説明

混合プロセスの監視および制御方法

混合プロセスにおける成分間の混合の度合いを決定するための方法であって、当該方法は、a)少なくとも2種の成分と少なくとも2種の発光材料とを混合して混合物を生成する工程であって、前記発光材料を混合物に互いに別個に加え、それぞれの発光材料は独自に検出可能なルミネセンス発光波長を有する工程と、b)前記混合物のサンプルから放出されたルミネセンスを検出する工程であって、放出されたルミネセンスは、前記発光材料の独自に検出可能なルミネセンス発光波長において異なるルミネセンス強度を有する工程とを含み、c)前記独自に検出可能なルミネセンス発光波長における、ルミネセンス強度の比および/またはルミネセンスの絶対強度若しくは相対強度が、前記成分間の混合の度合いを示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、混合プロセスの監視および制御方法に関する。特に、本発明の方法は、プロセス中での発光材料の使用、および工業的混合操作の質制御に関する。
【0002】
発明の背景
混合は基本的な操作であり、これは多くの商業上のプロセスに含まれている。例えば、混合工程は、工業的プロセス材料の製造中にしばしば日常的に用いられており、これらの材料は、標準化され、差がなく、代用可能であり、互いに代替でき、本質的に同一の形状で連続処理またはバッチ処理されており、また大量に利用可能であり、種々の原料からのものである。このような材料の例は、一次産品、例えば農産物および鉱産物、並びに加工品、例えば製造材料、建築材料、および工業用化学薬品を含む。
【0003】
商業的プロセスが混合工程を含む場合には、混合工程はプロセス効率および最終生成物品質の観点から重要である。この点において、いくつかの混合が関連する製造の関心事は、製品の一致性、プロセス再現性、スケールアップ/スケールダウン変化、およびプロセスパラメータおよび手法における柔軟性を含む。これらの側面を制御することを可能にするには、しばしば、基礎的なメカニズムおよび個々の混合工程の原理の深い理解が必要であり、これは、しばしば、混合される成分の性質に大きく依存する。例えば、固体混合に影響を与え得るいくつかの性質は、粒径分布、嵩密度、真密度、粒子の形、表面特性およびフロー特性、脆砕性、固体の水分または液体含有量などを含む。液体および液体−固体の混合については、他の性質、例えば液体密度、粘度および表面張力も関与する。
【0004】
従って、商業的な混合工程における成分間の混合の度合いを測定し、混合プロセスを監視または最適化することを可能にする方法についての必要性が存在している。
【0005】
US 4,442,017 および US 4,238,384 は、ポリマー熱可塑性材料の製造中に有機ポリマーと通常混合される添加剤への蛍光材料の取り込みを開示している。この特許は、ポリマー混合物中での添加剤の分布の均一性および/または所望の濃度を監視する手段としての蛍光材料の添加を教示すると主張している。これらの特許は、熱可塑性ポリマーの製造の質制御を改善するにはいくらか資するが、しかしながら、開示された方法は、最終的なポリマー材料またはバッチに添加剤が存在するか否かに応じて、標識としての蛍光材料が存在するか存在しないかの検出に依存している。混合を含む多成分プロセスにおいて、製造される製品の品質は、しばしば、成分の混合の度合いに依存する。プロセス中に蛍光材料が存在するかまたは存在しないかを測定することは、このような混合の度合いについての価値ある洞察を提供しない。
【0006】
発明の概要
混合プロセスにおける成分間の混合の度合いを決定するための方法であって、当該方法は、
a)少なくとも2種の成分と少なくとも2種の発光材料とを混合して混合物を生じる工程、ここでは、発光材料を混合物に互いに別個に加え、またそれぞれの発光材料は独自に検出可能なルミネセンス発光波長を有する工程と、
b)混合物のサンプルからの発光ルミネセンスを検出する工程であって、放出されたルミネセンスは、発光材料の独自に検出可能なルミネセンス発光波長において異なるルミネセンス強度を有する工程とを含み、
c)上記の独自に検出可能なルミネセンス発光波長における、ルミネセンス強度の比および/またはルミネセンスの絶対強度若しくは相対強度が、成分間の混合の度合いを示す。
【0007】
独自に検出可能なルミネセンス発光波長におけるルミネセンス強度の比および/またはルミネセンスの絶対強度若しくは相対強度を、励起後に、特定の時間において測定し、または特定の時間間隔に渡って合計して、混合プロセスを監視しまたは最適化するために用いることができる。
【0008】
発光材料を、混合の間または混合プロセスにおいて隔てた位置に互いに離して加えることができ、例えば、これらは、混合物の異なる成分の一部として加えることができる。
【0009】
発光ルミネセンスを検出する混合物のサンプルは、混合物から取り出されたサンプルであるか、または混合物と一体となっているサンプルであり得る。
【0010】
好ましい実施形態の記載
本発明は、プロセス工程における混合の度合いを決定するための方法に関し、ここで、プロセス工程は、少なくとも2種の成分の混合を含む。そのようなものとして、本方法は、単一の工程か、複数の混合操作を含む工程で混合される2種以上の成分から成る製品のための商業的製品製造において用いやすい。成分は好ましくは、工業的プロセス材料であり、これは他の工業的プロセス材料の製造においてルーチン的に用いられるか、または高価製品を製造するために用いられ得る。
【0011】
本明細書中で用いられる「商業的プロセス材料」なる語は、限定されないが、以下のクラスの材料を含む:
(a)建築物に用いられる材料は、
コンクリート
セメント
材木
処理材木
粘土および粘土製品
ガラス
構造用プラスチックおよびポリマー
装飾プラスチックおよびポリマー
封止プラスチックおよびポリマー
複合材料
セラミックス
金属および合金
石膏
ビチューメン
アスファルトおよびアスファルトコンクリート
塗料
さび止め材料、例えば塗料
シリコン
構造用テキスタイル
を含む。
【0012】
(b)自動車、オートバイ、ボート、航空輸送車両等を含む輸送車両における構造用途および非構造用途で用いられる材料であって、このような材料は、
ゴム、硫化ゴム、およびこれらの化合物
シリコン
プラスチック
複合材料
エポキシ
セラミック材料およびセラミック複合材料
限定されないがブレーキパッド等の複合体
接着剤、膠(glue)、(車両用)セメント
金属および合金
ガラス
ポリカーボネート
塗料、アンダーコート、およびプライマ
研磨剤、艶出剤、および封止剤等の仕上げ用製品
防汚材料および防汚化合物
低摩擦材料および低摩擦化合物
帯電防止化合物
滑剤
冷却材料および冷却化合物
圧媒液
防食添加剤および防食化合物
テキスタイル
を含む。
【0013】
(c)商品、構成部品、衣類、および家財(chattel)の工業的製造に用いられる材料は、
限定されないが、メモリーカードおよび電子チップのような取り外し可能な媒体のための基板として用いられるプラスチックおよびポリマーおよび複合材料
コンピュータ、電話、バッテリ、並びにプラスチック用具および部品、玩具の基材として用いられるプラスチックおよびポリマーおよび複合材料
ガラス
構造上の目的のための複合材料
エポキシ

セラミックス
半導体
テキスタイル
を含む。
【0014】
(d)コンピュータ、および情報技術に基づく商品の工業的製造において用いられる材料は、
セラミックス
プラスチック
ポリマー
複合材料
回路基板、プロセッサまたはメモリーチップのような構成要素
を含む。
【0015】
(e)商品、構成部品、および家財の大スケールの工業的梱包に用いられる材料は、

ダンボール
プラスチック
テキスタイル
を含む。
【0016】
(f)第一次産業およびエネルギー産業において用いられる材料は、
市販品の化学物質および商品材料として用いられるバルク材(bulk material)
液体発泡剤
エネルギー物質
政治的に慎重を期する(politically sensitive)材料および化学物質
シアン化物
前駆体化学物質
核物質
凝集体
鉱石、および加工石および半加工石(semi-processed ore)
硝酸アンモニウム
他の硝酸塩
殺虫剤、除草剤、および他の潜在的に危険な材料
土壌調節剤
洗浄剤
商品取引フロアにおいてやりとりされる鉱物商品および農業商品
を含む。
【0017】
(g)政府規制材料は、
医薬品およびその前駆体
食品添加剤および製品
化粧品
アルコール
を含む。
【0018】
つまり、上記のリストから、本発明の方法は、材料、商品または製品の製造方法に関し、当該製造方法は、固体形態または液体形態で存在し得る2種以上の成分の混合を伴う1以上の混合操作を含む。
【0019】
本明細書中で用いられる「発光材料」なる語は、事前の非熱エネルギー移動の結果としての蛍光またはリン光(発光)を示す材料を指す。
【0020】
本発明の方法に用いられ得る発光材料の例は以下のものを含む
(a)発光有機材料は以下のものを含む:
芳香族モノマーおよび複素芳香族モノマー、例えばピレン、アントラセン、ナフタレン、フルオレセイン、クマリン、ビフェニル、フルオランテン、ペリレン、フェナジン、フェナントレン、フェナントリジン、アクリジン、キノリン、ピリジン、プリムレン(primulene)、プロピジニウムハライド(propidinium halide)、テトラゾール、マレイミド、カルバゾール、ローダミン、ナフトール、ベンゼン、エチジウムハライド、エチルビオロゲン(ethyl viologen)、フルオレサミン、ペンタセン、スチルベン、p−テルフェニル、ポルフィリン、トリフェニレン、ウンベリフェロン、およびこれらの誘導体、例えば、9−アントラセニルメチルアクリラート、2−ナフチルアクリラート、9−ビニルアントラセン、7−[4−(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルイミド、2−アミノビフェニル、2−アミノピリジン、ビス−N−メチルアクリジニウムニトラート、ジアセチルベンゼン、ジアミノベンゼン、臭化ジミジウム、メチルピレン、2−ナフトール、3−オクタデカノイルウンベリフェロン、
アシッドイエロー(Acid Yellow)14、アクリジンオレンジ、アクリジンイエローG、オーラミンO、アズレンAおよびB、カルセインブルー(Calcein Blue)、クマリン6,−30,−6H、−102,−110,153,−480d、エオシンY、エバンスブルー、ヘキスト(Hoechst)33258、メチレンブルー、Mithramycine A、ナイルレッド(Nile Red)、オキソノール(Oxonol)VI、フロキシン(Phloxine)B、ルブレン、ローズベンガル、Unalizarin、チオフラビンT、キシレノールオレンジ、およびこれらの誘導体、例えば、過塩素酸クレシルバイオレット(Cresyl Violet perchlorate)、1,9−ジメチレンブルー、ドデシルアクリジンオレンジブロミド等の商標名で知られる蛍光染料、および
ポリマー、例えば、蛍光ポリイミド、例えばポリ(ピロメリット酸二無水物−alt−3,6−ジアミノアクリジン)、ポリ((4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物−alt−チオニン)、
発光共役ポリマー、例えば、ポリフルオレニル、ポリアセチレン、ポリフェニレンエチネレン(ethynelene)、およびポリフェニレンビニレン、
発光ドーパント官能化ポリマー、例えば、ポリ(9−アントラセニルメチルメタクリラート)、ポリ[(メチルメタクリラート−co−(フルオレセイン O−アクリラート)]、ポリ[(メチルメタクリラート)−co−(9−アントラセニルメチルアクリラート)]。
【0021】
(b)発光金属錯体は以下のものを含む:
金属錯体発光体、例えば、一般的に幅広い範囲の配位子の亜鉛錯体、金錯体、パラジウム錯体、ロジウム錯体、イリジウム錯体、銀錯体、白金錯体、ルテニウム錯体、ボロン錯体、ユーロピウム錯体、インジウム錯体、サマリウム錯体、および希土類錯体、およびこれらの誘導体、例えばビス(8−ヒドロキシキノラト)亜鉛、(2,2’−ビピリジン)ジクロロパラジウム(II)、(2,2’−ビピリジン)ジクロロ白金(II)、クロロビス(2−フェニルピリジン)ロジウム(III)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム塩、リチウムテトラ(8−ヒドロキシキノリナト)ボロン、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5−アミノフェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリクロロトリス(ピリジン)イリジウム(III)。他の例は、以下の学術論文により示される:"Ru(II) polypyridine complexes: photophysics, photochemistry, electrochemistry, and chemiluminescence": Coordination Chemistry Reviews Volume: 84, March 1988, pp. 85-277;"Metallated molecular materials of fluorene derivatives and their analogues": Coordination Chemistry Reviews Volume: 249, Issue: 9-10, May, 2005, pp. 971-997;および "Luminescent molecular sensors based on analyte coordination to transition-metal complexes", Coordination Chemistry Reviews Volume: 233-234, November 1 , 2002, pp. 341 - 350。
【0022】
(c)リン光体、以下のものを含む:(以下の種は、ドープされた系およびドープされない系の双方を示す;すなわち、例えば、CaS:Tb,Clは、CaS(ドープされていない)、CaS:Tb−ドープ、およびCaS:Cl−ドープを指し、希土類または共通イオンのうちのいずれか1つは、いずれかの希土類およびいずれかの共通イオンを示し、すなわち、例えばCaO:Smは、CaO:Eu,CaO:Dy,CaO:Tm,CaO:Ce,CaO:Pr,CaO:Nd,CaO:Ho,CaO:Er,CaO:Tb,CaO:Gd,CaO:Yb,CaO:V,CaO:Mn,CaO:UO2,CaO:Cr,CaO:Fe等を示す(ここで、Pr,Nd,Sm,Eu,Dy,Ho,Er,Tb,Gd,Tm,Ybは希土類の例であり、V,Mn,UO2,Cr,Feは他の共通イオンの例である)、
酸化物、例えば、CaO:Eu,CaO:Eu,Na,CaO:Sm,CaO:Tb,ThO2:Eu,ThO2:Pr,ThO2:Tb,Y23:Er,Y23:Eu,Y23:Ho,Y23:Tb,La23:Eu,CaTiO3:Eu,CaTiO3:Pr,SrIn24:Pr,Al,SrY24:Eu,SrTiO3:Pr,Al,SrTiO3:Pr,Y(P,V)O4:Eu,Y23:Eu,Y23:Tb,Y23:Ce,Tb,Y22S:Eu,(Y,Gd)O3:Eu,YVO4:Dy
シリケート、例えば、Ca52SiO10:Eu,Ba2SoO4:Ce,Li,Mn,CaMgSi26:Eu,CaMgSi26:Eu/Mn,Ca2MgSi27:Eu/Mn,BaSrMgSi27:Eu,Ba2Li2Si27:Sn,Ba2Li2Si27:Sn,Mn,MgSrBaSi27:Eu,Sr3MgSi28:Eu,Mn,LiCeBa4Si414:Mn,LiCeSrBa3Si414:Mn
ハロシリケート、例えば、LaSiO3Cl:Ce,Tb
リン酸塩、例えば、YPO4:Ce,Tb,YPO4:Eu,LaPO4:Eu,Na3Ce(PO42:Tb
ホウ酸塩、例えば、YBO3:Eu,LaBO3:Eu,SrO.3B23:Sm,MgYBO4:Eu,CaYBO4:Eu,CaLaBO4:Eu,LaALB26:Eu,YAl5412:Eu,YAl5412:Ce,Tb,LaAl3412:Eu,SrB813:Sm,CaYB0.83.7:Eu,(Y,Gd)BO3:Tb,(Y,Gd)BO3:Eu
アルミン酸塩および没食子酸塩、例えば、YAlO3:Eu,YAlO3:Sm,YAlO3Tb,LaAlO3:Eu,LaAlO3:Sm,Y4Al29:Eu,Y3Al512:Eu,CaAl24:Tb,CaTi0.9Al0.13:Bi,CaYAlO4:Eu,MgCeAlO19:Tb,Y3Al512:Mn
種々の酸化物、例えば、LiInO2:Eu,LiInO2:Sm,LiLaO2:Eu,NaYO2:Eu,CaTiO3:Pr,Mg2TiO4:Mn,YVO4:Eu,LaVO4:Eu,YAsO4:Eu,LaAsO4:Eu,Mg8Ge2112:Mn,CaY2ZrO6:Eu
ハライドおよびオキシハライド、例えば、CaF2:Ce/Tb,K2SiF6:Mn,YOBr:Eu,YOCl:Eu,YOF:Eu,YOF:Eu,LaOF:Eu,LaOCl:Eu,(ErCl30.25(BaCl20.75,LaOBr:Tb,LaOBr:Tm
CaSタイプのスルフィド、例えば、CaS:Pr,Pb,Cl,CaS:Tb,CaS:Tb,Cl
種々のスルフィドおよびオキシスルフィド、例えば、Y22S:Eu,GdO2S:Tb,Na1.230.42Eu0.12TiSi513:xH2O:Eu
「アップコンバータ」、すなわち、自身が吸収するよりも高いエネルギーの光子を放射する化合物、例えば、NaYF4:Er,Yb,YF3:Er,Yb,YF3:Tm,Yb
(d)量子ドット、これらは、ナノ粒子材料であり、その発光特性は、その粒径に依存する。例えば、金および他の金属のナノ粒子。
【0023】
本発明の方法において用いられる発光材料は、独特なルミネセンス応答を提供するものであり、これは定量化することができる。このような発光材料は、独特な励起状態または発光周波数および発光強度、またはそのルミネセンスの他の独特な性質、例えば長時間のルミネセンスを生かして選択され得る。
【0024】
本発明が、2種以上の発光材料のルミネセンス強度の相対比を探知が可能であるということに依存する場合には、以下の制限が適用される。各発光材料について、ルミネセンスグロー(luminescent glow)の全体強度を、3つの物理的変数により決定することができる。すなわち、(i)照射光が発光材料により吸収される程度(照射の周波数におけるいわゆる吸収係数)、(ii)吸収光が、発光周波数において発光材料により再送される「量子効率」、(iii)発光材料の「ルミネセンス半減期」、すなわち、ルミネセンスグローが初期の強度の半分にまで減衰するまでに必要な時間、である。各発光材料は(i)〜(iii)のそれぞれについて異なる値を示すため、同程度の強度が用いられる検出システムを用いて最終的な混合物内で得られることを確実にするためには、各発光材料の異なる濃度を用いることが一般的には必要であろう。さらに、またはあるいは、発光材料に照射する条件、または発光材料により生じる発光を検出するための条件は異なり得る。あるいは、これらは、発光強度を、「ゲーティング」として当業者に知られる技術で、照射パルスの終了の後の特定の時間または時間間隔においてのみ測定するように選択され得る。このような場合において、一般的に、長時間のルミネセンスを有する発光材料を用いることが好ましい。というのは、このような材料は、混合される材料によるバックグラウンド発光が終了した後に発光しやすいためであり、従って、観察データからバックグラウンド発光を差し引く。
【0025】
発光材料は製造プロセスにおいてはおおよそ含まれないために、工業製品製造において用いられる成分中でのその自然な存在は無視できる。また、多くの工業用の成分は一般的に十分な、または長寿命のルミネセンスを示さないため、加えられた発光材料により与えられる独特のルミネセンス応答は、他のルミネセンス挙動の存在により影響を受ける可能性は低い。このようにして、本発明の方法による発光材料の添加を、混合物の成分に独特の識別性を与えるために用いることができる。
【0026】
例えば、2つの成分AおよびBの混合を伴う混合操作において、用いる照射条件および測定条件下で独特の発光スペクトルおよび強度を有する発光材料Cを、成分Aを成分Bと混合する前に成分Aに加え、混合することができる。同様に、成分Bに、用いる照射条件および測定条件下で発光材料Cとは異なる、自身の独特の発光スペクトルおよび強度を有する発光材料Dを予め混合することもできる。このようにして、発光材料Cの独特のルミネセンス応答を成分Aに与え、また材料Dの独特のルミネセンス応答を成分Bに与える。つまり、混合の程度を、いずれの時点においても、混合操作に渡って、発光材料AおよびBの強度の相対比を測定し、比較することにより決定することができるといったように、成分AおよびBの後の混合をリアルタイムで監視することができる。成分A中の発光材料Cの濃度と、成分B中の発光材料Dの濃度を、AおよびBを最適に混合された組合せで含有する最終生成物が一定の、予め決定した比率を有するAおよびBの強度を示し得るように設計することができる。
【0027】
混合効率を、AおよびBのルミネセンス強度の所望の比と相関させる利点は、最終混合物の無作為にサンプリングしたバッチにおけるこれらの強度は、この強度が全ての他のこのように無作為にサンプリングしたバッチにおいて適切な場合にのみ適切であり得るということである。このことは、混合物のある部分における過剰または不足が、必然的に、混合物の他の部分における対応する、正反対の状態を反映するものであるためである。つまり、上記の例において、ある無作為のサンプルにおける発光材料Cの相対的な過剰は、そのサンプルにおける発光材料Dの不足を伴うこととなる。混合におけるミスは、CおよびDそれぞれについての実際の強度と予想される強度との間の差、およびC:Dの予想のおよび実際の比率との差として定量化される。後者の比率は、全ての委託(consignment)に渡る混合効率の非常に敏感で定量的に正確な測定を与える。というのも、Cにおけるミスは、必然的に、Dにおける対応するミスにより強調されるからである。
【0028】
これに対し、US 4,442,017 および US 4,238,384 に示される方法において、1種のみの発光材料が用いられており、従って混合の効率は、予想される平均発光強度からの、多くの無作為にサンプリングしたバッチに渡る発光強度におけるばらつきを測定することにより決定することのみが可能となる。この方法においては、混合効率におけるミスが、上記のように強調されることはなく、従って、実際の混合効率に対してあまり敏感でない。さらに、正確な混合を確実にするために、多くのより無作為のサンプルを集め、測定する必要がある。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態においては、発光材料を加えることにより各成分に識別性を与えることが必ずしも必要でないことが理解され得る。同様に、いくつかの応用は、成分に対して1種を超える発光材料の添加により、成分に識別性を与えることを必然的に伴う場合もある。
【0030】
発光材料を成分の混合の度合いの指標として本発明において用いているため、本発明の方法は、発光材料が成分に個々に加えられる限りは種々の方法で行うことができ、すなわち、これらはそれ自体を混合物として加えず、続く検出サンプルを取り出すところと同じ地点には加えない。
【0031】
従って、好ましい実施形態において、上記した通り、成分を組み合わせ、混合する前に、発光材料をそれぞれの成分に個々に加え、混合する。あるいは、成分を組み合わせ、混合する前に発光材料を成分に加えるのみである。
【0032】
さらなる実施形態において、発光材料を、混合操作中に成分に個々に加えても良い。上記で明らかにした通り、これを行う場合には、発光材料を、その添加前に成分と混合しないように、または発光材料を、続く検出サンプルを取り出すところと同じ地点に加えないように注意を払わなければならない。後者のポイントに関して、本発明の方法は、成分混合物に対して隔てた位置に互いから切り離した発光材料の添加を意図する。これを行う場合には、好ましくは、検出サンプルを発光材料を加えた位置の間の地点で取り出す。
【0033】
本発明は、また、単一の製造プロセスにおける複数の混合操作の混合の度合いを決定するための本発明の方法の使用を意図する。例えば、第3の成分が、2つの成分の事前混合の後に加えられることが必要とされ得る。本発明を、第3の成分を加える前の最初の2成分の混合の度合いを決定するために用いることができる。また、異なる発光材料を第3の成分と共に加える場合には、第3の成分の混合の度合いを決定することができる。
【0034】
発光材料は、本発明の方法において、混合操作を監視するために用いられるために、発光材料は、混合操作中または工業製品の製造時、すなわち、さらなる処理、貯蔵、輸送の間または製品の使用の間に、成分の物性に不利な影響を与えず、または成分と反応しないように適切に選択される。
【0035】
好ましい発光材料は、容易には質が低下せず、従って、処理条件に供した後も検出することができるものである。好ましい発光材料の例は、ランプまたは陰極線管リン光体、とりわけ希土類ドープリン光体を含む。これらのリン光体の発光性質は長期に渡り非常にゆっくりと低下し、比較的安定であるため、これらは長期間(例えば25〜50年)に渡って信頼でき、また再現可能であり、幅広い処理条件に供することができる。
【0036】
発光材料が処理条件に対して不活性を保つことを確実にするために、発光材料を化学的または物理的に改変してもよい。例えば、発光材料を被覆鞘内に物理的に封入してもよい。この鞘は、ポリマー、例えばメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリスチレン、またはワックス、例えばパラフィンワックス、蜜ろう、ゲルワックス、植物ろう等から構成することができる。発光材料をポリマーおよびワックスでカプセル化する方法は当該技術分野において既知である。
【0037】
場合によっては、発光材料が特定の成分と密接に関連するように成分を改変することが好ましいであろう。例えば、発光材料を、混合操作に先立つ処理工程において、成分の表面にコーティングしてもよいし、または成分内部に取り込んでもよい。
【0038】
従って、混合に供される前に、1種以上の発光材料を成分中に、または成分上に、物理的な取り込みおよび/または化学的な取り込みにより取り込むことができる。例えば、物理的な取り込みは、発光染料分子、粒子、凝集体の構造または構造組成内での成分の物理的な捕捉を含み得る。
【0039】
化学的取り込みは、発光染料、粒子、または凝集体と成分自体との間の引力相互作用を含み得る。
【0040】
発光材料を検出可能な量で加える。好ましくは、多くの入手可能な発光材料に関連する費用のために、トレース量のこれらの材料の、特に低コスト工業プロセス材料との併せた使用が、経済的に有利であり、望ましい。本明細書中で用いる「トレース量」なる語は、周辺光の存在下では光学的に検出できない発光材料の量を指す。好ましくは、トレース量は、全成分の10億分の1〜0.1質量%未満である。本方法を、複数の混合工程と、プロセス中の種々の工程における複数の成分の添加を伴う製造プロセスにおける混合の度合いを監視するために用いようとする場合には、発光材料が製造プロセスの過程中に希釈され得ることを見越して、用いる発光材料の量は増やされうる。従って、本発明の方法において加えられる発光材料の量は、処理方法および成分の性質の双方に依存し得る。
【0041】
好ましくは、本発明の方法に供される全発光材料の量は、成分または成分の混合物(またはこれらから誘導される製品)が蛍光を発するかリン光を発することをもたらさないであろう。従って、発光材料は混合すれば検出可能であり得るのと同時に、発光材料は、成分または成分の混合物(またはこれらから誘導される製品)に、裸眼により観察した際にいかなる視覚的な識別性をも提供しない。そのため、好ましくは発光材料の存在は、成分の通常の物理的な外観に影響を与えない。
【0042】
本発明の方法に供される発光材料のルミネセンス応答を、従来のスペクトル装置により検出することができる。例えば、幅広い範囲の蛍光分光光度計の利用により、定量計測が可能である。ほとんどの場合に検出は、混合物のサンプルの取り出しを必要とし得るものであり、このサンプルを分光光度計内にセットする。このように、検出は、典型的に、研究室の環境内で行われる。しかしながら、電子工学、光学、およびコンピューティングにおける近年の進歩により、携帯分光計の製造が可能となり、これはサンプル中のトレース量の発光材料を検出する能力のある検出感度を有する。さらに、携帯スペクトルリーダは、製品に損傷を加えることなく非侵襲的な現地検出を可能とするという利点を有する。このことは、リーダのプローブを製品の表面に沿って走らせるか、またはサンプル混合物中にプローブを沈めることを含み得る。従って、このようにして、サンプリングを、全表面に渡って、または表面の異なる地点に渡って、または混合物の特定の場所で行うことができる。
【0043】
例えば、現地(field)あるいは現場(on-site)においてトレース量の発光材料を検出するための携帯リーダは、携帯分光計と携帯光源を含むことができ、光学的にプローブに接続されており、これは、周囲光を排除しながら、光源、分光計、およびサンプル間で光を双方向で発信するように構成されている。
【0044】
現地あるいは現場での混合の監視のために、携帯検出システムは、
i)携帯光源と、携帯コンピュータに動作可能なように接続されている携帯分光計;
ii)上記光源と分光器に一方の端において光学的に接続されており、他方の端にはチップを有しており、これはサンプルから周囲光を遮断するように構成されている携帯ファイバー光学プローブ;
iii)周囲光がプローブのチップにより遮断されている際に、サンプル中のトレース量の発光材料を非破壊的、光学的に検出するように光源および分光計を制御する携帯コンピュータにより実行可能なコンピュータソフトウエア
を含み得る。
【0045】
この系は、携帯コンピュータにより発光材料のルミネセンス応答の比を決定することが実行可能であるコンピュータソフトウエアをさらに含んでいてもよい。
【0046】
本明細書中で用いられる「混合の度合い」という語句は、成分の混合中での成分の空間的な、および/または物理的な分布の測定を指す。
【0047】
成分の混合の度合いを監視するためには、用いる読み取り条件下で、加えた発光材料それぞれの独特のルミネセンス応答を、サンプル中の発光材料のそれぞれについて検出する。個々の応答は互いに対して関係づけられ、サンプル内での発光材料の相対比を求める。材料間の比は、混合の前後の発光材料のそれぞれのルミネセンス応答における相対的な差を示す。例えば、2種の発光材料(AおよびB)は、混合しようとする2種の異なる成分に対して同じ量で互いに別個に加えることができる。それぞれの発光材料は独特の発光スペクトルを示し、また、用いられる読み取り条件下でこれらのそれぞれの発光について同じ強度レベルを示すような量で取り込まれる。一定時間の混合の後、混合物のサンプルを取り、用いる読み取り条件下で、発光材料Aの強度は50%であると決定し、発光材料Bの強度は25%であると決定する。成分の混合の度合いは、A:B(1:0.5)のこの比から、少なくとも、半分だけは完了しているとみなすことができる。上記した系において、1:1であるA:Bの識別比(identified ratio)は、混合が相対的な均質性に達したことを示し得る。
【0048】
いくつかの混合操作において、均質な混合物の生成は必要でないこともあり得ることが理解されるであろう。本発明の方法の1つの利点は、技術者に、非均一な混合の重要性および結果を判断することができるように混合の度合いを決定するための手段を提供することである。混合を必要とする材料を製造する産業(例えばコンクリート工業)は、典型的に、各バッチについて混合時間を決定するために、混合装置のメーカにより提供される見積もり時間に頼っている。しかしながら、この見積もり混合時間は非常に粗い測定であり、材料、混合設計、および装置のいずれもの所定の部品と共に用いられ得るバッチサイズのすべての可能性のある変化を考慮に入れず、また考慮に入れることができない。
【0049】
従って、材料とバッチサイズのある組み合わせでは、個々のバッチは長期間混合され続け、均一性が達成された後に良好とされ、従って、製造における効率の悪さを引き起こしている。あるいは、材料とバッチサイズとのある組み合わせでは、均質性が達成される前に混合を完全に止めることがあり、質の悪さをもたらす。本発明は、これらの問題の双方を解決する実施形態を提供する。
【0050】
さらに、またはあるいは、本発明の好ましい実施形態は、材料の詳細な組み合わせ、または新しいバッチサイズ、または新しい混合設計のための新規の最適化された混合手法を確立する手段を提供する。このようにして、全てのバッチを監視せず、しかしいつ均質性が典型的に所定の混合物について生じるかを決定するために試験を実施する。新規方法の使用の容易さは、いつ均質性が典型的に、バッチサイズ、混合設計、および装置の部品の所定の組み合わせについて生じるかを立証するためにまずいくつかの混合を監視するという簡単な事柄であるということを意味する。
【0051】
なおさらなる実施形態において、本方法は、質制御の迅速でかつ簡便な手段を提供し、ここで、混合の質は、最終生成物の性能に対して重要であり、おそらく決定的な意味をもつ。均質性を測定するための現在の方法のいくつかは、典型的に、遅くて困難であり(例えば、コンクリート製造において)、これらは現地操作において(または均質性を確かめるまたは測定する迅速な方法が必要とされる製造においてさえ)、実際には用いることができない。本発明の方法は、混合が均質性を達成したことを確かめるための効率的な手段を提供し、これは、現地または時間を意識した(time-conscious)製造環境における使用が容易である。
【0052】
本発明の一部の実施形態は、有利には、独特の混合操作を通じて製造されている特定の製品を識別するまたは特徴づけるための手段としても用いることができる。このようなものとして、製品の品質は、特定のメーカおよび混合プロセスと関連づけることができる。
【0053】
本発明を、異なる目的を達成するために異なる実施形態において用いることができることが当業者には理解できるであろう。
【0054】
本発明の実施形態の他のより詳細な応用を以下に詳述する。
【0055】
(a)コンクリート
コンクリートは、その品質が、その成分の混合に大いに依存する工業プロセス材料である。コンクリートは、一般的にセメント、粗骨材および細骨材、並びに水から作製される。典型的には、混合を、メーカの仕様書に従う時間設定で行う。例えば、架け橋、道等に用いられるタイプの既に成分調合済みのコンクリートを典型的に調製し、適切に改変された貨物自動車の背部にセットされた、約7000リットルの監視されたセメントミキサ中で混合する。このようなコンクリートを混合するための標準的な手順は、典型的に、コンクリートを、指定したスピードで設定された数の回数間、または設定時間(典型的には4分)の間混合することを伴う。
【0056】
一般的に、コンクリートの最適な混合時間は、成分の量(装填材料の規模)、および「混合設計」(用いる成分の比率、性質および種類の変化、並びにミキサ自体の設計を含む)に従って変化すると言えるであろう。
【0057】
今日まで、成分調合済みのコンクリートのメーカによりその操作においてルーチン的に用いることができる均質性の測定に利用できる系は存在しない。このことは、成分調合済みコンクリートのメーカは、装填材料の規模、または用いる材料のタイプにおける変化、または用いる材料の相対比における変化を考慮に入れることなく、混合時間の初期設定値を用いざるを得ないということを意味する。このことは、最適でない混合をもたらし、装填材料をあまりにも長く混合して製造を減速させるか、または装填材料をあまりにも短時間混合して、可能性のあるその後の製品の失敗を導く。
【0058】
加えて、制御された、または制御されない標準的な変化(通常の許容範囲)は、最適混合時間を変化させ得る。例えば、成分の含水率は最適混合時間への重大な影響を有し得る。このような変化は非線形であり、最適混合時間は、メーカが推奨する時間から直ちに推定できるものでない。実際、変数のいずれか1つにおけるわずかな変化でさえ、最適混合時間を予測できない方向に変化させる。このような欠陥を克服するために、本発明の方法は、混合の均質性を測定する迅速で効率的な方法を提供し、これにより、異なる装填材料の規模および異なる混合設計についての最適の混合時間を定める。
【0059】
本発明によれば、コンクリートまたはセメントベースのサンプルにおける適切な混合を決定するための方法は、2種以上の発光材料の導入を含み得る:1つは、1つの成分、例えば、砂または細骨材部分中に導入され、他方は他の成分、例えばセメント部分中に導入される。その後、受け取ったシグナルの強度を互いに比較し、どの程度十分にサンプルが混合されたかを決定することができる。例えば、発光材料を、完全に混合された際に同一の振幅のそれぞれの発光を示し得るような量でそれぞれの成分中に導入した場合には、コンクリートまたはセメント−砂の混合は、これらのそれぞれの測定される発光振幅が互いに対して同一となる段階まで続ける必要がある。この段階でのみ、全てのサンプルは均一に混合されている。
【0060】
(b)医薬品製造
投与できる医薬品の量は、通常、活性成分の正確な量を要求する。このことは、補助薬および/または賦形剤との均質な混合と、活性成分の非活性成分に対する比率を、投与される単位投与量において一定に保つことを確実にすることによりのみ達成することができる。このプロセスは、非常に強力な活性成分について極めて困難であり得るもので、少量の活性成分を、比較的大量の補助薬および/または賦形剤と混合することが要求される。混合工程中に薬理学的に許容される発光材料の量を添加することにより、本発明によれば、正確な投薬量を、バッチレベルで、また、単位投与量において、例えばタブレットで容易に決定することができる。
【0061】
(c)ポリマー製造
熱可塑性ポリマーの製造には、ポリマー樹脂をしばしば、種々の添加剤、例えば触媒、顔料、安定剤、滑剤等と混合する。広範に変化し得る添加剤の分布は、生じるポリマー材料の品質に不利な影響を与え得る。本発明の方法に従って、それぞれの添加剤に別個の発光材料を添加することにより、製造者は、成分の混合の度合いを監視することができ、必要ならば、それに応じてプロセスパラメータを調節することができる。
【0062】
本発明を、異なる目的を達成するために異なる実施形態において用いることもできることは当業者により理解されるであろう。例えば、本方法は工業プロセスにおけるそれぞれの個々の混合操作の均質性を確認するために用いることができる。本方法を、連続的な産出についての混合プロセスの均質性の度合いを提供するために用いることができる。つまり、均質性が達成されれば、混合プロセスを止め、バッチを次なる製造段階へと移動させることができる。このようにして用いられることで、本発明の方法は、製造時間を最短化し、製造効率を最大にする手段を提供する。
【0063】
本発明を以下の例において詳述する。本例は、本発明を限定するものとして構成されるものでない。
【0064】

2種の特殊な発光マーカーを、1分間につき18回転で稼動する WESTMIX 2.2 Cubic foot セメントミキサ中の製品等級のセメントの標準的な試験混合の配合物に導入した。マーカー1(1g)を、混合における第1の固体成分として水と共に導入した。その後、砂利(7.5kg)、砂(7.5kg)、およびセメント(5kg)をその順番でセメントミキサに、標準的な混合指示通りに加えた。続いてマーカー2(1g)を加え、混合物を4分間最大回転数で混合した。
【0065】
混合時間中、ベースラインに対してのそれぞれのマーカーの最大発光強度を、混合の上部における無作為の位置で、上記したタイプの適切な携帯リーダを用いてサンプリングした。サンプリングプロセス間、20回までの測定を行った。平均のデータポイントを計算し、サンプリング測定中の統計的なデータのばらつき(すなわち、データの範囲)を決定した。
【0066】
マーカーは、上述したタイプの希土類リン光体であり、それぞれのリン光体は、波長250ナノメータの紫外線を照射した際に、一連の波長の光を放射する。つまり、波長250nmの光を照射した際には、マーカー1は、波長580ナノメータ(nm)、620nm、および700nmの光を放射し、一方、マーカー2は、490nmおよび575nmで光を放射する。従って、マーカーの発光波長は互いに重なり合わない。
【0067】
図1に示す監視した発光強度によれば、混合物は、約3分後に均質になり、この際に平均発光極大が、これらの予想される強度をいっせいに示した。これは、混合物が完全に均質である場合にのみ可能となるものである。続く混合時間においても、これは均質性を保った。
【0068】
従って、サンプリング中の統計的なデータのばらつきは、約3分までは連続的に小さくなり、混合物の均質性が達成されたことを確認できた。統計的なばらつきを、図1に、選択したデータポイントにおける角括弧に数字として示す。これらの数字は、これらの個々のサンプリング測定中の最大強度データの範囲を示す。3分後に、マーカー発光の絶対最大強度と相対最大強度の双方と統計的なばらつきが一定に保たれた。このように、統計的なばらつきは、さらなる確認基準を提供し、これにより、混合物の均質性を判断する。この尺度を、第1のまたは第2の基準として用いることができる。すなわち、混合物の均質性を、サンプリング中の経時的なデータのばらつきを積算することにより測定することができる。このばらつきにおける変化が単位時間あたりゼロになった場合に、混合物は均質である。
【0069】
均質性を測定するための標準的な方法は、オーストラリアの標準テスト番号AS1141で、「Methods of Sampling and Testing Aggregates」と題されるものである。この技術は、材料のサンプルを取り出し、水で混合のセメント部分を洗い流し、サンプルを、−4.75mmと+4.75mmのサイズ等級に分類する。それぞれの分類から得られる材料の量を、コンクリートの混合設計、および混合から取り出した他のサンプルと比較する。許容される変化は±3%である。均質性を決定する標準的な方法としてのAustralian Standard(AS)1141の方法は時間がかかり、大きな労力を有することが理解されるであろう。さらに、AS1141は、現地における均質性の測定の方法としては全体的には不適切であることが明らかである。結果として、おおよそ研究所では(事実上現地においても)行われない。
【0070】
本発明は、AS1141を大幅に改善する。というのも、実時間において均質性を決定するために測定され得る多角的な指標を提供するためである。これらの指標は、混合が均質性を獲得した際に一致するだけでなく、本発明の方法は、より多くの数のデータポイントを利用することができるという点でより具体的であり、すなわち、言い換えれば、非常に容易な測定という点で適している。
【0071】
本明細書を通して、他に断らない限り、「含む」という語は、定まった整数、または整数のステップ若しくはグループの包含を示すが、いずれの他の整数または整数のステップ若しくはグループを排除するものでないと理解されたい。
【0072】
本明細書の基準をいずれの従来の刊行物(またはそこから導かれる情報)または知られているいずれの事項としてはいなく、従来の刊行物(またはそこから導かれる情報)または既知の事項が、本明細書に関連する試みの分野における共通の一般的な知識の一部を形成するという認識、または是認、またはいずれの形態の示唆と受け取るべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】マーカー1とマーカー2(任意の単位)の相対シグナル強度対混合時間(秒)のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合プロセスにおける成分間の混合の度合いを決定するための方法であって、本方法は、
a)少なくとも2種の成分と少なくとも2種の発光材料とを混合して混合物を生成する工程であって、前記発光材料を前記混合物に互いに別個に加え、また、それぞれの発光材料は独自に検出可能なルミネセンス発光波長を有する工程と、
b)前記混合物のサンプルから放出されたルミネセンスを検出する工程であって、放出されたルミネセンスは、前記発光材料の独自に検出可能なルミネセンス発光波長において異なるルミネセンス強度を有する工程とを含み、
c)前記独自に検出可能なルミネセンス発光波長における、ルミネセンス強度の比および/またはルミネセンスの絶対強度若しくは相対強度が、前記成分間の混合の度合いを示す方法。
【請求項2】
前記発光材料を、前記混合物の異なる成分の一部として、互いに別個に前記混合物に加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分を組み合わせて混合する前に、前記発光材料を前記成分に別個に加えて混合する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記発光材料を、前記成分の混合の間に、前記混合物中の隔てた位置に互いに別個に加える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成分は固体の形態で存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出工程b)が、前記発光材料を加えた位置の間の地点でサンプルを採取することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記検出工程b)により前記混合物のサンプルを混合物から取り出す請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出工程b)における前記混合物のサンプルは前記混合物と一体となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発光材料は、発光有機材料、発光金属錯体、リン光体、および量子ドットから成る群から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発光材料がリン光体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発光材料が希土類ドープリン光体である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発光材料は、前記全成分の10億分の1〜0.1質量%未満で前記混合物中に存在する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記検出工程b)を、携帯検出システムを用いて行う請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記携帯検出システムが、
i)携帯光源と、携帯コンピュータに動作可能なように接続されている携帯分光計;
ii)前記光源と分光器に一方の端において光学的に接続されており、他方の端にはチップを有しており、これはサンプルから周囲光を遮断するように構成されている携帯ファイバー光学プローブ;
iii)周囲光がプローブのチップにより遮断されている際に、前記サンプル中のトレース量の前記発光材料を非破壊的、光学的に検出するように前記光源および分光計を制御する携帯コンピュータによって実行可能なコンピュータソフトウエア
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンクリート、医薬品、またはポリマーの製造に適用される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
コンクリートの製造に適用される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合工程a)が、前記成分を混合し混合物を生成する前に、前記成分に加えた異なる希土類ドープリン光体をそれぞれ含む2種の成分を含んでいる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出工程b)を携帯検出システムを用いて行い、前記サンプルは前記混合物と一体となっている請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
実質上上記した請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505109(P2009−505109A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527264(P2008−527264)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001209
【国際公開番号】WO2007/022570
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(393028081)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (12)
【Fターム(参考)】