説明

液滴吐出装置

【課題】メニスカスの残留振動を効率よく抑制し、残留振動を抑制するために利用したエネルギーを液滴吐出に利用する。
【解決手段】第1駆動波形50と第2駆動波形51を別個のアクチュエータに入力する。第2駆動波形51は、時刻t2において圧力室の容積を増大させメニスカスの残留振動を抑制し、時刻t5において、第1駆動波形50と同じタイミングで圧力室の容積を縮小させてインク滴を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなどの液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出装置としては、ノズルから記録用紙等に向けて液滴を吐出するヘッドと、そのヘッドに液体を供給する液体供給機構と、ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段を有するものが知られている。例えば、特許文献1では、液滴吐出装置の一例であるインクジェットプリンタが示されており、インクを吐出するインクジェットヘッドは、各々ノズルに連通する複数の圧力室と、各圧力室へインクを供給する共通インク室と、各圧力室を塞ぐように配置された圧電アクチュエータと、このアクチュエータを駆動する駆動回路とを備えている。
【0003】
この圧電アクチュエータは電圧を印加すると変形するものであり、その変形により圧力室の容積が増大、あるいは縮小する。そして、圧力室の容積を変化させることで、圧力室内のインクに圧力波を発生させると、ノズルに形成されているインクのメニスカスが膨らみ、これが引きちぎれるとインク滴となって吐出される。このメニスカスは、インク滴の吐出後にもしばらくは振動するが、時間が経過すると減衰する。しかし、メニスカス振動が完全に減衰せず振動が残留している状態で次のインク滴を吐出するのための圧力波を発生させると、吐出されるインク滴の速度や体積が所望の量から変化してしまう。したがって、インク滴を一定の速度と体積で吐出するためには、メニスカスの残留振動を十分減衰させてから次のインク滴を吐出することが望まれている。
【0004】
一方で、印字高速化のためには駆動周波数を高くすることが望まれている。駆動周波数を高くすると、インク滴吐出後、次のインク滴吐出までの時間が短くなる。そのため、メニスカスの残留振動が十分に減衰するための時間が十分とれず、振動が残留している状態で次のインク滴を吐出することになり、吐出されるインク滴の速度と体積が変動してしまう。
【0005】
この問題を解決する発明が特許文献2において提案されている。特許文献2では、1つの圧力発生室に2つの上電極を設け、それぞれの電極に別々の駆動回路を接続している。そして、これらの駆動回路は、第1上電極11にはインク滴を吐出させるための駆動信号を供給するとともに、第2上電極12には残留振動を打ち消すような信号を供給するように制御される。具体的には、インク滴を吐出する際に、第1上電極11にインク滴を吐出させるための駆動信号を供給してインク滴が吐出させ、その直後に、制振に適したタイミングで、第2上電極12にメニスカスの残留振動を打ち消すための駆動信号を供給する。これによりインク滴吐出後の無用な残留振動を速やかに減衰させ、印字速度を向上させている。
【0006】
制振に適したタイミングとは、インク滴吐出後に生じたメニスカスの残留振動が中立点を通過した時点である。このタイミングで、もう一方の電極に振動を打ち消すような駆動信号を供給すると、メニスカスが逆方向に押し戻されて、インク滴吐出後の残留振動が急激に減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−237465号公報
【特許文献2】特開平10−128970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2において、第2上電極12にメニスカスの振動を打ち消すような駆動信号を供給すると、第2上電極12の領域に対応する圧電材料層がたわみ変形するため、次にメニスカスの振動を打ち消す駆動信号を供給するためには、その前に圧電材料層のたわみ変形を解除し、初期状態に戻しておく必要がある。この圧電材料層が初期状態に戻る変形により、メニスカスには再度、振動が与えられることになる。その結果、メニスカスの振動を効率的に抑えることができないという問題がある。
【0009】
この問題を解決するため、圧電材料層が初期状態に戻る変形をゆるやかにすることで、メニスカスに振動を与えることがないように制御することも考えられるが、その場合には、圧電材料層が初期状態に戻るまで次のインク滴を吐出することができない。言い換えると、圧電材料層が初期状態に戻るまでの時間が必要となることから、印字周期を短くして、印字速度を速くすることが困難であるという新たな問題が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズルとそのノズルに連通する圧力室とを有する流路ユニットと、前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第1基準状態と、この第1基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第1容積増大状態とを選択的にとりえる第1アクチュエータと、同じく前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第2基準状態と、この第2基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第2容積増大状態とを選択的にとりえる第2アクチュエータと、前記ノズルから所定の印字周期毎に選択的に液滴を吐出させるよう、前記第1及び第2アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えた液滴吐出装置であって、前記第1アクチュエータは、液滴を吐出させる印字周期である吐出印字周期の際には、前記第1基準状態から一旦前記第1容積増大状態に変化し、その後前記第1基準状態に戻るとともに、液滴を吐出させない印字周期である不吐出印字周期の際には、前記第1基準状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、前記第2アクチュエータは、前記吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から一旦前記第2基準状態に変化し、その後前記第2容積増大状態に戻るとともに、前記不吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、さらに、前記第1及び第2アクチュエータは、前記吐出印字周期において、前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動制御手段によって制御されることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズルとそのノズルに連通する圧力室とを有する流路ユニットと、前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第1基準状態と、この第1基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第1容積増大状態とを選択的にとりえる第1アクチュエータと、同じく前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第2基準状態と、この第2基準状態のときよりも前記圧室の容積を増大させる第2容積増大状態とを選択的にとりえる第2アクチュエータと、前記ノズルから所定の印字周期毎に選択的に液滴を吐出させるよう、前記第1及び第2アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えた液滴吐出装置であって、前記第1のアクチュエータは、液滴を吐出させる印字周期である吐出印字周期の際には、前記第1基準状態から一旦前記第1容積増大状態に変化し、その後前記第1基準状態に戻るとともに、液滴を吐出させない印字周期である不吐出印字周期の際には、前記第1基準状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、前記第2のアクチュエータは、(1)前記不吐出印字周期の際には、前記第2基準状態を維持し、(2)前記吐出印字周期であって、その直前と直後がともに前記吐出印字周期である第1の吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から一旦前記第2基準状態に変化し、その後前記第2容積増大状態に戻し、(3)前記吐出印字周期であって、その直前が前記不吐出印字周期でその直後が前記吐出周期である第2の吐出印字周期の際には、前記第2基準状態から一旦前記第2容積増大状態に変化し、その後前記第2基準状態に戻り、さらに前記第2容積増大状態に変化し、(4)前記吐出印字周期であって、その直前が前記吐出印字周期でその直後が前記不吐出印字周期である第3の吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化し、(5)前記吐出印字周期であって、その直前と直後がともに前記不吐出印字周期である第4の吐出印字周期の際には、前記第2基準状態から一旦前記第2容積増大状態に変化し、その後前記第2基準状態に戻る、ように前記駆動制御手段によって制御され、さらに、前記第1及び第2アクチュエータは、前記第1ないし第4の吐出印字周期において、前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動制御手段によって制御されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明に係る液滴吐出装置において、前記第1及び第2アクチュエータは、前記第2または第4の吐出印字周期の際には、前記第1アクチュエータが前記第1基準状態から前記第1容積増大状態に変化するタイミングと前記第2アクチュエータが前記第2基準状態から前記第2容積増大状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動手段によって制御されることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3に記載の発明に係る液滴吐出装置において、前記第1アクチュエータの変形する面積が、前記第2アクチュエータの変形する面積より大であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4に記載の発明に係る液滴吐出装置において、前記駆動制御手段は、前記記録媒体に向けて液滴を吐出しない非記録時において、前記圧力室内部のインクを攪拌するための攪拌モードを実行可能に構成されており、この攪拌モードの際に、前記第1及び第2アクチュエータは、前記第1アクチュエータが前記第1基準状態から前記第1容積増大状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じであり、かつ、前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2基準状態から前記第2容積増大状態に変化するタイミングとが同じとなる、ように前記駆動制御手段によって制御をされることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、駆動制御手段は、1の圧力室に設けられている第1および第2アクチュエータを個別に駆動でき、そのうち1つである第2アクチュエータでメニスカス振動を抑制する駆動(以下、メニスカス振動抑制駆動)を行うことができる。
【0016】
しかも、メニスカス振動抑制駆動により変形した第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動を、次の吐出印字周期において第1アクチュエータが第1基準状態に戻る駆動と同じタイミングで行うことで、その第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動(第2アクチュエータのメニスカス振動抑制に寄与しない駆動)により発生する圧力を、メニスカスに無用な振動を与えるものとしないばかりか、むしろ、次の吐出印字周期においてインクを吐出するための圧力として積極的に利用することができる。
【0017】
従って、メニスカス振動抑制駆動によりメニスカス振動を抑制できることで、印字周期を短く設定して印字高速化が図れるとともに、そのメニスカス振動抑制駆動にともなって生じるメニスカス振動抑制に寄与しない無用な圧力を次の吐出に利用できるので、従来に比べて、エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、駆動制御手段は、1の圧力室に設けられている第1および第2アクチュエータを個別に駆動させ、そのうちの1つである第2アクチュエータにメニスカス振動抑制駆動をさせることができる。
【0019】
さらに、駆動制御手段は、当該印字吐出周期の直後の印字周期が吐出か不吐出かによって、メニスカス振動抑制駆動を行うか否かを決定することができる。すなわち、当該印字吐出周期の直後の印字周期が吐出の際(第1および第2の吐出印字周期)には、駆動制御手段は第2アクチュエータによるメニスカス振動抑制駆動を行わせるように制御し、メニスカスの振動を積極的に抑制することで、直後の印字吐出周期で液滴を安定して吐出することができる。一方、当該印字吐出周期の直後の印字周期が不吐出の際(第3および第4の吐出印字周期)には、次の印字吐出周期までにメニスカスの振動が減衰する時間が十分にあるため、駆動制御手段は第2アクチュエータによるメニスカス振動抑制駆動を行わせないように制御することで、消費電力を節約することができる。
【0020】
さらに、第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動を、第1アクチュエータが第1基準状態に戻る駆動と同じタイミングで行うことで、その第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動により発生する圧力を、液体を吐出するための圧力として積極的に利用することができる。
【0021】
すなわち、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動した場合(第1および第3の吐出印字周期の場合)には、それに伴ってメニスカス振動抑制に寄与しない駆動(第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動)も行われ、その駆動により無用な圧力が発生するが、これを次の吐出に利用することで、エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0022】
また、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動しない場合(第2および第4の吐出印字周期の場合)でも、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動した場合に合わせて、第2アクチュエ−タの駆動を次の吐出にも寄与させるので、より一層エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、駆動制御手段は、第2および第4の吐出印字周期の際に、第1アクチュエータが第1基準状態から第1容積増大状態に変化する駆動タイミングと、第2アクチュエータが第2基準状態から第2容積増大状態に変化する駆動タイミングとが同じとなるように制御するため、さらに低い電圧で液滴を吐出することができ、消費電力をさらに節約することができる。
【0024】
すなわち、第2および第4の吐出印字周期の際とは、その1つ前の吐出印字周期の直前の印字周期が不吐出であるために、その1つ前の吐出印字周期では第2アクチュエータにメニスカス振動抑制駆動(第2基準状態から第2容積増大状態とする駆動)を行わせなかったケースであるが、このケースにおいて、第2アクチュエータを今回の吐出印字周期の液滴の吐出に寄与させるため(第1アクチュエータが第1容積増大状態から第1基準状態に変化するタイミングと同じタイミングで、第2アクチュエータを第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化させるため)には、予め第2アクチュエータを第2基準状態から第2容積増大状態に変化させておかなければならない。そこで、そのタイミングを第1アクチュエータが第1基準状態から第1容積増大状態に変化するタイミングと同じとすることで、2つのアクチュエータから発生する圧力波が打ち消しあうことなく足し合わされるようにすれば、第2アクチュエータを第2基準状態から一旦第2容積増大状態に変化させるときに生じる圧力を、無駄なく吐出に利用することができ、より一層エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、第1アクチュエータが変形する面積は第2アクチュエータのそれより大きい。液滴を吐出するために必要なエネルギーはメニスカスの振動を抑制するために必要なエネルギーよりも多い。したがって、それぞれの駆動に必要なエネルギーの割合に応じてアクチュエータの変形する面積を設定でき、好適な形状のアクチュエータを構成することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、駆動制御手段は、記録媒体に向けて液滴を吐出しない非記録時において、圧力室内部の液体を攪拌するための攪拌モードを実行可能に備えている。圧力室内部の液体はノズル開口で空気と接触している。液滴を吐出しない時間が長く続くと、ノズル開口付近に滞留している液体の水分が蒸発し粘度が増加する。そこで、攪拌モードを実行することにより、液体を攪拌し、粘度が増加した液体を拡散できる。その結果、粘度が増加した液体がノズル開口付近に滞留することで生じるノズルの目詰まりや、吐出された液滴の速度不足等といった印字不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクジェットヘッドの一部平面図である。
【図3】図2のA−A´線断面図である。
【図4】図2のB−B´線断面図である。
【図5】インクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】インクジェットヘッドに供給される駆動波形を説明する説明図である。
【図7】第1実施形態に係る駆動波形である。
【図8】第2実施形態に係る駆動波形である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態に共通するインクジェットプリンタおよび、その制御部分について説明する。図1は、インクジェットプリンタの概略構成図である。インクジェットプリンタ100は、走査方向に移動可能なキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載され記録用紙P1に対してインクを吐出するインクジェットヘッド1と、記録用紙P1を紙送り方向へ搬送する搬送ローラ3と、インクジェットヘッド1等のインクジェットプリンタ100の各構成部分を制御する図5に図示する制御装置4とを備えている。そして、このインクジェットプリンタ100は、搬送ローラ3によって紙送り方向に搬送される記録用紙P1に対して、キャリッジ2によりインクジェットヘッド1を紙送り方向と直交する走査方向に移動させながらインクジェットヘッド1より記録用紙P1へインクを吐出させることで、記録用紙P1に所望の画像や文字等を記録するように構成されている。
【0029】
図2は、インクジェットヘッド1の一部の平面図である。図3は、図2のA−A´断面図であり、図4は、図2のB−B´断面図である。インクジェットヘッド1は、共通液室15a、圧力室15bおよびノズル孔15cからなるインク流路が形成された流路ユニット10と、インクを吐出させるアクチュエータユニット20を備える。流路ユニット10は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されたキャビティプレート11、ベースプレート12、マニホールドプレート13、および高分子合成樹脂材料等の絶縁材料(例えば、ポリイミド)で形成されたノズルプレート14を備えており、これらのプレートは、積層状態で接合されている。キャビティプレート11の上面にアクチュエータユニット20が接合され、流路ユニット10とアクチュエータユニット20が一体となってインクジェットヘッド1を構成している。
【0030】
インクジェットプリンタのアクチュエータとしては、圧電方式、電気−熱変換方式、静電気により振動板を駆動する方式など各種のものが適用できる。本実施形態は、圧電方式を採用したものでおり、アクチュエータユニット20は、圧力室15bの全体を覆う大きさを有する扁平な複数の圧電セラミックス層23(例えばPZT)を積層し、その間に電極を挟んだ構成となっている。そして、図3,図4に示されるように、アクチュエータユニット20は、圧力室15bの一内面をなしており、変形することによって圧力室15bの体積を変化させるものである。電極は、複数の圧力室15bに共通な共通電極21と圧力室15b毎に設けた個別電極22とからなり、個別電極22に電圧を印加して共通電極21と個別電極22の間に電界を発生させる。これにより電極に挟まれた部分の圧電セラミックス層が変形し、圧力室15bの容積が変動する。その結果、圧力室15b内のインクに圧力波が発生し、ノズル孔15cからインク滴が吐出する。本実施形態の個別電極22は、図3および図4に示すように、それぞれの圧力室15bと対向する領域に形成された第1個別電極22aと第2個別電極22bからなる。ここで、アクチュエータユニット20のうち、第1個別電極22aに電圧を印加することで圧電セラミックス層が変形する領域を第1アクチュエータ、同じく第2個別電極22bに電圧を印加することで圧電セラミックス層が変形する領域を第2アクチュエータと称する。そして、本実施形態においては、第1個別電極22aの面積が第2個別電極22bの面積よりも大きく、これにより、第1アクチュエータが変形する面積が第2アクチュエータの変形する面積よりも大きくなるように構成されている。
【0031】
次に、インクジェットプリンタ100の全体制御を司る制御装置4について説明する。図5は、インクジェットプリンタ100の電気的な構成を示すブロック図である。制御装置4は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、インクジェットプリンタ100の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えている。
【0032】
さらに、制御装置4は、記録制御部31と攪拌制御部32とを備えている。記録制御部31は、キャリッジを往復駆動するキャリッジ駆動モータ33、搬送ローラ3を回転駆動する搬送モータ34およびインクジェットヘッド1のヘッドドライバ35を制御して記録用紙P1への画像等の記録を行わせるものである。
【0033】
また、攪拌制御部32は、インクジェットヘッド1のヘッドドライバ35を制御して、圧力室15b内のインクを攪拌し、ノズル開口付近において粘度が増加したインクを拡散するものである。
【0034】
次に、駆動波形とアクチュエータユニット20の挙動との関係について説明する。図6は、記録制御部31がアクチュエータユニット20の第1個別電極22aと第2個別電極22bとに入力する駆動波形を示している。
【0035】
この駆動波形は、電圧V1と電圧V1よりも高い電圧V1´とを選択的にとる矩形波である。そして、第1アクチュエータは、第1個別電極22aに電圧V1が印加された第1基準状態と、電圧V1´が印加されて電圧V1が印加されたときよりも圧力室15bの容積が増大する第1容積増大状態とを選択的にとり得る。同様に、第2アクチュエータは、第2個別電極22bに電圧V2が印加された第2基準状態と、電圧V2´が印加されて電圧V2が印加されたときよりも圧力室15bの容積が増大する第2容積増大状態とを選択的にとり得る。
【0036】
以上の説明に基づき、本発明の第1の実施形態の具体的な動作について説明をする。第1の実施形態の駆動波形を図7に示す。第1駆動波形50は第1個別電極22aに、第2駆動波形は51は第2個別電極22bに入力される駆動波形である。第1駆動波形50は、インク滴を吐出させるための駆動パルスからなり、記録制御部31は、印字周期が吐出か不吐出かに応じて、第1個別電極22aに駆動パルスを入力するか否かを制御する。
【0037】
図7は、印字待機状態から印字指令を受けて後の駆動波形を示すものである。印字周期52は吐出印字周期であり、記録制御部31は、第1アクチュエータを時刻t0において第1基準状態から第1容積増大状態へと変化させる。その後、時刻t1において第1容積増大状態から第1基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。その後、時刻t1からt3まで第1基準状態を維持させる。
【0038】
印字周期53は非吐出印字周期であり、記録制御部31は、第1アクチュエータを時刻t3からt4まで第1基準状態を維持するように制御する。これにより、インク滴は吐出されない。
【0039】
印字周期54は吐出印字周期であるため、印字周期52と同様に制御し、インク滴を吐出させる。
【0040】
第2駆動波形51は、吐出印字周期において、インク滴を吐出させる駆動パルスと、インク滴吐出後のメニスカスの振動を抑制する駆動パルスで構成されている。
【0041】
印字周期52は吐出印字周期であり、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t0において第2基準状態から第2容積増大状態へと変化させる。その後、第2アクチュエータを時刻t0からt1まで第2容積増大状態を維持するように制御する。その後、時刻t1において、前述した第1アクチュエータの駆動と同じタイミングで、第2容積増大状態から第2基準状態へと変化させるように制御する。これにより、第1アクチュエータとともにインク滴を吐出させる。
【0042】
その後時刻t2において、第2基準状態から第2容積増大状態へと変化させ、インク滴吐出により生じたメニスカスの振動を抑える。これにより、以後の吐出印字周期において、速度や体積が一定となるインク滴を安定して吐出させることができる。その後、時刻t2からt3まで第2容積増大状態を維持させる。
【0043】
印字周期53は非吐出印字周期であり、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t3からt4まで第2容積増大状態を維持するように制御する。これにより、インク滴は吐出されない。
【0044】
印字周期54は吐出印字周期であるため、印字周期52と同様に制御し、第1アクチュエータとともにインク滴を吐出させ、その後、メニスカスの振動を抑制する。
【0045】
以上説明した、第1の実施形態によれば、記録制御部31は、1の圧力室に設けられている第1および第2アクチュエータを個別に駆動でき、そのうち1つである第2アクチュエータでメニスカス振動を抑制する駆動(以下、メニスカス振動抑制駆動)を行うことができる。しかも、メニスカス振動抑制駆動により変形した第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動を、次の吐出印字周期において第1アクチュエータが第1基準状態に戻る駆動と同じタイミングで行うことで、その第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動(第2アクチュエータのメニスカス振動抑制に寄与しない駆動)により発生する圧力を、メニスカスに無用な振動を与えるものとしないばかりか、むしろ、次の吐出印字周期においてインクを吐出するための圧力として積極的に利用することができる。従って、メニスカス振動抑制駆動によりメニスカス振動を抑制できることで、印字周期を短く設定して印字高速化が図れるとともに、そのメニスカス振動抑制駆動にともなって生じるメニスカス振動抑制に寄与しない無用な圧力を次の吐出に利用できるので、従来に比べて、エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0046】
次に、第2の実施形態の駆動波形を図8に示す。第1駆動波形60は第1個別電極22aに、第2駆動波形は61は第2個別電極22bに入力される駆動波形である。
【0047】
本実施形態は、第1アクチュエータの挙動は第1実施形態の場合と同じであるが、第2アクチュエータの吐出印字周期における挙動を、前後の印字周期が吐出であるか不吐出であるかの4つの場合、すなわち、
(a)現在の印字周期の直前と直後の両方の印字周期が吐出である場合
(b)現在の印字周期の直前の印字周期が不吐出で直後の印字周期が吐出である場合
(c)現在の印字周期の直前の印字周期が吐出で直後の印字周期が不吐出である場合
(d)現在の印字周期の直前と直後の両方の印字周期が不吐出である場合
に応じて互いに異ならせるものである。
【0048】
まず、第1アクチュエータの制御について説明する。記録制御部31は、現在の印字周期が吐出であるか不吐出であるかによって第1アクチュエータの挙動が異なるように制御する。
【0049】
すなわち、印字周期(現在の印字周期63)が吐出印字周期であるときは、記録制御部31は、第1アクチュエータを時刻t0において第1基準状態から第1容積増大状態へと変化させる。その後、時刻t1において第1容積増大状態から第1基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。その後、印字周期63の最後まで第1基準状態が維持される。
【0050】
また、印字周期が不吐出である場合(図示なし)には、記録制御部31は、第1アクチュエータを第1基準状態を維持するように制御する。これにより、インク滴は吐出されない。
【0051】
次に、第2アクチュエータの制御について説明する。記録制御部31は、現在の印字周期が吐出であるか不吐出であるかによって第2アクチュエータの挙動が異なるように制御するとともに、現在の印字周期が吐出である場合には、上記(a)〜(d)の場合に応じてそれぞれ異なる挙動がなされるように制御する。
【0052】
(a)の場合(第1の吐出印字周期)には、第2アクチュエータは時刻t0において第2容積増大状態であり、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t0からt1まで第2容積増大状態を維持するように制御する。その後、時刻t1において第1アクチュエータの駆動と同じタイミングで、第2容積増大状態から第2基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。さらに、時刻t2において第2基準状態から第2容積増大状態に変化させ、インク滴吐出により生じたメニスカスの振動を抑える。その後は時刻t3まで第2容積増大状態を維持するように制御する。
【0053】
(b)の場合(第2の吐出印字周期)には、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t0において第2基準状態から第2容積増大状態に変化させ、その後、時刻t1において第1アクチュエータの駆動と同じタイミングで、第2容積増大状態から第2基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。さらに、時刻t2において第2基準状態から第2容積増大状態に変化させ、インク滴吐出により生じたメニスカスの振動を抑える。その後は時刻t3まで第2容積増大状態を維持するように制御する。
【0054】
(c)の場合(第3の吐出印字周期)には、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t0からt1まで第2容積増大状態を維持するように制御する。その後、時刻t1において第1アクチュエータの駆動と同じタイミングで、第2容積増大状態から第2基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。その後は時刻t3まで第2基準状態を維持するように制御する。
【0055】
(d)の場合(第4の吐出印字周期)には、記録制御部31は、第2アクチュエータを時刻t0において第2基準状態から第2容積増大状態に変化させ、その後、時刻t1において第1アクチュエータの駆動と同じタイミングで、第2容積増大状態から第2基準状態に変化させるように制御し、インク滴を吐出させる。その後は時刻t3まで第2基準状態を維持するように制御する。
【0056】
また、印字周期が不吐出である場合(図示なし)には、記録制御部31は、第2アクチュエータが印字周期にわたって第2基準状態が維持されるように制御する。
【0057】
以上の第2実施形態によれば、先に説明した第1の実施形態と同様に、メニスカス振動を抑制しつつ、従来に比べてエネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0058】
また、記録制御部31は、印字吐出周期の直後の印字周期が吐出の際(第1および第2の吐出印字周期)には、第2アクチュエータによるメニスカス振動抑制駆動を行わせるように制御し、メニスカスの振動を積極的に抑制することで、直後の印字吐出周期で液滴を安定して吐出することができる。一方、印字吐出周期の直後の印字周期が不吐出の際(第3および第4の吐出印字周期)には、次の印字吐出周期までにメニスカスの振動が減衰する時間が十分にあるため、記録制御部31は第2アクチュエータによるメニスカス振動抑制駆動を行わせないように制御することで、消費電力を節約することができる。
【0059】
さらに、第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動を、第1アクチュエータが第1基準状態に戻る駆動と同じタイミングで行うことで、その第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動により発生する圧力を、液体を吐出するための圧力として積極的に利用することができる。
【0060】
すなわち、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動した場合(第1および第3の吐出印字周期の場合)には、それに伴ってメニスカス振動抑制に寄与しない駆動(第2アクチュエータを第2基準状態に戻す駆動)も行われ、その駆動により無用な圧力が発生するが、これを次の吐出に利用することで、エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。また、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動しない場合(第2および第4の吐出印字周期の場合)でも、第2アクチュエータをメニスカス振動抑制駆動のために駆動した場合に合わせて、第2アクチュエ−タの駆動を次の吐出にも寄与させるので、より一層エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0061】
また、(b)と(d)の場合(第2および第4の吐出印字周期の場合)において、時刻t0における圧力室内のインクに負圧を発生させるタイミングが、第1アクチュエータと第2アクチュエータとで同じとなるように制御しているが、これにより、さらに低い電圧で液滴を吐出することができ、消費電力をさらに節約することができる。
【0062】
すなわち、この場合は、その1つ前の吐出印字周期の直前の印字周期が不吐出であるために、その1つ前の吐出印字周期では第2アクチュエータにメニスカス振動抑制駆動(第2基準状態から第2容積増大状態とする駆動)を行わせなかったケースであるが、このケースにおいて、第2アクチュエータを今回の吐出印字周期の液滴の吐出に寄与させるため(第1アクチュエータが第1容積増大状態から第1基準状態に変化するタイミングと同じタイミングで、第2アクチュエータを第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化させるため)には、予め第2アクチュエータを第2基準状態から第2容積増大状態に変化させておかなければならない。そこで、そのタイミングを第1アクチュエータが第1基準状態から第1容積増大状態に変化するタイミングと同じとすることで、2つのアクチュエータから発生する圧力波が打ち消しあうことなく足し合わされるようにすれば、第2アクチュエータを第2基準状態から一旦第2容積増大状態に変化させるときに生じる圧力を、無駄なく吐出に利用することができ、より一層エネルギー効率のよい液滴吐出を行うことができる。
【0063】
なお、上述した第1および第2実施形態において、アクチュエータユニット20は、第1個別電極22aの面積が第2個別電極22bの面積よりも大きく、これにより、第1アクチュエータが変形する面積が第2アクチュエータの変形する面積よりも大きくなるように構成されている。
【0064】
これにより、第1アクチュエータによって付与される液滴を吐出するためのエネルギーを、第2アクチュエータによって付与されるメニスカスの振動を抑制するために必要なエネルギーよりも多くすることができ、それぞれに必要なエネルギーの割合に応じた好適な形状のアクチュエータを構成することができる。
【0065】
次に本発明の応用例である攪拌モードについて説明する。この攪拌モードは、上述した攪拌制御部32によって実行される圧力室内のインクを吐出させることなく攪拌するためのモードであり、上述したいずれの実施形態とも併用可能である。
【0066】
攪拌モードは、インクジェットヘッド1が記録媒体P1に向けてインク滴を吐出しない時に実行される。具体的には、入力装置から印字命令が入力されていない時間、印字命令を受けてから印字を開始するまでの時間、印字動作中であって、あるパスの印字終了から次のパスの印字開始までの時間、および印字動作中であって、印字周期が非吐出である時間である。
【0067】
攪拌モードは、第1アクチュエータと第2アクチュエータを同じタイミングで逆の方向に変形させることにより実行される。すなわち、攪拌制御部32は、第1アクチュエータが第1基準状態から第1容積増大状態に変化するタイミングと、第2アクチュエータが第2容積増大状態から第2基準状態に変化するタイミングとが同じであるように制御する。これにより、第1アクチュエータが圧力室に対して凹となる変形と、第2アクチュエータが圧力室に対して凸となる変形とが同じタイミングとなり、圧力室の容積の変動を少なくして、インクを攪拌することができる。その後、攪拌制御部32は、第1アクチュエータが第1容積増大状態から第1基準状態に変化するタイミングと、第2アクチュエータが第2基準状態から第2容積増大状態に変化するタイミングとが同じであるように制御する。これらの制御を複数回繰り返すことでインクの攪拌を行う。
【0068】
この攪拌モードは、インクジェットヘッド1が記録媒体P1上にある場合には、攪拌によりインク滴が吐出されることは許されないが、記録媒体P1上以外の場所にある場合には、攪拌によりインク滴が吐出されてもよい。そのため、ノズル開口付近のインクの粘度の増加に応じて電圧を設定することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェットヘッド
2 キャリッジ
3 搬送ローラ
4 制御装置
10 流路ユニット
11 キャビティプレート
12 ベースプレート
13 マニホールドプレート
14 ノズルプレート
15a 共通液室
15b 圧力室
15c ノズル孔
20 アクチュエータユニット
21 共通電極
22 個別電極
22a 第1個別電極
22b 第2個別電極
23 圧電セラミックス層
50、60 第1駆動波形
51、61 第2駆動波形
62 直前の印字周期
63 現在の印字周期
64 直後の印字周期
100 インクジェットプリンタ
P1 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルとそのノズルに連通する圧力室とを有する流路ユニットと、
前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第1基準状態と、この第1基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第1容積増大状態とを選択的にとりえる第1アクチュエータと、
同じく前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第2基準状態と、この第2基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第2容積増大状態とを選択的にとりえる第2アクチュエータと、
前記ノズルから所定の印字周期毎に選択的に液滴を吐出させるよう、前記第1及び第2アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記第1アクチュエータは、
液滴を吐出させる印字周期である吐出印字周期の際には、前記第1基準状態から一旦前記第1容積増大状態に変化し、その後前記第1基準状態に戻るとともに、液滴を吐出させない印字周期である不吐出印字周期の際には、前記第1基準状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、
前記第2アクチュエータは、
前記吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から一旦前記第2基準状態に変化し、その後前記第2容積増大状態に戻るとともに、前記不吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、
さらに、前記第1及び第2アクチュエータは、
前記吐出印字周期において、前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動制御手段によって制御されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
液滴を吐出するノズルとそのノズルに連通する圧力室とを有する流路ユニットと、
前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第1基準状態と、この第1基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第1容積増大状態とを選択的にとりえる第1アクチュエータと、
同じく前記圧力室の容積を変化させるものであって、所定の第2基準状態と、この第2基準状態のときよりも前記圧力室の容積を増大させる第2容積増大状態とを選択的にとりえる第2アクチュエータと、
前記ノズルから所定の印字周期毎に選択的に液滴を吐出させるよう、前記第1及び第2アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記第1のアクチュエータは、
液滴を吐出させる印字周期である吐出印字周期の際には、前記第1基準状態から一旦前記第1容積増大状態に変化し、その後前記第1基準状態に戻るとともに、液滴を吐出させない印字周期である不吐出印字周期の際には、前記第1基準状態を維持するように、前記駆動制御手段によって制御され、
前記第2のアクチュエータは、
(1)前記不吐出印字周期の際には、前記第2基準状態を維持し、
(2)前記吐出印字周期であって、その直前と直後がともに前記吐出印字周期である第1の吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から一旦前記第2基準状態に変化し、その後前記第2容積増大状態に戻し、
(3)前記吐出印字周期であって、その直前が前記不吐出印字周期でその直後が前記吐出周期である第2の吐出印字周期の際には、前記第2基準状態から一旦前記第2容積増大状態に変化し、その後前記第2基準状態に戻り、さらに前記第2容積増大状態に変化し、
(4)前記吐出印字周期であって、その直前が前記吐出印字周期でその直後が前記不吐出印字周期である第3の吐出印字周期の際には、前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化し、
(5)前記吐出印字周期であって、その直前と直後がともに前記不吐出印字周期である第4の吐出印字周期の際には、前記第2基準状態から一旦前記第2容積増大状態に変化し、その後前記第2基準状態に戻る、
ように前記駆動制御手段によって制御され、
さらに、前記第1及び第2アクチュエータは、前記第1ないし第4の吐出印字周期において、
前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動制御手段によって制御されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1及び第2アクチュエータは、
前記第2または第4の吐出印字周期の際には、前記第1アクチュエータが前記第1基準状態から前記第1容積増大状態に変化するタイミングと前記第2アクチュエータが前記第2基準状態から前記第2容積増大状態に変化するタイミングとが同じとなるように、前記駆動手段によって制御されることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータの変形する面積が、前記第2アクチュエータの変形する面積より大であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、記録媒体に向けて液滴を吐出しない非記録時において、前記圧力室内部のインクを攪拌するための攪拌モードを実行可能に構成されており、
この攪拌モードの際に、
前記第1及び第2アクチュエータは、
前記第1アクチュエータが前記第1基準状態から前記第1容積増大状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2容積増大状態から前記第2基準状態に変化するタイミングとが同じであり、
かつ、前記第1アクチュエータが前記第1容積増大状態から前記第1基準状態に変化するタイミングと、前記第2アクチュエータが前記第2基準状態から前記第2容積増大状態に変化するタイミングとが同じとなる、ように前記駆動制御手段によって制御をされることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−221534(P2010−221534A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71550(P2009−71550)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】