説明

液状スープ

【課題】香辛料によるコク味は維持しつつ、辛味が低減されたスープの提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(D);
(A)重量平均分子量10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩 アルギン酸換算で0.5〜4.5質量%
(B)カリウム
(C)ナトリウム
(D)ピペリン 1〜63ppm
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計量が10〜24mmol/100gであり、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が0.2〜1.5である液状スープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸を含有する液状スープ並びに固体又は半固体状スープ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スープ等の食品形態にはコク味出し等を目的に香辛料が利用されている。主な香辛料の原料としては胡椒が挙げられるが、胡椒は強い辛味を有しているため使用量が制限されている。この辛味は、辛味成分であるピペリンに因るものである。
そこで、胡椒を原料とした香辛料に由来する辛味を抑える技術として、胡椒の種子を取り除くことで香辛料中のピペリン含量を低減させる香辛料の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、水溶性酸性多糖類であるアルギン酸塩は、食しやすい食物繊維素材として知られ、また、食品の増粘剤等としても広く利用されている。
近年では、特にその整腸作用及び/又はコレステロール低減作用といった機能により、厚生労働省から表示を許可された特定保健用食品の原材料としての利用も活発に行われている。
また、アルギン酸及びその塩類を加圧加熱により低分子量化して得た平均分子量1万〜90万のアルギンを含む肥満防止および糖尿病予防の食品(特許文献2)や、アルギン酸塩及び不溶性カルシウム塩の他に、たんぱく質も含む促進された満腹効果を有する食品(特許文献3)、アルギン酸塩をゲル化させないpH値で含むダイエットスープ(特許文献4)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―225679号公報
【特許文献2】特開平6−7093号公報
【特許文献3】特表2007−503823号公報
【特許文献4】特表2010−517542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、胡椒の種子はスープ等にコク味を付与するために有用であり、種子に多く含まれ辛味成分であるピペリンを所定量含む場合であっても、辛味を低減できる技術が望まれる。
従って、本発明は、香辛料によるコク味は維持しつつ、辛味が低減されたスープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アルギン酸、カリウム及びナトリウムを所定量含有し、かつカリウムとナトリウムとの含有比を一定の範囲に調整することで、ピペリンを所定量含みながらも辛味を低減することができ、更にコク味も維持された風味が良好なスープが得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D):
(A)重量平均分子量10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩 アルギン酸換算で0.5〜4.5質量%
(B)カリウム
(C)ナトリウム
(D)ピペリン 1〜63ppm
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計量(B+C)が10〜24mmol/100gであり、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が0.2〜1.5である液状スープを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、次の成分(A)〜(D):
(A)重量平均分子量10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩 アルギン酸換算で組成物中に10〜70質量%
(B)カリウム
(C)ナトリウム
(D)ピペリン 組成物中に50〜1200ppm
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計量が組成物中に400〜580mmol/100gであり、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が0.2〜1.5である固体又は半固体状スープ組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、香辛料によるコク味は維持しつつも、辛味が低減されて食しやすく、風味が良好なスープを提供することができる。本発明のスープは、高濃度のアルギン酸を含有し、長期間継続して飲用できることから、食物繊維摂取用のスープとしても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における液状スープは、非濃縮タイプのスープであり、そのまま喫食することができる。また、スープ組成物は、水、湯、牛乳等の水系媒体に分散又は溶解して食用に供することのできる所謂濃縮スープであり、その形態は、室温(15〜25℃)で粉末、固形、顆粒等の固体状であっても、あるいはペースト等の半固体状であってもよい。本発明における固体又は半固体状スープ組成物(以下、スープ組成物ともいう)は、該組成物1質量部に対して5〜30質量部に希釈した液状のスープにして喫食するのが好ましい。本発明において、スープの種類としては、特に制限はなく、例えば、味噌汁、野菜スープ、コーンポタージュスープ、クリームスープ、カレースープ、ラーメンスープ、コンソメスープ、トムヤムクンスープ等が挙げられる。
【0011】
本発明の液状スープは、(A)重量平均分子量(以下、単に分子量ともいう)が10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩をアルギン酸換算で0.5〜4.5質量%(以下、単に「%」とする)含有する。アルギン酸又はその塩の含有量は、辛味の抑制の点、えぐみの抑制の点、十分な食物繊維摂取が可能となる点、低粘度で摂取し易くなる点から、アルギン酸換算で、0.55%以上、更に0.6%以上、更に1.5%以上、更に1.6%以上であることが好ましく、更に4.1%以下、更に3.6%以下、更に3.3%以下、更に2.5%以下、更に2%以下、更に1.1%以下であることがより好ましい。
アルギン酸又はその塩の含有量は、同様な点から、アルギン酸換算で、0.55〜4.1%、更に0.6〜3.6%、更に1.5〜3.3%、更に1.5〜2.5%であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のスープ組成物は、(A)分子量が10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩をアルギン酸換算で組成物中に10〜70%含有する。アルギン酸又はその塩の含有量は、同様な点から、アルギン酸換算で、20%以上、更に40%以上、更に45%以上であることが好ましく、更に68%以下、更に65%以下、更に60%以下、更に55%以下であることがより好ましい。
アルギン酸又はその塩の含有量は、同様な点から、アルギン酸換算で、20〜68%、更に40〜60%、尚更40〜55%であることが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる(A)アルギン酸又はその塩の分子量は10,000〜900,000であるが、食物繊維としての機能が高い点、低粘度で摂取し易い点から、更に15,000〜700,000、更に20,000〜500,000、更に15,000〜100,000、更に20,000〜70,000が好ましい。
なお、アルギン酸又はその塩の含有量は、以下の「HPLCによるアルギン酸の定量」によって測定するか、後述の実施例に記載の方法によって測定することが可能であり、分子量は、以下の「アルギン酸の重量平均分子量の測定」によって測定することが可能である。
【0014】
「HPLCによるアルギン酸の定量」ならびに「アルギン酸の重量平均分子量の測定」
1.前処理(HPLC用分析試料の調製)
1−1 アルギン酸カルシウム沈殿の生成
ビーカーに被験試料2gを加え、更に水35mLを加えて均一になるように攪拌する。渦動攪拌器により適宜攪拌しながら、2mol/L塩化カルシウム水溶液1.5mLを、5〜10分かけて徐々に滴下する。壁面に付着した析出物を流し落としながら水約5mLを加え、その後pHが11以上となるように1mol/L水酸化ナトリウム溶液を加え、その後ビーカー内の溶液を容量50mLのメスフラスコに移しかえ、ビーカー内に付着した析出物を水で流し落として全量50mLに定容する。共栓をした後、この溶液を渦動攪拌器により20秒攪拌し、その後20分室温に放置する(溶液A)。
【0015】
1−2 アルギン酸カルシウム沈殿の回収
直径25mmのメンブランフィルタをメンブランフィルタカートリッジに装着し、更に5mLのシリンジを接続する。このシリンジ内に、上からホールピペットで溶液A5mLを入れる。装着したシリンジにピストンを装着して押し出し、内溶液をメンブランフィルタでろ過する。
その後、水酸化ナトリウムでpH11.3とした40mmol/L塩化カルシウム水溶液約3mLで、ホールピペットの付着物を洗い、その洗浄液でシリンジ内も洗い、メンブランフィルタでろ過する。更にこの洗浄動作をもう一度繰り返す。
【0016】
1−3 アルギン酸ナトリウムへの塩交換と回収
上記操作で得られたメンブランフィルタカートリッジを解体し、メンブランフィルタとパッキンをとり出し、50mLビーカーに入れる。水4.8mLでメンブランフィルタカートリッジの残りの部品を洗浄しながらビーカーに加える。この溶液に1.5mol/L炭酸ナトリウム水溶液を200μL加えて、溶液が均一になるよう軽く攪拌する(全量約5mL)。途中、3回しんとう混和を行いながら1〜2時間室温に置く。再度攪拌し、メスフラスコ(容量10mL)に溶液を全量移し、水約5mLでビーカー内に残った部品を洗浄し、その液をメスフラスコに加えた後全量を10mLに定容する。これらの操作により、飲料中のアルギン酸をアルギン酸ナトリウムとして溶解させ回収する。この溶液を直径25mmのメンブランフィルタ(GLクロマトディスク0.45μm)でろ過したものをHPLC用分析試料として用いる。
【0017】
2.HPLCによるアルギン酸の定量
HPLC用分析試料100μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。純度既知のアルギン酸ナトリウム標準試料0.1%溶液を同様にHPLCで測定し、得られたクロマトグラムの面積の比較から試料中のアルギン酸ナトリウムを定量する。この値に、定数0.9を掛けることにより、試料中のアルギン酸量が算出できる。なお、HPLC操作条件は以下の通りである。
【0018】
HPLC操作条件
カラム:(1)Super AW−L(ガードカラム):東ソー(株)製
(2)TSK−GEL Super AW4000(GPC用カラム)
:排除限界分子量4×105PEO/DMF、長さ15cm,内径6mm、東ソー(株)製
(3)TSK−GEL Super AW2500(GPC用カラム)
:排除限界分子量2×103PEO/DMF、長さ15cm,内径6mm、東ソー(株)製
上記カラムはAW−L,AW4000,AW2500の順で連結した。
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
移動相:0.2mol/L硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.6mL/min
注入量:100μL
【0019】
3.アルギン酸の重量平均分子量の測定
アルギン酸の重量平均分子量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定する。HPLC操作条件は、前記「2.HPLCによるアルギン酸の定量」と同じ条件である。分子量算出用の検量線には、標準プルラン(昭和電工(株)製 Shodex STANDARD P−82)を用いる。HPLC用分析試料をHPLCに100μL注入し、得られたクロマトチャートより、試料中のアルギン酸ナトリウムの重量平均分子量を算出する。この値に、定数0.9を掛けることにより、試料中のアルギン酸の重量平均分子量が算出できる。
【0020】
上記の分子量を持つアルギン酸又はその塩は、高分子量のアルギン酸又はその塩を低分子量化して得ることができる。低分子量化の方法は特に限定されず、例えば酸又はアルカリの存在下に加水分解する方法や、分解酵素を用いた加水分解法が挙げられる。加水分解反応の条件は、常圧又は加圧のいずれでもよく、常圧の場合は60〜100℃、加圧の場合は100〜200℃で行われる。酵素分解法の場合は常圧にて20〜60℃程度で行われる。
アルギン酸の塩としては、特に限定されないが、アルギン酸のアルカリ金属塩が好ましく、更にアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムが好ましい。
本発明の液状スープ又はスープ組成物に含有されるアルギン酸又はその塩の例示としては、製品名:キミカアルギンSKAT−K−ULV((株)キミカ)や製品名:カリアルギン((株)紀文フードケミファ)等が挙げられる。ただし、アルギン酸又はその塩であれば、これらの例に限定されるものではない。
【0021】
本発明の液状スープ又はスープ組成物には、(B)カリウム及び(C)ナトリウムの両者が含まれる。
(B)カリウム源としては、アルギン酸及びカリウムを同時摂取できるという点からアルギン酸カリウムを用いることが好ましい。また、カリウムとしては、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩、野菜や果物等の植物由来のものも含まれる。
【0022】
(C)ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等及びそれらの混合物のような容易に入手し得るナトリウム塩、野菜や果物等の植物由来のものも含まれるが、風味を良好にする点から塩化ナトリウムが好ましい。
【0023】
液状スープにおける(B)カリウムと(C)ナトリウムの合計量は、10〜24mmol/100gであるが、辛味の抑制の点から、12〜24mmol/100gであることが好ましく、更に13〜20mmol/100g、更に16.5〜19.5mmol/100gが好ましい。
【0024】
また、スープ組成物における(B)カリウムと(C)ナトリウムの合計量は、同様の点から、組成物中に400〜580mmol/100gであるが、更に430〜540mmol/100g、更に460〜480mmol/100gが好ましい。
【0025】
また、本発明の液状スープ又はスープ組成物における(B)カリウムと(C)ナトリウムの含有モル比(B/C)は0.2〜1.5であるが、辛味の抑制の点、コク味の向上の点から、0.26〜1.4であることが好ましく、更に0.35〜1.2、更に0.35〜0.7であることが好ましい。
なお、本発明においてカリウムとナトリウムの含有量は、後述の方法にて得られた値をもってカリウム含有量、ナトリウム含有量とする。このカリウムとナトリウムの含有量には、成分(A)としてアルギン酸カリウムやアルギン酸ナトリウムを用いた場合、該アルギン酸塩由来のカリウムとナトリウムも含まれる。
【0026】
本発明の液状スープ又はスープ組成物に含まれる(D)ピペリンは、香辛料由来のものである。香辛料は、ピペリンを含み、かつ一般的に飲食品に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、コショウ、ヒハツ等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
コショウとしては、その種類や産地は限定されるものではく、通常の黒コショウ、白コショウ、グリーンペッパーを用いることができる。
【0027】
液状スープにおけるピペリン含有量は、1〜63ppmであるが、辛味の抑制の点、コク味の向上の点から、2〜40ppmが好ましく、更に2〜35ppm、更に15〜25ppm、尚更18〜22ppmが好ましい。
【0028】
また、スープ組成物におけるピペリン含有量は、組成物中に50〜1200ppmであるが、同様の点から、100ppm以上、更に380ppm以上、更に460ppm以上、更に570ppm以上であることが好ましく、更に1000ppm以下、更に630ppm以下、更に600ppm以下、更に480ppm以下であることが好ましい。
スープ組成物中におけるピペリン含有量は、100〜1000ppmが好ましく、更に380〜630ppm、更に570〜600ppmが好ましい。
【0029】
本発明の液状スープ又はスープ組成物には、更に、スープに含まれ得る成分、例えば、食用油脂;肉、野菜、海草、ヌードル、パスタ等の材料(具);食塩、糖類、アミノ酸・核酸・有機酸等の旨み調味料;脱脂粉乳、牛乳、生クリーム等の乳成分;馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、コーンスターチ、米粉等の穀粉;畜肉エキス(チキン、ポーク、ビーフエキス等)、魚介エキス(カツオ、鯖、ホタテ、いわし、昆布エキス等)、野菜エキス(トマト、ネギ、セロリ、マッシュルーム、玉ネギ等)等のエキス;上記以外の香辛料、酒類、着色料、保存料、乳化剤、増粘多糖類等が適宜配合されていても良い。
【0030】
本発明の液状スープ及びスープ組成物は、特に制限はなく常法に従い製造される。
本発明の液状スープは、種々の容器に詰めることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アルミ、ナイロン、ポリエチレン等を主成分とする成形容器(いわゆるパウチ容器)に充填して提供することができる。また、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
【実施例】
【0031】
<アルギン酸の定量ならびに重量平均分子量の測定>
1.アルギン酸塩中のカリウム量及びナトリウム量の測定によるアルギン酸の定量
原料として用いたアルギン酸塩中のアルギン酸換算値は、アルギン酸塩中のナトリウム量及びカリウム量を後述する原子吸光光度計で分析し、ナトリウム量及びカリウム量を差し引いて求めた。このアルギン酸換算値から試料中のアルギン酸量を求めた。
なお、この方法に従い算出した試料中のアルギン酸量は、上述した「2.HPLCによるアルギン酸の定量」に従い算出したアルギン酸量と同じであった。
【0032】
2.アルギン酸の重量平均分子量の測定
原料として用いたアルギン酸塩の分子量の測定は、前述した「3.アルギン酸の重量平均分子量の測定」によって行った。
【0033】
<カリウム含有量の測定>
カリウム含有量は、原子吸光光度計を用いて、測定用試験溶液の吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線から試験溶液の濃度を求めた。測定波長は766.5nmに設定した。測定用試験溶液は、原液を蒸留水で希釈して調整した。その時、塩酸の濃度が0.02Nになるように塩酸を加えて調整した。
【0034】
<ナトリウム含有量の測定>
ナトリウム含有量は、原子吸光光度計を用いて、測定用試験溶液の吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線から試験溶液の濃度を求めた。測定波長は589.0nmに設定した。測定用試験溶液は、原液を蒸留水で希釈して調整した。その時、塩酸の濃度が0.02Nになるように塩酸を加えて調整した。
【0035】
<ピペリン含有量の測定>
ピペリン含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定した。具体的には、3gの試料にエタノールを加えた後に超音波をあて10分間抽出した。その後、25mlに定容し、メンブレンフィルター(水系0.45μm)で濾過したろ液をHPLC用試験溶液とした。HPLCの分析条件は下記の通りである。
カラム :Discovery HS F5, Φ4.6mm×10cm
移動相 :メタノール及び水の混合液
測定波長 :340nm
定量 :1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0036】
<風味の評価方法と判断基準>
本発明の実施例及び比較例の液状スープを製造後に専門パネル2名がスープの辛味、コク味、及びえぐみについて、以下の基準に従って評価を行い、協議により評点を決定した。なお、本発明における「コク味」とは濃い深みのあるうま味、「えぐみ」とは、あくが強くて、舌やのどがひりひりとするような感じや味をいう。
〔辛味の評価基準〕
5:辛味を感じない
4:辛味をわずかに感じる
3:辛味を感じる
2:辛味をやや強く感じる
1:辛味を強く感じる
〔コク味の評価基準〕
5:コク味を強く感じる
4:コク味をやや強く感じる
3:コク味を感じる
2:コク味をわずかに感じる
1:コク味を感じない
〔えぐみの評価基準〕
5:えぐみを感じない
4:えぐみをわずかに感じる
3:えぐみを感じる
2:えぐみをやや強く感じる
1:えぐみを強く感じる
【0037】
<液状スープの調製>
実施例1〜17及び比較例1〜11
表1又は表2に示した組成の粉末状のスープ組成物を製造した。所定量の低分子化アルギン酸カリウム(株式会社キミカ、重量平均分子量4万、アルギン酸換算純度85%)、低分子化アルギン酸ナトリウム(株式会社カイゲン、重量平均分子量5万、アルギン酸換算純度90%)、野菜パウダー(ヤスマ株式会社)、オニオンパウダーLBCP(ヤスマ株式会社)、ミックスペッパーコース(ヤスマ株式会社)、並塩、上白糖、塩化カリウム、塩化ナトリウムを混合し、粉末状のスープ組成物(固形分100%)を製造した。各スープ組成物に、160gの熱湯を注ぎ、充分攪拌し、液状スープを得た。
【0038】
得られた液状スープの風味を評価した結果を表1及び表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例18〜19及び比較例12〜13
表3に示した組成の粉末状のスープ組成物を製造した。所定量のアルギン酸カリウム(株式会社キミカ、重量平均分子量30万又は50万、ともにアルギン酸換算純度85%)、野菜パウダー(ヤスマ株式会社)、オニオンパウダーLBCP(ヤスマ株式会社)、ミックスペッパーコース(ヤスマ株式会社)、並塩、上白糖を混合し、粉末状のスープ組成物(固形分100%)を製造した。各スープ組成物に、160gの熱湯を注ぎ、充分攪拌し、液状スープを得た。
【0042】
得られた液状スープの風味を評価した結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表1〜3より明らかなように、本発明のスープは、コショウのコク味を維持しつつも辛味が低減されて風味が良いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)重量平均分子量10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩 アルギン酸換算で0.5〜4.5質量%
(B)カリウム
(C)ナトリウム
(D)ピペリン 1〜63ppm
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計量が10〜24mmol/100gであり、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が0.2〜1.5である液状スープ。
【請求項2】
(D)ピペリンが18〜22ppmである請求項1記載の液状スープ。
【請求項3】
(D)ピペリンがコショウ由来である請求項1または2記載の液状スープ。
【請求項4】
次の成分(A)〜(D);
(A)重量平均分子量10,000〜900,000のアルギン酸又はその塩 アルギン酸換算で組成物中に10〜70質量%
(B)カリウム
(C)ナトリウム
(D)ピペリン 組成物中に50〜1200ppm
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計量が組成物中に400〜580mmol/100gであり、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が0.2〜1.5である固体又は半固体状スープ組成物。
【請求項5】
(D)ピペリンの含有量が組成物中に570〜600ppmである請求項4記載の固体又は半固体状スープ組成物。
【請求項6】
(D)ピペリンがコショウ由来である請求項4または5記載の固体又は半固体状スープ組成物。