説明

液滴吐出ヘッド清掃装置、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置

【課題】ノズル孔内でブレード部材の天面に付着したインクを効果的に誘導してノズルを清浄に保つ。
【解決手段】液滴吐出ヘッド94のノズル孔21の開設面に先端部が接触して移動されて前記ノズル孔の開設面をぬぐうブレード部材1に、ブレード部材1の移動方向と直行する幅方向の両端が前記液滴吐出ヘッドから外側に延長するように形成するとともに、移動方向側の面の上下方向に沿って開設された移動面側開口を備えて前記移動方向面から反移動方向面に向けて凹状に形成され、ぬぐわれた液を誘導する溝部3を複数形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル孔より液滴を吐出して画像を形成する液滴吐出ヘッドのインクを除去して液滴吐出ヘッドの液滴吐出性能の維持回復を行う液滴吐出ヘッド清掃装置、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピューターやワークステーションから画像を出力する装置として、インクを記録媒体に吐出して画像の形成を行うインクジェット方式を採用した画像形成装置が知られている。このような画像形成装置は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに連なる液流路(加圧室、加圧液室、圧力室、液室、インク室、吐出室等とも称される)を形成する液流路形成部材と、アクチュエータ素子とを備えたインクジェットヘッドを搭載している。アクチュエータ素子は、各流路内のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させる圧電素子などの電気機械変換素子、あるいはヒータなどの電気熱変換素子、もしくは電極などの静電気力発生手段などからなるエネルギー発生手段である。そして、この画像形成装置では、インクジェットヘッドのアクチュエータ素子を画像情報に応じて駆動することで所要のノズルからインク滴を吐出させて画像を記録媒体に記録する。
【0003】
近年、インクジェット画像形成装置の汎用化に伴い、インクジェット専用紙以外の普通紙での高画質化が要請される。このため、普通紙でのにじみを防止するため、インクの高粘度化が図られたり、従来普通用紙に使用される染料インク以外のインク、例えば顔料系のインクが採用されたりしている。
【0004】
このような顔料系のインクの場合、インクを吐出するノズル部において、ブレード部材でのワイピングや吸引などの維持処理を行わないと、インクの粘度が増したり、固着が発生したりして、インクジェットヘッドに吐出性能の劣化が発生する。
【0005】
ブレード部材で液滴と主ヘッドとのワイピングを行うものとして、特許文献1には、ブレード部材のノズル面接触部分に溝を設けることで、ブレード部材とノズル孔を接触せずにワイピングを行い、ノズルへの異物付着を防止することで、吐出性能の劣化を防ぐ技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ブレード部材のノズル側部分に撥水膜を設け、ブレード部材の装置との設置側部分に撥インク性がノズル側よりも弱い撥水膜が形成されたブレード部材を用いてワイピングを行うことで、ノズル面のインク付着を防止し、吐出性能の劣化を防ぐ技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、清掃時にブレード部材がノズル孔内に入り込むに際して、ブレード部材の先端面および後面にインクが付着し、ノズル面で引きずられたインクが選択的にノズル孔近傍のインクを払う方向下流域に付着することになる。そして、これによりできたインクだまりによって、正常なメニスカスが形成されず、インク滴の吐出方向が曲がったり、インク滴の大きさにばらつきが生じたりして、吐出不良が発生するという問題がある。
【0008】
本発明は上述の点にかんがみてなされたものであり、ノズル孔内でブレード部材の上端部に付着したインクを効果的に誘導してノズルを清浄に保つことができる液滴吐出ヘッド清掃装置、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液滴吐出ヘッド清掃装置は、ノズル孔から液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔の開設面に先端部を接触させて移動しつつ前記ノズル孔の開設面をぬぐうブレード部材を備え、前記ブレード部材は、その移動方向と直行する幅方向の両端が前記液滴吐出ヘッドから外側に延長するように形成されるとともに、前記ブレード部材は、その移動方向側の面の上下方向に開設された移動面側開口を備えており、かつ前記移動方向側の面から反移動方向側の面に向けて凹状に形成された部位に、ぬぐわれた液を誘導する溝部を複数形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブレード部材の移動方向側の面から反移動方向側の面に向けて凹状に形成された部位にぬぐわれた液を誘導する溝部を複数形成し、これによりインクを誘導、排除できるので、ノズル孔近傍のインクのぬぐい去り方向下流域にインクが付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の斜視図である。
【図2】同じく画像形成装置の機構を示す側面図である。
【図3】同じく画像形成装置に配置される液滴吐出ヘッドを示す断面図斜視図である。
【図4】同じく液滴吐出ヘッドのノズル板および液室構成部材の構造を示す模式的な断面図である。
【図5】同じく液滴吐出ヘッドの模式的な断面図である。
【図6】同じく液滴吐出ヘッド清掃装置を示すものであり、(a)は概略斜視図、(b)は底面図、(c)は側面図、(d)は平面図、(e)は斜視図、(f)はブレード部材の側面図である。
【図7】同じく液滴吐出ヘッド清掃装置の動作を説明するための模式図ある。
【図8】実施形態2に係る液滴吐出ヘッド清掃装置のブレード部材を示す側面図である。
【図9】実施形態3に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。
【図10】実施形態4に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。
【図11】実施形態5に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。
【図12】実施形態6に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。
【図13】実施形態7に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。
【図14】液滴吐出ヘッド清掃装置のブレード部材を示すものであり、(a)は実施形態8に係るブレード部材を示す断面図、(b)は実施形態9に係るブレード部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下では単に実施形態と記載する)を説明する。まず、実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は実施形態に係る画像形成装置の斜視図、図2は同じく画像形成装置の機構部の側面図である。
【0013】
この画像形成装置は、インクジェット画像形成装置である。画像形成装置は、装置本体81の内部に、印字機構部82を備える。印字機構部82は、主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した液滴吐出ヘッド94、液滴吐出ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95を備えて構成される。装置本体81の下方部には、前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84を抜き差し自在に装着することができる。また、装置本体81には、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレー85を開閉可能に配置することができる。画像形成装置では、給紙カセット84あるいは手差しトレー85から搬送される用紙83は、印字機構部82によって所要の画像が記録された後、後面側に装着された排紙トレー86に排紙される。なお、給紙カセット84に代え給紙トレーを配置することができる。
【0014】
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドからなる液滴吐出ヘッド94を、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93には液滴吐出ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0015】
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する大気口、下方にインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが詰められた多孔質体を有している。そして、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとして、ここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0016】
ここで、キャリッジ93は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に沿って移動自在に配置され、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に沿って移動自在に配置されている。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モーター97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト118が張り渡され、このタイミングベルト118をキャリッジ93に固定し、主走査モーター97を正逆回転することによりキャリッジ93を往復駆動させる。
【0017】
また、給紙カセット84にセットした用紙83を液滴吐出ヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101およびフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105および搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モーター107によって図示しないギア列を介して回転駆動される。
【0018】
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材100を設けている。この印写受け部材100の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレー86に送り出す排紙ローラ113および拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配置している。
【0019】
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0020】
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段と実施形態に係る液滴吐出ヘッド清掃装置とを有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド94をキャッピングされ、ノズル部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、すべてのノズルのインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0021】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド94のノズルを密封し、チューブを通して吸引手段でノズルからインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル面に付着したインクやゴミ等は液滴吐出ヘッド清掃装置により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インクタンク(不図示)に排出され、廃インクタンク内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0022】
次に液滴吐出ヘッドの構成を詳細に説明する。図3は実施形態に係る画像形成装置に配置される液滴吐出ヘッドを示す断面図斜視図である。図3に示すように、液滴吐出ヘッドにおいて、流路ユニット31とアクチュエータユニット32とは、フレーム33を介して一体に固定して構成されている。流路ユニット31は、ノズル板22、チャンバープレート35、および振動板36を重ねて配置して構成され、アクチュエータユニット32の圧力発生手段である個々の圧電振動子37の伸縮により圧力室38を縮小、膨張させてインク滴を吐出する。
【0023】
ノズル板22には圧力室38に連通するノズル孔21が開設されており、またチャンバープレート35には圧力室38、流体抵抗部34が形成されている。振動板36は、圧電振動子37の先端に当接する凸部42と、弾性変形可能なダイヤフラム部43と各圧力室38に対向するように設けられている。またフレーム33に設けられた共通液室41からの液体供給口45が形成されている。また共通液室41に面する領域にも上述のダイヤフラム部43と同様のダイヤフラム部44が構成されている。
【0024】
流路ユニット31は、ステンレス(SUS)で形成したチャンバープレート35と上述したノズル板22と振動板36を接合したものである。振動板36は、圧延製金属板48に、圧電振動子37の変位により弾性変形が可能で、インクに対する耐食性を備えた、例えばポリイミド(PI)やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の高分子フィルム49を積層して構成される。要所に貫通孔からなる位置決め孔が開設されており、ダイヤフラム部43、44を形成すべき領域をエッチングして圧延製金属板48により凸部42が形成されている。
【0025】
ノズル孔21は圧力室38に対応して直径10〜30μmの大きさで形成する。また、ノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、液体との撥水性を確保するため、撥水膜を形成している。
【0026】
そして、振動板36の面外側(圧力室38と反対面側)に各圧力室38に対応して圧力発生手段としての圧電振動子37を接合している。これらの振動板36と圧電振動子37によって振動板36の可動部分であるダイヤフラム部43を変形させる圧電型アクチュエータを構成している。
【0027】
この液滴吐出ヘッドでは、圧電振動子37を溝加工(スリット加工)によって分断することなく形成する。また、圧電振動子37の一端面には各圧電振動子37に駆動波形を与えるためのFPCケーブル50を接続している。
【0028】
なお、圧電振動子37の圧電方向としてd33方向の変位を用いて圧力室38内の液体を加圧する構成とすることも、圧電振動子の圧電方向としてd31方向の変位を用いて圧力室内の液体を加圧する構成とすることもできる。本実施形態ではd33方向の変位を用いた構成をとっている。
【0029】
ベース部材51は金属材料で形成することが好ましい。ベース部材51の材質(材料)が金属であれば、圧電振動子37の自己発熱による蓄熱を防止することができる。圧電振動子37とベース部材51は接着剤により接着接合しているが、チャンネル数が増えると、圧電振動子37の自己発熱により100℃近くまで温度が上昇し、接合強度が著しく低下することになる。また、自己発熱によりヘッド内部の温度上昇が発生し、液体温度が上昇するが、液体の温度が上昇すると、液体粘度が低下し、噴射特性に大きな影響を与える。従って、ベース部材51を金属材料で形成して圧電振動子37の自己発熱による蓄熱を防止することで、これらの接合強度の低下、液体粘度の低下による噴射特性の劣化を防止することができる。
【0030】
また、FPCケーブル50には各チャンネル(各圧力室38に対応する)を駆動する駆動波形(電気信号)を印加するためのドライバーIC52を複数搭載している。さらに、振動板36の周囲にはフレーム33を接着剤で接合している。そして、このフレーム33には、ドライバーIC52と少なくともベース部材51を挟んで反対側に配置されるように、圧力室38に外部から液体を供給するための共通液室41を形成している。この共通液室41は、振動板36の液体供給口45を介して流体抵抗部34および圧力室38に連なっている。
【0031】
共通液室41には、ダイヤフラム部44によってダンパー室53が形成され、液体吐出によって共通液室41内に発生する圧力波を減衰させ、液体吐出を安定させる。
【0032】
圧電振動子37は、圧電層(圧電材料層)54と内部電極55Aおよび内部電極55Bとを交互に積層して、両端面に共通側外部電極56と個別側外部電極57とを設けた状態で、スリット加工(溝加工)を施して溝を入れることにより、複数の圧電振動子を形成している。
【0033】
このように構成した液滴吐出ヘッドにおいては、圧電振動子37の駆動部に対して選択的に20〜50Vの駆動パルス電圧を印加する。これによって、パルス電圧が印加された駆動部が積層方向に伸びてダイヤフラム部をノズル方向に変形させ、圧力室38の容積/体積変化によって圧力室38内の液体が加圧され、ノズル孔21から液滴が吐出(噴射)される。
【0034】
図4は実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル板および液室構成部材の構造を示す模式的な断面図、図5は同じく液滴吐出ヘッドの模式的な断面図である。
【0035】
図4および図5に示すように、この液滴吐出ヘッドは、複数のノズルが形成されたノズル形成部材であるノズル板22と各ノズルが連通した液室を形成する流路部材25および振動板26から構成されている。ノズル板22は、ノズル孔21が開設されたノズル面11を備え、このノズル面11には撥水膜が形成されている。前記ノズル板22は、ノズル孔21を形成したNiプレートからなるノズル板22の吐出面には中間層としてTi層/SiO2層27を介して撥水層23を形成し、裏面には流路部材25との接合性を強めるためにSiO2層24を形成した構成を備える。撥水層23は例えばパーフルオロポリエーテルなどから構成される。なお、ノズル板22にはNiプレートを用いたものとして説明しているが、ノズル板22これに限るものではない。
【0036】
次に液滴吐出ヘッド清掃装置について説明する。図6は実施形態に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示すものであり、(a)は概略斜視図、(b)は底面図、(c)は側面図、(d)は平面図、(e)は斜視図、(f)はブレード部材の側面図である。本実施形態では、液滴吐出ヘッド清掃装置は、前述した回復装置117に組み込まれる。
【0037】
液滴吐出ヘッド清掃装置は、図6(a)に示すように、液滴吐出ヘッド94を清浄化するため、その先端部が液滴吐出ヘッド94のノズル面11に接触しつつ移動されるブレード部材1と、液滴吐出ヘッド94の外側に配置され、ブレード部材1の姿勢を維持する姿勢維持部材2とを有して構成されている。ブレード部材1は液滴吐出ヘッド94の少なくともノズル面11に接触する。また、この回復装置117は液滴吐出ヘッド94の外側に備えられている。ブレード部材1は例えば弾力性を備える合成樹脂素材で形成される。
【0038】
このブレード部材1は、図6(c)、(e)に示すように、その先端部1aを姿勢維持部材2内に配置された液滴吐出ヘッド94のノズル面11に接触して主走査方向を移動方向として移動され、ノズル面11からインク13をぬぐい去り清掃を行う。ブレード部材1は、図示していない公知の駆動装置で駆動される。
【0039】
また、ブレード部材1には、その移動方向側表面に開口を備え反移動方向側に向けて形成された溝部3が配置されている。この溝部3は、ブレード部材1の先端部1aから下方に向けて延長されて形成されている。なお、ブレード部材1の先端部1aには、ブレード部材1の進行方向に向け棚部1bが形成されている。
【0040】
溝部3は、ブレード部材1に2列平行に形成されており、各溝部3の幅方向の外側端は、ノズル面11の幅方向の端部と同じ位置に配置されている。両溝部3はノズル面11の幅方向内側に形成されている。また溝部3は断面四角形状であり、その断面形状および大きさはブレード部材1の先端部から下方にかけて一様なものとされている。
【0041】
また、溝部3の内面はブレード部材1の他の表面に比べ撥液性が劣る状態となるよう形成されている。例えばブレード部材1は、表面がパーフルオロポリエーテル等の撥水膜で被覆されており、溝部3の内側表面は、シリコーン系撥水膜が被覆される。このようにして、ブレード部材1の撥水膜は溝部3の撥水膜より高い撥水性(撥インク性)を有するものとすることができる。なお、ブレード部材1のうちノズル面11から外側に配置される領域1cにおいて、撥水膜の撥水性は上部が強く下方に向けて弱くすることができる。図6(d)において、撥水性の強さを灰色の濃淡で示した。色が濃いほど撥水性が強い状態を示している。
【0042】
これらの撥水膜の形成は、真空下での蒸着で構成することができる他、適当な溶媒に撥水材を溶解させて塗布して構成することができる。前者について言えば、例えば真空排気ポンプにて真空槽内を所定の真空度まで排気した後、撥水材を気化して真空槽に導入し蒸着させることで撥水膜を形成することができる。また、後者については、例えば、撥水材を有機溶剤に溶解させ、ワイヤバーやドクターブレードなどの治具でコーティングすることができる他、スピンコーターによって回転塗布することもできる。また、スプレーによって塗布することや塗液を満たした容器に浸漬塗工(ディッピング)することもできる。複数の撥水膜の形成は、異なる撥インク性を持つ撥水材を用い、ブレード部材中のそれぞれの撥水膜形成部分以外にマスキングした上で、前記撥水膜形成方法により形成する。これを複数回行うことで形成することができる。
【0043】
図7は実施形態に係る液滴吐出ヘッド清掃装置の動作を説明するための模式図ある、図7(a)〜(c)に示すように、ブレード部材1の先端部1aをノズル面11に接触させつつ、液滴吐出ヘッド94の主走査方向に移動させてノズル面11に付着したインク13をぬぐい取る。このとき、図7(a)に示すようにブレード部材1の先端部1aはノズル孔12内に一部が入り込み、インク13と接触する。すると、図7(b)に示すようにブレード部材1の先端部1aにインク13が付着するが、溝部3がブレード部材1よりも低い撥水性を有しているため、図7(c)に示すようにインク13はブレード部材1の先端部1aにとどまらず、図6(d)の矢印Aに示すように溝部3内に移動する。そして、インク13は、溝部3に沿って下方に案内される。
【0044】
従って、この実施形態に係る液滴吐出ヘッド清掃装置によれば、ノズル孔近傍のインクがブレード部材1の移動方向下流域に付着することを防止することができる。これにより液滴吐出ヘッドは、正常なメニスカスが形成され、インク滴の吐出方向曲がりや大きさにばらつきが少なく吐出不良が発生することのない状態を維持することができる。
【0045】
<実施形態2>
図8は実施形態2に係る液滴吐出ヘッド清掃装置のブレード部材を示す側面図である。実施形態2に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、溝部の深さが変化するようにしたものである。溝部3は、その深さdがブレード部材1の先端部から下方に行くに従って深くなるように形成されている。実施形態2では、溝部3に蓄留できるインクの量を多くすることができる。なお、溝部は、その深さdを符号3aで示したように、ブレード部材1の先端部から下方に行くに従って浅くなるように形成することや、図6(f)に示したように一様な深さとすることもできる。
【0046】
<実施形態3>
図9は実施形態3に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。実施形態3では、ブレード部材1に形成した溝部3の表面の撥液性を上端部から下方に向け徐々に低くなるように形成している。図中溝部3に付した灰色の濃さで撥水性を表している。このように溝部3の撥液性が下方に向け徐々に低くなるように撥水膜を形成することで、溝部3内に吸収されたインク13が撥液性の低い方向へ移動する。これによりブレード部材1の溝部3の上側から下側へインクを移動させることにより、ノズル面11に接触する部分の清浄度をより保つことができる。
【0047】
<実施形態4>
図10は実施形態4に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。実施形態4に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、溝部3の幅を上端部から下方に向け、徐々に狭くなるように形成している。これにより、溝部3内に吸収されたインク13が幅の細くなる方向へ毛細管現象により移動する。従ってブレード部材1の上端部から下方に向けインクを移動させ、ノズル面11に接触する部分の清浄度をより保つことができる。
【0048】
<実施形態5>
図11は実施形態5に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。実施形態5に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、溝部3の幅寸法をブレード部材1の先端から下方に向け、徐々に広くなるように形成するとともに撥水性を弱くしている形成している。実施形態6に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、溝部3内に吸収されたインク13が幅の広くなる方向へ移動する。これにより、実施形態5に係る液滴吐出ヘッド清掃装置はブレード部材1の上部から下方へ多量のインクを移動させることができ、ノズル面11に接触する部分の清浄度をより保つことができる。
【0049】
<実施形態6>
図12は実施形態6に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す底面図である。実施形態5に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、ブレード部材1をブレード部材1の幅方向の中央部が進行方向に向け凸となる弓型に湾曲形成したものである。これにより、実施形態6に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、ブレード部材1の駆動に伴いインク13がブレード部材1の両側に案内され溝部3に効率よく誘導される。
【0050】
<実施形態7>
図13は実施形態7に係る液滴吐出ヘッド清掃装置を示す正面図である。実施形態7に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、ブレード部材1に形成する2本の溝部3を平行でない状態、すなわち下方に向け広がるように形成している。
【0051】
<実施形態8、実施形態9>
図14は液滴吐出ヘッド清掃装置のブレード部材を示すものであり、(a)は実施形態8を示す断面図、(b)は実施形態9を示す断面図である。これらの実施形態は、溝部3の断面形状を変更したものである。実施形態8に係る液滴吐出ヘッド清掃装置は、ブレード部材1に形成する溝部3の断面形状をV型にしたものである。また実施形態9に係る液滴吐出ヘッド清掃装置はブレード部材1に形成する3の断面形状を半円状としたものである。これらの実施形態によれば、奥側に向け溝部3の幅が狭くなるので、インクが毛細管現象で案内され、インクの案内をより円滑に行うことができる。
【0052】
以上のように、実施形態に係る液滴吐出ヘッド清掃装置では、ブレード部材がノズル孔内に食い込む際に部材の先端面および後面にインクが付着し、このインクが選択的に溝部内に吸収されることでノズル孔近傍のインクのぬぐい去り方向下流域に付着することを防止することができる。これにより液滴吐出ヘッドは、正常なメニスカスが形成され、インク滴の吐出方向曲がりや大きさにばらつきが少なく吐出不良が発生することのない状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ブレード部材
1a 先端部
1b 棚部
1c 両端の領域
2 姿勢維持部材
3 溝部
13 インク
21 ノズル孔
22 ノズル板
23 撥水層
24 SiO2層
25 流路部材
26 振動板
27 SiO2層
31 流路ユニット
32 アクチュエータユニット
33 フレーム
34 流体抵抗部
35 チャンバープレート
36 振動板
37 圧電振動子
38 圧力室
41 共通液室
42 凸部
43 ダイヤフラム部
44 ダイヤフラム部
45 液体供給口
48 圧延製金属板
49 高分子フィルム
50 FPCケーブル
51 ベース部材
52 ドライバーIC
53 ダンパー室
55A 内部電極
55B 内部電極
56 共通側外部電極
57 個別側外部電極
81 装置本体
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット
85 手差しトレー
86 排紙トレー
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 液滴吐出ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モーター
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラ
105 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モーター
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 拍車
113 排紙ローラ
114 拍車
115、116 ガイド部材
117 回復装置
118 タイミングベルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2009−132009公報
【特許文献2】特開2006−326859公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔から液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔の開設面に先端部を接触させて移動しつつ前記ノズル孔の開設面をぬぐうブレード部材を備え、
前記ブレード部材は、その移動方向と直行する幅方向の両端が前記液滴吐出ヘッドから外側に延長するように形成されるとともに、
前記ブレード部材は、その移動方向側の面の上下方向に開設された移動面側開口を備えており、かつ前記移動方向側の面から反移動方向側の面に向けて凹状に形成され、
前記凹状に形成された部位に、ぬぐわれた液を誘導する溝部を複数形成した
ことを特徴とする液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項2】
前記ブレード部材に形成した溝部が、前記液滴吐出ヘッドの幅方向内側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項3】
前記ブレード部材に形成した溝部の外側端部位置が、前記液滴吐出ヘッドの幅方向端部と一致していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項4】
前記ブレード部材の先端部が、進行方向に対して凸となる弓型に湾曲形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項5】
前記ブレード部材に形成した溝部の幅方向寸法が、前記先端から下方に向けて徐々に広くなるよう形成、または均等に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項6】
前記ブレード部材に形成した溝部の深さが、前記先端部から下方へ向け徐々に浅くなるよう、または同じ深さに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項7】
前記ブレード部材に形成された複数の溝部の間隔が前記先端部から下方へ向け広げるよう形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項8】
前記ブレード部材の前記液滴吐出ヘッドより延長された部分の表面、および前記溝部表面にノズル孔開設面に施された撥水膜と同等、またはそれより撥水性の低い撥水膜を形成したことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッド清掃装置と、液滴を吐出する吐出ヘッド部材とを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドに記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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