説明

液晶駆動装置

【課題】 駆動電源の基準電圧値の変動に応じて駆動パルス信号を調整することで、ドライバ回路の製造ばらつきや経時変化を吸収し、安定した液晶駆動を実現する液晶駆動装置を提供する。
【解決手段】 マイコン10からの信号によって液晶パネル30を駆動するドライバIC20を有する液晶駆動装置であって、ドライバIC20は基準電圧Vkを作成する電圧発生回路23と、液晶パネル30に駆動パルス信号を供給するSEG駆動回路25とCOM駆動回路26と、駆動パルス信号の幅を可変する電圧LUT22とを有し、マイコン10は、ドライバIC20からの基準電圧Vkに基づいた調整信号P2を出力し、ドライバIC20の電圧LUT22は、調整信号P2に従って駆動パルス信号のパルス幅を可変する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルを駆動するドライバICに内蔵する基準電圧のばらつきに応じて駆動パルス信号を調整し、基準電圧のばらつきを吸収する液晶駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを用いた液晶装置は様々な製品に用いられており、例えば、薄型テレビ、携帯電話、電子棚札、液晶シャッターなどで使われている。これらの製品に用いられる液晶パネルは、駆動電圧の変動に対して敏感に影響を受けるので、液晶パネルの駆動電圧は、安定化された定電圧電源を基準電源として用いることが一般的である。
【0003】
しかし、定電圧電源であっても、その基準電源回路が液晶ドライバICに組み込まれる場合、半導体の製造上のロット間ばらつき等によって、基準電圧がICごとにばらつくことは避けられず、基準電圧のばらつきによって、液晶パネルの動作が不安定になる不具合がある。特に、メモリ性を有する強誘電性液晶による液晶パネルは、駆動電圧の僅かな変動に対しても敏感に影響を受けるので、駆動電圧のばらつきは大きな問題である。
【0004】
この問題を解決するために、液晶パネルを駆動する液晶ドライバICに内蔵する液晶駆動用電源の出力に、複数の抵抗回路によって成る出力電圧補正回路を備えた半導体装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の半導体装置は、液晶ドライバICの内部に複数の液晶駆動用電源を備えており、液晶駆動用電源ごとに並列接続された抵抗を切り替える出力電圧調整回路を備えている。また、各出力電圧を監視するモニタ端子を備え、半導体製造工程において、モニタ端子で液晶駆動用電源の電圧値を監視して、各出力電圧のばらつきが小さくなるように、出力電圧調整回路の抵抗を選択して液晶駆動用電源の調整を行う構成である。これにより、出力電圧のばらつきが少ない液晶表示装置駆動用半導体を提供出来ることが示されている。
【0006】
[強誘電性液晶表示パネルの説明]
次に公知ではあるが本発明を理解する助けとなるので、メモリ性を有する強誘電性液晶による表示パネルの構成と動作について以下説明する。なお、メモリ性表示パネルとは、駆動信号によって表示情報を書き込み後、駆動信号を停止しても表示内容が消えることなく保持される表示パネルであり、本発明の液晶駆動装置の液晶パネルは、この強誘電性液晶によって構成されることを例とする。
【0007】
まず、強誘電性液晶層を有するメモリ性液晶表示パネルの構造を図10に基づいて説明する。図10(a)はメモリ性液晶表示パネルの偏光板配置の構成を模式的に示した平面図である。図10(a)において、液晶表示パネル120は、クロスニコルに合わせた偏光板121a、121bの間に、偏光板121aの偏光軸Cと偏光板121bの偏光軸Dのどちらか一方と、液晶分子の第1の安定状態(矢印E)もしくは、第2の安定状態(矢印F)のときの分子長軸方向のどちらかとが、ほぼ平行になるように強誘電性液晶層122を配置する。ここで、図10(a)においては、偏光板121aの偏光軸Cと第1の安定状態(矢印E)のときの分子長軸方向が、ほぼ平行になるように配置されている。
【0008】
次に図10(b)は、液晶表示パネル120の構造を模式的に示した断面図である。図10(b)において、液晶表示パネル120は、少なくとも二つの安定状態を持つメモリ
性液晶である強誘電性液晶層122を挟持する一対のガラス基板123a、123bから構成される。また、このガラス基板123aと123bはシール材126によって固着されている。そして、ガラス基板123a、123bの対向面には駆動電極としての複数の走査電極124と、信号電極125が設けられており、その上に配向膜127a、127bが蒸着されている。
【0009】
さらに一方のガラス基板123aの外側には、前述した如く、強誘電性液晶層122の液晶分子の第1もしくは第2の安定状態の時の分子長軸方向が平行になるように第1の偏光板121aが設けられており、他方のガラス基板123bの外側には、第1の偏光板121aの偏光軸と90度異なるようにして第2の偏光板121bが設けられている。
【0010】
次に、図10(a)、図10(b)で示した液晶表示パネル120の動作について図11を用いて説明する。図11は、液晶表示パネル120の駆動電圧に対する光透過率Lの変化を示している。ここで、強誘電性液晶のスイッチング、つまり一方の安定状態から他方の安定状態への転移は、駆動電圧のパルス幅値とパルス高値との積の値が閾値以上の値となる駆動パルス信号を強誘電性液晶に印加した場合にのみ起こる。図11において、液晶表示パネル120は駆動電圧の極性の違いによって、第1の安定状態(非透過(黒)表示)か、第2の安定状態(透過(白)表示)かのいずれかが選択される。
【0011】
ここで、駆動電圧をプラス方向に増加させたとき、光透過率Lが変化し始める電圧値を+Vt、光透過率Lの変化が飽和する電圧値を+Vhとする。次に駆動電圧を減少させ、さらに逆極性のマイナス方向に電圧を増加させて光透過率Lが減少し始める電圧値を−Vt、光透過率Lの変化が飽和する電圧値を−Vhとする。ここで、±Vtを強誘電性液晶の閾値電圧、±Vhを飽和電圧と定義する。
【0012】
このように液晶表示パネル120は、強誘電性液晶の飽和電圧+Vh以上の駆動電圧が印加された場合に第2の安定状態が選択され、また、強誘電性液晶の逆極性の飽和電圧−Vh以上の駆動電圧が印加された場合は、第1の安定状態が選択される。そして、その後、駆動電圧が0Vになってもメモリ性効果によって、それぞれの安定状態は維持される。
【0013】
この結果、図10(a)に示すように偏光板121a、121bを配置すると、第2の安定状態で白表示(透過状態)、第1の安定状態で黒表示(非透過状態)となる。尚、偏光板121a、121bの配置を変えることにより、第2の安定状態で黒表示(非透過状態)、第1の安定状態で白表示(透過状態)とすることも出来る。
【0014】
このように強誘電性液晶を用いた液晶表示パネルは、駆動電圧を印加して表示を書き換えて安定状態とした後、液晶表示パネルへの電源を遮断しても、表示を維持することが出来るので、省電力の液晶装置を容易に実現することが出来る。しかし、強誘電性液晶の第1の安定状態と第2の安定状態への転移は、駆動電圧の僅かな変動でも影響を受けやすいので、駆動電圧を厳密に管理しなければ、液晶パネルの動作が不安定となり大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−61784号公報(第3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1の半導体装置は、製造工程での電圧調整手段であって、製造時のばらつきに対する調整手段である。このため、半導体装置が一定期間使用されて液晶駆動用電源が経
時変化などで出力電圧が変動した場合は、その出力電圧の変動を調整することが出来ない。また、抵抗の切り替えによる電圧調整は、切り替え段数が制限されるので微調整がむずかしく、精密な電圧調整を実現することが出来ない。特に強誘電性液晶は、前述したように駆動電圧の僅かな変動に影響を受けやすいので、特許文献1の抵抗の切り替えによる電圧調整方法では、強誘電性液晶のための精密な駆動電圧調整は対応することが出来ない。
【0017】
本発明の目的は上記課題を解決し、駆動電源の基準電圧の変動に応じて駆動パルス信号を調整することで、ドライバ回路の製造ばらつきや経時変化を吸収して、安定した液晶駆動を実現する液晶駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の液晶駆動装置は、下記記載の構成を採用する。
【0019】
本発明の液晶駆動装置は、マイクロコンピュータからの信号によって液晶パネルを駆動するドライバ回路を有する液晶駆動装置であって、ドライバ回路は基準電圧を作成する電圧発生部と、液晶パネルに駆動パルス信号を供給する出力部とを有し、マイクロコンピュータは、ドライバ回路からの基準電圧に基づいた調整信号を出力し、ドライバ回路は、調整信号によって駆動パルス信号の幅または高さを可変することを特徴とする。
【0020】
さらに、温度センサを備え、ドライバ回路は、温度センサからの温度信号と調整信号に基づいて、パルス信号の幅または高さを可変することを特徴とする。
【0021】
また、ドライバ回路は、駆動パルス信号を調整するパルス調整部を有し、該パルス調整部は、調整信号または温度信号に基づいて駆動パルス信号の幅または高さの値を出力することを特徴とする。
【0022】
また、マイクロコンピュータは、基準電圧または温度信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換手段を備えていることを特徴とする。
【0023】
また、ドライバ回路は、マイクロコンピュータが基準電圧を測定するためのモニタ端子を備えていることを特徴とする。
【0024】
また、駆動パルス信号は、該駆動パルス信号のパルス幅と基準電圧の積が略一定となるようにパルス幅が調整されることを特徴とする。
【0025】
また、液晶パネルは、強誘電性液晶層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上記の如く本発明によれば、ドライバ回路の製造ばらつきや経時変化による基準電圧の変動を吸収するので、液晶パネルの動作マージンを確保して安定した駆動を行う液晶駆動装置を提供することが出来る。また、温度センサを備えて、周囲温度の変化と基準電圧の変動の両方に対応して駆動パルス信号を調整出来るので、周囲温度や基準電圧の変動に影響を受けやすい強誘電性液晶層を有する液晶パネルを備えた液晶駆動装置に好適である。この結果、極めて低消費電力で、且つ、動作の安定性に優れた液晶駆動装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態の液晶駆動装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の電圧変換テーブルの一例を説明するグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態の基準電圧が1.0Vのときの駆動波形の一例を説明する波形図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の基準電圧が1.2Vのときの駆動波形の一例を説明する波形図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の基準電圧が1.4Vのときの駆動波形の一例を説明する波形図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の液晶駆動装置の構成を説明するブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の温度・電圧変換テーブルの一例を説明するグラフである。
【図10】強誘電性液晶層を有するメモリ性液晶表示パネルの構造を説明する説明図である。
【図11】強誘電性液晶層を有するメモリ性液晶表示パネルの動作を説明する動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は、マイクロコンピュータがドライバICからの基準電圧をモニタし、測定した基準電圧値に基づいた調整信号をドライバICに送ることで、駆動パルス信号のパルス幅を調整して基準電圧の変動を吸収し、安定した液晶パネルの動作を実現することである。
【0029】
第2の実施形態の特徴は、周囲温度を測定する温度センサを備え、マイクロコンピュータは温度センサからの温度信号とドライバICの基準電圧に基づいた調整信号との二つの情報によって駆動パルス信号のパルス幅を調整し、液晶パネルの温度補償を行うと共に、基準電圧の変動を吸収して、安定した液晶パネルの動作を実現することである。
【実施例1】
【0030】
[第1の実施形態の構成説明:図1]
第1の実施形態の液晶駆動装置の構成について図1を用いて説明する。図1において、1は第1の実施形態としての液晶駆動装置である。液晶駆動装置1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)10と、マイコン10からの信号によって制御されるドライバ回路としてのドライバIC20と、ドライバIC20によって駆動される液晶パネル30によって構成される。なお、上記構成以外に、マイコン10とドライバIC20を駆動する電源などがあるが、本発明に直接係わらないので説明は省略する。
【0031】
マイコン10は、一般的なワンチップマイコンであり、データ処理を行う演算部11、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換手段(以下、ADと略す)12、ファームウエアなどを記憶するROM13、データを一時的に記憶するRAM14などによって構成される。マイコン10の内部は、データバスB1によって、演算部11、AD12、ROM13、RAM14などが結合され、様々なデータの受け渡しが行われ
る。また、演算部11は、ドライバIC20に制御信号としてのコマンドを出力するためのシリアルバスB2が接続される。また、AD12は、後述するドライバIC20からの基準電圧Vkを入力する。
【0032】
ドライバIC20は、マイコン10からのコマンドを入力して液晶パネル30の動作を制御する制御回路21、液晶パネル30を駆動する駆動パルス信号のパルス幅を決定するパルス調整部としての電圧変換テーブル(以下、電圧LUTと略す)22、駆動パルス信号の基準電圧Vkを作成する電圧発生回路23、基準電圧Vkを昇圧する昇圧回路24、液晶パネル30の信号電極に駆動パルス信号を供給する出力部としてのSEG駆動回路25、及び、液晶パネル30の走査電極に駆動パルス信号を供給する出力部としてのCOM駆動回路26などによって構成される。
【0033】
また、ドライバIC20の内部は、制御バスB3によって、制御回路21、電圧発生回路23、昇圧回路24、SEG駆動回路25、COM駆動回路26などが結合され、制御回路21によって制御されて各回路は様々な動作を実行する。また、制御回路21は、前述のマイコン10からのシリアルバスB2が接続され、マイコン10からのコマンドを入力して液晶パネル30の表示制御を実施する。また、制御回路21は、後述するマイコン10からの調整信号P2を電圧LUT22に出力し、電圧LUT22からはパルス幅信号P3が制御回路21に出力される。
【0034】
また、電圧発生回路23の出力である基準電圧Vkは、ドライバIC20のモニタ端子28と昇圧回路24に供給される。そして、モニタ端子28に供給された基準電圧Vkは、マイコン10のAD12に入力される。また、昇圧回路24は基準電圧Vkを入力して、基準電圧Vkを昇圧した複数の液晶電圧±VH、±VD、±VSを出力して、SEG駆動回路25とCOM駆動回路26に供給する。
【0035】
なお、各液晶電圧の電圧値は、基準電圧Vkが標準値として1.2Vである場合、VHが基準電圧Vkに等しい1.2Vであり、VDが基準電圧Vkを2倍昇圧した2.4V位であり、VSが基準電圧Vkを4倍昇圧した4.8V位である。そして、基準電圧Vkは、ドライバIC20の製造ばらつきや経時変化で標準値に対してプラス側またはマイナス側に変動するので、昇圧回路24からの各液晶電圧±VH、±VD、±VSも、変動することになる。
【0036】
液晶パネル30は、一例として前述の図10で示した強誘電性液晶層を有するメモリ性液晶パネルと同様な構造の液晶パネルであり、少なくとも二つの安定状態を持つメモリ性液晶である液晶層(図示せず)を有し、複数の信号電極であるSEG電極31と、複数の走査電極であるCOM電極32を備えている。そして、SEG電極31とCOM電極32が重なった箇所にマトリクス状の画素33が多数形成されて、この画素33がONまたはOFFすることで、様々な情報を表すことが出来る。
【0037】
また、ドライバIC20のSEG駆動回路25からは、複数のSEG駆動パルス信号VSEGが出力して液晶パネル30のSEG電極31に供給され、同様にドライバIC20のCOM駆動回路26からは、複数のCOM駆動パルス信号VCOMが出力して液晶パネル30のCOM電極32に供給されて、液晶パネル30は駆動される。
【0038】
そして、SEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMは、前述の液晶電圧±VH、±VD、±VSから生成されるので、基準電圧Vkが変動するとSEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMは直接影響を受けて、その波高値が変動し、液晶パネル30の動作が不安定となる。本発明は、この基準電圧Vkのばらつきや変動を吸収して、液晶パネル30を安定動作させることが目的である。
【0039】
[第1の実施形態の動作説明:図1、図2、図3]
次に、第1の実施形態の液晶駆動装置1の動作の概略を図2のフローチャートを用いて説明する。なお、液晶駆動装置1の構成は図1を参照する。また、動作説明の前提として、液晶駆動装置1が、時刻などを表示する電子時計の表示装置であるとする。
【0040】
図2において、マイコン10は、液晶パネル30の表示を更新するかどうかを判定する(ST1)。ここで、表示内容の更新は、例えば、液晶駆動装置1が時分の時刻を表示する電子時計の表示部である場合、マイコン10の演算部11によって計時動作が行われ、分の桁が進んだときに表示の更新が必要となる。または、電子時計の使用者が操作スイッチ(図示せず)を操作して表示モードを切り替えた場合などに必要となる。このステップST1が肯定判定であれば次のステップST2へ進み、否定判定であればステップST1で表示の更新まで待機状態を保持する。
【0041】
次にマイコン10は、ステップST1で肯定判定がなされたならば、基準電圧Vkを発生させるコマンドをシリアルバスB2によってドライバIC20に送信する。ドライバIC20の制御回路21は、このコマンドを受信すると、制御バスB3を介して電圧発生回路23に制御信号を出力し、電圧発生回路23は基準電圧Vkを出力し、昇圧回路24は、基準電圧Vkを入力して各液晶電圧±VH、±VD、±VSの出力を開始する(ST2)。
【0042】
次にマイコン10は、更新する表示データを表示コマンドに組み込んでシリアルバスB2によってドライバIC20に送信する。ドライバIC20は、この表示コマンドを受信すると、更新する表示データとして制御回路21の内部にあるメモリ(図示せず)に一時的に記憶し、更新する表示データの準備を行う(ST3)。例えば、時刻が11時59分から12時00分に進んだ場合、内蔵メモリに更新する表示データとして12時00分を記憶させて表示データの準備を整える。
【0043】
次に、マイコン10は内蔵するAD12を動作させて、AD12に入力する基準電圧Vkを測定し、アナログ量である基準電圧Vkをデジタル信号に変換してRAM14に調整信号P2として一時的に記憶する(ST4)。ここで、調整信号P2は、基準電圧Vkをそのままデジタル信号に変換したデータでもよく、また、所定の標準基準電圧値と基準電圧Vkとの差分値などでもよい。すなわち、調整信号P2は、基準電圧Vkに基づいたデジタル信号である。
【0044】
次に、マイコン10は、取得した調整信号P2をパルス幅調整コマンドに組み込んで、シリアルバスB2によってドライバIC20に送信する(ST5)。ここで、ドライバIC20の制御回路21は、マイコン10からパルス幅調整コマンドを受信すると、そのコマンドをデコードして得られた調整信号P2を、内部にあるメモリ(図示せず)に一時的に記憶する。
【0045】
次に、ドライバIC20の制御回路21は、マイコン10からのパルス幅調整コマンドによって得た調整信号P2を電圧LUT22に送り、電圧LUT22は、調整信号P2に応じたパルス幅Pwを決定してパルス幅信号P3として出力する(ST6)。なお、調整信号P2は、前述したように、基準電圧Vkに基づいたデジタル信号であり、従って、電圧LUT22には、基準電圧Vkに基づいた電圧値情報が入力されることになる。
【0046】
ここで、図3は電圧LUT22の一例を示すグラフであり、電圧LUT22は図3で示すように、基準電圧Vkに応じた駆動パルス信号のパルス幅Pwの変化の値を変換テーブルとして記憶している。図3において、X軸は調整信号P2として電圧LUT22に送ら
れる基準電圧Vkの電圧値であり、Y軸は基準電圧Vkに応じた電圧LUT22の出力であるパルス幅信号P3のパルス幅Pwであり、単位はμSである。
【0047】
なお、X軸は基準電圧Vkそのものに限定されず、所定の標準基準電圧値と基準電圧Vkとの差分値でもよい。たとえば、標準基準電圧値を1.2Vとして、その1.2Vに対する基準電圧Vkのプラスマイナスの差分値に対するパルス幅Pwの変化の値を記憶した変換テーブルでもよい。
【0048】
また、電圧LUT22の出力であるパルス幅Pwは、前述したように、強誘電性液晶は駆動電圧のパルス幅値とパルス高値との積の値によって安定状態が転移して表示が白または黒に変化するので、パルス幅Pwは、基準電圧Vkの変動に対して、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積が常に略一定になるように設定される。これにより、基準電圧Vkが変動しても、その変動に応じてパルス幅Pwが調整されるので、基準電圧Vkの変動を吸収する駆動パルス信号を作成できる。
【0049】
ここで、図3によって一例を示すと、基準電圧Vkが1.2Vである場合、電圧LUT22から1500μSが出力され、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積は1800となる。このときのパルス幅をPw12とする。また、基準電圧Vkが1.0Vに変動すると、電圧LUT22から1800μSが出力され、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積は1800である。このときのパルス幅をPw10とする。また、基準電圧Vkが1.4Vに変動すると、電圧LUT22から1286μSが出力され、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積は1800位である。このときのパルス幅をPw14とする。
【0050】
このように、基準電圧Vkが変動しても、電圧LUT22からは、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積が一定となるパルス幅Pwが出力されるので、このパルス幅Pwの情報に基づいてSEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMを作成すれば、基準電圧Vkの変動を吸収して、安定した液晶パネル30の駆動を実現することが出来る。
【0051】
次に、図2のフローチャートにおいて、ドライバIC20の制御回路21は、制御バスB3を介してCOM駆動回路26を動作させ、電圧LUT22によって決定したパルス幅PwによるCOM駆動パルス信号VCOMを出力し、液晶パネル30のCOM電極32の一つのラインを選択する(ST7)。
【0052】
またドライバIC20の制御回路21は、ステップST3で準備した更新する表示データに基づいて、制御バスB3を介してSEG駆動回路25を動作させ、決定したパルス幅PwによるSEG駆動パルス信号VSEGを出力する(ST8)。このステップST8により、ステップST7で選択されたCOM電極32のライン上の画素が、表示データに基づいて白または黒に書き込まれる。
【0053】
次にドライバIC20は、液晶パネル30の1フレームの書き換えがすべて終了したかどうかを判定する(ST9)。ここで、肯定判定であればステップST10へ進み、否定判定であればステップST7に戻って次のCOM電極32のCOM駆動パルス信号VCOMと、それに対応するSEG駆動パルス信号VSEGを順次出力する。このようにステップST7〜ST9を繰り返すことによって、液晶パネル30に1フレーム分の駆動パルス信号が供給され、液晶パネル30の全画素は新しい表示内容が書き込まれて表示が更新される。
【0054】
次にマイコン10は、ステップST9で肯定判定がなされたならば、停止コマンドをドライバIC20に送信し、SEG駆動回路25とCOM駆動回路26の動作を停止すると共に、電圧発生回路23の出力を停止して液晶パネル30の書き込みを終了する(ST1
0)。
【0055】
尚、ドライバIC20はステップST10の終了後、休止状態となり、液晶パネル30への駆動電圧は零ボルトとなるので、この休止期間の消費電力は極めて小さくなる。また、液晶パネル30は、強誘電性液晶によるメモリ性液晶パネルであるので、駆動電圧の供給が停止しても、メモリ性効果によって表示が維持されることはもちろんである。
【0056】
このように、第1の実施形態の液晶駆動装置1は、マイコン10からのコマンドによってドライバIC20が制御されて液晶パネル30を駆動するものであり、マイコン10は、基準電圧Vkの値に応じて、駆動パルス信号のパルス幅を任意に設定して調整することが出来る。
【0057】
[第1の実施形態の液晶駆動装置の駆動波形の説明:図4〜図6]
次に、液晶パネル30を駆動するSEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMの各駆動波形を図4〜図6に基づいて説明する。図4は一例として基準電圧Vk=1.0Vのときに電圧LUT22が決定するパルス幅Pw10(図3参照)での駆動波形を示している。また、図5は基準電圧Vkが標準電圧の1.2Vのときに電圧LUT22が決定するパルス幅Pw12(図3参照)での駆動波形を示している。また、図6は基準電圧Vk=1.4Vのときに電圧LUT22が決定するパルス幅Pw14(図3参照)での駆動波形を示している。なお、図4〜図6の駆動波形はSEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMの合成駆動波形である。
【0058】
まず、基準電圧Vk=1.0Vのときの図4の駆動波形を説明する。図4(a)は液晶パネル30の一つの画素を白表示とする駆動波形であり、図4(b)は一つの画素を黒表示とする駆動波形である。図4(a)と図4(b)において、駆動波形は表示データを書き込む期間の前に、液晶パネル10を一方の安定状態にリセットするためのリセット期間Rsを備えている。このリセット期間Rsは、+VSと−VSの双極性パルスを印加する。尚、+VSと−VSは図11で示した閾値(すなわち±Vt)より充分に高い電圧が選択される。このリセット期間Rsの駆動電圧がリセットパルスと定義される。このリセットパルスの印加によって、液晶パネル30は図11で示した第1の安定状態(黒表示)にリセットされるが、リセットパルスを反転させることによって第2の安定状態(白表示)にリセットすることも出来る。
【0059】
次にリセット期間Rsが終了すると、駆動波形は各画素に表示データを書き込むセレクト期間Sctに移行する。セレクト期間Sctは、選択した画素に表示データを書き込む選択期間Seと、他の画素に表示データを書き込む非選択期間NSeを備えている。
【0060】
ここで、図4(a)に示す白表示を書き込む場合には、表示状態をリセット期間Rsによる黒表示から白表示に切り替えるので、液晶パネル30の閾値以上の電圧である±VSの双極性パルスが印加される。また、図4(b)に示す黒表示を書き込む場合には、リセット期間Rsによる黒表示から切り替える必要がないので、閾値以下の電圧である±VDの双極性パルスが印加される。また、選択期間Seに続いて、閾値以下の電圧である±VHの双極性パルスが印加される非選択期間NSeが走査の終了まで継続される。尚、すべての期間で双極性パルスを印加する理由は、液晶を交流化駆動するためである。
【0061】
また、図4(a)の選択期間Seの±VSのパルス幅Pw10は、パルス調整部である電圧LUT22が、基準電圧Vk=1.0Vに基づいて決定したパルス幅であり、前述の図3で示すように、そのパルス幅は、一例として1800μSである。尚、パルス幅Pw10は、リセット期間Rsや非選択期間NSe、及び黒表示を書き込む駆動波形においても同じパルス幅が印加される。
【0062】
このように、ドライバIC20の電圧発生回路23(図1参照)の基準電圧Vkが、ドライバIC20の製造ばらつきや経時変化などで低い値の1.0Vとなった場合、SEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMのパルス幅Pw10は、長いパルス幅(1800μS:図3参照)が選択されて、駆動波形のパルス幅値とパルス高値の積の値が一定になるように制御されるので、基準電圧Vkのばらつきを吸収して、液晶パネル30を安定して動作させることが出来る。
【0063】
次に基準電圧Vk=1.2Vのときの図5の駆動波形を説明する。図5(a)は液晶パネル30の画素を白表示とする駆動波形であり、図5(b)は画素を黒表示とする駆動波形である。ここで、図5(a)と図5(b)は図4(a)と図4(b)と同様に、リセット期間Rs、選択期間Se、非選択期間NSeを有しており、その駆動波形の基本は同じである。そして唯一異なる点は、そのパルス幅であり、選択期間Seの±VSのパルス幅Pw12は、パルス調整部である電圧LUT22が、基準電圧Vk=1.2Vに基づいて決定したパルス幅であり、前述の図3で示すように、そのパルス幅は、一例として1500μSである。なお、パルス幅Pw12は、リセット期間Rsや非選択期間NSe、及び黒表示を書き込む駆動波形においても同じパルス幅が印加される。
【0064】
このように、ドライバIC20の電圧発生回路23(図1参照)の基準電圧Vkが、標準電圧の1.2Vである場合、SEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMのパルス幅Pw12は、中間位のパルス幅(1500μS)が選択されて、駆動波形のパルス幅値とパルス高値の積の値が一定になるように制御されるので、基準電圧Vkのばらつきを吸収して、液晶パネル30を安定して動作させることが出来る。
【0065】
次に基準電圧Vk=1.4Vのときの図6の駆動波形を説明する。図6(a)は、液晶パネル30の画素を白表示とする駆動波形であり、図6(b)は、画素を黒表示とする駆動波形である。ここで、図6(a)と図6(b)は図4(a)と図4(b)と同様に、リセット期間Rs、選択期間Se、非選択期間NSeを有しており、その駆動波形の基本は同じである。そして唯一異なる点は、そのパルス幅であり、選択期間Seの±VSのパルス幅Pw14は、パルス調整部である電圧LUT22が、基準電圧Vk=1.4Vに基づいて決定したパルス幅であり、前述の図3で示すように、そのパルス幅は、一例として1286μS位である。なお、パルス幅Pw14は、リセット期間Rsや非選択期間NSe、及び黒表示を書き込む駆動波形においても同じパルス幅が印加される。
【0066】
このように、ドライバIC20の電圧発生回路23(図1参照)の基準電圧Vkが、ドライバIC20の製造ばらつきや経時変化で高い値の1.4Vとなった場合、SEG駆動パルス信号VSEGとCOM駆動パルス信号VCOMのパルス幅Pw14は、短いパルス幅(1286μS位)が選択されて、駆動波形のパルス幅値とパルス高値の積の値が一定になるように制御されるので、基準電圧Vkのばらつきを吸収して、液晶パネル30を安定して動作させることが出来る。
【0067】
[第1の実施形態の変形例の説明:図1、図2]
次に、第1の実施形態の変形例を図1と図2に基づいて説明する。この変形例は、ドライバIC20の電圧LUT22を必要とせず、マイコン10が基準電圧Vkに基づいて、駆動パルス信号のパルス幅Pwを決定し、そのパルス幅Pwの情報をドライバIC20に送信して、液晶パネル30の駆動パルス信号のパルス幅を調整するものである。従って、この第1の実施形態の変形例の構成は、図1で示す第1の実施形態の構成の中で、ドライバIC20の電圧LUT22を削除しただけの違いであるので、変形例の構成の説明は省略する。
【0068】
次に、図2に基づいて、第1の実施形態の変形例の動作を説明する。図2において、ステップST1からST4の動作は、第1の実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0069】
次に、ステップST4後から破線で示すステップST11において、マイコン10は、デジタル信号に変換した基準電圧Vkを製造ばらつきや経時変化があるか否かを判定するために、所定の標準基準電圧値と比較する。そして、標準基準電圧値より基準電圧Vkが低ければ、その差分値に応じて長く設定したパルス幅Pwを算出する。また、標準基準電圧値より基準電圧Vkが高ければ、その差分値に応じて短く設定したパルス幅Pwを算出する。すなわち、マイコン10が電圧LUT22の代わりに、基準電圧Vkとパルス幅Pwの積が一定になるようにパルス幅Pwを演算によって決定するのである。
【0070】
次にマイコン10は、算出したパルス幅Pwを調整信号P2としてパルス幅調整コマンドに組み込んで、シリアルバスB2によってドライバIC20に送信する(ST11)。ドライバIC20は、パルス幅調整コマンドを受信すると、そのコマンドをデコードして得られた調整信号P2を、駆動パルス信号のパルス幅PwとしてステップST7以降の動作を実施する。このように、第1の実施形態の変形例においては、マイコン10が送信するパルス幅調整コマンドに組み込まれた調整信号P2が、そのまま駆動パルス信号のパルス幅Pwとなるのである。
【0071】
すなわち、第1の実施形態における調整信号P2は、基準電圧Vkに基づいた電圧値情報であるが、第1の実施形態の変形例における調整信号P2は、マイコン10が基準電圧Vkに基づいて算出したパルス幅Pwの情報である。このため、第1の実施形態の変形例は、マイコン10が基準電圧Vkに基づいてパルス幅Pwを決定するので、ドライバIC20の電圧LUT22が不要となる利点がある。
【0072】
以上のように、第1の実施形態の液晶駆動装置によれば、液晶駆動装置を構成するドライバIC20の製造ばらつきや経時変化によって、出力する基準電圧Vkがばらついたり変動したりしても、その基準電圧Vkの電圧値に応じて駆動パルス信号のパルス幅またはパルス高さを調整することが出来る。この結果、基準電圧Vkのばらつきや変動を吸収し、液晶パネルの動作マージンを確保して、安定した駆動を行う液晶駆動装置を提供することが出来る。
【0073】
また、本発明は、一般的な汎用マイコンが内蔵するアナログデジタル変換手段を用いて、液晶パネルを駆動する基準電圧Vkを測定し、その基準電圧Vkに応じて駆動パルス信号を調整するので、新たな回路部品などを追加する必要が無く、既存のハードウエア構成で、ファームウエアを変更するだけで実現出来る利点がある。これにより、コストアップや装置の部品点数の増加を招くことがなく、また、ドライバIC20の製造ばらつき等の条件に対応して駆動パルス信号の調整を随時改良することも容易に行うことが出来る。
【実施例2】
【0074】
[第2の実施形態の構成説明:図7]
次に、第2の実施形態の液晶駆動装置の構成について図7を用いて説明する。なお、第2の実施形態は、前述した第1の実施形態と基本構成は同じであるので、同一要素には同一番号を付して重複する説明は一部省略する。図7において、50は第2の実施形態としての液晶駆動装置である。液晶駆動装置50は、マイコン10と、ドライバIC20と、液晶パネル30、及び、周囲の温度を測定する温度センサ51によって構成される。なお、上記構成以外に、マイコン10とドライバIC20を駆動する電源などがあるが、本発明に直接係わらないので説明は省略する。
【0075】
マイコン10は、第1の実施形態と同様の構成であるが、異なる点は、AD12が二つ
の入力端子を備えて、第1の入力端子は基準電圧Vkを入力し、第2の入力端子は温度センサ51からのアナログによる温度情報である温度信号P4を入力し、二つの入力を任意に切り替えて、アナログ信号をデジタル信号に変換することである。
【0076】
ドライバIC20においても、第1の実施形態と同様の構成であるが、異なる点は、液晶パネル30を駆動する駆動パルス信号のパルス幅を決定するパルス調整部として、温度情報と基準電圧情報に基づいた温度・電圧変換テーブル(以下、温度・電圧LUTと略す)29を備えていることである。そして、制御回路21は、マイコン10からの後述する調整信号P2とデジタル温度信号P4dを温度・電圧LUT29に入力し、温度・電圧LUT29からはパルス幅信号P3が制御回路21に出力される。
【0077】
なお、液晶パネル30の構成と各要素間の接続は、前述の第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0078】
[第2の実施形態の動作説明:図7、図8、図9]
次に、第2の実施形態の液晶駆動装置50の動作の概略を図8のフローチャートを用いて説明する。なお、液晶駆動装置50の構成は図7を参照する。また、動作説明の前提として、液晶駆動装置50が、時刻などを表示する電子時計の表示装置であるとする。
【0079】
図8において、マイコン10は、液晶パネル30の表示を更新するかどうかを判定する(ST20)。この表示の更新動作は、第1の実施形態のST1と同様である。
【0080】
次にマイコン10は、ステップST20で肯定判定がなされたならば、基準電圧を発生させるコマンドをシリアルバスB2によって送信し、ドライバIC20の電圧発生回路23は基準電圧Vkを出力し、昇圧回路24は基準電圧Vkを入力して各液晶電圧±VH、±VD、±VSの出力を開始する(ST21)。
【0081】
次にマイコン10は、更新する表示データを表示コマンドに組み込んでシリアルバスB2によってドライバIC20に送信し、ドライバIC20は、更新する表示データの準備を行う(ST22)。
【0082】
次に、温度センサ51は液晶駆動装置50の周囲温度Taを測定し、また、マイコン10は内蔵するAD12を動作させて、温度センサ51からのアナログ情報である温度信号P4を入力し、デジタル温度信号P4dに変換してRAM14に一時的に記憶する(ST23)。これにより、マイコン10は、液晶駆動装置50の周囲温度Taを測定して取得することが出来る。
【0083】
次に、マイコン10は内蔵するAD12を動作させて、AD12に入力する基準電圧Vkを測定し、アナログ量である基準電圧Vkをデジタル信号に変換してRAM14に調整信号P2として一時的に記憶する(ST24)。ここで、調整信号P2は、基準電圧Vkをそのままデジタル信号に変換したデータでもよく、また、所定の標準基準電圧値と基準電圧Vkとの差分値でもよい。
【0084】
次に、マイコン10は、取得したデジタル温度信号P4dと調整信号P2をパルス幅調整コマンドに組み込んで、シリアルバスB2によってドライバIC20に送信する(ST25)。ここで、ドライバIC20の制御回路21は、マイコン10からパルス幅調整コマンドを受信すると、そのコマンドをデコードして得られたデジタル温度信号P4dと調整信号P2を、内部にあるメモリ(図示せず)に一時的に記憶する。
【0085】
次に、ドライバIC20の制御回路21は、マイコン10から入力したデジタル温度信
号P4dと調整信号P2を温度・電圧LUT29に送り、温度・電圧LUT29は、周囲温度Taと基準電圧Vkに応じたパルス幅Pwtを決定してパルス幅信号P3として出力する(ST26)。
【0086】
ここで、図9は温度・電圧LUT29の一例を示すグラフであり、温度・電圧LUT29は図9で示すように、周囲温度Taと基準電圧Vkに応じた駆動パルス信号のパルス幅Pwtの変化を変換テーブルとして記憶している。図9において、X軸は温度センサ51が測定した液晶駆動装置50の周囲温度Taであり、Y軸は周囲温度Taと基準電圧Vkに応じた温度・電圧LUT29の出力であるパルス幅信号P3のパルス幅Pwtであり、単位はμSである。
【0087】
ここで、パルス幅Pwt12は、基準電圧Vkが標準電圧である1.2Vにおける駆動パルス信号のパルス幅であり、液晶パネル30の温度特性に合わせてパルス幅は可変している。すなわち、周囲温度Taが低い領域では、パルス幅Pwt12の値は長くなり、周囲温度Taが高い領域では、パルス幅Pwt12の値は短くなる。これは、液晶パネル30の強誘電性液晶が温度依存性を有しており、その温度特性を補正するために、強誘電性液晶の閾値の温度特性に合わせてパルス幅を変える必要があるからである。
【0088】
また、パルス幅Pwt10は、基準電圧Vkが低くばらついて1.0Vであるときの駆動パルス信号のパルス幅である。すなわち、基準電圧Vkが低くばらついた場合は、そのばらつきを補正するためにパルス幅を長くすればよいので、前述の標準電圧のパルス幅Pwt12よりも、パルス幅が全温度領域で長くなるようにすることで、基準電圧Vkのばらつきを補正することが出来る。
【0089】
また、パルス幅Pwt14は、基準電圧Vkが高くばらついて1.40Vであるときの駆動パルス信号のパルス幅である。すなわち、基準電圧Vkが高くばらついた場合は、そのばらつきを補正するためにパルス幅を短くすればよいので、前述の標準電圧のパルス幅Pwt12よりも、パルス幅が全温度領域で短くなるようにすることで、基準電圧Vkのばらつきを補正することが出来る。ここで、基準電圧Vkの変動に応じて変化するパルス幅Pwtの変化量は、前述したように、強誘電性液晶の特性に合わせて基準電圧Vkとパルス幅Pwtの積が一定となるように設定される。
【0090】
なお、図9は説明の都合上、基準電圧Vkが1.0V、1.2V、1.4Vの場合だけを示しているが、基準電圧Vkの微妙な変動に合わせて、温度・電圧LUT29を構成すれば、周囲温度と基準電圧の変動に対して高精度に駆動パルス信号の補正を行うことが出来る。たとえば図示しないが、基準電圧Vkが50mVごとに変動した場合の全温度領域でのパルス幅Pwtを温度・電圧LUT29に記憶させれば、記憶容量は増大するが基準電圧Vkのばらつきや変動に対して、駆動パルス信号をきめ細かく高精度に補正することが出来る。なお、第2の実施形態の駆動波形は、第1の実施形態の駆動波形(図4〜図6参照)とパルス幅の大きさは異なっても基本波形は同様であるので、説明は省略する。
【0091】
[第2の実施形態の変形例の説明:図7、図8]
次に、第2の実施形態の変形例を図7と図8に基づいて説明する。この第2の実施形態の変形例は、ドライバIC20の変換テーブルとして、周囲温度に対応してパルス幅Pwtを補正する温度LUTだけを備え、基準電圧Vkの変動に対しては、マイコン10が基準電圧Vkに応じてパルス幅Pwtの調整量を算出し、その調整量をドライバIC20に送信して、駆動パルス信号のパルス幅Pwtを調整するものである。従って、この第2の実施形態の変形例においては、図7で示すドライバIC20の温度・電圧LUT29は温度LUT29´(破線で示す)に置き換わり、他の構成は第2の実施形態と同一である。
【0092】
次に、第2の実施形態の変形例の動作を図8を用いて説明する。図8において、ステップST20からST23の動作は、第2の実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0093】
次に、ステップST23後から破線で示すステップST30において、マイコン10は内蔵するAD12を動作させて、AD12に入力する基準電圧Vkを測定してアナログ量である基準電圧Vkをデジタル信号に変換し、基準電圧Vkに製造ばらつきや経時変化があるか否かを判定するために、所定の標準基準電圧値と比較する。そして、標準基準電圧値より基準電圧Vkが低ければ、その差分値に応じてパルス幅Pwtを長くするためプラスの調整量を算出する。また、標準基準電圧値より基準電圧Vkが高ければ、その差分値に応じてパルス幅Pwtを短くするためにマイナスの調整量を算出する(ST30)。ここで、算出したパルス幅Pwtの調整量が調整信号P2となる。
【0094】
次に、マイコン10は、算出した調整信号P2と、周囲温度Taを測定してデジタル信号に変換したデジタル温度信号P4dと、をパルス幅調整コマンドに組み込んで、シリアルバスB2によってドライバIC20に送信する(ST31)。
【0095】
次に、ドライバIC20の制御回路21は、マイコン10からのパルス幅調整コマンドをデコードして得たデジタル温度信号P4dを温度LUT29´に送り、温度LUT29´は、周囲温度Taに応じたパルス幅Pwtを決定してパルス幅信号P3として出力する。次に制御回路21は、温度LUT29´の出力であるパルス幅Pwtに調整信号P2を加えて、パルス幅Pwtを基準電圧Vkに応じて調整する(ST32)。これにより、第2の実施形態の変形例のパルス幅Pwtは、前述の図9で示した温度・電圧LUT29の出力と同様に、周囲温度Taと基準電圧Vkの両方に対応したパルス幅となる。
【0096】
すなわち、温度LUT29´は、周囲温度Taに応じて変化するパルス幅Pwtだけを出力するが、そのパルス幅Pwtは、調整信号P2によって基準電圧Vkの変動に応じて調整されるので、液晶パネル30を駆動する駆動パルス信号は、周囲温度Taの変化と基準電圧Vkの変動に応じてパルス幅が調整されることになる。このように、第2の実施形態の変形例は、マイコン10が基準電圧Vkに基づいてパルス幅Pwtの調整分を算出するので、ドライバIC20の変換テーブルは温度変化を補正する温度LUT29´だけでよく、変換テーブルの規模を小さくできる利点がある。
【0097】
なお、第2の実施形態の他の変形例として、マイコン10が温度信号P4と基準電圧Vkに基づいて、駆動パルス信号のパルス幅を算出し、その算出したパルス幅を調整信号P2としてドライバIC20に送信しても良い。この他の変形例によれば、ドライバIC20は、温度・電圧LUT29も、温度LUT29´も不要となり、マイコン10のファームウエアだけで、温度信号P4と基準電圧Vkに基づいて駆動パルス信号を調整できる利点がある。
【0098】
以上のように、第2の実施形態の液晶駆動装置によれば、液晶パネルの温度補償を行うと共に、基準電圧Vkの変動を吸収して、安定した液晶パネルの動作を実現することが出来る。特に、低消費電力で駆動できる強誘電性液晶パネルの温度に対する敏感な特性を補正すると共に、ドライバICの製造ばらつきや経時変化を吸収する液晶駆動装置として、本発明の効果はきわめて大きい。
【0099】
なお、上述した各実施形態において、基準電圧Vkに応じて駆動パルス信号のパルス幅Pwを調整したが、これに限定されず、基準電圧Vkに応じて駆動パルス信号のパルス高さを調整しても良い。この場合は、基準電圧Vkに応じて駆動パルス信号のパルス高さ調整情報を採用する。そして、このパルス高さ調整情報によって、たとえば、昇圧回路24を制御して液晶電圧±VH、±VD、±VSを可変することで、駆動パルス信号のパルス
高さを調整することが出来る。また、基準電圧Vkに応じて駆動パルス信号のパルス幅とパルス高さの両方を調整しても良い。
【0100】
また、本発明の液晶パネルにおける画素はマトリクス状の配置には限定されず、例えば、7セグメントや固有の模様などでも良い。また、液晶パネルは、表示パネルに限定されず、例えば、プリンタのヘッド用としての液晶シャッターなどでも良い。また、液晶パネルは、メモリ性液晶パネルに限定されるものではなく、通常のネマティック型などの液晶パネルでも、ドライバ回路の基準電圧の変動が、影響するような液晶パネルであれば、本発明は適応される。また、本発明の実施形態で示したブロック図やフローチャート等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の液晶駆動装置は低消費電力であると共に、安定した動作を実現できるので、特に電池駆動の小型電子機器の表示装置として好適であり、電子棚札、電子時計、携帯電話、携帯端末等の表示装置として利用することが出来る。
【符号の説明】
【0102】
1、50 液晶駆動装置
10 マイクロコンピュータ(マイコン)
11 演算部
12 アナログデジタル変換手段(AD)
13 ROM
14 RAM
20 ドライバIC
21 制御回路
22 電圧変換テーブル(電圧LUT)
23 電圧発生回路
24 昇圧回路
25 SEG駆動回路
26 COM駆動回路
28 モニタ端子
29 温度・電圧変換テーブル(温度・電圧LUT)
29´ 温度変換テーブル(温度LUT)
30 液晶パネル
31 SEG電極
32 COM電極
33 画素
51 温度センサ
B1 データバス
B2 シリアルバス
B3 制御バス
P2 調整信号
P3 パルス幅信号
P4 温度信号
P4d デジタル温度信号
Pw、Pwt パルス幅
Vk 基準電圧
VH、VD、VS 液晶電圧
VSEG SEG駆動パルス信号
VCOM COM駆動パルス信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータからの信号によって液晶パネルを駆動するドライバ回路を有する液晶駆動装置であって、
前記ドライバ回路は基準電圧を作成する電圧発生部と、
前記液晶パネルに駆動パルス信号を供給する出力部とを有し、
前記マイクロコンピュータは、前記ドライバ回路からの基準電圧に基づいた調整信号を出力し、
前記ドライバ回路は、前記調整信号によって前記駆動パルス信号の幅または高さを可変することを特徴とする液晶駆動装置。
【請求項2】
さらに、温度センサを備え、前記ドライバ回路は、前記温度センサからの温度信号と前記調整信号によって、前記駆動パルス信号の幅または高さを可変することを特徴とする請求項1に記載の液晶駆動装置。
【請求項3】
前記ドライバ回路は、前記駆動パルス信号を調整するパルス調整部を有し、該パルス調整部は、前記調整信号または前記温度信号に基づいて前記駆動パルス信号の幅または高さの値を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶駆動装置。
【請求項4】
前記マイクロコンピュータは、前記基準電圧または前記温度信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の液晶駆動装置。
【請求項5】
前記ドライバ回路は、前記マイクロコンピュータが前記基準電圧を測定するためのモニタ端子を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の液晶駆動装置。
【請求項6】
前記駆動パルス信号は、該駆動パルス信号のパルス幅と前記基準電圧の積が略一定となるように前記パルス幅が調整されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の液晶駆動装置。
【請求項7】
前記液晶パネルは、強誘電性液晶層を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の液晶駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−253033(P2011−253033A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126564(P2010−126564)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】