説明

混合果汁又は果汁飲料の製造方法

【課題】本発明は、特定の条件を満たすように果汁の混合比を調整することにより、添加物を使用することなく混合果汁のpHを制御する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は混合する果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量を測定し、次いで混合果汁の目的とするpHをPHとしたときに、下記式(1)を満足する配合比で2種以上の果汁を混合することを特徴とする混合果汁又は果汁飲料の製造方法を提供する。
PH=−0.74S+2.76+80α+3β (1)
(式中、
PH:目的とするpH、
S:混合果汁の酸度(クエン酸濃度(g/100ml))、
α:混合果汁中のアミノ態窒素総量(g/100ml)、
β:混合果汁中の灰分総量(g/100ml))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合果汁又は果汁飲料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然果汁は、常に同じ状態ということはありえないため、同じ配合比で混合するとpHが変動してしまう。一定のpH値に調整する必要がある場合には、クエン酸やクエン酸ナトリウムを添加してpHを調整するが、若干ではあるが、これらの添加により風味が変化してしまう。また、近年の健康志向の高まりにより、添加物を使用しない、天然由来成分のみからなる製品が要望されている。
また、果汁飲料、特にレモン飲料の香りの劣化は、低pHにおいて顕著である。そのため、ほとんどの市販のレモン飲料では、クエン酸ナトリウムを用いて、pHを3.0以上に上昇させることが行われている。しかし、クエン酸ナトリウムには、塩味があり、またpHが上がりすぎると、すっきりとした酸味が失われる欠点がある。
特開平2005−192473号公報には、果汁(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、アセロラ、ウメ、ナシ)を2種以上含有する果汁含有アルコール飲料が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平2005−192473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、混合する果汁の配合量により混合果汁のpHを調整する方法については開示されていない。本発明は、特定の条件を満たすように果汁の混合比を調整することにより、添加物を使用することなく混合果汁のpHを制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は混合する果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量を測定し、次いで混合果汁の目的とするpHをPHとしたときに、下記式(1)を満足する配合比で2種以上の果汁を混合することを特徴とする混合果汁又は果汁飲料の製造方法を提供する。
PH=−0.74S+2.76+80α+3β (1)
(式中、
PH:目的とするpH、
S:混合果汁の酸度(クエン酸g/100ml)、
α:混合果汁中のアミノ態窒素総量(g/100ml)、
β:混合果汁中の灰分総量(g/100ml))
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、添加物を使用することなく混合果汁のpHを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法において、混合果汁は、2種以上の果汁を混合することによって製造される。使用する果汁としては、特定の形態のものに限定されるものではなく、果実から搾汁したストレート果汁、濃縮果汁、透明果汁、混濁果汁、ピューレなどのいずれの形態であってもよい。また、果実の種類も特に限定されず、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、カシス、ストロベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ライチ、アプリコット、梅、チェリー、キウイフルーツ、パッションフルーツ、パイナップル、ピーチ、マンゴー、なし、ぶどう、メロン、リンゴ、バナナなどを用いることができる。
【0008】
本発明の製造方法において、混合果汁のpHは、下記式(1)を満足するような配合比で2種以上の果汁を混合することによって調整される。
PH=−0.74S+2.76+80α+3β (1)
(式中、
PH:目的とするpH、
S:混合果汁の酸度(クエン酸g/100ml)、
α:混合果汁中のアミノ態窒素総量(g/100ml)、
β:混合果汁中の灰分総量(g/100ml))
【0009】
通常の果汁飲料の酸度は0.2〜0.45である。この酸度範囲においては、pH緩衝物質の無い液体においては、pH=−0.74×酸度+2.76の関係式が成り立つ(図1)。しかし、実際の果汁はpH緩衝物質を含んでおり、果汁飲料のpHは上記関係式から計算されるpHよりも高い値となる。pHは味覚上重要であり、あまりにpHが低いと、収斂味を感じる。缶飲料では、pH2.9以下の場合、通常の内面コーティングでは缶体の腐食のリスクが生じる。レモン飲料においては、pH2.9以下ではレモンの香りの劣化が早く進むことが知られている。また、pH4.0以上になると、強度の殺菌をしないと微生物が死滅しないことが知られている。したがって、pHに調整することは重要である。
本発明者らの検討の結果、アミノ酸や蛋白質などのアミノ態窒素の含有量とミネラル物質である灰分の含有量から実際のpHを予測することが可能であり、それらの関係が上記式(1)によって示されることが分かった。したがって、混合する果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量を予め測定することによって、それらを混合した果汁のpHを調整することができる。
【実施例】
【0010】
(果汁の酸度の測定方法)
果汁の酸度の測定は、JAS分析法(改定新版ソフトドリンク 光琳書房 全国清涼飲料工業会編 P841 1989年)に基づいて行った。具体的には、果汁試料10gを取り、フェノールフタレインを指示薬として、0.1N水酸化ナトリウムで滴定した。酸度(無水クエン酸g/100g)は次式より求めた。
酸度=(0.1N水酸化ナトリウム滴定数×0.007)×10
【0011】
(果汁のアミノ態窒素含量の測定方法)
果汁のアミノ態窒素含量は、JAS分析法(ミクロバンスライクガス分析法、改定新版ソフトドリンク 光琳書房 全国清涼飲料工業会編 P831 1989年)に基づいて行った。具体的には、バンスライクアミノ態窒素測定器を用いて、果汁中の遊離アミノ基に亜硝酸を作用させて、生じる窒素ガスの量からアミノ基を算定した。
【0012】
(果汁の灰分含量の測定方法)
果汁の灰分含量は、JAS分析法(改定新版ソフトドリンク 光琳書房 全国清涼飲料工業会編 P847 1989年)に基づいて行った。具体的には、るつぼに果汁を一定量とり、550℃以上に熱して、炭素を無くして、残った成分の重量を測定した。
【0013】
(各果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量)
下記表1に示す果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量を求めた。
【表1】

【0014】
(実施例1)
表1の果汁を下記表2に示す配合量に従って混合した(残りは水である)。表2に示すとおり、式(1)から計算されるpH値とpH実測値とはほぼ一致した。
【表2】

【0015】
(実施例2)
レモン果汁7%の飲料(残りは水である)において、pHを3に設定する混合果汁を書き表3の通り調製した。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】pH緩衝物質の無い液体におけるpHと酸度の関係を表すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合する果汁の酸度、アミノ態窒素含量及び灰分含量を測定し、次いで混合果汁の目的とするpHをPHとしたときに、下記式(1)を満足する配合比で2種以上の果汁を混合することを特徴とする混合果汁又は果汁飲料の製造方法。
PH=−0.74S+2.76+80α+3β (1)
(式中、
PH:目的とするpH、
S:混合果汁の酸度(クエン酸g/100ml)、
α:混合果汁中のアミノ態窒素総量(g/100ml)、
β:混合果汁中の灰分総量(g/100ml))

【図1】
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【公開番号】特開2009−153484(P2009−153484A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337347(P2007−337347)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】