説明

清掃具

【課題】工場、倉庫または商業施設などの床面を清掃する清掃作業において、経済的、時間的および工数的負担を軽減することができる清掃具を提供する。
【解決手段】清掃具10は、床面を掃除する掃除体13と、同掃除体13を作業台車20に取り付けるための固定体14とを備えている。掃除体13は、多数の撚り糸11aを束ねた拭掃部11と、同拭掃部11を保持する筒状の保持部12とを備えている。固定体14は、紐状の本体ロープ14aと同本体ロープ14aの両端部に設けられた鉤状のフック14bとを備え、掃除体13の保持部12内に挿入された状態で配置されている。作業者は、作業台車20の底板21の下面中央部において作業台車20の幅方向に対して保持部12の軸線が平行になるように清掃具10を配置する。そして、作業台車20の底板21の縁部に固定体14の各フック14bを引っ掛けることにより、作業台車20の底板21の下方領域に清掃具10を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面上を移動可能な移動体に取り付けられて同床面を清掃する清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場、倉庫、または商業施設などの床面の清掃においては、ほうきやモップを用いた人手による清掃、またはポリッシャと呼ばれる電動の床面専用清掃機を用いた機械による清掃が行われている。一般に、これらの工場、倉庫、または商業施設などにおける清掃作業においては、清掃対象となる床面積が大きいため、清掃作業を自らが行うにしても専門の業者に依頼するにしても床面積に応じた多大な時間、手間および費用が必要となる。
【0003】
そこで、下記特許文献1〜6には、工場や倉庫などの構内で用いられている作業車に装着して床面を清掃するためのモップ、同モップなどを備える清掃具、または同モップを作業車に取り付けるための取付具がそれぞれ提案されている。また、下記特許文献7には、ショッピングセンタなどの商業施設内において来店者に利用されるショッピングカートにモップを備える清掃具を装着することにより、ショッピングカートの移動とともに床面を清掃する清掃具が提案されている。
【特許文献1】実用新案登録第3020182号公報
【特許文献2】特開平07−180122号公報
【特許文献3】特開平07−315114号公報
【特許文献4】特開平09−140649号公報
【特許文献5】特開2000−93374号公報
【特許文献6】特開2000−93375号公報
【特許文献7】実開平07−13641号公報
【0004】
しかしながら、上記各特許文献1〜7に提案されている各種清掃具は、モップを作業車やショッピングカートに装着するための取付具の部品点数が多く構成が複雑であるため、清掃具が高価になるとともに、その取り扱いが煩雑であるという問題がある。特に、工場、倉庫または商業施設においては、多数の作業車やショッピングカートが用いられているため、清掃作業に掛かる経済的、時間的および工数的負担は極めて大きい。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、工場、倉庫または商業施設などの床面を清掃する清掃作業において、経済的、時間的および工数的負担を軽減することができる清掃具を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明の特徴は、床面上を移動可能な移動体に取り付けられて同床面を清掃する清掃具において、筒状に形成された保持部に沿って下垂した状態で設けられ、床面と接触して同床面を掃除する拭掃部を備えた掃除体と、保持部内に挿入される挿入部を備え、同挿入部により保持部を支持した状態で掃除体を移動体に取り付ける固定体とを備えたことにある。
【0007】
このように構成した請求項1に係る発明の特徴によれば、清掃具は、床面を掃除する掃除体、および同掃除体を移動体に取り付けるための固定体の2つの部材で構成されている。この場合、掃除体は、拭掃部を保持する筒状の保持部内に固定体の挿入部が挿入されることにより支持されている。すなわち、清掃具は、少ない部品点数によって極めて単純に構成されている。このため、清掃具を従来に比べて安価に製造することができるとともに、床面上を移動可能な移動体に簡単かつ短時間に着脱できる。この結果、清掃作業における経済的、時間的および工数的負担を軽減することができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明の特徴は、前記清掃具において、拭掃部は、床面上に存在するゴミを拭き、または掃き取ることができる布、不織布、繊維の束およびブラシのうちの少なくとも1つを備えることにある。
【0009】
このように構成した請求項2に係る発明の特徴によれば、清掃対象となる床面の性状やゴミの種類に応じて効果的な掃除体を構成することができる。この結果、清掃具における床面の清掃能力が向上し、同床面の清掃精度および清掃効率を高めることができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明の特徴は、前記清掃具において、掃除体は、複数の拭掃部を備えるとともに、同各拭掃部がそれぞれ分離可能な状態で保持部に保持されたことにある。
【0011】
このように構成した請求項3に係る発明の特徴によれば、清掃具が取り付けられる移動体の大きさ(換言すれば、清掃面積)に応じて掃除体を拭掃部単位で分離することにより同掃除体の大きさを小さくしたり、他の掃除体を継ぎ足すことにより同掃除体の大きさを大きくしたりすることが容易に行える。このため、様々な大きさの移動体にそれぞれ最適な大きさの掃除体を装着することができる。この結果、各移動体ごとの床面の清掃能力を維持または向上させることができ、同床面の清掃精度および清掃効率を高めることができる。また、清掃具の大きさを移動体の大きさに応じて調整することができるため、清掃具の適用範囲を一層拡げることができる。さらに、使用により清掃能力が低下して耐用限度を超えた一部の拭掃部を分離して新規な拭掃部に交換することにより、掃除体の経済的な運用を図ることができる。
【0012】
また、請求項4に係る発明の特徴は、前記清掃具において、固定体は、挿入部が紐状に形成されており、掃除体を移動体に取り付けるための係止部が挿入部に設けられたことにある。
【0013】
このように構成した請求項4に係る発明の特徴によれば、固定体における挿入部が紐状に形成されるとともに、同挿入部に係止具が設けられている。このため、工場や倉庫内で用いられる各種台車から、商業施設で用いられるショッピングカートまで幅広い形態の移動体に清掃具を容易に取り付けることができる。この結果、清掃具の適用範囲を広範にすることができ、様々な事業所の床面を清掃することができる。
【0014】
また、請求項5に係る発明の特徴は、前記清掃具において、固定体は、挿入部が棒状に形成されており、棒状に形成された挿入部の一方の端部を回転自在に支持するとともに、他方の端部を着脱自在に支持する支持部と、支持部を移動体に取り付けるための紐部とで構成したことにある。
【0015】
このように構成した請求項5に係る発明の特徴によれば、拭掃部を保持する保持部は棒状に形成された挿入部によって支持され、同挿入部は支持部によって他方の端部が開放可能な状態で支持されている。これにより、掃除体を安定的に支持しながら挿入部から掃除体を容易に着脱することができる。すなわち、掃除体の着脱容易性を損なうことなく掃除体の清掃能力を維持または向上させることができる。この結果、床面の清掃精度および清掃効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(清掃具10の構成)
以下、本発明に係る清掃具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A),(B)は、本発明に係る清掃具10の全体構成を概略的に示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)に示すA−A線から見た断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この清掃具10は、工場や倉庫などで用いられる作業台車などの移動体に取り付けられて、工場や倉庫などの床面の清掃に用いられるものである。
【0017】
この清掃具10は、拭掃部11と保持部12とからなる掃除体13を備えている。拭掃部11は、清掃対象となる床面上に散在するゴミを絡めることができる撚り糸11aを互いの軸線が平行な向きで多数配置して構成された所謂モップである。この拭掃部11は、撚り糸11aの配置方向に所定の長さで区切られた1つの単位拭掃体11bを2つ備えて構成されている。本実施形態においては、直径が約2mm、長さが約170mmの撚り糸11aを幅方向(図示左右方向)に約190mm分、厚さ方向に2〜4本用いて1つの単位拭掃体11b(束)を構成している。これら2つの単位拭掃体11bは、所定の間隔(本実施形態においては、約10mm)を介して配置されるとともに、撚り糸11aの上端部11cが保持部12によって束ねられている。
【0018】
保持部12は、塩化ビニール製の方形状シートの両端部を糸12aで縫合することにより筒状に形成された部材である。この保持部12における前記縫合部分は、前記拭掃部11における上端部11cを挟んだ状態で前記方形状シートにおける両端部を縫合した保持部分C(図において破線円で示す)と、同拭掃部11の上端部11cを挟まない状態で方形状シートにおける両端部を直接縫合した分離部分S(図において破線円で示す)とで構成されている。すなわち、拭掃部11は、保持部12の軸線に沿って下垂した状態で保持されている。また、拭掃部11の上端部11cを挟まない状態で縫合された分離部分Sは糸12aが所謂折り返し縫いにより縫合されている。この保持部12における筒内には、固定体14が挿入されている。
【0019】
固定体14は、清掃具10を作業台車などの移動体に取り付けるための部材であり、主として、本体ロープ14aとフック14bとで構成されている。ロープ14aは、自由に屈曲および伸び縮みするゴム製のロープである。本実施形態においては、直径が約10mm、長さが約800mmに形成されたロープを用いている。また、フック14bは、略J字状に形成された鋼製の金具であり、ロープ14aの両端部にそれぞれ設けられている。この固定体14は、ロープ14aの両端部に設けられたフック14bが前記保持部12の筒内の外側に露出した状態で同筒内に配置されている。
【0020】
(清掃具10の作動)
次に、上記のように構成した清掃具10の使用方法について説明する。まず、作業者は、清掃具10と、同清掃具10を取り付ける対象となる作業台車20とを用意する。作業台車20は、図2(A),(B)に示すように、工場や倉庫内で用いる図示しない各種工具や計器類などの各種道具を収容した状態で移動させることができるワゴンである。この作業台車20は、上面が開放した箱状の底板21の上方に2つの棚板22,23が4つの支柱24によって固定されるとともに、同底板21の下面の四隅に作業台車20の移動を可能とする4つのキャスタ25がそれぞれ設けられて構成されている。
【0021】
作業者は、作業台車20に工具などの被収容物が積載されていない状態で、同作業台車20の底板21の下面中央部に清掃具10を取り付ける。具体的には、底板21の下面中央部において作業台車20の幅方向(図2(A)において左右方向)に対して保持部12の軸線が平行になるように清掃具10を配置する。そして、作業者は、作業台車20の底板21において垂直方向に起立した縁部に固定体14の2つのフック14bをそれぞれ引っ掛ける。これにより、作業台車20の底板21の下方領域に作業台車20の幅方向に沿って清掃具10が装着される。この場合、清掃具10における保持部12から下垂する拭掃部11は、拭掃部11における略中央部から下方部分が床面に接触した状態となる。
【0022】
このように拭掃部11が床面に接触した状態において、作業台車20が作業者により移動されると、拭掃部11は作業台車20の移動によって床面上を引き摺られる。これにより、作業台車20が移動する床面上が拭掃部11によって拭かれ、同床面上に存在するゴミが拭掃部11に付着して回収される。すなわち、作業台車20が移動した床面が清掃具20によって清掃される。この場合、床面の清掃作業は、作業台車20を操作する作業者の意図に関わらず、作業台車20を移動させるごとに自動的に行われる。
【0023】
そして、清掃具10の拭掃部11に回収したゴミが溜まり拭掃部11の清掃能力が低下した場合には、作業者は、清掃具10におけるフック14bの一方を作業台20の底板21の縁部から外して掃除体13を固定体14から抜き取る。これにより、作業者は、拭掃部11によって回収されたゴミを処分することができるとともに、汚れた拭掃部11を洗浄することができる。ゴミが取り除かれた拭掃部11、または洗浄された拭掃部11は再び固定体14によって作業台車20に装着されて清掃作業に供される。なお、拭掃部11の清掃能力が著しく低下した場合には、新規の掃除体13を用意して前記と同様の手順で作業台車20に装着する。
【0024】
また、拭掃部11における2つの単位拭掃体11bのうちの一方の清掃能力が低下した場合には、同一方の単位拭掃体11bのみを新規なものに交換することもできる。具体的には、作業者は、固定体14から掃除体13を抜き取るとともに、保持部12における分離部分Sを境として一方の単位拭掃体11bを他方の単位拭掃体11bから切り取って分離する(図1(A)ニ点鎖線参照)。この場合、保持部12における分離部分Sは、返し縫いにより縫合されているため、単位拭掃体11bにおける切断した端部がその後解れて撚り糸11bが保持部12から外れることはない。
【0025】
そして、作業者は、分離した単位拭掃体11bに相当する大きさの新規の単位拭掃体11bを用意して分離された単位拭掃体11b(使用を続ける単位掃除体11b)とともに作業台車20に装着する。これにより、清掃能力を未だ有する他方の単位拭掃体11bを活かして掃除体13を構成し床面の清掃作業を行うことができる。換言すれば、使用により清掃能力が低下して耐用限度を超えた一部の単位拭掃体11bによって掃除体13全体が耐用限度となることを防止している。
【0026】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、清掃具10は、床面を掃除する掃除体13、および同掃除体13を作業台車20に取り付けるための固定体14の2つの部材で構成されている。この場合、掃除体13は、拭掃部11を保持する筒状の保持部12内に固定体14の本体ロープ14aが挿入されることにより支持されている。すなわち、清掃具10は、少ない部品点数によって極めて単純に構成されている。このため、清掃具10を従来に比べて安価に製造することができるとともに、床面上を移動可能な作業台車20に簡単かつ短時間に着脱できる。この結果、清掃作業における経済的、時間的および工数的負担を軽減することができる。
【0027】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
例えば、上記実施形態においては、掃除体13を多数の撚り糸11aの集合であるモップで構成した。しかし、掃除体13は、作業台車20に装着された状態で床面に接触し、同床面に散在するゴミを拭き、または掃き取ることができる形態のものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、布、不織布またはブラシなどを単体でまたはこれらを組み合わせて拭掃部11を構成することができる。これによれば、清掃対象となる床面の性状やゴミの種類に応じて効果的な掃除体13を構成することができる。この結果、清掃具10における床面の清掃能力が向上し、同床面の清掃精度および清掃効率を高めることができる。なお、ゴミの吸着力を高めるための吸着剤を拭掃部11に浸み込ませて用いることにより、床面の清掃精度をより一層高めることができる。
【0029】
また、上記実施形態においては、2つの単位拭掃体11bで1つの拭掃部11を構成した。しかし、拭掃部11を構成する単位拭掃体11bの数や大きさ(単位拭掃体11bの幅方向の長さ)は、当然、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、1つの単位拭掃体11bのみ(換言すれば、単位拭掃部11bを設けない)で拭掃部13を構成してもよいし、3つ以上の単位拭掃体11bを用いて1つの拭掃部11を構成してもよい。また、2つ以上の掃除体13を組み合わせて1つの清掃体10を構成することもできる。例えば、図3(A),(B)には、上記実施形態における作業台車20より大型の作業台車30に2つの掃除体13を備えた清掃具10を装着した例を示している。
【0030】
作業台車30は、荷物WK(図において二点鎖線で示す)を積載して運搬する台車であり、荷物WKを積載する荷台31を備えている。荷台31の上面における3つの辺上には、荷崩れ防止用のパイプフレーム32が垂直方向に延びた状態で設けられている。また、荷台31の下面の四隅には、作業台車30を移動させるための4つのキャスタ33がそれぞれ設けられている。そして、この作業台車30の荷台31の下面には、2つの掃除体13を備えた清掃具10が上記実施形態と同様の態様で装着されている。すなわち、2つの掃除体13を保持する固定体14の両端部に設けられた各フック14bが最下段のパイプフレーム32にそれぞれ引っ掛けられて清掃具10が装着されている。これによれば、1つの掃除体13では幅方向の長さが不足する作業台車30にも清掃具10を装着して清掃作業を行うことができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、拭掃部11を構成する撚り糸11bの長さを全て同じ長さにして拭掃部11の丈を一定に形成した。しかし、拭掃部11の丈や形状は、清掃対象である床面やゴミの種類に応じて適宜決定されるものである。例えば、清掃具10が装着される作業台車20,30が、溝が形成された床面上を走行する場合には、同溝内に拭掃部11が入り込むように拭掃部11を構成する撚り糸11bの長さを適宜決定すればよい。すなわち、溝部に入り込む撚り糸11bの長さを他の撚り糸11bより長く形成すればよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。なお、撚り糸11bの長さを長く設定することにより、拭掃部11と床面との接触面積が大きくなり清掃具10の清掃精度を高めることができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、ゴム製のロープを用いて固定体14を構成した。しかし、固定体14は、清掃具10を作業台車20,30などの移動体に装着できるものであれば、当然、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図4(A)に示すように、化学繊維を帯状に織ったベルトを固定体15としてもよい。この固定体15は、掃除体13の保持部12内に挿入されて同掃除体13を保持した状態で両端部が重なり合う長さに形成されるとともに、同重なり合う対向部分に一対の面ファスナ15a,15bがそれぞれ設けられている。
【0033】
このように構成された固定体15を備える清掃具10は、例えば、図4(B)に示すような作業台車40、すなわち、平板状の荷台41が4つのキャスタ42によって移動可能な状態で支持された作業台車40に装着される。具体的には、作業台車40における荷台41の下面に清掃具10を配置するとともに、固定体15の両端部を荷台41の上面に巻き回して面ファスナ15a,15bによって固定する。これにより清掃部10を簡単に作業台車40に装着することができる。また、この場合、固定体15が平面状のベルトで構成されているため、固定体15上に荷物を載置した場合であっても、載置した荷物が不安定となることがない。すなわち、清掃具10を荷台41に簡単かつ確実に装着できるとともに、荷台41に積載された荷物の安定性を確保することができる。なお、図4(A),(B)における固定体15の厚さは、理解を容易にするため特に誇張して示している。
【0034】
また、上記実施例および変形例に示す固定体14,15に代えて、図5(A)〜(D)に示す固定体16を用いることもできる。固定体16は、掃除体13の保持部12内に挿入して同掃除体13を保持するステンレス材からなる棒状の挿入部16aを備えている。この挿入部16aは、一方の端部(図示左側)がL字状に屈曲して形成されており、同一方の端部が回転自在な状態でアルミニウム材からなる長尺板状の支持部16bの下面に支持されている。また、挿入部16aにおける他方の端部(図示右側)は、支持部16bの下面から突出した状態で設けられた把持部16cによって着脱自在な状態で支持されている。把持部16cは、略U字状に形成された内周部に出没自在な状態でボールプランジャ16dを備えており、挿入部16aにおける他方の端部を支持する。
【0035】
一方、支持部16bの一方の端部には、前記固定体15と同様の化学繊維を帯状に織ったベルト16eの一方の端部が固定されている。また、支持部16bの他方の端部には、ベルト16eの他方の端部が挿通した状態で支持部16bの一方の端部に向って折り返されている。このベルト16eにおける中央部上面および同中央部に対向するベルト16eの自由端下面には、一対の面ファスナ16f,16gがそれぞれ設けられている。このように構成された固定体15を備える清掃具10は、例えば、図6に示すように、平板状の荷台51が4つのキャスタ52によって移動可能な状態で支持された作業台車50に装着される。なお、作業台車50は、前記作業台車40のキャスタ42より大きなキャスタ53を備えており、荷台51の高さが荷台41より高い位置に形成された台車である。
【0036】
作業者は、作業台車50の荷台51の下面に固定体16の支持部16bを位置させるとともに、同荷台51の上面に固定体16のベルト16eを位置させた状態で同ベルト16eの自由端を引っ張って面ファスナ16a,16bを張り合わせることによって固定する。これにより清掃部10を簡単に作業台車50に装着することができ、床面の清掃作業が可能な状態となる。この場合、この変形例においても、前記変形例と同様に、固定体16上に荷物を載置した場合であっても、載置した荷物が不安定となることがない。
【0037】
そして、固定体16から掃除体13を取り外す際には、作業者は、固定体16における挿入部16aの他方(図示右側)の端部を下方に下げて把持部16eから外す。これにより、作業者は、固定体16を荷台51に装着した状態で掃除体13を取り外すことができ、掃除体13の交換などを容易に行える。
【0038】
なお、前記変形例においては、挿入部16aを支持部16bに対して回転自在な状態で支持するように構成した。しかし、挿入部16aを支持部16bに固定的に接続してもよい。具体的には、図7に示すように、挿入部16aにおける一方(図示左側)の端部を支持部16bの一方の端部下面に溶接により固定する。そして、挿入部16aにおける他方(図示右側)の端部を、いずれの部材からも支持されない状態とする。すなわち、挿入部16aは、片持ち梁の状態で支持部16bによって支持される。そして、挿入部16aにおける他方の端部には、掃除体13の抜け防止用のストッパ16hを形成しておく。これによれば、前記変形例に係る固定具16より構成を簡単にすることができるとともに、掃除体13の取り付け、取り外し作業が更に容易になる。
【0039】
また、上記実施形態および各変形例においては、作業台車20,30,40,50に対して、各1つずつの清掃具10を装着した。しかし、清掃具10を装着する数は、当然、1つに限定されるものではない。すなわち、作業台車20,30,40,50の進行方向に沿って2つ以上の清掃具10を装着するようにしてもよい。これによれば、清掃具10の清掃精度をより一層高めることができる。
【0040】
また、上記実施形態および各変形例においては、工場や倉庫において用いられる作業台車20,30,40,50に清掃具10を装着した例について説明した。しかし、本発明に係る清掃具10は、床面上を移動可能な移動体に広く適用できるものである。例えば、商業施設におけるショッピングカートに清掃具10を装着することにより、来店客によるショッピングカートの移動によって店内の床面を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A),(B)本発明の一実施形態に係る清掃具の全体構成を概略的に示しており、(A)は清掃具の正面図であり、(B)は(A)のA−A線から見た断面側面図である。
【図2】(A),(B)は図1に示す清掃具を作業台車に装着した状態を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【図3】(A),(B)は本発明の変形例に係る清掃具を作業台車に装着した状態を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【図4】(A)は本発明の他の変形例に係る清掃具を示す正面図であり、(B)は(A)に示す清掃具を作業台車に装着した状態を示す正面図である。
【図5】(A)〜(D)は本発明の変形例に係る清掃具を示しており、(A)は正面図であり、(B)は左側面図であり、(C)は右側面図であり、(D)は掃除部を取り外す状態を示した説明図である。
【図6】図5に示す清掃具を作業台車に装着した状態を示す正面図である。
【図7】本発明の他の変形例に係る清掃具を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
C…保持部分、S…分離部分、WK…荷物、10…清掃具、11…拭掃部、11a…撚り糸、11b…単位拭掃体、12…保持部、12a…糸、13…掃除体、14,15,16…固定部、14a…本体ロープ、14b…フック、15a,15b,16f,16g…面ファスナ、16a…挿入部、16b…支持部、16c…把持部、16d…ボールプランジャ、16e…ベルト、16h…ストッパ、20,30,40,50…作業台車、21…底板、31,41,51…荷台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を移動可能な移動体に取り付けられて同床面を清掃する清掃具において、
筒状に形成された保持部に沿って下垂した状態で設けられ、前記床面と接触して同床面を掃除する拭掃部を備えた掃除体と、
前記保持部内に挿入される挿入部を備え、同挿入部により前記保持部を支持した状態で前記掃除体を前記移動体に取り付ける固定体とを備えたことを特徴とする清掃具。
【請求項2】
請求項1に記載した清掃具において、
前記拭掃部は、前記床面上に存在するゴミを拭き、または掃き取ることができる布、不織布、繊維の束およびブラシのうちの少なくとも1つを備える清掃具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した清掃具において、
前記掃除体は、複数の前記拭掃部を備えるとともに、同各拭掃部がそれぞれ分離可能な状態で前記保持部に保持された清掃具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した清掃具において、
前記固定体は、前記挿入部が紐状に形成されており、
前記掃除体を前記移動体に取り付けるための係止部が前記挿入部に設けられた清掃具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した清掃具において、
前記固定体は、
前記挿入部が棒状に形成されており、
前記棒状に形成された挿入部の一方の端部を回転自在に支持するとともに、他方の端部を着脱自在に支持する支持部と、
前記支持部を前記移動体に取り付けるための紐部とで構成された清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−219815(P2009−219815A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70483(P2008−70483)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(593069325)株式会社天龍産業 (5)
【Fターム(参考)】