液滴移動装置、液滴移動方法及び血漿分離装置並びに血漿分離方法
【課題】簡易な手法で、液滴を移動面形成部材の表面に沿って移動させる。
【解決手段】液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材1の両面に、夫々前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材4A,4Bを設ける。そして、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4A,4Bとを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を磁場勾配に沿って移動させる。
【解決手段】液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材1の両面に、夫々前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材4A,4Bを設ける。そして、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4A,4Bとを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を磁場勾配に沿って移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁場形成部材と移動面形成部材とを相対的に移動させて、移動面形成部材の表面において液滴を移動させる技術に関する。また、他の発明は移動面形成部材の表面において血液から血漿を分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分析の一連の操作を一枚の基板上で行うmicroTAS(Micro Total Analysis Systems)と呼ばれる技術がある。この手法は、基板上に反応部や混合部を設け、一枚の基板で血液等を分析する化学分析システムであり、マイクロ流路を用いる方法と、液滴を基板上にて操作する方法が知られている。前記液滴を基板上にて操作する方法は、Dropulet−based microTASと呼ばれ、検査液や試薬が数nl程度と微小量である点が優れている。
【0003】
前記液滴を移動させる方法として、EWOD(electro wetting on dielectric)を応用したデジタルマイクロフルイディスク回路において、液滴の生成、切断、合体、輸送する技術が検討されている。しかしながら、これら電気的に液滴を移動させる方法では、微細な回路を形成する必要があるため、構成が複雑化し、製造コストや運転コストが高くなる懸念がある。また、特許文献1には、塗布剤に超電導磁石による磁界を印加させて、塗布液を広げる技術が提案されている。しかしながら、超電導磁石は高価であり、やはりコスト的に不利である。
【0004】
一方、抗原抗体反応を用いた特定タンパク質の測定法として、ELISA法(Enzyme Linked Immunosolvent Assay:酵素免疫測定法)が知られている。この手法は、一次抗体と測定対象の特定タンパク質との間で抗原抗体反応を起こさせた後、前記一次抗体と特異的に反応する酵素で標識された二次抗体を作用させる。その後、酵素溶液、酵素基質溶液を添加して発色させた後、吸光度等を測定することにより、特定タンパク質量の検出を行うものである。この手法は、多数のウェルが形成されたプレートに対して、一次抗体溶液や、測定溶液、洗浄液、二次抗体溶液、酵素溶液、酵素基質溶液を作業者が手作業により分注することにより行われており、非常に手間と時間を要する作業となっている。従って、このELISA法を前記液滴を操作する手法を用いて実行できれば手間と時間が削減されるが、この際、簡易な手法で低コストで実行できることが好ましい。
【0005】
また、血液の生化学検査においても、血液量が微量で済み、数種の検査項目を短時間で実施することが期待できることから、マイクロ化学チップを用いる試みが成されている。ここで、検査項目によっては血液中の血漿を用いており、血液から血漿を分離する操作が必要となるが、マイクロ化学チップ上で前記分離操作を行うことはできず、この操作は遠心分離機を用いて行われている。しかしながら、この遠心分離機による操作ではある程度の血液量が必要になるため、マイクロ化学チップを用いる要請に沿わない。
【0006】
さらに、誘電泳動を用いて血液中の血漿と血球とを分離する研究が成されている。この手法によればプレート上に電極を設け、交流電圧を印加して誘電泳動作用を発生させることにより血液から血漿を分離することができる。従って、マイクロ化学チップチップに応用した場合、チップ上にて血漿を分離することはできるが、その後の液滴の移動に既述の電気的に液滴を移動させる手法を行おうとしても、これらは共に電場を用いる手法であるため、両者を組み合わせることはできない。
【0007】
また、特許文献2には、血清(血漿)を通過させ、血餅の通過を阻止するろ過部を採血管に挿入し、このろ過部を磁力により血清−血餅の境界部に移動させることによって血清を分離する手法が記載されている。しかしながら、この手法を適用してもマイクロチップ上にて血液から血漿は分離できず、本発明の課題の解決を図ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−137666号公報
【特許文献2】特開平5−52841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、簡易な手法で、液滴を移動面形成部材の表面に沿って移動させることができる技術を提供することにある。また、移動面形成部材の表面において血液から血漿を分離することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明の液滴移動装置は、
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材の表面に液滴を供給するための液滴供給部と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させるための移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の血漿分離装置は、
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材に設けられ、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の液滴移動方法は、
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材の表面に液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本発明の血漿分離方法は、
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなり、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極を備えた移動面形成部材の表面に血液の液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における前記液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動面形成部材の表面において液滴を移動させるにあたり、磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成し、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を前記磁場勾配に沿って移動させている。このように、磁場形成部材の移動に伴って、移動面形成部材の表面にて液滴を移動させることにより、簡易な手法で液滴を移動させることができる。
【0015】
また、他の発明によれば、移動面形成部材に誘電泳動作用を発生させる電極を設け、血液を前記電極上を通過するように移動させているので、血液中の血球が前記誘電泳動作用により電極に引きつけられる。その一方、血液中の血漿は磁場形成部材の移動に伴って移動するため、前記移動面形成部材の表面において前記血液から血漿を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る液滴移動装置の概略を示す斜視図である。
【図2】前記液滴移動装置に用いられる移動面形成部材を示す斜視図である。
【図3】前記液滴移動装置を示す側面図である。
【図4】前記液滴移動装置に用いられる磁場形成部材を示す斜視図である。
【図5】前記磁場形成部材を示す断面図である。
【図6】前記磁場形成部材によって形成された磁場を模式的に示す平面図である。
【図7】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図8】移動面形成部材に形成された流路に沿って、液滴が移動する様子を示す斜視図である。
【図9】試料液を貯留する試料液貯留部から磁場形成部材により試料液が引き千切られて、液滴が流路に供給される様子を示す断面図である。
【図10】前記試料液貯留部から磁場形成部材により試料液が引き千切られて、液滴が流路に供給される様子を示す平面図である。
【図11】移動面形成部材において行われる、ELISE法による試料液の分析手法を説明する平面図である。
【図12】本発明の液滴移動装置の他の例を示す斜視図である。
【図13】本発明の液滴移動装置のさらに他の例を示す側面図である。
【図14】本発明の血漿分離装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図15】前記血漿分離装置の要部を示す概略斜視図である。
【図16】前記血漿分離装置に用いられる、検査プレートの一例を示す平面図である。
【図17】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図18】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図19】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図20】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図21】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図22】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図23】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図24】磁場形成部材による液滴の移動実験にて用いられた実験装置を示す側面図である。
【図25】磁場形成部材による液滴の移動実験において、磁場形成部材同士のギャップと、液適量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の液滴移動装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。本発明の液滴移動装置は、液滴の移動面を形成する移動面形成部材1を備えている。この移動面形成部材1は、図1及び図2に示すように、例えば板状体として構成され、例えばガラスや樹脂等の非磁性体材料により構成されている。
【0018】
この例の移動面形成部材1は、ELISE法を実施するように構成されており、当該移動面形成部材1の一例について図2に基づいて説明する。この移動面形成部材1の表面には、液溜まりをなす多数の凹部が形成されている。これら凹部は、分析対象となる試料液を貯留する凹部や、試料液を分析するための薬液を貯留する凹部として割り当てられている。
【0019】
前記移動面形成部材1の長さ方向(図2中X方向)の一端側を上流側として説明すると、前記一端側には、分析対象となる試料液を貯留する複数個例えば3個の凹部が試料液貯留部11A〜11Cとして、互いに間隔を開けて並ぶように形成されている。一方、前記移動面形成部材1の長さ方向の他端側には、試料液貯留部11A〜11Cと対応して、反応部12A〜12Cをなす3つの凹部が夫々設けられている。これら反応部12A〜12Cは、前記試料液の液滴と前記薬液の液滴とを反応させるための反応区域に相当する。
【0020】
また、これら反応部12A〜12Cの下流側には、共通の排液部13をなす凹部が、移動面形成部材1の幅方向(図2中Y方向)に伸びるように形成されている。これら試料液貯留部11A〜11Cと、反応部12A〜12C、排液部13は、夫々前記移動面形成部材1の長さ方向に沿って設けられた流路21A,21B,21Cにより接続されている。
【0021】
こうして、試料液貯留部11A〜11Cに貯留された試料液は、後述のように、液滴として夫々流路21A〜21Cに供給され、これら流路21A〜21Cを夫々反応部12A〜12Cに向けて移動し、さらに反応部12A〜12Cを介して排液部13に移動するように構成されている。
【0022】
一方、移動面形成部材1の幅方向には、前記薬液を貯留する多数の凹部14〜18が、上流側から順に、洗浄液を貯留する洗浄液貯留部14、抗体溶液を貯留する抗体溶液貯留部15、酵素溶液を貯留する酵素溶液貯留部16、発光剤を貯留する発光剤貯留部17、反応停止液を貯留する反応停止液貯留部18として設けられている。これら薬液用の凹部14〜18は、夫々前記移動面形成部材1の幅方向に沿って設けられた流路22〜26により、前記流路21A〜21Cと接続されている。
【0023】
そして、各薬液用の凹部14〜18に貯留された薬液及び洗浄液は、後述のように、液滴として夫々流路22〜26に供給され、これら流路22〜26を介して、流路21A〜21Cまで移動し、次いで夫々反応部12A〜12C、さらに排液部13に移動するように構成されている。
【0024】
前記流路21A〜21Cの深さは、試料液貯留部11A〜11Cの深さよりも小さく構成されており、このため、試料液貯留部11A〜11C側から見ると、流路21A〜21Cの底部は、試料液貯留部11A〜11Cの底部よりも一段高い位置に形成されていることになる。また、薬液用の凹部14〜18と流路22〜26との間においても、流路22〜26の底部は、凹部14〜18の底部よりも一段高い位置に形成されている。
【0025】
ここで、移動面形成部材1の大きさの一例について述べると、前記液滴の大きさが例えば直径が5mm〜10mmの場合には、試料貯留部11A〜11Cの大きさは例えば縦15mm、横15mm、深さ0.5mmに夫々設定され、反応部12A〜12Cや洗浄液や薬液を貯留する凹部14〜18の大きさも同様に設定されている。さらに、流路21A〜21C、22〜26の大きさは、例えば幅5〜10mm、深さ0.2mmに夫々設定される。
【0026】
前記移動面形成部材1は保持部材3に保持されており、この保持部材3は、例えば非磁性体例えばガラスや樹脂等により構成された板状体により構成されている。また、当該保持部材3は、支持部31を介して移動部材32に取り付けられている。この移動部材32は、Y軸駆動機構33により、Y軸方向(移動面形成部材1の幅方向)に移動自在に構成されると共に、このY軸駆動機構33は、X軸駆動機構34によりX軸方向に(移動面形成部材1長さ方向)に移動自在に構成されている。これらY軸駆動機構33及びX軸駆動機構34としては、例えばボールネジを利用した駆動機構が用いられ、夫々駆動部をなすモータM1,M2によりボールネジが回転するように構成されている。
【0027】
これら、モータM1,M2には図示しないエンコーダが接続されており、後述する制御部100がエンコーダのパルス数のカウント値に基づいてモータM1,M2を介して、移動面形成部材1の移動、停止制御を行っている。こうして、移動面形成部材1は、その長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に移動自在に構成される。この例では、保持部材3、支持部材31、移動部材32、X方向駆動機構34、Y方向駆動機構33により、移動機構が構成されている。
【0028】
また、当該液滴移動装置は、前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材4を備えている。この例では、磁場形成部材4は、前記保持部材3に保持された移動面形成部材1の両面側に、当該移動面形成部材1を介して対向する一対の磁場形成部材4A,4Bにより構成されている。
【0029】
これら磁場形成部材4A,4Bとしては、例えば永久磁石をハルバック型に配列した磁石が用いられる。具体的に前記磁場形成部材4A,4Bの構造について、磁場形成部材4Aを例にして、図4に基づいて説明する。当該磁場形成部材4Aは、複数の永久磁石41を環状に配列すると共に、その中央に飽和磁束密度の高い部材より構成された芯部材42を設けて構成される。この例では、磁場形成部材4A及び芯部材42は、夫々平面形状が正方形状の四角柱状に構成され、その底面が移動面形成部材1の表面と平行になるように配置されている。
【0030】
前記飽和磁束密度の高い部材として例えば鉄等の金属が用いられ、永久磁石41A〜41Dの材質としては、ネオジウム等が用いられる。そして、前記芯部材42の周囲に、平面形状が台形状の4つの永久磁石41A〜41Dを、例えば外側がN極になるように配列して構成されている。図4中矢印は、磁力線の方向を示している。
【0031】
また、この磁場形成部材4Aは、磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成されている。このため、移動面形成部材1の表面に沿った方向で見たときに透磁率が局所的に小さくなる部分を備えており、この部分は、磁場形成部材4Bの厚み方向(Z方向)全体に形成された空隙43として構成されている。前記空隙43は平面形状が長方形であって、磁場形成部材4Aの芯部材42と永久磁石41Dの間に跨るように、磁場形成部材4Aの中心近傍から外側に向けて、移動面形成部材41の長さ方向に伸びる長方形状に構成されている。
【0032】
一方、磁場形成部材4Bも磁場形成部材4Aと同様に、中央に飽和磁束密度の高い部材よりなる芯部材45を設けると共に、この芯部材45の外側に4つの永久磁石44A〜44Dを配列して構成され、磁場形成部材4Bの上面が移動面形成部材1と平行になるように配置されている。また磁場形成部材4Bの、4つの永久磁石44A〜44Dは外側がS極になるように配列され、磁場形成部材4Aの空隙43と対応する位置に、同様の形状の空隙46が、磁場形成部材4Bの厚み方向(Z方向)全体に形成されている。
【0033】
このように、夫々の磁場形成部材4A,4Bでは、その内部に飽和磁束密度の高い芯部材42,45を設けると共に、この芯部材42,45の外側に、外部磁界の向きと同じになるように永久磁石を配列して構成されている。このため、芯部材42,45の下方側においては磁場が大きく、芯部材42,45から外方に向かうにつれて磁場が小さくなる磁場勾配が形成される。一方、芯部材42,45の下方側における、空隙43,46を囲む領域は磁場が局所的に小さい領域として構成される。
【0034】
また、このような磁場形成部材4A,4Bを、永久磁石41,44の磁極が互いに異なるように構成し、上下に組み合わせているので、磁場形成部材4A,4Bの芯部材42,45が設けられた領域の間の空間には、磁場形成部材4A,4Bを単独で配置した場合よりも、大きな磁場が形成される。一方、空隙43,46を囲む領域は磁場が局所的に小さい領域として構成されているので、空隙43,46を囲む領域と、空隙43,46の外側の領域との間には、大きな磁場勾配が形成されることになる。このような磁場形成部材4A,4Bは、互いに所定間隔を開けて対向するように、共通の支持枠47に固定されている。
【0035】
ここで、磁場形成部材4A,4Bの大きさの一例について説明すると、例えば正方形を構成する一辺が50mmに設定され、芯部材42,45は正方形を構成する一辺が例えば10mmに設定され、空隙43,46は、例えば縦5mm、横5mmに夫々設定される。また、移動面形成部材1と保持部材3の積層体の厚さは例えば2mmに設定され、磁場形成部材4Aの底面と動面形成部材1の表面との距離は例えば1mm、保持部材3の裏面と磁場形成部材4Bの上面との距離は例えば0.5mmに夫々設定される。
【0036】
また、この液滴移動装置は制御部100を備えている。この制御部100は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えていて、前記プログラムには制御部100から液滴移動装置のモータM1,M2に制御信号を送り、液滴を予め設定した移動軌跡に沿って移動させるようという一連の動作を自動で実施するように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0037】
続いて、この液滴移動装置の作用について説明する。この液滴移動装置では、移動面形成部材1の表面において、液滴がモーゼ効果により、磁場形成部材4によって形成された磁場勾配に沿って移動する。つまり、移動面形成部材1の表面は、2つの磁場形成部材4A,4Bの間に存在するため、既述のように強力な磁場が形成されている。一方、当該実施の形態で用いられる液滴は弱い反磁性体であるため、当該液滴は、磁場形成部材4A,4Bの間に形成される強力な磁場から離れようとして、磁場の弱いエリアに移動していく。こうして、磁場形成部材4に対して移動面形成部材1を移動させると、液滴は、移動面形成部材1に形成された流路2(21A〜21C、22〜26)内を磁場形成部材4によって形成された磁場勾配の小さい方へ移動していくことになる。この際、磁場勾配が大きいほど、磁場の強いエリアから弱いエリアに向かう力が大きくなり、液滴がスムーズに移動する。
【0038】
ここで、図6に磁場のイメージを示す。磁場形成部材4A,4Bにより形成された磁場400において、芯部材42、45に対応する領域401が最も大きく、ここから外方に向かうに連れて磁場が小さくなっていく。図6中、磁場の大きさは4段階にて示しており、磁場の大きさは磁場401>磁場402>磁場403>磁場404であるが、実際には無段階に小さくなる。
【0039】
また、既述のように、前記磁場形成部材4A,4Bには、空隙43、46が移動面形成部材1の長さ方向に伸びるように形成されているので、図6に示すように、空隙43,46に対応する領域には、磁場が小さい局所領域404が形成される。この局所領域404は、芯部材42,45の中央側に頂点があり、ここから移動面形成部材1の長さ方向に向かって広がる二等辺三角形状に形成されると推察される。このため、液滴は、強い磁場から離れようとして、結果的に2つの等辺の間に収まって、前記局所領域に閉じ込められる状態となる。
【0040】
そして、図7及び図8に示すように、磁場形成部材4A,4Bにより形成される磁場の局所領域が液滴の移動方向の前方側に位置するように、移動面形成部材1を移動させることにより、液滴Lが流路2(21A〜21C、22〜26)内を前記磁場の局所領域にトラップされた状態で、移動していくことになる。
【0041】
従って、液滴を移動面形成部材1の長さ方向(X方向)に伸びる流路21A〜21Cに沿って下流側に移動させるときには、移動面形成部材1を上流側に移動させて磁場形成部材4を相対的に下流側に移動させると、液滴は流路21A〜21C内を、磁場形成部材4A,4Bと共に、磁場勾配が小さい前記下流側に向けて移動していく。
【0042】
また、液滴を移動面形成部材1の幅方向(Y方向)に伸びる流路22〜26に沿って移動させるときには、移動面形成部材1を移動方向と反対方向に移動させて磁場形成部材4を相対的に移動方向に移動させると、液滴は流路22〜26内を、磁場形成部材4A,4Bと共に、磁場勾配が小さい移動方向の前方側に向けて移動していく。
【0043】
この際、後述の実施例からも明らかなように、既述のように、永久磁石をハルバック型に配列した磁場形成部材4A,4Bを上下に組み合わせることにより、これら磁場形成部材4A,4Bの間では、3.2テスラ程度の磁場を形成することができ、直径が5mm〜10mm程度の液滴を移動することができることが認められている。
【0044】
続いて、図9〜図11を参照しながら、前記液滴移動装置にて、試料液中に含まれる特定のたんぱく質であるアレルギー物質の量をELISE法を用いて分析する方法について説明する。ここでは、試料液貯留部11B内に貯留された試料液に対する測定を行う場合を例にする。
【0045】
先ず、予め反応部12Bに、分析対象となるアレルギー物質と結合する一次抗体溶液を供給して、当該反応部12の表面に一次抗体を固相化しておく。そして、移動面形成部材1を、磁場形成部材4により形成される磁場の局所領域が流路21Bの上流側近傍に対向する位置に移動し、次いで、前記局所領域が試料液貯留部11Bから流路21Bに向けて移動するように、移動面形成部材1を移動する。これにより、図9及び図10に示すように、試料液貯留部11B内に溜まっている試料液は、前記磁場形成部材4の磁場により引き千切られて、前記移動面形成部材1の表面に形成された流路21B内に液滴として供給される。この液滴は、直径が5mm〜10mm程度である。このように、当該実施の形態では、試料液貯留部11A〜11Cをなす凹部と、磁場形成部材4とにより液滴供給部が構成される。
【0046】
次いで、図11に示すように、移動面形成部材1を移動させることにより、磁場形成部材4A,4Bを相対的に流路21Bの下流側に移動させ、こうして流路21B内に供給された液滴Lを反応部12Bまで移動させる(工程1)。そして、試料液の液滴を反応部12Bにおいて、一次抗体と反応させる(一次反応)。この一次反応では、一次抗体に対して分析対象である特定のアレルギー物質のみが結合して、複合体を形成する。
【0047】
続いて、移動面形成部材1を移動させることにより、磁場形成部材4A,4Bを相対的に移動させて、同様に洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22内に供給し、こうして洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程2)。反応部12Bでは、洗浄液による不要な成分の洗浄除去が行われ、洗浄液としては、例えばリン酸緩衝生理食塩水等が用いられる。この洗浄処理は、洗浄液を反応部12Bに移動させ、さらに通過させて排液部13に排液することにより、洗浄液で洗い流すことにより行われる。
【0048】
この後、同様に、抗体溶液貯留部15から二次抗体溶液である例えばビオチン結合抗体溶液を流路23内に供給し、当該液滴を流路23、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程3)。反応部12Bでは、一次反応により形成された複合体に、ビオチンが標識された抗体が結合する二次反応が進行する。次いで、洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させ、不要な成分の洗浄除去が行われる(工程4)。
【0049】
しかる後、同様に、酵素溶液貯留部16から酵素溶液である例えば酵素―ストレプトアビジン結合物溶液を流路24内に供給し、当該液滴を流路24、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程5)。反応部12Bでは、ビオチンとストレプトアビジンとが結合する酵素・基質反応が進行する。次いで、洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させ、不要な成分の洗浄除去が行われる(工程6)。
【0050】
次いで、同様に、発色剤貯留部17から発色剤溶液である例えばo−フェニレンジアミン溶液を流路25内に供給し、当該液滴を流路25、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程7)。反応部12Bでは、ストレプトアビジンに結合した酵素が反応し、溶液が発色する。
【0051】
続いて、同様に、反応停止液貯留部18から反応停止液である例えば0.1n 希硫酸溶液を流路26内に供給し、当該液滴を流路26、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程8)。そして、吸光度計測装置により吸光度を測定する。この測定は、例えば反応部12Bの上方側から光を当て、裏面から吸光度を計測することにより行われる。従って、移動面形成部材1は光を透過する材料により形成される。この際、アレルギー物質の含有量が多い程、吸光度が大きくなるため、予め測定した標準物質の吸光度と比較することにより、アレルギー物質の抗原量が検出できる。検出された抗原量は、例えば制御部100の入出力画面(図示せず)に表示される。この際、試料液や洗浄液、その他の薬液の液滴は、決められた順番で反応部12Bに移動され、必要な時間反応部12Bにおいておき、その後排液部13に移動されるようになっている。
【0052】
上述の実施の形態によれば、磁場形成部材4により移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成し、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に前記表面に沿って移動させているので、磁場形成部材4の相対的移動に伴い、前記液滴を移動面形成部材1の表面において前記磁場勾配に沿って移動させることができる。
【0053】
この際、磁場形成部材4は永久磁石を利用しているので、磁場を形成するために電力供給が不要である。このため、電界を利用して液滴を移動させる方式のような複雑な回路パターンや、電磁石を用いる場合に比べて、簡易な構成で、常に安定した磁場を形成することができる。従って、電界を利用して液滴を移動させる方式や電磁石を用いる構成に比べて製造コストが安価となる。また、磁場の形成のための電力供給が不要であり、駆動機構も移動面形成部材1のモータM1,M2であるので、メンテナンスも容易であることから、運転コストが低減する。
【0054】
また、上述の液滴の移動手法では、例えば10μlの微小な液滴を移動させることができるので、ELISE法などの試料液中の特定成分の分析手法に利用することができる。これにより、従来では、作業者が手作業で行っていたプレート表面のウェルへの試料液や薬液、洗浄液の分注作業が不要となり、前記試料液の成分の分析作業を簡易に行うことができる。
【0055】
以上において、磁場形成部材4は、空隙43,46が形成されていない構成であってもよい。この場合であっても、磁場形成部材4により、前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配が形成されるので、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を磁場勾配に沿って移動させることができる。
【0056】
また、磁場形成部材4A,4Bは、移動面形成部材1の両面側に設けることにより、これら磁場形成部材4A,4Bの間に高磁場が形成されるが、液滴と前記移動面形成部材1との相性により液滴走査性が変わるため、磁場形成部材4は移動面形成部材1の一方側に設けるようにしてもよい。
【0057】
さらに、移動面形成部材1と磁場形成部材4とは相対的に移動する構成であればよく、図12に示すように、磁場形成部材4側を移動させるようにしてもよい。図13中、30は移動面形成部材1の保持部材3の支持台である。また、磁場形成部材4の支持枠47は、支持部材51、移動部材52を介して、X方向駆動機構54、Y方向駆動機構53により、移動面形成部材1の長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に移動自在に構成されている。X方向移動機構54、Y方向移動機構53としては、例えばボールねじを利用した機構が用いられ、図中M3,M4はボールねじのモータである。
【0058】
また、液滴供給部は、上述の構成に限らず、例えば移動面形成部材1の上方側にスポイト状に構成された液滴供給部を設け、ここから移動面形成部材1の表面に液滴を供給するようにしてもよい。
【0059】
さらに、本発明では、図13に示すように、移動面形成部材1の両面に夫々設けられた磁場形成部材4A、4Bのギャップを可変とするように構成してもよい。この例では、昇降機構55により、磁場形成部材4Aが移動面形成部材1に対して昇降できるように構成されている。そして、例えば磁場形成部材4A,4Bを移動面形成部材1に対して相対的に移動させて、薬液の液滴を反応部に移動させた後に、磁場形成部材4Aを上昇させて、磁場形成部材4A,4Bのギャップを大きくしてから、磁場形成部材4A,4Bを他の薬液用の凹部に対応する位置に相対的に移動させる。このような構成では、磁場形成部材4A、4Bを反応部から次の薬液の凹部に相対的に移動させる際に、磁場形成部材4A,4B同士のギャップを大きくして、これらの間に形成される磁場を弱めている。このため、反応部の深さが小さい場合や、反応部内の液量が多い場合であっても、反応部から液滴を引き出すおそれがない。
【0060】
また、本発明では、移動面形成部材1の表面に液滴の流路を必ずしも形成する必要はない。移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に移動させることにより、前記液滴を磁場勾配の小さい方へ移動させることができるからである。特に、上述の実施の形態のように、前記磁場形成部材を、局所領域に液滴を閉じ込める作用を大きくするために、磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成すれば、液滴が前記局所領域にトラップされた状態で移動していくため、移動面形成部材1に流路が形成されていなくても、液滴を安定して移動することができる。
【0061】
さらに、本発明の液滴移動方法は、ELISA法のほか、PCR法や、イムノクロマト法にも適用することができる。
【0062】
続いて、本発明の血漿分離装置について、図14〜図23を参照して説明する。図14は、本発明の血漿分離装置の一実施の形態を示す側面図、図15はその要部の概略斜視図、図16はその要部の平面図である。前記血漿分離装置7は、処理室70内に、移動面形成部材をなす検査プレート8と、この検査プレート8を保持する保持部材3と、この保持部材3を移動させる移動機構と、磁場形成部材4A,4Bとを備えている。以降、図14中処理室70の長さ方向をX方向、処理室70の幅方向をY方向として説明する。また、上述の実施の形態と同様に構成されている部分には同様の符号を付してある。
【0063】
前記検査プレート8は、例えばシリコン、ガラスや樹脂等の非磁性材より形成された例えば3cm×8cm程度の大きさの板状体である。この検査プレート8の表面には液溜まりをなす多数の凹部が形成されている。例えば前記検査プレート8の長さ方向(図15中X方向)の一端側を上流側として説明すると、前記一端側には、薬液を貯留する凹部が薬液貯留部81Aとして、この下流側には検査対象の血液を貯留する凹部が試料液貯留部82として、さらに前記検査プレート8の長さ方向の他端側には反応部83をなす凹部が、夫々形成されている。この反応部83は、後述する血漿と生化学検査用の薬液の液滴とを反応させるための反応区域に相当する。
【0064】
これら薬液貯留部81Aと試料液貯留部82と反応部83とは、前記検査プレート8の長さ方向に沿って設けられた流路84により接続されている。一方、検査プレート8の幅方向(図15中Y方向)には、後述する血液の生化学検査用の薬液を貯留する複数個この例では2個の凹部が薬液貯留部81B,81Cとして、上流側から順に設けられている。これら薬液貯留部81B,81Cは、夫々検査プレート8の幅方向に沿って設けられた流路85A,85Bにより、前記流路84と接続されている。
【0065】
また、前記検査プレート8の表面には、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側の領域に、誘電泳動作用を発生させるための電極ユニット9が設けられている。この電極ユニット9は、前記流路84に交差するように、互いに離間して対向するように設けられた一対の電極91,92を備えている。これら電極91,92は、交流電圧を印加する電源部93とスイッチ部94を介して接続されている。
【0066】
ここで誘電泳動とは、不均一な電場内にて、電場及び当該電場により誘起された電気双極子モーメントにより力を受けた物質が移動する現象であり、誘電泳動によって物質が移動する方向は,物質および溶液の誘電特性によって決定される。従って、前記電極91及び電極92は不均一な電場を形状に構成される。また、血液では、血球が電極91側に引き寄せられるように移動することから、当該電極91が流路84の上流側に形成されると共に、血球がトラップされやすい形状に形成される。また、電極ユニット9を形成する位置は、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側であればよいが、後述するように血液が電極ユニット9を通過することにより、血球と血漿とに分離されるため、より前記試料液貯留部82に近い方が好ましい。
【0067】
このような電極ユニット9は、例えば検査プレート8の所定位置に凹部81A〜81C、82、83等及び流路84、85A,85B等を形成した後、当該検査プレート8の表面における所定位置に、例えば金等の導電性の薄膜を例えば蒸着により形成し、次いで所定の電極パターン形状にエッチングすることにより構成される。この際、図14〜図19においては、図示の便宜上電極ユニット9を大きく描いており、実際には電極ユニット9は、例えば電極のパターン幅が25μm、電極91と電極92間の距離が200〜300μm程度に形成される。なお、図16では、電極91及び電極92は流路84の幅を越えて大きく描いているが、実際には流路とほぼ同じかまたは僅かに大きく形成すればよい。さらに、電極ユニット9は、検査プレート8の裏面側に形成するようにしてもよい。
【0068】
さらに、検査プレート8の表面における流路84は、電極ユニット9の下流側において、局所的に幅が狭まる部位84Aを備えている。この例では、当該部位84Aは電極ユニット9の下流側近傍に形成されているが、後述するように、血漿の液滴の分離は、血漿がこの部位84Aを通過することにより行われるため、この部位84Aを形成する位置は、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側であればよい。例えば流路84は幅が3mm程度、前記部位84Aの幅は2mm程度に夫々設定される。
【0069】
前記保持部3は、例えば検査プレート8の一部を保持するように前記X方向に長い長方形状の板状体により構成されている。この例の保持部3、支持部31、移動部材32、X軸駆動機構33、Y軸駆動機構34、モータM1,M2は、上述の実施の形態と同様に構成されているので、説明を省略する。ここで、図14に示す保持部3の位置は、後述するように当該保持部3に対して検査プレート8の受け渡しを行う受け渡し位置であり、検査プレート8は当該位置にて保持部3に載置された後、X方向の一端側(図14中左側)に向けて移動する。従って、以降の説明では、前記一端側を移動方向の前方側、X方向の他端側(図14中右側)を移動方向の後方側として説明する。
【0070】
また、前記磁場形成部材4A,4Bは、前記保持部3に保持された検査プレート8の両面側に、当該検査プレート8を介して対向するように設けられている。この例では、前記磁場形成部材4A,4Bは、前記受け渡し位置にある保持部3上の検査プレート8に対して、移動方向の前方側であって、前記検査プレート8のY方向のほぼ中央に、当該検査プレート8と干渉しないように設けられている。これら磁場形成部材4A,4Bは、上述の実施の形態の磁場形成部材4A,4Bと同様に構成されているので説明は省略するが、前記空隙43がX方向に伸びるように配置されている。
前記磁場形成部材4A,4Bは、互いに所定間隔を開けて対向するように、夫々処理室70の天井部70A及び底部70Bに支持部材71A,71Bを介して取り付けられている。また、例えば上側の磁場形成部材4Aの支持部材71Aは、磁場形成部材4A,4B同士が最も接近する液滴移動位置と、液滴移動位置よりも上方側の待機位置との間で、昇降機構72により昇降自在に構成され、磁場形成部材4A,4B同士の間隔を変えることができるようになっている。また、前記磁場形成部材4Aが液滴移動位置にあるときに、磁場形成部材4A,4B同士の間を、保持部3に保持された検査プレート8が通過できるように、磁場形成部材4A,4B同士の間隔が設定されている。
【0071】
さらに、上述の血液分離装置7は、前記受け渡し位置にある保持部3上の検査プレート8の所定位置に対して、薬液を供給する第1〜第3の供給ノズル73A〜73Cを備えている。第1の供給ノズル73Aは、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81Aに凝固防止剤例えばクエン酸ナトリウム水を供給し、第2の供給ノズル73B及び第3の供給ノズル73Cは、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81B,81Cに夫々血液の生化学検査用の薬液A,Bを夫々供給するように設けられている。この例では、これら供給ノズル73A〜73Cは、例えば処理室70の天井部70Aに取り付けられた昇降機構74A〜74Cにより、前記保持部3上の検査プレート8に対して薬液を供給する供給位置と、この供給位置よりも上方側の受け渡し位置との間で昇降自在に構成されている。前記受け渡し位置とは、保持部3に対して検査プレート8の受け渡しを行うときに当該作業を妨げない位置である。
これら供給ノズル73A〜73Cは、夫々ポンプP1〜P3を備えた供給路75A〜75Cにより、夫々クエン酸ナトリウム水貯留部76A、薬液A貯留部76B、薬液B貯留部76Cに夫々接続されている。そして、前記ポンプP1〜P3の作動により、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81A〜81Cに、所定量例えば100μlのクエン酸ナトリウム水、例えば100μlの薬液A、例えば100μlの薬液Bを夫々供給するように構成されている。なお、ポンプP1〜P3の代わりにバルブの開閉により、クエン酸ナトリウム水等を検査プレート8に供給するようにしてもよい。この例では、供給ノズル73A〜73C、ポンプP1〜P3、供給路75A〜75C、薬液の貯留部76A〜76Cにより液滴供給部が構成されている。図14中77は保持部3との間で検査プレート8の受け渡しを行うための開口部であり、77Aは当該開口部77の開閉部材である。
【0072】
また、この血漿分離装置7は制御部110を備えている。この制御部100は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えていて、前記プログラムには制御部110から血漿分離装置7のモータM1,M2、ポンプP1〜P3、スイッチ部94、昇降機構71A、73A〜73Cの各部に制御信号を送り、血液が滴下された検査プレート8上に、所定の薬液を供給し、前記血液を予め設定した移動軌跡に沿って移動させ、反応部において所定の検査を行うという一連の動作を自動で実施するように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部110にインストールされる。
【0073】
続いて、この血漿分離装置7で実施される血漿分離方法について説明する。検査プレート8の試料液貯留部82に、100μl程度の検査対象となる血液95を例えばスポイト等により滴下した後、当該検査プレート8を開口部77を介して血漿分離装置7内部に搬入し、受け渡し位置にある保持部3上に載置する。次いで、開閉部材77Aにより前記開口部77を閉じた後、ポンプP1、P2を作動させて、供給ノズル73A、73Bから、1000μl程度のクエン酸ナトリウム水及び100μl程度の薬液Aを夫々検査プレート8の薬液貯留部81A、81Bに夫々供給する。
【0074】
次いで、スイッチ部94をONにして電極ユニット9に例えば1MHz,10Vの交流電圧を印加し、モータM1,M2を作動させて、検査プレート8を所定の系路で移動させる。つまり、検査プレート8を、磁場形成部材4により形成される磁場の局所領域が、薬液貯留部81Aに対向する位置に移動してから、前記局所領域が薬液貯留部81Aから流路84に向けて移動するように、検査プレート8を移動する。これにより、薬液貯留部81A内に溜まっているクエン酸ナトリウム水は、前記磁場形成部材4の磁場により引き千切られて、前記流路84内に液滴として供給される。この液滴は、直径が5mm〜10mm程度である。このように、当該実施の形態では、薬液貯留部81A〜81Cをなす凹部と、磁場形成部材4とによっても液滴供給部が構成される。
【0075】
続いて、検査プレート8を移動させることにより、磁場形成部材4を相対的に流路84の下流側に移動させ、クエン酸ナトリウム水の液滴を試料液貯留部82まで移動させて、血液95を希釈する。この後、同様に磁場形成部材4を相対的に移動させて、図17に示すように、希釈された血液95の液滴を流路84の下流側に向けて移動させる。ここで、血液95の液滴が電極ユニット9上を移動すると、誘電泳動作用が発生し、血液95中の血球96は、図18及び図20に示すように、電極ユニット9より具体的には電極91側に引き寄せられるように移動する。一方、血液95中の血漿97は、電極ユニット9には引き寄せられないので、磁場形成部材4の相対的移動に伴って移動する。なお図20、図21では、電極ユニット9の形成領域を夫々点線で囲って示している。
【0076】
従って、試料液貯留部82から下流側に向けて磁場形成部材4を相対的に移動させると、電極ユニット9の形成領域近傍では、図18、図20に示すように、血液95が下流側に向けて広がった状態で移動する。さらに、磁場形成部材4を流路84の幅が狭まる部位84Aの上流側近傍まで相対的に移動させると、血液95の血漿97は、磁場形成部材4の磁場により押し出されるように前記部位84Aを超えて下流側へ移動していく。そして、磁場形成部材4を前記部位84Aよりもさらに下流側へ相対的に移動させると、前記部位84Aでは液量が極端に少なくなるため、磁場形成部材4の相対的移動に伴い、血液95から血漿97が引き千切られ、血漿97の液滴が形成される。(図19、図21参照)。
【0077】
こうして、血液95から血漿97を分離し、さらに磁場形成部材4を相対的に移動させて、当該血漿97の液滴を反応部83まで移動する。次いで、磁場形成部材4A,4Bの間隔を広くして薬液貯留部73Bの近傍まで相対的に移動させてから、磁場形成部材4A,4Bの間隔を狭めてから相対的に移動させ、これにより、薬液Aの液滴を流路85A内に供給し、薬液Aの液滴を流路85A、流路84を介して反応部83まで移動させる。こうして、反応部83にて薬液Aの液滴と血漿を反応させて、所定の生化学検査を行う。薬液Aによる生化学検査結果を取得した後、当該検査プレート8は開口部77を介して装置7から取り出し、破棄する。上述の例では、薬液Aによる生化学検査を行う場合を例にして説明したが、薬液Bによる場合も同様に検査が行われる。
【0078】
上述の実施の形態の形態によれば、検査プレート8上にて誘電泳動作用を発生させているので、当該検査プレート8上において、血液から血漿を分離することができる。また、分離した血漿は磁場形成部材4の磁場を利用して検査プレート8上を移動させているので、誘電泳動作用を阻害することなく、血漿を移動させることができる。このため、検査プレート8上において、血液から血漿の分離、及び血漿の移動を行うことができるので、検査プレート8上において血漿の生化学検査を行うことができ、微量な血液を用いた小型な装置で多種の生化学検査を短時間で容易に行うことができる。
【0079】
ここで、血液95の液滴からの血漿97の分離は次のように行うようにしてもよい。つまり、図22に示すように、磁場形成部材4A,4Bを流路84の下流側に向けて、流路が狭まる部位84Aの近傍まで相対的に移動させ、血液95を前記部位84Aの下流側まで押し広げる。次いで、一旦磁場形成部材4A,4B同士の間隔を離して、図23に示すように、磁場形成部材4A,4Bを前記部位84Aの側方に相対的に移動させる。そして、磁場形成部材4A,4Bを、図23中矢印で示すように、前記部位84Aに向けて移動させる。これにより、前記部位84A内の血漿97は磁場から逃れようとして、前記部位84Aの両側に向けて移動するため、血液95から血漿97が容易に分離される。
【0080】
また、同一の検査プレート8にて、多数の薬液を用いて生化学検査を行う場合には、多数の薬液貯留部81及び反応部83用の凹部を形成してもよいし、反応部83ではなく、薬液貯留部81に血漿97を移動させて、ここで薬液と反応させるようにしてもよい。さらに、反応部83の下流側に排液部を設け、反応部83にて薬液Aとの反応を終了した後、当該反応液を排液部に排液し、次の血漿97の液滴及び薬液Bを反応部83に移動させて薬液Bによる生化学検査を行うようにしてもよい。
【0081】
さらにまた、試料液貯留部82に直接クエン酸ナトリウム水を滴下して、血液を希釈するようにしてもよいし、反応部83に直接薬液を滴下して、血漿と反応させるようにしてもよい。なお、検査プレート8では、必ずしも流路を形成する必要はなく、試料液貯留部82や薬液貯留部81用の凹部も必ずしも必要ではない。さらに、検査プレート8ではなく、磁場形成部材4側を移動させるようにしてもよい。
【0082】
さらにまた、検査プレート8上において血液95を電極ユニット9を通過するように移動させ、血液95から血漿97の液滴を分離した後は、当該血漿97の液滴を電気的手法を用いて移動させるようにしてもよい。さらにまた、流路の幅や、電極ユニット9による電場の大きさや、磁場形成部材4の磁場の大きさ等によって、磁場形成部材4の相対的移動により血液95から血漿97が分離できる構成であれば、流路84には必ずしも局所的に幅が狭まる部位84Aを設ける必要はない。
【実施例】
【0083】
以下に、図24に示す実験装置を用い、磁場形成部材の移動により液滴が移動するか否かを確認する実験を行った。図24中、61は、シリコンより構成された厚さ0.75mmの移動面形成部材であり、4A,4Bは移動面形成部材の両面に夫々配置された磁場形成部材である。磁場形成部材4A,4Bは、上述の構成のものを用い、永久磁石の材質は、ネオジウム、中間部材の材質は鉄とした。また、磁場形成部材4の大きさは、既述のとおりである。そして、磁場形成部材4A,4Bの間のギャップ(磁石間ギャップ)Gと、液適量を変え、磁場形成部材4の移動に伴い、液滴62が移動するか否かについて、目視により確認した。なお、直径が5mm〜10mmの液滴とは、液適量が20μl〜100μlに相当する。
【0084】
この結果について、図25に示す。図中縦軸は磁石間ギャップ、横軸は液適量を夫々示し、■は磁場形成部材の移動により移動した液滴、□は移動しなかった液滴を夫々示している。この結果、磁場形成部材の移動に伴い、移動面形成部材の表面において、液滴が移動することが認められた。また、液滴量が少ないときには、液滴を移動させるためには、磁場形成部材同士の間のギャップを小さくして、磁束密度を高める必要があることが理解される。
【符号の説明】
【0085】
1 移動面形成部材
11A〜11C 試料液貯留部
12A〜12C 反応部
14 洗浄液貯留部
15〜18 薬液用の凹部
21,22 流路
33 Y方向移動機構
34 X方向移動機構
4(4A,4B) 磁場形成部材
41,44 永久磁石
42、45 芯部材
43,46 空隙
8 検査プレート
95 血液
96 血球
97 血漿
【技術分野】
【0001】
本発明は磁場形成部材と移動面形成部材とを相対的に移動させて、移動面形成部材の表面において液滴を移動させる技術に関する。また、他の発明は移動面形成部材の表面において血液から血漿を分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分析の一連の操作を一枚の基板上で行うmicroTAS(Micro Total Analysis Systems)と呼ばれる技術がある。この手法は、基板上に反応部や混合部を設け、一枚の基板で血液等を分析する化学分析システムであり、マイクロ流路を用いる方法と、液滴を基板上にて操作する方法が知られている。前記液滴を基板上にて操作する方法は、Dropulet−based microTASと呼ばれ、検査液や試薬が数nl程度と微小量である点が優れている。
【0003】
前記液滴を移動させる方法として、EWOD(electro wetting on dielectric)を応用したデジタルマイクロフルイディスク回路において、液滴の生成、切断、合体、輸送する技術が検討されている。しかしながら、これら電気的に液滴を移動させる方法では、微細な回路を形成する必要があるため、構成が複雑化し、製造コストや運転コストが高くなる懸念がある。また、特許文献1には、塗布剤に超電導磁石による磁界を印加させて、塗布液を広げる技術が提案されている。しかしながら、超電導磁石は高価であり、やはりコスト的に不利である。
【0004】
一方、抗原抗体反応を用いた特定タンパク質の測定法として、ELISA法(Enzyme Linked Immunosolvent Assay:酵素免疫測定法)が知られている。この手法は、一次抗体と測定対象の特定タンパク質との間で抗原抗体反応を起こさせた後、前記一次抗体と特異的に反応する酵素で標識された二次抗体を作用させる。その後、酵素溶液、酵素基質溶液を添加して発色させた後、吸光度等を測定することにより、特定タンパク質量の検出を行うものである。この手法は、多数のウェルが形成されたプレートに対して、一次抗体溶液や、測定溶液、洗浄液、二次抗体溶液、酵素溶液、酵素基質溶液を作業者が手作業により分注することにより行われており、非常に手間と時間を要する作業となっている。従って、このELISA法を前記液滴を操作する手法を用いて実行できれば手間と時間が削減されるが、この際、簡易な手法で低コストで実行できることが好ましい。
【0005】
また、血液の生化学検査においても、血液量が微量で済み、数種の検査項目を短時間で実施することが期待できることから、マイクロ化学チップを用いる試みが成されている。ここで、検査項目によっては血液中の血漿を用いており、血液から血漿を分離する操作が必要となるが、マイクロ化学チップ上で前記分離操作を行うことはできず、この操作は遠心分離機を用いて行われている。しかしながら、この遠心分離機による操作ではある程度の血液量が必要になるため、マイクロ化学チップを用いる要請に沿わない。
【0006】
さらに、誘電泳動を用いて血液中の血漿と血球とを分離する研究が成されている。この手法によればプレート上に電極を設け、交流電圧を印加して誘電泳動作用を発生させることにより血液から血漿を分離することができる。従って、マイクロ化学チップチップに応用した場合、チップ上にて血漿を分離することはできるが、その後の液滴の移動に既述の電気的に液滴を移動させる手法を行おうとしても、これらは共に電場を用いる手法であるため、両者を組み合わせることはできない。
【0007】
また、特許文献2には、血清(血漿)を通過させ、血餅の通過を阻止するろ過部を採血管に挿入し、このろ過部を磁力により血清−血餅の境界部に移動させることによって血清を分離する手法が記載されている。しかしながら、この手法を適用してもマイクロチップ上にて血液から血漿は分離できず、本発明の課題の解決を図ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−137666号公報
【特許文献2】特開平5−52841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、簡易な手法で、液滴を移動面形成部材の表面に沿って移動させることができる技術を提供することにある。また、移動面形成部材の表面において血液から血漿を分離することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明の液滴移動装置は、
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材の表面に液滴を供給するための液滴供給部と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させるための移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の血漿分離装置は、
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材に設けられ、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の液滴移動方法は、
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材の表面に液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本発明の血漿分離方法は、
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなり、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極を備えた移動面形成部材の表面に血液の液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における前記液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動面形成部材の表面において液滴を移動させるにあたり、磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成し、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を前記磁場勾配に沿って移動させている。このように、磁場形成部材の移動に伴って、移動面形成部材の表面にて液滴を移動させることにより、簡易な手法で液滴を移動させることができる。
【0015】
また、他の発明によれば、移動面形成部材に誘電泳動作用を発生させる電極を設け、血液を前記電極上を通過するように移動させているので、血液中の血球が前記誘電泳動作用により電極に引きつけられる。その一方、血液中の血漿は磁場形成部材の移動に伴って移動するため、前記移動面形成部材の表面において前記血液から血漿を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る液滴移動装置の概略を示す斜視図である。
【図2】前記液滴移動装置に用いられる移動面形成部材を示す斜視図である。
【図3】前記液滴移動装置を示す側面図である。
【図4】前記液滴移動装置に用いられる磁場形成部材を示す斜視図である。
【図5】前記磁場形成部材を示す断面図である。
【図6】前記磁場形成部材によって形成された磁場を模式的に示す平面図である。
【図7】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図8】移動面形成部材に形成された流路に沿って、液滴が移動する様子を示す斜視図である。
【図9】試料液を貯留する試料液貯留部から磁場形成部材により試料液が引き千切られて、液滴が流路に供給される様子を示す断面図である。
【図10】前記試料液貯留部から磁場形成部材により試料液が引き千切られて、液滴が流路に供給される様子を示す平面図である。
【図11】移動面形成部材において行われる、ELISE法による試料液の分析手法を説明する平面図である。
【図12】本発明の液滴移動装置の他の例を示す斜視図である。
【図13】本発明の液滴移動装置のさらに他の例を示す側面図である。
【図14】本発明の血漿分離装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図15】前記血漿分離装置の要部を示す概略斜視図である。
【図16】前記血漿分離装置に用いられる、検査プレートの一例を示す平面図である。
【図17】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図18】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図19】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す断面図である。
【図20】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図21】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図22】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図23】移動面形成部材に形成された流路に沿って、磁場形成部材により液滴が移動する様子を示す平面図である。
【図24】磁場形成部材による液滴の移動実験にて用いられた実験装置を示す側面図である。
【図25】磁場形成部材による液滴の移動実験において、磁場形成部材同士のギャップと、液適量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の液滴移動装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。本発明の液滴移動装置は、液滴の移動面を形成する移動面形成部材1を備えている。この移動面形成部材1は、図1及び図2に示すように、例えば板状体として構成され、例えばガラスや樹脂等の非磁性体材料により構成されている。
【0018】
この例の移動面形成部材1は、ELISE法を実施するように構成されており、当該移動面形成部材1の一例について図2に基づいて説明する。この移動面形成部材1の表面には、液溜まりをなす多数の凹部が形成されている。これら凹部は、分析対象となる試料液を貯留する凹部や、試料液を分析するための薬液を貯留する凹部として割り当てられている。
【0019】
前記移動面形成部材1の長さ方向(図2中X方向)の一端側を上流側として説明すると、前記一端側には、分析対象となる試料液を貯留する複数個例えば3個の凹部が試料液貯留部11A〜11Cとして、互いに間隔を開けて並ぶように形成されている。一方、前記移動面形成部材1の長さ方向の他端側には、試料液貯留部11A〜11Cと対応して、反応部12A〜12Cをなす3つの凹部が夫々設けられている。これら反応部12A〜12Cは、前記試料液の液滴と前記薬液の液滴とを反応させるための反応区域に相当する。
【0020】
また、これら反応部12A〜12Cの下流側には、共通の排液部13をなす凹部が、移動面形成部材1の幅方向(図2中Y方向)に伸びるように形成されている。これら試料液貯留部11A〜11Cと、反応部12A〜12C、排液部13は、夫々前記移動面形成部材1の長さ方向に沿って設けられた流路21A,21B,21Cにより接続されている。
【0021】
こうして、試料液貯留部11A〜11Cに貯留された試料液は、後述のように、液滴として夫々流路21A〜21Cに供給され、これら流路21A〜21Cを夫々反応部12A〜12Cに向けて移動し、さらに反応部12A〜12Cを介して排液部13に移動するように構成されている。
【0022】
一方、移動面形成部材1の幅方向には、前記薬液を貯留する多数の凹部14〜18が、上流側から順に、洗浄液を貯留する洗浄液貯留部14、抗体溶液を貯留する抗体溶液貯留部15、酵素溶液を貯留する酵素溶液貯留部16、発光剤を貯留する発光剤貯留部17、反応停止液を貯留する反応停止液貯留部18として設けられている。これら薬液用の凹部14〜18は、夫々前記移動面形成部材1の幅方向に沿って設けられた流路22〜26により、前記流路21A〜21Cと接続されている。
【0023】
そして、各薬液用の凹部14〜18に貯留された薬液及び洗浄液は、後述のように、液滴として夫々流路22〜26に供給され、これら流路22〜26を介して、流路21A〜21Cまで移動し、次いで夫々反応部12A〜12C、さらに排液部13に移動するように構成されている。
【0024】
前記流路21A〜21Cの深さは、試料液貯留部11A〜11Cの深さよりも小さく構成されており、このため、試料液貯留部11A〜11C側から見ると、流路21A〜21Cの底部は、試料液貯留部11A〜11Cの底部よりも一段高い位置に形成されていることになる。また、薬液用の凹部14〜18と流路22〜26との間においても、流路22〜26の底部は、凹部14〜18の底部よりも一段高い位置に形成されている。
【0025】
ここで、移動面形成部材1の大きさの一例について述べると、前記液滴の大きさが例えば直径が5mm〜10mmの場合には、試料貯留部11A〜11Cの大きさは例えば縦15mm、横15mm、深さ0.5mmに夫々設定され、反応部12A〜12Cや洗浄液や薬液を貯留する凹部14〜18の大きさも同様に設定されている。さらに、流路21A〜21C、22〜26の大きさは、例えば幅5〜10mm、深さ0.2mmに夫々設定される。
【0026】
前記移動面形成部材1は保持部材3に保持されており、この保持部材3は、例えば非磁性体例えばガラスや樹脂等により構成された板状体により構成されている。また、当該保持部材3は、支持部31を介して移動部材32に取り付けられている。この移動部材32は、Y軸駆動機構33により、Y軸方向(移動面形成部材1の幅方向)に移動自在に構成されると共に、このY軸駆動機構33は、X軸駆動機構34によりX軸方向に(移動面形成部材1長さ方向)に移動自在に構成されている。これらY軸駆動機構33及びX軸駆動機構34としては、例えばボールネジを利用した駆動機構が用いられ、夫々駆動部をなすモータM1,M2によりボールネジが回転するように構成されている。
【0027】
これら、モータM1,M2には図示しないエンコーダが接続されており、後述する制御部100がエンコーダのパルス数のカウント値に基づいてモータM1,M2を介して、移動面形成部材1の移動、停止制御を行っている。こうして、移動面形成部材1は、その長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に移動自在に構成される。この例では、保持部材3、支持部材31、移動部材32、X方向駆動機構34、Y方向駆動機構33により、移動機構が構成されている。
【0028】
また、当該液滴移動装置は、前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材4を備えている。この例では、磁場形成部材4は、前記保持部材3に保持された移動面形成部材1の両面側に、当該移動面形成部材1を介して対向する一対の磁場形成部材4A,4Bにより構成されている。
【0029】
これら磁場形成部材4A,4Bとしては、例えば永久磁石をハルバック型に配列した磁石が用いられる。具体的に前記磁場形成部材4A,4Bの構造について、磁場形成部材4Aを例にして、図4に基づいて説明する。当該磁場形成部材4Aは、複数の永久磁石41を環状に配列すると共に、その中央に飽和磁束密度の高い部材より構成された芯部材42を設けて構成される。この例では、磁場形成部材4A及び芯部材42は、夫々平面形状が正方形状の四角柱状に構成され、その底面が移動面形成部材1の表面と平行になるように配置されている。
【0030】
前記飽和磁束密度の高い部材として例えば鉄等の金属が用いられ、永久磁石41A〜41Dの材質としては、ネオジウム等が用いられる。そして、前記芯部材42の周囲に、平面形状が台形状の4つの永久磁石41A〜41Dを、例えば外側がN極になるように配列して構成されている。図4中矢印は、磁力線の方向を示している。
【0031】
また、この磁場形成部材4Aは、磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成されている。このため、移動面形成部材1の表面に沿った方向で見たときに透磁率が局所的に小さくなる部分を備えており、この部分は、磁場形成部材4Bの厚み方向(Z方向)全体に形成された空隙43として構成されている。前記空隙43は平面形状が長方形であって、磁場形成部材4Aの芯部材42と永久磁石41Dの間に跨るように、磁場形成部材4Aの中心近傍から外側に向けて、移動面形成部材41の長さ方向に伸びる長方形状に構成されている。
【0032】
一方、磁場形成部材4Bも磁場形成部材4Aと同様に、中央に飽和磁束密度の高い部材よりなる芯部材45を設けると共に、この芯部材45の外側に4つの永久磁石44A〜44Dを配列して構成され、磁場形成部材4Bの上面が移動面形成部材1と平行になるように配置されている。また磁場形成部材4Bの、4つの永久磁石44A〜44Dは外側がS極になるように配列され、磁場形成部材4Aの空隙43と対応する位置に、同様の形状の空隙46が、磁場形成部材4Bの厚み方向(Z方向)全体に形成されている。
【0033】
このように、夫々の磁場形成部材4A,4Bでは、その内部に飽和磁束密度の高い芯部材42,45を設けると共に、この芯部材42,45の外側に、外部磁界の向きと同じになるように永久磁石を配列して構成されている。このため、芯部材42,45の下方側においては磁場が大きく、芯部材42,45から外方に向かうにつれて磁場が小さくなる磁場勾配が形成される。一方、芯部材42,45の下方側における、空隙43,46を囲む領域は磁場が局所的に小さい領域として構成される。
【0034】
また、このような磁場形成部材4A,4Bを、永久磁石41,44の磁極が互いに異なるように構成し、上下に組み合わせているので、磁場形成部材4A,4Bの芯部材42,45が設けられた領域の間の空間には、磁場形成部材4A,4Bを単独で配置した場合よりも、大きな磁場が形成される。一方、空隙43,46を囲む領域は磁場が局所的に小さい領域として構成されているので、空隙43,46を囲む領域と、空隙43,46の外側の領域との間には、大きな磁場勾配が形成されることになる。このような磁場形成部材4A,4Bは、互いに所定間隔を開けて対向するように、共通の支持枠47に固定されている。
【0035】
ここで、磁場形成部材4A,4Bの大きさの一例について説明すると、例えば正方形を構成する一辺が50mmに設定され、芯部材42,45は正方形を構成する一辺が例えば10mmに設定され、空隙43,46は、例えば縦5mm、横5mmに夫々設定される。また、移動面形成部材1と保持部材3の積層体の厚さは例えば2mmに設定され、磁場形成部材4Aの底面と動面形成部材1の表面との距離は例えば1mm、保持部材3の裏面と磁場形成部材4Bの上面との距離は例えば0.5mmに夫々設定される。
【0036】
また、この液滴移動装置は制御部100を備えている。この制御部100は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えていて、前記プログラムには制御部100から液滴移動装置のモータM1,M2に制御信号を送り、液滴を予め設定した移動軌跡に沿って移動させるようという一連の動作を自動で実施するように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0037】
続いて、この液滴移動装置の作用について説明する。この液滴移動装置では、移動面形成部材1の表面において、液滴がモーゼ効果により、磁場形成部材4によって形成された磁場勾配に沿って移動する。つまり、移動面形成部材1の表面は、2つの磁場形成部材4A,4Bの間に存在するため、既述のように強力な磁場が形成されている。一方、当該実施の形態で用いられる液滴は弱い反磁性体であるため、当該液滴は、磁場形成部材4A,4Bの間に形成される強力な磁場から離れようとして、磁場の弱いエリアに移動していく。こうして、磁場形成部材4に対して移動面形成部材1を移動させると、液滴は、移動面形成部材1に形成された流路2(21A〜21C、22〜26)内を磁場形成部材4によって形成された磁場勾配の小さい方へ移動していくことになる。この際、磁場勾配が大きいほど、磁場の強いエリアから弱いエリアに向かう力が大きくなり、液滴がスムーズに移動する。
【0038】
ここで、図6に磁場のイメージを示す。磁場形成部材4A,4Bにより形成された磁場400において、芯部材42、45に対応する領域401が最も大きく、ここから外方に向かうに連れて磁場が小さくなっていく。図6中、磁場の大きさは4段階にて示しており、磁場の大きさは磁場401>磁場402>磁場403>磁場404であるが、実際には無段階に小さくなる。
【0039】
また、既述のように、前記磁場形成部材4A,4Bには、空隙43、46が移動面形成部材1の長さ方向に伸びるように形成されているので、図6に示すように、空隙43,46に対応する領域には、磁場が小さい局所領域404が形成される。この局所領域404は、芯部材42,45の中央側に頂点があり、ここから移動面形成部材1の長さ方向に向かって広がる二等辺三角形状に形成されると推察される。このため、液滴は、強い磁場から離れようとして、結果的に2つの等辺の間に収まって、前記局所領域に閉じ込められる状態となる。
【0040】
そして、図7及び図8に示すように、磁場形成部材4A,4Bにより形成される磁場の局所領域が液滴の移動方向の前方側に位置するように、移動面形成部材1を移動させることにより、液滴Lが流路2(21A〜21C、22〜26)内を前記磁場の局所領域にトラップされた状態で、移動していくことになる。
【0041】
従って、液滴を移動面形成部材1の長さ方向(X方向)に伸びる流路21A〜21Cに沿って下流側に移動させるときには、移動面形成部材1を上流側に移動させて磁場形成部材4を相対的に下流側に移動させると、液滴は流路21A〜21C内を、磁場形成部材4A,4Bと共に、磁場勾配が小さい前記下流側に向けて移動していく。
【0042】
また、液滴を移動面形成部材1の幅方向(Y方向)に伸びる流路22〜26に沿って移動させるときには、移動面形成部材1を移動方向と反対方向に移動させて磁場形成部材4を相対的に移動方向に移動させると、液滴は流路22〜26内を、磁場形成部材4A,4Bと共に、磁場勾配が小さい移動方向の前方側に向けて移動していく。
【0043】
この際、後述の実施例からも明らかなように、既述のように、永久磁石をハルバック型に配列した磁場形成部材4A,4Bを上下に組み合わせることにより、これら磁場形成部材4A,4Bの間では、3.2テスラ程度の磁場を形成することができ、直径が5mm〜10mm程度の液滴を移動することができることが認められている。
【0044】
続いて、図9〜図11を参照しながら、前記液滴移動装置にて、試料液中に含まれる特定のたんぱく質であるアレルギー物質の量をELISE法を用いて分析する方法について説明する。ここでは、試料液貯留部11B内に貯留された試料液に対する測定を行う場合を例にする。
【0045】
先ず、予め反応部12Bに、分析対象となるアレルギー物質と結合する一次抗体溶液を供給して、当該反応部12の表面に一次抗体を固相化しておく。そして、移動面形成部材1を、磁場形成部材4により形成される磁場の局所領域が流路21Bの上流側近傍に対向する位置に移動し、次いで、前記局所領域が試料液貯留部11Bから流路21Bに向けて移動するように、移動面形成部材1を移動する。これにより、図9及び図10に示すように、試料液貯留部11B内に溜まっている試料液は、前記磁場形成部材4の磁場により引き千切られて、前記移動面形成部材1の表面に形成された流路21B内に液滴として供給される。この液滴は、直径が5mm〜10mm程度である。このように、当該実施の形態では、試料液貯留部11A〜11Cをなす凹部と、磁場形成部材4とにより液滴供給部が構成される。
【0046】
次いで、図11に示すように、移動面形成部材1を移動させることにより、磁場形成部材4A,4Bを相対的に流路21Bの下流側に移動させ、こうして流路21B内に供給された液滴Lを反応部12Bまで移動させる(工程1)。そして、試料液の液滴を反応部12Bにおいて、一次抗体と反応させる(一次反応)。この一次反応では、一次抗体に対して分析対象である特定のアレルギー物質のみが結合して、複合体を形成する。
【0047】
続いて、移動面形成部材1を移動させることにより、磁場形成部材4A,4Bを相対的に移動させて、同様に洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22内に供給し、こうして洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程2)。反応部12Bでは、洗浄液による不要な成分の洗浄除去が行われ、洗浄液としては、例えばリン酸緩衝生理食塩水等が用いられる。この洗浄処理は、洗浄液を反応部12Bに移動させ、さらに通過させて排液部13に排液することにより、洗浄液で洗い流すことにより行われる。
【0048】
この後、同様に、抗体溶液貯留部15から二次抗体溶液である例えばビオチン結合抗体溶液を流路23内に供給し、当該液滴を流路23、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程3)。反応部12Bでは、一次反応により形成された複合体に、ビオチンが標識された抗体が結合する二次反応が進行する。次いで、洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させ、不要な成分の洗浄除去が行われる(工程4)。
【0049】
しかる後、同様に、酵素溶液貯留部16から酵素溶液である例えば酵素―ストレプトアビジン結合物溶液を流路24内に供給し、当該液滴を流路24、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程5)。反応部12Bでは、ビオチンとストレプトアビジンとが結合する酵素・基質反応が進行する。次いで、洗浄液貯留部14から洗浄液の液滴を流路22、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させ、不要な成分の洗浄除去が行われる(工程6)。
【0050】
次いで、同様に、発色剤貯留部17から発色剤溶液である例えばo−フェニレンジアミン溶液を流路25内に供給し、当該液滴を流路25、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程7)。反応部12Bでは、ストレプトアビジンに結合した酵素が反応し、溶液が発色する。
【0051】
続いて、同様に、反応停止液貯留部18から反応停止液である例えば0.1n 希硫酸溶液を流路26内に供給し、当該液滴を流路26、流路21Bを介して反応部12Bまで移動させる(工程8)。そして、吸光度計測装置により吸光度を測定する。この測定は、例えば反応部12Bの上方側から光を当て、裏面から吸光度を計測することにより行われる。従って、移動面形成部材1は光を透過する材料により形成される。この際、アレルギー物質の含有量が多い程、吸光度が大きくなるため、予め測定した標準物質の吸光度と比較することにより、アレルギー物質の抗原量が検出できる。検出された抗原量は、例えば制御部100の入出力画面(図示せず)に表示される。この際、試料液や洗浄液、その他の薬液の液滴は、決められた順番で反応部12Bに移動され、必要な時間反応部12Bにおいておき、その後排液部13に移動されるようになっている。
【0052】
上述の実施の形態によれば、磁場形成部材4により移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成し、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に前記表面に沿って移動させているので、磁場形成部材4の相対的移動に伴い、前記液滴を移動面形成部材1の表面において前記磁場勾配に沿って移動させることができる。
【0053】
この際、磁場形成部材4は永久磁石を利用しているので、磁場を形成するために電力供給が不要である。このため、電界を利用して液滴を移動させる方式のような複雑な回路パターンや、電磁石を用いる場合に比べて、簡易な構成で、常に安定した磁場を形成することができる。従って、電界を利用して液滴を移動させる方式や電磁石を用いる構成に比べて製造コストが安価となる。また、磁場の形成のための電力供給が不要であり、駆動機構も移動面形成部材1のモータM1,M2であるので、メンテナンスも容易であることから、運転コストが低減する。
【0054】
また、上述の液滴の移動手法では、例えば10μlの微小な液滴を移動させることができるので、ELISE法などの試料液中の特定成分の分析手法に利用することができる。これにより、従来では、作業者が手作業で行っていたプレート表面のウェルへの試料液や薬液、洗浄液の分注作業が不要となり、前記試料液の成分の分析作業を簡易に行うことができる。
【0055】
以上において、磁場形成部材4は、空隙43,46が形成されていない構成であってもよい。この場合であっても、磁場形成部材4により、前記移動面形成部材1の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配が形成されるので、前記移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に前記表面に沿って移動させることにより、前記液滴を磁場勾配に沿って移動させることができる。
【0056】
また、磁場形成部材4A,4Bは、移動面形成部材1の両面側に設けることにより、これら磁場形成部材4A,4Bの間に高磁場が形成されるが、液滴と前記移動面形成部材1との相性により液滴走査性が変わるため、磁場形成部材4は移動面形成部材1の一方側に設けるようにしてもよい。
【0057】
さらに、移動面形成部材1と磁場形成部材4とは相対的に移動する構成であればよく、図12に示すように、磁場形成部材4側を移動させるようにしてもよい。図13中、30は移動面形成部材1の保持部材3の支持台である。また、磁場形成部材4の支持枠47は、支持部材51、移動部材52を介して、X方向駆動機構54、Y方向駆動機構53により、移動面形成部材1の長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に移動自在に構成されている。X方向移動機構54、Y方向移動機構53としては、例えばボールねじを利用した機構が用いられ、図中M3,M4はボールねじのモータである。
【0058】
また、液滴供給部は、上述の構成に限らず、例えば移動面形成部材1の上方側にスポイト状に構成された液滴供給部を設け、ここから移動面形成部材1の表面に液滴を供給するようにしてもよい。
【0059】
さらに、本発明では、図13に示すように、移動面形成部材1の両面に夫々設けられた磁場形成部材4A、4Bのギャップを可変とするように構成してもよい。この例では、昇降機構55により、磁場形成部材4Aが移動面形成部材1に対して昇降できるように構成されている。そして、例えば磁場形成部材4A,4Bを移動面形成部材1に対して相対的に移動させて、薬液の液滴を反応部に移動させた後に、磁場形成部材4Aを上昇させて、磁場形成部材4A,4Bのギャップを大きくしてから、磁場形成部材4A,4Bを他の薬液用の凹部に対応する位置に相対的に移動させる。このような構成では、磁場形成部材4A、4Bを反応部から次の薬液の凹部に相対的に移動させる際に、磁場形成部材4A,4B同士のギャップを大きくして、これらの間に形成される磁場を弱めている。このため、反応部の深さが小さい場合や、反応部内の液量が多い場合であっても、反応部から液滴を引き出すおそれがない。
【0060】
また、本発明では、移動面形成部材1の表面に液滴の流路を必ずしも形成する必要はない。移動面形成部材1と磁場形成部材4とを相対的に移動させることにより、前記液滴を磁場勾配の小さい方へ移動させることができるからである。特に、上述の実施の形態のように、前記磁場形成部材を、局所領域に液滴を閉じ込める作用を大きくするために、磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成すれば、液滴が前記局所領域にトラップされた状態で移動していくため、移動面形成部材1に流路が形成されていなくても、液滴を安定して移動することができる。
【0061】
さらに、本発明の液滴移動方法は、ELISA法のほか、PCR法や、イムノクロマト法にも適用することができる。
【0062】
続いて、本発明の血漿分離装置について、図14〜図23を参照して説明する。図14は、本発明の血漿分離装置の一実施の形態を示す側面図、図15はその要部の概略斜視図、図16はその要部の平面図である。前記血漿分離装置7は、処理室70内に、移動面形成部材をなす検査プレート8と、この検査プレート8を保持する保持部材3と、この保持部材3を移動させる移動機構と、磁場形成部材4A,4Bとを備えている。以降、図14中処理室70の長さ方向をX方向、処理室70の幅方向をY方向として説明する。また、上述の実施の形態と同様に構成されている部分には同様の符号を付してある。
【0063】
前記検査プレート8は、例えばシリコン、ガラスや樹脂等の非磁性材より形成された例えば3cm×8cm程度の大きさの板状体である。この検査プレート8の表面には液溜まりをなす多数の凹部が形成されている。例えば前記検査プレート8の長さ方向(図15中X方向)の一端側を上流側として説明すると、前記一端側には、薬液を貯留する凹部が薬液貯留部81Aとして、この下流側には検査対象の血液を貯留する凹部が試料液貯留部82として、さらに前記検査プレート8の長さ方向の他端側には反応部83をなす凹部が、夫々形成されている。この反応部83は、後述する血漿と生化学検査用の薬液の液滴とを反応させるための反応区域に相当する。
【0064】
これら薬液貯留部81Aと試料液貯留部82と反応部83とは、前記検査プレート8の長さ方向に沿って設けられた流路84により接続されている。一方、検査プレート8の幅方向(図15中Y方向)には、後述する血液の生化学検査用の薬液を貯留する複数個この例では2個の凹部が薬液貯留部81B,81Cとして、上流側から順に設けられている。これら薬液貯留部81B,81Cは、夫々検査プレート8の幅方向に沿って設けられた流路85A,85Bにより、前記流路84と接続されている。
【0065】
また、前記検査プレート8の表面には、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側の領域に、誘電泳動作用を発生させるための電極ユニット9が設けられている。この電極ユニット9は、前記流路84に交差するように、互いに離間して対向するように設けられた一対の電極91,92を備えている。これら電極91,92は、交流電圧を印加する電源部93とスイッチ部94を介して接続されている。
【0066】
ここで誘電泳動とは、不均一な電場内にて、電場及び当該電場により誘起された電気双極子モーメントにより力を受けた物質が移動する現象であり、誘電泳動によって物質が移動する方向は,物質および溶液の誘電特性によって決定される。従って、前記電極91及び電極92は不均一な電場を形状に構成される。また、血液では、血球が電極91側に引き寄せられるように移動することから、当該電極91が流路84の上流側に形成されると共に、血球がトラップされやすい形状に形成される。また、電極ユニット9を形成する位置は、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側であればよいが、後述するように血液が電極ユニット9を通過することにより、血球と血漿とに分離されるため、より前記試料液貯留部82に近い方が好ましい。
【0067】
このような電極ユニット9は、例えば検査プレート8の所定位置に凹部81A〜81C、82、83等及び流路84、85A,85B等を形成した後、当該検査プレート8の表面における所定位置に、例えば金等の導電性の薄膜を例えば蒸着により形成し、次いで所定の電極パターン形状にエッチングすることにより構成される。この際、図14〜図19においては、図示の便宜上電極ユニット9を大きく描いており、実際には電極ユニット9は、例えば電極のパターン幅が25μm、電極91と電極92間の距離が200〜300μm程度に形成される。なお、図16では、電極91及び電極92は流路84の幅を越えて大きく描いているが、実際には流路とほぼ同じかまたは僅かに大きく形成すればよい。さらに、電極ユニット9は、検査プレート8の裏面側に形成するようにしてもよい。
【0068】
さらに、検査プレート8の表面における流路84は、電極ユニット9の下流側において、局所的に幅が狭まる部位84Aを備えている。この例では、当該部位84Aは電極ユニット9の下流側近傍に形成されているが、後述するように、血漿の液滴の分離は、血漿がこの部位84Aを通過することにより行われるため、この部位84Aを形成する位置は、前記流路84における前記試料液貯留部82の下流側であって、流路85Aの上流側であればよい。例えば流路84は幅が3mm程度、前記部位84Aの幅は2mm程度に夫々設定される。
【0069】
前記保持部3は、例えば検査プレート8の一部を保持するように前記X方向に長い長方形状の板状体により構成されている。この例の保持部3、支持部31、移動部材32、X軸駆動機構33、Y軸駆動機構34、モータM1,M2は、上述の実施の形態と同様に構成されているので、説明を省略する。ここで、図14に示す保持部3の位置は、後述するように当該保持部3に対して検査プレート8の受け渡しを行う受け渡し位置であり、検査プレート8は当該位置にて保持部3に載置された後、X方向の一端側(図14中左側)に向けて移動する。従って、以降の説明では、前記一端側を移動方向の前方側、X方向の他端側(図14中右側)を移動方向の後方側として説明する。
【0070】
また、前記磁場形成部材4A,4Bは、前記保持部3に保持された検査プレート8の両面側に、当該検査プレート8を介して対向するように設けられている。この例では、前記磁場形成部材4A,4Bは、前記受け渡し位置にある保持部3上の検査プレート8に対して、移動方向の前方側であって、前記検査プレート8のY方向のほぼ中央に、当該検査プレート8と干渉しないように設けられている。これら磁場形成部材4A,4Bは、上述の実施の形態の磁場形成部材4A,4Bと同様に構成されているので説明は省略するが、前記空隙43がX方向に伸びるように配置されている。
前記磁場形成部材4A,4Bは、互いに所定間隔を開けて対向するように、夫々処理室70の天井部70A及び底部70Bに支持部材71A,71Bを介して取り付けられている。また、例えば上側の磁場形成部材4Aの支持部材71Aは、磁場形成部材4A,4B同士が最も接近する液滴移動位置と、液滴移動位置よりも上方側の待機位置との間で、昇降機構72により昇降自在に構成され、磁場形成部材4A,4B同士の間隔を変えることができるようになっている。また、前記磁場形成部材4Aが液滴移動位置にあるときに、磁場形成部材4A,4B同士の間を、保持部3に保持された検査プレート8が通過できるように、磁場形成部材4A,4B同士の間隔が設定されている。
【0071】
さらに、上述の血液分離装置7は、前記受け渡し位置にある保持部3上の検査プレート8の所定位置に対して、薬液を供給する第1〜第3の供給ノズル73A〜73Cを備えている。第1の供給ノズル73Aは、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81Aに凝固防止剤例えばクエン酸ナトリウム水を供給し、第2の供給ノズル73B及び第3の供給ノズル73Cは、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81B,81Cに夫々血液の生化学検査用の薬液A,Bを夫々供給するように設けられている。この例では、これら供給ノズル73A〜73Cは、例えば処理室70の天井部70Aに取り付けられた昇降機構74A〜74Cにより、前記保持部3上の検査プレート8に対して薬液を供給する供給位置と、この供給位置よりも上方側の受け渡し位置との間で昇降自在に構成されている。前記受け渡し位置とは、保持部3に対して検査プレート8の受け渡しを行うときに当該作業を妨げない位置である。
これら供給ノズル73A〜73Cは、夫々ポンプP1〜P3を備えた供給路75A〜75Cにより、夫々クエン酸ナトリウム水貯留部76A、薬液A貯留部76B、薬液B貯留部76Cに夫々接続されている。そして、前記ポンプP1〜P3の作動により、前記受け渡し位置にある検査プレート8の薬液貯留部81A〜81Cに、所定量例えば100μlのクエン酸ナトリウム水、例えば100μlの薬液A、例えば100μlの薬液Bを夫々供給するように構成されている。なお、ポンプP1〜P3の代わりにバルブの開閉により、クエン酸ナトリウム水等を検査プレート8に供給するようにしてもよい。この例では、供給ノズル73A〜73C、ポンプP1〜P3、供給路75A〜75C、薬液の貯留部76A〜76Cにより液滴供給部が構成されている。図14中77は保持部3との間で検査プレート8の受け渡しを行うための開口部であり、77Aは当該開口部77の開閉部材である。
【0072】
また、この血漿分離装置7は制御部110を備えている。この制御部100は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えていて、前記プログラムには制御部110から血漿分離装置7のモータM1,M2、ポンプP1〜P3、スイッチ部94、昇降機構71A、73A〜73Cの各部に制御信号を送り、血液が滴下された検査プレート8上に、所定の薬液を供給し、前記血液を予め設定した移動軌跡に沿って移動させ、反応部において所定の検査を行うという一連の動作を自動で実施するように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部110にインストールされる。
【0073】
続いて、この血漿分離装置7で実施される血漿分離方法について説明する。検査プレート8の試料液貯留部82に、100μl程度の検査対象となる血液95を例えばスポイト等により滴下した後、当該検査プレート8を開口部77を介して血漿分離装置7内部に搬入し、受け渡し位置にある保持部3上に載置する。次いで、開閉部材77Aにより前記開口部77を閉じた後、ポンプP1、P2を作動させて、供給ノズル73A、73Bから、1000μl程度のクエン酸ナトリウム水及び100μl程度の薬液Aを夫々検査プレート8の薬液貯留部81A、81Bに夫々供給する。
【0074】
次いで、スイッチ部94をONにして電極ユニット9に例えば1MHz,10Vの交流電圧を印加し、モータM1,M2を作動させて、検査プレート8を所定の系路で移動させる。つまり、検査プレート8を、磁場形成部材4により形成される磁場の局所領域が、薬液貯留部81Aに対向する位置に移動してから、前記局所領域が薬液貯留部81Aから流路84に向けて移動するように、検査プレート8を移動する。これにより、薬液貯留部81A内に溜まっているクエン酸ナトリウム水は、前記磁場形成部材4の磁場により引き千切られて、前記流路84内に液滴として供給される。この液滴は、直径が5mm〜10mm程度である。このように、当該実施の形態では、薬液貯留部81A〜81Cをなす凹部と、磁場形成部材4とによっても液滴供給部が構成される。
【0075】
続いて、検査プレート8を移動させることにより、磁場形成部材4を相対的に流路84の下流側に移動させ、クエン酸ナトリウム水の液滴を試料液貯留部82まで移動させて、血液95を希釈する。この後、同様に磁場形成部材4を相対的に移動させて、図17に示すように、希釈された血液95の液滴を流路84の下流側に向けて移動させる。ここで、血液95の液滴が電極ユニット9上を移動すると、誘電泳動作用が発生し、血液95中の血球96は、図18及び図20に示すように、電極ユニット9より具体的には電極91側に引き寄せられるように移動する。一方、血液95中の血漿97は、電極ユニット9には引き寄せられないので、磁場形成部材4の相対的移動に伴って移動する。なお図20、図21では、電極ユニット9の形成領域を夫々点線で囲って示している。
【0076】
従って、試料液貯留部82から下流側に向けて磁場形成部材4を相対的に移動させると、電極ユニット9の形成領域近傍では、図18、図20に示すように、血液95が下流側に向けて広がった状態で移動する。さらに、磁場形成部材4を流路84の幅が狭まる部位84Aの上流側近傍まで相対的に移動させると、血液95の血漿97は、磁場形成部材4の磁場により押し出されるように前記部位84Aを超えて下流側へ移動していく。そして、磁場形成部材4を前記部位84Aよりもさらに下流側へ相対的に移動させると、前記部位84Aでは液量が極端に少なくなるため、磁場形成部材4の相対的移動に伴い、血液95から血漿97が引き千切られ、血漿97の液滴が形成される。(図19、図21参照)。
【0077】
こうして、血液95から血漿97を分離し、さらに磁場形成部材4を相対的に移動させて、当該血漿97の液滴を反応部83まで移動する。次いで、磁場形成部材4A,4Bの間隔を広くして薬液貯留部73Bの近傍まで相対的に移動させてから、磁場形成部材4A,4Bの間隔を狭めてから相対的に移動させ、これにより、薬液Aの液滴を流路85A内に供給し、薬液Aの液滴を流路85A、流路84を介して反応部83まで移動させる。こうして、反応部83にて薬液Aの液滴と血漿を反応させて、所定の生化学検査を行う。薬液Aによる生化学検査結果を取得した後、当該検査プレート8は開口部77を介して装置7から取り出し、破棄する。上述の例では、薬液Aによる生化学検査を行う場合を例にして説明したが、薬液Bによる場合も同様に検査が行われる。
【0078】
上述の実施の形態の形態によれば、検査プレート8上にて誘電泳動作用を発生させているので、当該検査プレート8上において、血液から血漿を分離することができる。また、分離した血漿は磁場形成部材4の磁場を利用して検査プレート8上を移動させているので、誘電泳動作用を阻害することなく、血漿を移動させることができる。このため、検査プレート8上において、血液から血漿の分離、及び血漿の移動を行うことができるので、検査プレート8上において血漿の生化学検査を行うことができ、微量な血液を用いた小型な装置で多種の生化学検査を短時間で容易に行うことができる。
【0079】
ここで、血液95の液滴からの血漿97の分離は次のように行うようにしてもよい。つまり、図22に示すように、磁場形成部材4A,4Bを流路84の下流側に向けて、流路が狭まる部位84Aの近傍まで相対的に移動させ、血液95を前記部位84Aの下流側まで押し広げる。次いで、一旦磁場形成部材4A,4B同士の間隔を離して、図23に示すように、磁場形成部材4A,4Bを前記部位84Aの側方に相対的に移動させる。そして、磁場形成部材4A,4Bを、図23中矢印で示すように、前記部位84Aに向けて移動させる。これにより、前記部位84A内の血漿97は磁場から逃れようとして、前記部位84Aの両側に向けて移動するため、血液95から血漿97が容易に分離される。
【0080】
また、同一の検査プレート8にて、多数の薬液を用いて生化学検査を行う場合には、多数の薬液貯留部81及び反応部83用の凹部を形成してもよいし、反応部83ではなく、薬液貯留部81に血漿97を移動させて、ここで薬液と反応させるようにしてもよい。さらに、反応部83の下流側に排液部を設け、反応部83にて薬液Aとの反応を終了した後、当該反応液を排液部に排液し、次の血漿97の液滴及び薬液Bを反応部83に移動させて薬液Bによる生化学検査を行うようにしてもよい。
【0081】
さらにまた、試料液貯留部82に直接クエン酸ナトリウム水を滴下して、血液を希釈するようにしてもよいし、反応部83に直接薬液を滴下して、血漿と反応させるようにしてもよい。なお、検査プレート8では、必ずしも流路を形成する必要はなく、試料液貯留部82や薬液貯留部81用の凹部も必ずしも必要ではない。さらに、検査プレート8ではなく、磁場形成部材4側を移動させるようにしてもよい。
【0082】
さらにまた、検査プレート8上において血液95を電極ユニット9を通過するように移動させ、血液95から血漿97の液滴を分離した後は、当該血漿97の液滴を電気的手法を用いて移動させるようにしてもよい。さらにまた、流路の幅や、電極ユニット9による電場の大きさや、磁場形成部材4の磁場の大きさ等によって、磁場形成部材4の相対的移動により血液95から血漿97が分離できる構成であれば、流路84には必ずしも局所的に幅が狭まる部位84Aを設ける必要はない。
【実施例】
【0083】
以下に、図24に示す実験装置を用い、磁場形成部材の移動により液滴が移動するか否かを確認する実験を行った。図24中、61は、シリコンより構成された厚さ0.75mmの移動面形成部材であり、4A,4Bは移動面形成部材の両面に夫々配置された磁場形成部材である。磁場形成部材4A,4Bは、上述の構成のものを用い、永久磁石の材質は、ネオジウム、中間部材の材質は鉄とした。また、磁場形成部材4の大きさは、既述のとおりである。そして、磁場形成部材4A,4Bの間のギャップ(磁石間ギャップ)Gと、液適量を変え、磁場形成部材4の移動に伴い、液滴62が移動するか否かについて、目視により確認した。なお、直径が5mm〜10mmの液滴とは、液適量が20μl〜100μlに相当する。
【0084】
この結果について、図25に示す。図中縦軸は磁石間ギャップ、横軸は液適量を夫々示し、■は磁場形成部材の移動により移動した液滴、□は移動しなかった液滴を夫々示している。この結果、磁場形成部材の移動に伴い、移動面形成部材の表面において、液滴が移動することが認められた。また、液滴量が少ないときには、液滴を移動させるためには、磁場形成部材同士の間のギャップを小さくして、磁束密度を高める必要があることが理解される。
【符号の説明】
【0085】
1 移動面形成部材
11A〜11C 試料液貯留部
12A〜12C 反応部
14 洗浄液貯留部
15〜18 薬液用の凹部
21,22 流路
33 Y方向移動機構
34 X方向移動機構
4(4A,4B) 磁場形成部材
41,44 永久磁石
42、45 芯部材
43,46 空隙
8 検査プレート
95 血液
96 血球
97 血漿
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材の表面に液滴を供給するための液滴供給部と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させるための移動機構と、を備えたことを特徴とする液滴移動装置。
【請求項2】
前記移動面形成部材は板状体であり、
前記磁場形成部材は、移動面形成部材の両面側に当該移動面形成部材を介して対向していることを特徴とする請求項1記載の液滴移動装置。
【請求項3】
液滴を予め設定した移動軌跡に沿って移動させるように前記移動機構を制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴移動装置。
【請求項4】
前記磁場形成部材は、局所領域に液滴を閉じ込める作用を大きくするために、前記表面に沿ってその全周を囲む領域よりも磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴移動装置。
【請求項5】
前記磁場形成部材は、前記磁場が局所的に小さい領域を形成するために、前記表面に沿った方向で見たときに透磁率が局所的に小さくなる部分を備えていることを特徴とする請求項4記載の液滴移動装置。
【請求項6】
前記透磁率が局所的に周囲よりも小さくなる部分は、空隙として構成されていることを特徴とする請求項5記載の液滴移動装置。
【請求項7】
前記移動面形成部材に形成された、液溜まりをなす凹部を備え、この凹部内に溜まっている液は、前記磁場形成部材の磁場により引き千切られて前記移動面形成部材の表面に液滴として供給されるものであり、
前記液滴供給部は、前記凹部と前記磁場形成部材とにより構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の液滴
【請求項8】
前記液滴供給部は、分析対象となる試料液の液滴を供給する液滴供給部、前記試料液を分析するための薬液の液滴を供給する液滴供給部、及び洗浄液を供給する液滴供給部を含み、
前記移動面形成部材は、分析対象となる試料液の液滴と前記薬液とを反応させる反応区域を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の液滴移動装置。
【請求項9】
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材に設けられ、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする血漿分離装置。
【請求項10】
前記移動面形成部材の表面には、前記液滴を案内する流路が形成されていることを特徴とする請求項9記載の血漿分離装置。
【請求項11】
前記流路は、前記移動面形成部材に設けられた電極の下流側にて局所的に狭まる部位を備え、
前記移動機構は、前記液滴を前記流路において前記電極の上流側から前記狭まる部位の下流側まで移動させ、前記液滴をこの部位を通過させることにより前記血液から血漿を分離することを特徴とする請求項10記載の血漿分離装置。
【請求項12】
前記移動面形成部材は、前記電極の下流側に分析対象となる血漿の液滴と前記薬液とを反応させる反応区域を備え、
前記移動機構は、前記分離された血漿を前記反応区域に移動することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の血漿分離装置。
【請求項13】
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材の表面に液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする液滴移動方法。
【請求項14】
前記移動面形成部材は板状体であり、
前記磁場形成部材は、移動面形成部材の両面側に当該移動面形成部材を介して対向していることを特徴とする請求項13記載の液滴移動方法。
【請求項15】
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなり、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極を備えた移動面形成部材の表面に血液の液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における前記液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする血漿分離方法。
【請求項16】
前記液滴を前記移動面形成部材の前記表面に沿って移動させる工程は、前記移動面形成部材の表面に形成された流路内の液滴を移動させることを特徴とする請求項15記載の血漿分離方法。
【請求項17】
前記流路は、前記移動面形成部材に設けられた電極の下流側にて局所的に狭まる部位を備え、
前記液滴を前記移動面形成部材の前記表面に沿って移動させる工程は、前記液滴を前記流路において前記電極の上流側から前記狭まる部位の下流側まで移動させ、前記液滴をこの部位を通過させることにより前記血液から血漿を分離することを特徴とする請求項15又は16記載の血漿分離方法。
【請求項1】
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材の表面に液滴を供給するための液滴供給部と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させるための移動機構と、を備えたことを特徴とする液滴移動装置。
【請求項2】
前記移動面形成部材は板状体であり、
前記磁場形成部材は、移動面形成部材の両面側に当該移動面形成部材を介して対向していることを特徴とする請求項1記載の液滴移動装置。
【請求項3】
液滴を予め設定した移動軌跡に沿って移動させるように前記移動機構を制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴移動装置。
【請求項4】
前記磁場形成部材は、局所領域に液滴を閉じ込める作用を大きくするために、前記表面に沿ってその全周を囲む領域よりも磁場が局所的に小さい領域を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴移動装置。
【請求項5】
前記磁場形成部材は、前記磁場が局所的に小さい領域を形成するために、前記表面に沿った方向で見たときに透磁率が局所的に小さくなる部分を備えていることを特徴とする請求項4記載の液滴移動装置。
【請求項6】
前記透磁率が局所的に周囲よりも小さくなる部分は、空隙として構成されていることを特徴とする請求項5記載の液滴移動装置。
【請求項7】
前記移動面形成部材に形成された、液溜まりをなす凹部を備え、この凹部内に溜まっている液は、前記磁場形成部材の磁場により引き千切られて前記移動面形成部材の表面に液滴として供給されるものであり、
前記液滴供給部は、前記凹部と前記磁場形成部材とにより構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の液滴
【請求項8】
前記液滴供給部は、分析対象となる試料液の液滴を供給する液滴供給部、前記試料液を分析するための薬液の液滴を供給する液滴供給部、及び洗浄液を供給する液滴供給部を含み、
前記移動面形成部材は、分析対象となる試料液の液滴と前記薬液とを反応させる反応区域を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の液滴移動装置。
【請求項9】
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材と、
この移動面形成部材に設けられ、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極と、
前記移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する磁場形成部材と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする血漿分離装置。
【請求項10】
前記移動面形成部材の表面には、前記液滴を案内する流路が形成されていることを特徴とする請求項9記載の血漿分離装置。
【請求項11】
前記流路は、前記移動面形成部材に設けられた電極の下流側にて局所的に狭まる部位を備え、
前記移動機構は、前記液滴を前記流路において前記電極の上流側から前記狭まる部位の下流側まで移動させ、前記液滴をこの部位を通過させることにより前記血液から血漿を分離することを特徴とする請求項10記載の血漿分離装置。
【請求項12】
前記移動面形成部材は、前記電極の下流側に分析対象となる血漿の液滴と前記薬液とを反応させる反応区域を備え、
前記移動機構は、前記分離された血漿を前記反応区域に移動することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の血漿分離装置。
【請求項13】
液滴の移動面を形成する非磁性体からなる移動面形成部材の表面に液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って移動させるために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする液滴移動方法。
【請求項14】
前記移動面形成部材は板状体であり、
前記磁場形成部材は、移動面形成部材の両面側に当該移動面形成部材を介して対向していることを特徴とする請求項13記載の液滴移動方法。
【請求項15】
血液の液滴の移動面を形成する非磁性体からなり、前記血液から血漿を分離するために誘電泳動作用を発生させる電極を備えた移動面形成部材の表面に血液の液滴を供給する工程と、
磁場形成部材により、移動面形成部材の表面上における前記液滴が位置する領域から前記表面に沿って離れるにつれて磁場が小さくなる磁場勾配を形成する工程と、
前記液滴を磁場勾配に沿って前記電極の上を通過させて前記血液から血漿を分離するために、前記移動面形成部材と磁場形成部材とを相対的に前記表面に沿って移動させる工程と、を含むことを特徴とする血漿分離方法。
【請求項16】
前記液滴を前記移動面形成部材の前記表面に沿って移動させる工程は、前記移動面形成部材の表面に形成された流路内の液滴を移動させることを特徴とする請求項15記載の血漿分離方法。
【請求項17】
前記流路は、前記移動面形成部材に設けられた電極の下流側にて局所的に狭まる部位を備え、
前記液滴を前記移動面形成部材の前記表面に沿って移動させる工程は、前記液滴を前記流路において前記電極の上流側から前記狭まる部位の下流側まで移動させ、前記液滴をこの部位を通過させることにより前記血液から血漿を分離することを特徴とする請求項15又は16記載の血漿分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−42443(P2012−42443A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248972(P2010−248972)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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