説明

混合材の製造方法及びセメント組成物の製造方法

【課題】COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した混合材の製造方法等を提供する。
【解決手段】5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグと、を混合して100重量部の混合材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合材の製造方法及びセメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセメント組成物は、水、セメント、骨材、混和材料などの複数種類の材料を混練して製造されている(例えば、特許文献1参照)。この中でセメントはセメント組成物の製造時における二酸化炭素(CO)排出量が多い材料であり、環境の観点からすると、環境負荷低減に配慮したとは言いがたい材料である。このため、セメントの使用量を減らしてもセメント組成物の強度が発現されるように、減らしたセメントの代替として高炉スラグやフライアッシュなどの混和材を加えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3844457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメントの使用量を減らし、その代替として高炉スラグやフライアッシュなどの混和材を使用する場合には、混合する複数種類の材料の間にて、使用量に大きなばらつきが生じる虞がある。例えば、ある材料の使用量が、他の材料の使用量と比較して極端に少なくなってしまう場合がある。このような場合には、多くの種類の材料を一度に練り混ぜても、各々の材料が均一に混ざらない虞があり、セメント組成物を製造した場合には適切な強度が発現されない虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した混合材の製造方法及びセメント組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の混合材の製造方法は、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグと、を混合して100重量部の混合材を製造することを特徴とする混合材の製造方法である。
このような混合材の製造方法によれば、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した配合にて混合され、結合材として使用できる混合材を製造することが可能である。また、混合された結合材には、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した量のセメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグが含まれるので、各材料を各々個別に貯蔵するためのサイロ等の収容器を必要としない。このため、貯蔵スペース及びコストを低減することが可能である。また、セメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグを、工場等にて予め混合しておくことが可能である。このため、工場等の設備を用いることにより正確に材料を計量することができ、高い品質が確保されるとともに均一な品質を備え、汎用性に優れた結合材を提供することが可能である。また、既に混合された結合材を使用することにより、生コンプラントにおける練り混ぜ時間を短縮することが可能である。さらに、結合材としてだけでなく、例えば地盤改良のために地盤に混合する混合材としても適した混合材を製造することが可能である。
【0007】
また、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフューム、0〜50重量部のフライアッシュ、及び、42〜75重量部の高炉スラグの3種類の材料のうちの少なくとも1種類の前記材料と、を混合して混合材を製造することを特徴とする混合材の製造方法である。
このような混合材の製造方法によれば、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも1種類を含み、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した結合材として使用できる混合材を製造することが可能である。また、混合材には、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した量のセメントと、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも1種類の材料が含まれるので、全ての材料に対して各々個別に貯蔵するためのサイロ等の収容器を必要としない。このため、使用する収容器を低減することにより貯蔵スペース及びコストを低減することが可能である。また、セメントと、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも1種類の材料とを工場等にて予め混合しておくことが可能である。このため、工場等の設備を用いることにより正確に材料を計量することができ、全ての材料を生コンプラントにて混合する場合より高い品質が確保されるとともに均一な品質を備え、汎用性に優れた混合材を提供することが可能である。また、既に混合された結合材を使用するので、生コンプラントにおける練り混ぜ時間を短縮することが可能である。さらに、例えば地盤改良のために地盤に混合する混合材としても適した混合材を製造することが可能である。
【0008】
かかる混合材の製造方法にて製造された混合材と、骨材と、を混合することが望ましい。
このような混合材の製造方法によれば、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した結合材と骨材とが混合された混合材を提供することが可能である。
【0009】
また、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料のうちの少なくとも1種類の前記材料を含む混合材の製造方法であって、前記混合材が前記4種類の材料のうちの1種類の前記材料を含む場合には、当該1種類の材料と骨材とを予め混合し、前記混合材が前記4種類の材料のうちの2種類以上の前記材料を含む場合には、当該2種類以上の材料のうちの混合される量が少ない前記材料を、混合される量が多い前記材料または前記骨材に予め混合することを特徴とする混合材の製造方法である。
このような混合材の製造方法によれば、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料と骨材のうちの少なくとも2種類の材料を混合させた状態で、その他の材料と混合させることが可能である。また、混合材には、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した量のセメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、及び、骨材の少なくとも2種類の材料が含まれるので、全ての材料に対して各々個別に貯蔵するためのサイロ等の収容器を必要としない。このため、貯蔵スペース及びコストを低減することが可能である。また、セメント、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも1種類の材料と骨材とを予め工場等にて混合することが可能である。このため、工場等の設備を用いることにより正確に材料を計量することができ、全ての材料を生コンプラントにて混合する場合より高い品質が確保されるとともに均一な品質を備え、汎用性に優れた混合材を提供することが可能である。
【0010】
また、製造される混合材が4種類の材料のうちの1種類の材料を含む場合には、当該1種類の材料と骨材とを予め混合するので、混合される1種類の材料が微量であっても、多量に混合される骨材に予め混合することにより均一に混合することが可能である。また、製造される混合材が4種類の材料のうちの2種類以上の材料を含む場合には、当該2種類以上の材料のうちの混合される量が少ない材料を、混合される量が多い材料または骨材に予め混合するので、混合される2種類の材料に微量に含まれる材料があったとしても、微量の材料を、混合される量が多い材料や多量に混合される骨材に予め混合することにより微量の材料も均一に混合することが可能である。このとき、1種類の材料が混合される骨材は、細骨材であることが望ましい。そして、このような混合材を用いてコンクリートを製造する場合には、既に混合された混合材を使用するので、生コンプラントにおける練り混ぜ時間を短縮することが可能である。さらに、このような混合材は、例えば地盤改良のために地盤に混合する混合材としても適した混合材を製造することが可能である。
【0011】
かかる混合材の製造方法であって、前記セメントは5〜20重量部であり、前記フライアッシュは5〜50重量部であることが望ましい。
このような混合材の製造方法によれば、セメントが5〜20重量部であり、フライアッシュが5〜50重量部なので、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に、より適した結合材として使用できる混合材を製造することが可能である。
【0012】
かかる混合材の製造方法であって、前記セメントは、5〜15重量部であることが望ましい。
このような混合材の製造方法によれば、セメントが5〜15重量部なので、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に、さらに適した結合材として使用できる混合材を製造することが可能である。
【0013】
また、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料のうちの少なくとも2種類の前記材料を混合することを特徴とする混合材の製造方法である。
このような混合材の製造方法によれば、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料のうちの少なくとも2種類の材料を混合した混合材を提供することが可能である。
【0014】
また、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの3種類の材料のうちの少なくとも2種類の前記材料を混合することを特徴とする混合材の製造方法である。
【0015】
このような混合材の製造方法によれば、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの3種類の材料のうちの少なくとも2種類の材料を混合した混合材を提供することが可能である。このような混合材は、例えば地盤改良のために地盤に混合する混合材としても適している。また、混合材には、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した量のシリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも2種類の材料が含まれるので、全ての材料に対して各々個別に貯蔵するためのサイロ等の収容器を必要としない。このため、貯蔵スペース及びコストを低減することが可能である。また、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの少なくとも2種類の材料を混合するので、少なくとも2種類の材料は予め工場等にて混合することが可能である。このため、工場等の設備を用いることにより正確に材料を計量することができ、全ての材料を生コンプラントにて混合する場合より高い品質が確保されるとともに均一な品質を備え、汎用性に優れた混合材を提供することが可能である。また、既に混合された混合材を使用するので、生コンプラントにおける練り混ぜ時間を短縮することが可能である。さらに、例えばセメントとともに地盤に混合して地盤改良することが可能な混合材を製造することが可能である。
【0016】
また、上記混合材の製造方法にて製造した混合材と、水(W)と、を混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法である。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、予め混合されて製造された結合材と水とを混合するだけで、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物を容易に製造することが可能である。
【0017】
かかるセメント組成物の製造方法であって、単位水量80〜185kg/mに相当する前記水(W)を混合することが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、COの排出量をより低減し、かつ、より強度が発現されるセメント組成物を製造することが可能である。
【0018】
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記水(W)の前記単位水量が100〜150kg/mであることが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、COの排出量をさらに低減し、かつ、さらに強度が発現されるセメント組成物を製造することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した混合材の製造方法、及び、セメント組成物の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る混合材の製造方法及びセメント組成物の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について以下に詳しく説明する。
本実施形態においては、本発明のCOの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した混合材の製造方法、及び、セメント組成物の製造方法にて製造されるセメント組成物である、水、セメント、細骨材、粗骨材等を含んで構成されるコンクリートを例に挙げて説明する。ここでは、まずCOの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることができるコンクリートについて説明する。
【0022】
本実施形態のコンクリートは、CO排出量の多いセメントの使用量を減らし、セメントの代替材料としてCO排出量が少ない混和材(結合材)を使用するようにした。このように、セメントの使用量を極力減らすことで、コンクリート製造時のCOの排出量を削減することが可能となる。しかしながら、セメントの使用量が少なくなることによってコンクリートの強度が低下する虞がある。
【0023】
そこで、本実施形態では以下に示すような検討により、COの低減とコンクリートのフレッシュ性状及び強度発現のバランスを考慮した材料構成のコンクリートの開発を行った。以下の説明では、試験を実施した、配合割合等が互いに異なるコンクリートの各サンプルをサンプル番号(サンプルNo.)にて示し、各表における各サンプルに対する条件と結果とを対応付けている。
【0024】
(1)結合材の使用割合の検討:
前述したようにCO排出量の多いセメントの使用量を極力少なくし、CO排出量の少ない結合材を増やすようにした。本実施形態では、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームを結合材として用いた。但し、結合材は、CO排出の他に強度発現やフレッシュ性状に影響するため、セメント、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、水の使用割合のバランスを検討した。
本実施形態では、セメントとして普通ポルトランドセメントと耐硫酸塩ポルトランドセメントとについて検討し、シリカフュームとしては、フェロシリコン起源のシリカフュームとジルコニア起源のシリカフュームについて検討し、フライアッシュとしては、JISA6201により規定されたフライアッシュI種とフライアッシュII種とについて検討した。
【0025】
(2)添加材料の検討:
強度の向上を図るため、アルカリ成分、石膏、強度増進剤、石灰石微粉末の配合について検討を行った。
アルカリ成分は、アルカリの刺激によりスラグ、フライアッシュなどの硬化を促進させるものである。本実施形態ではアルカリ成分としてスラッジ水を模擬した水酸化カルシウム溶液を使用した。
また、石膏には、二水石膏、半水石膏、無水石膏があるが、本実施形態では無水石膏を使用した。さらに、無水石膏には、フッ素製造時に副生する(産業副産物の)無水石膏や、天然に産出する無水石膏等があるが、本実施形態では天然の無水石膏を使用した。なお、石膏は、前述した高炉スラグの一部とする。
また、本実施形態では、トリイソプロパノールアミンを主成分とする強度増進剤を使用した。
さらに、化学混和剤(AD)の配合について検討を行った。化学混和剤(AD)としては、例えば、減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤、高性能減水剤がある。
【0026】
(3)水量の検討:
COを低減するにはセメントを含む結合材の量を低減することが有効である。一方、強度は水結合材比(水量と結合材量の割合)に依存する。従って、結合材の量を低減させる場合の水量(単位水量)も併せて検討した。
【実施例】
【0027】
以下、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
<使用材料>
表1は本実施例で使用した原料の詳細である。
【0029】

[注]( )内の品名及び密度は、後述するサンプルNo.11の調合で使用した材料を示す。
【0030】
なお、表1のうち普通ポルトランドセメント(OPC)、耐硫酸塩ポルトランドセメント(SR)、シリカフューム<エルケム−エジプト>(SF1)、シリカフューム<ジルコニア>(SF2)、フライアッシュII種<JISA6201>(FA1)、フライアッシュI種<JISA6201>(FA2)、高炉スラグ微粉末(GGBS)は結合材(B)に相当する。また、水酸化カルシウム溶液(W2)中の水酸化カルシウム(Ca(OH))、無水石膏(CaSO)、石灰石微粉末(LSP)、強度増進剤(SI)は添加材に相当する。なお、無水石膏は、高炉スラグ微粉末の一部とする。
【0031】
本実施例における各原料の配合量を表2に示す。また、各原料の主な配合の割合を表3に示す。上記原料を表2、表3のように混合した。なお、表2、表3のサンプルNoの欄の%は、結合材(OPC(SR)+SF+FA+GGBS)に対するセメント(OPC)又は(SR)の割合を示している。
【0032】
また、セメントの割合が40%のコンクリートを比較例とした。この比較例のセメントの割合(40%)は、高炉セメントB種(JIS R 5211)におけるセメントの使用割合の最小値に相当する。なお、高炉セメントC種では、セメントの割合の最小値は30%(スラグの割合の最大値が70%)である。本実施例では、セメントの割合をこの30%以下にしている。すなわち、セメントの使用量を極力少なくしている。
【0033】


表3において、水結合材比(W/B)は、水(W1+W2+W3)/結合材(OPC+SF+FA+GGBS)である。また、細骨材率(s/a)は、細骨材(S)/骨材(S+G1+G2)である。なお、CaSOは、GGBSの一部とする。
【0034】
<コンクリートの製造条件>
表4は、コンクリートの配調合条件を示す表である。また、表5は、コンクリートの製造条件(練混ぜ方法)を示す表である。


【0035】
<試験項目>
(1)フレッシュ性状試験(サンプルNo.1〜35)
フレッシュ性状試験として、練り上がりのスランプ、空気量、温度を測定した。なお、スランプ及び空気量の試験方法は、それぞれJIS A 1101(BS 1881 Part102)、JIS A 1128(BS 1881 Part106)に準拠した。また、コンクリートの温度は温度計によって測定した。
(2)圧縮強度試験(サンプルNo.1〜35)
φ100*200mm(150*150*150mm)の供試体を作成して水中養生後、JIS A 1108(BS EN 206)に準じて20℃(23℃)および50℃の圧縮強度を測定した。
(3)乾燥収縮試験(サンプルNo.5〜11,サンプルNo.23〜35)
100*100*400mm(75*75*285mm)の供試体を作成して材齢7日まで水中養生後、JIS A 1129(ASTM C 157)に準じて乾燥による収縮変化(長さ変化)を測定した。
[注]上記の( )内の規準及び寸法は、サンプルNo.11の場合に適用した。
【0036】
<試験結果>
フレッシュ性状試験の試験結果を表6に示す。

表6に示すように、比較例ではスランプの値が目標値(15cm、21cm)よりも小さいのに対し、本実施例(サンプルNo.1〜4、サンプルNo.12〜22)では、ほとんど目標値の範囲に収まり、(サンプルNo.5〜11、サンプルNo.23〜35)では、ほとんど目標値を超えている。つまり、施工性に関して、比較例よりも、本実施例の方が良好である。また、空気量、温度については比較例とほぼ同等である。
【0037】
また、サンプルNo.15とサンプルNo.18との比較により、シリカフュームとして一般品(金属シリコンorフェロシリコン起源)のシリカフュームよりもジルコニア起源のシリカフュームの方が、スランプが大きくなるという結果が得られた。サンプルNo.15とサンプルNo.19との比較により、セメントとして普通ポルトランドセメントよりも耐硫酸塩ポルトランドセメントの方が、スランプが大きくなるという結果が得られた。サンプルNo.15とサンプルNo.20との比較により、フライアッシュとして、JISA6201にて規定されたフライアッシュII種よりフライアッシュI種の方が流動性に優れるという結果が得られた。
【0038】
次に、圧縮強度試験の試験結果を表7に示す。

表7に示すように、本実施例では、比較例よりもセメントの使用量が少なくなっているにもかかわらず、10%以上では比較例に近い圧縮強度が得られた。特に、セメントの割合が10〜20%においても良好な圧縮強度が得られた。また、10%未満であっても、比較例には至らないものの16N/mm以上の圧縮強度が得られた。なお、本実施例(サンプルNo.1〜35)における材齢28日の20℃(23℃)の圧縮強度は、16.6〜69.4N/mmであった。
【0039】
また、サンプルNo.15とサンプルNo.18との比較により、シリカフュームとして一般品(金属シリコンorフェロシリコン起源)のシリカフュームよりもジルコニア起源のシリカフュームの方が、圧縮強度が高くなるという結果が得られた。サンプルNo.15とサンプルNo.19との比較により、セメントとして普通ポルトランドセメントよりも耐硫酸塩ポルトランドセメントの方が、圧縮強度が高くなるという結果が得られた。
[注]上記の( )内の温度は、サンプルNo.11の場合に適用した。
【0040】
次に、サンプルNo.5〜11、サンプルNo.23〜35について乾燥収縮試験の試験結果を表8に示す。

表8の長さ変化においてマイナスは、元の長さに対して収縮したことを示している。なお、逆に、この値がプラスになる場合は膨張したことになる。
表8に示すように、乾燥による長さ変化(収縮量)は、比較例よりも本実施例の方が小さくなっている。つまり、本実施例では、比較例よりもひび割れが生じにくいと言える。
【0041】
以上、説明したように、本実施例ではCO排出量の多いセメントの使用量を極力少なくし、CO排出量の少ない混和材(結合材)を増やすようにした。
【0042】
具体的には、結合材に対するセメントの割合を5〜30%とし、シリカフュームを0〜20%、フライアッシュを0〜50%、高炉スラグを42〜75%とし、単位水量を80〜185kg/mとした。さらに、アルカリ成分の水酸化カルシウム(Ca(OH))、石膏(CaSO)、強度増進剤(SI)、石灰石微粉(LSP)のうちの少なくとも一つの添加材を配合するようにした。なお、石膏は、高炉スラグの一部とする。
さらに、細骨材及び粗骨材を含む骨材と、水と、高性能AE減水剤等の化学混和剤とによりコンクリートを構成した。
こうすることにより、COの排出量が低く、フレッシュ性状や強度発現の優れたコンクリートを得ることが可能である。
【0043】
上記実施形態においては、セメント組成物として、コンクリートを例に挙げて説明したが、骨材として細骨材や粗骨材を含まないセメントペーストや粗骨材を含まないモルタルであっても構わない。
【0044】
<コンクリートの製造方法>
上記のようにして、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるコンクリートの配合が明らかになった。このようなコンクリートの配合割合は、例えば表3に示すシリカフュームのように、結合材に含まれる割合が全体の2.5%と、他の材料と比較して極めて微量である場合がある。
【0045】
このように、混合する材料の中に微量に混合される材料が含まれていると、混合の仕方によっては、当該材料が適切に混合されない場合がある。例えば、混合する各材料を各々直接ミキサーに投入する際に、ミキサー内に繋がった細管を通して供給する場合に、微量な材料は細管の周りに付着して、ミキサー内にはほとんど供給されない虞がある。そこで、本願のような複数種類の材料が混合され、かつ、微量が混合される材料を含む場合に適した、コンクリートの製造方法について説明する。
【0046】
COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるコンクリートに適した本願のコンクリートの製造方法は、水や骨材等と一緒に練り混ぜる結合材を、ミキサーにて練り混ぜる前に、まず、予め混合(プレミックス)しておく。
【0047】
具体的には、表3に示すサンプルNo.1の例にて説明すると、5重量部のセメントと、5重量部のシリカフュームと、15重量部のフライアッシュと、75重量部の高炉スラグと、を計量して混合し100重量部の結合材を、図1に示すように予め工場等にて混合しておく(混合材製造工程S1)。
【0048】
次に、混合した結合材を100としたときに40.7に相当する水と、細骨材率45.5となる骨材とを計量してミキサーに投入し、ミキサーにて練り混ぜて生コンクリートを製造する(生コンクリート製造工程S2)。
【0049】
そして、製造した生コンクリートを型枠内に打設してコンクリート部材が製造される(生コンクリート打設工程S3)。
【0050】
このようなコンクリートの製造方法によれば、結合材に微量含まれるセメント、シリカフューム、フライアッシュを比較的量の多い高炉スラグと予め混合しておくので、微量であっても適量のセメント、シリカフューム、フライアッシュをコンクリートに確実に練り混ぜることが可能である。このため、所定の材料を微量加えることを余儀なくされる、例えばCOの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるコンクリートを容易に製造することが可能である。このとき、セメントが石膏を含んでいる場合には、製造されたコンクリートに、より高い強度を発現させることが可能である。また、化学混和剤(AD)を混合しておくことにより、さらに高い強度を発現させることが可能である。化学混和剤(AD)もコンクリートに含まれる量が微量なので、結合材の各材料と同様に、他の材料や細骨材と混合した後にミキサーに投入することが望ましい。
【0051】
また、このように、ミキサーにて練り混ぜる前に、複数の材料を予め混合した混合材を使用することにより、ミキサーにて練り混ぜる材料の種類が少なくなるので、材料を保存する容器を少なくすることが可能であるとともに、材料の管理を簡単にすることが可能である。また、練り混ぜる材料の種類が少ないので、生コンプラントにおける作業を簡単にするとともに、より均一に混合された混合材を使用することにより、より高い強度を発現させることが可能である。
【0052】
上記コンクリートの製造方法では、セメントと、シリカフュームと、フライアッシュと、高炉スラグを予め混合した結合材としたが、必ずしも上記4種類の材料を含まなくともよい。例えば、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフューム、0〜50重量部のフライアッシュ、及び、42〜75重量部の高炉スラグの3種類の材料のうちの少なくとも1種類の材料と、を予め混合した混合材を結合材としてもよい。
【0053】
また、セメントと、シリカフューム、フライアッシュ、及び、高炉スラグの3種類の材料のうちの少なくとも1種類の材料を混合した結合材と、混合しなかった残りのいずれか、または、残り全ての材料を、ミキサーにて練り混ぜる際に、水や骨材とともに練り混ぜても良い。
【0054】
また、セメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグの他に骨材を予め混合した混合材を用いても良い。例えば、骨材のうちの細骨材としての砂と、セメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグのうちのいずれか1種類以上の材料を予め練り混ぜた混合材を用意し、ミキサーにて水と練り混ぜても良い。表2に示すように、骨材は、他の材料と比較して、混合する量が多い。このため、4種類の材料のうちの少なくとも1種類の材料を骨材に混合させた状態で、その他の材料と混合させることにより、特定の材料が微量であったとしても、予めほぼ均一になるように混合することが可能である。このとき微量な材料は、骨材のうち上記のように細骨材に混合しておくことが望ましい。
【0055】
上記のように複数の材料のうち少なくとも2種類の材料を、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した配合にて混合することにより、結合材として使用できる混合材を製造することが可能である。また、混合された結合材には、COの排出量の低減と強度発現と品質確保との両立を図ることのできるセメント組成物の製造に適した量のセメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、骨材などのうちの少なくとも2種類の材料が含まれているので、全ての材料を各々個別に貯蔵するためのサイロ等の収容器を必要としない。このため、貯蔵スペース及びコストを低減することが可能である。また、セメント、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、骨材などの材料のうちの少なくとも2種類の材料を予め混合した混合材は、工場等にて予め混合しておくことが可能であり、工場等の設備を用いることにより正確に材料を計量することができ、全ての材料を生コンプラントにて混合する場合より高い品質が確保されるとともに均一な品質を備え、汎用性に優れた結合材を提供することが可能である。また、既に混合された結合材を使用することにより、生コンプラントにおける練り混ぜ時間を短縮することが可能である。さらに、このような混合材は、結合材としてだけでなく、例えば地盤改良のために地盤に混合する混合材としても適した混合材を製造することが可能である。
【0056】
上記実施形態においては、材料の1つにセメントが含まれる例について説明したが、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの3種類の材料のうちの少なくとも2種類の材料を混合してもよい。このような製造方法にて製造された混合材は、5〜30重量部のセメント、骨材、水と練り混ぜて、セメント組成物を製造することが可能であるとともに、セメントともに地盤に混合することにより地盤改良にも使用することが可能である。
【0057】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグと、を混合して100重量部の混合材を製造することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項2】
5〜30重量部のセメントと、
0〜20重量部のシリカフューム、0〜50重量部のフライアッシュ、及び、42〜75重量部の高炉スラグの3種類の材料のうちの少なくとも1種類の前記材料と、を混合して混合材を製造することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の混合材の製造方法にて製造された混合材と、
骨材と、を混合することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項4】
5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料のうちの少なくとも1種類の前記材料を含む混合材の製造方法であって、
前記混合材が前記4種類の材料のうちの1種類の前記材料を含む場合には、当該1種類の材料と骨材とを予め混合し、
前記混合材が前記4種類の材料のうちの2種類以上の前記材料を含む場合には、当該2種類以上の材料のうちの混合される量が少ない前記材料を、混合される量が多い前記材料または前記骨材に予め混合することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の混合材の製造方法であって、
前記セメントは5〜20重量部であり、前記フライアッシュは5〜50重量部であることを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の混合材の製造方法であって、
前記セメントは、5〜15重量部であることを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項7】
5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの4種類の材料のうちの少なくとも2種類の前記材料を混合することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項8】
0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグとの3種類の材料のうちの少なくとも2種類の前記材料を混合することを特徴とする混合材の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の混合材の製造方法にて製造した混合材と、
水(W)と、を混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のセメント組成物の製造方法であって、
単位水量80〜185kg/mに相当する前記水(W)を混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のセメント組成物の製造方法であって、
前記水(W)の前記単位水量が100〜150kg/mであることを特徴とするセメント組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−86992(P2012−86992A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232963(P2010−232963)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】