説明

液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置

【課題】輝度階調特性を安定させる液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】
階調値を記憶するフレームメモリ11と、現フレームの階調値とフレームメモリ11から入力される前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択するデータ比較部12と、通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブ駆動により表示可能な輝度領域内で設定される第1輝度階調特性の対応する第1補正階調値に変換する第1LUT13と、オーバードライブ補正モードが選択された場合、第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する第2LUT14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバードライブを行う液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置に係り、特に液晶パネルの輝度階調特性を補正する液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶パネルの各画素の液晶に印加する電圧を調整することで、液晶を透過する光量を調節し、液晶パネルの輝度階調を表現している。正確な輝度階調特性を表現するためには、連続する各フレーム期間内で各画素が階調に応じた指定された目標輝度に到達することが必要である。フレーム期間内で指定された目標輝度に到達できないと予想される場合、指定された目標輝度を表示するのに必要な電圧よりも高い電圧(あるいは低い電圧)を画素に印加することにより液晶の応答速度を向上させるオーバードライブが実施されている。
【0003】
特許文献1には、時分割方式の液晶立体表示装置が記載されており、同一画素の現フレームの階調値と1フレーム前のフレームの階調値とが異なる場合、変換テーブルに基づいて液晶パネルに与える階調電圧を画像データ上の階調値よりも高く設定することで液晶の応答の遅れを補償するオーバードライブが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−157775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶は黒から白または白から黒の応答速度が最も速いので、上述したオーバードライブを行っても黒から白または白から黒の応答速度以上には、液晶の応答速度を上げることができない。つまり、黒から白または白から黒の液晶の応答期間が1フレーム内の定められた応答期間よりも短くなければ目的の輝度を表現できない階調が存在する。このことを図12および図13を参照して説明する。図12および図13は、液晶パネルの輝度を示すグラフ図である。ここで例示する液晶パネルは、0[cd/m2]から100[cd/m2]までの輝度を表示することができ、映像信号の最小階調値が0の場合最小輝度0[cd/m2]が表示され、最大階調値が100の場合最大輝度100[cd/m2]が表示される。
【0006】
図12では、画素が黒表示から白表示へ変化する際の輝度の変化を示している。フレーム前後で階調値が0から100へ変化するが、高フレームレート化などにより、1フレーム期間Tf内では液晶の応答速度が間に合わず、輝度が80[cd/m2]までしか変化していない。この場合、次フレームの階調値が同じ100であれば、輝度が100[cd/m2]まで到達するが、異なる階調値の場合、輝度が100[cd/m2]に到達しないまま次フレームの階調値に対応する輝度へ変化する。図13では、逆に白表示から黒表示へ変化する際の輝度の変化を示している。フレーム前後で階調値が100から0へ変化するが、高フレームレート化などにより、1フレーム期間Tf内では液晶の応答速度が間に合わず、輝度が20[cd/m2]までしか変化していない。
【0007】
図14では、画素の階調値が0と100とを交互に入れ替わる場合の輝度変化を示している。この場合、輝度は20[cd/m2]から80[cd/m2]の間を変化するだけで、階調値0に対応する最小輝度0[cd/m2]および階調値100に対応する最大輝度100[cd/m2]には到達しない。また、一般的に0と100との間の中間階調値から中間階調値への変化は、白から黒または黒から白への応答速度よりも遅いので、画素に印加される電圧に対応する階調値がフレームごとに変化する場合(これを動的変化と称す)、液晶パネルが表示できる輝度は20[cd/m2]から80[cd/m2]の領域内となる。すなわち、動的変化がある場合、20より小さい階調値の画素は全て輝度20[cd/m2]として表示され、80より大きい階調値の画素は全て輝度80[cd/m2]として表示される。動的変化において表示できない輝度領域(これを飽和領域と称す)として、この例では輝度20[cd/m2]未満の領域と80[cd/m2]より大きい領域が存在する。これを理由に階調特性が維持できない問題がある。また、動的変化がない画素では、飽和領域における輝度も階調値に正確に対応して表示されるので、同じ階調値が設定されているにもかかわらず、動的変化がある画素と動的変化がない画素とでは飽和領域における表示輝度が異なってしまうという問題がある。
【0008】
また、液晶表示装置は液晶の遷移中の変化を表示しないためにバックライトを消灯もしくは遮蔽する消灯期間を有するので、実際には液晶の応答期間は1フレーム期間Tfよりもさらに短くなければならない。詳細に説明すると、視覚者が感知する輝度はバックライトが点灯されているもしくは遮蔽されていない点灯期間における輝度の積分値である。図15には、液晶の応答期間が消灯期間よりも短い理想の液晶の輝度変化が示されている。最小輝度から最大輝度への変化が1フレーム期間Tf内の消灯期間Td内で完了しており、点灯期間Tbにおいては最大輝度で表示し、点灯期間Tbにおける輝度の積分値も最大となっている。また、次のフレームで引き続き最大輝度で表示した場合の輝度の積分値も最小輝度から最大輝度へ変化した際の輝度の積分値と変わらない。このように、動的変化のあるなしにかかわらず、視覚者が感知する最大輝度は同じ値である。また、最大輝度から最小輝度への変化でも1フレーム期間Tf内の消灯期間Td内で完了しており、点灯期間Tbにおいては最小輝度である0で表示し、点灯期間Tbにおける輝度の積分値も0となっている。最大輝度と同様に、動的変化のあるなしにかかわらず、視覚者が感知する最小輝度は同じ値である。
【0009】
図16には、液晶の応答期間が消灯期間Tdよりも長い場合の輝度変化が示されている。最小輝度から最大輝度への変化が1フレーム期間Tf内の消灯期間Td内で完了しておらず、点灯期間Tbが始まっても最大輝度に達していないので、点灯期間Tbにおける輝度の積分値も最大となっていない。これに対して、次のフレームで引き続き最大輝度で表示した場合の輝度の積分値は最小輝度から最大輝度へ変化した際の輝度の積分値よりも大きな値となる。また、最大輝度から最小輝度への変化も1フレーム期間Tf内の消灯期間Td内で完了しておらず、点灯期間Tbが始まっても最小輝度に達していないので、点灯期間Tbにおける輝度の積分値も0となっていない。また、次のフレームで引き続き最小輝度で表示した場合の輝度の積分値は最大輝度から最小輝度へ変化した際の輝度の積分値よりも小さい値となる。このように、動的変化のあるなしによって、同じ目標輝度でも視覚者が感知する輝度は異なってしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、液晶パネルの各画素の輝度階調を適切に表示する液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、複数の画素を有する液晶パネルを駆動する液晶表示駆動方法であって、各画素について、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択するモード選択ステップと、前記通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度領域内で設定される第1輝度階調特性に対応する第1補正階調値に変換する第1補正ステップと、前記オーバードライブ補正モードが選択された場合、前記第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に変換する第2補正ステップとを備える液晶表示駆動方法である。
【0012】
上記構成によれば、モード選択ステップにて、各画素について、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択する。通常補正モードが選択された場合、第1補正ステップにて、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度領域内で設定される第1の輝度階調特性の対応する第1補正階調値に変換する。また、オーバードライブ補正モードが選択された場合、第2補正ステップにて、第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する。
【0013】
現フレームの階調値が同じ値であれば、第1補正ステップにより表示される輝度も第2補正ステップにより表示される輝度も同じ明るさとなる。すなわち、通常補正モードが選択された場合、第1補正ステップにより、補正前の階調値は第1の補正階調値に変換される。一方、オーバードライブ補正モードが選択された場合、第2補正ステップにより、補正前の階調値は、第1補正階調値に対応する輝度が表示されるようにオーバードライブを実施するためのオーバードライブ補正階調値に変換されるので、オーバードライブにより第1の補正階調値と同じ輝度が表示されることになる。これにより、現フレームの階調値や前フレームの階調値がどのようなものであっても、各画素の輝度階調を適切に表示することができる。
【0014】
また、本発明において、前記第1輝度階調特性における輝度は、1フレーム期間中にバックライトが点灯している間の輝度の積分値であってもよい。この場合においても、輝度階調特性が崩れることなく、適切に輝度を表示することができる。
【0015】
また、本発明において、前記モード選択ステップは、同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が前記第1閾値より大きい場合、前記オーバードライブ補正モードを選択してもよい。これより、現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の値を基準として通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択することができる。
【0016】
また、本発明において、前記モード選択ステップは、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第2閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、現フレームの階調値が予め定められた第2閾値より大きい場合、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードまたはオーバードライブ補正モードを選択してもよい。これより、現フレームの階調値が第2閾値以下の場合、暗い画素であると判別することができ、通常補正モードを選択することができる。
【0017】
また、本発明において、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第3閾値以上の場合、前記通常補正モードを選択し、現フレームの階調値が予め定められた第3閾値より小さい場合、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードまたはオーバードライブ補正モードを選択してもよい。これより、現フレームの階調値が第3閾値以上の場合、明るい画素であると判別することができ、通常補正モードを選択することができる。
【0018】
また、本発明において、現フレームの階調値の分布を判別する階調値分布判別ステップとを備え、前記階調値の分布に応じて前記階調値を異なる複数の輝度階調特性のいずれかに補正してもよい。これより、階調値の分布に応じて階調値を変換する輝度階調特性を選択できるので、フレームの階調の分布に応じてコントラスト比を高めた表示を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る第2の発明は、階調値を記憶するフレームメモリと、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択するデータ比較部と、前記通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブ駆動により表示可能な輝度領域内で設定される第1輝度階調特性の対応する第1補正階調値に変換し、前記オーバードライブ補正モードが選択された場合、前記第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する階調変換部とを備える液晶表示装置である。
【0020】
上記構成によれば、フレームメモリは階調値を記憶し、データ比較部は現フレームの階調値とフレームメモリに記憶されていた前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択する。階調変換部は、通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度領域内で設定される第1の輝度階調特性の対応する第1補正階調値に変換する。また、オーバードライブ補正モードが選択された場合、第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する。
【0021】
現フレームの階調値が同じ値であれば、通常補正モードにより表示される輝度もオーバードライブ補正モードにより表示される輝度も同じ明るさとなる。すなわち、通常補正モードが選択された場合、補正前の階調値は第1の補正階調値に変換される。一方、オーバードライブ補正モードが選択された場合、補正前の階調値は、第1補正階調値に対応する輝度が表示されるようにオーバードライブを実施するためのオーバードライブ補正階調値に変換されるので、オーバードライブにより第1の補正階調値と同じ輝度が表示されることになる。これにより、現フレームの階調値や前フレームの階調値がどのようなものであっても、液晶表示装置の輝度階調を適切に表示することができる。
【0022】
また、本発明において、光を液晶に照射するバックライトを備え、前記第1輝度階調特性における輝度は、1フレーム期間中に前記バックライトが点灯している間の輝度の積分値であってもよい。この構成においても、輝度階調特性が崩れることなく、適切に輝度を表示することができる。
【0023】
また、本発明において、前記データ比較部は、同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が前記第1閾値より大きい場合、前記オーバードライブ補正モードを選択してもよい。これより、現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の値を基準として通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択することができる。
【0024】
また、本発明において、前記データ比較部は、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第2閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、現フレームの階調値が前記第2閾値より大きい場合、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードと前記オーバードライブ補正モードとのいずれかを選択してもよい。これより、現フレームの階調値が第2閾値以下の場合、暗い画素であると判別することができ、通常補正モードを選択することができる。
【0025】
また、本発明において、前記データ比較部は、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第3閾値以上の場合、前記通常補正モードを選択し、現フレームの階調値が前記第3閾値より小さい場合、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードと前記オーバードライブ補正モードとのいずれかを選択してもよい。これより、現フレームの階調値が第3閾値以上の場合、明るい画素であると判別することができ、通常補正モードを選択することができる。
【0026】
また、本発明において、現フレームの全ての画素の階調値の分布を判別する階調分布判別部を備え、前記階調値の分布に応じて前記階調値を異なる複数の輝度階調特性のいずれかに補正してもよい。これより、階調値の分布に応じて階調値を変換する輝度階調特性を選択できるので、そのフレームの全ての画素の階調値の分布に応じてコントラスト比を高めた表示を行うことができる。
【0027】
また、本発明において、前記第1輝度階調特性の最大輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の上限値であることが好ましい。第1輝度階調特性の最大輝度をオーバードライブにより表示可能な輝度の上限値にすることで、第1輝度階調特性のコントラスト比を高くすることができる。
【0028】
また、本発明において、前記第1輝度階調特性の最小輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の下限値であるであることが好ましい。第1輝度階調特性の最小輝度をオーバードライブにより表示可能な輝度の下限値にすることで、第1輝度階調特性のコントラスト比を高くすることができる。
【0029】
なお、本発明において液晶表示装置とは、2次元の平面画像のみならず3次元の立体映像を表示する液晶表示装置も含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置によれば、各画素の輝度階調を適切に表示する液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施例に係る液晶パネルの輝度階調特性を示す特性図である。
【図3】実施例に係る液晶パネルの輝度階調特性を示す特性図である。
【図4】実施例に係る液晶パネルの輝度階調特性を示す特性図である。
【図5】実施例1に係る階調補正部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】実施例に係る階調値を変換するルックアップテーブルを示す図である。
【図7】実施例に係る階調値を変換するルックアップテーブルを示す図である。
【図8】実施例に係る階調値を変換するフローチャートである。
【図9】実施例2に係る階調補正部の概略構成を示すブロック図である。
【図10】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【図11】実施例2に係る階調値を変換するフローチャートである。
【図12】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【図13】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【図14】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【図15】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【図16】液晶の応答特性と輝度との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
1.液晶表示装置の概略構成
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。図1は液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。液晶表示装置1は、入力された映像信号に含まれる階調値を補正する階調補正部2と、補正された階調値を基に液晶に印加する階調電圧を出力する駆動回路3と、光を液晶パネルに照射するバックライト4と、駆動回路3により階調電圧が印加された画素にバックライト4の光を透過して映像を表示する液晶パネル5とを備える。階調補正部2に入力される映像信号は、PC、DVDプレイヤー、または液晶表示装置1に備えられる信号再生器から出力される信号である。
【0033】
階調補正部2は、入力された映像信号に含まれる階調値を、1フレーム期間内で表示可能な階調値に補正する。詳細な説明は後述する。駆動回路3はゲートドライバおよびソースドライバを有し、階調補正部2から入力される補正された階調値を含む映像信号に基づいて液晶パネル5の各画素に対応する階調電圧を印加する。
【0034】
バックライト4は、駆動回路3が液晶パネル5の各画素に階調電圧を印加するのに同期して、点灯および消灯を繰り返しながら、光を液晶パネル5に照射する。また、バックライト4は、階調補正部2が駆動回路3に補正された階調値を出力するのに同期して、点灯および消灯を繰り返してもよい。バックライト4には、FFCL等の白色蛍光管、白色LEDまたは有色LEDを採用する。バックライト4に有色LEDを採用する場合、液晶パネル5のカラーフイルタを省略することができる。液晶パネル5は、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス型の液晶パネルを用いている。
【0035】
2.輝度階調特性補正
図2から図4を参照して実施例1における輝度階調特性の補正の原理を説明する。図2は、実施例1における、画素に動的変化がない場合の階調値と液晶パネルから表示される輝度との特性図である。図3は、実施例1における、画素に動的変化がある場合の階調値と液晶パネルから表示される輝度との特性図である。図4は、実施例1における補正された輝度階調特性図である。実施例1における液晶パネル5の輝度階調特性は、一例として図2および従来例の説明で記載した特性である。すなわち、実施例1の液晶パネル5の輝度階調特性7は、十分な液晶の応答期間がある場合、最小階調値0が設定されれば最小輝度0[cd/m2]を表示し、最大階調値100が設定されれば最大輝度100[cd/m2]を表示する。
【0036】
また、画素に動的変化がある場合の輝度階調特性8は、図3に示すように、液晶パネル5から表示される輝度が、液晶の応答速度の問題により20[cd/m2]から80[cd/m2]の間の値となるものとする。この場合、階調値が20より小さい場合は全て輝度20[cd/m2]を表示するいわゆる黒つぶれが発生し、階調値が80より大きい場合は全て輝度80[cd/m2]を表示するいわゆる白つぶれが発生する。なお、この動的変化のある場合に表示できる下限輝度20[cd/m2]を下限飽和輝度と称し、動的変化のある場合に表示できる上限輝度80[cd/m2]を上限飽和輝度と称す。
【0037】
次に、図4を参照する。図4には、補正前の輝度階調特性7と補正後の輝度階調特性9とが図示されている。補正後の輝度階調特性における最大輝度はオーバードライブで表示可能な上限輝度以下であり、補正後の輝度階調特性における最小輝度は、オーバードライブで表示可能な下限輝度以上で補正後の輝度階調特性における最大輝度以下である。特に、最小階調値0を動的変化の際にオーバードライブで表示できる下限輝度20[cd/m2]に対応させ、最大階調値100を動的変化の際にオーバードライブで表示できる上限輝度80[cd/m2]に対応させる。これにより補正後の輝度階調特性9のコントラスト比を高くすることができる。
【0038】
このように階調値と輝度との対応関係を変化させることで、動的変化時の黒つぶれおよび白つぶれをなくすことができ、階調特性を適切に表示することができる。入力される階調値に対して輝度階調特性を変化させるので、動的変化がない画素と動的変化のある画素とにおいて同じ階調値であれば同じ輝度を表示することができる。輝度階調特性の変化は、階調値を補正することで実現できる。輝度階調特性9は本発明における第1輝度階調特性に相当する。
【0039】
液晶パネル5で表示される補正後の階調値に対応する補正輝度はたとえば以下の式で算出される。
補正輝度=入力階調値・(上限飽和輝度−下限飽和輝度)/液晶パネルの全階調数)+下限飽和輝度
上式において上限飽和輝度を80[cd/m2]とし、下限飽和輝度を20[cd/m2]とし、液晶パネルの全階調数を100としたものが、輝度階調特性9である。
【0040】
3.階調補正部の構成
次に、図5を参照して階調補正部2の構成を説明する。階調補正部2は、入力された映像信号を1フレーム分記憶するフレームメモリ11と、各画素について、入力された現フレームの階調値とフレームメモリ11に記憶されている前フレームの階調値とを比較するデータ比較部12と、入力された階調値に対して別の輝度階調特性を有するように補正された階調値を出力する第1LUT13と、入力された階調値に対して別の輝度階調特性に変換しさらにオーバードライブ補正した階調値を出力する第2LUT14とを備える。第1LUT13および第2LUT14は本発明における階調変換部に相当する。
【0041】
フレームメモリ11は、階調補正部2に入力された映像信号に含まれる各画素の階調値を1フレーム分記憶するメモリである。記憶されている各画素の前フレームの階調値をデータ比較部12へ出力するとともに、入力される現フレームの階調値を記憶する。
【0042】
データ比較部12は、各画素について、入力される映像信号の現フレームの階調値とフレームメモリ11から入力される前フレームの階調値とを比較してオーバードライブが必要かどうかを判別する。オーバードライブが必要でない場合は通常補正モードを選択し、オーバードライブが必要である場合はオーバードライブ補正モードを選択する。オーバードライブが必要でない場合というのは、ある画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値とが同じまたは差が小さい場合や、現フレームの階調値が黒領域または白領域の値である場合などである。具体的には、現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下の場合、オーバードライブ不要と判別する。また、現フレームの階調値が予め定められた下限閾値以下である場合、または予め定められた上限閾値以上の場合も、オーバードライブ不要と判別する。これら以外の場合は、オーバードライブ必要と判別する。これら第1閾値、下限閾値および上限閾値は液晶の応答速度およびフレーム期間に影響されるので、最適な値を設定すればよい。下限閾値は本発明における第2閾値に相当し、上限閾値は本発明における第3閾値に相当する。
【0043】
データ比較部12は、通常補正モードを選択した場合、第1LUT13へ第1補正階調値を出力する指示を出す。また、オーバードライブ補正モードを選択した場合、第2LUT14へ前フレームの階調値を出力するとともに第2補正階調値を出力する指示を出す。
【0044】
通常補正モードが選択された場合、入力された現フレームの階調値は第1補正階調値に変換される。第1LUT13は、図6に示すように、入力された現フレームの階調値に対して新たな輝度階調特性9を有する第1補正階調値が1対1に対応しているルックアップテーブルであり、入力された階調値に対応する第1補正階調値を駆動回路3へ出力する。第1補正階調値は液晶の応答速度およびフレーム期間に影響されるので、最適な値を設定すればよい。
【0045】
オーバードライブ補正モードが選択された場合、入力された前フレームの階調値と現フレームの階調値とを基に、現フレームの階調値は、第1補正階調値に対応する輝度が表示されるようにオーバードライブ補正するための第2補正階調値に変換される。第2LUT14は、図7に示すように、入力された前フレームの階調値と現フレームの階調値とを基に、予め算出されている第2補正階調値を出力するルックアップテーブルである。図7において、「−」は、第2補正階調値が格納されていないことを示し、「…」は適切な第2補正階調値が格納されていることを示す。第2補正階調値は液晶の応答速度およびフレーム期間に影響されるので、最適な値を設定すればよい。
【0046】
4.動作説明
次に、図8に示すフローチャートにしたがって、輝度階調特性の補正の流れを説明する。図8は、階調補正部の動作を示すフローチャートである。
【0047】
各画素について、現フレームの階調値が階調補正部2のフレームメモリ11、データ比較部12、第1LUT13および第2LUT14へそれぞれ入力される。フレームメモリ11は、現フレームの階調値が入力される前にフレームメモリ11に記憶されていた前フレームの階調値をデータ比較部12へ出力する。
【0048】
データ比較部12では、各画素について、現フレームの階調値と前フレームとの階調値との比較をしてオーバードライブが必要か否かを判別し、通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択する。まず、データ比較部12は、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた下限閾値以下であるか否かを判別する(ステップS01)。現フレームの階調値が下限閾値以下である場合、黒領域の階調値であることを意味するので、黒領域からの液晶の応答速度はオーバードライブを行った際の応答速度と同程度であるのでオーバードライブの必要がない。この場合、通常補正モードが選択され、データ比較部12は第1LUT13に階調値の補正の指示を出し、第1LUT13は入力された現フレームの階調値に対応する第1補正階調値を駆動回路3へ出力する(ステップS04)。
【0049】
データ比較部12は、各画素について、現フレームの階調値が下限閾値より大きいと判別すると、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた上限閾値以上であるか否かを判別する(ステップS02)。現フレームの階調値が上限閾値以上である場合、白領域の階調値であることを意味するので、白領域からの液晶の応答速度はオーバードライブを行った際の応答速度と同程度であるのでオーバードライブの必要がない。この場合、通常補正モードが選択され、データ比較部12は第1LUT13に階調値の補正の指示を出し、第1LUT13は入力された現フレームの階調値に対応する第1補正階調値を駆動回路3へ出力する(ステップS04)。
【0050】
データ比較部12は、各画素について、現フレームの階調値が上限閾値より小さいと判別すると、次に、各画素について、現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下であるか否かを判別する(ステップS03)。現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下である場合、両方の階調値の差が小さいことを意味するので、オーバードライブをしなくても液晶パネル5は階調値に対応する輝度を表示することができる。この場合、通常補正モードが選択され、データ比較部12は第1LUT13に階調値の補正の指示を出し、第1LUT13は入力された階調値に対応する第1補正階調値を駆動回路3へ出力する(ステップS04)。
【0051】
データ比較部12は、各画素について、現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値よりも大きいと判別すると、オーバードライブが必要であるので、オーバードライブ補正モードを選択し、第2LUT14へ前フレームの階調値を出力するとともに、第2LUT14に階調値の補正の指示を出す。第2LUT14は入力された現フレームおよび前フレームの階調値に対応する第2補正階調値を駆動回路3へ出力する(ステップS05)。
【0052】
駆動回路3では、入力された第1または第2補正階調値に基づいて対応する階調電圧を液晶パネル5の画素に印加し、画素の液晶はバックライトの消灯期間中に応答が完了する。
【0053】
実施例1の液晶表示駆動方法およびそれを用いた液晶表示装置によれば、入力される全ての階調値を、フレーム内のバックライトの消灯期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度領域における別の輝度階調特性を有する階調値に補正するので、画素の動的変化のあるなしにかかわらず、同じ補正された階調値であれば同じ輝度を表示することができる。また、別の輝度階調特性に変換されることにより飽和領域が存在しなくなるので、黒つぶれおよび白つぶれの発生を防止することができる。
【実施例2】
【0054】
以下、図9を参照してこの発明の実施例2を説明する。図9は、実施例2における階調補正部20の構成図である。なお、実施例2の液晶表示装置の構成は実施例1における階調補正部2が実施例2における階調補正部20に代わったものである。他の構成は同様であるので、ここでは実施例2における階調補正部20を中心に説明する。また、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0055】
実施例2の特徴は、階調補正部20が階調分布判別部21を備える点と、3種類の階調補正部である第1階調補正部22、第2階調補正部23、第3階調補正部24を備える点である。階調分布判別部21は、現フレームの全ての画素の階調値の分布が白領域側であるか、黒領域側であるか、白および黒の両領域にわたって均一に分散しているかを判別する。3種類の第1階調補正部22、第2階調補正部23、第3階調補正部24は、階調分布判別部21が判別した階調値の分布の違いに応じて、それぞれの輝度階調特性に補正する。
【0056】
5.輝度階調特性補正
図10を参照して実施例2における輝度階調特性の補正の原理を説明する。図10は実施例2における補正された輝度階調特性図である。実施例2では、閾値階調値をたとえば50とし、入力された現フレームの全ての画素の階調値の分布を基に、現フレームの映像が白領域属性、黒領域属性および均一分散属性の3種類の分布属性のいずれに属するかを判別する。
【0057】
たとえば、入力された現フレームの全ての画素の階調値の最大値が閾値階調値50未満の場合、このフレームの映像は全体的に暗い黒領域属性であるとして、50以上の階調値は全て上限飽和輝度80[cd/m2]に対応させる。このように補正しても階調特性を維持することができる。すなわち、図10に示すように、元の輝度階調特性7から輝度階調特性35に変換する。最小階調値0をオーバードライブで表示できる最小輝度20[cd/m2]に対応させ、閾値階調値50をオーバードライブで表示できる最大輝度80[cd/m2]に対応させる。
【0058】
また、たとえば、入力された現フレームの全ての画素の階調値の最小値が閾値階調値50以上の場合、このフレームの映像は全体的に明るい白領域属性であるとして、50より小さい階調値は全て下限飽和輝度20[cd/m2]に対応させる。このように補正しても、階調特性を維持することができる。すなわち、図10に示すように、元の輝度階調特性7から輝度階調特性36に変換する。閾値階調値50をオーバードライブで表示できる最小輝度20[cd/m2]に対応させ、最大階調値100をオーバードライブで表示できる最大輝度80[cd/m2]に対応させる。
【0059】
また、入力された現フレームの全ての画素の階調値より、現フレームの映像が黒領域属性でも白領域属性でもない均一分散属性であると判別された場合には、元の輝度階調特性7から実施例1の輝度階調特性9を採用する。このように、現フレームの全ての画素の階調値の分布に応じて輝度階調特性を変えることで、各映像の明るさに合わせた適切な輝度階調特性を得ることができ、コントラスト比を高くすることができる。
【0060】
6.階調補正部の構成
次に、図9を参照して階調補正部20の構成を説明する。階調分布判別部21は、入力された現フレームの全ての画素の階調値の分布を基に、現フレームの映像が3種類の属性のいずれに属するかを判別する。前述のとおり、この判別は、現フレームの最大階調値が予め定められた閾値階調値未満であれば黒領域属性とし、現フレームの最小階調値が予め定められた閾値階調値以上であれば白領域属性とし、どちらでもない場合は均一分散属性とする。また、他にも統計的手法で判別してもよいし、黒領域属性または白領域属性に判別する閾値階調値はそれぞれ別の値であってもよい。
【0061】
階調分布判別部21は、現フレームの映像が均一分散属性であると判別すれば第1階調補正部22へ、現フレームの映像が黒領域属性であると判別すれば第2階調補正部23へ、また、現フレームの映像が白領域属性であると判別すれば第3階調補正部24へ階調値補正を指令するとともに、それぞれ現フレームの各画素の階調値を出力する。第1階調補正部22は、実施例1における階調補正部2と同じ構成であり、同様の輝度階調特性の補正を実施するので説明を省略する。
【0062】
第2階調補正部23は、黒領域属性と判別された現フレームの各画素の階調値を輝度階調特性35に対応させて階調値を補正する。データ比較部26は実施例1におけるデータ比較部12と同様に通常補正モードかオーバードライブ補正モードかを選択する。第3LUT27は入力された現フレームの階調値に対して新たな輝度階調特性35を有する第3補正階調値が1対1に対応しているルックアップテーブルであり、通常補正モードが選択された場合、入力された階調値に対応する第3補正階調値を駆動回路3へ出力する。第4LUT28は、入力された現フレームの階調値に対して輝度階調特性35の階調値に変換され、さらにオーバードライブ補正された第4補正階調値を出力するルックアップテーブルであり、オーバードライブ補正モードが選択された場合、入力された前フレームの階調値と現フレームの階調値とを基に、オーバードライブ用の予め算出されている第4補正階調値を出力する。
【0063】
第3階調補正部24は、白領域属性と判別された現フレームの各画素の階調値を輝度階調特性36に対応させて階調値を補正する。データ比較部30は実施例1におけるデータ比較部12と同様に通常補正モードかオーバードライブ補正モードかを選択する。第5LUT31は入力された現フレームの階調値に対して新たな輝度階調特性36を有する第5補正階調値が1対1に対応しているルックアップテーブルであり、通常補正モードが選択された場合、入力された階調値に対応する第5補正階調値を駆動回路3へ出力する。第6LUT32は、入力された現フレームの階調値に対して輝度階調特性36の階調値に変換され、さらにオーバードライブ補正された第6補正階調値を出力するルックアップテーブルであり、オーバードライブ補正モードが選択された場合、入力された前フレームの階調値と現フレームの階調値とを基に、オーバードライブ用の予め算出されている第6補正階調値を出力する。
【0064】
7.動作説明
次に、図11に示すフローチャートにしたがって、実施例2に係る輝度階調特性の補正の流れを説明する。図11は、輝度階調特性の補正の流れを示すフローチャートである。
【0065】
各画素について、現フレームの階調値が階調補正部20の階調分布判別部21、第1階調補正部22、第2階調補正部23、第3階調補正部24へそれぞれ入力される。階調分布判別部21では、現フレームの全ての画素の階調値の分布を基に、現フレームの映像が均一分布属性か、黒領域属性か、または、白領域属性かのいずれであるかを判別する(ステップS11)。
【0066】
階調分布判別部21が現フレームの映像は均一分布属性であると判別すると、均一補正が選択され(ステップS12)、各画素について、第1階調補正部22にて現フレームの輝度階調特性が補正される。第1階調補正部22では、実施例1と同様にデータ比較部12にて補正モードが選択され(ステップS15)、通常補正モードが選択された場合、第1LUT13による階調値の補正が実施される(ステップS16)。オーバードライブ補正モードが選択された場合、第2LUT14により階調値が補正される(ステップS17)。
【0067】
階調分布判別部21が現フレームの映像は黒領域属性であると判別すると、黒強調補正が選択され(ステップS13)、各画素について、第2階調補正部23にて現フレームの輝度階調特性が補正される。第2階調補正部23では、実施例1と同様にデータ比較部26にて補正モードが選択され(ステップS15)、通常補正モードが選択された場合、第3LUT27による階調値の補正が実施される(ステップS16)。オーバードライブ補正モードが選択された場合、第4LUT28により階調値が補正される(ステップS17)。これらにより、輝度の低い領域でコントラストを高くした映像を表示することができる。
【0068】
階調分布判別部21が現フレームの映像は白領域属性であると判別すると、白強調補正が選択され(ステップS14)、各画素について、第3階調補正部24にて現フレームの輝度階調特性が補正される。第3階調補正部24では、実施例1と同様にデータ比較部30にて補正モードが選択され(ステップS15)、通常補正モードが選択された場合、第5LUT31による階調値の補正が実施される(ステップS16)。オーバードライブ補正モードが選択された場合、第6LUT32により階調値が補正される(ステップS17)。これらにより、輝度の高い領域でコントラストを高くした映像を表示することができる。
【0069】
実施例2によれば、入力される現フレームの全ての画素の階調値の分布により、3つの輝度階調値特性のいずれかに現フレームの各画素の階調値を補正するので、階調値の分布に応じてコントラスト比を高めた表示を行うことができる。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0071】
(1)上述した実施例では、輝度階調特性は直線であったが、これに限らず、階調値と輝度とが1対1に対応する曲線であってもよい。
【0072】
(2)上述した実施例では、第1LUT13と第2LUT14とが個別のルックアップテーブルであったが、1つのルックアップテーブルでもよい。また、第3LUT27と第4LUT28とを1つのルックアップテーブルにしてもよいし、第5LUT31と第6LUT32とを1つのルックアップテーブルにしてもよい。
【0073】
(3)上述した実施例2では現フレームを3つの属性に判別していたが、3以外の数の属性に判別してもよい。また、判別に用いられる閾値階調値は予め定められたものであったが、フレームごとに変動する値でも、または、いくつかの段階に分けた値でもよい。たとえば、現フレームの各画素の階調値の中に最小階調値0が含まれ、最大階調値100が含まれない場合は、現フレームの最大階調値を閾値階調値とし、現フレームの各画素の階調値の中に最大階調値100が含まれ、最小階調値0が含まれない場合は、現フレームの最小階調値を閾値階調値としてもよい。また、変動する閾値階調値に対応して複数の輝度階調特性を有してもよい。
【0074】
(4)上述した実施例1では、ステップS01〜S03により通常補正モードとオーバードライブ補正モードとの選択を実施していたが、ステップS03のみにより選択を実施してもよいし、ステップS01とステップS03またはステップS02とステップS03の組み合わせにより選択を実施してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 … 液晶表示装置
2、20 … 階調補正部
4 … バックライト
9、35、36 … 輝度階調特性
11 … フレームメモリ
12 … データ比較部
13 … 第1LUT
14 … 第2LUT
21 … 階調分布判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する液晶パネルを駆動する液晶表示駆動方法であって、
各画素について、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択するモード選択ステップと、
前記通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度領域内で設定される第1輝度階調特性に対応する第1補正階調値に変換する第1補正ステップと、
前記オーバードライブ補正モードが選択された場合、前記第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する第2補正ステップと
を備えることを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示駆動方法において、
前記第1輝度階調特性の最大輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の上限値である
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶表示駆動方法において、
前記第1輝度階調特性の最小輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の下限値である
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の液晶表示駆動方法において、
前記第1輝度階調特性における輝度は、1フレーム期間中にバックライトが点灯している間の輝度の積分値である
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の液晶表示駆動方法において、
前記モード選択ステップは、
同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、
同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が前記第1閾値より大きい場合、前記オーバードライブ補正モードを選択する
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の液晶表示駆動方法において、
前記モード選択ステップは、
各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第2閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、
現フレームの階調値が予め定められた第2閾値より大きい場合、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードまたはオーバードライブ補正モードを選択する
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の液晶表示駆動方法において、
前記モード選択ステップは、
各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第3閾値以上の場合、前記通常補正モードを選択し、
現フレームの階調値が予め定められた第3閾値より小さい場合、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードまたはオーバードライブ補正モードを選択する
ことを特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の液晶表示駆動方法において、
現フレームの全ての画素の階調値の分布を判別する階調値分布判別ステップとを備え、
前記階調値の分布に応じて前記階調値を異なる複数の輝度階調特性のいずれかに補正することを
を特徴とする液晶表示駆動方法。
【請求項9】
複数の画素を有する液晶パネルと、
各画素の階調値を記憶するフレームメモリと、
各画素について、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に通常補正モードとオーバードライブ補正モードとのいずれかを選択するデータ比較部と、
前記通常補正モードが選択された場合、現フレームの階調値を、1フレーム期間内でオーバードライブ駆動により表示可能な輝度領域内で設定される第1輝度階調特性に対応する第1補正階調値に変換し、前記オーバードライブ補正モードが選択された場合、前記第1補正階調値に対応する輝度を1フレーム期間内で表示可能にするオーバードライブ補正階調値に現フレームの階調値を変換する階調変換部
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶表示装置において、
前記第1輝度階調特性の最大輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の上限値である
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の液晶表示装置において、
前記第1輝度階調特性の最小輝度は、1フレーム期間内でオーバードライブにより表示可能な輝度の下限値である
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1つに記載の液晶表示装置において、
光を液晶に照射するバックライトを備え、
前記第1輝度階調特性における輝度は、1フレーム期間中に前記バックライトが点灯している間の輝度の積分値である
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1つに記載の液晶表示装置において、
前記データ比較部は、同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が予め定められた第1閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、
同一画素の現フレームの階調値と前フレームの階調値との差の絶対値が前記第1閾値より大きい場合、前記オーバードライブ補正モードを選択する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1つに記載の液晶表示装置において、
前記データ比較部は、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第2閾値以下の場合、前記通常補正モードを選択し、
現フレームの階調値が前記第2閾値より大きい場合、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードと前記オーバードライブ補正モードとのいずれかを選択する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか1つに記載の液晶表示装置において、
前記データ比較部は、各画素について、現フレームの階調値が予め定められた第3閾値以上の場合、前記通常補正モードを選択し、
現フレームの階調値が前記第3閾値より小さい場合、現フレームの階調値と前記フレームメモリから入力される前フレームの階調値とを基に前記通常補正モードと前記オーバードライブ補正モードとのいずれかを選択する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1つに記載の液晶表示装置において、
現フレームの全ての画素の階調値の分布を判別する階調分布判別部を備え、
前記階調値の分布に応じて前記階調値を異なる複数の輝度階調特性のいずれかに補正することを
を特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−185436(P2012−185436A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50046(P2011−50046)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【特許番号】特許第4964339号(P4964339)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】