清掃用シート
【課題】凹凸を有する清掃対象面への追従性が良好な清掃用シートを提供すること。
【解決手段】一方向に配列した複数の繊維21が接合部22によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部22から延びる該繊維21が開繊状態となっている塊状繊維集合束20が、基材シート11の少なくとも一面に複数接合されて清掃部12が形成されている清掃用シートである。塊状繊維集合束20においては、繊維21の長手方向の略中央域に接合部22が形成されていることが好ましい。
【解決手段】一方向に配列した複数の繊維21が接合部22によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部22から延びる該繊維21が開繊状態となっている塊状繊維集合束20が、基材シート11の少なくとも一面に複数接合されて清掃部12が形成されている清掃用シートである。塊状繊維集合束20においては、繊維21の長手方向の略中央域に接合部22が形成されていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面等の清掃に特に好適に用いられる清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
形状が球状である繊維集合体が種々知られている。例えば特許文献1には、ボール状のウール繊維からなり、外層部のウール繊維がフェルト化している中入り綿が記載されている。このボール状の中入り綿は、開繊されたウール繊維のスライバーを所定長さに切断して繊維片とし、対設した二面間において繊維片を挟持するとともに、該二面の双方又は一方を移動することによって繊維片を摩擦し、繊維片をボール状にすると同時に繊維片の外層部を加湿してボール状になった繊維片の外層部を縮絨しフェルト化することで製造される。
【0003】
特許文献2には、寝装具や防寒被服に用いられる詰綿体が記載されている。この詰綿体は、主体繊維と該繊維よりも20℃以上低い軟化点を有するバインダー繊維とを含む玉状綿を側地に吹き込んだ後、熱処理して一体化することで製造される。
【0004】
特許文献3には、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と熱可塑性捲縮ステープル繊維を含む球状繊維構造体が記載されている。この球状繊維構造体を構成する繊維の一部は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって熱接着されている。この球状繊維構造体は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と熱可塑性捲縮ステープル繊維を含む混合ステープル繊維を金網上に展開し、水をミスト状に噴霧しながら金網上で転動、回転させることにより造粒した後、該造粒物を水に含浸し、更に該含水造粒物内に沸騰による気泡を生じさせ、該造粒物内部に多数のセル状空隙部を形成せしめると同時に湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって該造粒物を構成する繊維の一部を熱接着することで製造される。
【0005】
以上の各文献には、それらの文献に記載されている球状の繊維集合体を、清掃用シートの素材として使用することについては何ら言及されていない。
【0006】
球状のものとは異なるが、繊維集合体を有する清掃用シートについては、例えば特許文献4に記載のものが知られている。同文献に記載の清掃用シートは、熱溶着性シートと該シートに接合して一方向に延びる多数の熱溶着性長繊維とからなる。長繊維は、これと交差する方向に延び、該長繊維の長手方向に間欠的に配設された複数の溶着線によって熱溶着性シートに接合している。この清掃用シートは、長繊維の間にごみを捕集するものであるところ、該長繊維は溶着線によってその前後が固定されているので、動きの自由度が制限されてしまい、繊維の間にごみを確実に捕集することが十分とは言えない。また、溶着線の部分においては、ごみは捕集されないので、ごみの捕集効率がよいとは言えない。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−70758号公報
【特許文献2】特開昭61−125377号公報
【特許文献3】特開2002−212868号公報
【特許文献4】特開平9−135798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した従来技術よりも種々の性能が更に向上した清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている塊状繊維集合束が、基材シートの少なくとも一面に複数接合されて清掃部が形成されている清掃用シートを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記の清掃用シートの好適な製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させて塊状繊維集合束を得、
複数の前記塊状繊維集合束を基材シートの少なくとも一面に接合させる、清掃用シートの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている、清掃用シートの清掃部として用いられる塊状繊維集合束を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、前記の塊状の開繊繊維束の好適な製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させる塊状繊維集合束の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹凸を有する清掃対象面への追従性が良好で、ごみの捕集性及び捕集効率に優れ、ボリューム感があり拭き心地の良好な清掃用シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の清掃用シートの第1の実施形態の斜視図が示されている。図2は、図1におけるII-II線断面図である。本実施形態の清掃用シート10は、基材シート11を備えている。基材シート11は、長手方向X及びそれに直交する幅方向Yを有する矩形のものである。清掃用シート10は、基材シートの一方の面上に、清掃部12を有している。清掃部12は、平面視して長手方向X及び幅方向Yを有する略矩形の形状をしている。清掃部12は、基材シート11の幅方向Yの中央域に位置している。基材シート11は、清掃部12の左右の両側縁12aから側方に延出して一対のフラップ11aを形成している。一方、長手方向Xに関し、清掃部12は、基材シート11の長手方向Xの全域に延びている。清掃部12は繊維集合体からなり、所定の厚みをもって形成されている。
【0015】
清掃部12を構成する繊維集合体は、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)になっている繊維集合束から構成されている。以下、この塊状繊維集合束について説明する。塊状繊維集合束は、図3に示す未開繊短繊維束20’から製造されるものである。未開繊短繊維束20’は、一方向に配列した複数の繊維21が、該繊維21の延びる方向と交差する方向に延びる接合部22によって互いに接合されて構成されている。接合部22は1つだけ形成されている。この未開繊短繊維束20’における接合部22から延びる繊維21が開繊されて、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)になったものが、同図に示す塊状繊維集合束20である。繊維21の開繊方法については後述する。
【0016】
図3に示す未開繊短繊維束20’は扁平なものであるが、未開繊短繊維束20’の形状はこれに限られず、例えば円柱状や角柱状、捩れ状(螺旋状)であってもよい。
【0017】
図3に示す塊状繊維集合束20においては、その略中心域に接合部22(図示せず)が存在している。そして、接合部22(図示せず)から延びる繊維21が放射状に開繊して、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)となったものが塊状繊維集合束20である。
【0018】
塊状繊維集合束20を構成する繊維21は、その繊維長が好ましくは3〜150mm、更に好ましくは5〜50mmである。繊維長をこの範囲内とすることで、繊維21の開繊状態を良好にすることができるとともに、繊維間にごみを確実に捕集することが可能となる。後述するように繊維21が捲縮を有する場合には、その捲縮を引き伸ばしてまっすぐにした状態での長さを、繊維21の長さとする。
【0019】
接合部22は、塊状繊維集合束20を構成する繊維21の長手方向の略中央域に形成されている。接合部22は、例えば繊維21の溶融及び固化によって形成されている。あるいは接着剤による接着によって形成されている。接合部22は所定幅dを有し、一方向に配向した構成繊維21の配向方向と直交する方向に延びている。接合部22の幅dは、繊維21の長さや材質、接合部22の形成手段にもよるが、0.5〜80mm、特に1〜40mmであれば、繊維21どうしを確実に接合することができる。
【0020】
一つの塊状繊維集合束20に含まれる繊維21の本数は、繊維21の太さにもよるが、好ましくは100〜10万本、更に好ましくは1000〜5万本である。繊維21の本数をこの範囲内とすることによって、開繊状態における繊維密度を、ごみの捕集に適切な値とすることができる。同様の理由から、塊状繊維集合束20の全体としての総繊度は1〜8000tex、特に10〜4000texであることが好ましい。
【0021】
繊維21の太さは、0.05〜80dtex、特に0.5〜40dtexであることが好ましい。太さをこの範囲内にすることによって、繊維21が適度な剛性を有するようになり、清掃部12が凹凸を有する清掃対象面、例えば敷居や引き戸のレールに十分に追従するようになる。また、部屋の隅並びにドアストッパー及びその周辺のような狭い場所に、清掃部12が十分に追従するようになる。さらに、ごみの捕集性が向上する。
【0022】
繊維21としては、捲縮を有するものを用いることが、ごみの捕集性が一層向上する観点から好ましい。捲縮繊維としては、二次元捲縮又は三次元捲縮したものを用いることができる。捲縮繊維は、その捲縮率(JIS L0208)が、5〜50%、特に10〜30%であることが好ましい。捲縮率は、繊維を引き伸ばしたときの長さAに対する、繊維を引き伸ばしたときの長さAと元の繊維の長さBとの差の百分率で定義され、下記の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A×100(%)
【0023】
捲縮繊維の捲縮数及び山の高さは、塊状繊維集合束20の嵩高さと関係している。詳細には、捲縮数が大きいほど、山の高さが高いほど、塊状繊維集合束20は嵩高なものとなる。この観点から、捲縮数は3〜80、特に5〜40であることが好ましい。山の高さは0.1〜8.0mm、特に0.2〜4.0mmであることが好ましい。
【0024】
前記の捲縮数は、JIS L1015に従い測定される。捲縮高さは、以下のようにして測定される。繊維21を観察し、捲縮が最も強い(高い)部分を、隣接していない3箇所以上見つける。各々の箇所で、(一本の繊維ではなく)ほぼ同じ形状に屈曲した繊維21の集合部分を見つけ、該集合部分をその形状が崩れないように切り出す。水平に載置固定した厚紙等に、切り出した繊維21を、自重以外の荷重を掛けないでかつ厚紙等が歪まないように、その長手方向のいずれか一端側において透明なテープで固定する。この固定は、繊維21に二次元的又は立体的な捲縮がある場合には、繊維21の山と谷との差が最も大きくなるように行う。繊維21を厚紙等から浮き上がらずかつできるだけ直線に近い状態にして、その写真を撮影する。この際、実寸が確認できるようにスケール等も同じ写真に含める。コピー機、スキャナー等の拡大可能な装置を用いて、得られた写真を繊維21が鮮明にわかるように拡大(好ましくは4倍以上)する。そして、拡大された繊維21のうち、捲縮が規則正しく、直線状の部分を選択する。さらに、繊維21の乱れが少ない方又はより鮮明に写っている方を目安にして天地を決定する。繊維21の集合部分の内側及び外側に注意し、隣接する谷同士の頂点をつなぐ。そして、連続する5つの山からほぼ垂直に、前記の隣接する谷と谷とをつないだ線までの距離を測定する。倍率等に注意して、5つの山それぞれについて測定し、実寸を求める。この平均をそのサンプルの測定値とする。同一のサンプルから切り出した残りの箇所についても同様に測定する。すべてのサンプルのうち、値の大きな3つを平均し、その平均値を、そのサンプルの捲縮高さとする。
【0025】
塊状繊維集合束20の大きさ(基材シート11に接合される前の大きさ)は、体積で表して0.2〜1000cm3、特に0.5〜125cm3であることが好ましい。
【0026】
清掃用シート10においては、塊状繊維集合束20が、基材シート11の一面に隙間なく配置され、該基材シート11に接合されることで清掃部12が形成されている。したがって、塊状繊維集合束20はその接合前の形状が例えば球状のものであっても、基材シート11との接合によって、該塊状繊維集合束20はある厚みをもった扁平なものとなる。この厚みが、清掃部12の厚みに相当する。塊状繊維集合束20は、単層で配置されていてもよく、あるいは2段以上の多層配置になっていてもよい。いずれの場合であっても、清掃部12のいかなる部位においても厚みがほぼ一定となるように塊状繊維集合束20は配置されている。
【0027】
図1に示すように、基材シート11と塊状繊維集合束20とは、接合点13において接合されている。接合点は、例えば基材シート11と塊状繊維集合束20の構成繊維21との融着で形成されている。あるいは、基材シート11と繊維21との接着で形成されている。接合点13は規則的に配置されていてもよく、あるいはランダムに配置されていてもよい。後述する製造方法に従えば、接合点13は、規則的に配置される。
【0028】
塊状繊維集合束20は、接合部22の位置において基材シート11と接合されていることを要しない。換言すれば、接合部22の位置に接合点13が形成されることを要しない。塊状繊維集合束20が基材シート11と接合され、該基材シート11からの脱落が起こらない限りにおいて、塊状繊維集合束20のどの位置においても該塊状繊維集合束20は基材シート11と接合されてもよい。
【0029】
清掃部12を構成する塊状繊維集合束20の総坪量は、塊状繊維集合束20の総繊度や繊維21の長さにもよるが、10〜1000g/m2、特に50〜500g/m2であることが、凹凸を有する清掃対象面へ清掃用シート10が良好に追従する点、及び清掃用シート10にボリューム感が付与され、拭き心地が良好になる点から好ましい。これに関連して、清掃部12における清掃用シート10の厚みは300Pa荷重下において、1〜100mm、特に2〜50mmであることが好ましい。
【0030】
清掃部12において、塊状繊維集合束20を構成する繊維21は、主として清掃部12の平面方向を向いている。平面方向を向いている繊維21は、すべてが同じ方向を向いているのではなく、平面内のあらゆる方向を向いている。さらに、繊維21のなかには、清掃部12の厚み方向を向いているものも多く存在する。そのうえ、繊維21の両端のうち、一端は自由端になっているので、動きの自由度が極めて高い。このように、清掃部12において繊維21は様々な方向を向いており、かつ動きの自由度が極めて高いので、清掃用シート10の清拭方向にかかわらず、繊維21の間にごみを絡め取ることができる。これに対して、例えば背景技術の項で説明した特許文献4に記載の清掃用シートは、すべての繊維が一方向に配向しているので、その方向と交差する方向に清拭を行った場合には、繊維間にごみを捕集することができるものの、その方向に沿って清拭を行った場合には、ごみの捕集効率が著しく低下してしまう。しかも、繊維の両端が固定端になっているので、繊維の動きの自由度が低く、ごみの捕集効率を高めることが容易でない。
【0031】
繊維21としては、例えば熱可塑性樹脂からなる合成繊維、コットンや麻などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維などを用いることができる。これらの繊維は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。未開繊短繊維束20’(図3参照)における接合部22の形成のしやすさや、塊状繊維集合束20と基材シート11との接合のしやすさを考慮すると、繊維21として、熱融着が容易に行える材料である熱可塑性樹脂からなる合成繊維を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂などを用いることができる。合成繊維は、単一の樹脂から構成されていてもよく、あるいは2種以上の樹脂を組み合わせてなる複合繊維(例えば芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維)であってもよい。
【0032】
繊維21には薬剤が塗工されていてもよい。ドライな乾式清掃を目的とした薬剤の塗工によって、ごみの吸着を利用した捕集性が高まる。そのような薬剤としては各種油剤成分が挙げられる。油剤成分としては、例えば、鉱物油、合成油、シリコーン油などの油剤、及び該油剤成分に界面活性剤、溶剤、酸化防止剤、香料などを混合したものを用いることができる。油剤成分をはじめとする薬剤の塗工量は、繊維21の重量に対して0.1〜50重量%程度とすることができる。
【0033】
本実施形態の清掃用シート10をウエットな湿式清掃の目的ために用いる場合には、これに洗浄剤を含浸することによって、シミ汚れや固形物のこびりつき汚れが溶解して洗浄性が高まる。洗浄剤としては、界面活性剤、溶剤、除菌剤、防腐剤、香料、水などを混合したものを用いることができる。洗浄剤の含浸量は、繊維21の重量に対して、20〜500重量%程度とすることができる。
【0034】
ドライな乾式清掃及びウエットな湿式清掃の目的のために用いられることに加え、本実施形態の清掃用シート10は、水、市販されている洗浄剤、WAX剤等の液を拭き伸ばしたり、拭き取ったり、含浸したりするといった、雑巾のような使い方をすることもできる。
【0035】
塊状繊維集合束20が固定される基材シート11としては、塊状繊維集合束20との接合の容易さの点から、例えば合成樹脂からなる各種不織布やフィルム、パルプからなる抄紙板紙、パルプに合成樹脂を混抄した抄紙板紙、あるいはそれらの複合材を用いることができる。不織布を用いる場合には、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布などが好適な例として挙げられる。これらの不織布の坪量は、強度やこしの強さ等の点から、3〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。同様の理由から、フィルムを用いる場合、その坪量は3〜500g/m2、特に10〜250g/m2であることが好ましい。抄紙板紙を用いる場合、その坪量は10〜500g/m2、特に20〜250g/m2であることが好ましい。基材シート11を構成する合成樹脂としては、繊維21を構成する合成樹脂として前述したものと同様のものを用いることができる。
【0036】
清掃用シート10は、例えば図4に示すように、清掃具100に装着されて使用される。清掃具100は、清掃用シート10が装着可能なヘッド部101及びヘッド部101に自在継手103を介して連結された棒状の柄102から構成されている。ヘッド部101の装着面(底面)は、平面視で長方形状であり、通常の使用態様においては、清掃具100は、ヘッド部101をその幅方向に移動(特に往復移動)させて清掃を行う。清掃用シート10は、基材シート11を利用して、ヘッド部101及びヘッド部101に連結された柄102を備えた清掃具100におけるヘッド部101に装着される。清掃用シート10は、基材シート11における清掃部12が設けられていない側がヘッド部101の装着面(底面)に対向するように、ヘッド部101に装着される。次に、基材シート11におけるフラップ11aをヘッド部101の上面側に折り返す。更にフラップ11aを、ヘッド部101における、放射状のスリットを有する可撓性の複数のシート保持部104内に押し込む。このように、基材シート11のフラップ11aを利用して、清掃用シート10を清掃具100のヘッド部101に固定することができる。なお、基材シート11が、後述する図11及び図12に示す実施形態のようにネット(スクリム)を含んでいる場合には、基材シート11とシート保持部104との係合力が高くなるので好ましい。本実施形態の清掃用シート10は、この状態で、例えば、フローリング、壁、天井、ガラス、鏡や家具、家電製品、家の外壁、自動車のボディなどの硬質表面の拭き清掃に用いることができる。
【0037】
次に、本実施形態の清掃用シート10の好適な製造方法について図5ないし図9を参照しながら説明する。本製造方法は、(イ)塊状繊維集合束20の製造工程と、(ロ)塊状繊維集合束20と基材シート11の接合工程に大別される。(イ)の塊状繊維集合束20の製造工程は、(イ−1)連続長繊維束の製造工程、(イ−2)未開線短繊維束の製造工程、(イ−3)塊状繊維集合束の製造工程に大別される。
【0038】
(イ−1)の連続長繊維束の製造工程では、一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成する。(イ−2)の未開線短繊維束の製造工程では、連続長繊維束を接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得る。(イ−3)の塊状繊維集合束の製造工程では、未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、接合部から延びる繊維を開繊させて、塊状繊維集合束を得る。
【0039】
先ず、(イ)の塊状繊維集合束20の製造工程について、図5ないし図8を参照しながら説明する。図5には、連続長繊維束及び未開線短繊維束の製造装置30が模式的に示されている。先ず、原料である連続長繊維の束23が、供給部31から繰り出される。連続長繊維の束23は、一方向に引き揃えられた複数の連続長繊維が束になっているものである。この連続長繊維は、目的とする塊状繊維集合束20の構成繊維21となるものである。連続長繊維の束23における連続長繊維の本数は、目的とする塊状繊維集合束20における繊維21の本数と同数であるか、又はそれよりも多い。
【0040】
繰り出された連続長繊維の束23は、開繊装置32に導入され、搬送方向と直交する方向に幅が広げられて、開繊トウ24となる。この状態を図6(a)に示す。なお、図6(a)においては、紙面の左から右への方向が搬送方向となる。図6(b)ないし(d)についても同様である。開繊装置3は、一対のブルーミングロール33,34が、連続長繊維の束23の搬送方向に沿って複数(図3では三対)設置されたものから構成される。一対のブルーミングロール33,34は、周方向に延びる多数の溝及び凸条部が軸方向に交互に配置された金属製の溝ロール33と、該溝ロール33に対向接触し、かつ周面がゴムで形成されたアンビルロール34とから構成されている。このような構成のブルーミングロール33,34は、当該技術分野において公知のものである。連続長繊維の束23は、溝ロール33とアンビルロール34との間を通過することでその幅が広げられ、開繊トウ24となる。
【0041】
開繊装置32によって得られた開繊トウ24は、薬剤塗工装置35に導入される。薬剤塗工装置においては、開繊トウ24の上下面から薬剤が塗工される。薬剤としては、先に説明したものが用いられる。薬剤の塗工には、例えば噴霧装置が用いられる。また、薬剤の塗工にグラビアロール塗工方法を用いてもよい。
【0042】
薬剤が塗工された開繊トウ24は、次いで接合装置36に導入される。接合装置36は、一対のエンボスロール36a,36bを備えている。各エンボスロール36a,36bは、それらの軸方向に延びる直線状の凸条36cが、周方向に所定間隔をおいて配置されたものからなる。各エンボスロール36a,36bは加熱可能になっている。回転状態において、一方のエンボスロール36aにおける凸条36cは、他方のエンボスロール36bにおける凸条36cと対向接触するようになっている。開繊トウ24が両ロール間を通過するときに、熱及び圧力の作用によって、開繊トウ24を構成する連続長繊維が溶融固化し、該開繊トウ24には、それを構成する連続長繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部22’が形成される。この状態を図6(b)に示す。図6(b)に示すように接合部22’は、開繊トウ24を構成する連続長繊維の延びる方向と直交する方向に延びている。図6(b)においては接合部22’は、開繊トウ24を構成する連続長繊維の延びる方向と直交する方向に延びる直線で示されているが、これに代えて斜め方向に延びる直線や、曲線であってもよい。各接合部22’の間の距離は一定になっている。接合部22’の形成によって、連続長繊維は互いに接合される。接合部22’は、先に説明した図2に示す未開繊短繊維束における接合部22に対応するものである。
【0043】
複数の接合部22’が形成された開繊トウ24は、スリッター37に導入される。スリッター37は、複数の円形刃がロールの軸方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール37aと、アンビルロール37bとから構成されている。開繊トウ24がスリッター37に導入されることで、該開繊トウ24は、連続長繊維の延びる方向に沿って、かつ幅方向にわたって所定間隔をおいて切断される。これによって、図6(c)に示すように、開繊トウ24をその幅方向にわたって複数に切断してなる複数の連続長繊維束25が形成される。
【0044】
各連続長繊維束25は、図5に示すように、幅方向裁断装置38に導入される。幅方向裁断装置38は、ロールの軸方向に延びる凸条刃38cが、周方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール38aと、該第1のロール38aに対向配置されたアンビルロール38bとを備えている。両ロール38a,38bは、第1のロール38aにおける凸条刃38cが、アンビルロール38bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。連続長繊維束25が、幅方向裁断装置38における両ロール間に導入されることで、該連続長繊維束25は、図6(d)に示すように、接合部22’間の位置(同図中、一点鎖線で表す位置)において幅方向に沿って切断される。この切断によって、目的とする未開繊短繊維束20’が得られる。
【0045】
以上が、原料である連続長繊維の束23から未開繊短繊維束20’を製造する工程であるところ、別の手順によっても未開繊短繊維束20’を製造することができる。この製造方法を図7(a)及び(b)を参照しながら説明する。本製造方法においては、原料である連続長繊維の束23から開繊トウ24を形成し、これに油剤を塗工する工程までは、図5及び図6に示す製造方法と同じである。油剤が塗工された開繊トウ24は、分割装置39に導入されて、連続長繊維の延びる方向に沿って、かつ幅方向にわたって所定間隔をおいて複数に分割され、複数の分割開繊トウ26となる。この状態を図7(b)に示す。分割装置39は、一対のブルーミングロール39a,39bが、開繊トウ24の搬送方向に沿って複数(図7(a)では三対)設置されたものから構成される。一対のブルーミングロール39a,39bは、周方向に延びる多数の溝及び凸条部が軸方向に交互に配置された金属製の溝ロール39aと、該溝ロール39aに対向接触し、かつ周面がゴムで形成されたアンビルロール39bとから構成されている。溝ロール39aにおける溝の配置は、開繊トウ24がその幅方向にわたり複数に分割されるような配置になっている。分割装置39によって得られた各分割開繊トウ26における連続長繊維の本数は、目的とする未開繊短繊維束20’における繊維21の本数と同じになっている。
【0046】
各分割開繊トウ26は、次いで接合装置36に導入される。この接合装置36は、図5に示すものと同じである。接合装置36を用いた熱及び圧力の作用によって、分割開繊トウ26を構成する連続長繊維が溶融固化し、該分割開繊トウ26には、それを構成する連続長繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部22’が形成される。この状態は図6(c)に示す状態と同じである。これによって複数の連続長繊維束25が形成される。この連続長繊維束25は、幅方向裁断装置38に導入される。この幅方向裁断装置38、図5に示すものと同じである。幅方向裁断装置38によって、連続長繊維束25は、接合部22’間の位置において幅方向に切断される。この状態は図6(d)に示す状態と同じである。この切断によって、目的とする未開繊短繊維束20’が得られる。
【0047】
図5に示す装置又は図7に示す装置を用いて製造された未開繊短繊維束20’は、開繊工程に付される。開繊工程の詳細を、図8(a)及び(b)を参照しながら説明する。未開繊短繊維束20’は、図8(a)に示すように、気密状態になっている中空のチャンバ40内に入れられる。チャンバ40には、該チャンバ40の中へ流体を導入するための導入部41と、チャンバ40内へ導入された流体を外部へ排出するための排出部42とを備えている。
【0048】
導入部41を通じてチャンバ40の中へ流体を導入すると、導入された流体はチャンバ40の中で乱流となる。その乱流によって未開繊短繊維束20’がかき乱される。その結果、図8(b)に示すように、未開繊短繊維束20’における接合部22から延びる繊維21が開繊され、該接合部22を中心として略放射状に広がる。このようにして、目的とする塊状繊維集合束20が得られる。
【0049】
開繊に用いられる流体としては、気体及び液体が挙げられる。気体としては、空気を用いることが経済性の観点や取り扱い性の観点から有利であるが、これ以外の気体、例えば窒素などを用いても差し支えない。可燃性や爆発性のある気体は取り扱いが容易でない。液体としては、揮発性の高いものを用いることが好ましい。流体としては、水を用いることが経済性の観点や取り扱い性の観点から有利である。
【0050】
流体として例えば気体である空気を用いる場合には、気体にエネルギー(圧力)を与える圧縮機、気体を送り込むブロア送風機等の装置により、導入部41からチャンバ40内へ気体を導入し、排出部42により気体を外部へ排出させることによりチャンバ40内に気体の乱流が起こる。未開繊短繊維束20’を構成する繊維の捲縮数、山高さ、繊維本数、繊維長さ、繊維太さや、チャンバ40内への未開繊短繊維束20’の投入数量、チャンバ内体積量の状態によって異なるが、目的とする塊状繊維集合束20を得るための吐き出し空気量は0.5〜100m3/min、吐き出し圧力は0.1〜1.0MPaとすることが好ましい。
【0051】
図8に示す装置を用いた開繊方法に代えて、例えばカード機を用いた開繊方法を採用してもよい。あるいは、木材パルプを機械的に解砕する装置である撹拌ロータを用いた撹拌方法を採用してもよい。
【0052】
次いで、得られた塊状繊維集合束20と基材シート11とを固定する工程である前記の(ロ)の工程を行う。この工程を、図9を参照しながら説明する。図9に示す製造装置50においては、先ず、基材シート11の原反ロール11aから原反11’が繰り出される。繰り出された原反11’の一方の面上に、塊状繊維集合束20が配置される。この配置には、サクション装置51が用いられる。サクション装置51は、吸引パイプ52を備えている。吸引パイプ52の一端は、複数の塊状繊維集合束20が収容されている収容ボックス53内に位置している。吸引パイプ52の他端は、原反11’の一方の面と対向するように、該面から所定間隔をおいて該面上に位置している。吸引パイプ52の他端は、原反11’の幅方向に延びる横長の開口部52’を有している。
【0053】
サクション装置51を起動させて、収容ボックス53内に収容されている塊状繊維集合束20を空気とともに吸引する。この吸引によって塊状繊維集合束20は、吸引パイプ52の一端から該パイプ52の中に吸い込まれ、パイプ52内を搬送される。そしてパイプ52の他端である開口部52’を通じて排出され、原反11’の上に載置される。塊状繊維集合束20はランダムに配置される。吸引の程度や開口部52’の形状を調整することで、原反11’の上に、隙間なく塊状繊維集合束20を敷き詰めることができる。
【0054】
塊状繊維集合束20が載置された原反11’は、エンボス装置54に導入される。エンボス装置54は、周面に多数の突起54cが分散配置された第1のロール54aと、該第1のロール54aに対向配置されたアンビルロール54bとを備えている。両ロール54a,54bは、第1のロール54aにおける突起54cが、アンビルロール54bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。両ロール54a,54bのうち、少なくとも第1のロール54aは加熱されている。このようなエンボス54装置の他に、ロール54aに対向配置されたアンビルロール54bのロールに代えて、第1のロール54aの突起54cと同様のロールを配置し、突起54cどうしを接触させるエンボス方法(Tip to Tip方式)を用いることもできる。エンボス装置54を用いた熱及び圧力の作用によって、塊状繊維集合束20を構成する繊維21及び原反11’が溶融固化し、該塊状繊維集合束20と原反11’とが接合する。この接合によって、複数の接合点13(図1参照)が形成される。上述のとおり、塊状繊維集合束20は原反11’の上にランダムに配置されるので、接合点13は塊状繊維集合束20における任意の位置に形成される。また1つの塊状繊維集合束20に1つの接合点13が形成されるとは限らず、1つの塊状繊維集合束20に2つ以上の接合点13が形成される場合もある。接合点13の形状は、おおむねドット(円形)状で示されているが、これに代えて楕円状、三角状、四角状やV字状、十字状などのドット(円形)状以外の形状を用いることもできる。また、該塊状繊維集合束20と原反11’の接合強度を向上させるために直線、斜線や曲線などの接合線を用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0055】
エンボス装置54によって熱及び圧力が付与された塊状繊維集合束20は、その嵩高さが減殺されている。そこで、エンボス装置54の下流側に設置されている流体吹き付け装置55を用いて、原反11’に接合された塊状繊維集合束20に対して流体を吹き付ける。流体の吹き付けによって塊状繊維集合束20の構成繊維21がかき乱されて開繊し、塊状繊維集合束20の嵩高さが回復する。吹き付けに用いられる流体としては、図8に示す未開繊短繊維束20’の開繊工程で用いられる流体と同様のものを用いることができる。特に好ましい流体は空気である。流体として空気を用いる場合、その吹き付けの程度は、原反11’に接合された塊状繊維集合束20を構成する繊維の捲縮数、山高さ、繊維本数、繊維長さ、繊維太さ、接合エンボスパターンの状態によって異なるが、目的の開繊状態を得るための吐き出し空気量は好ましくは0.5〜100m3/min、吐き出し圧力は好ましくは0.1〜1.0MPaである。塊状繊維集合束20の嵩高を回復させる流体の吹き付け方法の他に、ブラシや櫛のような突起において梳かしたり、擦ったりする工程を用いることもできる。またこれらを組み合わせてもよい。
【0056】
このようにして、長尺状の清掃用シート10’が得られる。このシート10’は幅方向裁断装置56に導入される。幅方向裁断装置56は、ロールの軸方向に延びる凸条刃56cが、周方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール56aと、該第1のロール56aに対向配置されたアンビルロール56bとを備えている。両ロール56a,56bは、第1のロール56aにおける凸条刃56cが、アンビルロール56bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。シート10’が、幅方向裁断装置56に導入されることで、該シート10’は、所定間隔をおいて幅方向に沿って切断される。この切断によってシート10’は枚葉のものとなり、目的とする清掃用シート10が得られる。
【0057】
なお、本製造方法においては、先に図5及び図7に関して説明した薬剤塗工装置35を、図9に示すエンボス装置54のすぐ下流の位置に設置してもよい。
【0058】
図10には、図9に示す製造方法と異なる製造方法が示されている。本製造方法では、図9に示す製造方法と同じ装置50が用いられている。本製造方法が図9に示す製造方法と異なる点は、用いる原料である。詳細には、本製造方法では、塊状繊維集合束20を基材シート11の原反11’と接合するのではなく、未開繊短繊維束20’を基材シート11の原反11’と接合する。具体的な操作は以下のとおりである。なお、特に説明しない点については、図9に示す製造方法に関する説明が適宜適用される。
【0059】
先ず、基材シート11の原反ロール11aから原反11’が繰り出される。繰り出された原反11’の一方の面上に、サクション装置51を用いて未開繊短繊維束20’が載置される。未開繊短繊維束20’はランダムに配置される。塊状繊維集合束20を配置する図9に示す方法と異なり、本製造方法においては未開繊短繊維束20’を隙間なく敷き詰めることは必要とされない。
【0060】
未開繊短繊維束20’が載置された原反11’は、エンボス装置54に導入される。エンボス装置54を用いた熱及び圧力の作用によって、未開繊短繊維束20’を構成する繊維21及び原反11’が溶融固化し、該未開繊短繊維束20’と原反11’とが接合する。この接合によって、複数の接合点13(図1参照)が形成される。
【0061】
原反11’に接合された未塊状繊維集合束20’は、流体吹き付け装置55を用いた開繊工程に付される。開繊工程においては、流体の吹き付けによって未塊状繊維集合束20’の構成繊維21をかき乱して開繊させる。流体の吹き付け圧等を調整することで、繊維21の開繊の程度を調整することができる。流体として空気を用いる場合、その吹き付けの程度は、図9に示す製造方法における吹き付けの程度よりも高くする。この理由は、図9に示す製造方法では、既に開繊された状態になっている繊維21を再び開繊させることを目的として流体を吹き付けるのに対して、本製造方法では未開繊の繊維21を開繊させる必要があるので、開繊により多くのエネルギーを要するからである。
【0062】
このようにして、原反11’に固定された状態で塊状繊維集合束20が形成され、長尺状の清掃用シート10’が得られる。この後は図9に示す製造方法と同様の手順によって目的とする清掃用シート10が得られる。
【0063】
次に、本発明の第2ないし第4の実施形態を、図11ないし図13を参照しながら説明する。これらの実施形態については、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については第1の実施形態に関する説明が適宜適用される。また、図11ないし図13において、図1ないし図10と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0064】
図11に示す第2の実施形態の清掃用シート10は、基材シート11の種類が第1の実施形態と相違する。詳細には、本実施形態における基材シート11は、ネット(スクリム)11aから構成されている。ネット11aは格子状のものである。そのメッシュサイズ、線径、線間距離は、清掃用シート10の強度や、清掃部12を構成する塊状繊維集合束20との接合性等を考慮して決定される。具体的には、ネット11aの線径は10〜5000μmが好ましく、更に好ましくは50〜1000μmである。ネット11aはその線径が部分的に異なっていてもよく、その場合は太い部分の線径が前記の値であることが好ましい。ネット11aの線間距離は0.1〜30mmが好ましく、更に好ましくは5〜15mmである。ネット11aは、例えば合成樹脂から構成されている。本実施形態の清掃用シート10によれば、これを図4に示す清掃具100に装着した状態で、シート保持部104とネット11aとの係合力が高まるという利点がある。
【0065】
図12に示す第3の実施形態の清掃用シート10も、基材シート11の種類が第1の実施形態と相違する。詳細には、本実施形態における基材シート11は、ネット(スクリム)11aと不織布11bとの複合体から構成されている。ネット11aとしては、第2の実施形態と同様のものを用いることができる。不織布11bとしては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。ネット11aと不織布11bとは、例えば熱融着や接着剤による接着で接合されている。基材シート11においては、ネット11aが清掃部12側を向き、不織布11bが清掃部12と反対側を向いている。本実施形態の清掃用シート10によれば、図11に示す実施形態の清掃用シートと同様の効果が奏される。
【0066】
図13に示す第4の実施形態の清掃用シート10は、清掃部が長手方向Xに延びる多条になっている点が第1の実施形態と相違する。具体的には、清掃部は、第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bの二条から構成されている。各清掃部12A,12Bの幅はほぼ同じになっている。また、繊維21の坪量もほぼ同じになっている。各清掃部は、長手方向Xに延びている。両清掃部12A,12Bの間においては、基材シート11が露出している。本実施形態の清掃用シート10によれば、階段の滑り止めやドア下のフレームなどの凸部を清掃する場合に、清掃部12A,12Bが該凸部を跨いで、該凸部を包み込むように清掃を行うことができるので、凸部に対する追従性や凸部に存するごみの捕集性が一層向上するという利点がある。この観点から、第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bとの間の距離Dは2〜80mm、特に10〜50mmであることが好ましい。
【0067】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態における塊状繊維集合束20では、接合部22が、繊維21の長手方向の略中央域に形成されていたが、これに代えて接合部22を、繊維21の長手方向の略中央域から偏倚した位置に形成してもよい。また、接合部22を、繊維21の一方の端部に形成してもよい。
【0068】
また、塊状繊維集合束20として、一方向に配列した複数の第1の繊維と、該方向と交差する方向に配列した複数の第2の繊維とからなり、両繊維が両繊維の交点に形成された接合部によって互いに接合されて構成され、該接合部から延びる第1及び第2の繊維が開繊されて、塊状になっているものを用いてもよい。
【0069】
また、前記の実施形態においては、清掃用シート10を、図4に示す清掃具に装着して使用した例を示したが、これに代えて清掃用シート10を、本出願人の先の出願に係る特開平9−299305号公報に記載の、挿入空間を有する扁平な袋状に形成された清掃布となし、該清掃布を、同公報に記載のハンディワイパータイプの清掃具に装着してもよい。あるいは清掃用シート10を手で直接把持して清掃を行ってもよい。
【0070】
また、前記実施形態においては、基材シート11の片面にのみ清掃部12を形成したが、これに代えて基材シート11の両面に清掃部12を形成してもよい。
【0071】
さらに、図11及び図12に示す基材シートと、図13に示す清掃部とを適宜組み合わせた実施形態も本発明の範囲内である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0073】
〔実施例1〕
(1)未開繊短繊維束の製造
図5に示す方法に従い未開繊短繊維束20’を製造した。使用した繊維21は、芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維であった。この繊維の繊度は2.2dtexであった。繊維21の捲縮数は16.51個、捲縮高さは0.87mmであった。繊維長は約45mmであった。未開繊短繊維束20’の総繊度は約3700tex、重さは約0.13gであった。接合部22は、繊維21の長手方向の略中央域に、幅5mmで形成した。未開繊短繊維束20’には、その重量に対して5重量%の流動パラフィンを油剤として塗工した。
【0074】
(2)塊状繊維集合束の製造
図8に示す装置を用い、得られた未開繊短繊維束20’を開繊して塊状繊維集合束20を得た。得られた塊状繊維集合束20は、その略中心域に接合部22を有し、該接合部22から繊維21が放射状に延びる略球状(毬藻様状)のものであった。その体積は約8cm3であった。
【0075】
(3)清掃用シートの製造
図9に示す装置を用い清掃用シート10を製造した。基材シート11として、坪量40g/m2のエアスルー不織布を用いた。この不織布は、繊度2.2dtexのポリエステル/ポリエチレン芯鞘型複合繊維から構成されていた。基材シート11は、長手方向Xの長さが280mm、幅方向Yの長さが210mmであった。この基材シート11の一面上に40個の塊状繊維集合束20をランダムに、かつ隙間が生じないように単層で敷き詰めた。敷き詰めた領域は、基材シート11の幅方向Yの中央域の長さ120mmの範囲において、長手方向Xの全域にわたる領域であった。塊状繊維集合束20と基材シート11とを、熱融着によって接合し、清掃部12を形成した。接合点13は直径3mmの円形であった。接合点13の配列パターンは格子状であった。接合点13のピッチは、長手方向X及び幅方向Yのいずれにおいても20mmであった。清掃部12における塊状繊維集合束20の総坪量は155g/m2であった。このようにして清掃用シート10を得た。
【0076】
〔実施例2〕
繊維21として、捲縮数22.32個、捲縮高さ0.32mmのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0077】
〔実施例3〕
繊維21として、捲縮数7.5個、捲縮高さ0.07mmのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0078】
〔実施例4〕
繊維21として、捲縮数22.86個、捲縮高さ0.24mm、繊度4.4dtexのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0079】
〔実施例5〕
図13に示す清掃用シート10を製造した。使用した繊維21及び塊状繊維集合束20は、実施例1と同様とした。第1の清掃部12A及び第2の清掃部12Bの幅方向Yの長さはいずれも50mmであった。第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bとの間の距離Dは20mmであった。各清掃部12A,12Bの坪量はいずれも155g/m2であった。これら以外は実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0080】
〔実施例6〕
実施例5において、清掃部を二条から三条に変更した。各清掃部の幅方向Yの長さはいずれも30mmであった。各清掃部間の距離はいずれも10mmであった。各清掃部の坪量はいずれも155g/m2であった。これら以外は実施例5と同様にして清掃用シート10を得た。
【0081】
〔比較例1〕
花王株式会社製のクイックル(登録商標)ドライシートを比較例1とした。
【0082】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた清掃用シートについて、清掃部における厚みを300Pa荷重下において測定した。その結果を表1に示す。また、実施例及び比較例で得られた清掃用シートを、花王株式会社製のクイックル(登録商標)ワイパーのヘッド部に装着し、凹凸を有する各種の清掃対象面に対する該清掃用シートの追従性及びごみの捕集性を次の方法で評価した。その結果を表1に示す。清掃対象面として、(a)木製のフローリングの溝(National社製KER7UE V溝深さ1mm、幅2mm)、(b)畳(い草部分)、(c)垂直面(部屋内の幅木部分:National社製QPL113T39)、(d)敷居(溝深さ4mm、幅21mm)、(e)引き戸のレール(バリアフリータイプ溝深さ2mm、幅5.3mm)、(f)ドアストッパーの側面(National社製引き掛けタイプMJT107)、(g)ドア下のフレーム(高さ15mm、幅30mm)及び(h)階段の滑り止めを採用した。モデルダスト「IWAMOTO MINERAL Co.LTD社製 コットンリンタ 径10μm under 長0.5mm under」0.02gを量り取り、目開き300μmの篩で凹凸を有する各種の清掃対象面に散布した。清掃用シートを、花王株式会社製のクイックル(登録商標)ワイパーのヘッド部に装着し、清掃面を追従させるように2往復清拭した。清拭後、清掃面の凹凸部分、凹凸部分の周辺部に残ったモデルダストを目視観察して判定を行った。
評価基準は以下のとおりである。
・追従性
◎:凹凸部分に残らない
○:凹凸部分に散布量の約1/4以内が残る
△:凹凸部分に散布量の約1/2以内が残る
×:凹凸部分に散布量の約1/2超が残る
・捕集性
◎:凹凸部分を含むその周辺部に残らない
○:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/4以内が残る
△:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/2以内が残る
×:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/2超が残る
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の清掃用シートは、比較例の清掃用シートに比べ、凹凸面への追従性に優れ、またごみの捕集性が高いものであることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の清掃用シートの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線断面図である。
【図3】図3は、未開繊短繊維束及び塊状繊維集合束を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す清掃用シートの一使用形態を示す斜視図である。
【図5】図5は、未開繊短繊維束の製造装置を示す模式図である。
【図6】図6(a)ないし(d)は、未開繊短繊維束の製造過程を順次示す模式図である。
【図7】図7(a)未開繊短繊維束の別の製造装置を示す模式図であり、図7(b)は、図7(a)に示す製造装置を用いた未開繊短繊維束の製造過程の一部を示す模式図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、未開繊短繊維束の開繊装置を示す模式図である。
【図9】図9は、清掃用シートの清掃装置を示す模式図である。
【図10】図10は、清掃用シートの別の清掃装置を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明の清掃用シートの第2の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【図12】図12は、本発明の清掃用シートの第3の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【図13】図13は、本発明の清掃用シートの第4の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【符号の説明】
【0086】
10 清掃用シート
11 基材シート
12 清掃部
20 塊状繊維集合束
20’未開繊短繊維束
21 繊維
22 接合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面等の清掃に特に好適に用いられる清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
形状が球状である繊維集合体が種々知られている。例えば特許文献1には、ボール状のウール繊維からなり、外層部のウール繊維がフェルト化している中入り綿が記載されている。このボール状の中入り綿は、開繊されたウール繊維のスライバーを所定長さに切断して繊維片とし、対設した二面間において繊維片を挟持するとともに、該二面の双方又は一方を移動することによって繊維片を摩擦し、繊維片をボール状にすると同時に繊維片の外層部を加湿してボール状になった繊維片の外層部を縮絨しフェルト化することで製造される。
【0003】
特許文献2には、寝装具や防寒被服に用いられる詰綿体が記載されている。この詰綿体は、主体繊維と該繊維よりも20℃以上低い軟化点を有するバインダー繊維とを含む玉状綿を側地に吹き込んだ後、熱処理して一体化することで製造される。
【0004】
特許文献3には、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と熱可塑性捲縮ステープル繊維を含む球状繊維構造体が記載されている。この球状繊維構造体を構成する繊維の一部は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって熱接着されている。この球状繊維構造体は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と熱可塑性捲縮ステープル繊維を含む混合ステープル繊維を金網上に展開し、水をミスト状に噴霧しながら金網上で転動、回転させることにより造粒した後、該造粒物を水に含浸し、更に該含水造粒物内に沸騰による気泡を生じさせ、該造粒物内部に多数のセル状空隙部を形成せしめると同時に湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって該造粒物を構成する繊維の一部を熱接着することで製造される。
【0005】
以上の各文献には、それらの文献に記載されている球状の繊維集合体を、清掃用シートの素材として使用することについては何ら言及されていない。
【0006】
球状のものとは異なるが、繊維集合体を有する清掃用シートについては、例えば特許文献4に記載のものが知られている。同文献に記載の清掃用シートは、熱溶着性シートと該シートに接合して一方向に延びる多数の熱溶着性長繊維とからなる。長繊維は、これと交差する方向に延び、該長繊維の長手方向に間欠的に配設された複数の溶着線によって熱溶着性シートに接合している。この清掃用シートは、長繊維の間にごみを捕集するものであるところ、該長繊維は溶着線によってその前後が固定されているので、動きの自由度が制限されてしまい、繊維の間にごみを確実に捕集することが十分とは言えない。また、溶着線の部分においては、ごみは捕集されないので、ごみの捕集効率がよいとは言えない。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−70758号公報
【特許文献2】特開昭61−125377号公報
【特許文献3】特開2002−212868号公報
【特許文献4】特開平9−135798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した従来技術よりも種々の性能が更に向上した清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている塊状繊維集合束が、基材シートの少なくとも一面に複数接合されて清掃部が形成されている清掃用シートを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記の清掃用シートの好適な製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させて塊状繊維集合束を得、
複数の前記塊状繊維集合束を基材シートの少なくとも一面に接合させる、清掃用シートの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている、清掃用シートの清掃部として用いられる塊状繊維集合束を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、前記の塊状の開繊繊維束の好適な製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させる塊状繊維集合束の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹凸を有する清掃対象面への追従性が良好で、ごみの捕集性及び捕集効率に優れ、ボリューム感があり拭き心地の良好な清掃用シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の清掃用シートの第1の実施形態の斜視図が示されている。図2は、図1におけるII-II線断面図である。本実施形態の清掃用シート10は、基材シート11を備えている。基材シート11は、長手方向X及びそれに直交する幅方向Yを有する矩形のものである。清掃用シート10は、基材シートの一方の面上に、清掃部12を有している。清掃部12は、平面視して長手方向X及び幅方向Yを有する略矩形の形状をしている。清掃部12は、基材シート11の幅方向Yの中央域に位置している。基材シート11は、清掃部12の左右の両側縁12aから側方に延出して一対のフラップ11aを形成している。一方、長手方向Xに関し、清掃部12は、基材シート11の長手方向Xの全域に延びている。清掃部12は繊維集合体からなり、所定の厚みをもって形成されている。
【0015】
清掃部12を構成する繊維集合体は、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)になっている繊維集合束から構成されている。以下、この塊状繊維集合束について説明する。塊状繊維集合束は、図3に示す未開繊短繊維束20’から製造されるものである。未開繊短繊維束20’は、一方向に配列した複数の繊維21が、該繊維21の延びる方向と交差する方向に延びる接合部22によって互いに接合されて構成されている。接合部22は1つだけ形成されている。この未開繊短繊維束20’における接合部22から延びる繊維21が開繊されて、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)になったものが、同図に示す塊状繊維集合束20である。繊維21の開繊方法については後述する。
【0016】
図3に示す未開繊短繊維束20’は扁平なものであるが、未開繊短繊維束20’の形状はこれに限られず、例えば円柱状や角柱状、捩れ状(螺旋状)であってもよい。
【0017】
図3に示す塊状繊維集合束20においては、その略中心域に接合部22(図示せず)が存在している。そして、接合部22(図示せず)から延びる繊維21が放射状に開繊して、塊状(例えば略球状ないし毬藻様状)となったものが塊状繊維集合束20である。
【0018】
塊状繊維集合束20を構成する繊維21は、その繊維長が好ましくは3〜150mm、更に好ましくは5〜50mmである。繊維長をこの範囲内とすることで、繊維21の開繊状態を良好にすることができるとともに、繊維間にごみを確実に捕集することが可能となる。後述するように繊維21が捲縮を有する場合には、その捲縮を引き伸ばしてまっすぐにした状態での長さを、繊維21の長さとする。
【0019】
接合部22は、塊状繊維集合束20を構成する繊維21の長手方向の略中央域に形成されている。接合部22は、例えば繊維21の溶融及び固化によって形成されている。あるいは接着剤による接着によって形成されている。接合部22は所定幅dを有し、一方向に配向した構成繊維21の配向方向と直交する方向に延びている。接合部22の幅dは、繊維21の長さや材質、接合部22の形成手段にもよるが、0.5〜80mm、特に1〜40mmであれば、繊維21どうしを確実に接合することができる。
【0020】
一つの塊状繊維集合束20に含まれる繊維21の本数は、繊維21の太さにもよるが、好ましくは100〜10万本、更に好ましくは1000〜5万本である。繊維21の本数をこの範囲内とすることによって、開繊状態における繊維密度を、ごみの捕集に適切な値とすることができる。同様の理由から、塊状繊維集合束20の全体としての総繊度は1〜8000tex、特に10〜4000texであることが好ましい。
【0021】
繊維21の太さは、0.05〜80dtex、特に0.5〜40dtexであることが好ましい。太さをこの範囲内にすることによって、繊維21が適度な剛性を有するようになり、清掃部12が凹凸を有する清掃対象面、例えば敷居や引き戸のレールに十分に追従するようになる。また、部屋の隅並びにドアストッパー及びその周辺のような狭い場所に、清掃部12が十分に追従するようになる。さらに、ごみの捕集性が向上する。
【0022】
繊維21としては、捲縮を有するものを用いることが、ごみの捕集性が一層向上する観点から好ましい。捲縮繊維としては、二次元捲縮又は三次元捲縮したものを用いることができる。捲縮繊維は、その捲縮率(JIS L0208)が、5〜50%、特に10〜30%であることが好ましい。捲縮率は、繊維を引き伸ばしたときの長さAに対する、繊維を引き伸ばしたときの長さAと元の繊維の長さBとの差の百分率で定義され、下記の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A×100(%)
【0023】
捲縮繊維の捲縮数及び山の高さは、塊状繊維集合束20の嵩高さと関係している。詳細には、捲縮数が大きいほど、山の高さが高いほど、塊状繊維集合束20は嵩高なものとなる。この観点から、捲縮数は3〜80、特に5〜40であることが好ましい。山の高さは0.1〜8.0mm、特に0.2〜4.0mmであることが好ましい。
【0024】
前記の捲縮数は、JIS L1015に従い測定される。捲縮高さは、以下のようにして測定される。繊維21を観察し、捲縮が最も強い(高い)部分を、隣接していない3箇所以上見つける。各々の箇所で、(一本の繊維ではなく)ほぼ同じ形状に屈曲した繊維21の集合部分を見つけ、該集合部分をその形状が崩れないように切り出す。水平に載置固定した厚紙等に、切り出した繊維21を、自重以外の荷重を掛けないでかつ厚紙等が歪まないように、その長手方向のいずれか一端側において透明なテープで固定する。この固定は、繊維21に二次元的又は立体的な捲縮がある場合には、繊維21の山と谷との差が最も大きくなるように行う。繊維21を厚紙等から浮き上がらずかつできるだけ直線に近い状態にして、その写真を撮影する。この際、実寸が確認できるようにスケール等も同じ写真に含める。コピー機、スキャナー等の拡大可能な装置を用いて、得られた写真を繊維21が鮮明にわかるように拡大(好ましくは4倍以上)する。そして、拡大された繊維21のうち、捲縮が規則正しく、直線状の部分を選択する。さらに、繊維21の乱れが少ない方又はより鮮明に写っている方を目安にして天地を決定する。繊維21の集合部分の内側及び外側に注意し、隣接する谷同士の頂点をつなぐ。そして、連続する5つの山からほぼ垂直に、前記の隣接する谷と谷とをつないだ線までの距離を測定する。倍率等に注意して、5つの山それぞれについて測定し、実寸を求める。この平均をそのサンプルの測定値とする。同一のサンプルから切り出した残りの箇所についても同様に測定する。すべてのサンプルのうち、値の大きな3つを平均し、その平均値を、そのサンプルの捲縮高さとする。
【0025】
塊状繊維集合束20の大きさ(基材シート11に接合される前の大きさ)は、体積で表して0.2〜1000cm3、特に0.5〜125cm3であることが好ましい。
【0026】
清掃用シート10においては、塊状繊維集合束20が、基材シート11の一面に隙間なく配置され、該基材シート11に接合されることで清掃部12が形成されている。したがって、塊状繊維集合束20はその接合前の形状が例えば球状のものであっても、基材シート11との接合によって、該塊状繊維集合束20はある厚みをもった扁平なものとなる。この厚みが、清掃部12の厚みに相当する。塊状繊維集合束20は、単層で配置されていてもよく、あるいは2段以上の多層配置になっていてもよい。いずれの場合であっても、清掃部12のいかなる部位においても厚みがほぼ一定となるように塊状繊維集合束20は配置されている。
【0027】
図1に示すように、基材シート11と塊状繊維集合束20とは、接合点13において接合されている。接合点は、例えば基材シート11と塊状繊維集合束20の構成繊維21との融着で形成されている。あるいは、基材シート11と繊維21との接着で形成されている。接合点13は規則的に配置されていてもよく、あるいはランダムに配置されていてもよい。後述する製造方法に従えば、接合点13は、規則的に配置される。
【0028】
塊状繊維集合束20は、接合部22の位置において基材シート11と接合されていることを要しない。換言すれば、接合部22の位置に接合点13が形成されることを要しない。塊状繊維集合束20が基材シート11と接合され、該基材シート11からの脱落が起こらない限りにおいて、塊状繊維集合束20のどの位置においても該塊状繊維集合束20は基材シート11と接合されてもよい。
【0029】
清掃部12を構成する塊状繊維集合束20の総坪量は、塊状繊維集合束20の総繊度や繊維21の長さにもよるが、10〜1000g/m2、特に50〜500g/m2であることが、凹凸を有する清掃対象面へ清掃用シート10が良好に追従する点、及び清掃用シート10にボリューム感が付与され、拭き心地が良好になる点から好ましい。これに関連して、清掃部12における清掃用シート10の厚みは300Pa荷重下において、1〜100mm、特に2〜50mmであることが好ましい。
【0030】
清掃部12において、塊状繊維集合束20を構成する繊維21は、主として清掃部12の平面方向を向いている。平面方向を向いている繊維21は、すべてが同じ方向を向いているのではなく、平面内のあらゆる方向を向いている。さらに、繊維21のなかには、清掃部12の厚み方向を向いているものも多く存在する。そのうえ、繊維21の両端のうち、一端は自由端になっているので、動きの自由度が極めて高い。このように、清掃部12において繊維21は様々な方向を向いており、かつ動きの自由度が極めて高いので、清掃用シート10の清拭方向にかかわらず、繊維21の間にごみを絡め取ることができる。これに対して、例えば背景技術の項で説明した特許文献4に記載の清掃用シートは、すべての繊維が一方向に配向しているので、その方向と交差する方向に清拭を行った場合には、繊維間にごみを捕集することができるものの、その方向に沿って清拭を行った場合には、ごみの捕集効率が著しく低下してしまう。しかも、繊維の両端が固定端になっているので、繊維の動きの自由度が低く、ごみの捕集効率を高めることが容易でない。
【0031】
繊維21としては、例えば熱可塑性樹脂からなる合成繊維、コットンや麻などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維などを用いることができる。これらの繊維は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。未開繊短繊維束20’(図3参照)における接合部22の形成のしやすさや、塊状繊維集合束20と基材シート11との接合のしやすさを考慮すると、繊維21として、熱融着が容易に行える材料である熱可塑性樹脂からなる合成繊維を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂などを用いることができる。合成繊維は、単一の樹脂から構成されていてもよく、あるいは2種以上の樹脂を組み合わせてなる複合繊維(例えば芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維)であってもよい。
【0032】
繊維21には薬剤が塗工されていてもよい。ドライな乾式清掃を目的とした薬剤の塗工によって、ごみの吸着を利用した捕集性が高まる。そのような薬剤としては各種油剤成分が挙げられる。油剤成分としては、例えば、鉱物油、合成油、シリコーン油などの油剤、及び該油剤成分に界面活性剤、溶剤、酸化防止剤、香料などを混合したものを用いることができる。油剤成分をはじめとする薬剤の塗工量は、繊維21の重量に対して0.1〜50重量%程度とすることができる。
【0033】
本実施形態の清掃用シート10をウエットな湿式清掃の目的ために用いる場合には、これに洗浄剤を含浸することによって、シミ汚れや固形物のこびりつき汚れが溶解して洗浄性が高まる。洗浄剤としては、界面活性剤、溶剤、除菌剤、防腐剤、香料、水などを混合したものを用いることができる。洗浄剤の含浸量は、繊維21の重量に対して、20〜500重量%程度とすることができる。
【0034】
ドライな乾式清掃及びウエットな湿式清掃の目的のために用いられることに加え、本実施形態の清掃用シート10は、水、市販されている洗浄剤、WAX剤等の液を拭き伸ばしたり、拭き取ったり、含浸したりするといった、雑巾のような使い方をすることもできる。
【0035】
塊状繊維集合束20が固定される基材シート11としては、塊状繊維集合束20との接合の容易さの点から、例えば合成樹脂からなる各種不織布やフィルム、パルプからなる抄紙板紙、パルプに合成樹脂を混抄した抄紙板紙、あるいはそれらの複合材を用いることができる。不織布を用いる場合には、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布などが好適な例として挙げられる。これらの不織布の坪量は、強度やこしの強さ等の点から、3〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。同様の理由から、フィルムを用いる場合、その坪量は3〜500g/m2、特に10〜250g/m2であることが好ましい。抄紙板紙を用いる場合、その坪量は10〜500g/m2、特に20〜250g/m2であることが好ましい。基材シート11を構成する合成樹脂としては、繊維21を構成する合成樹脂として前述したものと同様のものを用いることができる。
【0036】
清掃用シート10は、例えば図4に示すように、清掃具100に装着されて使用される。清掃具100は、清掃用シート10が装着可能なヘッド部101及びヘッド部101に自在継手103を介して連結された棒状の柄102から構成されている。ヘッド部101の装着面(底面)は、平面視で長方形状であり、通常の使用態様においては、清掃具100は、ヘッド部101をその幅方向に移動(特に往復移動)させて清掃を行う。清掃用シート10は、基材シート11を利用して、ヘッド部101及びヘッド部101に連結された柄102を備えた清掃具100におけるヘッド部101に装着される。清掃用シート10は、基材シート11における清掃部12が設けられていない側がヘッド部101の装着面(底面)に対向するように、ヘッド部101に装着される。次に、基材シート11におけるフラップ11aをヘッド部101の上面側に折り返す。更にフラップ11aを、ヘッド部101における、放射状のスリットを有する可撓性の複数のシート保持部104内に押し込む。このように、基材シート11のフラップ11aを利用して、清掃用シート10を清掃具100のヘッド部101に固定することができる。なお、基材シート11が、後述する図11及び図12に示す実施形態のようにネット(スクリム)を含んでいる場合には、基材シート11とシート保持部104との係合力が高くなるので好ましい。本実施形態の清掃用シート10は、この状態で、例えば、フローリング、壁、天井、ガラス、鏡や家具、家電製品、家の外壁、自動車のボディなどの硬質表面の拭き清掃に用いることができる。
【0037】
次に、本実施形態の清掃用シート10の好適な製造方法について図5ないし図9を参照しながら説明する。本製造方法は、(イ)塊状繊維集合束20の製造工程と、(ロ)塊状繊維集合束20と基材シート11の接合工程に大別される。(イ)の塊状繊維集合束20の製造工程は、(イ−1)連続長繊維束の製造工程、(イ−2)未開線短繊維束の製造工程、(イ−3)塊状繊維集合束の製造工程に大別される。
【0038】
(イ−1)の連続長繊維束の製造工程では、一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成する。(イ−2)の未開線短繊維束の製造工程では、連続長繊維束を接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得る。(イ−3)の塊状繊維集合束の製造工程では、未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、接合部から延びる繊維を開繊させて、塊状繊維集合束を得る。
【0039】
先ず、(イ)の塊状繊維集合束20の製造工程について、図5ないし図8を参照しながら説明する。図5には、連続長繊維束及び未開線短繊維束の製造装置30が模式的に示されている。先ず、原料である連続長繊維の束23が、供給部31から繰り出される。連続長繊維の束23は、一方向に引き揃えられた複数の連続長繊維が束になっているものである。この連続長繊維は、目的とする塊状繊維集合束20の構成繊維21となるものである。連続長繊維の束23における連続長繊維の本数は、目的とする塊状繊維集合束20における繊維21の本数と同数であるか、又はそれよりも多い。
【0040】
繰り出された連続長繊維の束23は、開繊装置32に導入され、搬送方向と直交する方向に幅が広げられて、開繊トウ24となる。この状態を図6(a)に示す。なお、図6(a)においては、紙面の左から右への方向が搬送方向となる。図6(b)ないし(d)についても同様である。開繊装置3は、一対のブルーミングロール33,34が、連続長繊維の束23の搬送方向に沿って複数(図3では三対)設置されたものから構成される。一対のブルーミングロール33,34は、周方向に延びる多数の溝及び凸条部が軸方向に交互に配置された金属製の溝ロール33と、該溝ロール33に対向接触し、かつ周面がゴムで形成されたアンビルロール34とから構成されている。このような構成のブルーミングロール33,34は、当該技術分野において公知のものである。連続長繊維の束23は、溝ロール33とアンビルロール34との間を通過することでその幅が広げられ、開繊トウ24となる。
【0041】
開繊装置32によって得られた開繊トウ24は、薬剤塗工装置35に導入される。薬剤塗工装置においては、開繊トウ24の上下面から薬剤が塗工される。薬剤としては、先に説明したものが用いられる。薬剤の塗工には、例えば噴霧装置が用いられる。また、薬剤の塗工にグラビアロール塗工方法を用いてもよい。
【0042】
薬剤が塗工された開繊トウ24は、次いで接合装置36に導入される。接合装置36は、一対のエンボスロール36a,36bを備えている。各エンボスロール36a,36bは、それらの軸方向に延びる直線状の凸条36cが、周方向に所定間隔をおいて配置されたものからなる。各エンボスロール36a,36bは加熱可能になっている。回転状態において、一方のエンボスロール36aにおける凸条36cは、他方のエンボスロール36bにおける凸条36cと対向接触するようになっている。開繊トウ24が両ロール間を通過するときに、熱及び圧力の作用によって、開繊トウ24を構成する連続長繊維が溶融固化し、該開繊トウ24には、それを構成する連続長繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部22’が形成される。この状態を図6(b)に示す。図6(b)に示すように接合部22’は、開繊トウ24を構成する連続長繊維の延びる方向と直交する方向に延びている。図6(b)においては接合部22’は、開繊トウ24を構成する連続長繊維の延びる方向と直交する方向に延びる直線で示されているが、これに代えて斜め方向に延びる直線や、曲線であってもよい。各接合部22’の間の距離は一定になっている。接合部22’の形成によって、連続長繊維は互いに接合される。接合部22’は、先に説明した図2に示す未開繊短繊維束における接合部22に対応するものである。
【0043】
複数の接合部22’が形成された開繊トウ24は、スリッター37に導入される。スリッター37は、複数の円形刃がロールの軸方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール37aと、アンビルロール37bとから構成されている。開繊トウ24がスリッター37に導入されることで、該開繊トウ24は、連続長繊維の延びる方向に沿って、かつ幅方向にわたって所定間隔をおいて切断される。これによって、図6(c)に示すように、開繊トウ24をその幅方向にわたって複数に切断してなる複数の連続長繊維束25が形成される。
【0044】
各連続長繊維束25は、図5に示すように、幅方向裁断装置38に導入される。幅方向裁断装置38は、ロールの軸方向に延びる凸条刃38cが、周方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール38aと、該第1のロール38aに対向配置されたアンビルロール38bとを備えている。両ロール38a,38bは、第1のロール38aにおける凸条刃38cが、アンビルロール38bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。連続長繊維束25が、幅方向裁断装置38における両ロール間に導入されることで、該連続長繊維束25は、図6(d)に示すように、接合部22’間の位置(同図中、一点鎖線で表す位置)において幅方向に沿って切断される。この切断によって、目的とする未開繊短繊維束20’が得られる。
【0045】
以上が、原料である連続長繊維の束23から未開繊短繊維束20’を製造する工程であるところ、別の手順によっても未開繊短繊維束20’を製造することができる。この製造方法を図7(a)及び(b)を参照しながら説明する。本製造方法においては、原料である連続長繊維の束23から開繊トウ24を形成し、これに油剤を塗工する工程までは、図5及び図6に示す製造方法と同じである。油剤が塗工された開繊トウ24は、分割装置39に導入されて、連続長繊維の延びる方向に沿って、かつ幅方向にわたって所定間隔をおいて複数に分割され、複数の分割開繊トウ26となる。この状態を図7(b)に示す。分割装置39は、一対のブルーミングロール39a,39bが、開繊トウ24の搬送方向に沿って複数(図7(a)では三対)設置されたものから構成される。一対のブルーミングロール39a,39bは、周方向に延びる多数の溝及び凸条部が軸方向に交互に配置された金属製の溝ロール39aと、該溝ロール39aに対向接触し、かつ周面がゴムで形成されたアンビルロール39bとから構成されている。溝ロール39aにおける溝の配置は、開繊トウ24がその幅方向にわたり複数に分割されるような配置になっている。分割装置39によって得られた各分割開繊トウ26における連続長繊維の本数は、目的とする未開繊短繊維束20’における繊維21の本数と同じになっている。
【0046】
各分割開繊トウ26は、次いで接合装置36に導入される。この接合装置36は、図5に示すものと同じである。接合装置36を用いた熱及び圧力の作用によって、分割開繊トウ26を構成する連続長繊維が溶融固化し、該分割開繊トウ26には、それを構成する連続長繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部22’が形成される。この状態は図6(c)に示す状態と同じである。これによって複数の連続長繊維束25が形成される。この連続長繊維束25は、幅方向裁断装置38に導入される。この幅方向裁断装置38、図5に示すものと同じである。幅方向裁断装置38によって、連続長繊維束25は、接合部22’間の位置において幅方向に切断される。この状態は図6(d)に示す状態と同じである。この切断によって、目的とする未開繊短繊維束20’が得られる。
【0047】
図5に示す装置又は図7に示す装置を用いて製造された未開繊短繊維束20’は、開繊工程に付される。開繊工程の詳細を、図8(a)及び(b)を参照しながら説明する。未開繊短繊維束20’は、図8(a)に示すように、気密状態になっている中空のチャンバ40内に入れられる。チャンバ40には、該チャンバ40の中へ流体を導入するための導入部41と、チャンバ40内へ導入された流体を外部へ排出するための排出部42とを備えている。
【0048】
導入部41を通じてチャンバ40の中へ流体を導入すると、導入された流体はチャンバ40の中で乱流となる。その乱流によって未開繊短繊維束20’がかき乱される。その結果、図8(b)に示すように、未開繊短繊維束20’における接合部22から延びる繊維21が開繊され、該接合部22を中心として略放射状に広がる。このようにして、目的とする塊状繊維集合束20が得られる。
【0049】
開繊に用いられる流体としては、気体及び液体が挙げられる。気体としては、空気を用いることが経済性の観点や取り扱い性の観点から有利であるが、これ以外の気体、例えば窒素などを用いても差し支えない。可燃性や爆発性のある気体は取り扱いが容易でない。液体としては、揮発性の高いものを用いることが好ましい。流体としては、水を用いることが経済性の観点や取り扱い性の観点から有利である。
【0050】
流体として例えば気体である空気を用いる場合には、気体にエネルギー(圧力)を与える圧縮機、気体を送り込むブロア送風機等の装置により、導入部41からチャンバ40内へ気体を導入し、排出部42により気体を外部へ排出させることによりチャンバ40内に気体の乱流が起こる。未開繊短繊維束20’を構成する繊維の捲縮数、山高さ、繊維本数、繊維長さ、繊維太さや、チャンバ40内への未開繊短繊維束20’の投入数量、チャンバ内体積量の状態によって異なるが、目的とする塊状繊維集合束20を得るための吐き出し空気量は0.5〜100m3/min、吐き出し圧力は0.1〜1.0MPaとすることが好ましい。
【0051】
図8に示す装置を用いた開繊方法に代えて、例えばカード機を用いた開繊方法を採用してもよい。あるいは、木材パルプを機械的に解砕する装置である撹拌ロータを用いた撹拌方法を採用してもよい。
【0052】
次いで、得られた塊状繊維集合束20と基材シート11とを固定する工程である前記の(ロ)の工程を行う。この工程を、図9を参照しながら説明する。図9に示す製造装置50においては、先ず、基材シート11の原反ロール11aから原反11’が繰り出される。繰り出された原反11’の一方の面上に、塊状繊維集合束20が配置される。この配置には、サクション装置51が用いられる。サクション装置51は、吸引パイプ52を備えている。吸引パイプ52の一端は、複数の塊状繊維集合束20が収容されている収容ボックス53内に位置している。吸引パイプ52の他端は、原反11’の一方の面と対向するように、該面から所定間隔をおいて該面上に位置している。吸引パイプ52の他端は、原反11’の幅方向に延びる横長の開口部52’を有している。
【0053】
サクション装置51を起動させて、収容ボックス53内に収容されている塊状繊維集合束20を空気とともに吸引する。この吸引によって塊状繊維集合束20は、吸引パイプ52の一端から該パイプ52の中に吸い込まれ、パイプ52内を搬送される。そしてパイプ52の他端である開口部52’を通じて排出され、原反11’の上に載置される。塊状繊維集合束20はランダムに配置される。吸引の程度や開口部52’の形状を調整することで、原反11’の上に、隙間なく塊状繊維集合束20を敷き詰めることができる。
【0054】
塊状繊維集合束20が載置された原反11’は、エンボス装置54に導入される。エンボス装置54は、周面に多数の突起54cが分散配置された第1のロール54aと、該第1のロール54aに対向配置されたアンビルロール54bとを備えている。両ロール54a,54bは、第1のロール54aにおける突起54cが、アンビルロール54bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。両ロール54a,54bのうち、少なくとも第1のロール54aは加熱されている。このようなエンボス54装置の他に、ロール54aに対向配置されたアンビルロール54bのロールに代えて、第1のロール54aの突起54cと同様のロールを配置し、突起54cどうしを接触させるエンボス方法(Tip to Tip方式)を用いることもできる。エンボス装置54を用いた熱及び圧力の作用によって、塊状繊維集合束20を構成する繊維21及び原反11’が溶融固化し、該塊状繊維集合束20と原反11’とが接合する。この接合によって、複数の接合点13(図1参照)が形成される。上述のとおり、塊状繊維集合束20は原反11’の上にランダムに配置されるので、接合点13は塊状繊維集合束20における任意の位置に形成される。また1つの塊状繊維集合束20に1つの接合点13が形成されるとは限らず、1つの塊状繊維集合束20に2つ以上の接合点13が形成される場合もある。接合点13の形状は、おおむねドット(円形)状で示されているが、これに代えて楕円状、三角状、四角状やV字状、十字状などのドット(円形)状以外の形状を用いることもできる。また、該塊状繊維集合束20と原反11’の接合強度を向上させるために直線、斜線や曲線などの接合線を用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0055】
エンボス装置54によって熱及び圧力が付与された塊状繊維集合束20は、その嵩高さが減殺されている。そこで、エンボス装置54の下流側に設置されている流体吹き付け装置55を用いて、原反11’に接合された塊状繊維集合束20に対して流体を吹き付ける。流体の吹き付けによって塊状繊維集合束20の構成繊維21がかき乱されて開繊し、塊状繊維集合束20の嵩高さが回復する。吹き付けに用いられる流体としては、図8に示す未開繊短繊維束20’の開繊工程で用いられる流体と同様のものを用いることができる。特に好ましい流体は空気である。流体として空気を用いる場合、その吹き付けの程度は、原反11’に接合された塊状繊維集合束20を構成する繊維の捲縮数、山高さ、繊維本数、繊維長さ、繊維太さ、接合エンボスパターンの状態によって異なるが、目的の開繊状態を得るための吐き出し空気量は好ましくは0.5〜100m3/min、吐き出し圧力は好ましくは0.1〜1.0MPaである。塊状繊維集合束20の嵩高を回復させる流体の吹き付け方法の他に、ブラシや櫛のような突起において梳かしたり、擦ったりする工程を用いることもできる。またこれらを組み合わせてもよい。
【0056】
このようにして、長尺状の清掃用シート10’が得られる。このシート10’は幅方向裁断装置56に導入される。幅方向裁断装置56は、ロールの軸方向に延びる凸条刃56cが、周方向に所定間隔をおいて配置された第1のロール56aと、該第1のロール56aに対向配置されたアンビルロール56bとを備えている。両ロール56a,56bは、第1のロール56aにおける凸条刃56cが、アンビルロール56bの周面と接触するか、又は該周面に近接するような距離関係で配置されている。シート10’が、幅方向裁断装置56に導入されることで、該シート10’は、所定間隔をおいて幅方向に沿って切断される。この切断によってシート10’は枚葉のものとなり、目的とする清掃用シート10が得られる。
【0057】
なお、本製造方法においては、先に図5及び図7に関して説明した薬剤塗工装置35を、図9に示すエンボス装置54のすぐ下流の位置に設置してもよい。
【0058】
図10には、図9に示す製造方法と異なる製造方法が示されている。本製造方法では、図9に示す製造方法と同じ装置50が用いられている。本製造方法が図9に示す製造方法と異なる点は、用いる原料である。詳細には、本製造方法では、塊状繊維集合束20を基材シート11の原反11’と接合するのではなく、未開繊短繊維束20’を基材シート11の原反11’と接合する。具体的な操作は以下のとおりである。なお、特に説明しない点については、図9に示す製造方法に関する説明が適宜適用される。
【0059】
先ず、基材シート11の原反ロール11aから原反11’が繰り出される。繰り出された原反11’の一方の面上に、サクション装置51を用いて未開繊短繊維束20’が載置される。未開繊短繊維束20’はランダムに配置される。塊状繊維集合束20を配置する図9に示す方法と異なり、本製造方法においては未開繊短繊維束20’を隙間なく敷き詰めることは必要とされない。
【0060】
未開繊短繊維束20’が載置された原反11’は、エンボス装置54に導入される。エンボス装置54を用いた熱及び圧力の作用によって、未開繊短繊維束20’を構成する繊維21及び原反11’が溶融固化し、該未開繊短繊維束20’と原反11’とが接合する。この接合によって、複数の接合点13(図1参照)が形成される。
【0061】
原反11’に接合された未塊状繊維集合束20’は、流体吹き付け装置55を用いた開繊工程に付される。開繊工程においては、流体の吹き付けによって未塊状繊維集合束20’の構成繊維21をかき乱して開繊させる。流体の吹き付け圧等を調整することで、繊維21の開繊の程度を調整することができる。流体として空気を用いる場合、その吹き付けの程度は、図9に示す製造方法における吹き付けの程度よりも高くする。この理由は、図9に示す製造方法では、既に開繊された状態になっている繊維21を再び開繊させることを目的として流体を吹き付けるのに対して、本製造方法では未開繊の繊維21を開繊させる必要があるので、開繊により多くのエネルギーを要するからである。
【0062】
このようにして、原反11’に固定された状態で塊状繊維集合束20が形成され、長尺状の清掃用シート10’が得られる。この後は図9に示す製造方法と同様の手順によって目的とする清掃用シート10が得られる。
【0063】
次に、本発明の第2ないし第4の実施形態を、図11ないし図13を参照しながら説明する。これらの実施形態については、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については第1の実施形態に関する説明が適宜適用される。また、図11ないし図13において、図1ないし図10と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0064】
図11に示す第2の実施形態の清掃用シート10は、基材シート11の種類が第1の実施形態と相違する。詳細には、本実施形態における基材シート11は、ネット(スクリム)11aから構成されている。ネット11aは格子状のものである。そのメッシュサイズ、線径、線間距離は、清掃用シート10の強度や、清掃部12を構成する塊状繊維集合束20との接合性等を考慮して決定される。具体的には、ネット11aの線径は10〜5000μmが好ましく、更に好ましくは50〜1000μmである。ネット11aはその線径が部分的に異なっていてもよく、その場合は太い部分の線径が前記の値であることが好ましい。ネット11aの線間距離は0.1〜30mmが好ましく、更に好ましくは5〜15mmである。ネット11aは、例えば合成樹脂から構成されている。本実施形態の清掃用シート10によれば、これを図4に示す清掃具100に装着した状態で、シート保持部104とネット11aとの係合力が高まるという利点がある。
【0065】
図12に示す第3の実施形態の清掃用シート10も、基材シート11の種類が第1の実施形態と相違する。詳細には、本実施形態における基材シート11は、ネット(スクリム)11aと不織布11bとの複合体から構成されている。ネット11aとしては、第2の実施形態と同様のものを用いることができる。不織布11bとしては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。ネット11aと不織布11bとは、例えば熱融着や接着剤による接着で接合されている。基材シート11においては、ネット11aが清掃部12側を向き、不織布11bが清掃部12と反対側を向いている。本実施形態の清掃用シート10によれば、図11に示す実施形態の清掃用シートと同様の効果が奏される。
【0066】
図13に示す第4の実施形態の清掃用シート10は、清掃部が長手方向Xに延びる多条になっている点が第1の実施形態と相違する。具体的には、清掃部は、第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bの二条から構成されている。各清掃部12A,12Bの幅はほぼ同じになっている。また、繊維21の坪量もほぼ同じになっている。各清掃部は、長手方向Xに延びている。両清掃部12A,12Bの間においては、基材シート11が露出している。本実施形態の清掃用シート10によれば、階段の滑り止めやドア下のフレームなどの凸部を清掃する場合に、清掃部12A,12Bが該凸部を跨いで、該凸部を包み込むように清掃を行うことができるので、凸部に対する追従性や凸部に存するごみの捕集性が一層向上するという利点がある。この観点から、第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bとの間の距離Dは2〜80mm、特に10〜50mmであることが好ましい。
【0067】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態における塊状繊維集合束20では、接合部22が、繊維21の長手方向の略中央域に形成されていたが、これに代えて接合部22を、繊維21の長手方向の略中央域から偏倚した位置に形成してもよい。また、接合部22を、繊維21の一方の端部に形成してもよい。
【0068】
また、塊状繊維集合束20として、一方向に配列した複数の第1の繊維と、該方向と交差する方向に配列した複数の第2の繊維とからなり、両繊維が両繊維の交点に形成された接合部によって互いに接合されて構成され、該接合部から延びる第1及び第2の繊維が開繊されて、塊状になっているものを用いてもよい。
【0069】
また、前記の実施形態においては、清掃用シート10を、図4に示す清掃具に装着して使用した例を示したが、これに代えて清掃用シート10を、本出願人の先の出願に係る特開平9−299305号公報に記載の、挿入空間を有する扁平な袋状に形成された清掃布となし、該清掃布を、同公報に記載のハンディワイパータイプの清掃具に装着してもよい。あるいは清掃用シート10を手で直接把持して清掃を行ってもよい。
【0070】
また、前記実施形態においては、基材シート11の片面にのみ清掃部12を形成したが、これに代えて基材シート11の両面に清掃部12を形成してもよい。
【0071】
さらに、図11及び図12に示す基材シートと、図13に示す清掃部とを適宜組み合わせた実施形態も本発明の範囲内である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0073】
〔実施例1〕
(1)未開繊短繊維束の製造
図5に示す方法に従い未開繊短繊維束20’を製造した。使用した繊維21は、芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維であった。この繊維の繊度は2.2dtexであった。繊維21の捲縮数は16.51個、捲縮高さは0.87mmであった。繊維長は約45mmであった。未開繊短繊維束20’の総繊度は約3700tex、重さは約0.13gであった。接合部22は、繊維21の長手方向の略中央域に、幅5mmで形成した。未開繊短繊維束20’には、その重量に対して5重量%の流動パラフィンを油剤として塗工した。
【0074】
(2)塊状繊維集合束の製造
図8に示す装置を用い、得られた未開繊短繊維束20’を開繊して塊状繊維集合束20を得た。得られた塊状繊維集合束20は、その略中心域に接合部22を有し、該接合部22から繊維21が放射状に延びる略球状(毬藻様状)のものであった。その体積は約8cm3であった。
【0075】
(3)清掃用シートの製造
図9に示す装置を用い清掃用シート10を製造した。基材シート11として、坪量40g/m2のエアスルー不織布を用いた。この不織布は、繊度2.2dtexのポリエステル/ポリエチレン芯鞘型複合繊維から構成されていた。基材シート11は、長手方向Xの長さが280mm、幅方向Yの長さが210mmであった。この基材シート11の一面上に40個の塊状繊維集合束20をランダムに、かつ隙間が生じないように単層で敷き詰めた。敷き詰めた領域は、基材シート11の幅方向Yの中央域の長さ120mmの範囲において、長手方向Xの全域にわたる領域であった。塊状繊維集合束20と基材シート11とを、熱融着によって接合し、清掃部12を形成した。接合点13は直径3mmの円形であった。接合点13の配列パターンは格子状であった。接合点13のピッチは、長手方向X及び幅方向Yのいずれにおいても20mmであった。清掃部12における塊状繊維集合束20の総坪量は155g/m2であった。このようにして清掃用シート10を得た。
【0076】
〔実施例2〕
繊維21として、捲縮数22.32個、捲縮高さ0.32mmのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0077】
〔実施例3〕
繊維21として、捲縮数7.5個、捲縮高さ0.07mmのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0078】
〔実施例4〕
繊維21として、捲縮数22.86個、捲縮高さ0.24mm、繊度4.4dtexのものを用いる以外は、実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0079】
〔実施例5〕
図13に示す清掃用シート10を製造した。使用した繊維21及び塊状繊維集合束20は、実施例1と同様とした。第1の清掃部12A及び第2の清掃部12Bの幅方向Yの長さはいずれも50mmであった。第1の清掃部12Aと第2の清掃部12Bとの間の距離Dは20mmであった。各清掃部12A,12Bの坪量はいずれも155g/m2であった。これら以外は実施例1と同様にして清掃用シート10を得た。
【0080】
〔実施例6〕
実施例5において、清掃部を二条から三条に変更した。各清掃部の幅方向Yの長さはいずれも30mmであった。各清掃部間の距離はいずれも10mmであった。各清掃部の坪量はいずれも155g/m2であった。これら以外は実施例5と同様にして清掃用シート10を得た。
【0081】
〔比較例1〕
花王株式会社製のクイックル(登録商標)ドライシートを比較例1とした。
【0082】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた清掃用シートについて、清掃部における厚みを300Pa荷重下において測定した。その結果を表1に示す。また、実施例及び比較例で得られた清掃用シートを、花王株式会社製のクイックル(登録商標)ワイパーのヘッド部に装着し、凹凸を有する各種の清掃対象面に対する該清掃用シートの追従性及びごみの捕集性を次の方法で評価した。その結果を表1に示す。清掃対象面として、(a)木製のフローリングの溝(National社製KER7UE V溝深さ1mm、幅2mm)、(b)畳(い草部分)、(c)垂直面(部屋内の幅木部分:National社製QPL113T39)、(d)敷居(溝深さ4mm、幅21mm)、(e)引き戸のレール(バリアフリータイプ溝深さ2mm、幅5.3mm)、(f)ドアストッパーの側面(National社製引き掛けタイプMJT107)、(g)ドア下のフレーム(高さ15mm、幅30mm)及び(h)階段の滑り止めを採用した。モデルダスト「IWAMOTO MINERAL Co.LTD社製 コットンリンタ 径10μm under 長0.5mm under」0.02gを量り取り、目開き300μmの篩で凹凸を有する各種の清掃対象面に散布した。清掃用シートを、花王株式会社製のクイックル(登録商標)ワイパーのヘッド部に装着し、清掃面を追従させるように2往復清拭した。清拭後、清掃面の凹凸部分、凹凸部分の周辺部に残ったモデルダストを目視観察して判定を行った。
評価基準は以下のとおりである。
・追従性
◎:凹凸部分に残らない
○:凹凸部分に散布量の約1/4以内が残る
△:凹凸部分に散布量の約1/2以内が残る
×:凹凸部分に散布量の約1/2超が残る
・捕集性
◎:凹凸部分を含むその周辺部に残らない
○:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/4以内が残る
△:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/2以内が残る
×:凹凸部分を含むその周辺部に散布量の約1/2超が残る
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の清掃用シートは、比較例の清掃用シートに比べ、凹凸面への追従性に優れ、またごみの捕集性が高いものであることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の清掃用シートの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線断面図である。
【図3】図3は、未開繊短繊維束及び塊状繊維集合束を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す清掃用シートの一使用形態を示す斜視図である。
【図5】図5は、未開繊短繊維束の製造装置を示す模式図である。
【図6】図6(a)ないし(d)は、未開繊短繊維束の製造過程を順次示す模式図である。
【図7】図7(a)未開繊短繊維束の別の製造装置を示す模式図であり、図7(b)は、図7(a)に示す製造装置を用いた未開繊短繊維束の製造過程の一部を示す模式図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、未開繊短繊維束の開繊装置を示す模式図である。
【図9】図9は、清掃用シートの清掃装置を示す模式図である。
【図10】図10は、清掃用シートの別の清掃装置を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明の清掃用シートの第2の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【図12】図12は、本発明の清掃用シートの第3の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【図13】図13は、本発明の清掃用シートの第4の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【符号の説明】
【0086】
10 清掃用シート
11 基材シート
12 清掃部
20 塊状繊維集合束
20’未開繊短繊維束
21 繊維
22 接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている塊状繊維集合束が、基材シートの少なくとも一面に複数接合されて清掃部が形成されている清掃用シート。
【請求項2】
前記塊状繊維集合束においては、前記繊維の長手方向の略中央域に前記接合部が形成されている請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記繊維が捲縮を有している請求項1又は2記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記基材シートがネットを含んでいる請求項1ないし3のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記基材シートを利用して、ヘッド部及び該ヘッド部に連結された柄を備えた清掃具における該ヘッド部に装着されて使用される請求項1ないし4のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
請求項1記載の清掃用シートの製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させて塊状繊維集合束を得、
複数の前記塊状繊維集合束を基材シートの少なくとも一面に接合させる、清掃用シートの製造方法。
【請求項7】
一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている、清掃用シートの清掃部として用いられる塊状繊維集合束。
【請求項8】
請求項7記載の塊状繊維集合束の製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させる塊状繊維集合束の製造方法。
【請求項1】
一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている塊状繊維集合束が、基材シートの少なくとも一面に複数接合されて清掃部が形成されている清掃用シート。
【請求項2】
前記塊状繊維集合束においては、前記繊維の長手方向の略中央域に前記接合部が形成されている請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記繊維が捲縮を有している請求項1又は2記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記基材シートがネットを含んでいる請求項1ないし3のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記基材シートを利用して、ヘッド部及び該ヘッド部に連結された柄を備えた清掃具における該ヘッド部に装着されて使用される請求項1ないし4のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
請求項1記載の清掃用シートの製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させて塊状繊維集合束を得、
複数の前記塊状繊維集合束を基材シートの少なくとも一面に接合させる、清掃用シートの製造方法。
【請求項7】
一方向に配列した複数の繊維が接合部によって互いに接合されて構成され、かつ該接合部から延びる該繊維が開繊状態となっている、清掃用シートの清掃部として用いられる塊状繊維集合束。
【請求項8】
請求項7記載の塊状繊維集合束の製造方法であって、
一方向に配列した複数の連続長繊維を、該繊維の延びる方向と交差する方向に延びる複数の接合部によって互いに接合して連続長繊維束を形成し、
前記連続長繊維束を前記接合部間において切断して、未開繊短繊維束を得、
前記未開繊短繊維束に流体を吹き付けて、前記接合部から延びる繊維を開繊させる塊状繊維集合束の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−153910(P2009−153910A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338175(P2007−338175)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]