説明

清掃用品

【課題】簡便に使用することができ、かつ洗浄能力の高い清掃用品を提供すること。
【解決手段】水中で分散可能な水解性の清掃基体と、洗浄成分を含む層とを有する清掃部を備えた清掃用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清掃用品に関し、特に好ましくはトイレ等の水を使用する場所で使用される清掃用品に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ等の清掃においては、尿の成分が析出凝固した尿石を除去できるものが要望されている。尿石は、尿由来のリン酸カルシウムなどの無機成分とタンパク質などの有機汚れが結合したものであって、落ちにくい汚れであり、悪臭の原因となっている。
従来、尿石をはじめとするタンパク汚れは、不織布などを利用したシート等の繊維に絡めることにより、物理的に除去してきた。あるいは、洗浄剤を便器に噴霧してから、非水解性のブラシ等で擦ることにより除去してきた。
【0003】
さらに、水溶性の材料からなるトイレブラシであって、界面活性剤等を部分的に含浸させたブラシが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2006‐525038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、洗浄剤(薬品)と非水解性のブラシ等とを準備して清掃する場合は、ブラシで掃除する前に洗浄剤を撒く手間がかかる。清掃後には、ブラシを保管することになるため、清掃後のブラシの洗浄および保管場所の確保が必要であるとともに、衛生面において不安がある。さらに、取り扱い中に洗浄剤が飛び散るなどして、強い薬品が直接使用者の肌に触れる危険性があり、安全性の点で問題がある。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に記載の清掃用品は、トイレ清掃後にブラシを水洗廃棄できるという利点がある。しかし、ブラシを構成する水溶性材料に薬品を直接含浸させるため、酸化力の強い薬品では水溶性材料が劣化する。その結果、含浸させうる薬品は水溶性材料が劣化しない成分に自ずと限定され、尿石を除去できるような強い薬品を含浸させることができないため、充分な尿石除去効果が得られない。
【0006】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、簡便に、安全に、衛生的に使用することができ、かつ、洗浄能力の高い清掃用品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、水中で分散可能な水解性の清掃基体と、洗浄成分を含む層とを有する清掃部を備えた清掃用品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の清掃用品によれば、使用時に、洗浄成分を含む層が物理的に、および/または、化学的に破壊されて、この層に含まれた洗浄成分が放出される。したがって、別途に洗浄剤を散布する必要がなく、本品一つで清掃が済ませられ、洗浄剤が飛び散るなどの危険がなく、簡便かつ手軽に清掃を行なうことができる。さらに、清掃基体は水解性であって水中で分散可能であるため、清掃終了後に清掃部をそのままトイレに流すことにより簡単に廃棄でき、衛生的である。
【0009】
洗浄成分は層に含まれているので、清掃用品の取り扱い時に直接使用者の肌に接することもなく、安全である。さらに、洗浄成分を含む層(フィルム)を形成することにより、すなわち洗浄成分をフィルム化して適用することにより、水解性の清掃基体が洗浄成分と接触しないので、清掃基体が劣化しない状態で洗浄成分を担持することができる。その結果、洗浄能力の高い強力な成分を担持させることができ、高い洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
はじめに、添付図面を参照して本発明の特徴的な構成を簡単に説明し、次にその材料等を含め、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明に係る清掃用品の一実施形態の概略を模式的に示す。図1に示すように、清掃用品1は清掃部2を備え、清掃部2は、水中で分散可能な水解性の清掃基体21を有している。
【0011】
図2は、図1に示した清掃用品1の一部を取り出して、その概略を模式的に示す図である。図2に示すように、清掃基体21の表面の一部には、洗浄成分を含む層22が形成されている。
図3は、図1に示した清掃用品の清掃基体21の一部を、模式的に拡大して示す。
【0012】
図4および図5は、それぞれ、本発明に係る清掃用品の別の一実施態様を模式的に示す概略図である。図4には、清掃基体21と、洗浄成分を含む層22とを有する清掃部2が示されている。
このように、洗浄成分を含む層22は、独立したフィルムであってもよいし(図4)、清掃基体21の表面の少なくとも一部に形成された層(図2、図3、図5)であってもよい。
【0013】
清掃用品1は、図1、図2、図4等に示すように、保持部3を備えていてもよい。
さらに、図1に示すように、保持部3を備える清掃用品1には、保持部3を着脱自在に保持するホルダ10を設けることができる。
図6も、本発明に係る清掃用品の一実施形態を概略的に示す模式図であり、清掃用品1には、保持部3を着脱自在に保持するホルダ10が設けられている。
【0014】
次に、本発明の清掃用品を、その構成材料を含めてさらに詳しく説明する。
本発明の一実施形態において、図1〜図3等に示すように、清掃部2は、分散可能な水解性の複数の清掃基体21(単に「基体」ともいう。)を有している。
清掃基体が「水中で分散可能である」すなわち「水解性である」とは、清掃基体が水中で2以上に分解して元の形態を失うことである。清掃部2を構成する清掃基体21が水解性であって、水中で短時間に多数の小片に分解することによって、この清掃部2は洗浄使用後にトイレ等に廃棄して、そのまま流すことができる。
【0015】
より詳しくは、個々の基体の水解時間をJIS P4501(トイレットペーパーほぐれやすさ試験)に準じて測定した場合に、700秒以下であるものを、ここでは「水解性」であるとする。すなわち、容量が300mLのビーカーに、水温が20±5℃のイオン交換水を300mL入れ、ここに試験片(清掃基体が紐体の場合は長さを100mmとし、シートの場合は大きさを100mm×100mmとし、ブロックの場合は30mm×30mm×30mmとする)を投入して、水中で回転子を600rpmの回転数で回転させてイオン交換水とともに試験片を攪拌したときに、試験片の形態がなくなり、構成繊維ごとに分散されるまでの時間を測定する。
清掃基体の水解時間は、好ましくは600秒以下であり、さらに好ましくは300秒以下である。一方、清掃中に直ちに分解してしまわず清掃作業を円滑に実施できるように、清掃基体の水解時間は180秒以上であることが好ましく、240秒以上であることがより好ましい。
【0016】
このような水解性の清掃基体は、水解紙、水解性不織布、PVA(ポリビニルアルコール)フィルムなど、水溶性あるいは水解性の材料として知られている各種の材料を広く用いることができる。このなかでも、水解紙が好ましい。ここで、水溶性材料とは、完全に水に溶解する材料であることを意味し、水解性材料とは小片化し水に分散する材料であることを意味する。
【0017】
これらの水溶性あるいは水解性の材料を構成する繊維、すなわち清掃基体を構成する繊維の種類としては、木質パルプ、再生セルロース、麻、綿などが挙げられ、木質パルプが好ましい。構成繊維の少なくとも一部がこれらの水溶性あるいは水解性の繊維であることにより、水解性の清掃基体を構成することができるが、構成繊維の全てがこれらの水解性あるいは水溶性繊維であることが好ましい。
なかでも、環境に対する負荷を低減させる観点から、生分解性の繊維であることが好ましい。生分解性の繊維としては、木質パルプ、再生セルロース、麻、綿など挙げられる。
これらの繊維の繊維長は、水解性の観点から20mm以下の範囲にあることが好ましく、10mm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0018】
清掃基体を構成するこれらの繊維間の結合(接合)は、水素結合力または水溶性バインダーの接着力により、あるいは、ウォータージェット等を用いた物理的な繊維の交絡により行なうことができる。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが例示できる。
【0019】
清掃基体21の形状または形態は、任意であり、図1〜図3等に示すような紐体であっても、図4〜図6に示すようなシート状であってもよく、図には示さないが円筒形等のブロック状であってもよい。
また、清掃部2を形成する清掃基体21は、単独であっても、複数であってもよい。
【0020】
個々の基体21が紐体の場合、複数の紐状基体をブラシ状に束ねて用いることができる。図1および図2はその一例であり、紐状の基体21がブラシ状に束ねられて、清掃部2を構成している。
個々の基体21がシート状の場合、図4および図5に示すように複数のシート状基体を重ねて、必要に応じて部分的に接合したものでも良いし、1または複数の基体を、巻いて、あるいは、折り畳んで用いることもできる。
さらに、異なる形状または形態の基体を組み合わせたものでもよい。一例としては、単一あるいは複数のシート状基体あるいはブロック状基体の周囲に、複数の紐体を配置した構成が挙げられる。
【0021】
個々の清掃基体21は、さらに下位構造を有していてもよい。
すなわち、紐状の基体の場合、図7(a)に示すように1枚の水解性シート25を縒り合わせて紐としたものでも良いし、図7(b)に示すように水解性シート25と水解紙26とを重ねて縒り紐を形成したものでもよい。さらに図7(c)に示すように、水解紙26で芯を形成し、これに水解性シート25を巻きつけて、紐を形成したものでもよい。縒られて形成された紐体は、使用後に水中に廃棄して多量の水に接触すると、紐体の縒りが緩み、比較的短時間に水中で分解できるようになる。
シート状の基体の場合は、その基体シート自身が、さらに薄い複数のシートを重ねて部分的に接合して得られた積層体であってもよい。この場合も、水中での基体の分解が迅速に行なわれることが期待できる。
【0022】
以上のように、基体の形状および構成は任意であるが、清掃に適した物理的強度を有し、かつ使用後はそのまま水と共に廃棄が可能であるような、良好な水解性を有していることが好ましい。
【0023】
図1、図2等に示されるように、好ましい一実施形態において、清掃用品1は、保持部3を備える。保持部3は、清掃部2の清掃基体21の一端に設けられ、清掃基体21を保持するものである。保持部3を備えた清掃用品1は、保持部3を用いて後述するホルダ10に着脱可能に装着することができる。
【0024】
清掃部2が複数の清掃基体21を有する場合は、保持部3は、これら複数の清掃基体21を互いに固定して、一体に保持するものである。たとえば、個々の清掃基体21が紐体の場合、図1および図2に示されるように、保持部3はこれら複数の紐体(清掃基体)21の一方端を束ねることにより構成される。複数の紐体は、保持部では互いに固定され、清掃部では互いに独立して位置している。
図2では、清掃部2に紐体21の端面が位置した構成となっている。図には示さないが、紐体21が折り曲げられて、清掃部の先部(保持部側ではない側の端部)に折曲部が位置し、紐体の両端部が保持部で束ねられて固定された構成であってもよい。
清掃部が単一の清掃基体を有する場合も、保持部はその基体の一端に設けられ、清掃基体を保持する。
【0025】
保持部3も、上記の清掃部2と同様に、水中で分散可能な水解性の材料で構成されていることが好ましい。保持部が水溶性または水解性であれば、使用後に保持部ごと清掃部を水中に廃棄して、そのまま流すことができる。たとえば保持部は、上述の清掃基体と同じ材料で構成することができる。
より詳細には、この保持部3は、図2に示すように、水解性の保持材31を清掃基体21の周囲に巻きつけて構成することができる。
【0026】
より具体的にはたとえば、30〜100mmの長さに切断された同じ長さの紐体5〜50本程度を束ね、その端面同士が水溶性接着剤(水溶性バインダー)で接着され、その束の外面に保持材31が巻かれて水溶性接着剤で接着された構成が、好ましい一例として挙げられる。すなわち、保持部3では紐体21同士が接着・固定され、清掃部2では個々の紐体21が互いに独立している。
図2に示す保持部3は円筒形であるが、その形状は任意であり、たとえば図4に示すような偏平形状の保持部であってもよい。
【0027】
図4および図5の例では、複数のシート状基体21の一端が保持部3で保持されている。この保持部3も、水解性の保持材31を清掃基体21に巻きつけることにより構成できる。シート状基体21同士は、保持部3で水溶性接着剤により互いに接着されていてもよい。
【0028】
清掃用品1には、好ましくは、図1および図6に示すように、上記保持部3を着脱可能に装着・保持するホルダ10が設けられている。保持部をホルダに装着して保持させることにより、清掃部をホルダに固定し、このホルダ10の枝部11を手に持って清掃部で拭き取り等の清掃作業を行なうことができる。これにより、清掃部に直接手を触れることなく、被清掃部の清掃を行なうことができる。ホルダの枝部11が適度に長い場合は、顔を被清掃部に近づけないで、たとえば便器のインボウル部などを掃除することができる。
【0029】
このホルダ10は、清掃後に保持部または清掃部に手を触れないで清掃部を廃棄することができるような保持部装着構造を有していることが好ましい。これにより、清掃後に、手を触れることなくホルダから清掃部を外して水洗トイレット内などに簡単に廃棄することができ、衛生的である。
【0030】
図1は、図2に示す紐体21からなる清掃部2を保持する保持部3が、着脱可能にホルダ10に装着された清掃用品を示す。保持部3は、ホルダ10の収納部12と押さえ部13との間で、押さえ部13に押圧されることにより保持されている。ホルダ10の押さえ部13を収納部12から離すと、押さえ部13の押圧力が解除されて、清掃部2が分離される。
図6は、図4および図5に示すシート状基体21からなる清掃用品に適したものであり、平坦な収納部12と押さえ部13との間で、清掃部2を保持する保持部3が、着脱可能にホルダ10に装着された清掃用品を示す。
【0031】
一方、図には示さないが、清掃用品は、清掃部2が保持部を有さない形態であってもよいことは言うまでもない。この場合は、この清掃用品を用いて手で擦ることにより、たとえば便器周りや床など、細かい箇所あるいは凹凸のある部分を容易に清掃することができ、使用後には同様に、そのまま水中に廃棄することができる。
【0032】
次に、上記清掃基体の表面に形成される、洗浄成分を含む層(フィルムともいう)について説明する。
清掃部2は、図2および図5に示すように、洗浄成分を含む層22をその被清掃部と接する表面の少なくとも一部に備えた清掃基体21を有しているか、または、図4に示すように、洗浄成分を含む層(フィルム単体)22を独立して備えている。後者において、洗浄成分を含むフィルム22と清掃基体21との配置順序は特に限定されることはなく、交互であっても、ランダムであってもよい。さらに、洗浄成分を含む層22は、独立したフィルム22と清掃基体21とが一体的に組み合わされた形態(図3)として、清掃基体21の一部に形成されていてもよい。
【0033】
この洗浄成分は、清掃用品の用途、すなわち被清掃部の汚れに応じて適宜選択すればよく、特に限定されることなく清掃用の洗浄成分として知られている各種の物質を広く用いることができる。
好ましい一例を挙げると、清掃用品がトイレ用に使用される場合は、洗浄成分としては、便器等に付着した尿石を除去するのに有効な成分を用いることが好ましい。
尿石は、尿の成分が析出凝固したものであり、尿由来のリン酸カルシウムなどの無機物と、タンパク質などの有機物とを含む複合汚れである。
【0034】
カルシウム含有化合物の除去には、酸性物質が有効である。酸によってカルシウム塩が分解されるからである。
タンパク質を含有する汚れの除去には、界面活性剤が有効である。界面活性剤は、汚れを分解除去する効果があるほか、使用中に泡立つことにより、洗浄成分の流れ落ちを防止し、洗浄成分を汚れ部に留める効果もある。
したがって、トイレ用清掃用品として用いる場合は、層に含まれる洗浄成分として、酸と界面活性剤を含むことが好ましく、さらには後述するように、有機酸とカチオン性界面活性剤とを含むことが一層好ましい。
【0035】
尿石を分解させるための酸としては、無機酸および有機酸を用いることができるが、人体に対する安全性と浄化槽内の微生物に与える影響の観点から有機酸が好ましい。
有機酸としては、たとえば、グリコール酸、ジグリコール酸、グルコン酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、安息香酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、マレイン酸、メチレンコハク酸、イソシアヌール酸、p−トルエンスルホン酸などを用いることができる。これらの有機酸は、単独で用いられるほか、2種以上の混合物を用いてもよい。
なかでも、安全性とコストの観点からグリコール酸、クエン酸、グルコン酸およびリンゴ酸が好ましい。
【0036】
無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、トリポリリン酸、スルファミン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。
これらの無機酸も、単独で用いられるほか、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0037】
界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、各種硫酸エステル塩、各種スルホン酸塩などが知られており、これら各種の界面活性剤を用いることができる。たとえば、浸透性、起泡性の観点から、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等を用いることが好ましい。
なかでも、タンパク質を含有する汚れ成分の除去には、カチオン性界面活性剤が好ましい。これは、タンパク質がアニオン性であり、カチオン性界面活性剤は、イオン的に反応性を高めるからである。これらの界面活性剤は、単独で用いられるほか、複数種を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0038】
カチオン性界面活性剤とは、酸性条件下でカチオン電荷を帯びる界面活性剤である。一般にカチオン性界面活性剤と称されるものと、その他、酸性条件下でカチオン電荷を帯びる界面活性剤とが挙げられる。
例として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩などの第4級アンモニウム塩;ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。その他、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルイミダゾリウムベタイン、などの両性界面活性剤、アルキルアミノキシド、アルキルアミドアミンオキシドなどの含窒素型非イオン界面活性剤が挙げられる。
なかでも好ましいのは、環境保護の観点から、両性界面活性剤である。
【0039】
洗浄成分(洗浄用組成物)は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、着色剤等の種々の添加剤、または、水、油分、アルコール類等の種々の溶剤(希釈剤)を含むことができる。
この洗浄成分は、粉末であってもよいが、汚れへの浸透性の観点から液体であることが好ましい。
【0040】
さらに、洗浄成分のpHは、カルシウム含有化合物の除去の観点からpH1.0〜6.0の範囲が好ましく、さらにpH1.0〜4.0の範囲が好ましい。
有機酸は、洗浄成分をこのpHを1.0〜6.0の範囲に調整することができるものであることが好ましい。
【0041】
上記洗浄成分は、層(フィルム)22の中に含有されている。層中における洗浄成分の含有状態は任意であるが、層内に均一に混合・分散されていることが好ましい。
洗浄成分を含む層中の酸の濃度は、カルシウム含有化合物の除去の観点から1.0〜25.0重量%の範囲が好ましく、5.0〜15.0重量%の範囲がさらに好ましい。
洗浄成分を含む層中の界面活性剤の濃度は、浸透性、起泡性の観点から25.0〜95.0重量%の範囲が好ましく、50.0〜90.0重量%の範囲がさらに好ましい。
【0042】
層22を構成する材料(層形成材)は、洗浄成分を安定して含有することができるものを用いることが好ましい。具体的には、たとえば洗浄成分が酸を含む場合は、含まれる酸に対して安定である、あるいは酸によって分解しない物質を選択することが重要である。
層中の層形成材の濃度は、4.0〜74.0重量%の範囲が好ましく、5.0〜45.0重量%の範囲がさらに好ましい。
【0043】
具体的な層形成材としては、特に限定されることはなく、たとえば、キトサン、ゼラチン、ジェランガム、アラビアゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ナイロン、ポリエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、パラフィン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機高分子物質を挙げることができる。
【0044】
特に、層形成材は水溶性または水解性であることが好ましい。水溶性または水解性であることにより、使用時に水に濡れることで層が破壊され、洗浄成分が容易に放出されるからである。水溶性または水解性の層形成材としては、生分解性を有する材料が好ましく、キトサン、ゼラチン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、デンプン、カルボキシメチルセルロース、にかわ等が挙げられる。なかでも好ましくは、キトサン等を用いることができる。
【0045】
この場合、層形成材の水溶性または水解性の程度は、基体の水溶性または水解性の程度よりも高いことが好ましい。すなわち、清掃中に層は容易に破壊されるが基体は水解等せず、廃棄するまで形状を維持していられることが好ましい。具体的には、上述のJIS P4501に準じて測定した水解時間が、層形成材の場合は30秒以下であることが好ましく、10秒以下であることがより好ましい。
【0046】
しかし、層形成材は水溶性または水解性でなくてもよく、この場合は、層形成材の物理的強度を調整にして、使用時に被清掃部との摩擦によってフィルムが破れて、洗浄成分が放出されるようにする。これにより、高い清掃効果を得ることができる
さらに層形成材は、環境保護配慮などの点から、ポリ乳酸、アルギン酸塩(アルギン酸カルシウム等)の生分解性の材料であることが好ましい。
【0047】
層の厚み(乾燥後)は、フィルム単体の場合、10μm〜200μmの範囲が好ましく、50μm〜150μmの範囲がさらに好ましい。水解性基材へ塗工する場合、0.1μm〜100μmの範囲が好ましく、1μm〜50μmの範囲がさらに好ましい。層の厚みは、紙厚計により測定することができる。
【0048】
層の形成方法は、一般に知られている種々の方法を採用できる。たとえば、層形成材と洗浄成分(および必要に応じてその他の任意成分)を含む溶液(層形成溶液)を調整し、これを基体に塗布して乾燥させることにより、容易に洗浄成分を含む層を基体表面に形成することができる。基体への塗布方法も任意であり、スプレー法やディッピング法でもよい。このとき、溶液は水溶液、エマルジョン溶液等であることが好ましく、層形成材である高分子化合物および洗浄成分が完全に溶解するような溶媒を選択し、溶質の濃度を調整することが好ましい。
層形成溶液中の酸濃度は、0.1〜3.0重量%の範囲になるように調製することが好ましく、0.5〜2.0重量%の範囲がさらに好ましい。層形成溶液中の界面活性剤の濃度は、1.0〜10.0重量%の範囲になるように調製することが好ましく、3.0〜8.0重量%の範囲がさらに好ましい。
【0049】
たとえば、図2および図5に示す清掃用品の場合は、清掃部2(清掃基体21)の先端部のみを層形成溶液に浸漬させ、その後乾燥させてフィルム化することにより層22を好ましく製造できる。
別にフィルム(洗浄成分を含む層)を作成して、そのフィルム22と清掃基体21を組み合わせるようにしてもよい。図4に示す清掃用品は、この方法により好ましく製造できる。この例では、洗浄時に機械的に擦ることにより汚れを除去する観点から、清掃基体21を外側にしている。フィルム22が水溶性の場合は、この洗浄作業中に内側から洗浄成分が溶け出して来るため、摩擦による機械的作用と洗浄成分による化学的作用の双方により、より高い洗浄効果を得ることができる。
【0050】
あるいは、別にフィルム22を作成して、図3に示すように、これを紐状の清掃基体21と縒り合わせるようにしてもよい。つまり、図7(b)に示す清掃基体21において、水解性シート26と水解紙25のどちらか一方が、洗浄成分を含む層(フィルム)であってもよい。さらに、図7(c)に示す清掃基体21において、水解性シート25が洗浄成分を含む層(フィルム)であってもよい。
【0051】
洗浄成分を含む層の清掃基体上の形成箇所は、清掃箇所と接する場所であることが好ましく、基体の先端部に形成されていることがさらに好ましい。このように、任意の場所に洗浄成分を容易に局在化することができるので、効率よく洗浄を行なうことができる。その結果、液状洗剤をそのまま振りかけて使用する場合よりも、用いる洗浄成分を少なくして、排水環境に対する負荷低減効果も期待できる。
【0052】
次に、清掃用品の具体的な使用方法を、トイレ用清掃用品である場合を例として説明する。
図2または図4に示す清掃用品1の保持部3を、図1または図6に示すホルダ10の収納部12と押さえ部13との間で保持し、清掃部2で水洗トイレの便器の内側を擦るようにして清掃する。このとき、清掃部に形成された洗浄成分を含む層が機械的に破壊して洗浄成分が放出し、汚れを効果的に除去できる。あるいは、洗浄成分を含む層(フィルム)の層形成材が水溶性または水解性である場合は、清掃部を水洗トイレ内の洗浄水で濡らして拭き取りを行なうと、フィルムが破れて洗浄成分が放出し、汚れを効果的に除去することができる。
【0053】
清掃後、ホルダ10の押さえ部13を収納部12から離すと、清掃部2が保持部3ごと水洗トイレ内に落下し、これをそのまま洗浄水と共に流すことができる。水中で、保持部3の固定力が解除されて、清掃部2は個々の清掃基体21に分散されるため、清掃部が配管に詰まることなく流れるようなる。そして配管内または浄化槽内で、個々の清掃基体が分解して、ばらばらの繊維になる。
【0054】
本発明の清掃用品は、水解性の清掃部を備えた清掃用品に広く適用することができる。
たとえば、特開2006−314615号公報、特開2006−314617号公報、特開2006−314621号公報、および特開2006−314624号公報に記載の清掃用品に適用することができる。
【0055】
これらの文献に記載の清掃用品は、繊維交絡不織布、繊維圧縮体、湿潤収縮性樹脂などを用いた水解性の清掃用品である。これらは、便器などを擦ったときの強度が高く、剛性に優れ、汚れを効果的に除去することができるものである。したがって、本発明の構成に従ってこれらの清掃用品に洗浄成分を含む層を形成することにより、清掃効果のより一層優れた清掃用品を提供することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づき本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、特に断りのない限り、%は重量%を意味する。
(実施例1)
0.8%グリコール酸と7%アルキルアミンオキシド(和光純薬工業(株)製 N,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド溶液)を含む水溶液に、0.5%となる量のキトサンを添加し、50℃で加熱しながら溶解させた。得られた溶液(層形成溶液1)をシャーレ(直径10cm)に10g添加した後、105℃で乾燥させて、厚み67.3μmのフィルム(洗浄成分を含む層)を得た。
【0057】
(実施例2)
1%となる量のキトサンを添加して溶液(層形成溶液2)を得るようにした以外は、実施例1と同様にして、厚み188μmのフィルム(洗浄成分を含む層)を得た。
【0058】
(実施例3)
実施例1の層形成溶液1に、水解性湿式不織布(製造元:国光製紙(株)、JIS P4501の水解時間500秒)からなる長さ18cmの紙紐(清掃基体)を浸漬し、105℃で乾燥させて、フィルム付き清掃基体を得た。形成されたフィルムの厚みは9μmであった。
(実施例4)
実施例2の層形成溶液2を用いて、実施例3と同様にして、フィルム付き清掃基体を得た。形成されたフィルムの厚みは7.4μmであった。
【0059】
(比較例1)
0.8%グリコール酸と7%アルキルアミンオキシドを含む水溶液を調整し、これに上記実施例と同じ紐体を浸漬し、乾燥させて、洗浄成分を含浸させた清掃基体を得た。
【0060】
(洗浄成分放出試験)
実施例で製造したフィルムおよびフィルム付き清掃基体について、次のようにして洗浄成分放出試験を行った。
フィルム10gまたはフィルム付き清掃基体(18cmの紙紐)を純水30mlに浸漬して10分間放置し、遠心分離を行った。この上澄み液を液体クロマトグラフに供し、グリコール酸の濃度を測定することにより、洗浄成分溶出能を評価した。
【0061】
液体クロマトグラフの分析条件は、以下の通りである。
カラム:Shim-pack SPR-H (Shimazu,250mm×7.6mm)
カラム温度:60℃
移動相:HClO(pH 2.1)
流速:0.5mL/分
検出器:UV 210nm
溶出したグリコール酸濃度を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から明らかなように、実施例において、洗浄成分であるグリコール酸の溶出を確認した。実施例1のフィルムおよび実施例3の紙紐の場合、特に溶出量が多かった。これより、層形成材の濃度を調整することにより、洗浄成分の溶出量を制御できることが確認できた。比較例1では、キトサンが添加されていないことから、紙紐への洗浄成分の定着量が少なかったことが考えられる。換言すると、キトサンは洗浄成分の保持能力が高いことが考えられる。
【0064】
参考例1として、キトサンの濃度を2%となるようにしてフィルム化を行なった。
このフィルムを用いて上記実施例と同様のグリコール酸の溶出試験を行なったが、溶出は認められなかった。また、キトサンの濃度が2%を超えると、水へのキトサンの溶解性が低下することが認められた。
参考例2として、キトサンの濃度を0.1%となるようにしてフィルム化を行なったが、フィルムの形成・保持が難しかった。
参考例3として、グリコール酸を添加せずに、7%アルキルアミンオキシドのみを含有する水溶液に、1%の濃度となるキトサンを添加し、50℃で加熱したが、キトサンは溶解しなかった。これは、キトサンは酸性溶液にのみ溶解することに起因している。したがって、キトサンベースのフィルムでは、グリコール酸のような酸性物質をブレンドしていないと、トイレ清掃時に水をつけても、膜が破壊されないことが判明した
【0065】
(基体劣化試験)
実施例3〜4および比較例1で作成した清掃基体について、JAPAN TAPPI No50/1「紙および板紙−加速劣化処理」の湿式法に基づき実験を行い、基体劣化率を算出した。
基体劣化率=[(初期値−48時間後の強度)/(初期値)]×100
結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例では、基体の強度は維持され、特にキトサン濃度が高くなるほど、基体劣化率を低減できる(基体の強度を保持できる)ことが判明した。これに対し、比較例では基体強度の劣化が著しく、紙紐の変色が見られた、これにより、洗浄成分のフィルム化は、洗浄成分による水解性基体の劣化を抑制することがわかった。
【0068】
次に、実施例3〜4で製造したキトサンフィルム付きの清掃基体(紙紐)を40本束ね、その片側端面を水解紙で巻いて固定することにより、ブラシ状の清掃用品を製造した。
比較のため、キトサンフィルムを担持しない、実施例と同じ清掃基体を用いて、同様に比較清掃用品を製造した。
これらの清掃用品を用いて、実際に清掃試験を行なった。乳性カゼイン1%、リン酸三カルシウム5%、尿酸1%、尿素2%、およびイオン交換水91%を含む汚れ組成物を調製し、これをタイル上にキャストコーティングし、60℃雰囲気中で24時間乾燥固化させて、模擬汚れを得た。この模擬汚れの付着したタイルを、上記得られた各清掃用品を用いて3分間擦って、洗浄効果を確認した。その結果、実施例の清掃用品では洗浄成分が放出されて、比較清掃用品よりも良好な洗浄効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の清掃用品の一実施形態の概略を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1に示した清掃用品の一部の概略を示す模式的な斜視図である。
【図3】図1に示した清掃用品の一部を拡大して示す模式図である。
【図4】本発明の清掃用品の別な実施形態の概略を拡大して示す模式図である。
【図5】本発明の清掃用品の別な実施形態の概略を拡大して示す模式図である。
【図6】本発明の清掃用品のさらに別な実施形態の概略を示す模式的な斜視図である。
【図7】図1に示した清掃用品の製造工程の一部を模式的に説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 清掃用品
2 清掃部
3 保持部
10 ホルダ
21 清掃基体
22 洗浄成分を含む層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で分散可能な水解性の清掃基体と、洗浄成分を含む層とを有する清掃部を備えた清掃用品。
【請求項2】
さらに保持部を備えている、請求項1記載の清掃用品。
【請求項3】
前記保持部を着脱可能に保持するホルダが設けられている、請求項2記載の清掃用品。
【請求項4】
前記層が水溶性または水解性である、請求項1〜3のいずれか1項記載の清掃用品。
【請求項5】
前記洗浄成分が、有機酸とカチオン性界面活性剤とを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の清掃用品。
【請求項6】
トイレ用清掃用品である、請求項5記載の清掃用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−77787(P2009−77787A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247737(P2007−247737)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(592134583)愛媛県 (53)
【Fターム(参考)】