説明

混合温度制御装置

【目的】 一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能および総合流量調節の二つの機能を実現でき、コンパクトで安価な混合温度制御装置を得る。
【構成】 可動弁体76が感温体ばね81とバイアスばね79で両側から付勢され、かつその可動弁体76の両側に対向した高温流体側弁座77と低温流体側弁座78の少なくとも一方の位置を可変する弁座位置調節手段86を設けた構成で、自動混合温度制御および混合流体流量調節が1つの弁体でできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温流体と低温流体の混合比率を調節して混合流体の温度をコントロールする混合温度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の混合温度制御装置(例えば特開平6−159532号公報)を、図7に示す。同図において、湯水混合装置10のハウジング12は、ほぼ円筒形の本体14と、この本体に螺合などにより液密に締結された出口金具16と、同様に本体114に液密に締結されたキャップ18とで構成されている。
【0003】ハウジング12には入口20および22が形成してあり、入口20は湯入口として作用し、入口22は水入口として作用する。ハウジング12には中央ボア24が形成してあり、このボア24には受圧ピストン26が摺動自在に嵌合してある。ハウジング12の内部にはこの受圧ピストン26によって湯側一次圧力室28と水側一次圧力室30とに分割されている。湯水入口20および22は、それぞれ一次圧力室28および30に連通しており、一次圧力をもった湯水が一次圧力室28および30にそれぞれ供給されるようになっている。
【0004】受圧ピストン26は所定の半径方向クリアランスをもってボア24に嵌合され、ボア24内で摺動する。湯側一次圧力室28および水側一次圧力室30は、それぞれ弁座32および34を介して湯側弁室36および水側弁室38と連通している。湯側弁座32と水側弁室34とは同軸的に整列してあり、互いに対称的に配置してある。水側弁室38はキャップ18に形成された複数の開口40と本体14に形成された通路42とを介して湯側弁室36に連通してあり、水側弁座34を通過した水が湯側弁室36内に流入するようになっている。したがって、湯側弁室36は湯水混合室として作用し、その湯水混合室36で形成された湯水混合物は、出口金具16の混合物出口44から吐出される。
【0005】ハウジング12の内部には可動弁体ユニット46が軸方向に移動可能である。この弁体ユニット46は、弁軸48と、ナットにより弁軸48の両端にそれぞれ固定された湯側弁体50および水側弁体52を有する。弁軸48は受圧ピストン26と一体的に形成してあり、可動弁体ユニット46と受圧ピストン26が連動する。湯側弁体50および水側弁体52は同軸的に整列してあり、湯側弁座32および水側弁座34とそれぞれ協動して湯水の流れが制御される。受圧ピストン26と湯側弁体50と水側弁体52の有効受圧面積は互いに等しくしてあり、湯側一次圧力室28内の一次圧力は湯側弁体50に開弁方向に作用すると共に、受圧ピストン26に反対方向に作用する。
【0006】受圧ピストン26の有効受圧面積と湯側弁体50の有効受圧面積とは等しいので、湯側一次圧力室28内の一次圧力により湯側弁体50に作用する力はその一次圧力により受圧ピストン26に作用する力と相殺される。同様にして、水側一次圧力室30内の一次圧力により水側弁体52に作用する力とその一次圧力により受圧ピストン26に作用する力とは互いに相殺される。したがって、可動弁体ユニット46には、湯水の一次圧力に起因する偏奇力は作用しない。
【0007】また、湯水混合室36と水側弁体38とは互いに連通しており、両者内の二次圧力は等しいので、二次圧力に起因する偏奇力が可動弁体ユニット46に作用することもない。したがって、可動弁体ユニット46は、湯水の圧力の過渡的変動の影響を受けることなく、互いに相反する方向に作用する2種の機械的な付勢力の釣り合いによって位置決めされる。すなわち、湯水混合室36内および水側弁室38内には、コイルばね54および56が圧縮状態でそれぞれ配置してある。
【0008】一方のコイルばね54は感温素子として作用するもので、温度に応じてばね定数が変化する特性を有するニッケル・チタン系の形状記憶合金で形成されている。この形状記憶合金製感温コイルばね54は、混合室36内の湯水混合物の温度に応じて線形(リニア)に変化するばね力を発生し、可動弁体ユニット46に作用させる。感温コイルばね54を形成する形状記憶合金は、温度に応じて弾性係数が変化し、その結果、コイルバネ54のばね定数、ひいてはばね力を温度に応じて変化させる。この形状記憶合金製の感温コイルばね54の一端は湯側弁体50に支承され、他端は出口金具16に支承されている。したがって、形状記憶合金製感温コイルばね54は、可動弁体ユニットを左右に付勢している。
【0009】他方のコイルばね56は、バイアスばねとして作用するもので、通常のばね材料で形成されており、そのばね定数は温度に関しほぼ一定である。したがって、バイアスばね56が発生する付勢力は、それに加えられた予荷重に比例する。バイアスばね56の一端は水側弁体52に支承され、その他端は、キャップ18に摺動自在に装着された可動ばね受け58に支承されている。この可動ばね受け58には、キャップ18に螺合された調節ねじ60が係合させてあり、調節ねじのハンドル62を回転させることによりバイアスばね56の予荷重を調節できる。バイアスばね56は、可動弁体ユニット46を左右に付勢している。
【0010】つまり、従来の湯水混合装置である特開平6−159532号公報においては、感温素子54が温度変化に応じてばね定数が線形(リニア)に変化するような特性領域を備えた形状記憶合金により形成されており、その線形特性領域において形状記憶合金製コイルばね54の付勢力とバイアスばね56の付勢力とを均衡させることにより、可動弁体46を作動させ、オーバーシュートやアンダーシュートを伴うことなく、きめ細かな温度調節を行うことができるという湯水混合装置について提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記したような従来の混合温度制御装置は、湯水の混合温度の調節はできるものの、混合されたトータル流量のコントロールをするには別個に流量調節弁が必要となる点、および大きさやコストの面での課題があった。
【0012】本発明は上記課題を解決するものであり、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能および総合流量調節の二つの機能を実現でき、コンパクトで安価な混合温度制御装置を提供することを第一の目的としている。
【0013】第二の目的は、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、感温体ばねの繰り返したわみに対する耐久性を確保する混合温度制御装置を提供することにある。
【0014】第三の目的は、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、感温体ばねの使用温度および保存温度範囲において、繰り返したわみに対する耐久性の確保と、ヒステリシスが小さい混合温度制御装置を提供することにある。
【0015】第四の目的は、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、流体圧力変動や流量変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有する混合温度制御装置を提供することにある。
【0016】第五の目的は、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有し、水圧変動や設定温度変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有するとともに、停電時および電子制御手段等の故障時にも手動で使用可能な混合温度制御装置を提供することにある。
【0017】第六の目的は、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有し、湿気の多い場所で使用でき、停電時および電子制御手段等の故障時にも手動で使用可能な混合温度制御装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記第一の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段を設けたものである。
【0019】上記第二の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、形状記憶合金からなり前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記感温体ばねのせん断ひずみγを規制するせん断ひずみ規制手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段を設けたものである。
【0020】上記第三の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなり、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段を設けたものである。
【0021】上記第四の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を設けたものである。
【0022】上記第五の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を設けたものである。
【0023】上記第六の目的を達成するために本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を備え、前記電気的付勢力調節手段は、モータを前記手動駆動部を兼ねる樹脂で覆った防湿手段を備え、前記モータを電気的に駆動するか前記手動駆動部を人力で駆動するかのいずれによっても前記可動弁体のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段を設けたものである。
【0024】
【作用】本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体に感温体ばねの付勢力と、その感温体ばねの付勢方向とは反対方向の付勢力がバイアスばねによってそれぞれ前記可動弁体に作用して、それら2つのばねの付勢力が釣り合う位置に前記可動弁体が位置決めされ、流入する高温流体と低温流体は、前記可動弁体の開度位置に応じた混合比の混合流体となって、前記感温体ばねの周囲を通過して流出し、このとき、混合流体の温度は感温体ばねによって機械的にフィードバックされつつ、前記2つのばねの釣り合いによって自動的に温度調節されるように作用する。したがって、前記2つのばねの少なくとも一方の付勢力を調節する付勢力調節手段によって、目標の混合温度を設定することになる。
【0025】また、弁座位置調節手段によって弁座位置を可変することによって前記可動弁体と前記弁座との距離を可変でき、混合流体の流量が全開から全閉まで調節可能に作用する。このときも、混合流体温度は感温体ばねとバイアスばねの釣り合いによって可動弁体が作動し、前記付勢力調節手段で設定された目標温度に自動的に保持されるように作用する。
【0026】また本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、1つの可動弁体と高温流体側弁座、低温流体側弁座、バイアスばね、感温体ばね、付勢力調節手段、弁座位置調節手段によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、感温体ばねのせん断ひずみγを規制するせん断ひずみ規制手段によって、形状記憶合金からなる感温体ばねは、せん断ひずみγが所定量を越えない範囲内での繰り返したわみとなり、感温体ばねの耐久性を損なうことなく、混合流体温度制御および流量調節されるように作用する。
【0027】また本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、1つの可動弁体と高温流体側弁座、低温流体側弁座、バイアスばね、温度に応じてばね定数が変化し、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなる感温体ばね、付勢力調節手段、弁座位置調節手段によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、前記感温体ばねは、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相と母相とを繰り返す相変態しかしないように作用する。したがって、感温体ばねの動作温度および保存温度範囲において、繰り返したわみに対する耐久性が損なわれることがなく、かつヒステリシスが小さく高い応答性で混合流体の温度が制御されるよう作用する。
【0028】また本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、1つの可動弁体と高温流体側弁座、低温流体側弁座、バイアスばね、感温体ばね、付勢力調節手段、弁座位置調節手段によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、可動弁体と高温流体側弁座との隙間から流入した高温流体と、前記可動弁体と低温流体側弁座との隙間から流入した低温流体とが混合され、その混合流体が感温体ばねに接触しながら通過し、混合温度が感温体ばねに熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段は温度検出手段によって検出された混合流体温度と、温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を駆動し、混合物温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、感温体ばねのヒステリシスや流体圧力変動および弁座位置調節手段による流量変更などによって温度偏差が瞬間的に生じても、電気的フィードバック制御により温度補正される。
【0029】このように、混合流体の過渡的温度変動は混合された混合流体が形状記憶合金製の感温体ばねに接触しながら、機械的フィードバック制御により迅速に適合され、定常的オフセットは、混合温度検知手段によって検知して電気的フィードバック制御されるので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、流体圧力変動や流量変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有する混合温度制御装置が得られる。
【0030】また本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、1つの可動弁体と高温流体側弁座、低温流体側弁座、バイアスばね、感温体ばね、付勢力調節手段、弁座位置調節手段によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、可動弁体と高温流体側弁座との隙間から流入した高温流体と、前記可動弁体と低温流体側弁座との隙間から流入した低温流体とが混合され、その混合流体が感温体ばねに接触しながら通過し、混合温度が感温体ばねに熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段は温度検出手段によって検出された混合流体温度と、温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を駆動し、混合流体温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、感温体ばねのヒステリシスや流体圧力変動および弁座位置調節手段による流量変更などによって温度偏差が瞬間的に生じても、電気的フィードバック制御により温度補正される。
【0031】さらに、電気的付勢力調節手段は手動駆動部を備えた構成で、停電時や電子制御手段等の故障時にも手動駆動部により混合温度の設定点を変更でき、混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を失うことなく使用できる。
【0032】また本発明の混合温度制御装置は上記した構成により、1つの可動弁体と高温流体側弁座、低温流体側弁座、バイアスばね、感温体ばね、付勢力調節手段、弁座位置調節手段によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、可動弁体と高温流体側弁座との隙間から流入した高温流体と、前記可動弁体と低温側弁座との隙間から流入した低温流体とが混合され、その混合流体が感温体ばねに接触しながら通過し、混合温度が感温体ばねに熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段は温度検出手段によって検出された混合流体温度と、温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を駆動し、混合物温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、感温体ばねのヒステリシスや流体圧力変動および弁座位置調節手段による流量変更などによって温度偏差が瞬間的に生じても、電気的フィードバック制御により温度補正される。
【0033】さらに、電気的付勢力調節手段はモータを前記手動駆動部を兼ねる樹脂で覆った防湿手段を備え、前記モータを電気的に駆動するか前記手動駆動部を人力で駆動するかのいずれによっても前記可動弁体のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段を備えた構成で、停電時や電子制御手段等の故障時にも手動駆動部により混合温度の設定点を変更でき、混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を失うことなく使用できるとともに、湿気の多い場所での使用が可能になる。
【0034】
【実施例】以下本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
【0035】図1は本発明の第一の実施例を示す構成図である。図1において70は、湯等の高温流体を供給する高温流体供給管であり、高温流体供給管70は混合弁71に連通している。混合弁71には、高温流体供給管70と、水等の低温流体供給管72からそれぞれ湯と水が供給される。混合弁71は、ハウジング73に設けられた高温流体入口74および低温流体入口75から湯水が供給され、可動弁体76の可動によって高温流体側弁座77および低温流体側弁座78とのスキマの距離が反比例的に変わり、湯水の混合比が調節される構成である。可動弁体76は、湯と水が周囲から内側に流入する筒状形で、バイアスばね79によって図1において右側方向に付勢されているとともに、混合流路80に設けられた温度に応じてばね定数が変化する感温体ばね81によっても図1において左側方向に付勢されている。感温体ばね81は温度に応じてばね定数が変化することから、同じ拘束長さであれば付勢力が変化することになり、可動弁体76は、バイアスばね79と感温体ばね81の付勢力が釣り合う位置へ押されて移動する。また、バイアスばね79の付勢力および感温体ばね81の付勢力を加減調節する付勢力調節手段82は、付勢力調節操作部83を回転することにより、付勢力調節雄ねじ84が回転しながら進退し、その付勢力調節雄ねじ84にバイアスばね79および感温体ばね81によって付勢されている可動ばね受け85が進退する構成である。たとえば図1において、可動ばね受け85が少し右側へ移動する方向に付勢力調節手段82を回転した場合、バイアスばね79がより圧縮されてバイアスばね79の付勢力がより大きくなり、可動弁体76も少し右へ移動し始める。すると高温流体入口74の開度が少し大きくなり、それにともなって低温流体入口75の開度が少し小さくなる。したがって混合流体の温度が少し上昇して感温体ばね81の温度も同時に上昇し、感温体ばね81の付勢力も少し大きくなる。そうして感温体ばね81の付勢力がバイアスばね79の付勢力と釣り合った時点で可動弁体76が停止する。このように、付勢力調節手段82の回転位置によって混合流体の温度が設定できるとともに、その設定温度に自動的に保持するようにバイアスばね79および感温体ばね81の付勢力の釣り合いによって可動弁体76の位置が制御される構成である。
【0036】さらに、高温流体側弁座77は弁座位置調節手段86によって進退可能な可動弁座構造であり、図1R>1において弁座位置調節手段86により高温流体側弁座77を回転すると弁座位置調節雄ねじ87によって進退し、可動弁体76と弁座77との距離を可変でき、混合流体の流量を調節できる。このときも、混合流体温度は感温体ばね81とバイアスばね79の釣り合いによって可動弁体76が作動し、付勢力調節手段82で設定された目標温度に自動的に保持されるように作用する。さらに、弁座位置調節手段86によって弁座77を図2に示す位置まで移動すると、高温流体側弁座77と可動弁体76の隙間距離および低温流体側弁座78と可動弁体76との隙間距離はいずれもゼロ、すなわち閉塞状態にできる。つまり弁座位置調節手段86の操作により、流量全開から全閉まで調節可能な構成である。なお、88は付勢力調節雌ねじ89および弁座位置調節雌ねじ90を備えたハウジングキャップである。また91は混合流体出口である。
【0037】以上の構成において本実施例の動作を説明する。付勢力調節手段82の付勢力調節操作部83により、希望する混合温度を設定した状態で、弁座位置調節手段86を操作して図1のように出湯すると、高温流体供給管70および低温流体供給管72から混合弁71の高温流体口74および低温流体入口75から、可動弁体76と高温流体側弁座77および低温流体側弁座78とのスキマの距離に応じて湯と水がそれぞれ可動弁体76の周囲から内側に流入し、混合流路80で混合され湯水混合物が感温体ばね81に接触しながら通過する。
【0038】このとき、可動弁体76は混合流体の温度に対応した感温体ばね81の付勢力と、設定温度に対応したバイアスばね79の付勢力との機械的な付勢力の釣り合いによって位置決めされる。つまり、付勢力調節手段82によって設定された希望温度に見合うバイアスばね79の付勢力に対して実際の混合流体の温度が低い場合は、感温体ばね81の付勢力の方が小さく、高温流体側弁座77と可動弁体76とのスキマ距離が拡がり、低温流体側弁座78と可動弁体76とのスキマの距離が狭まる方向に可動弁体76を移動する。
【0039】逆に、付勢力調節手段82によって設定された希望温度に見合うバイアスばね79の付勢力に対して実際の混合流体の温度が高い場合は、感温体ばね81の付勢力の方がが大きく、高温流体弁座77と可動弁体76とのスキマ距離が狭まり、低温流体弁座78と可動弁体76とのスキマの距離が拡がる方向に可動弁体76を移動する。このように、感温体ばね81の作用によって、付勢力調節手段82で設定された希望温度に常に保持されるように、自動的に機械的なフィードバック制御が機能し、可動弁体76が作動し、きめ細かな温度調節ができる。
【0040】なお、92はバイアスばね79と可動ばね受け85との間に設けたリング状のシート部材で、相互のすべりを良くしバイアスばね79の不自然なねじれを防止できる。また、感温体ばね81の当接部に設けられたリング状のシート部材93も、同様に感温体ばね81の不要なねじれ作用を防止でき、混合による良好な温度調節性能の確保のために有効である。
【0041】さらに、混合流体の全体流量を変更したい場合、図1において弁座位置調節手段86により高温流体側弁座77を回転すると弁座位置調節雄ねじ87によって進退し、可動弁体76と弁座77との距離を可変でき、混合流体の流量を任意に調節できる。このように流量を変更したときも、混合流体温度は感温体ばね81とバイアスばね79の釣り合いによって可動弁体76が作動し、付勢力調節手段82で設定された目標温度に自動的に保持されるように作用する。さらに、弁座位置調節手段86によって弁座77を図2に示す位置まで移動することにより、閉塞状態にできる。
【0042】つまり弁座位置調節手段86の操作により、全開から全閉まで任意に流量を調節できるとともに、混合流体の温度は付勢力調節手段82によって設定された温度に常に保持されるように可動弁体76が作動する。
【0043】以上のように本実施例によれば、一つの可動弁体86で流体の混合温度自動調節機能および総合流量調節の二つの機能が得られ、コンパクトで安価な混合温度制御装置を実現できる。
【0044】次に本発明の第二の実施例について、同じく図1、図2および図3を用いて説明する。なお、本発明の第一の実施例において説明した内容と重複する構成および動作については説明を省略する。図1および図2において、せん断ひずみ規制手段94として、感温体ばね81が圧縮される側に可動弁体76が移動したとき、低温流体側弁座78に当接する構成によって感温体ばね81の最大圧縮時の最大ひずみ量が規制され、感温体ばね81のせん断ひずみγが1%を越えない範囲に規制される構成である。なお、コイルばねのせん断ひずみγは、コイルばねの線径dとコイルばねのたわみδの積を、コイルばねの有効巻数nとコイルばね平均径Dの2乗とπとの積でわり算して百分率で表したもので、式で示すと、γ=(d×δ)÷(π×n×D2)×100%となる。
【0045】図3は図1に示した構成における感温体ばね81とバイアスばね79および可動弁体76について、変位と力の関係を図に表したものである。感温体ばね81は、図のように各温度と変位に応じて付勢力が変化する。またバイアスばね79は、温度に関係なく変位に応じて付勢力が直線的に変化する。バイアスばね79と感温体ばね81の変位は、弁体76の変位移動と共に反比例的に変化する構成なので、図3の各温度における感温体ばね特性の線とバイアスばね特性の線との各交点が、動作点となる。
【0046】また、高温流体全開いいかえれば低温流体全閉の弁体位置で、最高温度設定点が、感温体ばね81のせん断ひずみγが最大となる点であるが、図3にも示したように本実施例では、この位置でせん断ひずみγが1%以下になるように、せん断ひずみ規制手段94を備えた構成なので、感温体ばね81には、1%を越えるせん断ひずみが作用することはない。
【0047】したがって、本実施例の混合温度制御装置は、1つの可動弁体76と高温流体側弁座77、低温流体側弁座78、バイアスばね79、感温体ばね81、付勢力調節手段82、弁座位置調節手段86によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるとともに、感温体ばね81のせん断ひずみγを規制するせん断ひずみ規制手段94によって、形状記憶合金からなる感温体ばね81は、せん断ひずみγが1%以下の範囲内での繰り返したわみとなり、感温体ばね81の耐久性を損なうことなく、混合流体温度制御および流量調節ができる。
【0048】また、せん断ひずみγが1%より大きい場合と小さい場合を比較試験してみると、やはりヒステリシスも明らかに差異が認められ、耐久性だけでなく初期温度制御性能の面でもせん断ひずみγを所定量以下に規制するせん断ひずみ規制手段94の効果を確認することができた。
【0049】以上のように本実施例によれば、感温体ばね81は、せん断ひずみγが所定量を越えない範囲内での繰り返したわみとなり、感温体ばね81の耐久性を損なうことなく、一つの可動弁体76で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、感温体ばね81の繰り返したわみに対する耐久性を確保する混合温度制御装置が得られる。
【0050】本発明の第三の実施例は、図4に領域で示したように、−30℃から+100℃の温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなる感温体ばね81を、図1で示した混合温度制御装置に装着したもので、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体76に温度に応じてばね定数が変化し、保存・使用温度範囲(例えば−30℃から+100℃)においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなる感温体ばね81の付勢力と、その感温体ばね81の付勢方向とは反対方向の付勢力がバイアスばね79によってそれぞれ可動弁体76に作用して、それら2つのばね79、81の付勢力が釣り合う位置に可動弁体76が位置決めされ、混合弁71に流入した高温流体と低温流体は、可動弁体76の開度位置に応じた混合比の混合流体となって、感温体ばね81の周囲を通過して流出する。前記2つのばね79、81の少なくとも一方の付勢力を調節する付勢力調節手段82によって、目標の混合温度を設定することになる。
【0051】ここで感温体ばね81は、ニッケル・チタン2元系合金やニッケル・チタン3元系合金で熱処理温度400〜500℃した形状記憶合金のコイルばねで、保存・使用温度範囲(−30℃から+100℃)において、図4のようにR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態しかしないように、図1の構成において感温体ばね81の変位領域が規制されている。
【0052】つまり、可動弁体76がバイアスばね79に付勢されて低温流体側弁座78に当接した状態のとき、感温体ばね81が最も圧縮側に変位した点であり、その反対方向に可動弁体76が高温流体側弁座77に当接した状態のとき、感温体ばね81は最も伸長変位した点である。また、弁座位置調節手段86によって流量調節および図2のように全閉状態にした場合も、感温体ばね81の変位領域は上記規制範囲内である。
【0053】すなわち、感温体ばね81はこの2点の間に変位量が規制される構成であり、このような変位領域および保存・使用温度範囲(−30℃から+100℃)においては、図4のようにR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態しかしないわけである。このことにより図4でも歴然なように、M(マルテンサイト)相の領域まで相変態させた場合に較べ、ヒステリシスが圧倒的に小さい。第一の実施例で説明した機械的フィードバックによる自動温度調節動作において、温度ヒステリシスがきわめて小さく、きめ細かな温度制御が可能となるほか、マルテンサイト変態が生じないことから、繰り返したわみに対しても耐久寿命が劣化しない効果がある。
【0054】以上のように本実施例によれば、1つの可動弁体76と高温流体側弁座77、低温流体側弁座78、バイアスばね79、温度に応じてばね定数が変化し、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなる感温体ばね81、付勢力調節手段82、弁座位置調節手段86によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるとともに、感温体ばね81は、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相と母相とを繰り返す相変態しかしないように作用する。したがって、感温体ばね81の動作温度および保存温度範囲において、繰り返したわみに対する耐久性が損なわれることがなく、かつヒステリシスが小さく高い応答性で混合流体の温度が制御できる混合温度制御装置が得られる。
【0055】図5は本発明の第四の実施例を示す混合温度制御装置の構成図であり、図1の混合温度制御装置の構成との相違は、バイアスばね79の付勢力を調節するステッピングモータにてなる電気的付勢力調節手段95と、混合流体の温度を検出するサーミスタにてなる温度検出手段96と、混合流体の温度の目標値を設定する温度設定手段97と、温度検出手段96により検出された温度と温度設定手段97により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段95を制御する電子制御手段98が設けられている点である。図5において、混合流体は感温体ばね81に接触しながら通過し、混合流体の温度が感温体ばね81に熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段98は温度検出手段96により検出された混合流体温度と、温度設定手段97により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段95を駆動し、混合流体の温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、形状記憶合金にてなる感温体ばね81のヒステリシスや水圧変動および流量変更などによる温度偏差は、電気的フィードバック制御により補正される。
【0056】さらに、混合流体の全体流量を変更したい場合、図5において弁座位置調節手段86により高温流体側弁座77を回転すると弁座位置調節雄ねじ87によって進退し、可動弁体76と弁座77との距離を可変でき、混合流体の流量を任意に調節できる。このように流量を変更したときも、上記した機械的なフィードバック作用および電気的フィードバック作用とにより、混合流体温度は電気的付勢力調節手段95で設定された目標温度に自動的に保持されるように作用する。さらに、弁座位置調節手段86によって弁座77を移動することにより、全閉状態にできる。
【0057】つまり弁座位置調節手段86の操作により、全開から全閉まで任意に流量を調節できるとともに、混合流体の温度は電気的付勢力調節手段95によって設定された温度に常に保持されるように可動弁体76が作動する。
【0058】以上のように本実施例によれば、1つの可動弁体76と高温流体側弁座77、低温流体側弁座78、バイアスばね79、感温体ばね81、電気的付勢力調節手段95、弁座位置調節手段86によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、可動弁体76と高温流体側弁座77との隙間から流入した高温流体と、可動弁体76と低温流体側弁座78との隙間から流入した低温流体とが混合され、その混合流体が感温体ばね81に接触しながら通過し、混合温度が感温体ばね81に熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段98は温度検出手段によって検出された混合流体温度と、温度設定手段97により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段95を駆動し、混合流体温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、感温体ばね81のヒステリシスや流体圧力変動および弁座位置調節手段86による流量変更などによって温度偏差が瞬間的に生じても、電気的フィードバック制御により温度補正される。
【0059】このように、混合流体の過渡的温度変動は混合された混合流体が形状記憶合金製の感温体ばね81に接触しながら、機械的フィードバック制御により迅速に適合され、定常的オフセットは、温度検知手段96によって検知して電気的フィードバック制御されるので、一つの可動弁体76で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、流体圧力変動や流量変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有する混合温度制御装置が得られる。
【0060】図6は本発明の第五の実施例および第六の実施例を示す混合温度制御装置の構成図であり、図5の混合温度制御装置の構成との相違は、バイアスばね79の付勢力を調節するモータにてなる電気的付勢力調節手段99に手動駆動部100が設けられている点である。さらに、電気的付勢力調節手段99はモータを手動駆動部100を兼ねる樹脂で覆った防湿手段101を備え、モータを電気的に駆動するか手動駆動部100を人力で駆動するかのいずれによっても可動弁体76のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段102を備えた構成である。なお、103はハウジングキャップ88と樹脂製の防湿手段101との間に設けられた摺動シール部材で、湿気の侵入を防止するとともにモータからなる電気的付勢力調節手段99で可動ばね受け85を駆動するとき、前記モータ本体の回転を阻止し、付勢力調節雄ねじ84だけを回転させる摺動抵抗体の機能を兼ねるものである。手動で可動弁体76のばね付勢力を可変する場合は、手動駆動部100を手で回転するとモータ本体とともに付勢力調節雄ねじ84が回転し、可動ばね受け85を進退させる構成である。図6において、混合流体は感温体ばね81に接触しながら通過し、混合流体の温度が感温体ばね81に熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段98は温度検出手段96により検出された混合流体温度と、温度設定手段97により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段99を駆動し、混合流体の温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、形状記憶合金にてなる感温体ばね81のヒステリシスや水圧変動および流量変更などによる温度偏差は、電気的フィードバック制御により補正される。
【0061】さらに、混合流体の全体流量を変更したい場合、図6において弁座位置調節手段86により高温流体側弁座77を回転すると弁座位置調節雄ねじ87によって進退し、可動弁体76と弁座77との距離を可変でき、混合流体の流量を任意に調節できる。このように流量を変更したときも、上記した機械的なフィードバック作用および電気的フィードバック作用とにより、混合流体温度は電気的付勢力調節手段99で設定された目標温度に自動的に保持されるように作用する。さらに、弁座位置調節手段86によって弁座77を移動することにより、全閉状態にできる。
【0062】つまり弁座位置調節手段86の操作により、全開から全閉まで任意に流量を調節できるとともに、混合流体の温度は電気的付勢力調節手段99によって設定された温度に常に保持されるように可動弁体76が作動する。
【0063】以上のように本実施例によれば、1つの可動弁体76と高温流体側弁座77、低温流体側弁座78、バイアスばね79、感温体ばね81、付勢力調節手段82、弁座位置調節手段86によって混合流体の温度設定ならびに自動温度調節および流量調節ができるように作用するとともに、可動弁体76と高温流体側弁座77との隙間から流入した高温流体と、可動弁体76と低温流体側弁座78との隙間から流入した低温流体とが混合され、その混合流体が感温体ばね81に接触しながら通過し、混合温度が感温体ばね81に熱伝達され機械的にフィードバック制御され、電子制御手段98は温度検出手段96によって検出された混合流体温度と、温度設定手段97により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段99を駆動し、混合流体温度を目標値に電気的にフィードバック制御する。したがって、感温体ばね81のヒステリシスや流体圧力変動および弁座位置調節手段86による流量変更などによって温度偏差が瞬間的に生じても、電気的フィードバック制御により温度補正される。
【0064】第五の実施例によるとさらに、電気的付勢力調節手段99は手動駆動部100を備えた構成で、停電時や電子制御手段98やモータ99等の故障時にも手動駆動部100により混合温度の設定点を変更でき、混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を失うことなく使用できる。
【0065】第六の実施例によるとさらに、電気的付勢力調節手段99はモータを手動駆動部100を兼ねる樹脂で覆った防湿手段101を備え、モータを電気的に駆動するか手動駆動部100を人力で駆動するかのいずれによっても可動弁体76のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段102を備えた構成で、停電時および電子制御手段98やモータ99等の故障時にも手動駆動部100により混合温度の設定点を変更でき、混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を失うことなく使用できるとともに、湿気の多い場所での使用が可能な混合温度制御装置を提供できる。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の混合温度制御装置は、高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、その可動弁体と対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に可動弁体を付勢する感温体ばねと、それとは反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し流量を調節する弁座位置調節手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能および総合流量調節の二つの機能を実現でき、コンパクトで安価な混合温度制御装置を提供できる。
【0067】また本発明の混合温度制御装置は、可動弁体と対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に可動弁体を付勢する感温体ばねと、反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、感温体ばねのせん断ひずみγを規制するせん断ひずみ規制手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し流量を調節する弁座位置調節手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、感温体ばねの繰り返したわみに対する耐久性を確保できる。とくに感温体ばねのせん断ひずみを所定範囲内に規制するせん断ひずみ規制手段を備えた構成なので、温度たわみにおける力のヒステリシスが小さくきめ細かな温度調節ができるとともに、感温体ばねの耐久性を損なうことなく、長年にわたり変わらない性能で自動温度調節ができる。
【0068】また本発明の混合温度制御装置は、可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなり、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に可動弁体を付勢する感温体ばねと、反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し流量を調節する弁座位置調節手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、感温体ばねの使用温度および保存温度範囲において、繰り返したわみに対する耐久性を確保できるとともに、ヒステリシスが小さい混合温度制御装置を提供できる。
【0069】また本発明の混合温度制御装置は、可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に可動弁体を付勢する感温体ばねと、反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し流量を調節する弁座位置調節手段と、混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有するとともに、流体圧力変動や流量変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有する混合温度制御装置を提供できる。
【0070】また本発明の混合温度制御装置は、可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し流量を調節する弁座位置調節手段と、混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、温度検出手段により検出された温度と温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有し、水圧変動や設定温度変更などによる温度ズレのない優れた温度制御機能を有するとともに、停電時および電子制御手段等の故障時にも手動で使用可能な混合温度制御装置を提供できる。
【0071】また本発明の混合温度制御装置は、可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に可動弁体を付勢する感温体ばねと、反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、温度検出手段により検出された温度と温度設定手段により設定された目標値とに基づいて電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を備え、電気的付勢力調節手段は、モータを手動駆動部を兼ねる樹脂で覆った防湿手段を備え、モータを電気的に駆動するか手動駆動部を人力で駆動するかのいずれによっても可動弁体のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段を設けた構成なので、一つの弁体で流体の混合温度自動調節機能と総合流量調節機能を有し、湿気の多い場所で使用でき、停電時および電子制御手段等の故障時にも手動で使用可能な混合温度制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を示す混合温度制御装置の構成図
【図2】同混合温度制御装置の弁閉止状態を示す構成断面図
【図3】本発明の第二の実施例を示す混合温度制御装置の感温体ばねとバイアスばねの各変位と温度における発生付勢力の特性図
【図4】本発明の第三の実施例を示す混合温度制御装置の感温体ばねの特性図
【図5】本発明の第四の実施例を示す混合温度制御装置の構成図
【図6】本発明の第五および第六の実施例を示す混合温度制御装置の構成図
【図7】従来の混合温度制御装置の構成図
【符号の説明】
76 可動弁体
77 高温流体側弁座
78 低温流体側弁座
79 バイアスばね
81 感温体ばね
82 付勢力調節手段
86 弁座位置調節手段
94 せん断ひずみ規制手段
95 電気的付勢力調節手段
96 温度検出手段
97 温度設定手段
98 電子制御手段
99 電気的付勢力調節手段
100 手動駆動部
101 防湿手段
102 手動電気両用駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段とを備えてなる混合温度制御装置。
【請求項2】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記感温体ばねのせん断ひずみγを規制するせん断ひずみ規制手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段とを備えてなる混合温度制御装置。
【請求項3】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、保存・使用温度範囲においてR(Rhombohedral)相ないし母相の相変態をする形状記憶合金からなり、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段とを備えてなる混合温度制御装置。
【請求項4】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段とを備えてなる混合温度制御装置。
【請求項5】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段とを備えてなる混合温度制御装置。
【請求項6】高温流体と低温流体の混合比を調節する可動弁体と、前記可動弁体とそれぞれ対向して設けた高温流体側弁座および低温流体側弁座と、前記混合流体の温度上昇に伴い高温流体の割合を減少させる方向に前記可動弁体を付勢する感温体ばねと、前記可動弁体を反対方向に付勢するバイアスばねと、前記二つのばねの少なくとも一方の付勢力を可変し混合温度を調節する手動駆動部を備えた電気的付勢力調節手段と、前記二つの弁座の少なくとも一方の弁座位置を可変し前記流体の流量を調節する弁座位置調節手段と、前記混合流体の温度を検出する温度検出手段と、混合流体温度の目標値を設定する温度設定手段と、前記温度検出手段により検出された温度と前記温度設定手段により設定された目標値とに基づいて前記電気的付勢力調節手段を制御する電子制御手段を備え、前記電気的付勢力調節手段は、モータを前記手動駆動部を兼ねる樹脂で覆った防湿手段を備え、前記モータを電気的に駆動するか前記手動駆動部を人力で駆動するかのいずれによっても前記可動弁体のばね付勢力を可変する手動電気両用駆動手段を備えてなる混合温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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