説明

清掃布

【課題】 基布の一方の面にパイルにより構成された拭清掃部を備えた清掃布において、導電性を有する可撓性条体を利用して清掃対象の除電を効果的に行い、帯電による塵埃付着を防いで清掃による効果を高めることができる清掃布の提供。
【解決手段】 清掃布Aは、シート状基部Sの両側縁部S1の間に、パイルPにより構成された拭清掃部Cを備える。導電性糸Tをシート状基部Sに対し長手方向に縫着しつつ、拭清掃部Cを構成するパイルPの先端位置よりも先端部が突出する多数のループを導電性立毛体Eとして形成する。導電性糸Tは多数本が平行状をなし、拭清掃部C全体に多数の導電性立毛体Eを満遍なく設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柄付きの清掃布保持用ヘッドに保持した状態又はその他の態様で、木や合成樹脂等の各種素材からなる床面、壁面、家具、自動車内等の清掃対象を拭いて清掃を行うための、パイルにより構成された拭清掃部を備えた清掃布に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4−96723号公報(特許文献1)には、被清掃物体の表面に付着した通常の塵埃や汚れを拭いて除去するのに適した布を基礎とし、この基礎布の両表面の上に、導電性を有し且つ静電気散逸性に優れた糸で、基礎布の表面に沿い且つ前記糸の少なくとも表面の一部が確実に其処の基礎布の表面よりも突出しているように、任意の方向、形状の縫いを施したことを特徴とする静電気除去機能つき清掃布が開示されている。
【0003】
この清掃布によれば、塵埃除去に適した基礎布の表面に、静電気放電糸による縫いが、ほぼ糸径だけ突出して施されているから、被清掃物体表面の静電荷は、静電気放電糸に接触した賽に清掃布の側に移動し、更にこの糸の優れた静電気散逸特性によって大気中に放逸されるものと記載されている。
【0004】
また実開平4−102955号公報(特許文献2)には、払拭により被清掃物の表面に付着した塵埃を除去する清掃布において、該清掃布の周囲に導電性または制電性を有する繊維を縫着することを特徴とする清掃布が開示されている。
【0005】
この清掃布を用いて非導電性の被清掃物の表面を拭くと、その表面に付着した塵埃は清掃布のために除去される。この時摩擦電気が生じて静電気が該表面に帯電する。そして該帯電部位が縫着した導電性繊維に接触することにより静電気は導電性繊維→人体→大地によって消失するか、導電性繊維のコロナ放電によって消失すると記載されている。
【0006】
これらの清掃布は、清掃対象を拭いた場合の摩擦による静電荷を除去することにより、清掃後の清掃対象面に塵埃が付着して清掃効果が害されることを防ぐものである。
【0007】
しかしながら、基布の一方の面にパイルにより構成された拭清掃部を備えた清掃布を用いて、パイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭いた場合に、清掃対象の除電を効果的に行って清掃の効果を高めることができる清掃布は見当たらない。
【特許文献1】特開平4−96723号公報
【特許文献2】実開平4−102955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術にした上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、基布の一方の面にパイルにより構成された拭清掃部を備えた清掃布において、導電性を有する可撓性条体を利用して清掃対象の除電を効果的に行い、帯電による塵埃付着を防いで清掃効果を高めることができる清掃布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、この目的を達成するために研究を重ねた。
【0010】
先ず、基布の一方の面にパイルにより構成された拭清掃部を備えた清掃布における基布に、前記文献記載の技術のように導電性糸等を縫着した清掃布を検討した。この清掃布のパイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭いた場合、導電性糸が清掃対象に接し難いため、清掃対象についての除電効果はほとんどなかった。
【0011】
次に、拭清掃部を構成するパイルの一部を導電性糸により構成した清掃布について除電効果を検討した。この清掃布のパイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭いた場合、ある程度の除電効果は得られたが、清掃後の清掃対象に対する塵埃付着を防いで清掃効果を高める上で十分なものとは言えなかった。
【0012】
そこで、更に検討を重ねて本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
上記目的を達成する本発明の清掃布は、
パイルにより構成された拭清掃部をシート状基部の少なくとも一方の面に備えた清掃布であって、
前記拭清掃部に、先端部がパイルの先端位置よりも突出する多数の導電性立毛体を有し、
前記導電性立毛体は、導電性を有する可撓性条体からなるものであることを特徴とする。
【0014】
この清掃布の場合、導電性を有する可撓性条体からなる多数の導電性立毛体の先端部が拭清掃部におけるパイルの先端位置よりも突出しているため、拭清掃部により清掃対象を拭いた際に、導電性立毛体のうちパイルよりも突出した部分が、清掃対象に対し線接触状に接触することとなる。
【0015】
従って、拭清掃部により清掃対象を拭くことによって、拭清掃部を構成するパイルが清掃対象の表面に接しつつ移動すると共に、多数の導電性立毛体が、それぞれ、清掃対象の表面に線接触状に比較的広く触れつつ清掃が行われる。
【0016】
そのため、パイルにより構成された拭清掃部をシート状基部の少なくとも一方の面に備えた清掃布を用いて、パイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭いた場合に、清掃対象が帯電していたとしても、清掃対象について効果的に除電することができ、帯電による塵埃付着を防いで清掃による効果を高めることができる。
【0017】
導電性立毛体によって清掃対象から除電された電荷は、例えば、コロナ放電等により大気に放電されることにより、或いは、導電性立毛体から、清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て、大地等に逃げることにより、清掃布から失われる。
【0018】
本発明の清掃布は、上記多数の導電性立毛体が1又は2以上の群を構成し、各導電性立毛体群において、その導電性立毛体群を構成する導電性立毛体が互いに導電可能に接続されているものとすることができる。
【0019】
この場合、多数の導電性立毛体が互いに導電可能に接続されることにより除電効果が高まると共に、コロナ放電がより効果的に行われ得る。
【0020】
また本発明の清掃布は、拭清掃部をシート状基部の一方の面に備え、そのシート状基部の他方の面に、導電性立毛体に導電可能に接続された導電部が露出しているものとすることができる。
【0021】
導電性立毛体によって清掃対象から除電された電荷は、前記の例のように清掃布から失われる。特に、電荷が清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て大地等に逃げる場合、導電性立毛体に導電可能に接続されてシート状基部の他方の面に露出した導電部を通じ、清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て、大地等に効果的に逃がすことができ、除電効果及び清掃効果を高めることができる。
【0022】
本発明の清掃布は、少なくとも、拭清掃部の主な拭方向における一端の端縁部付近の全長又は両端の各端縁部付近の全長にわたり、多数の導電性立毛体が満遍なく設けられているものとすることができる。
【0023】
この場合、主な拭方向において拭清掃部を移動させつつ清掃対象を拭いた場合、特に、拭清掃部の主な拭方向における一端のうち多数の導電性立毛体が満遍なく設けられている一端を後方側にして拭いた場合に、十分な除電効果が得られ、清掃効果を高めることができる。
【0024】
本発明の清掃布は、少なくとも、拭清掃部の周縁部付近の全周にわたり、多数の導電性立毛体が満遍なく設けられているものとすることができる。
【0025】
この場合、何れの方向において拭清掃部を移動させつつ清掃対象を拭いた場合にも、十分な除電効果が得られ、清掃効果を高めることができる。
【0026】
本発明の清掃布は、拭清掃部全体に多数の導電性立毛体が満遍なく設けられているものとすることができる。
【0027】
この場合、何れの方向において拭清掃部を移動させつつ清掃対象を拭いた場合にも、より効果的に清掃対象の除電を行って、清掃効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の清掃布によれば、パイルにより構成された拭清掃部に、導電性を有する可撓性条体からなる多数の導電性立毛体を有し、それらの導電性立毛体の先端部が拭清掃部におけるパイルの先端位置よりも突出する状態であるため、パイルにより構成された拭清掃部をシート状基部の少なくとも一方の面に備えた清掃布を用いて、パイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭いた場合に、清掃対象が帯電していたとしても、清掃対象について効果的に除電することができ、帯電による塵埃付着を防いで清掃効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(1)清掃対象
本発明の清掃布の清掃対象に特に限定はない。例えば、木、プラスチック、コンクリート、モルタル、タイル等の各種材料製の床面、畳、壁面、机の天板面等の各種家具、自動車車内等の様々な面に適宜使用し得る。
(2)清掃布の使用方法
【0030】
本発明の清掃布は、パイルにより構成された拭清掃部により清掃対象を拭くことに使用される。清掃対象を拭く場合には、例えば清掃布を柄又は把手等を備えた清掃布保持用ヘッド等の清掃器具の清掃布保持部に保持して使用するものとすることができる他、使用者が手で直接保持して使用することができるものであってもよい。
(3)清掃布保持手段
【0031】
本発明の清掃布を、清掃器具の清掃布保持部に保持する手段は特に限定されない。例えば、拭清掃部を下向きにした清掃布の主要部を清掃布保持部の下側に位置させてその清掃布の一部を清掃布保持部の上側又は側部等に設けたクリップ等の挟持手段等により挟持して保持するものとすることができるほか、拭清掃部を下向きにした清掃布の上面側を面ファスナー等により清掃布保持部に接合するものとすることもできる。
(4)シート状基部
【0032】
例えば各種繊維製の織布又は不織布をシート状基部(基布)として用いることができるが、これに限らない。メッシュ素材等の布以外の材料を用いることもできる。
(5)拭清掃部
【0033】
パイルにより構成された拭清掃部は、シート状基部の一方の面(通常は底面)にのみ備えるのが、より一般的であるが、シート状基部の両方の面に拭清掃部を備えるものとすることもできる。
【0034】
例えば、本発明の清掃布は、拭清掃部をシート状基部の両方の面に備え、
導電性を有する可撓性条体からなる多数の導電性立毛体が、その導電性立毛体の先端部が前記両方の面の各拭清掃部におけるパイルの先端位置よりも突出する状態をなすものとすることができる。この場合の導電性立毛体は、シート状基部に結合しているものとすることができる。またこの場合、一方の面の拭清掃部における導電性立毛体と他方の面の拭清掃部における導電性立毛体が導電可能に接続されているものとすることができる。
(6)パイル
【0035】
拭清掃部を構成するパイルは、例えばループパイル、又はカットパイル、或いはそれら両方とすることができる。パイルは、例えば拭清掃部全体に密植された状態をなすものとすることができる。パイルの素材としては、例えば、吸水性糸及び非吸水性糸の一方又は両方を用いることができ、それらの繊維は合成繊維であっても天然繊維であってもよい。
【0036】
吸水性糸としては、例えば極細合成繊維製糸を用いることができる。極細合成繊維は、例えば、海島型複合繊維の海成分を溶剤や分解剤で分離することにより製造したり、2成分以上からなる剥離型の分割繊維を使用して分離させることにより製造する等の公知の製法により製造することができる。
【0037】
非吸水性糸としては、非吸水性の合成繊維糸を用いることができる。
【0038】
シート状基部の底面からのパイルの長さは、例えば2乃至30mm程度とすることができるが、好ましくは3乃至10mmである。パイルの長さは実質上一定であるものとすることができるが、導電性立毛体の除電効果を損なわないものであれば必ずしも一定であることを要するものではない。
(7)導電性立毛体
【0039】
導電性立毛体は導電性を有する可撓性条体からなるものである。導電性立毛体を構成し得る導電性を有する可撓性条体の例としては、硫化銅等の導電性付与物質が化学結合されることにより導電性が付与された合成繊維糸、金属メッキ繊維糸、金属蒸着繊維糸、カーボン含有繊維糸、合成繊維および/または天然繊維と繊維状金属や炭素繊維等の導電繊維からなる混紡糸、導電性ポリマー繊維糸、カーボンブラック又はその他の導電材料を含有する合成樹脂製又は合成若しくは天然ゴム製の条体、導電性ポリマー製の条体等を挙げることができる。導電性立毛体としては、例えば、0.1乃至100デニールの単繊維糸又は撚糸を用いることができる。
【0040】
導電性立毛体に用いる導電性を有する可撓性条体は、木や合成樹脂等の各種素材からなる床面、壁面、家具、自動車内等の清掃対象の除電を行う上で必要な程度の導電性を有するものであればよい。
【0041】
導電性立毛体に用いる導電性を有する可撓性条体の可撓性の程度や硬さ等の物性は、清掃対象に応じ、清掃のために拭いた場合にその清掃対象を実質上傷付けることのない程度とすることが望ましい。
【0042】
導電性立毛体は、例えば、ループパイルのようなループ状及びカットパイルのようなカット状の一方又は両方の混合とすることができる。1本の可撓性条体により、互いに導電可能に接続された複数の導電性立毛体を形成するには、1本の可撓性条体により多数のループ状の導電性立毛体を形成するものとすることが好ましい。一方、清掃対象における突起部等に引っ掛って切断や脱離等の障害が発生することを防ぐ上で導電性立毛体をカット状とすることができる。
【0043】
導電性立毛体は、上向きの状態で自立可能なものでもよく、自立性が高くないか低いもの、例えば、単独では自立性が低いがパイル中で周囲のパイルにより支えられて起立状をなすものでもよい。
【0044】
導電性立毛体が拭清掃部におけるパイルの先端位置より突出する部分の長さは、例えば1mm以上、好ましくは2mm以上又は3mm以上である。4乃至10mm程度とすることもできる。清掃対象の性状或いは拭清掃部の物性や寸法等に応じ、十分な除電効果を得る上で、導電性立毛体がパイルの先端位置より突出する部分の長さを調整することができる。導電性立毛体が拭清掃部におけるパイルの先端位置より突出する部分は、上向きの状態において起立状態をなすものであってもよく、起立状態をなさないものであってもよい。
(8)導電性立毛体の結合
【0045】
導電性立毛体の基端部は、シート状基部に結合したものとすることが望ましい。シート状基部に対する導電性立毛体の基端部の結合は、例えば、導電性立毛体を構成する導電性を有する可撓性条体をシート状基部に縫着することにより、或いは、例えば導電性立毛体の基端部をシート状基部に貫通させてシート状基部の裏側に接着することにより結合させることができる。なお、導電性立毛体の基端部をパイルに結合することも可能である。
(9)導電性立毛体の導電可能な接続
【0046】
導電性立毛体が互いに導電可能に接続される態様としては、例えば、各導電性立毛体を構成する導電性の可撓性条体同士が、1本の可撓性条体により構成されているものや、導電性立毛体同士が直接接続されているもののほか、導電性立毛体同士が他の導電性材料を介して接続されているものであってもよい。
【0047】
導電性立毛体が互いに導電可能に接続されている1又は2以上の導電性立毛体群を構成している場合、導電性立毛体群は、それぞれ多数の導電性立毛体からなるものとすることが好ましい。導電性立毛体群の態様の例としては、一定の直線若しくは曲線上に多数の導電性立毛体が間隔おきに配置されたもの、一定の面上に多数の導電性立毛体が分散配置されたもの等を挙げることができる。
(10)シート状基部の他方の面における導電性立毛体に導電可能に接続された導電部の露出
【0048】
導電性立毛体に導電可能に接続された導電部としては、例えば、導電性立毛体を構成する導電性の可撓性条体のうちシート状基部の他方の面に露出した部分、導電性立毛体に接続された別の導電性材料のうちシート状基部の他方の面に露出した部分等を挙げることができる。
(11)拭清掃部の主な拭方向
【0049】
拭清掃部の主な拭方向というのは、清掃布により清掃対象面を拭く場合の主たる方向であり、長手方向とそれに直交する短手方向が定まる形状(例えば長方形、正方形、楕円形等)の場合、通常、短手方向又は長手方向である。このうち、拭く範囲が広くなる短手方向が主たる方向となることが多い。円形のように長手方向と短手方向が定まらない形状の場合、何れの方向を主たる拭方向とすることもできる。清掃布を清掃布保持用ヘッド等に保持して使用する場合の保持態様が定まっていればその清掃布の主たる拭方向も定まることが多い。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図1乃至図3は何れも本発明の1実施例としての清掃布についてのものであって、図1は模式底面図、図2は模式平面図、図3は要部模式縦断面図である。
【0052】
この実施例の清掃布Aは、長柄付きの清掃布保持用ヘッド(図示しない)に保持した状態で床面等を拭いて清掃を行うためのものである。
【0053】
清掃布Aは、ポリエステル織布製のシート状基部Sの短手方向両側に、それぞれ長手方向の全長にわたる長方形状の側縁部S1を有し、シート状基部Sの短手方向における両側縁部S1の間の長手方向全長にわたる長方形状部分における底面側に、ポリエステル/ナイロンマイクロファイバー製のループ状のパイルP(シート状基部Sの底面からのパイル長は約5mmでほぼ一定)により構成された拭清掃部Cを備える。
【0054】
清掃布Aを清掃布保持用ヘッドに保持する場合、拭清掃部Cを下方側にして清掃布保持用ヘッドの下側にシート状基部Sを位置させ、拭清掃部Cの短手方向両側の側縁部S1をそれぞれ清掃布保持用ヘッドの上側においてクリップ部等の保持部により保持する。
【0055】
拭清掃部Cには、先端部がパイルPの先端位置よりも約2mm突出する多数の導電性立毛体E(シート状基部Sの底面からの全長は約7mm)を有する。この導電性立毛体Eは、導電性糸T(導電性を有する可撓性条体)をシート状基部Sに対し長手方向に縫着しつつ、拭清掃部Cを構成するパイルPの先端位置よりも先端部が突出する多数のループを形成することにより設けられている。これらのループは、基端部がシート状基部Sに結合している多数のループ状の導電性立毛体Eを構成するものである。
【0056】
導電性立毛体Eを形成する導電性糸Tは、拭清掃部Cの短手方向の一端の端縁部付近から他端の端縁部付近に至るまで多数本(10本)が平行状に設けられている。各導電性糸Tは、シート状基部Sに対し長手方向の全長にわたり縫着されてそれぞれ多数の導電性立毛体Eを形成している。このようにして、拭清掃部C全体に多数の導電性立毛体Eが満遍なく設けられている。
【0057】
この例における導電性糸Tは、アクリルとポリエステルの混紡糸であって、硫化銅が化学結合されることにより導電性が付与されたものである。
【0058】
この清掃布Aの場合、導電性糸Tからなる多数の導電性立毛体Eの先端部が拭清掃部CにおけるパイルPの先端位置よりも突出しているため、拭清掃部Cにより清掃対象を拭いた際に、導電性立毛体EのうちパイルPよりも突出した部分が、清掃対象に対し線接触状に接触することとなる。
【0059】
従って、拭清掃部Cにより清掃対象を拭くことによって、拭清掃部Cを構成するパイルPが清掃対象の表面に接しつつ移動すると共に、多数の導電性立毛体Eが、それぞれ、清掃対象の表面に線接触状に比較的広く触れつつ清掃が行われる。
【0060】
そのため、パイルPにより構成された拭清掃部Cをシート状基部Sの底面に備えた清掃布Aを用いて、パイルPにより構成された拭清掃部Cにより清掃対象を拭いた場合に、清掃対象が帯電していたとしても、清掃対象について効果的に除電することができ、帯電による塵埃付着を防いで清掃による効果を高めることができる。
【0061】
導電性立毛体Eによって清掃対象から除電された電荷は、例えば、コロナ放電等により大気に放電されることにより、或いは、導電性立毛体Eから、清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て、大地等に逃げることにより、清掃布Aから失われる。特に、電荷が清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て大地等7に逃げる場合、シート状基部Sの上面に露出した導電性糸T(導電性立毛体Eに導電可能に接続されてシート状基部Sの上面に露出した導電部)を通じ、清掃作業者および/または清掃布保持器具を経て、大地等に効果的に逃がすことができ、除電効果及び清掃効果を高めることができる。
【0062】
また、この清掃布Aにおいては、10本の導電性糸T毎に、多数の導電性立毛体Eからなる導電性立毛体群を構成している。各導電性立毛体群は、1本の導電性糸Tからなるものであるため、その導電性立毛体群を構成する導電性立毛体Eが互いに導電可能に接続されている。よって、多数の導電性立毛体Eが互いに導電可能に接続されることにより除電効果が高まると共に、コロナ放電がより効果的に行われ得る。
【0063】
また、この清掃布Aは、拭清掃部C全体に多数の導電性立毛体Eが満遍なく設けられているので、何れの方向において拭清掃部Cを移動させつつ清掃対象を拭いた場合にも、より効果的に清掃対象の除電を行って、清掃効果を高めることができる。
【0064】
なお、上記拭清掃部Cのうち短手方向の一端の端縁部付近又は両端の端縁部付近の導電性糸Tのみを設けることにより、拭清掃部Cの主な拭方向における一端の端縁部付近の全長又は両端の各端縁部付近の全長にわたり、多数の導電性立毛体Eが満遍なく設けられている清掃布Aを得ることができる。また、拭清掃部Cのうち短手方向の両端の端縁部付近の導電性糸Tに加えて、拭清掃部Cのうち長手方向の両端の端縁部付近にもそれぞれ短手方向に導電性糸を設けてループ上の導電性立毛体Eを形成することにより、拭清掃部Cの周縁部付近の全周にわたり、多数の導電性立毛体Eが満遍なく設けられている清掃布Aを得ることができる。
【0065】
以上の実施の形態及び実施例についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】模式底面図である。
【図2】模式平面図である。
【図3】要部拡大模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
A 清掃布
C 拭清掃部
E 導電性立毛体
P パイル
S シート状基部
S1 側縁部
T 導電性糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイルにより構成された拭清掃部をシート状基部の少なくとも一方の面に備えた清掃布であって、
前記拭清掃部に、先端部がパイルの先端位置よりも突出する多数の導電性立毛体を有し、
前記導電性立毛体は、導電性を有する可撓性条体からなるものであることを特徴とする清掃布。
【請求項2】
上記導電性立毛体の基端部がシート状基部に結合している請求項1記載の清掃布。
【請求項3】
上記多数の導電性立毛体が1又は2以上の群を構成し、各導電性立毛体群において、その導電性立毛体群を構成する導電性立毛体が互いに導電可能に接続されている請求項1又は2記載の清掃布。
【請求項4】
拭清掃部をシート状基部の一方の面に備え、そのシート状基部の他方の面に、導電性立毛体に導電可能に接続された導電部が露出している請求項1、2又は3記載の清掃布。
【請求項5】
少なくとも、拭清掃部の主な拭方向における一端の端縁部付近の全長又は両端の各端縁部付近の全長にわたり、多数の導電性立毛体が満遍なく設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の清掃布。
【請求項6】
少なくとも、拭清掃部の周縁部付近の全周にわたり、多数の導電性立毛体が満遍なく設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の清掃布。
【請求項7】
拭清掃部全体に多数の導電性立毛体が満遍なく設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の清掃布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−278915(P2008−278915A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123083(P2007−123083)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】