説明

液状化防止工法

【課題】簡単かつ均一に気泡の配置ができる液状化防止工法を提供することである。
【解決手段】液状化防止工法1は、砂層地盤2に、該砂層地盤2の温度よりも低い温度のガス溶存溶液3を注入して浸透させた後、該ガス溶存溶液3の温度の上昇にともなって溶存ガスを微少な気泡にすることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は液状化防止工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂層地盤中に空気を送り込み、該砂層地盤中の不飽和度を高めると地震の震動による過剰間隙水の上昇過程が完全飽和に比べて遅れることから液状化しにくい砂層地盤になることが分かっている。図4によると砂層地盤内の間隙圧係数(B値)と液状化にいたるまでの繰り返し回数との関係が示されており、間隙圧係数は裁荷による過剰間隙水圧の上昇値と主応力の増分の比で表される値であり、地盤内部の飽和度が増し、完全飽和状態になると100%となる値である。この図から間隙圧係数を0.1程度下げることにより、液状化に至る繰り返し回数は10倍大きくなることがわかる。すなわち、間隙圧係数を低下させることにより地盤の液状化強度は上昇する。そこで地盤を不飽和状態にするための施工法として、例えば、(1)矢板などで矩形に囲い込んだ地盤中の地下水を低下させて空気を送り込んだ後、再度地下水を上昇させて不飽和地盤を形成する工法(特開平8−3975号公報)、(2)地盤内に空気を送り込む工法(特開2000−34736号公報)、(3)地下水圧よりも高い圧力で空気を溶存させた水を地中に注入する工法(特開2001−193048号公報)が提案されている。
【特許文献1】特開平8−3975号公報
【特許文献2】特開2000−34736号公報
【特許文献3】特開2001−193048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の(1)の工法では、確率的に均一な不飽和地盤が形成されるが、不飽和度の調整が難しいため矢板で囲むなどの補助的な施工が必要でありコストがかかるという問題があった。また(2)および(3)の工法では、注入地点からの距離により気泡の量が変化して均一な気泡の配置が困難であるという問題があった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単かつ均一に気泡の配置ができる液状化防止工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための液状化防止工法は、砂層地盤に、該砂層地盤の温度よりも低い温度のガス溶存溶液を注入して浸透させた後、該ガス溶存溶液の温度の上昇にともなって溶存ガスを微少な気泡にすることを特徴とする。またガス溶存溶液は、水にガスを溶存させたガス溶存水溶液、シリカ水溶液にガスを溶存させたガス溶存シリカ水溶液、またはシリカ水溶液とガス溶存水溶液とを混合したガス溶存シリカ水溶液のいずれかであることを含むものである。また、ここにおいて砂層地盤への打設時におけるシリカ水溶液中のシリカ濃度(SiO濃度)は重量で1〜10%のものを使用する。またシリカ濃度が1%未満の場合は効果が発揮されず、シリカ濃度が10%を超える場合は施工が困難になり、かつ均等に分散できないという不具合がある。
【発明の効果】
【0006】
砂層地盤中に注入された低温のガス溶存溶液は、砂層地盤を浸透するうちに水温が地下水の温度まで上昇する。これに伴って溶液中の溶存可能なガス量が少なくなることから、溶存していたガスは微少な気泡となる。このため水温と溶存可能なガス量が事前に把握できて、地下水の温度と溶液の水温との温度差から溶液の温度上昇の経時変化が予想可能であるため、微少な気泡を均一かつ定量的に砂層地盤内に配置することができ、砂層地盤の液状化強度を増加させることができる。またガス溶存シリカ水溶液は微少な気泡が発生した後に固結するため、気泡が永久に固定されて、砂層地盤の液状化強度の増加を恒久的にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の液状化防止工法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。この液状化防止工法は飽和した砂層地盤を対象とし、この砂層地盤よりも低温のガス溶存溶液を注入し、この溶存ガスを微少な気泡にして飽和度を低下させることにより地震時における砂層地盤の液状化を防止するものである。またこの工法における各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成は異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1は第1の実施の形態の液状化防止工法1であり、この液状化防止工法1は、まず液状化対象の砂層地盤2よりも低温の水を曝気して、この水中にCOを溶存させたCO溶存水溶液3を製造する。例えば、水へのCOの溶解度は、水温が0℃の場合、水の体積の171%(0℃、1atm)、10℃の場合が125%、20℃の場合が88%であり、0℃の完全溶解状態の溶液を20℃まで上昇させると、1atm状態で体積の83%の溶存ガスが気泡化する。
【0009】
そこで、例えば水温が20℃の砂層地盤2に、これよりも低温のCO溶存水溶液3、例えば5℃〜12℃のCO溶存水溶液3をポンプ4によって注入孔5の注入用外管6から砂層地盤2に注入する。そして、このCO溶存水溶液3が砂層地盤2中を浸透するうちに20℃の水温まで上昇することにより溶存ガス(CO)が気泡化する。これにより微少な気泡を砂層地盤2中の間隙に配置することができる。
【0010】
これは、例えば、1000ccの飽和地盤の場合、土粒子が体積の約50%、間隙水が50%であったとすると、COが完全溶解した10℃で500ccの間隙水が20℃になると、気泡化するCOは、185cc(20℃、1atm)となるため、COが気泡化する際には、間隙圧係数(B値)は大幅に減少する。
【0011】
この溶存ガス(CO)の気泡化は2時間程度であり、注入時間も2〜4時間程度と同程度であるため、気泡を砂層地盤2内に均一に配置することができて、砂層地盤2中の不飽和度を高めて液状化強度を上昇させることができる。これは従来のように砂層地盤2中に気泡を直接注入するのではなく、砂層地盤2中に浸透させた水溶液の溶存ガス(CO)を気泡化させるので、気泡を砂層地盤内に均一に配置することができる。
【0012】
また図2は第2の実施の形態の液状化防止工法7であり、この液状化防止工法7はシリカ水溶液8と、COを溶存させたCO溶存水溶液3とを混合して製造したCO溶存シリカ水溶液9を使用するものである。これは低温のCO溶存水溶液3を砂層地盤2中に注入し続けなくても長期的に一定の液状化防止効果を保持することを可能にするものである。
【0013】
これは、図2に示すように、まず固結時間が2〜10時間で15℃のシリカ水溶液8と、ほぼ同量のCOを溶存させた5℃程度のCO溶存水溶液3を製造する。そして、このシリカ水溶液(30〜70重量%)8と、CO溶存水溶液(30〜70重量%)3とを攪拌混合して、砂層地盤2の水温よりも低温の10℃のCO溶存シリカ水溶液9を製造する。このCO溶存シリカ水溶液9中のシリカ濃度(SiO濃度)は重量で1〜10%である。そして、これを上記と同じ方法で砂層地盤2に注入すると、これが砂層地盤2中を浸透するうちに20℃まで上昇することにより溶存ガス(CO)が気泡化する。これにより微少な気泡を砂層地盤2の間隙に配置することができる。
【0014】
この溶存ガス(CO)の気泡化は2時間程度で行われるため、固結時間が2〜10時間のCO溶存シリカ水溶液9が固結する前に砂層地盤2内に気泡を均一に配置することができる。したがって、気泡が均一に配置された後に、CO溶存シリカ水溶液9がゲル状に固結して均一配置の気泡が永久に固定されるため、不飽和度が高められて液状化強度の上昇を恒久的にすることが可能になる。このため低温のCO溶存水溶液3を砂層地盤2中に注入し続けなくても長期的に一定の液状化防止効果を保持することが可能になる。
【0015】
また図3は第3の実施の形態の液状化防止工法10であり、この液状化防止工法10は固結時間が2〜10時間のシリカ水溶液8にCOを溶存させて製造したCO溶存シリカ水溶液9を使用するものである。
【0016】
これは、図3に示すように、まず液状化対象の砂層地盤2の土中温度(20℃)よりも低温の10℃のシリカ水溶液8を曝気して、このシリカ水溶液8中にCOを溶存させたCO溶存シリカ水溶液9を製造する。このCO溶存シリカ水溶液9中のシリカ濃度(SiO濃度)は重量で1〜10%である。そして、これを上記と同じ方法で砂層地盤2に注入すると、これが砂層地盤2中を浸透するうちに土中温度(20℃)まで上昇することにより溶存ガス(CO)が気泡化する。これにより微少な気泡を砂層地盤2の間隙に配置することができる。よって、上記と同様に、CO溶存シリカ水溶液9がゲル状に固結して均一配置の気泡が永久に固定されるため、不飽和度が高められて液状化強度の上昇を恒久的にすることが可能になる。
【0017】
なお、上記の第1〜第3の実施の形態の液状化防止工法1、7、10においてガス溶存水溶液はCO溶存水溶液3を対象として説明したが、これはCO溶存水溶液3に限らず、液状化対象の砂層地盤2よりも低温の水を曝気して、この水中に空気を溶存させた空気溶存水溶液を使用することもできる。すなわち溶存ガスとしてCOの他に空気を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の液状化防止工法の断面図である。
【図2】第2の実施の形態の液状化防止工法の断面図である。
【図3】第3の実施の形態の液状化防止工法の断面図である。
【図4】液状化強度曲線を表した図である。
【符号の説明】
【0019】
1、7、10 液状化防止工法
2 砂層地盤
3 CO溶存水溶液
4 ポンプ
5 注入孔
6 注入用外管
8 シリカ水溶液
9 CO溶存シリカ水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂層地盤に、該砂層地盤の温度よりも低い温度のガス溶存溶液を注入して浸透させた後、該ガス溶存溶液の温度の上昇にともなって溶存ガスを微少な気泡にすることを特徴とする液状化防止工法。
【請求項2】
ガス溶存溶液は、水にガスを溶存させたガス溶存水溶液、シリカ水溶液にガスを溶存させたガス溶存シリカ水溶液、またはシリカ水溶液とガス溶存水溶液とを混合したガス溶存シリカ水溶液のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の液状化防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−38379(P2008−38379A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210917(P2006−210917)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】