼り合わされた液晶セルの電極取り出し端子にリードフレームを取り付けて液晶表示装置を完成させた。なお、液晶層におけるプレティルト角は略89.8°〜89°に設定した。また、セル厚の実測値は約1.8μm程度であり、液晶層のリタデーションは略280nmであった。
【0043】
図10は、プレティルト角を約89°に設定し、配向処理の方向(ラビング方向)の角度φを−10°に設定した実施例の液晶表示装置の電圧印加時における1画素分の配向組織の観察像を示す図である。なお、配向組織の観察は室温下にて行われ、駆動条件は1/4デューティ、1/3バイアス、フレーム反転波形、印加電圧7V、フレーム周波数を200Hzと設定した。図10に示す配向組織において、画素の上辺エッジおよび柱状スペーサーの上辺エッジに発生する暗線の交差点は、画素の右辺エッジ付近に1つだけ発生しており、かつその発生位置は規則的であり固定化されることが確認された。なお、図示しない他の各画素も等しい配向組織が得られることを確認した。外観観察の結果、反視認方位、及び視認方位から観察した時に不均一性は解消されており全方位にて表示均一化を実現した。この効果は配向処理の角度φを±5°、±15°に設定した場合でも同様であった。また、プレティルト角が90°に近づくほどより顕著に効果が現れることを確認した。上記の現象は配向処理の角度φが0°より大きく90°未満であれば効果が発揮され、φが±5°〜±15°の範囲内でより効果が高い。
【0044】
なお、上記においては上側基板と下側基板の双方に配向処理を行い、かつ配向処理の方向をアンチパラレル配置していたが、いずれか一方の基板にのみ配向処理を行った場合でも同様な効果が期待できる。また、上側基板と下側基板の間で液晶層にねじれ配向状態を発現するように各基板を配向処理した場合でも、液晶層中央分子の配向方向を上側電極13、下側電極14のいずれの延在方向に対しても直交せず、平行にもならない状態とすれば同様の効果が実現可能である。さらに、液晶材料にカイラル材が添加されている場合でも同様な効果が得られる。
【0045】
次に、上記とは異なるいくつかの実施形態について説明する。
【0046】
図11は、他の実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。図11に示す実施形態の液晶表示装置は、マトリクス型表示部の画素配列が液晶表示装置の左右方向と平行ではなく僅かに傾斜している点が上記図6に示した実施形態とは異なっている。この実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の構造の模式的な平面図を図12に示す。図12に示すように、図示のY方向に延在するストライプ形状の複数の上側電極13と、X方向(液晶表示装置の左右方向)に対して僅かに傾斜した(例えば10°程度の角度をもって傾斜した)ストライプ形状の複数の複数の下側電極14aを組み合わせることによりマトリクス型の電極構造を構成している。上側電極13と下側電極14aが交差した領域のそれぞれが画素部10となり、全体としてはマトリクス状に配列された複数の画素部10が構成される。図12に示す電極構造における柱状スペーサーの構成例の平面図を図13に示す。図13に示す例では、下側電極14aの延在方向に対して略平行になるようにストライプ状の複数の柱状スペーサー18aが配置されている。また、図12および図13の各図中に示すように、配向処理の方向23、24は、Y方向と略平行になっている。それにより、液晶層中央分子の配向方向は6時または12時方向となるため、液晶層中央分子の配向方向を上側電極13、下側電極14aのいずれの延在方向に対しても直交せず、平行にもならない状態にし、かつ柱状スペーサー18aの平面視における輪郭をなす直線とも直交せず、かつ平行にもならない状態とすることができる。それにより、液晶表示装置の表示不均一性を解消することができる。
【0047】
図14は、他の実施形態の液晶表示装置におけるマトリクス型表示部の構造を示す模式的な平面図である。図14(A)〜図14(C)の各図に例示するように、柱状スペーサーの平面視形状をストライプ状以外にしてもよい。具体的には、図14(A)〜図14(C)に示すいずれの構造例においても、複数の上側電極13はY方向に沿ってストライプ状に形成され、複数の下側電極14はX方向に沿ってストライプ状に形成されている。そして、図14(A)に示す構造例では、各柱状スペーサー18bは、全体としてはX方向(液晶表示装置の左右方向)に対して延在し、局所的には屈曲を繰り返しており、スペーサー18bの延在方向が周期的に変化している。同様に、図14(B)に示す構造例では、各柱状スペーサー18cは、全体としてはY方向(液晶表示装置の上下方向)に対して延在し、局所的には屈曲を繰り返しており、スペーサー18cの延在方向が周期的に変化している。また、図14(C)に示す構造例では、各柱状スペーサー18dは、全体としてはX方向(液晶表示装置の左右方向)に対して延在し、局所的には円弧状の曲線形状に形成されており、この曲線形状がスペーサー18bの延在方向に沿って周期的に繰り返されている。これに対して図14(A)〜図14(C)の各図中に示すように、配向処理の方向23、24は、Y方向と略平行になっている。それにより、液晶層中央分子の配向方向は6時または12時方向となるため、液晶層中央分子の配向方向を上側電極13、下側電極14のいずれの延在方向に対しても直交せず、平行にもならない状態にし、かつ柱状スペーサー18の平面視における輪郭をなす直線とも直交せず、かつ平行にもならない状態とすることができる。それにより、液晶表示装置の表示不均一性を解消することができる。
【0048】
図15は、他の実施形態の液晶表示装置の1画素分の断面を示した部分断面図である。なお。上記した実施形態と共通する構成要素については同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。上記した実施形態における柱状スペーサー18は上側基板または下側基板の一方に固着された構造であったがその限りではなく、液晶表示装置の表示領域によって異なる基板に固着されてもよい。例えば、図15に示す液晶表示装置では、破断線を挟んで左側に示す表示領域に配置された柱状スペーサー18と中央側に示す表示領域に配置された柱状スペーサー18eとはそれぞれ異なる基板に固着されている。これにより、柱状スペーサーのテーパー断面形状を正逆で制御できる。また、図15に例示するように、一方の基板に固着された樹脂スペーサー18eが他方の基板の配向膜に当接しているならば、他方に固着された樹脂スペーサー18fは一方の基板の配向膜に当接しなくても同様な効果が得られる。ただし、一方の基板の配向膜に当接しない樹脂スペーサー18fの高さは液晶層17の層厚(セル厚)の1/2以上の高さであることが好ましい。図15に示す樹脂スペーサー18fのように一方の基板側には当接しないスペーサーというのは上記のいずれの実施例においても生じ得る。例えば、上記の製造過程においてはセル厚均一化のためのプレスを行ったが、必ずしもこれを行う必要はない。その場合においてはいくつかのスペーサーは一方の基板に当接されずにいる。本実施形態においてはこのような一方の基板側に当接していないスペーサーを有していてもよい。
【0049】
以上のような各実施形態並びに実施例の液晶表示装置によれば、暗線の交差点の発生位置を規則的な位置に制御することができる。これにより、表示部にざらつき感が視認される現象を回避し、表示均一性を向上させることが可能となる。また、配向処理の方向を上側電極または下側電極の延在方向と平行にする先行例との比較では、暗線(暗領域)の発生するフレーム周波数をより低い値に抑制することが出来る。このように配向不均一性が発生するフレーム周波数を低減できることからクロストークを抑制し良好な表示品位を実現し、さらには駆動回路の低コスト化を実現可能となる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10、60:画素部
11、61:上側基板
12、62:下側基板
13、63:上側電極
14、14a、64:下側電極
15、16、65、66:配向膜
17、67:液晶層
18、18a、18b、18c、18d、18e、18f、68:柱状スペーサー
19:上側偏光板
20、22:光学補償板
21:下側偏光板
23、24、53、54:配向処理の方向(ラビング方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1垂直配向膜と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2垂直配向膜と、
少なくとも前記第1電極と前記第2電極の重畳する領域内に配置され、前記第1基板と前記第2基板の双方に当接した複数の柱状スペーサーと、
前記第1基板と前記第2基板の相互間に設けられた液晶層、
を含み、
前記第1垂直配向膜は、一方向へ配向処理を施され、
前記液晶層は、電圧無印加時においてプレティルト角を有しており、
前記複数の柱状スペーサーは、各々、平面視において前記液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向に対して直交せず、かつ平行ではない線からなる輪郭を有する、
液晶表示装置。
【請求項2】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1垂直配向膜と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2垂直配向膜と、
少なくとも前記第1電極と前記第2電極の重畳する領域内に配置され、前記第1基板と前記第2基板の双方に当接した複数の柱状スペーサーと、
前記第1基板と前記第2基板の相互間に設けられた液晶層、
を含み、
前記第1垂直配向膜は、一方向へ配向処理を施され、
前記液晶層は、電圧無印加時においてプレティルト角を有しており、
前記複数の柱状スペーサーは、各々、平面視において前記配向処理の方向に対して直交せず、かつ平行ではない線からなる輪郭を有する、
液晶表示装置。
【請求項3】
前記複数の柱状スペーサーの各々の前記輪郭は直線からなる、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数の柱状スペーサーの各々の前記輪郭は折線若しくは曲線又はこれらの組み合わせからなる、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数の柱状スペーサーの各々は、全体的な延在方向が前記配向処理の方向に対して略直交し又は略平行である、請求項4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25151(P2013−25151A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160804(P2011−160804)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】