説明

混合カートリッジおよび検体検査装置

【課題】ごく少量の検体および反応試薬で高精度の検査を可能にする。
【解決手段】検体と検体の検査すべき項目である測定項目に対応する第1試薬とを混合する混合カートリッジ200であって、検体および第1試薬のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する微細流路1を形成する部材と、検体を微細流路1に供給する検体タンク5および検体ポンプ15と、第1試薬を微細流路1に供給する第1試薬タンク4および第1試薬ポンプ14と、微細流路1に連通し、微細流路1を流通する溶液から溶液の一部を毛細管現象により分離する第1微細廃棄流路6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と反応試薬を混合する混合カートリッジ、および該混合カートリッジで混合された混合溶液を用いて光学的に検体を検査する検体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体液中を検体とし、検体中に含まれるイオン、ガス成分および生化学成分などの種々の生体関連物質を測定するための検体検査装置がある。従来の検体検査装置は、大病院などの血液センターに設置され最大数百種類の項目を測定できる比較的大型のものが主流である。
【0003】
近年、小型の検体検査装置の開発要求が高まり、極少量の検体から生体関連物質を高感度に検出する機構の開発が求められている。
【0004】
このような技術の一つとして、微細流路に検体と試薬を混合した混合溶液を供給し、光学的に検体を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、2つの試薬をY字流路により混合する場合、各試薬を同時に送液したとしても、混合液の先頭部分では混合比率が安定しないため、この先頭部分を切り捨てて、混合比率が安定してから混合溶液を次工程へ送液するようにすることが望ましい旨が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−217818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1には、混合液の先頭部分(混合比率が安定しない部分)をどのように切り捨てるのかについての具体的な手法の記載はなく、ごく少量の検体で高精度の検査ができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ごく少量の検体および反応試薬で高精度の検査が可能な混合カートリッジおよび検体検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である測定項目に対応する第2溶液とを混合する混合カートリッジであって、前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、前記流路に連通し、前記流路を流通する前記溶液から前記溶液の一部を毛細管現象により分離する分離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である測定項目に対応する第2溶液とを混合した混合溶液を用いて前記検体の検査を行う検体検査装置であって、前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、前記測定項目を選択する選択手段と、前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、前記流路に連通し、前記流路を流通する前記溶液から前記溶液の一部を毛細管現象により分離する分離手段と、前記流路内の前記溶液の一部が分離された混合溶液に光を照射して前記検体の検査を行う検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である第1測定項目に対応する第2溶液とを混合した第1混合溶液を用いて前記検体の検査を行う検体検査装置であって、前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、前記第1測定項目を選択する選択手段と、前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、前記流路における前記第1溶液と前記第2溶液とが合流する位置である第1合流位置より下流位置に連通し、前記第1合流位置で混合された前記第1混合溶液から、前記第1測定項目に定められた前記第1溶液と前記第2溶液の混合比率と異なる比率で混合された前記第1混合溶液の一部の溶液である第1不確定混合溶液を、毛細管現象により分離する分離手段と、前記流路内の前記第1不確定混合溶液が分離された第1混合溶液に光を照射して前記検体の検査を行う検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検体の検査すべき測定項目に対応して、流路を流通する溶液から適切な量の溶液の一部を毛細管現象により分離することによって、少量の検体及び反応試薬で精度の高い検査が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる混合カートリッジおよび検体検査装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
ごく少量の検体と反応試薬を混合する混合カートリッジ、および該混合カートリッジを用いて検体を検査する検体検査装置においては、溶液が流通する微細流路内で検体と反応試薬との安定した混合溶液を得ることが重要になる。しかしながら、検体といろいろな反応試薬とを混合した混合溶液を得ようとすると、微細流路内で混合溶液が均一に混合されて安定化するまでに、測定項目(測定に使用する反応試薬またはその混合比率、あるいは試薬などを供給するポンプの動作遅れなど)に応じて大きな差が生じてしまう。すなわち、測定項目ごとに、安定した混合溶液を得る前の不安定で不確定な混合溶液部分の量が、測定項目に応じてあるいは溶液の混合比率に応じて異なるため、それぞれに応じて不確定な混合溶液部分も異なることになる。従って、以下の実施の形態では、測定項目に対応させて、混合溶液から適切な量の不確定な混合溶液部分(混合溶液の一部)を分離可能とした。
【0015】
図1は、実施の形態1にかかる検体検査装置500の構成を概略的に示すブロック図である。検体検査装置500は、検体と反応試薬とを混合させる混合カートリッジ200と、混合カートリッジ200により混合された混合溶液を光学的に検査する光学検査部300と、混合カートリッジ200および光学検査部300の動作を制御する制御部400と、を備えている。なお、本実施の形態にかかる検体検査装置500では、検査を行う検体ごとに混合カートリッジ200を使い捨てる使用形態が考えられる。これは、医療廃棄物に該当する廃棄部分から検体等が外に漏れることで、安全衛生に支障を生じないようにするためである。
【0016】
図2は、実施の形態1にかかる混合カートリッジ200の構成を示した模式図である。図2に示すように、混合カートリッジ200は一部に光学的な検査を行うための第1測光セル11および第2測光セル21を具備し、その内部に微細流路1が形成されている。微細流路1には、第1試薬タンク4と、検体タンク5と、オイルタンク7と、第2試薬タンク24と、第1微細廃棄流路6と、第2微細廃棄流路16とが連通している。各タンクは、微細流路1の一部である微細流路1a、微細流路1b、微細流路1c、および微細流路1eにより微細流路1に連通している。また、微細流路1、第1微細廃棄流路6、および第2微細廃棄流路16は、混合カートリッジ200に形成されている。
【0017】
混合カートリッジ200では、第1試薬タンク4から送液された第1試薬と検体タンク5から送液された検体とが混合され、その混合された混合溶液が第1測光セル11に向かって流通していく。そして、第1測光セル11において、第1試薬と検体との混合溶液により検体の検査が行われる。その後さらに、第1試薬と検体との混合溶液に第2試薬が混合され、その混合された混合溶液が第2測光セル21に向かって流通していく。そして、第2測光セル21において、第1試薬と検体と第2試薬との混合溶液により検体の検査が行われる。ここで、本実施の形態の混合カートリッジ200の微細流路1では、各タンクにより検体や反応試薬等の溶液が送液される送液口付近より、混合溶液が排出される第2測光セル21側の排出口が広くなっている。
【0018】
それぞれ、第1試薬タンク4には第1試薬ポンプ14が、検体タンク5には検体ポンプ15が、オイルタンク7にはオイルポンプ17が、第2試薬タンク24には第2試薬ポンプ34が配置されている。第1試薬ポンプ14、検体ポンプ15、オイルポンプ17、および第2試薬ポンプ34は、シリンジタイプのポンプであって、対応するタンクに貯蔵してある溶液を押し出すことで送液して微細流路1へ供給する。
【0019】
第1試薬タンク4に連通する微細流路1bと、検体タンク5に連通する微細流路1aと、オイルタンク7に連通する微細流路1cとは、微細流路1の同じ地点である合流地点41で合流するように配置されており、その合流地点41で第1試薬と検体とオイルが微細流路1に合流するようになっている。そして、第1試薬と検体とオイルの合流地点41より溶液の流れの下流位置であって、後述する第1磁石19の配置位置より溶液の流れの上流位置である微細流路1のうち、合流地点41と第1磁石19の配置位置との中間位置付近に第1微細廃棄流路6が分岐して連通している。第1微細廃棄流路6は、微細流路1の径より小さい径を有して形成されており、微細流路1を流通する検体と第1試薬とを混合した混合溶液から該混合溶液の一部を毛細管現象により第1微細廃棄流路6内へ吸い上げることで、混合溶液から該混合溶液の一部を分離する。
【0020】
検体の検査が行われる第1測光セル11より上流側であって、第1微細廃棄流路6と微細流路1との分岐地点51より下流側の微細流路1内には、溶液の攪拌を行う攪拌部材である第1磁石19が配置されている。そして、微細流路1の外側の第1磁石19の周辺には第1攪拌制御部18が配置されている。この第1攪拌制御部18は1対の電磁石からなり、交互に電磁石に流す電流をON/OFFにさせることにより微細流路1内の第1磁石19を振動させて、検体と第1試薬との混合溶液を攪拌する。なお、本実施の形態では、攪拌部材として磁石(第1磁石19)を配して溶液を攪拌しているが、これに限定されることなく、強磁性を有する物質であれば他の部材を配してもよい。また、後述する第2磁石29についても同様である。
【0021】
第1磁石19より下流側には、光を照射して光学的な検査を行う第1測光セル11が設けられている。第1測光セル11は、特に検査誤差を引き起こさないように光の透過率の高い材質等を使用することが好ましい。第1測光セル11に達した混合溶液は、検体検査装置に組み込まれた光学検査部300(図1参照)によって検査される。
【0022】
第1測光セル11より下流側に、微細流路1へ合流するように連通した第2試薬タンク24が設けられ、第1試薬の場合と同様に第2試薬タンク24と微細流路1との合流地点42より下流位置であって、後述する第2磁石29の配置位置より上流位置である微細流路1のうち、合流地点42と第2磁石29との中間位置付近に、第2微細廃棄流路16が分岐して連通している。
【0023】
そして、第2微細廃棄流路16と微細流路1との分岐地点52より下流位置の微細流路1内には溶液の混合を行う第2磁石29が配置されている。微細流路1の外側の第2磁石29の周辺には、第1攪拌制御部18と同様の機構で第2磁石29を動作させる第2攪拌制御部28が配置されている。
【0024】
第2磁石29より下流側には、光を照射して光学的な検査を行う第2測光セル21が設けられている。第2測光セル21は、第1測光セル11同様に検査誤差を引き起こさないように光の透過率の高い材質等を使用することが好ましい。第2測光セル21に達した混合溶液は、検体検査装置に組み込まれた光学検査部300(図1参照)によって検査される。
【0025】
なお、本実施の形態の混合カートリッジ200とは、図2に示す各要素のうち、攪拌制御部18、28を除くすべての要素から構成されているものをいう。具体的には、本実施の形態の混合カートリッジ200は、微細流路1(微細流路1a、1b、1c、1eを含む)、第1測光セル11、第2測光セル21、第1試薬タンク4、検体タンク5、オイルタンク7、第2試薬タンク24、第1微細廃棄流路6、第2微細廃棄流路16で構成されている。また、必要に応じて、攪拌に必要な第1磁石19および第2磁石29を、混合カートリッジ200内の構成要素として含めてもよい。
【0026】
また、検体検査装置500の仕様の関係上、混合カートリッジ200の構成要素である検体、試薬およびオイルが充填されている各タンク(第1試薬タンク4、検体タンク5、オイルタンク7、および第2試薬タンク24)が混合カートリッジ200と必ずしも一体となった構成とすることなく、実際に使用する際にこれらタンクとタンク以外の他の構成要素とを組み合わせ、混合カートリッジとして機能するように構成させてもよい。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる混合カートリッジ200を備えた検体検査装置500の動作について説明する。検体タンク5内には、血液や尿などの生体液である検体を保持し、検体ポンプ15によって検体を押し出すことで微細流路1へと送液する。また、第1試薬タンク4内には検体の検査すべき項目である測定項目に対応した第1試薬(反応試薬)が選択的に保持されており第1試薬ポンプ14によって微細流路1へと送液される。測定項目に応じて反応試薬が2つ必要となる場合もあるため、第1試薬とは別の第2試薬が第2試薬タンク24内に保持され、第2試薬ポンプ34によって微細流路1内に送液することができる。第1試薬と検体とは微細流路1内の合流地点41で同時に供給されるように送液され、合流地点41で第1試薬と検体とが合流するとそれらの混合溶液が得られる。
【0028】
ところが、検体ポンプ15や第1試薬ポンプ14などのポンプの駆動動作は、動作信号を受け取ってから所定の流速を与える定常動作に達するまでに時間差が生じる。また、その時間差は、ポンプが与えようとする所定流速によってばらつきがある。
【0029】
ここで、ポンプの動作性能について説明する。図3−1は、シリンジポンプの定格流量を10μL/minとした場合のポンプの動作性能の一例を示すグラフである。また、図3−2は、シリンジポンプの定格流量を100μL/minとした場合のポンプの動作性能の一例を示すグラフである。横軸は駆動電気信号をポンプが受けてからの経過時間であり、縦軸はポンプが流体に与える流量を示したものである。
【0030】
送液ポンプはどのような種類であっても、駆動電気信号を受け取ってから動作が開始する時間あるいは動作し定格流量に達するまでに多少の時間差を生じる。ポンプが定格流量を与える定常動作に達するまでの時間は、その定格流量によって異なり、例えば、図3−1では約2秒であり、図3−2では約0.4秒となっている。従って、ポンプが定常動作に達するまでに送液された溶液流量の定量性を確保することはできない。
【0031】
検体を検査すべき測定項目が決まると、検体ポンプ15および第1試薬ポンプ14の定格流量を、所定の混合比率を満たすよう決定する。ポンプが、ある定格流量を与えようとし、定常動作に達するまでの時間およびそれまでに送液する溶液の量は、ポンプによって固有の値を有している。従って、本実施の形態のように、微細流路1を用いた連続送液により一定比率で検体と反応試薬を混合する方式では、検体ポンプ15および第1試薬ポンプ14の双方が定常動作に達する前に混合された溶液部分、および第2試薬ポンプ34が定常動作に達する前に混合された溶液部分は混合比率が不確定であり、測定に使用できないため微細流路1から分離する必要がある。なお、検体ポンプ15、第1試薬ポンプ14および第2試薬ポンプ34の駆動動作特性による、混合比率が安定化するまでの不確定な混合溶液(以下、「不確定混合溶液」という。)の量は測定項目によって決まる。
【0032】
ここで、検体と第1試薬とが合流して混合された不確定混合溶液が微細流路1を流通していく場合について、図を参照して説明する。図4−1、4−2、4−3は、不確定混合溶液が微細流路1内を流通していく場合の説明図である。図4−1は、検体と第1試薬とが混合される直前の状態の説明図である。図4−2は、検体と第1試薬とが混合され、不確定混合溶液αが微細流路1内に流通し始めた状態の説明図である。図4−3は、検体と第1試薬とが混合され、不確定混合溶液αの後から混合比率が安定した混合溶液βが微細流路1内に流通している状態の説明図である。図4−1に示すように、微細流路1aには検体タンク5からA方向に送液された検体が供給され、微細流路1bには第1試薬タンク4からB方向に送液された第1試薬が供給される。そして、検体と第1試薬とは合流地点41で合流する。なお、微細流路1cには検体と第1試薬を混合した後に、オイルタンク7からC方向にオイルが送液されることになる。
【0033】
そして、検体と第1試薬が合流し混合溶液となる場合、まずは、検体ポンプ15が定常動作に達するまでに送液された検体と、第1試薬ポンプ14が定常動作に達するまでに送液された第1試薬とが合流するため、図4−2に示すように、混合比率が不確定な不確定混合溶液αが微細流路1を流通していく。
【0034】
さらに、検体ポンプ15が定常動作に達した後に送液された検体と、第1試薬ポンプ14が定常動作に達した後に送液された第1試薬とが合流するため、図4−3に示すように、不確定混合溶液αの後に所望の混合比率の混合溶液βが微細流路1を流通していく。つまり、混合溶液βの進行方向の先頭側に不確定混合溶液αがある状態で検体と第1試薬との混合溶液βが第1測光セル11まで流通すると、不確定混合溶液αも検査の対象となってしまう。
【0035】
しかしながら、上述したように、検体ポンプ15および第1試薬ポンプ14双方が定常動作に至るまでに送液された不確定混合溶液は、混合割合が安定しないため測定に使用することができない。従って、不確定混合溶液を微細流路1から分離する必要がある。
【0036】
そこで、本実施の形態の混合カートリッジ200は、第1微細廃棄流路6内にこの不確定混合溶液を導入して微細流路1から分離する。すなわち、混合カートリッジ200では、不確定混合溶液が微細流路1と第1微細廃棄流路6との分岐地点51へ達すると、毛細管現象により第1微細廃棄流路6へと不確定混合溶液が吸い上げられる。
【0037】
ここで、検体と第1試薬とが合流した不確定混合溶液が分離される場合について、図を参照して説明する。図5−1、5−2、5−3は、不確定混合溶液が第1微細廃棄流路6に吸収されていく場合の説明図である。図5−1は、検体と第1試薬とが混合され、不確定混合溶液αが微細流路1内に流通し分岐地点51に達した状態の説明図である。図5−2は、不確定混合溶液αが第1微細廃棄流路6に吸収された状態の説明図である。図5−3は、不確定混合溶液αが第1微細廃棄流路6に吸収された後に、混合比率が安定した混合溶液βが微細流路1内に流通している状態の説明図である。図5−1では、図4−2と同様に、混合比率が不確定な不確定混合溶液αが微細流路1を流通していき、分岐地点51に達した状態である。この後、本実施の形態の混合カートリッジ200では、図5−2に示すように、不確定混合溶液αが第1微細廃棄流路6に吸い上げられていくことで不確定混合溶液αが微細流路1から分岐(分離)され、不確定混合溶液αの後からは所望の混合比率で混合された混合溶液βが流通してくる。
【0038】
そして、図5−3に示すように、不確定混合溶液αが第1微細廃棄流路6に保持されると、その後ろから流通してきた混合溶液βのみが微細流路1を流通していく。つまり、混合溶液βの進行方向の先頭側に不確定混合溶液αがない状態で検体と第1試薬との混合溶液βが第1測光セル11まで流通するため、不確定混合溶液αが検査の対象となってしまうことはない。
【0039】
この場合、第1微細廃棄流路6は不確定混合溶液を充分吸い上げられる容量に事前に設計しておく必要があるが、図3−1、3−2に例示したようにポンプの動作性能および反応試薬の混合比率により第1微細廃棄流路6の容量は設計可能である。なお、微細廃棄流路の設計値は特に限定されるものではなく、毛細管現象により不確定混合溶液を吸い上げ得るサイズであれば、その構造およびサイズは特に限定されるものではない。また、毛細管現象をより積極的に利用するために、微細廃棄流路内に親水処理などの処理を行ってもよい。このように、混合カートリッジ200では、不確定な混合比率の不確定混合溶液が第1微細廃棄流路6内へ導入されるため、微細流路1から分岐あるいは分離することが可能となる。
【0040】
図2に戻り、不確定混合溶液を取り除いた検体と第1試薬の混合溶液は、微細流路1内にある第1磁石19まで搬送される。第1磁石19は、第1攪拌制御部18によって微小運動することによって、検体と第1試薬とを攪拌し反応を促進させる。検体ポンプ15および第1試薬ポンプ14は所定の時間だけ駆動動作を行うと送液を止める。その後、オイルタンク7内のオイル(水と混合しない溶液であれば特に限定はされない)をオイルポンプ17によって微細流路1内に送液することで混合溶液を搬送する。微細流路1内に設けられた第1測光セル11を混合溶液が満たすまでオイルポンプ17の駆動によるオイル送液により搬送が行われる。
【0041】
光学的な手法による検査が終了すると、再びオイルポンプ17を駆動させ混合溶液を搬送させる。混合溶液が第2試薬タンク24まで達すると、第2試薬ポンプ34は第2試薬の送液を開始する。
【0042】
検体と第1試薬との混合時と同様に、検体と第1試薬とを混合した混合溶液と第2試薬との混合比率が不確定な混合溶液(不確定混合溶液)は微細流路1から第2微細廃棄流路16へと分離した後、第2磁石29および第2攪拌制御部28によって混合溶液を攪拌し混合を促進する。その後、微細流路1内に設けられた第2測光セル21を混合溶液が満たすと、再び光学的な手法による光学検査部300(図1参照)の検査が行われる。
【0043】
なお、測定項目によっては、第1試薬のみで検体検査が行われるものもあるため、第2試薬の混合に係る構成を具備していなくとも構わない。また、送液を行うポンプはシリンジポンプを使用したが、プランジャー方式、圧電方式、その他溶液を送液できるポンプであれば特に限定はされない。
【0044】
また、検体タンク5、第1微細廃棄流路6、第2微細廃棄流路16、第1磁石19、第2磁石29、および微細流路1を形成する混合カートリッジ200等の検体に接触する部分は特に、他の検体の混入による検査誤差を軽減するために、検体毎に入れ替える形態が考えられる。試薬タンク4、24およびオイルタンク7も検体毎に入れ替える構成にしてもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態では混合溶液の混合を行う攪拌に第1磁石19、第2磁石29、第1攪拌制御部18、第2攪拌制御部28を使用したが、その他の機構であってもよい。また、オイルポンプ17によって混合溶液を搬送したが、他の方法を用いても本実施の形態の効果を得ることができる。
【0046】
また、図2では、溶液を攪拌する第1磁石19を第1微細廃棄流路6の分岐地点51よりも下流側に配しているが、第1磁石19を第1微細廃棄流路6の分岐地点51よりも下流に配するか上流に配するかはどちらでも構わない。しかし、混合比率が不確定な溶液が攪拌を行う第1磁石19のある部分に達すると、検査に用いる混合溶液の混合比率に多少の誤差が生じ検査精度の低下につながるので、第1磁石19の上流に第1微細廃棄流路6との分岐地点51がある構成の方が望ましい。また、第2試薬を混合する際の構成に関しても同様である。
【0047】
図6は、制御部400の機能構成を示すブロック図である。なお、図2に対応する部分に同じ符号を付し、重複説明は一部省略する。図6に示すように、制御部400は、測定項目選択部100と、記憶部である測定項目データベース(以下DBと記載)2と、動作制御部3とを備えている。
【0048】
測定項目選択部100は、選択手段として機能するものであって、例えばキーボードなどから、検体のどの項目を検査するかを入力され、その信号を動作制御部3に出力する。測定項目DB2は、検体、第1試薬、第2試薬が測定項目に対応した混合比率で混合されるよう規定された定格流量、および送液を行う第1試薬ポンプ14と検体ポンプ15と第2試薬ポンプ34の駆動時間などが記憶されたメモリ等の記録媒体である。動作制御部3は、測定項目DB2に記憶された各種パラメータを呼び出し、そのパラメータに応じて送液ポンプおよび攪拌制御部の動作時間やタイミングなどの制御を行うものである。
【0049】
以下に、図6を参照して、送液ポンプの駆動動作の詳細について説明する。測定項目選択部100に測定項目が入力されると、動作制御部3にその信号が出力される。動作制御部3は、入力された測定項目に対応した定格流量および時間だけ第1試薬ポンプ14と検体ポンプ15が微細流路1への送液動作をするよう動作信号を送信する。第1試薬ポンプ14と検体ポンプ15は、合流地点41において検体および第1試薬が同時に合流するよう送液動作を開始し、それぞれ定格流量となるように制御する。第1試薬と検体とは微細流路1内の合流地点41で混合され混合溶液となる。
【0050】
図3−1、3−2で説明したように、第1試薬ポンプ14と検体ポンプ15の双方の駆動動作が一定となる前に送液された混合溶液の混合比率は不確定であり、微細流路1から分離する必要がある。また、混合比率が安定化するまでの不確定混合溶液の量は測定項目によって決まる。従って、測定項目に対応して第1微細廃棄流路6を設計する必要がある。測定項目に対応した廃棄容量の不確定混合溶液を第1微細廃棄流路6に導入することで、不確定混合溶液を効率的に微細流路1から分離することができる。不確定混合溶液が微細流路1からの第1微細廃棄流路6へ分離されると、第1試薬ポンプ14および検体ポンプ15の動作が定常状態になり、混合比率が一定となり測定が可能となる。動作制御部3は、混合比率が一定となった溶液が攪拌を行う第1磁石19部分まで達するタイミングで、第1攪拌制御部18を駆動させ、第1磁石19の振動により検体と第1試薬との攪拌を促進する。
【0051】
その後の検査に必要となる十分な量だけ検体および第1試薬が送液されると、第1試薬ポンプ14および検体ポンプ15が送液動作を止めるように、動作制御部3が制御する。第1試薬ポンプ14および検体ポンプ15の送液動作が止まると、動作制御部3は搬送用のオイルポンプ17に駆動動作信号を送る。オイルによって第1試薬と検体の混合溶液が第1測光セル11を満たすまで搬送される。
【0052】
第1攪拌制御部18は、搬送用のオイルの先端部が第1磁石19のある位置に達するまで第1磁石19の振動動作による攪拌を続け、搬送用オイルの先端部が第1磁石19のある位置に達すると、第1磁石19が振動を止めるよう制御する。測定項目に対応した攪拌動作を行うことによって、オイルと混合溶液とが不必要に混合されることを防ぐことができる。
【0053】
混合溶液の送液が終了し、第1測光セル11が混合溶液で満たされると、オイルポンプ17はオイルによる搬送を停止し、光学検査部300によって光学的な検査を行う。検査が終了すると、再びオイルポンプ17は微細流路1へのオイルの送液を開始する。
【0054】
第1試薬と検体の混合溶液が搬送され、動作制御部3は、入力された測定項目に対応した定格流量および時間だけ第2試薬ポンプ34が微細流路1へ送液動作をするように動作信号を送信する。第2試薬ポンプ34は合流地点42において、第1試薬と検体との混合溶液と第2試薬とが同時に合流するように送液動作を開始し、定格流量となるように制御する。第1試薬および検体の混合溶液と第2試薬とは微細流路1内の合流地点42で混合し混合溶液となる。
【0055】
オイルポンプ17は、第2試薬ポンプ34が送液動作を開始するときには定格流量を与える定常動作に達している。また、第2試薬ポンプ34は動作開始信号を受けてから定格流量を与える定常動作に達するまでに、その定格流量に応じた時間差を生じる。従って、第2試薬ポンプ34が定常動作に達するまでに送液された第1試薬と検体と第2試薬の混合溶液の混合比率は不確定である。測定項目に対応した廃棄容量の不確定混合溶液を第2微細廃棄流路16に導入することで、不確定混合溶液を効率的に微細流路1から分離することができる。
【0056】
第2試薬ポンプ34が定格動作に達すると、オイルポンプ17および第2試薬ポンプ34は送液動作を続ける。その後の検査に必要となる十分な量だけ検体および第2試薬が送液されると第2試薬ポンプ34は送液を止め、オイルポンプ17は駆動動作を続ける。第2攪拌制御部28により攪拌された混合溶液が第2測光セル21を満たすと、オイルポンプ17は駆動動作を止め、光学検査部300によって光学式の検査が行われる。測光が終了すると、本実施の形態にかかる検体検査装置500による検査は終了する。
【0057】
すべての測定項目に対するポンプの動作タイミングはすべて装置内の測定項目DB2に記憶されており、その動作タイミングに応じて各種ポンプを駆動動作させる機構について説明した。
【0058】
このように、実施の形態1にかかる検体検査装置500における混合カートリッジ200によれば、第1微細廃棄流路6および第2微細廃棄流路16を設けたことにより、測定項目に応じた量の不確定混合溶液を、微細流路1を流通する混合溶液から効率的に分離することができ、より少量の検体と反応試薬で高精度の検体の検査を行うことができる。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態1の混合カートリッジでは、微細流路に連通した微細廃棄流路が微細流路に流通する不確定混合溶液を分離する構成となっていた。以下の実施の形態2の混合カートリッジは、微細流路に連通した微細廃棄流路に、さらに液体を吸収するウィック材を充填させて微細流路に流通する不確定混合溶液を分離するものである。
【0060】
まず、検体検査装置の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する(図1参照)。図7は、実施の形態2にかかる混合カートリッジ201の構成を示した模式図である。図7に示す混合カートリッジ201では、実施の形態1の混合カートリッジ200における第1微細廃棄流路6および第2微細廃棄流路16の代わりに、第1微細廃棄流路26および第2微細廃棄流路36を配置したものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0061】
第1微細廃棄流路26は、微細流路1の第1試薬と検体とオイルの合流地点41より下流位置に分岐して連通している。図8は、第1微細廃棄流路26の詳細を示す説明図である。図8に示すように、第1微細廃棄流路26は、微細流路1の径より小さい径を有して形成されており、さらに、第1微細廃棄流路26の内部に不織布などのウィック性能を有するウィック材261を充填させ、ウィック材261の一端が微細流路1に接するように設置されている。
【0062】
これにより、検体と第1試薬とを混合した混合溶液が微細流路1とウィック材261を充填した第1微細廃棄流路26との分岐地点51を通過する際、微細流路1を流通する混合溶液から不確定混合溶液(混合溶液の一部)を毛細管現象によりウィック材261で吸収することで、実施の形態1と同様に、混合溶液から不確定混合溶液を分離する。なお、この場合、第1微細廃棄流路26およびウィック材261は不確定混合溶液を充分吸い上げられるように事前に設計しておく必要があるが、図3−1、3−2に例示したようにポンプの動作性能および反応試薬の混合比率により第1微細廃棄流路26のおよびウィック材261の設計は可能である。また、ウィック材261は、ウィック性能を有すること以外は特に限定される必要はない。
【0063】
第2微細廃棄流路36についても同様の構成となっており、ウィック材361が充填されている。また、本実施の形態の混合カートリッジ201を備えた検体検査装置500の動作については、実施の形態1と同様である。また、本実施の形態における第1微細廃棄流路26および第2微細廃棄流路36は、上述したように、微細流路1の径より小さい径を有して形成されているが、図7においては、第1微細廃棄流路26および第2微細廃棄流路36と微細経路1との縮尺は実際とは異なって表記されている。
【0064】
このように、実施の形態2にかかる検体検査装置500における混合カートリッジ201によれば、ウィック材261を充填した第1微細廃棄流路26およびウィック材361を充填した第2微細廃棄流路36を設けたことにより、測定項目に応じた量の不確定混合溶液を、微細流路1を流通する混合溶液から効率的に分離することができ、より少量の検体と反応試薬でより高精度の検体の検査を行うことができる。
【0065】
(実施の形態3)
実施の形態2の混合カートリッジでは、ウィック材を充填した微細廃棄流路を、微細流路における検体と反応試薬の合流地点よりも下流位置に設けた構成となっていた。以下の実施の形態3の混合カートリッジは、ウィック材を充填した微細廃棄流路を、微細流路における検体と反応試薬の合流地点よりも上流位置に設けたものである。
【0066】
まず、検体検査装置の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する(図1参照)。図9は、実施の形態3にかかる混合カートリッジ202の構成を示した模式図である。図9に示す混合カートリッジ202では、実施の形態1の混合カートリッジ200において第1微細廃棄流路6および第2微細廃棄流路16を配置したものではなく、第1微細廃棄流路46、第2微細廃棄流路56、および第3微細廃棄流路66を配置したものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0067】
第1微細廃棄流路46は、微細流路1の第1試薬と検体とオイルの合流地点41より上流位置であって、第1試薬タンク4から送液された第1試薬が流通する微細流路1bにおける第1試薬タンク4の近傍に分岐して連通している。第1微細廃棄流路46は、微細流路1bの径より小さい径を有して形成されており、さらに、第1微細廃棄流路46の内部に不織布などのウィック性能を有するウィック材461を充填させ、ウィック材461の一端が微細流路1bに接するように設置されている。
【0068】
これにより、第1試薬が微細流路1bとウィック材461を充填した第1微細廃棄流路46との分岐地点を通過する際、微細流路1bを流通する第1試薬から不確定第1試薬(第1試薬の一部)を毛細管現象によりウィック材461で吸収することで、第1試薬から不確定第1試薬を分離する。ここで、不確定第1試薬とは、検査を行う測定項目に定められた検体と第1試薬の混合比率と異なる比率で混合される第1試薬の一部であって、第1試薬ポンプ14が定常動作に達するまでに第1試薬タンク4から送液される第1試薬である。
【0069】
第2微細廃棄流路56は、微細流路1の第1試薬と検体とオイルの合流地点41より上流位置であって、検体タンク5から送液された検体が流通する微細流路1aにおける検体タンク5の近傍に分岐して連通している。第2微細廃棄流路56は、第1微細廃棄流路46と同様に、微細流路1aの径より小さい径を有して形成されており、さらに、第2微細廃棄流路56の内部にウィック材561を充填させ、ウィック材561の一端が微細流路1aに接するように設置されている。
【0070】
これにより、第2試薬が微細流路1aとウィック材561を充填した第2微細廃棄流路56との分岐地点を通過する際、微細流路1aを流通する検体から不確定検体(検体の一部)を毛細管現象によりウィック材561で吸収することで、検体から不確定検体を分離する。ここで、不確定検体とは、検査を行う測定項目に定められた検体と第1試薬の混合比率と異なる比率で混合される検体の一部であって、検体ポンプ15が定常動作に達するまでに検体タンク5から送液される検体である。
【0071】
さらに、第3微細廃棄流路66は、微細流路1の第1試薬および検体の混合溶液と第3試薬の合流地点42より上流位置であって、第2試薬タンク24から送液された第2試薬が流通する微細流路1eにおける第2試薬タンク24の近傍に分岐して連通している。第3微細廃棄流路66は、第1微細廃棄流路46と同様に、微細流路1eの径より小さい径を有して形成されており、さらに、第3微細廃棄流路66の内部にウィック材661を充填させ、ウィック材661の一端が微細流路1eに接するように設置されている。
【0072】
これにより、第2試薬が微細流路1eとウィック材661を充填した第3微細廃棄流路66との分岐地点を通過する際、微細流路1eを流通する第2試薬から不確定第2試薬(第2試薬の一部)を毛細管現象によりウィック材661で吸収することで、第2試薬から不確定第2試薬を分離する。ここで、不確定第2試薬とは、検査を行う測定項目に定められた検体および第1試薬の混合溶液と第2試薬との混合比率と異なる比率で混合される第2試薬の一部であって、第2試薬ポンプ34が定常動作に達するまでに第2試薬タンク24から送液される第2試薬である。
【0073】
次に、本実施の形態にかかる混合カートリッジ202を備えた検体検査装置500の動作について説明する。実施の形態1と同様に、検体タンク5内に保持された検体は、検体ポンプ15によって微細流路1へ送液される。また、第1試薬タンク4内に保持された第1試薬は、第1試薬ポンプ14によって微細流路1へと送液される。また、第2試薬タンク24内に保持された第2試薬は、第2試薬ポンプ34によって微細流路1に送液される。第1試薬と検体とは微細流路1内の合流地点41で同時に供給されるように送液され、合流地点41において第1試薬と検体とが合流して混合されるとそれらの混合溶液が得られる。
【0074】
しかしながら、検体ポンプ15が定常動作に至るまでに送液された不確定検体、および第1試薬ポンプ14が定常動作に至るまでに送液された不確定第1試薬を混合しても、混合割合が安定しない混合溶液となるため測定に使用することができない。従って、不確定検体および不確定第1試薬を微細流路1から分離する必要がある。
【0075】
そこで、本実施の形態の混合カートリッジ202は、第1微細廃棄流路46内に不確定第1試薬を導入して微細流路1bから分離し、第2微細廃棄流路56に不確定検体を導入して微細流路1aから分離する。すなわち、混合カートリッジ202では、不確定第1試薬が微細流路1bと第1微細廃棄流路46との分岐地点へ達すると、毛細管現象により第1微細廃棄流路46へと不確定第1試薬が吸い上げられる。また、不確定検体が微細流路1aと第2微細廃棄流路56との分岐地点へ達すると、毛細管現象により第2微細廃棄流路56へと不確定検体が吸い上げられる。
【0076】
この場合、第1微細廃棄流路46および第2微細廃棄流路56は、それぞれ不確定第1試薬、不確定検体を充分吸い上げられる容量に事前に設計しておく必要があるが、実施の形態1における図3−1、3−2に例示したようにポンプの動作性能および反応試薬の混合比率により第1微細廃棄流路46および第2微細廃棄流路56の容量は設計可能である。このように、混合カートリッジ202では、合流地点41に至る前に微細流路1から不確定第1試薬および不確定検体を分岐あるいは分離することができるため、合流地点41において所望の混合比率の第1試薬と検体が混合され、安定した混合溶液を得ることができる。
【0077】
不確定第1試薬と不確定検体とを取り除いた検体と第1試薬の混合溶液は、微細流路1内にある第1磁石19まで搬送される。ここで、検体と第1試薬の攪拌動作、および第1測光セル11による検査については、実施の形態1と同様である。
【0078】
検体と第1試薬との混合時と同様に、検体と第1試薬とを混合した混合溶液と第2試薬との混合比率が不確定な第2試薬(不確定第2試薬)は、微細流路1eから第3微細廃棄流路66へと分離した後に混合溶液(検体と第1試薬を混合した混合溶液)と混合され、第2磁石29および第2攪拌制御部28によって攪拌され混合が促進される。その後、微細流路1内に設けられた第2測光セル21を検体と第1試薬と第2試薬を混合した混合溶液が満たすと、再び光学的な手法による光学検査部300(図1参照)の検査が行われる。
【0079】
このように、実施の形態3にかかる検体検査装置500における混合カートリッジ202によれば、ウィック材461を充填した第1微細廃棄流路46と、ウィック材561を充填した第2微細廃棄流路56と、ウィック材661を充填した第3微細廃棄流路66とを設けたことにより、測定項目に応じた量の不確定な第1試薬、検体、第2試薬を、微細流路1を流通する溶液から効率的に分離することができ、より少量の検体と反応試薬でより確実に高精度の検体の検査を行うことができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態1では微細廃棄流路を微細流路に設け、実施の形態2、3ではウィック材を充填した微細廃棄流路を微細流路に設けていたがこれに限定されることはない。すなわち、同様の性能を確保していればよいため、毛細管現象を利用して不確定混合溶液や混合前の不確定溶液を分離する廃棄部分が微細流路に設けられている構造であればいずれの構成でもよい。
【0081】
また、実施の形態1、2では、第1微細廃棄流路6、26は、合流地点41と第1磁石19の配置位置との中間位置付近の微細経路1に連通しているが、これに限定されることはない。すなわち、合流地点41より下流位置であって、第1磁石19の配置位置より上流位置である微細流路1であればいずれに連通していてもよい。また、同様に、第2微細廃棄流路16、36は、合流地点42と第2磁石29の配置位置との中間位置付近の微細経路1に連通しているが、これに限定されることはない。すなわち、合流地点42より下流位置であって、第2磁石29の配置位置より上流位置である微細流路1であればいずれに連通していてもよい。
【0082】
また、実施の形態3では、第1微細廃棄流路46は、微細流路1bにおける第1試薬タンク4の近傍に配置されているが、これに限定されることなく、合流地点41の上流位置の微細流路1bにおけるいずれの位置に連通してもよい。また、同様に、第2微細廃棄流路56は、微細流路1aにおける検体タンク5の近傍に配置されているが、これに限定されることなく、合流地点41の上流位置の微細流路1aにおけるいずれの位置に連通してもよい。また、同様に、第3微細廃棄流路66は、微細流路1eにおける第2試薬タンク24の近傍に配置されているが、これに限定されることなく、合流地点42の上流位置の微細流路1eにおけるいずれの位置に連通してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態1にかかる検体検査装置500の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる混合カートリッジ200の構成を示した模式図である。
【図3−1】シリンジポンプの動作性能の一例を表す図である。
【図3−2】シリンジポンプの動作性能の一例を表す図である。
【図4−1】検体と第1試薬とが混合される直前の状態の説明図である。
【図4−2】不確定混合溶液αが微細流路1内に流通し始めた状態の説明図である。
【図4−3】不確定混合溶液αの後から混合比率が安定した混合溶液βが微細流路1内に流通している状態の説明図である。
【図5−1】不確定混合溶液αが微細流路1内に流通し分岐地点51に達した状態の説明図である。
【図5−2】不確定混合溶液αが第1微細廃棄流路6に吸収された状態の説明図である。
【図5−3】混合比率が安定した混合溶液βが微細流路1内に流通している状態の説明図である。
【図6】制御部400の機能構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2にかかる混合カートリッジ201の構成を示した模式図である。
【図8】第1微細廃棄流路26の詳細を示す説明図である。
【図9】実施の形態3にかかる混合カートリッジ202の構成を示した模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1 微細流路
3 動作制御部
4 第1試薬タンク
5 検体タンク
6、26、46 第1微細廃棄流路
7 オイルタンク
11 第1測光セル
14 第1試薬ポンプ
15 検体ポンプ
16、36、56 第2微細廃棄流路
17 オイルポンプ
18 第1攪拌制御部
19 第1磁石
21 第2測光セル
24 第2試薬タンク
28 第2攪拌制御部
29 第2磁石
34 第2試薬ポンプ
41、42 合流地点
51、52 分岐地点
100 測定項目選択部
200、201、202 混合カートリッジ
261、361、461、561、661 ウィック材
300 光学検査部
400 制御部
500 検体検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である測定項目に対応する第2溶液とを混合する混合カートリッジであって、
前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、
前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、
前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、
前記流路に連通し、前記流路を流通する前記溶液から前記溶液の一部を毛細管現象により分離する分離手段と、
を備えたことを特徴とする混合カートリッジ。
【請求項2】
前記分離手段は、前記流路における前記第1溶液と前記第2溶液とが合流する位置である合流位置より下流位置に連通し、前記第1溶液と前記第2溶液とが前記合流位置で混合された混合溶液から、前記混合溶液の一部を毛細管現象により分離することを特徴とする請求項1に記載の混合カートリッジ。
【請求項3】
前記分離手段は、前記流路を流通する前記混合溶液から、前記混合溶液の一部であって、前記測定項目に定められた前記第1溶液と前記第2溶液の混合比率と異なる比率で混合された不確定混合溶液を、毛細管現象により分離することを特徴とする請求項2に記載の混合カートリッジ。
【請求項4】
前記分離手段は、前記流路における前記第1溶液と前記第2溶液とが合流する位置である合流位置より上流位置に連通し、前記流路を流通する混合前の前記溶液から、前記溶液の一部を毛細管現象により分離することを特徴とする請求項1に記載の混合カートリッジ。
【請求項5】
前記分離手段は、前記流路の径より小さい径を有し、前記流路から分岐した流路である微細廃棄流路を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の混合カートリッジ。
【請求項6】
前記分離手段は、さらに、前記微細廃棄流路内に充填された、液体を吸収するウィック材を含むことを特徴とする請求項5に記載の混合カートリッジ。
【請求項7】
前記第1送液手段は、
前記第1溶液を保持する第1タンクと、
前記第1タンク内の圧力を制御する第1圧力制御手段と、
を備え、
前記圧力を変化させることで前記第1溶液を前記流路に供給し、
前記第2送液手段は、
前記第2溶液を保持する第2タンクと、
前記第2タンク内の圧力を制御する第2圧力制御手段と、
を備え、
前記圧力を変化させることで前記第2溶液を前記流路に供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の混合カートリッジ。
【請求項8】
前記第1圧力制御手段および前記第2圧力制御手段は、シリンジポンプであることを特徴とする請求項7に記載の混合カートリッジ。
【請求項9】
前記検体の検査を行う前に、前記第1溶液と前記第2溶液とを混合した混合溶液を攪拌する攪拌部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の混合カートリッジ。
【請求項10】
検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である測定項目に対応する第2溶液とを混合した混合溶液を用いて前記検体の検査を行う検体検査装置であって、
前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、
前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、
前記測定項目を選択する選択手段と、
前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、
前記流路に連通し、前記流路を流通する前記溶液から前記溶液の一部を毛細管現象により分離する分離手段と、
前記流路内の前記溶液の一部が分離された混合溶液に光を照射して前記検体の検査を行う検査手段と、
を備えたことを特徴とする検体検査装置。
【請求項11】
検体を含む第1溶液と前記検体の検査すべき項目である第1測定項目に対応する第2溶液とを混合した第1混合溶液を用いて前記検体の検査を行う検体検査装置であって、
前記第1溶液および前記第2溶液のうち少なくとも一方を含む溶液が流通する流路を形成する部材と、
前記第1溶液を前記流路に供給する第1送液手段と、
前記第1測定項目を選択する選択手段と、
前記第2溶液を前記流路に供給する第2送液手段と、
前記流路における前記第1溶液と前記第2溶液とが合流する位置である第1合流位置より下流位置に連通し、前記第1合流位置で混合された前記第1混合溶液から、前記第1測定項目に定められた前記第1溶液と前記第2溶液の混合比率と異なる比率で混合された前記第1混合溶液の一部の溶液である第1不確定混合溶液を、毛細管現象により分離する分離手段と、
前記流路内の前記第1不確定混合溶液が分離された第1混合溶液に光を照射して前記検体の検査を行う検査手段と、
を備えたことを特徴とする検体検査装置。
【請求項12】
前記検体検査装置は、前記第1混合溶液と前記検体の検査すべき項目である第2測定項目に対応する第3溶液とを混合した第2混合溶液を用いて前記検体の検査を行い、
前記部材は、さらに、前記第3溶液および前記第1混合溶液の少なくとも一方を含む前記溶液が流通する前記流路を形成し、
前記第3溶液を前記流路に供給する第3送液手段をさらに備え、
前記選択手段は、さらに、前記第2測定項目を選択し、
前記分離手段は、さらに、前記流路における前記第1混合溶液と前記第3溶液とが合流する位置である第2合流位置より下流位置に連通し、前記第2合流位置で混合された第2混合溶液から、前記第2測定項目に定められた前記第1混合溶液と前記第3溶液の混合比率と異なる比率で混合された前記第2混合溶液の一部の溶液である第2不確定混合溶液を、毛細管現象により分離し、
前記検査手段は、前記流路内の前記第2不確定混合溶液が分離された第2混合溶液に光を照射して前記検体の検査を行うことを特徴とする請求項11に記載の検体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−127905(P2010−127905A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306564(P2008−306564)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】