説明

液面検知装置

【課題】試料容器が帯電しても静電ノイズに起因した液面の誤検知を回避可能な液面検知装置を提供すること。
【解決手段】容器に保持された検体又は試薬を含む液体試料を分注するプローブ3と容器6との間における静電容量の変化を検知し、検知した信号に基づいて液体試料の液面にプローブ下端が接触したか否かを判定する液面検知装置1。電気絶縁性を有する筒体からなり、プローブ下端を筒体の下部開口端4dよりも内側に保持するカバー部材4がプローブ3の外側に配置されている。カバー部材4は、プローブ3の軸方向に沿って移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置や分注装置は、分注操作に伴うコンタミネーションを回避するため、検体や試薬を含む液体試料を分注する分注プローブと前記液体試料を保持した試料容器との間の静電容量の変化に基づいて液面を検知する静電容量式の液面検知装置を使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−271319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記自動分析装置等は、合成樹脂からなる構成部分が多く静電気を帯電し易いため、湿度が低いと液体試料を保持した試料容器に静電気が帯電し、分注ノズルが液面に接する前に静電気が分注ノズルに放電することがある。このため、従来の液面検知装置は、上記静電気の放電に起因した静電ノイズにより液面を誤検知することがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試料容器が帯電しても静電ノイズに起因した液面の誤検知を回避可能な液面検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る液面検知装置は、容器に保持された検体又は試薬を含む液体試料を分注するプローブと前記容器との間における静電容量の変化を検知し、検知した信号に基づいて前記液体試料の液面に前記プローブ下端が接触したか否かを判定する液面検知装置であって、電気絶縁性を有する筒体からなり、前記プローブ下端を当該筒体の下部開口端よりも内側に保持するカバー部材が前記プローブの外側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る液面検知装置は、上記の発明において、前記カバー部材は、前記プローブの軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る液面検知装置は、上記の発明において、前記カバー部材は、外方へ延出する延出部が下端に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る液面検知装置は、上記の発明において、前記カバー部材は、前記液体試料よりも比重が小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる液面検知装置は、電気絶縁性を有する筒体からなり、プローブ下端を当該筒体の下部開口端よりも内側に保持するカバー部材をプローブの外側に配置したので、試料容器が帯電しても試料容器からプローブへ放電し難くなり、静電ノイズに起因した液面の誤検知を回避することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の液面検知装置の実施の形態1を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1に係る液面検知装置の概略構成を示す図である。
【0012】
液面検知装置1は、図1に示すように、分注装置或いは自動分析装置のアーム2に保持されたプローブ3によってサンプルカップ6内の血液等の検体6aを検体容器に分注する際に使用され、検体6aを分注する際にプローブ3とサンプルカップ6との間における静電容量の変化に基づいてプローブ3が検体6aの液面に接触したか否かを検知する。液面検知装置1は、発振回路11、微分回路12及び判定回路18を備えている。
【0013】
アーム2は、制御部19に制御された駆動部9によって駆動され、プローブ3とカバー部材4とを支持した状態で上下方向に昇降すると共に、水平面内を回動する。プローブ3は、ステンレス等の導電性材料から成形され、アーム2の昇降作動並びに水平面内の回動によって分注位置へ移動され、制御部19の制御の下にサンプルカップ6内の検体6aを吸引し、吸引した検体6aを反応容器に吐出する。プローブ3は、カバー部材4が外側に配置されており、リード線5によって微分回路12と接続されている。
【0014】
カバー部材4は、検体6aよりも比重の小さい電気絶縁性を有する円筒状の部材であり、本体4aの上下にそれぞれ半径方向外方へ延出する上フランジ4bと下フランジ4cが設けられている。カバー部材4は、プローブ3の外周にプローブ3を覆うように本体4aを同心円上に配置し、上フランジ4bをアーム2の上面に係止することにより、本体4aがプローブ3に沿って浮動自在にアーム2に支持されている。これにより、カバー部材4は、下フランジ4cが検体6a接触するまでプローブ3の下端をカバー部材4の下部開口端4dよりも内側に保持している。ここで、サンプルカップ6は、接地された金属板7が下部近傍に配置されている。
【0015】
発振回路11は、制御部19の制御の下に正弦波の電気信号を発振し、発振した電気信号を微分回路12へ出力する。このとき、発振回路11は、矩形波の電気信号を発振してもよい。
【0016】
微分回路12は、抵抗13,14、コンデンサ15,16及びオペアンプ17を有しており、プローブ3が液面に非接触の際のプローブ3とサンプルカップ6との間の静電容量値の下で発振回路11が発振する正弦波の周波数Focにおいて感度(=出力電圧)が最大になるように調節されている。
【0017】
判定回路18は、微分回路12が出力する出力電圧に基づいてプローブ3が液面に接触しているか否かを判定し、判定結果を制御部19へ出力する。ここで、プローブ3とサンプルカップ6との間の静電容量は、プローブ3が液面に接触している状態と、非接触の状態とでは異なっている。このため、微分回路12は、図2−1に示すように、非接触状態の静電容量値の下で発振回路11の周波数Focのときに感度(=出力電圧)が最大になるように調節しておく。すると、微分回路12は、接触状態の静電容量値の下では、図2−2に示すように、発振回路11の周波数Focであっても非接触状態の静電容量値の場合に比べて感度(=出力電圧)が低下してしまう。従って、発振回路11が正弦波の電気信号を発振する場合、非接触状態の静電容量値の下では、微分回路12は、図3−1に示すように振幅A1の出力電圧(Vout)を判定回路18に出力する。これに対して、接触状態の静電容量値の下では感度(=出力電圧)が低下するため、微分回路12の出力電圧(Vout)は、図3−2に示すように振幅A2が振幅A1よりも小さくなる。従って、判定回路18は、微分回路12から出力される出力電圧(Vout)の値の相違に基づいてプローブ3が液面に接触しているか否かを判定することができる。
【0018】
以上のように構成される液面検知装置1は、制御部19による制御の下にアーム2がプローブ3とカバー部材4を支持した状態で分注位置に回動した後、アーム2が下降してプローブ3が下方に配置されたサンプルカップ6の検体6a中に挿入され、検体6aを吸引する。このとき、カバー部材4は、検体6aよりも比重が小さく、プローブ3に沿って浮動自在にアーム2に支持されている。このため、カバー部材4は、図4に示すように、下端の下フランジ4cが検体6aの液面に接触すると、本体4aがプローブ3に沿って浮動可能となる。従って、アーム2が、更に下降すると、図5に示すように、下フランジ4cが検体6aの液面に接触した状態で、プローブ3は、下端が検体6aを吸引可能な深さまで検体6a内に挿入される。そして、検体6a内に挿入され状態で、プローブ3が検体6aを吸引すると、アーム2が上昇した後、水平方向に回動し、吸引した検体6aが反応容器に吐出される。反応容器に検体6aを吐出したプローブ3は、カバー部材4と共に洗浄部へ搬送されて洗浄された後、新たな検体の分注に供される。
【0019】
この一連の分注動作に際し、プローブ3は、下フランジ4cが検体6aの液面に接触するまで、図4に示すように、外側に配置したカバー部材4によって下端が下部開口端4dよりも内側に保持されている。従って、プローブ3の外側にカバー部材4が配置されていない場合、液面検知装置1は、サンプルカップ6に帯電した静電気がプローブ3の下端へ放電されるが、プローブ3の外側にカバー部材4を配置し、プローブ3の下端を下部開口端4dよりも内側に保持したことにより、サンプルカップ6からプローブ3下端へ静電気が放電し難くなる。このため、液面検知装置1は、放電に起因したノイズ信号が微分回路12に流れることが抑えられる。
【0020】
そして、下フランジ4cが検体6aの液面に接触後、プローブ3下端が検体6aの液面に接触することによって生ずる微分回路12から出力される出力電圧(Vout)の値の相違に基づき、プローブ3が液面に接触したか否かを判定回路18が判定する。従って、液面検知装置1は、検体6aの液面を誤検知することがなく、プローブ3の下端が検体6aの液面に接触しているか否かを正確に検知することができる。
【0021】
ここで、発振回路11が矩形波の電気信号を発振する場合、微分回路12の出力電圧(Vout)は、プローブ3が液面に接触している状態と非接触の状態とで振幅の相違が生じる。このため、判定回路18は、この振幅の相違によってもプローブ3が液面に接触しているか否かを判定することができる。また、液面検知装置1は、微分回路12から出力される出力電圧(Vout)の値の相違に基づいてプローブ3が液面に接触しているか否かを判定回路18によって判定したが、微分回路12から出力される出力信号の位相変化によってもプローブ3が液面に接触しているか否かを検知することができる。
【0022】
(実施の形態2)
次に、本発明の液面検知装置の実施の形態2について説明する。実施の形態1の液面検知装置は、検体6aよりも比重が小さく、上フランジ4bと下フランジ4cとを有し、本体4aがプローブ3に沿って浮動自在なカバー部材4を使用した。これに対し、実施の形態2の液面検知装置は、アーム2に固定され、下フランジを有さないカバー部材8を使用している。図6は、実施の形態2に係る液面検知装置の概略構成を示す図である。図6に示す液面検知装置20は、実施の形態1の液面検知装置1と同一の構成部分に同一の符号を付している。
【0023】
液面検知装置20は、図6に示すように、プローブ3の外側に配置されるカバー部材8がアーム2に固定されている。カバー部材8は、電気絶縁性を有し、本体8aの上端がアーム2の下面に固定され、プローブ3の下端を下部開口端8bよりも内側に保持している。ここで、カバー部材8は、アーム2が下降して下部開口端8bが検体6aの液面に接触したときに、内部が閉塞されることがないよう、アーム2に上下方向に貫通する空気孔2aが設けられている。
【0024】
液面検知装置20は、プローブ3の下端を下部開口端8bよりも内側に保持してプローブ3の外側に配置されるカバー部材8がアーム2に固定されている。このため、一連の分注動作に際し、プローブ3は、図7に示すように、カバー部材8の下部開口端8bが検体6aの液面に接触するまで下端が下部開口端8bよりも内側に保持され、カバー部材8が外側に配置されている。従って、液面検知装置20は、サンプルカップ6に静電気が帯電しても、プローブ3の外側にカバー部材8を配置し、プローブ3の下端を下部開口端8bよりも内側に保持したことにより、サンプルカップ6からプローブ3下端へ放電し難くなる。このため、液面検知装置20は、放電に起因したノイズ信号が微分回路12に流れることが抑えられる。
【0025】
そして、下部開口端8bが検体6aの液面に接触後、プローブ3下端が検体6aの液面に接触することによって生ずる微分回路12から出力される出力電圧(Vout)の値の相違に基づき、プローブ3が液面に接触したか否かを判定回路18が判定する。このため、液面検知装置1は、検体6aの液面を誤検知することがなく、プローブ3の下端が検体6aの液面に接触しているか否かを正確に検知することができる。
【0026】
ここで、図7に示すように、下部開口端8bが検体6aの液面に接触した後は、アーム2の下降に伴ってカバー部材8内の空気が空気孔2aを通って外部へ抜ける。このため、液面検知装置20は、図8に示すように、プローブ3の下端が検体6aを吸引可能な深さまで検体6a内に挿入されるが、カバー部材8内の空気が空気孔2aを通って外部へ抜けるため、検体6aの液面が上昇することはない。従って、液面検知装置20は、洗浄に際してプローブ3やカバー部材8の下端を洗浄する範囲を広げる必要がない。
【0027】
なお、実施の形態1,2の液面検知装置は、液体試料として血液等の検体の液面を検知する場合について説明したが、液体試料は試薬であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる液面検知装置は、試料容器が帯電しても静電ノイズに起因した液面の誤検知を回避するのに有用であり、特に、分注装置や自動分析装置に搭載して使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係る液面検知装置の概略構成を示す図である。
【図2−1】プローブが液面に非接触の状態の下で発振回路の周波数のときに最大となるように調節した微分回路の周波数と出力電圧との関係を示す周波数特性図である。
【図2−2】プローブが液面に接触した状態の図2−1の周波数特性を有する微分回路の周波数特性図である。
【図3−1】プローブが液面に非接触の状態における図2−1の周波数特性を有する微分回路の出力特性図である。
【図3−2】プローブが液面に接触した状態の図2−1の周波数特性を有する微分回路の周波数特性図である。
【図4】プローブ下端を下部開口端よりも内側に保持してプローブの外周を覆うカバー部材の下端が液体試料の液面に接触した状態を示す図である。
【図5】図4に示す状態からプローブ下端が液体試料中に挿入された状態を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る液面検知装置の概略構成を示す図である。
【図7】プローブ下端を下部開口端よりも内側に保持してプローブの外周を覆うカバー部材の下端が液体試料の液面に接触した状態を示す図である。
【図8】図7に示す状態からプローブ下端及びカバー部材の下端が液体試料中に挿入された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 液面検知装置
2 アーム
3 プローブ
4 カバー部材
4a 本体
4b 上フランジ
4c 下フランジ
4d 下部開口端
5 リード線
6 サンプルカップ
6a 検体
7 金属板
8 カバー部材
8a 本体
8b 下部開口端
9 駆動部
11 発振回路
12 微分回路
13,14 抵抗
15,16 コンデンサ
17 オペアンプ
18 判定回路
19 制御部
20 液面検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に保持された検体又は試薬を含む液体試料を分注するプローブと前記容器との間における静電容量の変化を検知し、検知した信号に基づいて前記液体試料の液面に前記プローブ下端が接触したか否かを判定する液面検知装置であって、
電気絶縁性を有する筒体からなり、前記プローブ下端を当該筒体の下部開口端よりも内側に保持するカバー部材が前記プローブの外側に配置されていることを特徴とする液面検知装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記プローブの軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の液面検知装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、外方へ延出する延出部が下端に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液面検知装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記液体試料よりも比重が小さいことを特徴とする請求項2又は3に記載の液面検知装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−315971(P2007−315971A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147313(P2006−147313)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】