混雑度測定装置
【課題】 車両などの乗客のように、移動しつつしかも人数が増減する測定対象空間の混雑状況を容易に、しかも実際の人数を反映させてより実体に近い状態で把握する。
【解決手段】 車両2内に対向して配置された1対の電極対1a、1bと、この電極対の静電容量を測定する静電容量測定器3とを有し、混雑度測定装置本体4により、静電容量測定器3が測定する静電容量を混雑度に算出する。
【解決手段】 車両2内に対向して配置された1対の電極対1a、1bと、この電極対の静電容量を測定する静電容量測定器3とを有し、混雑度測定装置本体4により、静電容量測定器3が測定する静電容量を混雑度に算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
列車車両や劇場等の、物理的又は仮想的に区切られた、測定対象空間内に存在する人間の混み具合を計測する混雑度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定の区域内における人の数を自動的に計数する装置は種々知られている。例えば、発光素子と受光素子を用いてその領域を通過する人を計数するもの(特許文献1、2参照)、テレビカメラの映像信号を処理して人数を検出するもの(特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
列車車両などの乗物内にどの位の人が居るのかを把握するのは、その人数を計数すればよいが、実際には移動する車両に乗降を繰り返す乗客の数をリアルタイムで正確に計数するのは容易ではない。
また、上記従来の自動的に人数を計数する装置は車内に持ち込むこと自体困難である上、コストも掛かるため、車内の人数を把握するのは現実的ではない。
【0004】
他方、車両に乗り降りする乗客の数は、例えばその混雑度を把握する目的であれば、必ずしも端数に至るまで正確に把握しなくともよい場合がある。
そこで、車両等の乗車状況をリアルタイムで把握するため、列車内に基地局を設け、列車が駅を発車したときに、車内の携帯電話機と通信を行うことによって、車内の携帯電話機の数を取得して、その数を管理サーバに送信することで、車内の乗客の大凡の数を把握する列車乗車情報管理装置が提案されている(特許文献4参照)。
また、これとは別に、ある特定エリア内にいる人の数を把握するために、同様に携帯電話機を用いた人数推定装置も知られている(特許文献5参照)。
【0005】
この人数推定装置は、例えば超大型テーマパークなどで、エリアに携帯電話機の電波が届く範囲であるセルを設定し、各セル毎に、当該セルの通信範囲内にある携帯電話機と通信を行ってその数を把握し、その数を特定エリア全域で集計して、当該特定エリア内に居る人数を推定するものである。
【0006】
上記従来の装置では、いずれも車内又は特定エリア内の人数の把握を携帯電話機の応答数を計数することで行っているが、当然のことながら特定のエリア内の人全員が携帯電話機を所持しているわけではなく、車内であれば優先席付近では、携帯電話の電源を切っていることがある。また、携帯電話機がかばん等の中にあり、車両内の混雑度測定用サーバと通信ができないこともあり得る。
【0007】
その他、そのエリアに居る人の年代、携帯電話機を所持していても電源をオフにしている人の割合など、従来装置による人数の推定では、不確定な要素が多いため、取得した携帯電話機の数を統計的に処理しても、得られた推定値はかなりの幅を持ったものとならざるを得ない。
さらに、乗客が保有している携帯端末を利用するため、様々な通信方式の端末と通信する必要があり、車両に搭載するサーバ側の対応、及び設備費が負担となるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−250358号公報
【特許文献2】特開平7−85330号公報
【特許文献3】特開平5−174210号公報
【特許文献4】特開2009−190585号公報
【特許文献5】特開2002−354517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、車両など乗客のように、移動しつつしかも人数が増減する測定対象空間の混雑状況を容易に、しかも実際の人数を反映させてより実体に近い状態で把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、所定の測定対象空間内に存在する人の混み具合を計測する混雑度測定装置であって、前記測定対象空間内に対向して配置された電極対と、前記電極対の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記静電容量測定手段で測定された静電容量に基づき、前記測定対象空間の混雑度を算出する混雑度算出手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記静電容量測定手段が測定する静電容量と混雑度とを関連付ける算出情報を記憶するための記憶手段を有し、前記混雑度算出手段は、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする。
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は2対以上設けられており、前記静電容量測定手段により、前記電極対のそれぞれの静電容量を測定することにより、前記測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された混雑度測定装置において、前記測定対象空間内に配置され、前記測定対象空間内の空気を挟んで対向させた1対の電極により構成される空気コンデンサと、該空気コンデンサの静電容量を測定するコンデンサ容量測定手段と、を有し、前記記憶手段は、前記測定対象空間内の温度又は湿度が異なる場合の前記空気コンデンサの容量と、その容量における前記電極対の静電容量と混雑度との関係を示す算出情報を記憶し、前記算出手段は、前記空気コンデンサの静電容量と前記電極対の静電容量に基づき、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された混雑度測定装置において、前記電極対は、前記測定対象空間内の対向面を構成する一の面上に並列に並べられた複数の第1の電極と、該電極の整列方向と直交するように前記対向面を構成する他の一の面上に並列に並べられた複数の第2の電極と、前記第1の電極のうちの一の電極と、前記第2の電極のうちの一の電極を選択して作動させる電極切替手段と、を有することを特徴とする。
請求項6に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は2対以上設けられており、前記混雑度算出手段は、前記電極対のそれぞれの静電容量の大小関係から、前記電極対のそれぞれが挟む空間の混雑度の大小関係を測定することを特徴とする。
請求項7に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は、第1の電極板と、前記第1の電極板にそれぞれ対向し、かつ、前記第1の電極板より面積の小さい2以上の第2の電極板で構成されており、前記第2の電極板は、全体として、前記第1の電極板の面積に相当する面積を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定対象空間に存在する人間の混雑度を、従来の人数推定装置等に比してより簡易な構成でより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の混雑度測定装置の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の混雑度測定装置を構成する混雑度測定装置本体の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の混雑度測定装置の算出情報の具体例を示す表である。
【図4】本発明の混雑度測定装置の動作手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の混雑度測定装置の第1の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の混雑度測定装置の第3の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の混雑度測定装置の第4の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の混雑度測定装置の第4の変形例における算出情報の例を示す表である。
【図9】本発明の混雑度測定装置の第5の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の混雑度測定装置の動作原理であるコンデンサの静電容量について説明するための図である。
【図11】本発明の混雑度測定装置の動作原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の混雑度測定装置の実施の形態を説明する。
図1は、本混雑度測定装置の構成を示す図である。
本混雑度測定装置は、測定対象空間である列車の車両2内の床及び天井に対向して配置された1対の電極1a、1bと、電極1a・1b間の静電容量を測定する静電容量測定手段である静電容量測定器3と、電極1a・1b間の静電容量から混雑度を算出するための混雑度測定装置本体4を有している。
【0014】
図2は、混雑度測定装置本体4の構成を示すブロック図である。
混雑度測定装置本体4は、外部に接続された測定器等との間でデータのやりとりを行う入出力インタフェース22と、混雑度情報の集中管理を行っている情報センター等との外部通信を行う通信インタフェース24と、一定の時間間隔で混雑度の測定を行うためのクロック25と、混雑度算出手段211を有する制御部21と、算出情報を記憶する記憶手段である記憶部23とを有している。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有している。上記混雑度算出手段211は、上記CPUを含む制御部21でプログラムを実行することにより、混雑度を算出する。
【0015】
また、記憶部23に記憶された算出情報は、例えば、図3に示すように、測定対象である車両2内に、混雑度0%(無人)から100%(満員)まで、例えば5%刻みで、その混雑度に対応する人数の乗客を収容し、そのときの電極1a・1b間の静電容量を実測して作成することができる。ここで、図3の表の上段に示す静電容量C0、C05、C10等は、それぞれ、下段の混雑度に対応して実測された電極1a・1b間の静電容量である。
なお、混雑度は、例えば、車両2の定員数に対する現在の収容人員数の比で定義される。
【0016】
上記の構成において、制御部21は、前回の測定時からの時間経過をクロック25により測定し、所定の時間が経過すると、静電容量測定器3に測定要求を送信し、車両2内部の電極1a・1b間の静電容量データを受信する。次に、制御部21は、混雑度算出手段211により、記憶部23が記憶している算出情報を参照して、受信した静電容量データに基づき混雑度を算出し、その混雑度を測定時刻情報と共に、通信インタフェース24を介して情報センターに送信する。これにより、情報センターは、時間と共に変化する車両2内の混雑度を正確かつリアルタイムで収集することができる。
【0017】
次に、本発明の混雑度測定装置の動作手順を、図4に示すフロー図に従って説明する。
まず、制御部21は、クロック25により、前回の測定時から所定の時間が経過したか否かを判定し(S101)、経過していなければ所定時間の経過を待つ(S101、No)。所定時間が経過すると(S101、Yes)、制御部21は、静電容量測定器3に測定要求を送信する(S102)。制御部21は、静電容量測定器3が測定に要する時間(測定時間)だけ待機し(S103、No)、測定時間が経過したときは(S103、Yes)、静電容量測定器3にデータ送信要求を送信し(S104)、続いて、このデータ送信要求に応じて静電容量測定器3から送信される現在の静電容量値を受信する(S105)。
【0018】
次に、混雑度算出手段211は、記憶部23が記憶している算出情報を参照して現在の静電容量値に対応する混雑度を算出する(S106)。最後に、制御部21は、算出した混雑度を、測定時刻情報と共に、通信インタフェース24を介して情報センターに送信して(S107)、処理を終了する。
【0019】
ここで、S106において行う混雑度の算出は、例えば、図3の算出情報を用いて、静電容量測定器3の測定値に最も近い静電容量がC10であれば、その静電容量C10に対応する混雑度10%を、実際の混雑度とすることができる。また、算出情報に記録されている混雑度の間隔が粗く、例えば20%間隔であったような場合には、算出情報に記録されている静電容量のうち、静電容量測定器3の測定値に最も近い2つの静電容量から、一般的な内挿法を用いて混雑度を算出することもできる。
【0020】
次に、本混雑度測定装置の変形例について説明する。
本混雑度測定装置の第1の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設け、測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することができる。
本変形例の構成の具体例を図5に示す。例えば、車両2内部に2つの電極対5a、5b及び6a、6bを設け、静電容量測定器3の測定対象をセレクタスイッチ7により切り替えて、それぞれの電極対の静電容量を測定することにより、それぞれの電極対が挟む空間の混雑度を測定することができる。
これにより、測定対象空間内の混雑の状況が部分的にどのような分布になっているか知ることができるため、本装置を、例えば安全管理などの目的に用いる場合に便利である。また、車内の混み具合等をリアルタイムで駅などで表示する場合には、車両のどのドアの周辺が混雑しているかなど、きめ細かい混雑情報を提供することができる。
【0021】
以上で説明した実施形態では、混雑度算出手段211は、記憶部23が記憶した算出情報を用いて混雑度を算出しているが、本混雑度測定装置の第2の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設け、算出情報を用いず、一方の電極対が挟む空間の静電容量と他方の電極対が挟む空間の静電容量の大小関係を単に比較するだけで、両空間の混雑度の大小関係を測定する。
本変形例は、大雑把にどちらが混んでいるか知ることができるため、この情報を、例えば車両の到着を待っている乗客に提供することにより、どちらの車両に乗ればよいかの情報として利用できる。
【0022】
本混雑度測定装置の第3の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設ける場合には、それぞれの電極対の一方の電極を共通の電極とすることができる。
本変形例の構成の具体例を図6に示す。
一般に、電極対間の静電容量は、電極対を構成する2つの電極の一方を他方に投影したときの重なり部分の面積で決まるため、共通電極8に他の電極(対向電極)5a、6aの投影が包含されるように共通電極8の大きさを設定すれば、対向電極5a、6aと共通電極8との間の混雑度をそれぞれ知ることができる。
そのため、一方の電極の数や形状を変えるだけで、測定対象空間を自由に分割して複数の測定領域を設けることができ、例えば、第1の変形例と同様に車両内の部分的な混雑度を容易に把握することができる。
【0023】
本混雑度測定装置の第4の変形例として、測定対象空間内に、測定対象空間内の空間(空気)を挟んで対向させた1対の電極で構成される空気コンデンサを用いて、測定対象空間の温湿度変化に伴う混雑度算出誤差を回避することができる。
本変形例の構成の具体例を図7に示す。
図7では、車両2の内部に空気コンデンサ10を設け、コンデンサ容量測定手段である静電容量測定器9により、その静電容量を測定する。
空気コンデンサ10の静電容量は、車両2内部の温湿度を反映するため、空気コンデンサ10の静電容量をパラメータとして算出情報を作成しておくことにより、温湿度変化による誤差を排除してより正確な混雑度を知ることができる。
したがって、本変形例は、とくに温度や湿度の変化が大きい環境下における混雑状況を正確に把握することができる。
また、例えば、図8に示すように、空気コンデンサ10の静電容量(図8のCA10、CA20等)の異なる条件下で、電極1a・1b間の静電容量と混雑度の関係を予め測定し、データグループ1、2・・・の形で算出情報を作成しておく。
実際の混雑度算出の際には、空気コンデンサ10の静電容量毎(CA10、CA20等)に作成したデータグループ1、2・・・のうち、その時点における空気コンデンサ10の静電容量に最も近いデータグループを用いて、混雑度を算出することができる。
【0024】
本混雑度測定装置の第5の変形例として、対向面上にそれぞれ複数の電極を配置し、一方の面に配された電極を他方の面に投影したときに、他方の面に配された電極との重なり領域が格子状となるように、それぞれの面の電極を配置して、測定対象空間を小さな測定領域に分割することができる。
例えば、図9に示すように、測定対象空間11を挟む2つの面の一方に第1の矩形電極12a、12bを並列に並べ、他方の面には、それらの矩形電極の整列方向と直交するように、第2の矩形電極13a、13bを並列に並べて、測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することができる。
【0025】
上述したように、電極対間の静電容量は、電極対を構成する2つの電極の一方を他方に投影したときの重なり部分の面積で決まるため、電極切替手段として、例えばスイッチ14及びスイッチ15を設け、第1の矩形電極12a、12bのうちの一の電極をスイッチ14で選択し、第2の矩形電極13a、13bのうちの一の電極をスイッチ15で選択して静電容量を測定すれば、測定対象空間11を4分割して各分割領域内の混雑度をそれぞれ測定することができる。
本変形例によれば、比較的簡単な構成で複数の混雑度測定対象空間を設定することができる。
【0026】
次に、本発明による混雑度測定装置の原理について、図10及び11を用いて説明する。
まず、コンデンサの静電容量Cの決定因子について、図10を用いて説明する。一般に、平行に配置された金属平板である上部電極30及び下部電極31で構成される平行平板コンデンサの静電容量Cは、各電極の重なり面積S、電極間の距離d、電極に挟まれた物質の誘電率εを用いて、C=εS/dで与えられる。また、誘電率εは、比誘電率εrを用いて、ε=εr・ε0(ε0:真空の誘電率(定数))であるから、C=εr・ε0・S/dとなる。すなわち、静電容量Cは、電極間に存在する電極間物質32の比誘電率に比例する。
【0027】
次に、本発明による混雑度測定装置の動作原理を、図11を用いて説明する。
図11は、測定対象空間である車両2をコンデンサとして見た場合の模式図である。
まず、図11(1)に示すように、車両2が無人のときは、車両2内の天井と床に配置した電極1a、1bが挟む空間は空気で満たされており、この電極対で構成されるコンデンサの静電容量は、空気の比誘電率(約1)で決まる。
次に、図11(2)のように、車両2に人が入ると、混雑するに従って空気が人体33に置き換えられていく。ここで、人体はその大部分が水分により構成され、水分の比誘電率は空気と比較して約80と大きいため、電極1a・1b間の空気が人体33に置き換わっていくということは、図11(3)に示すように、電極1a・1b間の空気が誘電体34に置き換わっていくことと等価であり、無人状態から満員状態まで、電極間の静電容量は単調に増加していくことになる。
【0028】
したがって、与えられた測定対象空間における電極間の静電容量Cと混雑度との関係を予め実測しておけば、現在の静電容量から混雑度を算出することができる。
なお、物質の比誘電率は周囲環境の温度や湿度により変化し、電極間に同一の誘電体が同一の体積で存在していても、温湿度が変われば電極間の静電容量は変化する。このため、上述した本実施形態の第4の変形例においては、測定対象空間の温湿度によって変化する空気コンデンサ10の静電容量をパラメータとし、空気コンデンサ10の種々の静電容量における、電極1a・1b間の静電容量と混雑度との関係を予め実測して、算出情報を準備しておくことにより、温湿度変化による混雑度の検出誤差を解消している。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、測定対象空間における混雑度を、静電容量という物理量に基づいて測定することができるため、従来の携帯電話機などを用いて人数を予測するシステムに比して、不確実な要素が少ないためより実勢に近い予測が可能である。
また、本実施形態の混雑度測定装置では、電極の設け方により、簡単に、測定対象空間を小さな測定対象領域に区切ることができる。このため、従来の携帯電話機などを用いる方法に比して、混雑度分布等を測定する場合の測定対象領域の設定が容易である。
【符号の説明】
【0030】
1a、1b、5a、5b、6a、6b、12a、12b、13a、13b・・・電極、2・・・車両、3、9・・・静電容量測定器、4・・・混雑度測定装置本体、7・・・セレクタスイッチ、8・・・共通電極、10・・・空気コンデンサ、11・・・測定対象空間、14,15・・・スイッチ、21・・・制御部、211・・・混雑度算出手段、22・・・入出力インタフェース、23・・・記憶部、24・・・通信インタフェース、25・・・クロック、30・・・上部電極、31・・・下部電極、32・・・電極間物質、33・・・人体、34・・・誘電体。
【技術分野】
【0001】
列車車両や劇場等の、物理的又は仮想的に区切られた、測定対象空間内に存在する人間の混み具合を計測する混雑度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定の区域内における人の数を自動的に計数する装置は種々知られている。例えば、発光素子と受光素子を用いてその領域を通過する人を計数するもの(特許文献1、2参照)、テレビカメラの映像信号を処理して人数を検出するもの(特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
列車車両などの乗物内にどの位の人が居るのかを把握するのは、その人数を計数すればよいが、実際には移動する車両に乗降を繰り返す乗客の数をリアルタイムで正確に計数するのは容易ではない。
また、上記従来の自動的に人数を計数する装置は車内に持ち込むこと自体困難である上、コストも掛かるため、車内の人数を把握するのは現実的ではない。
【0004】
他方、車両に乗り降りする乗客の数は、例えばその混雑度を把握する目的であれば、必ずしも端数に至るまで正確に把握しなくともよい場合がある。
そこで、車両等の乗車状況をリアルタイムで把握するため、列車内に基地局を設け、列車が駅を発車したときに、車内の携帯電話機と通信を行うことによって、車内の携帯電話機の数を取得して、その数を管理サーバに送信することで、車内の乗客の大凡の数を把握する列車乗車情報管理装置が提案されている(特許文献4参照)。
また、これとは別に、ある特定エリア内にいる人の数を把握するために、同様に携帯電話機を用いた人数推定装置も知られている(特許文献5参照)。
【0005】
この人数推定装置は、例えば超大型テーマパークなどで、エリアに携帯電話機の電波が届く範囲であるセルを設定し、各セル毎に、当該セルの通信範囲内にある携帯電話機と通信を行ってその数を把握し、その数を特定エリア全域で集計して、当該特定エリア内に居る人数を推定するものである。
【0006】
上記従来の装置では、いずれも車内又は特定エリア内の人数の把握を携帯電話機の応答数を計数することで行っているが、当然のことながら特定のエリア内の人全員が携帯電話機を所持しているわけではなく、車内であれば優先席付近では、携帯電話の電源を切っていることがある。また、携帯電話機がかばん等の中にあり、車両内の混雑度測定用サーバと通信ができないこともあり得る。
【0007】
その他、そのエリアに居る人の年代、携帯電話機を所持していても電源をオフにしている人の割合など、従来装置による人数の推定では、不確定な要素が多いため、取得した携帯電話機の数を統計的に処理しても、得られた推定値はかなりの幅を持ったものとならざるを得ない。
さらに、乗客が保有している携帯端末を利用するため、様々な通信方式の端末と通信する必要があり、車両に搭載するサーバ側の対応、及び設備費が負担となるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−250358号公報
【特許文献2】特開平7−85330号公報
【特許文献3】特開平5−174210号公報
【特許文献4】特開2009−190585号公報
【特許文献5】特開2002−354517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、車両など乗客のように、移動しつつしかも人数が増減する測定対象空間の混雑状況を容易に、しかも実際の人数を反映させてより実体に近い状態で把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、所定の測定対象空間内に存在する人の混み具合を計測する混雑度測定装置であって、前記測定対象空間内に対向して配置された電極対と、前記電極対の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記静電容量測定手段で測定された静電容量に基づき、前記測定対象空間の混雑度を算出する混雑度算出手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記静電容量測定手段が測定する静電容量と混雑度とを関連付ける算出情報を記憶するための記憶手段を有し、前記混雑度算出手段は、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする。
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は2対以上設けられており、前記静電容量測定手段により、前記電極対のそれぞれの静電容量を測定することにより、前記測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された混雑度測定装置において、前記測定対象空間内に配置され、前記測定対象空間内の空気を挟んで対向させた1対の電極により構成される空気コンデンサと、該空気コンデンサの静電容量を測定するコンデンサ容量測定手段と、を有し、前記記憶手段は、前記測定対象空間内の温度又は湿度が異なる場合の前記空気コンデンサの容量と、その容量における前記電極対の静電容量と混雑度との関係を示す算出情報を記憶し、前記算出手段は、前記空気コンデンサの静電容量と前記電極対の静電容量に基づき、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された混雑度測定装置において、前記電極対は、前記測定対象空間内の対向面を構成する一の面上に並列に並べられた複数の第1の電極と、該電極の整列方向と直交するように前記対向面を構成する他の一の面上に並列に並べられた複数の第2の電極と、前記第1の電極のうちの一の電極と、前記第2の電極のうちの一の電極を選択して作動させる電極切替手段と、を有することを特徴とする。
請求項6に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は2対以上設けられており、前記混雑度算出手段は、前記電極対のそれぞれの静電容量の大小関係から、前記電極対のそれぞれが挟む空間の混雑度の大小関係を測定することを特徴とする。
請求項7に記載された発明は、請求項1に記載された混雑度測定装置において、前記電極対は、第1の電極板と、前記第1の電極板にそれぞれ対向し、かつ、前記第1の電極板より面積の小さい2以上の第2の電極板で構成されており、前記第2の電極板は、全体として、前記第1の電極板の面積に相当する面積を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定対象空間に存在する人間の混雑度を、従来の人数推定装置等に比してより簡易な構成でより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の混雑度測定装置の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の混雑度測定装置を構成する混雑度測定装置本体の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の混雑度測定装置の算出情報の具体例を示す表である。
【図4】本発明の混雑度測定装置の動作手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の混雑度測定装置の第1の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の混雑度測定装置の第3の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の混雑度測定装置の第4の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の混雑度測定装置の第4の変形例における算出情報の例を示す表である。
【図9】本発明の混雑度測定装置の第5の変形例の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の混雑度測定装置の動作原理であるコンデンサの静電容量について説明するための図である。
【図11】本発明の混雑度測定装置の動作原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の混雑度測定装置の実施の形態を説明する。
図1は、本混雑度測定装置の構成を示す図である。
本混雑度測定装置は、測定対象空間である列車の車両2内の床及び天井に対向して配置された1対の電極1a、1bと、電極1a・1b間の静電容量を測定する静電容量測定手段である静電容量測定器3と、電極1a・1b間の静電容量から混雑度を算出するための混雑度測定装置本体4を有している。
【0014】
図2は、混雑度測定装置本体4の構成を示すブロック図である。
混雑度測定装置本体4は、外部に接続された測定器等との間でデータのやりとりを行う入出力インタフェース22と、混雑度情報の集中管理を行っている情報センター等との外部通信を行う通信インタフェース24と、一定の時間間隔で混雑度の測定を行うためのクロック25と、混雑度算出手段211を有する制御部21と、算出情報を記憶する記憶手段である記憶部23とを有している。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有している。上記混雑度算出手段211は、上記CPUを含む制御部21でプログラムを実行することにより、混雑度を算出する。
【0015】
また、記憶部23に記憶された算出情報は、例えば、図3に示すように、測定対象である車両2内に、混雑度0%(無人)から100%(満員)まで、例えば5%刻みで、その混雑度に対応する人数の乗客を収容し、そのときの電極1a・1b間の静電容量を実測して作成することができる。ここで、図3の表の上段に示す静電容量C0、C05、C10等は、それぞれ、下段の混雑度に対応して実測された電極1a・1b間の静電容量である。
なお、混雑度は、例えば、車両2の定員数に対する現在の収容人員数の比で定義される。
【0016】
上記の構成において、制御部21は、前回の測定時からの時間経過をクロック25により測定し、所定の時間が経過すると、静電容量測定器3に測定要求を送信し、車両2内部の電極1a・1b間の静電容量データを受信する。次に、制御部21は、混雑度算出手段211により、記憶部23が記憶している算出情報を参照して、受信した静電容量データに基づき混雑度を算出し、その混雑度を測定時刻情報と共に、通信インタフェース24を介して情報センターに送信する。これにより、情報センターは、時間と共に変化する車両2内の混雑度を正確かつリアルタイムで収集することができる。
【0017】
次に、本発明の混雑度測定装置の動作手順を、図4に示すフロー図に従って説明する。
まず、制御部21は、クロック25により、前回の測定時から所定の時間が経過したか否かを判定し(S101)、経過していなければ所定時間の経過を待つ(S101、No)。所定時間が経過すると(S101、Yes)、制御部21は、静電容量測定器3に測定要求を送信する(S102)。制御部21は、静電容量測定器3が測定に要する時間(測定時間)だけ待機し(S103、No)、測定時間が経過したときは(S103、Yes)、静電容量測定器3にデータ送信要求を送信し(S104)、続いて、このデータ送信要求に応じて静電容量測定器3から送信される現在の静電容量値を受信する(S105)。
【0018】
次に、混雑度算出手段211は、記憶部23が記憶している算出情報を参照して現在の静電容量値に対応する混雑度を算出する(S106)。最後に、制御部21は、算出した混雑度を、測定時刻情報と共に、通信インタフェース24を介して情報センターに送信して(S107)、処理を終了する。
【0019】
ここで、S106において行う混雑度の算出は、例えば、図3の算出情報を用いて、静電容量測定器3の測定値に最も近い静電容量がC10であれば、その静電容量C10に対応する混雑度10%を、実際の混雑度とすることができる。また、算出情報に記録されている混雑度の間隔が粗く、例えば20%間隔であったような場合には、算出情報に記録されている静電容量のうち、静電容量測定器3の測定値に最も近い2つの静電容量から、一般的な内挿法を用いて混雑度を算出することもできる。
【0020】
次に、本混雑度測定装置の変形例について説明する。
本混雑度測定装置の第1の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設け、測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することができる。
本変形例の構成の具体例を図5に示す。例えば、車両2内部に2つの電極対5a、5b及び6a、6bを設け、静電容量測定器3の測定対象をセレクタスイッチ7により切り替えて、それぞれの電極対の静電容量を測定することにより、それぞれの電極対が挟む空間の混雑度を測定することができる。
これにより、測定対象空間内の混雑の状況が部分的にどのような分布になっているか知ることができるため、本装置を、例えば安全管理などの目的に用いる場合に便利である。また、車内の混み具合等をリアルタイムで駅などで表示する場合には、車両のどのドアの周辺が混雑しているかなど、きめ細かい混雑情報を提供することができる。
【0021】
以上で説明した実施形態では、混雑度算出手段211は、記憶部23が記憶した算出情報を用いて混雑度を算出しているが、本混雑度測定装置の第2の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設け、算出情報を用いず、一方の電極対が挟む空間の静電容量と他方の電極対が挟む空間の静電容量の大小関係を単に比較するだけで、両空間の混雑度の大小関係を測定する。
本変形例は、大雑把にどちらが混んでいるか知ることができるため、この情報を、例えば車両の到着を待っている乗客に提供することにより、どちらの車両に乗ればよいかの情報として利用できる。
【0022】
本混雑度測定装置の第3の変形例として、測定対象空間内に2対以上の電極を設ける場合には、それぞれの電極対の一方の電極を共通の電極とすることができる。
本変形例の構成の具体例を図6に示す。
一般に、電極対間の静電容量は、電極対を構成する2つの電極の一方を他方に投影したときの重なり部分の面積で決まるため、共通電極8に他の電極(対向電極)5a、6aの投影が包含されるように共通電極8の大きさを設定すれば、対向電極5a、6aと共通電極8との間の混雑度をそれぞれ知ることができる。
そのため、一方の電極の数や形状を変えるだけで、測定対象空間を自由に分割して複数の測定領域を設けることができ、例えば、第1の変形例と同様に車両内の部分的な混雑度を容易に把握することができる。
【0023】
本混雑度測定装置の第4の変形例として、測定対象空間内に、測定対象空間内の空間(空気)を挟んで対向させた1対の電極で構成される空気コンデンサを用いて、測定対象空間の温湿度変化に伴う混雑度算出誤差を回避することができる。
本変形例の構成の具体例を図7に示す。
図7では、車両2の内部に空気コンデンサ10を設け、コンデンサ容量測定手段である静電容量測定器9により、その静電容量を測定する。
空気コンデンサ10の静電容量は、車両2内部の温湿度を反映するため、空気コンデンサ10の静電容量をパラメータとして算出情報を作成しておくことにより、温湿度変化による誤差を排除してより正確な混雑度を知ることができる。
したがって、本変形例は、とくに温度や湿度の変化が大きい環境下における混雑状況を正確に把握することができる。
また、例えば、図8に示すように、空気コンデンサ10の静電容量(図8のCA10、CA20等)の異なる条件下で、電極1a・1b間の静電容量と混雑度の関係を予め測定し、データグループ1、2・・・の形で算出情報を作成しておく。
実際の混雑度算出の際には、空気コンデンサ10の静電容量毎(CA10、CA20等)に作成したデータグループ1、2・・・のうち、その時点における空気コンデンサ10の静電容量に最も近いデータグループを用いて、混雑度を算出することができる。
【0024】
本混雑度測定装置の第5の変形例として、対向面上にそれぞれ複数の電極を配置し、一方の面に配された電極を他方の面に投影したときに、他方の面に配された電極との重なり領域が格子状となるように、それぞれの面の電極を配置して、測定対象空間を小さな測定領域に分割することができる。
例えば、図9に示すように、測定対象空間11を挟む2つの面の一方に第1の矩形電極12a、12bを並列に並べ、他方の面には、それらの矩形電極の整列方向と直交するように、第2の矩形電極13a、13bを並列に並べて、測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することができる。
【0025】
上述したように、電極対間の静電容量は、電極対を構成する2つの電極の一方を他方に投影したときの重なり部分の面積で決まるため、電極切替手段として、例えばスイッチ14及びスイッチ15を設け、第1の矩形電極12a、12bのうちの一の電極をスイッチ14で選択し、第2の矩形電極13a、13bのうちの一の電極をスイッチ15で選択して静電容量を測定すれば、測定対象空間11を4分割して各分割領域内の混雑度をそれぞれ測定することができる。
本変形例によれば、比較的簡単な構成で複数の混雑度測定対象空間を設定することができる。
【0026】
次に、本発明による混雑度測定装置の原理について、図10及び11を用いて説明する。
まず、コンデンサの静電容量Cの決定因子について、図10を用いて説明する。一般に、平行に配置された金属平板である上部電極30及び下部電極31で構成される平行平板コンデンサの静電容量Cは、各電極の重なり面積S、電極間の距離d、電極に挟まれた物質の誘電率εを用いて、C=εS/dで与えられる。また、誘電率εは、比誘電率εrを用いて、ε=εr・ε0(ε0:真空の誘電率(定数))であるから、C=εr・ε0・S/dとなる。すなわち、静電容量Cは、電極間に存在する電極間物質32の比誘電率に比例する。
【0027】
次に、本発明による混雑度測定装置の動作原理を、図11を用いて説明する。
図11は、測定対象空間である車両2をコンデンサとして見た場合の模式図である。
まず、図11(1)に示すように、車両2が無人のときは、車両2内の天井と床に配置した電極1a、1bが挟む空間は空気で満たされており、この電極対で構成されるコンデンサの静電容量は、空気の比誘電率(約1)で決まる。
次に、図11(2)のように、車両2に人が入ると、混雑するに従って空気が人体33に置き換えられていく。ここで、人体はその大部分が水分により構成され、水分の比誘電率は空気と比較して約80と大きいため、電極1a・1b間の空気が人体33に置き換わっていくということは、図11(3)に示すように、電極1a・1b間の空気が誘電体34に置き換わっていくことと等価であり、無人状態から満員状態まで、電極間の静電容量は単調に増加していくことになる。
【0028】
したがって、与えられた測定対象空間における電極間の静電容量Cと混雑度との関係を予め実測しておけば、現在の静電容量から混雑度を算出することができる。
なお、物質の比誘電率は周囲環境の温度や湿度により変化し、電極間に同一の誘電体が同一の体積で存在していても、温湿度が変われば電極間の静電容量は変化する。このため、上述した本実施形態の第4の変形例においては、測定対象空間の温湿度によって変化する空気コンデンサ10の静電容量をパラメータとし、空気コンデンサ10の種々の静電容量における、電極1a・1b間の静電容量と混雑度との関係を予め実測して、算出情報を準備しておくことにより、温湿度変化による混雑度の検出誤差を解消している。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、測定対象空間における混雑度を、静電容量という物理量に基づいて測定することができるため、従来の携帯電話機などを用いて人数を予測するシステムに比して、不確実な要素が少ないためより実勢に近い予測が可能である。
また、本実施形態の混雑度測定装置では、電極の設け方により、簡単に、測定対象空間を小さな測定対象領域に区切ることができる。このため、従来の携帯電話機などを用いる方法に比して、混雑度分布等を測定する場合の測定対象領域の設定が容易である。
【符号の説明】
【0030】
1a、1b、5a、5b、6a、6b、12a、12b、13a、13b・・・電極、2・・・車両、3、9・・・静電容量測定器、4・・・混雑度測定装置本体、7・・・セレクタスイッチ、8・・・共通電極、10・・・空気コンデンサ、11・・・測定対象空間、14,15・・・スイッチ、21・・・制御部、211・・・混雑度算出手段、22・・・入出力インタフェース、23・・・記憶部、24・・・通信インタフェース、25・・・クロック、30・・・上部電極、31・・・下部電極、32・・・電極間物質、33・・・人体、34・・・誘電体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定対象空間内に存在する人の混み具合を計測する混雑度測定装置であって、
前記測定対象空間内に対向して配置された電極対と、
前記電極対の静電容量を測定する静電容量測定手段と、
前記静電容量測定手段で測定された静電容量に基づき、前記測定対象空間の混雑度を算出する混雑度算出手段と、
を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記静電容量測定手段が測定する静電容量と混雑度とを関連付ける算出情報を記憶するための記憶手段を有し、
前記混雑度算出手段は、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は2対以上設けられており、
前記静電容量測定手段により、前記電極対のそれぞれの静電容量を測定することにより、前記測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された混雑度測定装置において、
前記測定対象空間内に配置され、前記測定対象空間内の空気を挟んで対向させた1対の電極により構成される空気コンデンサと、
該空気コンデンサの静電容量を測定するコンデンサ容量測定手段と、
を有し、
前記記憶手段は、前記測定対象空間内の温度又は湿度が異なる場合の前記空気コンデンサの容量と、その容量における前記電極対の静電容量と混雑度との関係を示す算出情報を記憶し、
前記算出手段は、前記空気コンデンサの静電容量と前記電極対の静電容量に基づき、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は、前記測定対象空間内の対向面を構成する一の面上に並列に並べられた複数の第1の電極と、該電極の整列方向と直交するように前記対向面を構成する他の一の面上に並列に並べられた複数の第2の電極と、
前記第1の電極のうちの一の電極と、前記第2の電極のうちの一の電極を選択して作動させる電極切替手段と、
を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は2対以上設けられており、
前記混雑度算出手段は、前記電極対のそれぞれの静電容量の大小関係から、前記電極対のそれぞれが挟む空間の混雑度の大小関係を測定することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は、第1の電極板と、前記第1の電極板にそれぞれ対向し、かつ、前記第1の電極板より面積の小さい2以上の第2の電極板で構成されており、前記第2の電極板は、全体として、前記第1の電極板の面積に相当する面積を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項1】
所定の測定対象空間内に存在する人の混み具合を計測する混雑度測定装置であって、
前記測定対象空間内に対向して配置された電極対と、
前記電極対の静電容量を測定する静電容量測定手段と、
前記静電容量測定手段で測定された静電容量に基づき、前記測定対象空間の混雑度を算出する混雑度算出手段と、
を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記静電容量測定手段が測定する静電容量と混雑度とを関連付ける算出情報を記憶するための記憶手段を有し、
前記混雑度算出手段は、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は2対以上設けられており、
前記静電容量測定手段により、前記電極対のそれぞれの静電容量を測定することにより、前記測定対象空間内の部分的な混雑度を測定することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された混雑度測定装置において、
前記測定対象空間内に配置され、前記測定対象空間内の空気を挟んで対向させた1対の電極により構成される空気コンデンサと、
該空気コンデンサの静電容量を測定するコンデンサ容量測定手段と、
を有し、
前記記憶手段は、前記測定対象空間内の温度又は湿度が異なる場合の前記空気コンデンサの容量と、その容量における前記電極対の静電容量と混雑度との関係を示す算出情報を記憶し、
前記算出手段は、前記空気コンデンサの静電容量と前記電極対の静電容量に基づき、前記記憶手段が記憶している算出情報を参照して、混雑度を算出することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は、前記測定対象空間内の対向面を構成する一の面上に並列に並べられた複数の第1の電極と、該電極の整列方向と直交するように前記対向面を構成する他の一の面上に並列に並べられた複数の第2の電極と、
前記第1の電極のうちの一の電極と、前記第2の電極のうちの一の電極を選択して作動させる電極切替手段と、
を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は2対以上設けられており、
前記混雑度算出手段は、前記電極対のそれぞれの静電容量の大小関係から、前記電極対のそれぞれが挟む空間の混雑度の大小関係を測定することを特徴とする混雑度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載された混雑度測定装置において、
前記電極対は、第1の電極板と、前記第1の電極板にそれぞれ対向し、かつ、前記第1の電極板より面積の小さい2以上の第2の電極板で構成されており、前記第2の電極板は、全体として、前記第1の電極板の面積に相当する面積を有することを特徴とする混雑度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−211402(P2011−211402A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75855(P2010−75855)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】
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