説明

混注用プラグ

【課題】 筒状のプラグ本体1と、プラグ本体1の尾端側の開口部を封止する弾性材料製の栓体2とを備える混注用プラグにおいて、部品点数を削減してコストダウンを図れるようにすると共に、小型化を図れるようにした混注用プラグを提供する。
【解決手段】 プラグ本体1の尾端側の開口部の周壁部4に径方向の貫通孔7が周方向の間隔を存して複数形成され、前記開口部にこれら貫通孔7にも入り込むように弾性材料が注入され、この弾性材料で開口部を封止する栓体2が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置針の針基や輸液ラインに接続して使用する混注用プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者への点滴等を長時間中断する場合、再度留置針を患者に穿刺することなく点滴等を再開できるように、留置針の針基に混注用プラグを接続し、栓をすることが行われている。この混注用プラグは、留置針の針基に嵌合自在な雄ルアー部を先端側に有する筒状のプラグ本体と、プラグ本体の尾端側の開口部を封止する弾性材料製の栓体と、プラグ本体に外嵌させ栓体の脱落を防止するキャップとで構成されている(例えば、特許文献1参照)。そして、点滴等を再開する際には栓体に注入針を穿刺して行う。
【0003】
混注用プラグの他の使用例としては、複数の輸液チューブで構成される輸液ラインに接続されるものがある。この混注用プラグは、例えば、上記留置針の針基に接続されるタイプの混注用プラグの構成に加え、さらにプラグ本体の周壁部の中央部に径方向外方に延びるように形成された枝管を備え、この枝管の開口端部に雄ルアー部が形成されている(例えば、特許文献2参照。)。そして、2つの雄ルアー部に輸液チューブを接続し、栓体に注入針を穿刺して薬液を両輸液チューブを流れる流体に混注できるようにしている。この混注用プラグも、キャップをプラグ本体に外嵌させて栓体の脱落を防止するように構成されている。
【0004】
ここで留置針の針基に接続するタイプの混注用プラグでは、患者が衣服や手等を引掛けて留置針や混注用プラグが脱落する虞がある。このため、混注用プラグをできるだけ小型化することにより患者が衣服等を引掛け難くすることが望まれる。しかしながら、従来の混注用プラグでは、プラグ本体に栓体を挿入し、更にプラグ本体にキャップを外嵌させて組み立てる関係上、プラグ本体やキャップの径をあまり小さくし過ぎると混注用プラグの組み立て作業が非常に困難となる。また、上記輸液ラインに接続されるタイプの混注用プラグを含め、従来の混注用プラグでは栓体を抜け止めするキャップを設けているため、部品点数が増し、コストが高くなる。
【特許文献1】特公平6−26586号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】実開平3−83552号公報(第2−3頁、第7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、部品点数を削減してコストダウンを図れるようにすると共に、小型化を図れるようにした混注用プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の混注用プラグは、筒状のプラグ本体と、プラグ本体の尾端側の開口部を封止する弾性材料製の栓体とを備える混注用プラグにおいて、前記開口部の周壁部に径方向の貫通孔が周方向の間隔を存して複数形成され、前記開口部にこれら貫通孔にも入り込むように弾性材料が注入され、この弾性材料で前記栓体が形成されることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、前記栓体はプラグ本体の尾端側の開口部に弾性材料を注入することにより形成されるため、従来の混注用プラグのように、プラグ本体に栓体を挿入して組み立てる必要がない。また、従来品は栓体を成型してからプラグ本体に挿入していたが、本発明によれば、栓体を成型すると同時にプラグ本体への取付けを行うことができる。また、弾性材料は、前記貫通孔にも入り込むように開口部に注入されるため、この弾性材料により形成された栓体は貫通孔と係合状態となる。よって、キャップを備えていなくても栓体がプラグ本体から脱落することを防止できる。ゆえに、従来品のように、プラグ本体に栓体を挿入して組み立てる必要がなく、混注用プラグの製造が容易になると共に、キャップを必要としないため、部品点数も少なくなって、コストダウンを図ることができ、更に混注用プラグの小型化を図ることができる。
【0008】
ここで、プラグ本体の尾端側の開口部に貫通孔にも入り込むように弾性材料を注入する際、弾性材料が貫通孔から流れ出してプラグ本体の周壁部の外周面に張り出すようにすれば、貫通孔から周壁部の外周面に張り出した弾性材料の部分がアンカーとして機能する。このため、プラグ本体と栓体とが強固に係合し、プラグ本体から栓体が脱落することをより確実に防止できる。しかしながら、周壁部の外周面は混注用プラグを留置針の針基や輸液ラインに接続する際に指で把持される部分であるため、ここに弾性材料が存在していると、弾性材料の弾性力により指の力が直接プラグ本体に伝わらず、又、強い力を加えると弾性材料が千切れる可能性もあり、接続の操作性が悪くなる。
【0009】
この場合、前記開口部の周壁部の外周面に周方向の間隔を存して複数のリブを突設し、これら各リブ間の溝部の底部に前記各貫通孔を開口させ、前記各溝部に亘って前記弾性材料が注入されるようにすれば、溝部に注入された弾性部材によりアンカー効果が得られると共に、開口部の周壁部をリブにおいてしっかりと把持することができる。このため、接続の操作性を良好に保つことができ、有利である。
【0010】
また、前記開口部の周壁部の内周面に、前記貫通孔の形成箇所より先方に位置させて、縮径された段部を形成し、この段部に前記栓体の先端部が係合するようにすれば、注入針を栓体に穿刺する際に、栓体がプラグ本体の先方へ移動することをより確実に防止することができ、有利である。
【0011】
ここで、混注用プラグを患者に留置した留置針の針基に接続する際には、血液が凝固して血栓ができるのを防止する必要がある。このために、混注用プラグをその尾端面を下にして作業台上に置き、混注用プラグの中にヘパリンや生理食塩水等の血液凝固防止剤を充填することがある。このとき、栓体の尾端面が作業台に接触してしまうと、そのまま使用するのは衛生上好ましくなく、注入針を栓体に穿刺する前に栓体の尾端面を消毒する必要があり、面倒である。
【0012】
この場合、前記開口部の周壁部の尾端に、径方向内方に張り出すフランジ部を形成し、前記栓体の尾端面が前記フランジ部の内面と面一になるように前記栓体を形成し、前記栓体の尾端面の外周縁部が前記フランジ部に係合するようにすれば、混注用プラグを上記の如く作業台の上に置いても、栓体の尾端面が作業台に接触しない。このため、栓体の尾端面を清潔に保つことができ、有利である。また、上記の如く構成すれば、栓体の尾端面の外周縁部が前記フランジ部に係合しているため、栓体に穿刺された注入針を引き抜く際に、栓体がプラグ本体の尾方へ移動することをより確実に防止することができ、有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図1から図4を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の混注用プラグの使用状態を示す説明図、図2は実施形態の混注用プラグの断面図、図3は実施形態の混注用プラグの製造方法を示す説明図、図4は他の実施形態の混注用プラグの説明図である。
【0014】
本発明の実施形態の混注用プラグは、図1に示すように、点滴を長時間中断する際に、患者の腕Aに留置された留置針Nから血液が漏れないように栓をするために、留置針Nに接続されるものである。混注用プラグは、筒状のプラグ本体1と、プラグ本体1の尾端側の開口部を封止する弾性材料製の栓体2とからなる。点滴を長時間中断する際には、血液が固まり血栓ができるのを防止すべく、ヘパリンや生理食塩水等の血液凝固防止剤をプラグ本体1の内部に充填し、留置針Nに接続する。点滴を再開する際には、点滴用の注入針(図示省略)を栓体2に穿刺して行う。
【0015】
図2に示すように、プラグ本体1は、先端側に設けられた小径の雄ルアー部3と、尾端側に設けられた開口部の周壁部としての大径部4とから成り、雄ルアー部3において留置針Nの針基に嵌合される。大径部4の外周面には、周方向に等しい間隔を存して8つのリブ5が突設されている。そして、大径部4にはこれら各リブ5間の溝部6の底部に開口する径方向の貫通孔7が形成されている。
【0016】
栓体2は大径部4内にゴム等の弾性材料を注入して形成される。このため、従来の混注用プラグのようにプラグ本体1に栓体2を挿入して組み立てる必要がない。また、従来品は栓体を成型してからプラグ本体に挿入していたが、実施形態の混注用プラグによれば、栓体2を成型すると同時にプラグ本体1への取付けを行うことができる。よって、従来品と比較して、実施形態の混注用プラグは製造が非常に容易となる。
【0017】
又、弾性材料は貫通孔7に入り込み、更に貫通孔7を通して溝部6にまで入り込むように注入される。そのため、弾性材料により形成された栓体2は貫通孔7と係合状態となり、更に、溝部6に張り出した弾性材料の部分が抜け止め機能(アンカー機能)を発揮するアンカー部21となり、プラグ本体1と栓体2とが強固に係合する。よって、従来品のようにキャップを備えていなくても、栓体2がプラグ本体1とから脱落することを防止できる。又、キャップを必要としないため、部品点数も少なくなって、コストダウンを図ることができ、更に混注用プラグの小型化を図ることができる。
【0018】
又、大径部4の外周面をリブ5においてしっかりと把持することができるため、把持した指の力を直接プラグ本体1に伝えることができると共に、強い力を加えても溝部6内のアンカー部21は力を受けないため、アンカー部21が千切れることを防止でき、留置針Nへの接続の操作性を良好に保つことができる。
【0019】
大径部4の内周面には、貫通孔7の形成箇所より先方に位置させて、大径部4から雄ルアー部3にかけて次第に縮径する段部8が形成されている。又、大径部4の尾端には、径方向内方に張り出すフランジ部9が形成され、栓体2の尾端面はフランジ部9の内面と面一となるように形成されている。そして、栓体2の先端部は段部8に係合し、又、栓体2の尾端面の外周縁部はフランジ部9に係合する。そのため、点滴用の注入針を栓体2に穿刺する際、及び注入針を栓体2から引き抜く際に、栓体2がプラグ本体1の軸方向に移動することを防止することができる。又、栓体2の尾端面がフランジ部9の内面と面一であるため、混注用プラグの中にヘパリンや生理食塩水等の血液凝固防止剤を充填するために混注用プラグをその尾端面を下にして作業台(図示省略)の上に置いても、栓体2の尾端面が作業台に接触しない。よって、栓体2の尾端面を清潔に保つことができ、注入針を栓体2に穿刺する前に栓体2の尾端面を洗浄する手間が省ける。
【0020】
次に、プラグ本体1に弾性材料を注入して栓体2を形成する方法の一例について説明する。弾性材料を注入する際には、図3に示すように、まず中子100をプラグ本体1の先端側から段部8まで挿入して、段部8より先方に弾性材料が入り込まないようにする。そして、プラグ本体1の尾端側から注入ノズル101を、その先端がフランジ部9の内面に位置するように配置して、弾性材料を注入する。弾性材料は、大径部4内に充填され、更に貫通孔7を通過し溝部6まで入り込むように注入される。そして、弾性材料の注入をやめ、弾性材料が固化すると栓体2及びアンカー部21が形成される。
【0021】
尚、本実施形態においては、大径部4の外周面に8つのリブ5を突設し、大径部4には各リブ5間の8つの溝部6の底部の全てに貫通孔7を形成しているが、これに限られず、リブは8つ以下でも8つ以上でもよく、又貫通孔は全ての溝部の底部に形成しなくてもよい。
【0022】
以上、留置針に接続する混注用プラグに本発明を適用した実施形態について説明したが、輸液ラインに接続する図4に示す如き混注用プラグにも同様に本発明を適用できる。この混注用プラグでは、プラグ本体1の先端部に軸方向に直交してT字状に連通するように管部102を設け、一方の開口端部に雄ルアー部103を形成し、他方の開口端部に雌ルアー部104を形成している。そして各ルアー部103,104に輸液チューブ105を接続して輸液ラインを構成し、プラグ本体1の尾端の栓体2に注入針(図示省略)を穿刺して、輸液ラインを流れる流体に薬液を混注する。尚、プラグ本体1の尾端側の構造及び栓体2の構造は上記実施形態と同一であり、上記実施形態と同一の部位に上記と同一の符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の混注用プラグの使用状態を示す説明図。
【図2】実施形態の混注用プラグの断面図。
【図3】実施形態の混注用プラグの製造方法を示す説明図。
【図4】他の実施形態の混注用プラグの説明図。
【符号の説明】
【0024】
1…プラグ本体、 2…栓体、 4…大径部(尾端側の開口部の周壁部)、 5…リブ、 6…溝部、 7…貫通孔、 8…段部、 9…フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のプラグ本体と、プラグ本体の尾端側の開口部を封止する弾性材料製の栓体とを備える混注用プラグにおいて、
前記開口部の周壁部に径方向の貫通孔が周方向の間隔を存して複数形成され、前記開口部にこれら貫通孔にも入り込むように弾性材料が注入され、この弾性材料で前記栓体が形成されることを特徴とする混注用プラグ。
【請求項2】
前記開口部の周壁部の外周面に周方向の間隔を存して複数のリブが突設され、これら各リブ間の溝部の底部に前記各貫通孔が開口し、前記各溝部に亘って前記弾性材料が注入されることを特徴とする請求項1記載の混注用プラグ。
【請求項3】
前記開口部の周壁部の内周面に、前記貫通孔の形成箇所より先方に位置させて、縮径された段部が形成され、この段部に前記栓体の先端部が係合することを特徴とする請求項1又は2に記載の混注用プラグ。
【請求項4】
前記開口部の周壁部の尾端に、径方向内方に張り出すフランジ部が形成され、前記栓体の尾端面が前記フランジ部の内面と面一になるように前記栓体が形成され、前記栓体の尾端面の外周縁部が前記フランジに係合することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の混注用プラグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−158603(P2006−158603A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353554(P2004−353554)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】