説明

液透過パネル及びそれを用いた動物用システムトイレ

【課題】粒状物を用いることなく、動物が排泄するときに足濡れを生じにくく、かつ、長時間排泄物が存在した場合においても悪臭の発生を抑制できる動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネルを提供すること。
【解決手段】動物用システムトイレ1に用いられる液透過パネル3が、吸水性及び液透過性を有する使い捨てのパネルであって硫酸アルミニウムを含む紙で構成され、紙は、サイズ剤と硫酸アルミニウムとを含む酸性紙であることが好ましい。液透過パネル3は厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有し、液が複数の孔部31を通って液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙であることがより好ましい。硫酸アルミニウムの有する化学的脱臭機能によって排泄物の悪臭抑制が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば犬等の動物用のシステムトイレに用いられる使い捨てタイプの液透過パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内で飼育する動物の排泄物の処理には、室内に設置できる動物用トイレが使用されている。このような動物用トイレとしては、市販のトイレ用のペットシートを直接床面に敷いたもの、ペットシートをペットシートの外周を押さえる外枠により固定したもの、及び浅底のトレイ状の受け皿に、板状の尿吸収マットと、この尿吸収マットの上面の全域に密接して被覆する液透過性の不織布とを収容したもの等が使用されている。これらの動物用トイレでは、動物は、ペットシートや不織布の上に直接乗った状態で排泄を行う。そのため、動物が排泄後にペットシートや不織布の上を移動すると、この動物の足が排泄跡を踏みつけてしまい、排泄された尿により足濡れが生じてしまう。このように、足濡れが生じると、動物が排泄後に室内を移動することにより室内の床面が尿により汚染されてしまうため、足濡れが生じにくい動物用トイレが強く望まれている。
【0003】
また、動物トイレでは、ペットシートや不織布は、排泄のたびに取り替えられることはなく、所定の期間継続して使用される。そのため、排泄物の存在に由来して発生する悪臭を抑制する消臭機能も求められる。
【0004】
消臭機能を備えた室内用の動物用トイレとして、例えば、シリカゲル等の消臭性及び吸水性の両方を備える直径4〜10mm程度の大きさの粒状物を、トイレ容器に敷き詰めた動物用トイレが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1で提案された動物用トイレでは、悪臭の発生と足濡れの発生という問題を同時に解決することができる。しかしながら、特許文献1で提案された動物用トイレを犬に適用した場合、犬が粒状物を誤って食べてしまったり、粒状物を脚で蹴って飛び散らしてしまったりするおそれがあり、この動物用トイレを犬に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−21071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、粒状物を用いることなく、動物が排泄するときに足濡れを生じにくく、かつ、長時間排泄物が存在した場合においても悪臭の発生を抑制できる動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネル、及びこの液透過パネルを備える動物用システムトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、所定の吸水性と所定の液透過率を備える使い捨ての液透過パネルを用い、当該液透過パネルの材質を、硫酸アルミニウムを含む紙とすることにより、粒状物を用いることなく、足濡れ抑制効果と共に排泄物から立ち上る悪臭を抑制する効果が得られ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)吸水性及び液透過性を有する使い捨ての動物用トイレ用の液透過パネルであって、硫酸アルミニウムを含む紙で構成されることを特徴とする液透過パネル。
【0010】
(2)前記紙は、サイズ剤と硫酸アルミニウムとを含む酸性紙である(1)記載の液透過パネル。
【0011】
(3)前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、液体が前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙である(1)又は(2)記載の液透過パネル。
【0012】
(4)前記液透過パネルにおける硫酸アルミニウムの含有量が、硫酸アルミニウム換算で、0.05重量%以上0.3重量%以下である(1)から(3)いずれか記載の液透過パネル。
【0013】
(5)排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間に着脱可能に配置される(1)から(4)いずれか記載の液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粒状物を用いることなく、動物が排泄するときに足濡れを生じにくく、かつ、長時間排泄物が存在した場合においても悪臭の発生を抑制できる動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネルを提供できる。その結果、本発明の動物用システムトイレを犬に適用した場合であっても、犬が粒状物を誤って食べてしまったり、粒状物を脚で蹴って飛び散らしてしまったりしないので、この動物用システムトイレを犬に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る動物用システムトイレの斜視図である。
【図2】実施形態に係る動物用システムトイレの分解斜視図である。
【図3】実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、液透過パネルを取り外した状態の平面図である。
【図4】実施形態に係る動物用システムトイレの、図1の動物用システムトイレ1のA−A線における断面図である。
【図5】実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの上面図である。
【図6】実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの、図5の液透過パネル3のB−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0017】
<全体構造>
まず、本発明の実施形態である動物用システムトイレ1を用いて、動物用システムトイレ1の全体構造について説明する。
【0018】
本実施形態の動物用システムトイレ1は、図1及び2に示すように、吸液シート6等の液体吸収性を有する吸液部材を収容可能な排泄物収容部21を有し上面が開口した排泄容器2と、この排泄容器2の上部に配置され排泄容器2の開口した上面を覆う底面を有する上部容器4と、この上部容器4の底面に配置(載置)される液透過パネル3と、を備える。
【0019】
排泄容器2は、図2に示すように、略正方形状の底面部22と、この底面部の4辺それぞれから底面部22に対して所定の角度で起立して配置される4つの側壁部23と、を備える。排泄物収容部21は、底面部22及び4つの側壁部23に囲まれた空間により形成される。この排泄物収容部21には、動物が排泄した尿等が収容される。
【0020】
上部容器4は、図2及び図3に示すように、上面が開口して構成され、平面視で略正方形状の底面を構成する支持部41とこの支持部41の4辺それぞれから支持部41に対して所定の角度で起立して配置される4つの上部側壁部42と、を備える。
【0021】
支持部41は、図3に示すように、複数の貫通穴441を有する格子状に構成され、尿等の液体を透過可能となっている。つまり、複数の貫通穴441は、矩形形状に形成され、行方向及び列方向にそれぞれ所定の間隔をあけて配置される。
【0022】
複数の貫通穴441の大きさは、好適な液体透過性を確保する観点から、一辺の長さが好ましくは1mm〜100mm、より好ましくは10〜60mmである。
【0023】
また、支持部41における格子状部分の幅W1(図3に図示)は、好適な液体透過性を確保すると共に、支持部41の強度を確保する観点から、好ましくは1.0mm〜10mm、より好ましくは2.0mm〜6.0mmである。
【0024】
また、支持部41の厚さD1(図4参照)は、支持部41の強度を確保する観点から、好ましくは1.0mm〜10mmである。
【0025】
4つの上部側壁部42のうちの3つの上部側壁部42の高さは、略均一に構成されている。そして、4つの上部側壁部42のうちの1つの上部側壁部42aには、他の3つの上部側壁部42の高さよりも高さが低く構成された出入り口部43が形成されている。動物用システムトイレ1を使用する動物は、この出入り口部43から上部容器4に出入りできる。
【0026】
以上の排泄容器2及び上部容器4は、木材、金属、プラスチック等の種々の材質を用いて構成できる。これらの材質の中では、排泄物が材料の内部に染み込むことによる臭気の発生の問題や、排泄物による腐食の問題がないことからプラスチックを用いるのが好ましい。プラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等種々の材料を使用することができる。
【0027】
液透過パネル3は、図1及び図2に示すように、上部容器4の支持部41の上面側に配置され、支持部41の上面の略全域を覆う。本実施形態では、液透過パネル3は、支持部41の大きさの略半分の大きさを有する長方形状に形成され、2枚の液透過パネル3により支持部41の上面を覆っている。また、液透過パネル3は、長手方向が上部容器4の出入り口部43が形成された上部側壁部42aの延びる方向に沿うように配置される。
【0028】
以上の液透過パネル3は、所定の液透過性、吸水性及び消臭性を備える。液透過パネル3の詳細については、後述する。
【0029】
以上の動物用システムトイレ1は、図2及び図4に示すように、排泄物収容部21に吸液シート6を収容した状態で、排泄容器2の上部に上部容器4を配置し、この上部容器4の支持部41に液透過パネル3を載置して使用される。
【0030】
そして、この状態では、図4に示すように、排泄物収容部21と液透過パネル3との間に支持部41が配置されるので、排泄物収容部21と液透過パネル3との間には、所定の空間5が形成される。
【0031】
なお、排泄容器2の内部の排泄物収容部21には、排泄容器2の底部に水平方向に引出し可能な引出トレイを設けてもよい。この場合、引出しトレイはそのまま排泄物を収容するか、引出トレイの内部に吸液シート6を敷設した状態で使用される。引出トレイを設けることにより、排泄物収容部21の清掃が非常に容易になる。また、引出トレイは排泄容器2からの取り出しが容易であることから取手を備えるのが好ましい。取手の形状は引出トレイを把持できる限り特に制限されない。
【0032】
排泄容器2の上部の開口部の形状は特に限定されず、意匠性等を考慮して、正方形、長方形、台形、楕円形、円形、半円形等種々の形状から選択することができる。大型の吸水性のパネルから液透過パネル3を切断して加工する際に余剰の部材が生じないことから、排泄容器2の上部の開口部の形状は正方形又は長方形であるのが好ましい。
【0033】
<使い捨て液透過パネル>
次に、使い捨ての液透過パネル3について説明する。液透過パネル3は全体として平面パネル状であり、図1及び図2に示されるように排泄容器2の開口部の略全面を覆うように上部容器4に対して着脱可能に構成される。より具体的には、液透過パネル3は、図5に示すように、複数のシート部材(後述の波板状シート32及び平板状シート33)が厚さ方向に沿うように配置されると共に隣り合うシート部材が所定箇所で接合されて形成されている。つまり、液透過パネル3は、シート部材により連続的に形成される壁部と、この壁部により囲まれた空間により形成され厚さ方向に貫通する複数の孔部31と、を備える開孔パネルである。
【0034】
液透過パネル3を構成する吸水性を有するパネルの材料は、排泄物を良好に透過しつつ、所定の吸水性を有すると共に、消臭性を有するものを用いる。吸水性を有する材料の具体例としては、パルプ等からなる紙が挙げられ、更に消臭剤として硫酸アルミニウム(硫酸バンドともいう)を含有する。硫酸アルミニウムは(2Al(SO)、水と反応して下記のように水酸化アルミニウムと硫酸(硫酸イオン)を生成する。
【0035】
【数1】

【0036】
この硫酸(HSO)は、下記のようにアンモニアやトリメチルアミンといった尿から発生する悪臭の代表的な成分に下記の化学式で反応し無臭化する。
(1)アンモニアとの反応
SO+2NH→(NHSO
(2)トリメチルアミンとの反応
SO+(CHN→[(CHNH]SO
【0037】
本発明においては、液透過パネル3を構成する紙は、サイズ剤と硫酸アルミニウムとを含む酸性紙であることが好ましい。サイズ剤は紙に耐水性やにじみ防止効果を付与する疎水剤であり、具体的にはロジン(松ヤニ)等が挙げられる。そして、このサイズ剤を紙に固定するために硫酸アルミニウムを通常併用する。上記のように硫酸バンドは水と反応して硫酸を生成するのでpHが低下するため、サイズ剤と硫酸アルミニウムとを含有する紙を一般に酸性紙と呼ぶ。
【0038】
本発明では、この酸性紙は疎水性の撥水剤たるサイズ剤と、消臭剤たる硫酸アルミニウムとを含む。このため、サイズ剤によって所定の液透過性及び液吸水性を得ることができると共に、硫酸アルミニウムによる消臭効果も得ることができるので本発明の液透過パネルに好適に用いられる。すなわち、本発明は、本来サイズ剤が持つ疎水性の特性を、所定の液透過性及び液吸収性の観点から利用し、更に、従来固定剤として使用される硫酸アルミニウムを消臭剤という観点から利用するのであり、液透過性、液吸水性、消臭性はいずれも動物用システムトイレという用途からくる要求性能であり、従来の酸性紙の利用方法としては存在しなかった新規なものである。
【0039】
なお、通常、酸性紙は酸によって紙の経年劣化が進むために短所が指摘されていることから多数の用途においては中性紙への転換が進む傾向にある。しかし、本発明の液透過パネルは動物用トイレ用であって、短期間の使い捨てタイプであるので経年劣化の問題は生じない。この点からも酸性紙の本来有する欠点を考慮しなくてよい利用方法として、液透過パネルという新たな分野を提供することに成功したのが本発明である。
【0040】
液透過パネル3における硫酸アルミニウムの含有量は、硫酸アルミニウム換算で、0.05重量%(500ppm)以上0.3重量%(3000ppm)以下であることが好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が0.05重量%(500ppm)未満であると脱臭効果が弱まると共に、サイズ剤の固定効果も弱まるので好ましくない。また、硫酸アルミニウムの含有量は、消臭効果の維持には上限0.3重量%(3000ppm)で充分であり、これを超えても量に見合った消臭効果が得られないので好ましくない。
【0041】
なお、図5に示されるように、液透過パネル3は、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有し、液が前記複数の孔部31を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙であることが好ましい。これによれば、それぞれの孔部31の壁面を構成する段ボール紙の中芯及びライナーによって表面積を拡大でき、それぞれに含有される硫酸アルミニウムと異臭成分との反応を促進して効果的に消臭できる。
【0042】
すなわち、本発明の作用は、主たる異臭成分が吸液シート6に吸収された排泄物より生じ、それが液透過パネル略全面に配置される多数の孔部31を通過する際に、主に孔部31の多数の壁面において化学反応によって消臭される。このため、液透過パネル3が厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有する点は重要である。また、液透過パネル3は吸水性を有するため、一部の異臭成分は液透過パネル3に付着したまま残ることになるが、この場合は、速やかに硫酸アルミニウム由来の硫酸と反応するので、優れた消臭効果をもたらす。
【0043】
このように、排泄容器2の上部空間の略全面を覆う液透過パネル3の全体に硫酸アルミニウムを付与することによって、液透過パネル3自体から発せられる異臭成分と、吸液シート6に吸収された排泄物から発せられる異臭成分の両方を効果的に除去でき、結果として排泄容器2からの異臭を大幅に抑制できるという点に本発明の特徴がある。
【0044】
液透過パネル3の厚さは、構成するパネルの形態によって異なるが、典型的には、3〜25mmが好ましく、3〜10mmがより好ましく、3〜7mmが特に好ましい。液透過パネル3が薄すぎる場合、パネルの変形により排泄物の排泄物収容部21への透過が妨げられたり、動物の重量によってはパネルが破壊されたりする場合がある等、強度の点で問題が生じやすい。液透過パネル3が厚すぎる場合は、一回の排泄による液透過パネル3の排泄物の吸収量が増加し交換サイクルが短くなる問題や、交換用パネルを保管する際に嵩張ること等の問題がある。
【0045】
液透過パネル3は、その厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有し、複数の孔部31を通じて排泄物を液透過パネル3の厚さ方向に透過するものを用いるのが好ましい。複数の孔部31の開口部の形状及び面積は同一であっても異なっていてもよい。かかる複数の孔部31を有する液透過パネル3は、例えばスポンジ状の材料のように不規則な方向の孔部を有するパネルと比較して、使い捨て液透過パネル3の内部に残留する排泄物の量を低減しやすく、動物による液透過パネル3の踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。
【0046】
液透過パネル3が、液透過パネル3の厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有する場合、複数の孔部31の開口部の平均面積は10〜100mm/個であるのが好ましく、15〜60mm/個であるのがより好ましい。孔部31の開口部の平均面積が小さすぎると使い捨て液透過パネル3に付着する排泄物の量が増え足濡れを抑制しにくく、孔部31の開口部の平均面積が広すぎると液透過パネル3に十分な強度を付与するために使い捨て液透過パネル3を厚くする必要がある点で好ましくない。複数の孔部31の開口部の平均面積の測定方法は特に制限されず公知の種々の方法を用いることができ、例えば、開口部の写真を画像解析する方法等により測定することが出来る。
【0047】
液透過パネル3が、その厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有するものとするためのパネルの構造としては、製造が容易で安価に入手可能であることからコルゲートハニカム構造のパネルが好ましい。
【0048】
以下コルゲートハニカム構造の液透過パネル3について図5及び図6を参照して説明する。図6は図5の液透過パネル3のB−B線における断面の模式図である。コルゲートハニカム構造の液透過パネル3を作製するには、まず波板状シート32と平板状シート33とを接合する。波板状シート32の波型は、コルゲーターと呼ばれる機械で材料に付与する。波板状シート32と平板状シート33とを接合する方法は特に制限されず、接着剤による接合方法等の公知の接合方法から適宜選択できるが、耐水性の高い樹脂系の接着剤が好ましい。
【0049】
なお、本発明に用いられる硫酸アルミニウムやサイズ剤は、それぞれの原紙の抄紙段階で含有させることが好ましいが、これに限らず抄紙後に塗布等で付与してもよい。
【0050】
次に波板状シート32と平板状シート33とを接合して得た部材を複数枚積層して接着する。この場合も耐水性の高い樹脂系の接着剤による接着が好ましい。そして、波板状シート32と平板状シート33とを接合して得た部材を積層してできたブロックを孔部31の貫通方向と平行に適当な大きさに切断し、孔部31の貫通方向と垂直に適切な厚さにスライスすることにより、コルゲートハニカム構造の液透過パネル3が完成する。完成したコルゲートハニカム構造の液透過パネル3は、波板状シート32と平板状シート33とに囲まれる孔部31を有する。
【0051】
<液透過パネルの消臭性>
液透過パネル3の消臭性については、後述する実施例に記載の方法で、測定した場合の20分経過後の残存アンモニア濃度が、5.0×10−4容量%(5ppm)以下であることが好ましく、1.0×10−4容量%(1ppm)以下であることがより好ましい。かかる消臭性を有する使い捨て液透過パネル3を用いることにより、動物用システムトイレにおいて、排泄物収容部2から立ち上る悪臭を抑制する効果を得ることができる。
【0052】
<液透過パネルの液透過率及び吸水性>
液透過パネル3の液透過率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましい。かかる液透過率の使い捨て液透過パネル3を用いることにより、排泄後の液透過パネル3への尿の付着を低減でき、内部での尿の拡散や、踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。液透過パネル3の液透過率は後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0053】
液透過パネル3は、10〜50%/min、より好ましくは15〜40%/minの吸水性を有する。かかる吸水性の液透過パネル3を用いることにより、排泄物の大部分が透過した後に少量付着する排泄物を液透過パネル3に吸収させることができ足濡れを抑制することができる。液透過パネル3の吸水性が高すぎると排泄物が透過する最中に多量に液透過パネル3に吸収されてしまい、動物が排泄した個所を踏みつけることによる排泄物の染み出しにより足濡れが起こりやすくなる。液透過パネル3の吸水性が低すぎると、付着した排泄物が液状で液透過パネル3の表面に残存してしまい足濡れが起こりやすくなる。液透過パネル3の吸水性は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0054】
動物用システムトイレに用いる液透過パネル3を係る構成とすることにより、液透過パネル3により尿臭等の消臭ができるので、例えばペットシート等の吸液シート6をある程度長期に渡って使用し続けた場合であっても、室内に悪臭が広がることなく快適に動物用システムトイレ1の使用を継続することができる。
【0055】
また、排泄物の大部分を液透過パネル3を通じて排泄物収容部21へ透過させ、かつ、液透過パネル3に付着する少量の排泄物を吸収させることが出来るので、排泄物による足濡れを顕著に抑制することが可能となる。また、上記従来技術の記載のように、液透過パネル3は動物の足の裏が直接触れる部分を濡らさないということが望まれるが、本発明によれば、排泄物が液透過パネル3にて殆ど透過し、かつ液透過パネル3に残った排泄物を殆ど吸収することで、同じ場所でも繰り返し排泄することが可能となる。なお、液透過パネル3は上部容器4に対して着脱可能に構成されているので、尿の吸収や大便の詰まりにより汚染されても容易に交換することができ、動物用システムトイレ1の清掃作業が非常に容易である。
【0056】
また、動物用システムトイレ1を、粒状物を用いることなく液透過パネル3を含んで構成し、この液透過パネル3を、波板状シート32と平板状シート33とを交互に接合して連続的に構成した。これにより、動物用システムトイレ1を犬に適用した場合であっても、犬が粒状物を誤って食べてしまったり、粒状物を脚で蹴って飛び散らしてしまったりしないので、この動物用システムトイレを犬に好適に適用できる。また、動物用システムトイレ1を動物が使用した場合に、液透過パネル3が粒状物のように細かく分散しないので、動物用システムトイレ1の周囲を清潔に保てる。
【0057】
更に、液透過パネル3と排泄物収容部21の間には空間5が形成されている。このため、大量の排尿があった場合でも、尿は液透過パネル3の孔部31を通過して裏面側の表面で拡散し、その後に吸液シート6で吸収される。すなわち、空間5によって尿が戻り孔部31がオーバーフローして液透過パネル3の表面側へ残ることを効果的に防止する。これにより上記の足濡れの発生が抑制される。
【0058】
本発明の動物用システムトイレ1は、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、排泄容器2の上部に液透過パネル3表面での排泄物の飛散による動物用システムトイレ1の周囲の汚染を防止するために、所望の形状のフードを設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態に係る動物用システムトイレ1において、液透過パネル3を構成する吸水性を有する液透過パネル3の波板状シート32は曲線状のシートで構成されているが、波板状シート32はジグザグに折り曲げられたシートにより構成されてもよい。また孔部31の開口部の形状は、これらに限らず例えば六角形であってもよいし、円形であってもよい。開口部の大きさが前述した所定の範囲であり、厚さ方向に貫通する孔部であれば、任意の形状を適宜選択することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る動物用システムトイレ1において、支持部41は格子状の多孔板に変えて、円形の開口部が規則的に設けられたパンチングプレート、平行してスリットが多数設けられた多孔板、網状の板等に変更されてもよい。
【0061】
本発明の動物用システムトイレ1は、犬、猫、兎等のペットとして飼育される動物用のトイレとして使用でき、特に室内で飼育される犬用のトイレとして好適に使用できる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
<実施例1、比較例1>
以下に記す方法に従い、下記の通り、硫酸アルミニウムを含む酸性紙製液透過パネル材料、硫酸アルミニウムを含まない中性紙製液透過パネル材料について、消臭性試験として、アンモニアガス吸着試験を行った。試験の結果を表1に記す。
【0064】
(液透過パネル材料)
紙製液透過パネル(実施例1):波板状シート32として王子板紙(株)より入手可能なONBS耐水原紙(坪量180g/m)を使用し、平板状シート33として王子板紙(株)より入手可能なONBS耐水原紙(120g/m)を使用し、硫酸アルミニウムを約0.2重量%(2000ppm)含むAフルート段ボールを、図5のようなコルゲートハニカム構造に加工したもので、孔部31の平均面積は16mm/個のものを用いた。
紙製液透過パネル(比較例1):硫酸アルミニウムを含まないろ紙(中性紙)を用いた。
【0065】
〔消臭性試験〕
試料3.2gをテドラーバッグに入れ、100ppmに濃度調整したアンモニアガス1.0Lを封入し、経過時間ごとのガス濃度を北川式検知管で測定した。なお、アンモニアガスを人の鼻で感知できるのは濃度が1.5ppm以上のときである。
【0066】
【表1】

【0067】
表1より、比較例1の硫酸アルミニウムを含まない中性紙では、消臭性能は実施例1より大幅に劣り、実用において充分な消臭性能はないことが分かる。一方、実施例1の硫酸アルミニウムを含む酸性紙においては、優れたアンモニア消臭性能があり悪臭を抑制できることが分かる。
【0068】
後述する、参考例、実施例2、実施例3、及び比較例2において、人工尿は以下の組成のものを用いた。
〔人工尿組成〕
尿素 400g
塩化ナトリウム 160g
硫酸マグネシウム(7水和物) 16g
塩化カルシウム(2水和物) 6g
以上を合計20Lになるように水で調整する。
調整液に、青色1号を2g加え着色する。
【0069】
<参考例>
下記の方法により、プラスチック製のスノコ上に尿を排泄した場合の足濡れによる室内の汚染を再現する試験を行った。
【0070】
〔足濡れ汚染試験方法〕
プラスチック製のスノコは以下のものを用いた。
プラスチック製スノコ:メッシュトレイ(ポリプロピレン製、開口部形状:縦6mm×横6mm、横方向桟太さ3.5mm、縦方向桟太さ3.5mm)
【0071】
スノコ上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側にまんべんなく30mlの人工尿を滴下した。30分後、直径18mmのウレタン製の半球をスノコに残った水滴に押し当て、半球をろ紙(JIS P3801に定められる2種)上にスタンプした。次いでろ紙上の人工尿の跡の最も大きな直径を測定した。同様の試験を、スノコ上に3箇所(A〜C)において、1箇所あたり5回行った。足濡れ汚染の測定結果を表2に記す。
【0072】
【表2】

【0073】
参考例の試験により、プラスチック製のスノコ上で動物が排泄するとき、1回の尿の排泄量を30mlと仮定した場合では、床面に直径11.43mm程度の尿による汚染跡が形成されることが分かった。このように、従来の動物用トイレでは尿による足濡れによって室内の汚染が生じていることが分かった。
【0074】
<実施例2、実施例3、及び比較例2>
以下に記す方法に従い、下記の紙製液透過パネル材料、不織布性液透過パネル材料、及びプラスチック製スノコについて、それぞれ、5回ずつ、足濡れ試験、吸水性試験、液透過率試験を行った。液透過率試験の結果を表3に、吸水性試験の結果を表4に、足濡れ性試験の結果を表5にそれぞれ記す。
【0075】
(液透過パネル材料)
紙製液透過パネル(実施例2):ニューレンコートを原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲート構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積16mm/個。
不織布性液透過パネル(実施例3):活性炭を含有したポリエステル繊維を使用した脱臭紙を原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲートハニカム構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積10.5mm/個、パラフィン系撥水剤4.8%添加。
プラスチック製スノコ(比較例2):メッシュトレイ(ポリプロピレン製、開口部形状:縦6mm×横6mm、横方向桟太さ3.5mm、縦方向桟太さ3.5mm)
【0076】
〔液透過率試験〕
あらかじめ重量(A)を測定された受け皿を、液透過率を測定する試料の下部に置く。人工尿約30mlを測りとり人工尿の重量(B)を測定する。試料上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側に人工尿をまんべんなく滴下する。試料から人工尿の液滴が落下しなくなった時点で人工尿の入った受け皿の重量(C)を測定する。液透過率の値を下式に基づいて算出する。
【0077】
(液透過率計算式)
液透過率(%)=(重量(C)−重量(A))÷重量(B)×100
【0078】
〔吸水性試験〕
使い捨て液透過パネル3の材料を5cm×5cmにカットした試料の重量(A)を測定する。カットされた試料を1分間、人工尿に浸漬する。1分間浸漬後、試料を引き上げ、表面に付着した人工尿を拭き取った後、各試料の重量(B)を測定する。吸水率の値を下式に基づいて算出する。
【0079】
(吸水性計算式)
吸水性(%/min)=(重量(B)−重量(A))÷重量(A)×100
【0080】
〔足濡れ性試験〕
使い捨て液透過パネル3の材料の上に内径60mmの円筒を置き、その内側に30mlの人工尿をまんべんなく滴下する。人工尿の滴下後、円筒を取り除き、30分間放置する。10cm×10cmのろ紙(JIS P3801に定められる2種)の重量(A)を測定する。30分後、液透過パネル3の材料の人工尿を滴下した箇所の上に10cm×10cmのろ紙を載せ、5秒間静置する。5秒後、ろ紙を取り外し、ろ紙の重量(B)を測定する。足濡れ性の試験結果を下式に基づいて算出する。
【0081】
(足濡れ性計算式)
足濡れ性(g)=重量(B)−重量(A)
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
比較例2より、プラチック製のスノコが、人工尿を良好に透過すること、及び、透過しなかった人工尿は全く吸収されないことが表3及び表4より分かる。このため、表5から分かる通り、足濡れ性試験において、スノコ上に残存した人工尿が多量にろ紙に付着する結果となった。従って、プラスチック製のスノコ上で排泄を行う従来の動物用トイレでは足濡れは改善されないことが分かる。
【0086】
一方、紙や不織布等からなるコルゲート形状のパネルからなる液透過パネル3を用いた実施例2及び実施例3では、液透過パネル3が優れた液透過性及び吸水性を示すことが分かった。このため、実施例2及び実施例3の液透過パネル3を用いれば、人工尿の大分部分が液透過パネル3を透過し、僅かに液透過パネル3上に残存する人工尿は液透過パネル3に吸収されるため、足濡れ性試験において表5に示されるようにろ紙には殆ど人工尿が付着しないことが分かった。
【符号の説明】
【0087】
1 動物用システムトイレ
2 排泄容器
21 排泄物収容部
3 液透過パネル
31 孔部
32 波板状シート
33 平板状シート
4 上部容器
41 支持部
5 空間
6 吸液シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性及び液透過性を有する使い捨ての動物用トイレ用の液透過パネルであって、
硫酸アルミニウムを含む紙で構成されることを特徴とする液透過パネル。
【請求項2】
前記紙は、サイズ剤と硫酸アルミニウムとを含む酸性紙である請求項1記載の液透過パネル。
【請求項3】
前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、液が前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙である請求項1又は2記載の液透過パネル。
【請求項4】
前記液透過パネルにおける硫酸アルミニウムの含有量が、硫酸アルミニウム換算で、0.05重量%以上0.3重量%以下である請求項1から3いずれか記載の液透過パネル。
【請求項5】
排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間に着脱可能に配置される請求項1から4いずれか記載の液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5441(P2012−5441A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145697(P2010−145697)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】